(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電膜形成工程は、前記合金薄膜が形成された前記基体をメッキ液に浸漬し、前記合金薄膜に、前記メッキ液に対して負電圧を印加し、前記メッキ液に含有され、銅を含む金属の正イオンを前記合金薄膜の表面に付着させて前記導電膜を成長させる成長工程を有する請求項4記載の搭載装置の製造方法。
前記合金薄膜形成工程で形成された前記合金薄膜を一種類のエッチング液に接触させ、前記エッチング液に接触された部分の前記合金薄膜を溶解させて除去し、前記合金薄膜をパターニングするエッチング工程を有する請求項5記載の搭載装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
現在では、LSI等の半導体素子は、樹脂の基体に配線膜が形成された単層基板が複数層積層された搭載基板に搭載されており、従って、樹脂の表面に密着性の高い金属膜を形成する技術が求められている。特に、銅薄膜は低抵抗の利点がある反面、樹脂との密着性が低いことから、樹脂と銅薄膜との間には、他の金属から成る密着層が形成されている。
【0003】
図7の符
号100は、そのような、従来技術の搭載装置であり、複数の単層基板111
1、111
2が積層されている。
この搭載装置100の各単層基板111
1、111
2は、樹脂から成る基体103を有しており、基体103の表面には配線膜110が設けられている。また、基体103には接続孔102が設けられており、接続孔102の内部には、積層された単層基板111
1、111
2の配線膜110同士を接続する金属プラグ119が設けられている。
【0004】
図
7(a)は、単層基板111
1の上に、最上層の単層基板111
2の基体103が貼付された状態である。基体103には、接続孔102が設けられており、接続孔102の底面には、下層の単層基板111
1の配線膜110の表面が露出されている。
【0005】
先ず、
図5(b)に示すように、Ti等の密着用の金属を含有するスパッタリングターゲットをスパッタリングし、
図5(a)の基体103の表面と、接続孔102の内周側面と、底面に露出する配線膜110とに接触したTi薄膜等の密着層118を形成し、次いで、銅のスパッタリングターゲットをスパッタリングし、密着層118の表面に、銅薄膜から成るシード層115を形成する。
【0006】
パターニングされたレジスト膜を、シード層115の表面上に配置して、接続孔102の内部のシード層115と、基体103の表面上の所定位置のシード層115とを露出させ、メッキ液に浸漬して、露出したシード層115をメッキ液に接触させ、シード層115とメッキ液との間に、メッキ液に対してシード層115が負電位になる電圧を印加し、電解メッキ法によって露出したシード層115の表面に銅を析出させ、接続孔102の内部と、基体103の表面上とに、
図5(c)に示すように、銅薄膜106、107を形成する。この状態では、銅薄膜106、107は接触し、接続孔102の内部は銅から成る銅薄膜106で充填されており、銅薄膜106、107は、シード層115よりも厚く形成されている。同図(c)の符
号128は、レジスト膜である。
【0007】
この状態では、密着層118とシード層115とは、銅薄膜106
及び107の下方に位置する部分と、レジスト膜128の下方に位置する部分とがあり、レジスト膜128を剥離し、レジスト膜128の下方に位置していたシード層115を露出させた後、先ず、銅のエッチング液に浸漬し、同図(d)に示すように、銅薄膜106、107の下方には、パターニングされたシード層105を残しながら露出しているシード層115をエッチング除去し、除去された部分に密着層118を露出させる。
【0008】
次に、Tiを溶解させるTiエッチング液に浸漬すると、
図7に示されたように、銅薄膜106、107及びシード層105の下方に位置する密着層108を残しながら露出された密着層118をエッチング除去し、除去した部分に基体103を露出させる。
【0009】
接続孔102内の密着層108とシード層105と銅薄膜106とで、接続孔102を充填する金属プラグ119が構成されており、また、基体103の表面上の密着層108とシード層105と銅薄膜107とで、配線膜110が構成されている。
【0010】
