(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光装置は、前記発光素子が底面に載置された凹部を有するパッケージを備え、前記発光素子を取り囲む領域に前記暗色部を形成することを特徴とする請求項3に記載の発光装置の製造方法。
前記発光装置は、前記封止樹脂により封止された少なくとも1つのワイヤを有し、平面視における前記ワイヤの頂部を除いた領域に前記暗色部を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
前記発光装置のxy色度値におけるxまたはyの値の少なくとも一方が減少し且つ当該減少値が0.001以上0.004以下となるように前記暗色部を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法および発光装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0029】
本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法は、発光装置の封止樹脂に含有されている一部の蛍光体の周囲の封止樹脂を変色させて暗色部を形成する工程を含む。例えば蛍光体を励起することにより、当該蛍光体の周囲の封止樹脂を変色させることができる。また、例えば封止樹脂を透過するレーザ光を封止樹脂の内部に照射することにより蛍光体を励起することができる。そのため、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法は、暗色部を形成する工程として、レーザ光を照射する工程を含むこととした。レーザ光照射工程の対象となる発光装置は、色調が不良と判定された発光装置である。前提として、予め発光装置を所望の色度ランクになるように大量に製造し、色調を測定して選別する。そして、選別の結果、所望の色度ランクとならなかった発光装置が不良と判定される。本発明に係る発光装置の製造方法は、色調が不良と判定された発光装置を予め取得しておくことが好ましい。なお、所望の色度ランクとなって良品と判定されて製品として出荷できるものは、レーザ光照射工程の対象とする必要はない。
【0030】
以下では、取り扱う発光装置として、2つの異なる形態の表面実装型発光装置を例にとり順次説明することとする。まず第1形態の発光装置について、発光装置の構成の概要、発光装置の各構成の詳細、発光装置の製造方法の概要、レーザ光照射工程について説明し、次いで第2形態の発光装置について同様な順序で説明する。
【0031】
(第1形態の発光装置)
[発光装置の構成の概要]
第1形態の発光装置は、
図1に示すトップビュータイプと呼ばれる発光装置1である。発光装置1は、発光面が当該発光装置1の実装面とは反対側に設けられ、発光装置1の実装面に対してほぼ垂直な方向に光を照射可能な発光装置である。なお、説明の便宜上、
図1(a)は凹部40aの内側を透過させた状態で図示している。
【0032】
発光装置1は、例えば、LED電球、スポットライト等の照明器具等に利用される装置である。発光装置1は、
図1に示すように、発光素子10と、リードフレーム20,30と、基材40と、封止樹脂50とを主に備える。
【0033】
発光装置1において、発光素子10が載置されている側を主面側と呼び、その反対側を裏面側と呼ぶ。主面側は発光装置1の発光面側であり、裏面側は発光装置1の実装面側である。リードフレーム20,30は、発光素子10と電気的に接続されている。基材40は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から構成されている。基材40とリードフレーム20,30とは一体成形されてパッケージを構成している。このパッケージには、発光素子10を収容するための凹部40aが形成されている。凹部40aの内側の側壁40bは、基材40により構成され、傾斜面を形成している。凹部40aの底面部40cには、リードフレーム20,30の一面が露出しており、凹部40aの底面部40cにおいてリードフレーム20とリードフレーム30との間に基材40の一部が絶縁部41として配置されている。封止樹脂50は、所定割合で蛍光体70を含有し、基材40の凹部40aに収容された発光素子10を被覆している。なお、
図1(b)では、蛍光体70を誇張して表示している。
【0034】
発光装置1は、3個の発光素子10を備えている。なお、発光素子10の個数は特に限定されず、少なくとも1つあればよい。発光素子10は、
図1(b)に示すように、正負一対のn電極(カソード)13およびp電極(アノード)14を有している。n電極13およびp電極14は、同一面(上面)に形成されている。なお、基材40の上面の4隅の形状は非対称になっており、直線形状に加工された側がカソードの側を示すカソードマーク80となっている。リードフレーム30上には保護素子12が設けられている。保護素子12は、発光素子10を過大な電圧印加による素子破壊や性能劣化から保護するものである。
【0035】
[発光装置の各構成の詳細]
次に、発光装置1の各構成の詳細について説明する。
【0036】
<発光素子>
発光素子10は、電圧を印加することで自発光する半導体素子である。発光素子10は、
図1に示すように、基材40の凹部40aに複数配置されている。発光素子10は、主発光面を上向きにして、接合部材11によって凹部40aの底面部40cのリードフレーム20に接合されている。接合方法としては、例えば接合部材として樹脂や半田ペーストを用いる接合方法を用いることができる。
【0037】
発光素子10としては、具体的には発光ダイオードを用いるのが好ましく、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nmの光)、緑色(波長490nm〜570nmの光)の発光素子10としては、窒化物系半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nmの光)の発光素子10としては、GaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。
【0038】
