特許第5830479号(P5830479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5830479
(24)【登録日】2015年10月30日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20151119BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20151119BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20151119BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01B7/00 306
   H02G1/14
   H01R4/62 A
   H01R4/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-32354(P2013-32354)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-164821(P2014-164821A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2014年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】木原 泰
(72)【発明者】
【氏名】折戸 博
(72)【発明者】
【氏名】川村 幸大
(72)【発明者】
【氏名】外池 翔
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−161392(JP,A)
【文献】 特開2011−165406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01R 4/18
H01R 4/62
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯線が絶縁体で被覆された絶縁被覆部および前記絶縁被覆部の長手方向先端から芯線が露出した芯線露出部を有する電線と、前記絶縁被覆部に圧着される被覆圧着部および前記芯線露出部に圧着される芯線圧着部を有する圧着端子とを含むワイヤハーネスであって、
前記芯線圧着部および前記被覆圧着部は、前記電線が前記長手方向へ挿入可能であって周方向において水密な断面中空形状を有し、
前記圧着端子は、前記芯線圧着部の前記被覆圧着部とは反対側に位置し、前記中空形状の内面が互いに水密にされた封止部と、
前記被覆圧着部に設けられ径方向内側に突出した凸条部とを備え、
前記凸条部は、前記長手方向における寸法が、前記絶縁体の厚さ寸法以下であって、
前記凸条部は、前記被覆圧着部の周方向に環状に設けられ、前記被覆圧着部の長手方向に離間して2つ設けられ、
2つの前記凸条部の前記被覆圧着部の長手方向の離間寸法は前記絶縁体の厚さ寸法の5倍以下であることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
2つの前記凸条部の内、前記封止部側に位置する前記凸条部の径方向の寸法が、前記被覆圧着部の開口側に位置する前記凸条部の径方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
2つの前記凸条部の内、前記被覆圧着部の開口側に位置する前記凸条部の径方向の寸法が、前記封止部側に位置する前記凸条部の径方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記芯線はアルミニウム系材料で構成され、前記芯線圧着部が銅系材料で構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に用いられるワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、電気導電性に優れた導電線が使用されるワイヤハーネスが知られる。ワイヤハーネスは、電線に取り付けられ他の機器等との接続に用いられる圧着端子を含む。電線は、絶縁体で被覆された被覆部と、被覆部先端から芯線が露出する導体部分の露出部とを有し、圧着端子が被覆部および露出部のそれぞれに圧着されることによって、導電性のワイヤハーネスが構成される。軽量化の観点から、芯線材料としてアルミニウムを用いた電線が注目される。圧着端子としては、電気特性に優れる銅が使用されることが多い。
【0003】
