特許第5831055号(P5831055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5831055板状酸化ルテニウム粉末とその製造方法、それを用いた厚膜抵抗組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831055
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】板状酸化ルテニウム粉末とその製造方法、それを用いた厚膜抵抗組成物
(51)【国際特許分類】
   C01G 55/00 20060101AFI20151119BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20151119BHJP
   H01B 1/14 20060101ALI20151119BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20151119BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C01G55/00
   H01C7/00 M
   H01B1/14
   H01B1/08
   H01B1/20 C
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-191439(P2011-191439)
(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公開番号】特開2013-53030(P2013-53030A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2013年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勝弘
【審査官】 大城 公孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−188549(JP,A)
【文献】 特開昭63−130141(JP,A)
【文献】 村上泰,外,貴金属酸化物超微粒子の合成と応用,色材協会誌,1995年 8月,Vol.68, No.8,p.489-495,DOI:10.4011/shikizai1937.68.489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 55/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ruを含む溶液から湿式合成されたRu酸化物の水和物、あるいは該水和物を酸化雰囲気中で焙焼したRu酸化物からなるルテニウム化合物と、酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、又は硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種のバリウム化合物とを、ルテニウム:バリウムのモル比が0.8:1.2〜1.2:0.8となるように混合した後、この混合物を酸化雰囲気かつ400℃〜1000℃の温度で熱処理してルテニウムとバリウムの板状複合酸化物を合成する工程、
次に、得られた板状複合酸化物に酸化ホウ素もしくはホウ酸を混合した後、500℃以上の温度で熱処理を行って板状複合酸化物を板状の酸化ルテニウム粉末と酸化ホウ素と酸化バリウムの溶融物中に生成させる工程、
さらに、得られた溶融物に溶剤を添加し、酸化ホウ素と酸化バリウムを溶解して板状酸化ルテニウム粉末を回収する工程、
からなることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末の製造方法。
【請求項2】
酸化ホウ素あるいはホウ酸が、酸化ホウ素に換算して、板状複合酸化物100重量部に対し20重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載の板状酸化ルテニウム粉末の製造方法。
【請求項3】
板状の複合酸化物を溶融する工程において、熱処理温度が500〜1000℃であることを特徴とする請求項1に記載の板状酸化ルテニウム粉末の製造方法。
【請求項4】
前記酸化ホウ素もしくはホウ酸に、さらにMn、Nb、Ta、Ti、又はSnから選ばれる少なくとも1種類以上を含む化合物を混合し熱処理を行う事によって、Mn、Nb、Ta、Ti、又はSn元素が固溶した板状酸化ルテニウム粉末を得ることを特徴とする請求項1に記載の板状酸化ルテニウム粉末の製造方法。
【請求項5】
板状酸化ルテニウム粉末を回収する工程において、添加される溶剤が、鉱酸あるいは有機酸の水溶液である事を特徴とする請求項1に記載の板状酸化ルテニウム粉末の製造方法。
【請求項6】
長径が1×10−6〜5×10−6m、厚みが1.5×10−7〜5×10−7mであり、RuO(ルチル)の単相であることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末。
【請求項7】
結晶子径が1.0×10−8〜2.5×10−8mの多結晶体からなることを特徴とする請求項6に記載の板状酸化ルテニウム粉末。
【請求項8】
さらに、Mn、Nb、Ta、Ti及びSnから選ばれる少なくとも1種類以上が固溶していることを特徴とする請求項6に記載の板状酸化ルテニウム粉末。
【請求項9】