本実施形態においては、後記するように封止樹脂50に蛍光体70を導入するため、それらの蛍光体を効率良く励起できる短波長の発光が可能な窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いることが好ましい。例えば、青色の発光素子10と黄色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせてこれらの発光を混合することで、演色性の向上した白色の光を得ることができる。ただし、発光素子10の成分組成や発光色、サイズ等は上記に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
<保護素子>
保護素子12は、具体的には、規定電圧以上の電圧が印加されると通電状態になるツェナーダイオード(Zener Diode)である。保護素子12は、図示は省略したが、前記した発光素子10と同様にp電極とn電極とを有する半導体素子であり、発光素子10のp電極とn電極に対して逆並列となるように、ワイヤ60によってリードフレーム(−極)20と電気的に接続される。
【0040】
<リードフレーム>
リードフレーム(−極)20およびリードフレーム(+極)30は、一対の正負の電極である。リードフレーム20,30は、発光素子10と図示しない外部電極とを接続するものであり、例えば、鉄、リン青銅、銅合金等の電気良導体の金属部材で構成されている。リードフレーム20,30は、
図1に示すように、上面(以下、主面という)の一部と裏面とが基材40から露出している。リードフレーム20,30の主面は平滑に形成されている。
【0041】
リードフレーム20は、基材40から露出している部分として、第1インナーリード部20aと、第1アウターリード部20bとを有している。第1インナーリード部20aは、ワイヤ60を介して、発光素子10のn電極13と電気的に接続されている。第1アウターリード部20bは、図示しない外部電極(負極)と電気的に接続されるものである。
【0042】
リードフレーム30は、基材40から露出している部分として、第2インナーリード部30aと、第2アウターリード部30bとを有している。第2インナーリード部30aは、ワイヤ60を介して発光素子10のp電極14と電気的に接続されている。この第2インナーリード部30aには、
図1(a)に示すように、発光素子10を保護するために保護素子12が載置されている。第2アウターリード部30bは、外部電極(正極)と電気的に接続されるものである。この第2アウターリード部30bと、第1アウターリード部20bとは、裏面が実質的に同一な平面を形成している。
【0043】
<基材>
基材40の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子10から放出される光や外光等が透過しにくい材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、セラミックス(Al
2O
3、AlN等)、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、ポリフタルアミド(PPA)等の樹脂が挙げられる。
また、金属板の表面に絶縁層を設けた部材を基材40の材料として用いることもできる。
【0044】
<封止樹脂>
封止樹脂50は、基材40の凹部40aに収容された発光素子10を被覆するものであり、所定割合で蛍光体70を含有する。この封止樹脂50は、発光素子10を、外力や埃、水分などから保護すると共に、発光素子10の耐熱性、耐候性、耐光性を良好なものとするために設けられている。
【0045】
封止樹脂50の材料としては、レーザ光照射工程にて使用するレーザ波長のレーザ光が透過可能なものを用いる。つまり、レーザ光が封止樹脂50を透過して、含有されている蛍光体70に届くことが必要である。また、封止樹脂50の材料としては、発光素子10からの光を透過可能な透光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。また、このような材料に加えて、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー等を含有させることもできる。
【0046】
なお、封止樹脂50は、単一の部材で形成することもできるし、あるいは、2層以上の複数の層として形成することもできる。また、封止樹脂50の充填量は、凹部40aに配置される発光素子10、ワイヤ60等が被覆される量であればよい。また、封止樹脂50にレンズ機能をもたせる場合は、封止樹脂50の表面を盛り上がらせて砲弾型形状や凸レンズ形状としてもよい。
【0047】
<ワイヤ>
ワイヤ60は、発光素子10や保護素子12等の電子部品と、リードフレーム20,30等を電気的に接続するための導電性の配線である。ワイヤ60の材料としては、Au、Cu(銅)、Pt(白金)、Al(アルミニウム)等の金属、および、それらの合金を用いたものが挙げられるが、特に、熱伝導率等に優れたAuを用いるのが好ましい。なお、ワイヤ60の径は特に限定されず、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0048】
<蛍光体>
蛍光体70(蛍光体粒子)は、封止樹脂50中に含有させる波長変換部材である。蛍光体70は、発光素子10からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する。蛍光体70としては、発光素子10からの光をより長波長に変換させるものが好ましい。また、蛍光体70は1種の蛍光体(蛍光物質)を用いてもよいし、2種以上の蛍光体(蛍光物質)が混合されたものを用いてもよい。また、蛍光体70は、その濃度を発光素子10側で高く、光取り出し側で低くすることが好ましい。このような蛍光体70の分布は、例えば封止樹脂50の硬化前に蛍光体70を沈降させることによって形成できる。これによって、所望の色調の発光を確保しながら、光取り出し側の蛍光体70の密度を低くできるので、レーザ光照射によって形成される暗色部(暗色部71:
図4(c)参照)の密度を低くでき、発光装置1の外観上好ましい。さらに、封止樹脂50の表面近傍において蛍光体70が低密度で分布していることで、レーザ光が封止樹脂50の内部まで到達し易く、深さ方向においても暗色部71を低密度で分布させることができる。また、蛍光体70を沈降させて形成することで、発光装置間における蛍光体70の分布状態を制御し易い。このため、同程度のレーザ光を照射することで同程度に暗色部71を形成でき、良好な再現度で色調を補正することができる。