例えばアルミニウムと銅のような異種金属の接触部分に水分が付着すると、標準電極電位の違いから、いわゆる電食が発生する恐れがある。特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいから、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、芯線と圧着端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、さらには断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
【0004】
このような異種金属が接触するワイヤハーネスにおいて、電線と圧着端子との接続部を覆うように樹脂材を充填したものがある(特許文献1)。樹脂材を充填することによって、電線と圧着端子との接触部分に水分が付着するのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−111058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、樹脂材を別途充填しなければならないので、製造工程が複雑になり、その分、製造工程における管理も複雑化するという問題が生じる。また、工程が複雑になった分、ワイヤハーネス全体のコストも上がってしまう。従って、樹脂材を用いない止水方法が望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、樹脂材を用いずに電線との接触部分への水分の付着を予防可能であり、かつ、製造工程の簡略化を図ることが可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために本発明は、導電性の芯線が絶縁体で被覆された絶縁被覆部および前記絶縁被覆部の長手方向先端から芯線が露出した芯線露出部を有する電線と、前記絶縁被覆部に圧着される被覆圧着部および前記芯線露出部に圧着される芯線圧着部を有する圧着端子とを含むワイヤハーネスであって、前記芯線圧着部および前記被覆圧着部は、前記電線が前記長手方向へ挿入可能であって周方向において水密な断面中空形状を有し、前記圧着端子は、前記芯線圧着部の前記被覆圧着部とは反対側に位置し、前記中空形状の内面が互いに水密にされた封止部と、前記被覆圧着部に設けられ径方向内側に突出した凸条部とを備え、前記凸条部は、前記長手方向における寸法が、前記絶縁体の厚さ寸法以下であって、前記凸条部は、前記被覆圧着部の周方向に環状に設けられ、前記被覆圧着部の長手方向に離間して2つ設けられ、2つの前記凸条部の前記被覆圧着部の長手方向の離間寸法は前記絶縁体の厚さ寸法の5倍以下であることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0009】
2つの前記凸条部の内、前記封止部側に位置する前記凸条部の径方向の寸法が、前記被覆圧着部の開口側に位置する前記凸条部の径方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0010】
2つの前記凸条部の内、前記被覆圧着部の開口側に位置する前記凸条部の径方向の寸法が、前記封止部側に位置する前記凸条部の径方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0011】
前記芯線はアルミニウム系材料で構成され、前記芯線圧着部が銅系材料で構成されてもよい。
【0012】
本発明によれば、圧着端子の芯線圧着部が電線の芯線露出部に圧着され、被覆圧着部が絶縁被覆部に圧着され、さらに、被覆圧着部に凸条部を設けるから、樹脂材を用いずに、水分の侵入を防止することができ、電線と圧着端子との接触部分に水分が付着するのを予防することができる。また、その分製造工程の簡略化を図ることができ、さらにその分のコスト上昇を抑えられる。
【0013】
また、凸条部は、絶縁被覆部の周方向に環状に設けられるので、その周方向全域において、水密に維持することができる。
【0014】
また、凸条部は、長手方向に2つ設けることとしたので、より一層水密性を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂材を用いずに電線との接触部分への水分の付着を予防可能であり、かつ、製造工程の簡略化を図ることが可能なワイヤハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態のワイヤハーネスを示す分解斜視図。
図2図1のII−II線断面図。
図3】圧着後のワイヤハーネスの斜視図。
図4図3のIV−IV線断面図。