請求項6に記載の板状酸化ルテニウム粉末に、ガラス粉末を配合してなる厚膜抵抗組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の板状酸化ルテニウム粉末に、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を配合してなる厚膜抵抗組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状酸化ルテニウム粉末とその製造方法、それを用いた厚膜抵抗組成物に関し、厚膜抵抗体組成物の導電成分として、ガラス結合剤に対して配合比を高めても、焼成膜の構造が強固で、静電気やサージ電流が負荷されても抵抗値変化が小さい板状酸化ルテニウム粉末とその製造方法、それを用いた厚膜抵抗組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
厚膜抵抗体は、チップ抵抗器、厚膜ハイブリッドICや抵抗ネットワーク等に広く用いられている。近年、電子部品のサイズの極小化が進み、チップ抵抗器では、かつて主流となる大きさが長さ1.6mm×幅0.8mmであったが、長さ1.0mm×幅0.5mmへ移行し、更に近年では長さ0.6mm×幅0.3mmのチップ抵抗器も生産量が増加している。それに伴い厚膜抵抗体のサイズも長さ0.5mm×幅0.5mmから長さ0.3mm×幅0.3mmとなり、さらに0.2mm×幅0.2mm以下に移行している。
ところが、抵抗体サイズが小さくなると電気的な負荷による抵抗値変化が大きくなり、抵抗器の信頼性が懸念される。この為、一般的には小さい抵抗器は定格の電力を軽減するなどの考慮がされる。しかしながら、静電気やサージ電流等はサイズの小さい抵抗器でも軽減されない。したがって、抵抗体のサイズが小さくても静電気やサージ電流によって抵抗値変化が小さい厚膜抵抗体が望まれている。
【0003】
厚膜抵抗体の材料である厚膜抵抗組成物は、導電成分およびガラス結合剤をビヒクルと呼ばれる有機媒体中に分散させることにより製造されている。このうち、導電成分は厚膜抵抗体の電気的特性を決定する最も重要な役割を有しており、 Ru酸化物粉末が厚膜抵抗体の導電成分として広く用いられている。上記厚膜抵抗組成物を絶縁セラミック基板に印刷したのち焼成することによって、絶縁物のマトリックス中に導電成分が分散された膜構造を有する厚膜抵抗体となる。
【0004】
一般にRu酸化物粉末のみを導電成分とした厚膜抵抗体の場合、固有抵抗値が1×10−3〜1×10Ω・cmの厚膜抵抗体が形成できる。
固有抵抗値が1×10−2Ω・cm以上の厚膜抵抗体では、一般に静電気やサージ電流によって抵抗値がマイナスに変化する。しかし、1×10−2Ω・cmよりも小さい厚膜抵抗体では、抵抗値がプラスに大きく変化する場合がある。これは、Ru酸化物を導電成分としガラス結合剤を絶縁成分する厚膜抵抗体の構造に起因していると予想される。一般に固有抵抗値を小さくするには導電成分の配合を増やし絶縁成分の配合を減らす必要がある。しかし、Ru酸化物それ自身は焼結しないため、導電成分の配合が多い厚膜抵抗体は膜構造が脆くなり易く、微細なクラック等も入りやすい。このため固有抵抗値が低い厚膜抵抗体では静電気やサージ電流が負荷されると、微細なクラック等が広がり大きなクラックとなり抵抗値がプラスに変化してしまう。
【0005】
ところで、固有抵抗値が1×10−2Ω・cm以下の厚膜抵抗組成物では、固有抵抗値を下げるためにAgとPdを導電成分として加える事も一般に行われている(特開平05−90006:特許文献1)。このようなAgとPdを導電成分として加えた厚膜抵抗体では、AgとPdが焼結するため焼成膜が強固になりクラック等が入り難くなる。しかし、このAgとPdを導電成分として含む材料系ではサージ電流によって抵抗値がマイナスに大きく変化してしまうという課題があった。
この様なことから、固有抵抗値が1×10−2Ω・cm以上の厚膜抵抗体において、静電気やサージ電流による抵抗値変化が小さい厚膜抵抗体を形成するには、導電成分としてのRu酸化物の配合を多くするが、焼成後に膜構造が強固でクラック等が入り難い焼成膜にする必要がある。
【0006】
これまで厚膜抵抗組成物の導電成分として用いられる酸化ルテニウム粉末としては、一般に1×10−8m〜3×10−7mの粒状物が用いられている。このような粒状の酸化ルテニウムは、Ruの酸化アルカリ塩を中和反応や有機物で還元した水和酸化物、あるいはRuの塩化物水溶液を中和反応による水和酸化物を酸化雰囲気中で熱処理する事によって合成されている(特開平06−345441:特許文献2)。
ルテニウム酸化物は焼結する事が無く、酸化雰囲気で500℃以上の高温で熱処理しても粉末のままである。ルテニウム酸化物は焼結しないため、厚膜抵抗体を調製する焼成過程で軟化するガラス結合材によって固められ膜構造を維持している。そのため微細な焼結しないルテニウム酸化物を固め、膜構造を維持させるためには一定量のガラス結合材が必要となるが、ガラス結合材の配合量を多くすると厚膜抵抗体の固有抵抗値が高くなってしまい、低い抵抗値を得る事が難しい。逆にガラス結合材の量を少なくするには粒径の大きいルテニウム酸化物の粉末を用いれば良いが、導電成分であるルテニウム酸化物同士の接触点が少なくなり、これでも低い抵抗値が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−90006号公報