銅薄膜106、107と基体103表面に露出する樹脂との間の密着性は低く、銅薄膜106、107は樹脂から剥離しやすいが、Ti薄膜である密着層108は樹脂との間で密着性が高く、また、銅薄膜であるシード層105との間の密着性も高いから、シード層105と銅薄膜106、107とは基体103から剥離しない。
【0011】
しかしながら、上記製造工程から分かるように、銅薄膜106、107を形成するためには密着層108とシード層105との二層を形成する必要があり、配線膜110が三層構造になって、製造工程が増加する。
【0012】
また、密着層108は、銅以外のTi等の元素を多量に含有するため、密着層118と、銅薄膜であるシード層115とは、同じエッチング液でエッチングすることができず、エッチング工程が複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、樹脂が露出する基体上に、剥離しない導電膜を簡単に形成できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明は、基体と、少なくとも前記基体の表面に露出した
エポキシ樹脂に接触し、所定パターンに形成された配線膜とを有し、電子部品を前記配線膜に電気的に接続させて前記基体上に搭載させる搭載装置であって、前記配線膜は、Cuを50原子%よりも多く含有し、Niを5原子%以上30原子%以下含有し、Alを3原子%以上10原子%以下含有し、前記基体の表面と接触された合金薄膜と、前記合金薄膜の表面と接触し、Cuを前記合金薄膜よりも多く含有する導電性の導電膜と、を有する搭載装置である。
また、本発明は、前記基体はガラス繊維を含有し、前記基体の表面には、前記
エポキシ樹脂と前記ガラス繊維とが露出された搭載装置である。
また、本発明は、前記基体には表面と裏面との間を貫通する接続孔が形成され、前記接続孔の内周面には、前記
エポキシ樹脂と前記ガラス繊維とが露出され、前記接続孔の内周面には、前記合金薄膜が接触され、前記接続孔の内周面に位置する前記合金薄膜で囲まれた部分には、前記合金薄膜と接触して前記導電膜が充填された搭載装置である。
本発明は、基体と、所定パターンに形成された配線膜とを有し、電子部品を前記配線膜に電気的に接続させて前記基体上に搭載させる搭載装置を製造する搭載装置の製造方法であって、前記配線膜は、少なくとも前記基体の表面に露出した
エポキシ樹脂に接触する合金薄膜と、前記合金薄膜と接触して配置された導電性の導電膜とを有し、真空雰囲気中に前記基体を配置し、前記真空雰囲気中にスパッタリングガスを導入し、前記真空雰囲気中に配置され、Cuを50原子%よりも多く含有し、Niを5原子%以上30原子%以下含有し、Alを3原子%以上10原子%以下含有するスパッタリングターゲットをスパッタリングして、前記基体の表面に、前記ターゲットと同じ組成の前記合金薄膜を形成する合金薄膜形成工程と、前記合金薄膜の表面に、Cuの体積含有率が前記合金薄膜よりも多い前記導電膜を形成する導電膜形成工程と、を有する搭載装置の製造方法である。
また、本発明は、前記導電膜形成工程は、前記合金薄膜が形成された前記基体をメッキ液に浸漬し、前記合金薄膜に、前記メッキ液に対して負電圧を印加し、前記メッキ液に含有され、銅を含む金属の正イオンを前記合金薄膜の表面に付着させて前記導電膜を成長させる成長工程を有する搭載装置の製造方法である。
また、本発明は、前記合金薄膜形成工程で形成された前記合金薄膜を一種類のエッチング液に接触させ、前記エッチング液に接触された部分の前記合金薄膜を溶解させて除去し、前記合金薄膜をパターニングするエッチング工程を有する搭載装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
合金薄膜を基体の表面に形成し、合金薄膜の表面に、銅の含有量が多い導電膜を形成するので、導電膜は、樹脂と接触せず、合金薄膜との間の密着性は高いので、導電膜は基体から剥離しない。
一種類のエッチング液によって合金薄膜をエッチングできるので、分離配置された銅膜を一回のエッチング工程により、一種類のエッチング液を用いてパターニングされた配線膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の符
号10は、本発明の搭載装置を示しており、符
号20は、搭載装置10が電気的に接続されたマザーボードを示している。