図5】ワイヤハーネスの圧着方法の説明図。
図6】圧着刃型を大径部で切断したときの断面図。
図7図6のVIIで囲った部分の拡大図であって、ワイヤハーネスの圧着時を示す説明図。
図8】ワイヤハーネスの部分拡大図であって、被覆圧着部で切断したときの断面図。
図9図4の被覆圧着部近傍の部分拡大図であって、電線の絶縁体も切断したときの断面図。
図10】第2の実施形態のワイヤハーネスの斜視図。
図11図10のXI−XI線断面図。
図12図11の被覆圧着部近傍の部分拡大図であって、電線の絶縁体も切断したときの断面図。
図13】実験方法の概要説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
図1はワイヤハーネス1の分解斜視図であって、加締め前の状態を示し、図2図1のII−II線断面図である。ワイヤハーネス1は、長手方向Xおよびこれに直交する幅方向Yを有し、電線10と圧着端子20とを含む。電線10は、導電性を有する芯線16が絶縁体15で被覆された絶縁被覆部12と、絶縁被覆部12の長手方向X先端から芯線16の一部が露出した芯線露出部11を有する。芯線16は、アルミニウムやアルミニウム合金等のアルミニウム系材料で構成され、より詳細には、複数のアルミニウム合金線等を撚って形成する。
【0018】
圧着端子20は、長手方向Xに延びるとともに、長手方向Xの前端部20Aに位置する図示しない雄型コネクタを挿入可能なボックス部21と、後端部20Bに位置する電線10を挿入可能な圧着部22とを有する。ボックス部21には、雄型コネクタの挿入タブに接触する弾性接触片21Aを備える。
【0019】
圧着部22は、芯線圧着部23と、被覆圧着部24とを含む。芯線圧着部23は、被覆圧着部24とボックス部21との間に位置する。被覆圧着部24は、後端部20Bに開口するとともに、電線10が後端部20Bから挿入可能なように、長手方向Xへ延びる断面中空形状を有する。圧着端子20は、表面が錫メッキされた黄銅等の銅合金条を平面展開した端子形状に打ち抜いた後(図示せず)、中空四角柱体のボックス部21と中空円柱体の圧着部22とから構成される立体的な端子形状に曲げ加工されて形成される。さらに、ボックス部21と圧着部22との間には、中空形状の内面を互いに水密に接触させた封止部26が設けられる。封止部26は、圧着部22の内面を互いに接触させ、水密に接合されることによって形成される。このような接合の方法として、例えば圧着やレーザ溶接を用いることができる。
【0020】
圧着部22は、長手方向Xへ延びる接合部29によって水密に接合される。詳細には、端子形状に打ち抜いた銅合金条の端部を中空形状になるように互いに突合せ、突合せた部分をレーザ溶接等の溶接によって接合部29を形成することができる。
【0021】
上記のような圧着部22において、被覆圧着部24には、径方向内側へ突出する凸条部25が形成される。凸条部25は、被覆圧着部24の周方向において環状に形成される。
【0022】
図3は、圧着端子20に電線10を挿入後、芯線圧着部23および被覆圧着部24を径方向内側へ加締めたものであり、図4は、図3のIV−IV線断面図である。芯線圧着部23には電線10の芯線露出部11が位置し、被覆圧着部24には絶縁被覆部12が位置するように、電線10が挿入される。圧着部22の長手方向Xにおける寸法は、芯線露出部11の長手方向Xにおける寸法よりも大きい。したがって、電線10を圧着部22に挿入すると、芯線露出部11と絶縁被覆部12とが圧着部22の内周に対向して位置する。
【0023】
圧着部22に芯線露出部11および絶縁被覆部12を挿入した状態で圧着部22を加締めることによって、芯線圧着部23と芯線露出部11の芯線16とが圧着され、被覆圧着部24と絶縁被覆部12の絶縁体15とが圧着される。
【0024】
被覆圧着部24には、凸条部25が設けられるから、圧着部22を加締めると、凸条部25によって絶縁被覆部12の一部が他の部分よりも強い力で圧着され、絶縁被覆部12の絶縁体15には高圧着部13が形成される。
【0025】
図5は、ワイヤハーネス1の圧着方法の説明図である。図示したように、芯線圧着部23および被覆圧着部24は、圧着工具30によって圧着することができる。圧着工具30は、上刃型31と下刃型32とによって構成される。上刃型31は、長手方向Xに延びる半円柱状の空洞を有し、被覆圧着部24に対応する大径部34と、芯線圧着部23に対応するとともに大径部34よりも小さい半径を有する小径部33とを備える。小径部33および大径部34のいずれも、加締め前の圧着部22の直径よりも、その径が小さい。下刃型32は、長手方向Xに延びる半円柱状の空洞を有し、芯線圧着部23および被覆圧着部24に対応するいずれの部分もその半径は同じである。