【特許文献2】特開平06−345441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来方法の問題点に鑑み、厚膜抵抗体組成物の導電成分として、ガラス結合剤に対して配合比を高めても、焼成膜の構造が強固で、静電気やサージ電流が負荷されても抵抗値変化が小さい板状酸化ルテニウム粉末とその製造方法、それを用いた厚膜抵抗組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述した従来の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、板状になっているルテニウムとバリウムの複合酸化物を合成した後、これを酸化ホウ素と混合し熱処理する事によって、ルテニウムとバリウムの板状複合酸化物の形状を維持した酸化ルテニウム粉末が、酸化ホウ素と酸化バリウムの溶融体中に分散する事を見出し、さらに、この溶融体から溶剤により分離された板状のルテニウム酸化物粉末は、固有抵抗値の低い抵抗体を形成するため、厚膜抵抗体組成物の導電成分として有用である事を確認して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、Ruを含む溶液から湿式合成されたRu酸化物の水和物、あるいは該水和物を酸化雰囲気中で焙焼したRu酸化物からなるルテニウム化合物と、酸化バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、又は硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種のバリウム化合物とを、ルテニウム:バリウムのモル比が0.8:1.2〜1.2:0.8となるように混合した後、この混合物を酸化雰囲気かつ400℃〜1000℃の温度で熱処理してルテニウムとバリウムの板状複合酸化物を合成する工程、
次に、得られた板状複合酸化物に酸化ホウ素もしくはホウ酸を混合した後、500℃以上の温度で熱処理を行って板状複合酸化物を板状の酸化ルテニウム粉末と酸化ホウ素と酸化バリウムの溶融物中に生成させる工程、
さらに、得られた溶融物に溶剤を添加し、酸化ホウ素と酸化バリウムを溶解して板状酸化ルテニウム粉末を回収する工程
からなることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、酸化ホウ素あるいはホウ酸が、酸化ホウ素に換算して、板状複合酸化物100重量部に対し20重量部以上であることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、板状の複合酸化物を溶融する工程において、熱処理温度が500〜1000℃であることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記酸化ホウ素もしくはホウ酸に、さらにMn、Nb、Ta、Ti、又はSnから選ばれる少なくとも1種類以上を含む化合物を混合し熱処理を行う事によって、Mn、Nb、Ta、Ti、又はSn元素が固溶した板状酸化ルテニウム粉末を得ることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、板状酸化ルテニウム粉末を回収する工程において、添加される溶剤が、鉱酸あるいは有機酸の水溶液である事を特徴とする板状酸化ルテニウム粉末の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、長径が1×10−6〜5×10−6mであり、厚みが1.5×10−7〜5×10−7mであり、RuO(ルチル)の単相であることを特徴とする板状酸化ルテニウム粉末が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、結晶子径が1.0×10−8〜2.5×10−8mの多結晶体からなることを特徴とする請求項6に記載の板状酸化ルテニウム粉末が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第6の発明において、Mn、Nb、Ta、Ti及びSnから選ばれる少なくとも1種類以上が固溶していることを特徴とする請求項6に記載の板状酸化ルテニウム粉末が提供される。
【0012】
一方、本発明の第の発明によれば、第6の発明の板状酸化ルテニウム粉末に、ガラス粉末を配合してなる厚膜抵抗組成物が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第6の発明の板状酸化ルテニウム粉末に、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を配合してなる厚膜抵抗組成物が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、ルテニウムとバリウムの板状の複合酸化物を形成させ、その形状のまま複合酸化物を分解することによって、板状のルテニウム酸化物の粉末を合成するので、従来の技術では製造が困難であった、板状のルテニウム酸化物粉末を容易に製造することが出来る。また、ルテニウム原料やバリウム原料の種類や熱処理の条件によって、ルテニウムとバリウムの板状複合酸化物の粒径を変えられ、最終的に得られる板状のルテニウム酸化物の大きさも変える事ができる。