この搭載装置10は、支持基板14と、支持基板14の両面にそれぞれ配置された第一、第二の多層基板11、12とを有しており、第一、第二の多層基板11、12は、それぞれ複数の単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3を有している。
【0019】
各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3のうち、支持基板14に近い方を下層と呼び、遠い方を上層と呼ぶと、各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の一つ下層の位置には、他の単層基板11
1、11
2、12
1、12
2か、又は支持基板14が位置しており、
図4(g)には、第一の多層基板11の最上層の単層基板11
3と、その単層基板11
3の一つ下層の単層基板11
2の一部とが示されている。
【0020】
各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の構成は同じであり、それら単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3は、板状の基体3と、基体3に形成された複数の接続孔2と、基体3の片側の表面(接続孔2の内周面と底面を除く)に配置された複数の配線膜9と、各接続孔2を充填する金属プラグ8とをそれぞれ有している。接続孔2は、基体3に形成され、基
体3の表面と裏面との間を貫通する貫通孔である。
【0021】
支持基板14は、樹脂から成る樹脂基板14aと、樹脂基板14aに形成された複数の支持基板貫通孔14bと、各支持基板貫通孔14bの内部を充填する接続体14cと、樹脂基板14aの両面に配置された複数の配線膜14dとを有している。接続体14cは導電性を有しており、少なくとも一本の配線膜14dと電気的に接続されている。
【0022】
各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の金属プラグ8は、その金属プラグ8が位置する接続孔2を有する基体3の配線膜9に、配線膜9が設けられた表面で電気的に接続されている。
そして、各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の接続孔2は、下層の単層基板11
1、11
2、12
1、12
2の配線膜9又は、支持基板14の配線膜14d上に位置しており、各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の金属プラグ8は、下層の単層基板11
1、11
2、12
1、12
2の配線膜9又は、支持基板14の配線膜14dに電気的に接続されている。
【0023】
従って、第一、第二の多層基板11、12の最上層の単層基板11
3、12
3の配線膜9は、支持基板14の一方の面の配線膜14dと他方の面の配線膜14dとのいずれか一方にそれぞれ電気的に接続されており、支持基板14の両面の配線膜14dの間は、接続体14cを介して接続されているから、最上層の単層基板11
3、12
3の配線膜9と配線膜9の間も、金属プラグ8と接続体14cとによって、互いに電気的に接続されている。
【0024】
マザーボード20は、マザーボード本体20aと、マザーボード本体20a上に配置された配線膜20bとを有している。
第一の多層基板11の最上層の単層基板11
3の配線膜9には、半導体装置13の端子13bが固定されており、第二の多層基板12の最上層の単層基板12
3の配線膜9は、金属体24を介して、マザーボード20の配線膜20bに電気的に接続されている。
【0025】
半導体装置13の端子13bは、半導体装置本体13aの内部に配置された半導体素子の集積回路に電気的に接続されており、従って、集積回路は、搭載装置10と金属体24とを介して、マザーボード20の配線膜20bと電気的に接続されている。
【0026】
このような各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の金属プラグ8と配線膜9とについて説明すると、先ず、各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3の基体3は、樹脂から成る基板で構成されており、又は、ガラス繊維が編まれた布状基板に樹脂が含浸された複合材料によって構成されている。
【0027】
図6の基体3は、樹脂25中にガラス繊維26が含まれており、その基体3の表面と接続孔2の内周面