【0049】
蛍光体70の材料としては、例えば、イットリウム、アルミニウムおよびガーネットを混合したYAG系蛍光体(黄色蛍光物質)を用いることができる。なお、他の蛍光体として、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、酸窒化物系蛍光体を用いることもできる。また、蛍光体70の材料としては、例えば、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体を用いることができる。このうち、ユーロピウムドープの赤色蛍光物質として、例えば、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu(以下、SCASNと表記する)、CaAlSiN
3:EuのようなCASN系蛍光体、SrAlSiN
3:Euを用いることができる。
【0050】
[発光装置の製造方法の概要]
図1に示す発光装置1の製造方法は、
図2に示すように、例えば、第1工程〜第8工程を主な工程として含むことができる。
第1工程は、パッケージの凹部40aの底面
部40cに発光素子10を固着する工程である(S1:ダイボンディング工程)。
第2工程は、インナーリード
部20
a,30
aと、発光素子10のn電極13およびp電極14とをワイヤ60でそれぞれ接続する工程である(S2:ワイヤボンディング工程)。
第3工程は、保護素子12をインナーリード
部30
aに接合すると共にワイヤ60でインナーリード
部20
aに接続する工程である(S3:保護素子接合工程)。
第4工程は、蛍光体70を含有する封止樹脂50によって、パッケージの凹部40aに搭載された発光素子10を封止する工程である(S4:封止工程)。
第5工程は、発光装置1の性能を検査する工程である(S5:検査工程)。
第6工程は、発光装置1が所定の色度ランクの色調か否かを判定する工程である(S6:選別工程)。所定の色度ランクの色調であると判定された場合(S6:Yes)、製品として出荷可能となる。
第7工程は、所定の色度ランクの色調ではないと判定された場合(S6:No)、当該発光装置1の封止樹脂50に含有されている一部の蛍光体70の周囲の封止樹脂を変色させて暗色部を形成するためにレーザ光を照射する工程である(S7:レーザ光照射工程)。
第8工程は、レーザ光を照射した発光装置1の性能を再検査する工程である(S8:再検査工程)。再検査で所定の色度ランクの色調であると判定された場合、製品として出荷可能となる。
【0051】
さらに、パッケージを作製する作製工程、パッケージをめっきするめっき工程、パッケージを加熱する加熱工程、を含むことができる。また、前記各工程の間あるいは前後に、前記した工程以外の工程を含めてもよい。例えば、基材を洗浄する基材洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、発光素子や保護素子の載置位置を調整する載置位置調整工程等、他の工程を含めてもよい。発光装置1の製造方法において、レーザ照射工程(S7)以外は、公知の製造方法を適用することが可能である。また、全工程を複数の製造事業者で分担して発光装置1を製造してもよいことは勿論である。
【0052】
[レーザ光照射工程]
次に、
図2に示すレーザ光照射工程(S7)について
図1〜
図5を適宜参照して詳細に説明する。レーザ光照射工程(S7)は、発光装置1の封止樹脂50の内部にレーザ光を照射する工程である。このときのレーザ光の集光位置は、封止樹脂50の表面ではなく封止樹脂50の内部に設定する。封止樹脂50の内部にレーザ光が到達すると、封止樹脂50に含有されている複数の蛍光体のうち一部の蛍光体がレーザ光により励起されることで、周囲の封止樹脂50を変質させ、変色させて当該蛍光体70の周囲に暗色部を形成することができる。ここで、樹脂の変質には、例えば酸化や炭化等を含む。これにより、封止樹脂50に含有されている一部の蛍光体70は、光の波長を変換する機能を低減される。したがって、発光素子10が例えば青色発光素子であれば、ブルーの方向へ色度をシフトすることができる。
【0053】
<レーザ光照射領域>
レーザ光照射領域は、発光装置1の封止樹脂50の内部にレーザ光を到達させて蛍光体70に吸収させることができれば、特に限定されない。発光装置1のパッケージの損傷を防ぐため、
図1(a)において、凹部40aの内側、好ましくは凹部40aの底面部40cの内側に照射するのがよい。また、例えば、
図3の仮想線102よりも内側が好ましい。本実施形態では、
図3に示すように、発光装置1の発光素子10の光取り出し側である上方を避けて当該発光素子10の周辺部に配置された封止樹脂50にレーザ光を照射することとした。
図3(a)の仮想線101よりも内側にはレーザ光を照射しないことを示している。これにより、発光素子10の損傷を防止することができる。なお、
図3(a)では、凹部40aの内側の一部を透過させた状態で図示している。また、
図3(b)は
図3(a)のA−A線矢視における断面図である。
【0054】
また、
図3に示す例では、発光素子10を取り囲む領域であってパッケージに設けられた凹部40aの周縁の内側領域に配置された封止樹脂50に発光素子10の上方を避けてレーザ光を照射することとした。つまり、
図3(a)において、仮想線101と仮想線102とで囲まれた領域がレーザ光照射領域を示している。これにより、パッケージの壁となる部分の焼損を防止することができる。
【0055】
また、
図3に示す例では、仮想線101と仮想線102とで囲まれた領域を円環領域とした。これにより、イエローリングの光を減少させることができる。イエローリングを解消するために、発光面において蛍光体70による変換光の強度が大となる領域を予め測定により特定しておき、この特定した領域をレーザ光照射領域として暗色部を配置させることが好ましい。この場合、例えば、発光素子10を囲むドーナツ状の領域に、暗色部を分散させる。なお、真円とはならない環状のイエローリングであっても同様に光を減少させることができる。
【0056】
また、