【0026】
図6は、圧着工具30の大径部34における断面図である。上刃型31に噛み合った状態の下刃型32を仮想線で示す。図示したように、上刃型31の大径部34の半径よりも、下刃型32の半径のほうが僅かに小さく、これら圧着工具30でワイヤハーネス1を圧着処理する場合には、上刃型31の内側に下刃型32が噛み合う。このように噛み合った状態において、上刃型31の内面と下刃型32の内面とで、ほぼ円形となる。この時の直径は、加締め前の被覆圧着部24よりも小さいから、加締め処理によって被覆圧着部24の直径を小さくするように押圧し、電線10の絶縁被覆部12と被覆圧着部24とを圧着することができる。
【0027】
なお、図示しないが圧着工具30の上刃型31の小径部33の内面と、下刃型32の内面とで構成される空間の直径は、芯線圧着部23の直径よりも小さく、かつ、加締め後の被覆圧着部24の直径よりも小さい。したがって、芯線圧着部23は、被覆圧着部24よりも強圧着となる。
【0028】
圧着工具30の上刃型31および下刃型32を噛み合わせたとき、小径部33によって長手方向Xへ延びる中空円筒形が形成されるが、この形状に限定するものではない。圧着端子20と電線10の芯線露出部11とが圧着される限りにおいて、さまざまな形状のものを採用することができる。例えば、扁平なものでもよいし、その断面形状が凸状になるようなものであってもよい。
【0029】
図7は、図6の圧着工具30のVIIで囲った部分の拡大図に、さらに電線10および圧着端子20を示したものである。上刃型31と下刃型32との噛み合い部分において、上刃型31の内面と、下刃型32の外面との間に僅かな隙間35が形成される。この隙間35に向かって、被覆圧着部24の押圧力が逃げるように移動し、被覆圧着部24には段部36が形成される可能性がある。このように段部36が形成されると、絶縁被覆部12の絶縁体15にも径方向外側に突出する窪み14が形成される可能性があり、この部分における圧着力が低下し、しいては、止水性が低下することが懸念される。
【0030】
図8は、ワイヤハーネス1の被覆圧着部24近傍を拡大したときの斜視図である。上述したように、圧着工具30を用いることによって、圧着端子20の被覆圧着部24には、長手方向Xに延びる段部36および窪み14が形成される可能性があるが、凸条部25を設けることによって段部36および窪み14の少なくとも一部を径方向内側へと押圧することができる。したがって、少なくとも凸条部25を設けた位置においては、圧着力の低下を予防することができ、水分が圧着端子20の後端部20Bから侵入するのを確実に防止することができる。
【0031】
図9は、凸条部25を拡大した断面図である。この実施形態において、凸条部25の長手方向Xの寸法L1は、圧着部22での押圧の作用を受けていない部分における電線10の絶縁体15の厚さ寸法L2以下であって、好ましくは押圧の作用を受けている部分における絶縁体15の厚さ寸法以下である。圧着部22での押圧の作用を受けていない部分における絶縁体15の厚さ寸法L2とは、圧着部22に挿入されていない、露出された部分における絶縁体15の厚さ寸法である。換言すれば、圧着前の絶縁体15の厚さ寸法である。また、圧着部22の押圧力の作用を受けている部分における絶縁体15の厚さ寸法とは、圧着部22に挿入された部分であって、圧着後における絶縁体15の厚さ寸法である。絶縁体15は、圧着部22が圧着されることによって、圧着前よりもその厚さ寸法が小さくなる。
【0032】
凸条部25を上記のような寸法にすることによって、被覆圧着部24の絶縁体15には周方向において環状に高い圧着力が作用する高圧着部13を設けることができる。特に、凸条部25の長手方向Xにおける寸法が小さいと、絶縁体15に略直交するように凸条部25が突出し、弾性を有する絶縁体15が急激に屈曲する。従って、急激な屈曲により絶縁体15と凸条部25との密着力が上がるので、後端部20Bからの水分の侵入を予防することができる。また、絶縁体15が長手方向Xに移動しにくくなるので、電線10が後端部20Bからの抜け方向に引っ張られたときも、抜けにくくなる。なお、絶縁体15の材質によっても異なるが、凸条部25の寸法L1が小さすぎると、経年劣化によって圧着力の低下が生じる可能性があるので、その寸法は適宜変更することが望ましい。
【0033】