とは、樹脂25の表面とガラス繊維26の表面とで構成されており、樹脂25とガラス繊維26とが露出されている。
【0028】
金属プラグ8は、接続孔2の内周表面に接触して配置された合金薄膜4と、その合金薄膜4の表面に接触して配置された導電膜6とを有している。また、配線膜9は、基体3の表面に接触して配置された合金薄膜5と、その合金薄膜5の表面に接触して配置された導電膜7とをそれぞれ有している。
【0029】
合金薄膜4、5は、基体3の表面又は接続孔2の内周表面で、少なくとも基体3を構成する樹脂と接触しており、基体3がガラス繊維を含有する場合は、基体3を構成する樹脂とガラス繊維とに接触する。
【0030】
上記搭載装置10の製造工程を説明する。ここでは、既に、支持基板14の片面には第二の多層基板12が形成されており、反対の面には、最上層になる単層基板11
3以外の単層基板11
1、11
2が形成されて配置されているものとする。
【0031】
図3(a)は、その状態の仕掛基板31を示しており、表面には、この仕掛基板31における最上層の単層基板11
2が露出されている。
先ず、その単層基板11
2の表面上に、同図(b)に示すように、基体3を貼付する。
貼付する基体3は、貼付する前に接続孔2が形成されていてもよいし、基体3を貼付した後、接続孔2を形成してもよい。
【0032】
この状態の仕掛基板32では、最上層となる基体3の接続孔2の底面には、一つ下層の単層基板11
2の配線膜9が露出されており、次に、基体3の表面と接続孔2の内周側面と底面とに、合金薄膜4、5を形成する。
【0033】
図2には、合金薄膜4、5を形成するスパッタリング装置50が示されている。
このスパッタリング装置50は、搬出入室51aと、前処理室51bと、成膜室51cとを有している。
各室51a〜51cには、それぞれ真空排気装置58a〜58cが接続されており、各室51a〜51cの間のゲートバルブ59a、59bを閉じ、真空排気装置58b、58cを動作させて、前処理室51bの内部と、成膜室51cの内部とを真空排気し、前処理室51bの内部と成膜室51cの内部とに、それぞれ真空雰囲気を形成しておく。
【0034】
搬出入室51aの内部には搬送装置54が配置されており、基体3が露出する仕掛基板32を搬出入室51aの内部に搬入し、搬送装置54に取り付ける。
搬出入室51aの扉を閉じ、内部雰囲気を大気から遮断して真空排気装置58aを動作させ、搬出入室51aの内部を真空排気する。
【0035】
搬出入室51aの内部には、加熱装置56が配置されており、真空排気しながら、加熱装置56によって搬送装置54に配置された仕掛基板32を加熱する。
仕掛基板32が所定温度に昇温された後、ゲートバルブ59aが開けられ、仕掛基板32は、搬送装置54と一緒に搬出入室51aの内部から前処理室51bの内部に移動される。
【0036】
前処理室51bの内部には、イオンガン57が配置されており、搬出入室51aと前処理室51bとの間のゲートバルブ59aが閉じられた後、ガス導入系からイオンガン57に希ガス(ここではAr)が供給されると、イオンガン57の内部で希ガスイオンが生成される。生成された希ガスのイオンは前処理室51bの内部に放出される。
【0037】
仕掛基板32の基体3は、前処理室51bの真空雰囲気中に露出されており、前処理室51b内に搬入されると、イオンガン57に向けられ、希ガスイオンが放出される。希ガスイオンは、基体3の表面と、接続孔2の内周側面と、接続孔2の底面に露出する下層の単層基板11
2の導電膜7の表面とに照射され、照射された部分はクリーニングされ、活性な状態になる。
【0038】
イオンが所定時間照射されると前処理は終了し、成膜室51cとの間のゲートバルブ59bが開けられ、前処理が行われた仕掛基板32は、搬送装置54と一緒に、前処理室51bの内部から成膜室51cの内部に移動され、ゲートバルブ59bが閉じられる。
【0039】
成膜室51cの内部には、ターゲット55が配置されている。
このターゲット55は、Cuを50原子%よりも多く含有し、Niを5原子%以上30原子%以下含有し、Alを3原子%以上10原子%以下含有するターゲットである。
【0040】
成膜室51cの内部には、ガス放出装置53が設けられており、成膜室51cの内部を真空排気装置58cによって継続して真空排気し、真空雰囲気を維持しながら、ガス供給装置52からガス放出装置53にスパッタリングガス(アルゴンガス等の希ガス)を供給し、ガス放出装置53から成膜室51cの内部にスパッタリングガスを放出させ、ターゲット55に電圧を印加し、スパッタリングガスのプラズマを生成する。