図3(b)に示すように、ワイヤ60において封止樹脂50の光出射面に最も近い部位(頂部)61を除いた領域に配置された封止樹脂50にレーザ光を照射することとした。ワイヤ近傍にレーザ光を照射するとワイヤがレーザ光を吸収し易いため加熱されて周囲の封止樹脂を変質させるが、ワイヤ頂部61付近においては、このような事態を未然に防止することができる。ワイヤ頂部61以外のワイヤ部分は、リードフレーム20,30に近い位置にあるため、封止樹脂50の内部でリードフレーム20,30よりも上方の位置を狙ってレーザ光を集光させる場合、ワイヤ頂部61以外のワイヤ部分にはレーザ光は照射されにくくなる。仮に、ワイヤ頂部61よりも下側のワイヤにレーザ光が当たったとしても、封止樹脂の変質が発生する位置が比較的低いので、光の吸収による出力低減を抑制することが可能である。
【0057】
封止樹脂50にレーザ光を照射したときの発光装置1の断面図を
図4(a)に示す。仮想線101,102は、
図3に示したものと同様のレーザ光照射領域を示す仮想線である。封止樹脂50の厚みを2Dとすると、不図示のレーザ光源の対物レンズ103の焦点は、発光装置1の光出射面から深さDの位置に合わせて設定されることが好ましい。レーザ光は、封止樹脂50に含有される一部の蛍光体70に照射される。
【0058】
レーザ光照射前の発光装置1の断面図を
図4(b)に示し、レーザ光照射後の発光装置1の断面図を
図4(c)に示す。
図4(c)に示すように、封止樹脂50のレーザ光照射領域に分散している蛍光体70のうち、レーザ光の集光位置近辺に分散している一部の蛍光体の周囲に暗色部71が形成されている。また、
図4(c)に示すように、封止樹脂50のレーザ光照射領域であって、レーザ光の集光位置よりも下側の領域には、波長変換機能が低減していない蛍光体70も存在している。
【0059】
<レーザ光の波長>
レーザ光照射工程にて使用するレーザ光の波長は、封止樹脂50の材料に応じて当該封止樹脂50を透過するレーザ波長であって、そのレーザ光によって蛍光体70を励起することのできるようなレーザ波長を選択する。
封止樹脂50の材料として例えばシリコーン樹脂を用いた場合、1064nmの赤外レーザは封止樹脂50の表面を焼いてしまうので、赤外レーザ波長を使用することはできないが、例えば532nmの緑色レーザでは封止樹脂50を透過するので使用することができる。
【0060】
蛍光体70が吸収するレーザ波長の光を調べる予備実験を行った。発光装置1において、蛍光体の種類を変えたサンプルを作製し、同じ条件でレーザ光を照射し、レーザ光照射前後の色調を比較することで、発光色のシフト量を調査した。
【0061】
レーザ使用条件は、次の(A1)〜(A6)とした。
(A1)レーザ光源:レーザマーカ装置
(A2)レーザ波長:532nm
(A3)レーザパワー:2.6%
(A4)スキャンスピード:100mm/s
(A5)レーザ周波数:10kHz
(A6)レーザ光の焦点位置:封止樹脂厚みの半分程度の位置
発光装置1の構成条件は、次の(B1)〜(B3)とした。
(B1)封止樹脂の材料:シリコーン樹脂
(B2)発光素子の種類:青色発光素子
(B3)蛍光体の種類:SCASN、YAG(1)、YAG(2)、YAG(3)、クロロシリケート。ここで、YAG(1)、YAG(2)、YAG(3)の違いは、発光色とそれに伴う組成であり、(1)〜(3)は、発光色の短波長側(緑色寄り)からの順位を意味する。
【0062】
用いた各蛍光体についての励起スペクトルを
図5に示す。
図5のグラフにおいて、横軸は励起光源の光の波長、縦軸は相対発光効率を示す。
また、YAG(1)の励起スペクトルを長い破線で示している。同様に、YAG(2)の励起スペクトルは直線、YAG(3)は二点鎖線、SCASNは短い破線、クロロシリケートは一点鎖線でそれぞれ示している。各励起スペクトルは、各蛍光体において発光効率が最大となる値が100%となるように規格化している。また、
図5のグラフにおいて、レーザ光照射工程にて使用するレーザ光のレーザ波長(532nm)の位置を太線で示す。
【0063】
図5に示すように、波長532nmの位置で比較すると、赤色蛍光体であるSCASNの相対発光効率は、黄色蛍光体であるYAG(1)〜YAG(3)の相対発光効率に比べて非常に大きい。SCASNは、波長532nmの光を吸収する割合が高い。
また、波長532nmの位置では、黄色蛍光体であるYAG(1)〜YAG(3)の相対発光効率のそれぞれの差は小さい。YAG(1)〜YAG(3)は、波長532nmの光をある程度吸収するが、透過する割合が高い。
ここで、YAG(1)については、当該蛍光体の発光色の波長に近くなるにつれて測定不能となるため、波長532nmにおける発光効率は不明であるが、YAG(3)よりも小であると推測して比較した。
また、緑色蛍光体であるクロロシリケートについても、当該蛍光体の発光色の波長に近くなるにつれて測定不能となるため、波長532nmにおける発光効率は不明であるが、YAG(1)〜(3)よりも小であると推測される。このクロロシリケートの励起スペクトルのグラフは、レーザ波長(532nm)の位置の太線に交差することはないと考えられるので、クロロシリケートは、532nmのレーザ波長のレーザ光を吸収せずに透過するものとみなせる。
したがって、波長532nmにおいて、蛍光体の相対発光効率が大きい順に並べたときの関係は、式(1)で表される。
SCASN>>YAG(2)>YAG(3)>YAG(1)>クロロシリケート
…式(1)
【0064】
予備実験の結果、SCASNを使用した発光装置による発光色のシフト量が最も大きかった。この発光装置は、見た目にも封止樹脂の変色が最も大きかった。
YAG(1)〜YAG(3)をそれぞれ使用した発光装置による発光色のシフト量には大きな差がなかった。これらの発光装置は、見た目にも封止樹脂の変色が小さかった。
クロロシリケートを使用した発光装置は、発光色のシフトが生じなかった。この発光装置は、見た目にも封止樹脂の変色がなかった。
したがって、波長532nmのレーザ光を同じ条件で照射したときに、蛍光体の発光色のシフト量が大きい順に並べたときの関係は、式(2)で表される。なお、式(2)のYAGは、YAG(1)〜YAG(3)を示す。なお、これらの間には僅かな差があった。
SCASN>YAG>クロロシリケート …式(2)
【0065】