凸条部25の径方向の寸法L3は、絶縁被覆部12に形成された窪み14の寸法L4以上である。窪み14の寸法L4とは、窪み14が形成されない理想の絶縁体15の外面である理想外面17と、窪み14が形成された場合に理想外面17からの距離が最も大きくなる最大点までの径方向における寸法である(図7参照)。したがって、凸条部25によって、窪み14が部分的に完全に押圧され、窪み14によって圧着力が低下するのを予防することができる。
【0034】
絶縁被覆部12において、芯線16を覆う絶縁体15として、弾性を有するポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン等、この技術の分野において通常用いられるものを選択することができる。
【0035】
上記のようなワイヤハーネス1において、電線10の芯線16はアルミニウム系材料で構成され、圧着端子20の芯線圧着部23は銅系材料で構成されているから、芯線圧着部23では、異種金属が接触する。異種金属が接触した部分では、水分が付着することによって電食の可能性があるが、この実施形態では、圧着部22への水分の侵入を防止することができるので、電食を予防することができる。また、この実施形態によれば、絶縁体15の材料として通常用いられる材料を用いても、確実に圧着部22への水分の侵入を防止することができる。
【0036】
この実施形態において、凸条部25の断面形状は略矩形にしているが(図9参照)、この形状に限定するものではない。その断面形状が、半円形、三角形などの多角形等を有するものであってもよい。また、凸条部25の径方向内側部分の断面形状が、長手方向Xに平行延びる軸線に傾斜するようにしてもよい。すなわち、前端部20A側から後端部20B側に向かってその径が大きくなるように傾斜していてもよい。このように傾斜することによって、後端部20B側から電線10を挿入したときには比較的挿入しやすいが、その逆方向には移動しにくく、挿入した電線10を抜けにくくすることができる。
【0037】
圧着工具30は上刃型31と下刃型32との二つの刃型によって圧着端子20の周囲から圧着するようにしているが、三つ以上の刃型を有するものであってもよい。例えば、三つの刃型を有する圧着工具30を用いた場合には、絶縁被覆部12の絶縁体15には三条の窪み14が形成される可能性がある。しかし、凸条部25を環状にすることによって、いずれの窪み14においても圧着力の低下を抑制することができる。
【0038】
<第2の実施形態>
第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成要件については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その構成要件については詳細な説明を省略する。この実施形態では、凸条部を長手方向Xに二つ設けたことを特徴とする。
【0039】
図10は第2の実施形態のワイヤハーネス1の斜視図であって、加締め後の状態を示し、図11図10のXI−XI線断面図である。被覆圧着部24には、凸条部25A,25Bが設けられる。凸条部25A,25Bは、圧着部22の周方向においてそれぞれ連続した環状に形成される。凸条部25Aと凸条部25Bとは、長手方向Xに離間して設けられる。
【0040】
図12は、凸条部25A,25Bを拡大した斜視図である。凸条部25Aと凸条部25Bとの離間寸法D1は、電線10の絶縁体15の厚さ方向の寸法D2の5倍以下である。離間寸法D1は、対向する凸条部25Aおよび凸条部25Bの内端の間を測定する。また、絶縁体15の厚さ寸法D2とは、圧着部22での押圧の作用を受けていない部分における寸法をいう。具体的には、圧着部22に挿入されていない、露出された部分における絶縁体15の厚さ寸法である。換言すれば、圧着前の絶縁体15の厚さ寸法である。
【0041】
<実験例>
上記のようなワイヤハーネス1において、電線10の絶縁被覆部12から圧着端子20に向かって空気を送り、後端部20Bから空気が漏れるか否かについて実験した。図13には、実験方法の概要を示す。実験は、水を入れた水槽41中に電線10を圧着した圧着端子20を入れ、電線10の端部から圧着端子20に向かってレギュレータ42によって加圧空気を送った。加圧空気は、50kpaで30秒間吐出した。
【0042】
