【実施例】
【0030】
以下、実施例等に基づき、本発明をより具体的に説明する。なお、特に断りのない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。また、一次分散液の調製及び評価、並びにインクジェットインキの評価方法は、以下のとおりである。
【0031】
粒子合成に用いる保護剤について、合成の可否判断として、水およびメタノールの各溶媒に対する溶解性試験を行った。溶解性試験は保護剤と溶媒の質量比を1:1で混合して、混合後の状態を目視にて観察した。得られた結果が水もしくはメタノールに可溶であれば、錫粒子の合成が可能と判断することができる。
【0032】
粒子合成後の合成液中の粒子について、合成液を遠心分離にて沈降させ、アセトンで洗浄を行い、乾燥後に得られた錫微粒子粉末をX線回折装置にて錫の同定を行った。
【0033】
粒子合成後の合成液中の粒子について、合成液を遠心分離にて沈降させ、アセトンで洗浄を行い、乾燥後に得られた錫微粒子粉末をTG−DTA(セイコー電子工業社製、SSC-5200)にて、熱重量測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/min、N
2ガス雰囲気で上限温度500℃とした。このとき、粒子表面の有機物が分解する程度の指標として、〔300℃における重量減少量wt%/500℃における重量減少量wt%×100〕を錫粒子表面の有機物分解率%とした。この分解率が高いほど有機物の分解性が良好であると判定できる。なお、
図1には、実施例1、3、及び比較例2で得られた錫微粒子の熱重量測定結果のチャート図を示す。
図2には、実施例2、4及び5で得られた錫微粒子の熱重量測定結果のチャート図を示す。
図3には、比較例1で得られた錫微粒子の熱重量測定結果のチャート図を示す。
【0034】
極性溶媒への分散安定性について、合成液を遠心分離にて沈降させ、アセトンで洗浄を行い、メタノールを加えた時の状態観察を行った。このとき、遠心分離(3500rpm×1分)ですべて粒子が目視にて沈降が認められる場合は分散安定性(不適)と評価した。すべての粒子が沈降しない状態以外は分散安定性(適)と評価した。
【0035】
インクジェットインクについて、E型粘度計(コーンプレート型の回転粘度計;東機産業製)を用いて、23℃での粘度測定を行った。得られた結果が2〜1000mPa・sであれば、静電式パターニング装置(インクジェット印刷法)の吐出に適すると判断することができる。
【0036】
さらに、インク中に分散された錫微粒子がインクジェット装置に対して、より好ましく適するか否かをインキの粒度分布測定と1μmガラスフィルター(Whatman シリンジフィルタ GMF-150 PORESIZE 1μm)で評価を行った。
【0037】
インキ中の錫粒子の平均一次粒子径(流体力学的径)は、粒径アナライザー(動的光散乱法による粒度分布計;大塚電子製FPAR−1000)にて実計測し、光子相関法で求めた自己相関関数によりキュムラント法での解析によって得られたものである。また、ヒストグラム法での解析によってインキ中の錫粒子の粒子径分布を示す散乱強度の平均値(nm)と±標準偏差を得た。
【0038】
得られたインキは、静電式パターニング装置(インクジェット印刷法)で吐出評価を行った。このとき、静電式パターニング装置のノズルからインキが安定に吐出できたものは吐出性良好(○)、また、ノズルにインキが詰まるなどしてインキが安定に吐出できないものは吐出性不良(×)と評価した。
【0039】
なお、実施例等で使用した各成分と、表1で記した略号との関係を以下にまとめて示す。
ロジンA:荒川化学工業社製 商品名;マルキード No.34
ロジンB:荒川化学工業社製 商品名;マルキード No.33
ロジンC:荒川化学工業社製 商品名;中国重合ロジン 140
ロジンD:荒川化学工業社製 商品名;白菊ロジン
PVP :東京化成工業社製 試薬;ポリビニルピロリドン K−15
分散剤A:クローダジャパン社製 商品名;ゼフリム3300−B
【0040】
(実施例1)
金属成分液の調製として、塩化錫(和光純薬製 試薬特級)12.5g及びクエン三酸ナトリウム(和光純薬製 試薬特級)6.25gを375gの純水で溶解し、メタノールにて1%濃度に調整したロジン(荒川化学工業製 商品名マルキードNo.34)を0.25g加えてナスフラスコで攪拌し、この水溶液を20%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整してから硝酸銀(和光純薬製 試薬特級)0.05gを加えた。その後、2.5%テトラヒドロほう酸ナトリウム水溶液を別の容器に入れ、前記の調整した金属成分液を300rpmで攪拌させながら加え1時間攪拌した。
【0041】