前記した式(1)と式(2)とを比較すると、発光装置に照射したレーザ光の波長532nmでの励起スペクトル強度(相対発光効率)と、発光色のシフト量との間に相関性がみられた。また、予備実験の結果、レーザ光による励起が多いほど発熱し、蛍光体70の周囲の封止樹脂50が変色する傾向があることが確かめられた。
【0066】
以下では、レーザ光照射工程にて、一例として波長532nmのレーザ光を発光装置1に照射するものとして説明する。ただし、発光装置1が封止樹脂50に含有する蛍光体70の励起スペクトルにあわせてレーザ波長を任意の値に変更することができる。例えば、発光装置1の蛍光体70としてクロロシリケートを用いる場合には、500nm以下のレーザ波長の光を照射すれば封止樹脂50を変色させることが可能である。
【0067】
<照射したレーザ出力>
サンプルとして
図1に示す発光装置1を複数用意して、照射したレーザ出力と色調との間の相関を調べる実験を行った。なお、サンプルは、個体差によって色調のバラツキがある。レーザ使用条件は、前記した(A1)〜(A6)のうち、(A3)レーザパワーと(A5)レーザ周波数とを次の(A31)、(A51)のように変更した。
(A31)レーザパワー:約2〜23%の範囲で変化させた(
図7(b)参照)。
(A51)レーザ周波数:50kHz
発光装置1の構成条件は、前記した(B1)〜(B3)のうち(B3)蛍光体の種類を次の(B31)のように変更した。
(B31)蛍光体の種類:YAGとSCASNとを混合した。
【0068】
レーザ光照射前後の色調の測定結果を
図6および
図7に示す。
図6において、横軸は、国際照明委員会(CIE)が定義したxy色度値のxの値、縦軸はyの値をそれぞれ示す。ライン111は、黒体放射軌跡(BBC)を示す。
枠112は、色温度3500Kで特定される温白色(Warm White)の発光装置の色度ランクのエリアを示しており、色温度3200〜3700Kの範囲を含んでいる。
楕円113は、色温度3200〜3700Kの範囲の中で、特に色温度3500K近辺の色度範囲のエリアを示している。レーザ光照射前の色調を三角形で表し、レーザ光照射後の色調を丸で表す。
図6に示すように、定性的には、レーザ光照射後の色調は、青色の色度の側にシフトしたことが分かる。
【0069】
図6のグラフを整理して、照射したレーザ出力とxの値のシフト量との関係を
図7(a)に示し、照射したレーザ出力とyの値のシフト量との関係を
図7(b)に示す。
図7(a)において、横軸はレーザ出力を示し、縦軸はxy色度値のxの値のシフト量Δxを示す。
図7(b)において、横軸はレーザ出力を示し、縦軸はxy色度値のyの値のシフト量Δyを示す。グラフにおいてxおよびyの値のシフト量をそれぞれ菱形で表す。
【0070】
図7(a)に示すように、レーザ出力が2.5%のときに、シフト量Δxは−0.001となり、レーザ光照射によるx値のシフト効果があったことが分かる。このとき、
図7(b)に示すように、シフト量Δyはほぼ0となり、レーザ光照射によるy値のシフト効果は確認できなかった。ただし、x値のシフト効果があったため、このサンプルに照射したレーザ光のレーザ出力が2.5%のときには、発光色の色調をシフトする効果が認められる。
【0071】
図7(a)および
図7(b)に示すように、レーザ出力が3%のときには、レーザ光照射によるx値およびy値のシフト効果が確認できなかったので、レーザ出力が3%のときには、このサンプルの発光色の色調をシフトする効果が確認できなかった。
【0072】
図7(a)および
図7(b)に示すように、レーザ出力が6〜23%のときには、レーザ光照射によるx値およびy値のシフト効果が確認でき、各サンプルの発光色の色調をシフトする効果が確認できた。これらのサンプルは、いずれもレーザ光照射部分の変色が目立たず美的外観を保ち、かつ、発光出力の低減も許容範囲内の優れた製品にすることができた。
【0073】
図示は省略するが、マイナス方向のシフト量Δyの絶対値が0.005以上のサンプルは、レーザ光照射部分の変色が目立たち、かつ、発光出力の低減も許容範囲を超えた大きなものとなることが確認できた。したがって、低減するシフト量Δyの値は、0.001以上0.004以下の場合に発光色の色調をシフトする効果があるので好ましい。
【0074】
また、
図7(a)および
図7(b)に示すように、例えばレーザ出力が23%のときには、Δx=−0.006、Δy=−0.004となる。この場合、シフト量Δxの絶対値は0.005以上であるが、シフト量Δyの絶対値が0.004以下なので、色調をシフトした後に、外観および光出力とも優れた製品であることが確認できた。
【0075】
したがって、xまたはyの値の一方がレーザ光照射前に比べて減少し且つ当該減少値が0.001以上0.004以下となるように封止樹脂50にレーザ光を照射することが好ましい。さらに、xおよびyの値の両方がレーザ光照射前に比べて減少し且つ当該減少値が0.001以上0.004以下となるようにすることがより好ましい。
【0076】
レーザ光照射後にサンプルを切断し、封止樹脂50の断面を観察すると、暗色部71が確認できた(
図4(c)参照)。暗色部71は硬質な質感があり、色ムラがほぼ無く、全体が黒い。暗色部71は、蛍光体のレーザ光吸収により変質し変色した周囲の封止樹脂が当該蛍光体の周囲に付着して形成されたものと考えられる。暗色部71の大きさにはバラツキがあるが、例えば粒状のものは直径24μm程度であった。また、このとき蛍光体70は直径20μm程度であった。このことからも暗色部71が蛍光体の周囲に層状に付着して形成されたものと考えられる。また、封止樹脂50の厚み2D(
図4(c)参照)の半分程度の位置を狙ってレーザ光を照射したので、サンプルの光出射面から深さDの位置近辺に暗色部71が分布していることが確認できた。
なお、YAGを含有したシリコーン樹脂に緑色レーザを照射した場合、蛍光体の周囲の樹脂が酸化によって変色していることが確認された。ただし、樹脂の変質とは、酸化に限るものではなく、樹脂材料等が変われば例えば炭化等の他の現象も起こり得る。
【0077】
前記の測定では所定のレーザ光源の波長532nmにおける最大レーザパワーを100%として、その所定割合の相対値をレーザ出力として例示した。レーザパワー、レーザ照射時間等は、発光装置1のサイズ、封止樹脂50の材料、蛍光体70の種類等に応じて異なる。また、レーザ光照射前に取得された発光装置の個体差によって、元の色調が異なるので、レーザ光照射後の変色の度合いもそれぞれ異なる。ゆえに、xy色度値における所望のシフト量を実現できる条件を適宜選択して最適な条件でレーザ光を照射すればよい。