【0041】
前処理がされた基体3の表面はターゲット55と対面されており、生成したプラズマによってターゲット55がスパッタリングされると、スパッタリング粒子は基体3の前処理がされた表面に付着し、その表面に、CuとNiとAlとの含有率がターゲット55と同じ合金薄膜が成長する。
【0042】
図3(c)の符
号33は、その合金薄膜15が所定膜厚に形成された仕掛基板であり、合金薄膜15は、CuとNiとAlとの含有率が、それぞれ50原子%よりも多い含有率、5原子%以上30原子%以下の含有率、3原子%以上10原子%以下の含有率であり、即ち、合金薄膜15は、ターゲット55と同じ組成の薄膜である。
【0043】
合金薄膜15は、基体3の表面(接続孔2の内周面は除く。)と、接続孔2の内周面と、接続孔2の底面の導電膜7とに接触しており、接続孔2の底面では、一つ下層の単層基板11
2の配線膜9と接触して、電気的に接続されている。一つ下層の単層基板11
2の配線膜9は、合金薄膜5と導電膜7とで構成されている。
【0044】
なお、最上層の合金薄膜15は、イオンガン57によってイオンが照射された表面に形成されているので、密着強度は、照射しなかった場合と比べると高くなっている。
合金薄膜15が所定膜厚に形成された後、ターゲット55への電圧印加とスパッタリングガス導入が停止され、スパッタリングは終了する。
【0045】
次いで、ゲートバルブ59a、59bが開けられて、合金薄膜15が形成された仕掛基板33は、前処理室51bを通過して、内部が真空雰囲気にされた搬出入室51aに移動される。
ゲートバルブ59a、59bが閉じられた後、搬出入室51aに気体が導入され、搬出入室51aの内部が大気圧になった後、合金薄膜15が形成された仕掛基板33は搬出入室51aから取り出される。
【0046】
次いで、
図3(d)に示すように、合金薄膜15の表面に、パターニングされたレジスト膜28が配置される。
このレジスト膜28には、最上層の基体3の各接続孔2の上方と、その基体3の表面上の合金薄膜15の所定位置の上方とに、開口29が形成されており、開口29の底面下には、各接続孔2の底面と内周側面に配置された合金薄膜15、又は、基体3の表面上に位置する合金薄膜15が露出されている。
【0047】
その状態の仕掛基板33の開口29底面下に露出する合金薄膜15の表面に、Cuの含有率(原子%)が合金薄膜15よりも高く、抵抗率が小さい材料から成る導電膜を、合金薄膜15と接触させて形成する。
【0048】
導電膜の具体的な形成方法については、例えば、レジスト膜28の開口29底面と、基体3の表面の所定位置上とに合金薄膜15が露出する状態の仕掛基板33を、銅イオンを含むメッキ液に浸漬し、露出した合金薄膜15をメッキ液に接触させ、メッキ液に浸漬された銅電極と、合金薄膜15とを電源に接続し、電源を動作させ、銅電極を介して、合金薄膜15とメッキ液との間に電圧を印加し、メッキ液中の正の金属イオンを合金薄膜15のメッキ液と接触する部分に付着させ、銅を合金薄膜15よりも多く含有する導電膜を成長させ、
図4(e)に示すように、接続孔2上の開口29の底面下と、基体3の表面上の開口29の底面下とに、導電膜6、7が形成された仕掛基板34を作成する。
【0049】
一般に、スパッタ法よりも電解メッキ法の方が成長速度が大きくなっており、スパッタ法で形成された合金薄膜15の膜厚よりも、電解メッキ法で形成した導電膜6、7の方の膜厚が厚くされており、この仕掛基板34では、接続孔2内の合金薄膜15の表面に形成された導電膜6は、接続孔2の内部を充填し、その上部は、基体3の表面上の合金薄膜15の表面よりも上方に位置している。
【0050】
次に、
図4(f)に示すように、レジスト膜28を剥離すると、導電膜6、7が露出する部分の間に、合金薄膜15が露出する。
接続孔2の内部の導電膜6は、基体3の表面上の導電膜7に接続されているが、基体3の表面上の導電膜7には、互いに分離された導電膜
7があるものの、レジスト膜28を剥離した状態では、各導電膜6、7は、合金薄膜15によって、互いに電気的に接続された状態である。
【0051】
次いで、その状態の仕掛基板34を、銅をエッチングするエッチング液に浸漬すると、露出し、エッチング液に接触した部分の合金薄膜15がエッチング液に溶解してエッチング除去され、