攪拌後、還元反応により得られた錫合成液を遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)で分離させて上澄み液を除去し、残りの沈殿粒子にアセトンを混合後、再び遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)にて上澄み液を除去して洗浄を行った。これに、メタノールを加えて遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)を行った。さらに、遠心分離後の上澄み液にエチレングリコールを加えた後、エバポレーターにて脱メタノール処理および溶媒置換処理を行い、1μmフィルターで通液したものを錫微粒子の分散液として回収した。得られた錫微粒子の300℃における有機物分解率は−15.71%であった。
【0042】
(実施例2)
実施例1のロジンを商品名マルキードNo.33(荒川化学工業製)に変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。得られた錫微粒子の300℃における有機物分解率は−13.57%であった。
【0043】
(実施例3)
実施例1の脱メタノール処理および溶媒置換処理をグリセリンに変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。
【0044】
(実施例4)
実施例2の脱メタノール処理および溶媒置換処理をグリセリンに変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。
【0045】
(実施例5)
実施例1のロジンを商品名マルキードNo.33(荒川化学工業製)に変更し、脱メタノールおよび溶媒置換処理を実施例4のグリセリン量の1/10とした以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。
【0046】
(比較例1)
金属成分液の調製として、塩化錫(和光純薬工業製 試薬特級)12.5g及びクエン三酸ナトリウム(和光純薬工業製 試薬特級)6.25gを375gの純水で溶解し、PVP(ポリビニルピロリドン東京化成工業製 試薬K−15)を0.25g加えてナスフラスコで攪拌し、この水溶液を20%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整してから硝酸銀(和光純薬工業製 試薬特級)0.05gを加えた。その後、2.5%テトラヒドロほう酸ナトリウム水溶液を別の容器に入れ、前記の調整した金属成分液を300rpmで攪拌させながら加え1時間攪拌した。
【0047】
攪拌後、還元反応により得られた錫合成液を遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)で分離させて上澄み液を除去し、残りの沈殿粒子にアセトンを混合後、再び遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)にて上澄み液を除去して洗浄を行った。これに、メタノールを加えて遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)を行った。得られた錫微粒子の300℃における有機物分解率は−1.28%であった
【0048】
(比較例2)
金属成分液の調製として、塩化錫(和光純薬工業製 試薬特級)12.5g及びクエン三酸ナトリウム(和光純薬工業製 試薬特級)6.25gを375gの純水で溶解し、メタノールにて1%濃度に調整したロジン(荒川化学工業製 商品名マルキードNo.34)を0.25g加えてナスフラスコで攪拌し、この水溶液を20%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整してから硝酸銀(和光純薬工業製 試薬特級)0.05gを加えた。その後、2.5%テトラヒドロほう酸ナトリウム水溶液を別の容器に入れ、前記の調整した金属成分液を300rpmで攪拌させながら加え1時間攪拌した。
【0049】
攪拌後、還元反応により得られた錫合成液を遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)で分離させて上澄み液を除去し、残りの沈殿粒子にアセトンを混合後、再び遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)にて上澄み液を除去して洗浄を行った。これに、メタノールを加えて遠心分離(回転数3500rpm、時間10分)を行った。
【0050】
(比較例3)
実施例1のロジンを商品名 中国重合ロジン 140(荒川化学工業製)に変更したが、ロジンが水およびメタノールに不溶であったため、実施例1と同様に錫粒子を合成することができなかった。
【0051】
(比較例4)
実施例1のロジンを商品名 白菊ロジン(荒川化学工業製)に変更したが、ロジンが水およびメタノールに不溶であったため、実施例1と同様に錫粒子を合成することができなかった。
【0052】
(比較例5)
実施例1のロジンを商品名 Zephrym3300B(クローダジャパン製)に変更した以外は、実施例1と同様にして錫粒子の分散液を調製した。
【0053】
上記実施例1〜5及び比較例1〜5に関する情報をまとめて表1に示す。
【0054】
【表1】