【0078】
また、前記の照射したレーザ出力と色調との間の相関を調べる実験では、同様のレーザ光照射領域に対して、サンプル毎にレーザ出力を変化させて(増加させて)レーザ光を照射したが、同じ強度のレーザ出力で、サンプル毎にレーザ光照射領域を変化させて(増加させて)レーザ光を照射するようにしても同様の効果を奏することができる。
【0079】
例えば、
図8(a)において仮想線121と仮想線122とで囲まれた領域がレーザ光照射領域を示し、レーザ光照射後に、このレーザ光照射領域に暗色部として一重で円環状に暗色部123が生じた場合を想定する。このレーザ光照射領域に対して、レーザ出力を増加させてレーザ光を照射した場合、図示は省略するが暗色部123が増加する場合がある。この場合、変色した暗色部123が多くなるほどシフト量が大きくなる。また、別の例では、
図8(a)に示すレーザ光照射領域に対して、レーザ出力を増加させてレーザ光を照射した場合、
図8(c)に示すように、暗色部123が大きくなる場合がある。この場合、変色した暗色部123が大きくなるほどシフト量が大きくなる。
【0080】
また、さらに別の例では、
図8(a)に示す仮想線121を、発光素子のある中心側に向けて移動させてレーザ光照射領域を拡大し、拡大後の全レーザ光照射領域に対して、同じレーザ出力のレーザ光を照射した場合、
図8(b)に示すように、暗色部123が多くなる場合がある。この場合、変色した暗色部123が多くなるほどシフト量が大きくなる。この
図8(b)に示す例のように拡大したレーザ光照射領域に対して、基準強度となるレーザ出力のレーザ光を照射したことにより、色調の所定のシフト量を実現していたときに、別の同様のサンプルにて、レーザ光照射領域を縮小して、強度を大きくしたレーザ出力のレーザ光を照射して変色した暗色部123が大きくなれば、同じ所定のシフト量を実現できる。つまり、発光面のレーザ光照射領域の面積と、照射したレーザ出力の強度とは、トレードオフの関係がある。例えば、発光装置1の外観上の見た目を良好にすることを主眼とするならば、発光面のレーザ光照射領域の面積は広いことが好ましい。これによって、所定のシフト量を実現する暗色部123を低密度で配置でき、発光装置1の外観上好ましい。
【0081】
また、前記の測定では、レーザ光源としてレーザマーカ装置を例示したが、レーザ光源はレーザマーカに限定されるものではない。レーザの種類も特に限定されないが、固体レーザならばYAGレーザやYVO
4レーザ等を用いることができる。
【0082】
(第2形態の発光装置)
[発光装置の構成の概要]
第2形態の発光装置は、
図9に示すサイドビュータイプと呼ばれる発光装置201である。発光装置201の構成において、第1の形態の発光装置1と同様な構成には同様の符号を付し、構成の詳細な説明を省略する。また、単に形状が異なる構成については、
図1に示す発光装置1の構成の符号に形式的に200を加算して付す。
【0083】
発光装置201は、発光面が当該発光装置201の実装面に対してほぼ垂直な方向に設けられ、発光装置201の実装面に対してほぼ平行な方向に光を照射可能な発光装置である。なお、説明の便宜上、
図9(a)は凹部240aの内側を透過させた状態で図示している。
【0084】
発光装置201は、
図9に示すように、発光素子210と、リードフレーム220,230と、基材240と、封止樹脂50とを主に備える。発光装置201において、発光素子210が載置されている側を主面側と呼び、その反対側を裏面側と呼ぶ。主面側は発光装置1の発光面側であり、
図9(a)において下側は発光装置201の実装面の側である。リードフレーム220,230は、発光素子210と電気的に接続されている。基材240は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から構成され、リードフレーム220,230と一体成形されている。リードフレーム220,230および基材240には、発光素子210を収容するための凹部240aが形成されている。凹部240aの内側の側壁240bは、基材240により構成され、傾斜面を形成している。凹部240aの底面240cには、リードフレーム220,230の一面が露出しており、凹部240aの底面240cにおいてリードフレーム220とリードフレーム230との間に基材240の一部が絶縁部241として配置されている。封止樹脂50は、所定割合で蛍光体70を含有し、基材240の凹部240aに収容された発光素子210を被覆している。
【0085】
発光装置201は、1個の発光素子210を備えている。なお、発光素子210の個数は特に限定されず、少なくとも1つあればよい。発光素子210は、
図9(a)に示すように、矩形状に形成されている。また、発光素子210は、
図9(b)に示すように、正負一対のn電極(カソード)213およびp電極(アノード)214が設けられたフェースアップ(FU)素子である。n電極213およびp電極214は、同一面(上面)に形成されている。なお、基材240の主面の4隅の形状は非対称になっており、直線形状に加工された側がカソードの側を示すカソードマーク280となっている。
【0086】
[発光装置の各構成の詳細]
発光装置201の各構成の詳細については発光装置1の各構成と同様なので説明を省略する。
[発光装置の製造方法の概要]
発光装置201の製造方法の概要については発光装置1の製造方法と同様なので説明を省略する。
【0087】
[レーザ光照射工程]
次に、レーザ光照射工程について
図9〜
図10を適宜参照して説明する。なお、第1の形態の発光装置1に対するレーザ光照射工程と同様の方法については説明を適宜省略する。
【0088】
<レーザ光照射領域>
本実施形態では、
図10に示すように、発光装置201の発光素子210の光取り出し側である上方を避けて当該発光素子210の周辺部に配置された封止樹脂50にレーザ光を照射することとした。封止樹脂50中の
図10(a)においてハッチングで示した略矩形の領域301,302,303,304に対してレーザ光を照射することとした。これにより、発光素子210の損傷を防止することができる。なお、