図4(g)に示すように、合金薄膜15が除去された部分には、合金薄膜15の下に位置していた基体3の表面が露出し、導電膜6、7がパターニングされた最上層の単層基板11
3が形成される。
【0052】
各単層基板11
1〜11
3、12
1〜12
3では、接続孔2の内部は、接続孔2の内部の導電膜6と、その導電膜6と接続孔2の内周面との間に位置する合金薄膜4とで、金属プラグ8が構成されており、基体3上には、導電膜7と、その導電膜7の下に位置する合金薄膜5とで配線膜9が構成されている。接続孔2の内周面に形成された合金薄膜4で囲まれた空間は、導電膜
6で充填されており、従って、接続孔2は、金属プラグ8によって充填されている。
【0053】
基体3の表面に露出する樹脂に対し、純銅の薄膜の密着性は悪い。
本願発明では、樹脂と接触する合金薄膜4、5
の、Cuを50原子%よりも多く含有する薄膜材料に、下記実験に示すように、Cu以外の元素を含有させて密着力を測定したところ、Niを5原子%以上30原子%以下含有し、Alを3原子%以上10原子%以下含有する薄膜材料が、純銅や酸化銅の薄膜
の密着性よりも、樹脂に対する密着性は
、高くなっている。
【0054】
特に、エポキシ樹脂との密着性に関し、銅薄膜にMgを含有させても密着性は向上せず、また、銅薄膜に酸素を含有させても密着性は向上しなかったが、本発明の配線膜9
では、合金薄膜4、5と樹脂との間の密着性は向上している。
【0055】
また、この合金薄膜4、5の銅含有率が50原子%よりも大きいので、純銅の薄膜との密着性も高く、基体3から金属プラグ8や配線膜9が剥離せず、また、導電膜6、7が合金薄膜4、5よりも銅の含有率が高いことから、導電膜6、7も合金薄膜4、5から剥離しないようになっている。
【実施例】
【0056】
銅ターゲット上に、Niペレットと、Alペレットとを配置し、ガラス繊維を含有するエポキシ樹脂から成る基体3の前処理をした表面に、組成が異なる合金薄膜をスパッタ法によって形成し、合金薄膜の表面に、電解メッキ法によって純銅の導電膜を形成し、その合金薄膜と導電膜の二層から成る配線膜の、密着性を測定した。合金薄膜の組成は、NiとAl以外には、不可避的に含有する不純物と銅とが含まれており、不純物の含有量は小さいので、この合金薄膜では、NiとAl以外は銅によって構成されていると言える。合金薄膜の膜厚は500nm、導電膜の膜厚は30μmにした。
【0057】
密着性は、合金薄膜と導電膜とから成る配線膜が形成された基体3の一部を切り出し、切り出し部分で基体3から剥離した配線膜の端部を保持し、一定速度で(20mm/min)で上方に持ち上げて剥離させたときの力を測定した。この力を密着力とすると、下記表1は、実験した組成の合金薄膜の密着力の測定結果であり、表1中の「測定値」の欄は、合金薄膜の単位幅(cm)当たりの値である。
【0058】
【表1】
【0059】
密着層としてTi薄膜を用い、Ti薄膜上に銅膜を形成した配線膜の場合は、密着力は800gf/cmであった。
【0060】
表1の「Peel強度」の欄は、Ti薄膜を用いた配線膜と同等以上の配線膜を良品とするために、「測定値」の欄の値が800以上の場合を使用できるものとして「○」を記入した。また、「測定値」の欄の値が450以下の場合を使用できないとして「×」を記入し、450よりも大きく800よりも小さい場合を使用するべきでないとして「△」を記入した。
【0061】
なお、添加元素の含有率が、NiとAlとがゼロ原子%の場合は純銅薄膜から成る合金薄膜の場合である(測定値は220gf/cm)。
表1の測定結果から、剥離強度の値が800以上になるためには、Niは5原子%以上30原子%以下、Alは3原子%以上10原子%以下が必要なことが分かる。
【0062】
図8は、表1の測定結果のグラフであり、点線以上の位置にあるドットが示す組成が、本発明に含まれる。
なお、比較対象として、Mgを2原子%含有し、Alを8原子%含有し、残りはCuから成る配線膜の密着力を測定したところ、320gf/cmであった。このことから、AlとNiを添加した合金膜と比べ、AlとMgを添加した合金膜では密着力の向上は小さいことが分かる。
【0063】
なお、上記基体3は、ガラス繊維が含有されたエポキシ樹脂から成る硬質の基板であったが、エポキシ樹脂以外の樹脂であってもよい。また、ガラス繊維を含有せず、樹脂を含有する基体も本発明の基体3に含まれる。また、基体3は、軟質樹脂から成り、柔軟性を有するフィルムであってもよい。