ワイヤハーネス1として、対照、サンプル1〜4を準備し、それぞれのサンプル数をn=10とした。対照は、被覆圧着部24に凸条部を設けない圧着端子20を用いたワイヤハーネスである。サンプル1は、二つの凸条部25A,25Bの離間寸法D1が絶縁体15の厚さ寸法D2の8倍である圧着端子20を用いたワイヤハーネスである。サンプル2は、離間寸法D1が、絶縁体15の厚さ寸法D2の6倍である圧着端子20を用いたワイヤハーネスである。サンプル3は、離間寸法D1が、絶縁体15の厚さ寸法D2の5倍である圧着端子20を用いたワイヤハーネスである。サンプル4は、離間寸法D1が、絶縁体15の厚さ寸法D2の4倍である圧着端子20を用いたワイヤハーネスである。サンプル3およびサンプル4はこの実施形態にかかるワイヤハーネスである。また、対照については、120℃で24時間加熱したワイヤハーネスおよびそのような加熱をしないワイヤハーネスを準備した。サンプル1〜4では、120℃で24時間、および120時間加熱したワイヤハーネスおよびそのような加熱をしないワイヤハーネスを準備した。ワイヤハーネス1は、高温環境下において使用されることもあり、特にこのように高温環境下で使用された場合には、絶縁体15の弾性が低下し、圧着部22と絶縁被覆部12との間の圧着力が低下する傾向にある。この実験では、高温環境下におけるワイヤハーネス1の使用の耐久性を確認することができる。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示したように、圧着端子20の後端部20Bからの空気の漏れがなかったものについては、「N」を記入し、漏れがあった場合には、漏れたときの圧力を記入している。空気の漏れは、気泡を目視で確認することによりおこなった。
【0045】
凸条部25を設けない対照において、加熱処理をしない場合には、空気の漏れはいずれも確認されなかったが、24時間の加熱処理では、いずれも1KPa以下で空気の漏れが確認された。サンプル1〜4においても、加熱処理をしない場合には、空気の漏れはいずれも確認されなかった。
【0046】
サンプル1において、24時間の加熱処理では、7つのサンプルで空気の漏れは確認されなかったが、1つが30KPa、2つが20KPaの圧力で空気の漏れが確認された。120時間の加熱処理では、いずれも1〜3KPaの圧力で空気の漏れが確認された。
【0047】
サンプル2において、24時間の加熱処理では、8つのサンプルで空気の漏れは確認されなかったが、1つが40KPa、1つが50KPaの圧力で空気の漏れが確認された。120時間の加熱処理では、5つのサンプルで空気の漏れは確認されなかったが、残りの5つのサンプルで5〜30KPaの圧力で空気の漏れが確認された。
【0048】
サンプル3およびサンプル4では、24時間の加熱処理、120時間の加熱処理のいずれにおいても空気の漏れは確認されなかった。したがって、凸条部25の離間寸法D1は、絶縁体15の厚さ寸法D2の5倍以下であることによって、高温環境下でワイヤハーネス1を使用した場合であっても、圧着端子20内部、特に芯線圧着部23内を水密に保持することができることが証明された。離間寸法D1を絶縁体15の厚さ寸法D2の5倍以下にすることによって、凸条部25Aおよび凸条部25Bの長手方向Xにおける離間部に絶縁体15が食い込むように入ることができるので、水密性が向上するものと推察される。
【0049】
上記のとおり、凸条部25A,25Bの離間寸法D1を絶縁体15の厚さ寸法D2の5倍以下にすることによって、後端部20Bからボックス部21側へ水分が浸入するのを確実に防止することができる。すなわち、芯線圧着部23を水密に保持することができる。したがって、芯線16と圧着端子20との接触による電食を確実に防止することができる。
【0050】
第2の実施形態において、二つの凸条部25A,25Bの径方向の寸法は同程度としている。しかし、これらを互いに異なる寸法にしてもよい。ボックス部21側に位置する凸条部25Aを後端部20B側に位置する凸条部25Bよりも大きくすることによって電線10が挿入しやすくなる。また、凸条部25Bを凸条部25Aよりも大きくすることによって、芯線露出部11の屈曲性を維持し、芯線圧着部23に対して圧着した状態を保つことができる。
【0051】
凸条部25A,25Bの断面形状は略矩形にしているが、この形状に限られるものではない。例えば、その断面形状が円形、三角形などの多角形であってもよい。また、凸条部25Aと凸条部25Bとでその断面形状が異なるものであってもよい。
【0052】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1…ワイヤハーネス
10…電線
11…芯線露出部
12…絶縁被覆部
15…絶縁体
16…芯線
20…圧着端子
21…ボックス部
22…圧着部
23…芯線圧着部
24…被覆圧着部
25…凸条部
25A…凸条部
25B…凸条部
26…封止部
X…長手方向
Y…幅方向
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