図10(a)では、凹部240aの内側の一部を透過させた状態で図示している。
【0089】
また、
図10(b)は
図10(a)のB−B線矢視における断面図である。
図10(b)に示すように、ワイヤ60において封止樹脂50の光出射面に最も近い部位(頂部)61を除いた領域に配置された封止樹脂50にレーザ光を照射することとした。また、例えば、破線で囲まれた領域305,306で示すように、封止樹脂50の厚みの半分の深さの位置を狙ってレーザ光を照射することとした。
【0090】
<照射したレーザ出力>
サンプルとして
図9に示す発光装置201を複数用意して、照射したレーザ出力と色調との間の相関を調べる実験を行った。なお、サンプルは、個体差によって色調のバラツキがある。以下、条件を変えて行った3種類の実験について説明する。
【0091】
≪第1実験条件≫
第1実験条件において、レーザ使用条件は、前記したトップビュータイプの場合の条件の一部((A1),(A2),(A4),(A51),(A6))に加えて、次の(A32)である。なお、レーザ光照射領域は、
図10に示す通りである。
(A32)レーザパワー:6,8,10%の範囲で変化させた(
図11参照)。
また、第1実験条件において、発光装置201の構成条件は、前記したトップビュータイプの場合の条件(前記した(B1),(B2))に加えて、次の(B32)である。
(B32)蛍光体の種類:YAGのみ
【0092】
レーザ光照射前後の色調の測定結果を
図11に示す。
図11において、横軸は、xy色度値のxの値、縦軸はyの値をそれぞれ示す。なお、
図11では、所定の色度ランクr1〜r7を示すエリアを四角形の枠で示した。
レーザパワー6%のときに照射前の色調を白抜き四角形で表し、レーザ光照射後の色調を黒塗りの四角形で表す。
レーザパワー8%のときに照射前の色調を白抜き三角形で表し、レーザ光照射後の色調を黒塗りの三角形で表す。
レーザパワー10%のときに照射前の色調を白抜き円で表し、レーザ光照射後の色調を黒塗りの円で表す。
図11に示すように、定性的には、レーザ光照射後の色調は、概ね色度ランクr6から色度ランクr5に向かって青色の色度の側にシフトしたことが分かる。また、レーザパワーが大きいほどシフト量も大きかった。
【0093】
≪第2実験条件≫
第2実験条件において、第1実験条件と相違する点は、発光装置201の多数のサンプルを色度によって予めランク分けしておき、ランク毎にレーザパワーを、5.2〜10.2%の範囲で設定した点である。他の条件は第1実験条件と同じである。
【0094】
レーザ光照射前後の色調の測定結果を
図12に示す。
図12において、横軸は、xy色度値のxの値、縦軸はyの値をそれぞれ示す。枠311は、
図11に示す色度ランクr5のエリアを示している。枠311の辺311aの側から、枠311において対向する辺311bに向かって白抜きの矢印312で示す向きに色調をシフトさせた。このために、各サンプルにとって辺311aに平行であって枠311の中心の位置の色度の位置を狙い値313として、辺311aに対して平行かつ等間隔に破線314,315,316を定めた。そして、狙い値313から破線314までの位置で特定される色調を有した発光装置群を第1ランクとし、破線314から破線315までの位置で特定される色調を有した発光装置群を第2ランクとし、破線315から破線316までの位置で特定される色調を有した発光装置群を第3ランクとし、破線316よりもxy値が大きい位置で特定される色調を有した発光装置群を第4ランクと定めた。
【0095】
第1ランクから第4ランクまでこの順番にレーザ出力を増加させて、第1〜第4のレーザ出力の4種類のレーザ出力を設定した。そして、第1ランクに属するすべての発光装置には、第1のレーザ出力(5.2%)でレーザ光を照射し、第2ランクに属するすべての発光装置には、第2のレーザ出力(6.8%)でレーザ光を照射した。同様に、第3ランクに属するすべての発光装置には、第3のレーザ出力(8.5%)でレーザ光を照射し、第4ランクに属するすべての発光装置には、第4のレーザ出力(10.2%)でレーザ光を照射した。なお、すべての発光装置についてのレーザ光照射前の色調を三角形で表し、レーザ光照射後の色調を四角形で表す。
【0096】
図12に示すように、定性的には、レーザ光照射後の色調は、青色の色度の側にシフトしたことが分かる。また、ランク毎にレーザパワーを設定したことで、どのランクに属するサンプルに対しても同様に、狙い値付近のシフト量を実現することができた。
この実験に用いた多数のサンプルについて、レーザ光照射前後の色度バラツキ量を計算した。計算結果を表1に示す。ここで、σxおよびσyは、実験に用いたサンプルのx値およびy値の標準偏差を示す。これにより、色度バラツキ量の低減を確認できた。なお、表1に示す例ではσxが微増しているが、この微増分を大幅に上回る変化量でσyが減少しているため、総合的には、バラツキが改善されたと結論付けられる。
【0098】
≪第3実験条件≫
第3実験条件において、第1実験条件と相違する点は、発光装置201のサンプルを、サンプル毎にレーザパワーを、4.7〜10%の範囲のいずれかの値に設定した点である。他の条件は第1実験条件と同じである。
【0099】
レーザ光照射前後の色調の測定結果を
図13に示す。
図13において、横軸は、xy色度値のxの値、縦軸はyの値をそれぞれ示す。ここでは、色度ランクr6の位置で特定される色調を有したすべてのサンプルに対して、それぞれの色調に応じてレーザ出力を変化させて、個別にレーザ出力を設定し、白抜きの矢印で示す向きに色調をシフトさせた。すべてのサンプルについてのレーザ光照射前の色調を三角形で表し、レーザ光照射後の色調を四角形で表す。
【0100】
図13に示すように、定性的には、レーザ光照射後の色調は、概ね色度ランクr6から色度ランクr5に向かって青色の色度の側にシフトしたことが分かる。また、製品毎にレーザパワーを変化させたことで、ランク毎にレーザパワーを変化させた場合(第2実験条件)に比べて狙い値により近づいたシフト量とすることができた。
この実験に用いた多数のサンプルについて、レーザ光照射前後の色度バラツキ量を計算した。計算結果を表2に示す。ここで、σxおよびσyは、実験に用いたサンプルのx値およびy値の標準偏差を示す。これにより、色度バラツキ量を、ランク毎にレーザパワーを変化させた場合(第2実験条件)に比べて低減できることを確認できた。
【0102】
以上説明したように、本実施形態に係る発光装置の製造方法によれば、レーザ光照射工程によって、封止樹脂50に含有されている一部の蛍光体70の周囲に暗色部を形成することで、光の波長を変換する機能を低減され、発光装置の色調を所望の色度ランクの色調に補正することができる。また、レーザ照射強度やレーザ光照射範囲を変えることで、封止樹脂50を変質させる量を変化させることができるので、色調のシフト量を容易に調整できる。これにより、色調歩留まりを改善することができる。
【0103】
また、本実施形態の発光装置の製造方法によれば、発光装置にレーザ光を照射しても封止樹脂50の表面に凹みが形成されないので、信頼性を低下させることはない。例えば、1000個単位のサンプルを1ロットとして、レーザ光を照射したロットと、レーザ光を照射しなかったロットについて、オン/オフのスイッチング動作を行い始めてから1000時間後に、光出力や配光等の通常の特性測定を実施したところ、レーザ光を照射したロットと、レーザ光を照射しなかったロットについて、寿命についての有意な誤差は生じなかった。このため、レーザ光照射によっても信頼性を低下させることはないことを確認した。これは、発光素子10の光取り出し側である上方を避けて当該発光素子10の周辺部に配置された封止樹脂50にレーザ光を照射したことによるものと考えられる。
【0104】
本実施形態の発光装置の製造方法において、対象とする発光装置のサンプルのレーザ光照射領域に対して、所定のレーザ出力のレーザ光を照射しても所望のシフト量に満たなかった場合には、同じ条件または条件を適宜変更してから、レーザ光照射を繰り返し実施することもできる。また、発光装置の外観を良好にするために、変色をなるべく抑えて色調を微調整することもできる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。すなわち、前記に示す発光装置の各形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明は、発光装置を前記の各形態に限定するものではない。また、特許請求の範囲に示される部材等を、実施の形態の部材に特定するものではない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0106】
また、前記実施形態では、発光素子として、同じ側にn電極及びp電極が形成された片面電極のものとして説明したが、n電極又はp電極が素子基板の裏面に形成された対向電極構造(両面電極構造)の素子であってもよい。
図14に示す発光装置1Bは、1つの対向電極構造の発光素子10Bを備えている。発光素子10Bの下面の電極は、接合部材11を介し、リードフレーム20と電気的に接続されている。一方、発光素子10Bの上面の電極には、ワイヤ60が取り付けられており、上面の電極は、ワイヤ60を介し、リードフレーム30と電気的に接続されている。発光装置1Bの場合、例えば、
図14において、仮想線401と仮想線402とで囲まれた領域をレーザ光照射領域とする。この場合も、同様に、発光装置1Bの色調を所望の色度ランクの色調に補正することができる。
【0107】
また、前記実施形態では、
図1に示す形態にてパッケージの凹部の周縁の形状について円形の場合について説明したがこれに限らず、正8角形等の多角形等や円の一部を直線化した形状であってもよい。
図15に示す発光装置1Cは、凹部501の周縁の形状が、上面の形状が正方形のパッケージの4辺に対応する正方形の一部をなす4辺を滑らかな曲率の曲線で繋げた形状となっている。この場合、
図15において、仮想線502と仮想線503とで囲まれた領域がレーザ光照射領域を示している。このレーザ光照射領域の外周の形状および内周の形状は、凹部501の周縁の形状と同様な形状である。ただし、これに限らず、レーザ光照射領域の外周または/および内周の形状が凹部501の周縁の形状と異なっていてもよい。例えば、レーザ光照射領域の内周の形状だけを円形に変更すれば、レーザ光照射領域の面積を広げることもできる。
【0108】
また、前記実施形態では、発光素子として、フェースアップ(FU)素子を用いた場合について説明したがフェースダウン(FD)素子であってもよい。
図16に示す発光装置1Dは、凹部601の底面に2つのフェースダウン(FD)素子10Dを備えている。凹部601の周縁の形状は、上面の形状が正方形のパッケージの4辺に対応する正方形の形状となっている。また、リードフレーム20D,30Dは、基材40Dにおいて絶縁部41Dを挟んで対称な位置に設けられている。フェースダウン素子10Dの一方の電極は接合部材11を介してリードフレーム20と電気的に接続され、他方の電極は接合部材11を介してリードフレーム30と電気的に接続されている。なお、発光装置1Dは、保護素子12を備える形態なので、保護素子12および保護素子12のワイヤ60の頂部を避けてレーザ光を照射することが好ましい。例えば、
図16において、仮想線602と仮想線603とで囲まれた領域をレーザ光照射領域とする。
【0109】
また、前記実施形態では、トップビュータイプとサイドビュータイプの発光装置を、レーザ光照射工程の対象となる発光装置として例示したが、パッケージの形状は、これらに限定されるものではない。例えば、金属板であるリードフレームの主面が凹部に露出するものとしたが、めっき配線が形成された基材上に正極および負極を構成する導電部材をめきにより形成し、この導電部材の負極に発光素子のn電極(カソード)を接続し、導電部材の正極に発光素子のp電極(アノード)を接続するようにしてもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、パッケージに形成された凹部に発光素子を収納した発光装置例を示したが、パッケージの凹部は必須ではない。凹部を設けないパッケージに発光素子を搭載した発光装置はイエローリングが出現し難く、色ムラの少ない発光色とすることができる。なお、
図1に示す発光装置1は、凹部40aの側壁40bを傾斜させているので、発光素子の光が側壁40bの内周面で反射した反射光を凹部の開口から外側に効率よく放射することができる。