さらに、本発明によれば、この板状のルテニウム酸化物粉末を用いることで、導電物の割合が非常に高くてもクラック等の欠陥の無い厚膜抵抗体が形成できる。また、この板状のルテニウム酸化物粉末を熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂と混合することによって抵抗値の低い樹脂系の厚膜抵抗体が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の板状酸化ルテニウム粉末の一例をTEM(透過電子顕微鏡)で観察した写真である。
図2】本発明の板状酸化ルテニウム粉末の一例をTEM(透過電子顕微鏡)で観察した写真である。
図3】本発明の板状酸化ルテニウム粉末の一例をTEM(透過電子顕微鏡)で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の板状のルテニウム酸化物粉末とその製造方法について説明する。
【0016】
1.板状のルテニウム酸化物粉末の製造方法
(1)板状複合酸化物の合成
本発明の製造方法では、ルテニウム化合物とバリウム化合物を混合し酸化雰囲気で熱処理する事で、ルテニウムとバリウムの板状の複合酸化物を形成させる。ルテニウム原料やバリウム原料の種類、あるいは熱処理の方法によって、ルテニウムとバリウムの板状複合酸化物の粒径が変わり、最終的に得られる板状のルテニウム酸化物の大きさも変える事ができる。
【0017】
本発明において原料とするRu化合物は、その形態によって制限されないが、Ruを含む溶液から合成されたRu酸化物の水和物あるいはこれを酸化雰囲気中で焙焼したRu酸化物を使用することができる。Ru酸化物の水和物を合成する際のRu溶液や合成法には、代表的な方法としてKRuO水溶液にエタノールを加える方法や、RuCl水溶液をKOH等で中和する方法が挙げられる。本発明においては、Ru酸化物の水和物よりも、Ru酸化物の水和物を酸化雰囲気中で焙焼したRu酸化物の方が好ましい。それはRu酸化物の水和物をバリウム化合物と混合・酸化雰囲気中で熱処理した際に大きな六角板状の結晶になり易いためである。
また、本発明において原料とするBa化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩などがあげられる。Ba酸化物やBa水酸化物は、Ru化合物との混合が容易であるという観点から本発明の方法には最適である。また、Ba炭酸塩も原料の湿度などに対する安定性が高いので、湿度が高い雰囲気では特に使い易い。Ba炭酸塩は、高温下でも比較的安定であるが、Ru化合物とともに酸化雰囲気中で熱処理を行うと800℃以下の温度で分解し、ルテニウムと複合酸化物を形成する。
【0018】
ルテニウム原料とバリウム原料を混合する方法は、両者が充分に混合できる方法であれば特に制限されない。一般的な方法は、ボールミル、らいかい機、シェーカーミキサーなどである。
ルテニウム化合物に対するバリウム化合物の割合は、特に制限されないが、ルテニウム:バリウムのモル比で0.8:1.2〜1.2:0.8の範囲が好ましい。この範囲から外れると、BaRuOの他に酸化ルテニウムや原料に由来するバリウム化合物が残ってしまうことがある。ルテニウムとバリウムの複合酸化物の粒径や形状は出発原料、熱処理温度によってコントロールでき、この粒径や形状がルテニウムとバリウムの複合酸化物を酸化ホウ素と混合・熱処理して得られるルテニウム酸化物粉末の粒径や形状に影響する。ルテニウム化合物に対するバリウム化合物のより好ましい範囲は、ルテニウム:バリウムのモル比で0.9:1.1〜1.1:0.9である。
【0019】
次に、ルテニウム原料とバリウム原料の混合物を酸化雰囲気下で400℃以上の温度で熱処理する。これによってルテニウムとバリウムの複合酸化物が得られる。ここで酸化雰囲気とは、酸素を10容積%以上含む気体であり、例えば空気を使用することができる。
熱処理の温度が400℃より低いと、ルテニウムとバリウムの複合酸化物が完全に生成されないため望ましくない。一方、熱処理温度が1000℃を超えると、ルテニウムとバリウムの複合酸化物の粒径が大きくなり過ぎたり、ルテニウムが6価や8価の酸化物となって揮発する割合が高くなり好ましくない。したがって、好ましい熱処理温度は、500〜900℃とする。また、熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが15分以上とし、好ましくは30〜120分とする。
【0020】
(2)複合酸化物の分解
これにより得られるルテニウムとバリウムの複合酸化物は、X線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが明らかになっている。そして、このルテニウムとバリウムの複合酸化物は導電性を有しているが、固有抵抗値が酸化ルテニウムに比べ一桁高く、また厚膜抵抗体を形成した時に抵抗値の安定性が劣る。そのため、本発明では、ルテニウムとバリウムの複合酸化物に酸化ホウ素を混合し熱処理する事によって、ルテニウムとバリウムの複合酸化物を分解し、ルテニウム酸化物、および酸化バリウムと酸化ホウ素からなる溶融物にする。
【0021】
この酸化ホウ素の代わりに、熱処理中に酸化ホウ素になるホウ酸等を用いても良い。ここで、混合する酸化ホウ素の量は、ルテニウム化合物とバリウム化合物を混合し酸化雰囲気で熱処理し合成したRuとBaの板状複合酸化物の100重量部に対し、酸化ホウ素あるいはホウ酸が酸化ホウ素に換算して20重量部以上である必要がある。RuとBaの複合酸化物に対し、酸化ホウ素あるいはホウ酸が20重量部より少ない場合、RuとBaの複合酸化物の分解が不完全になり残る可能性がある。一方、酸化ホウ素あるいはホウ酸の量は多いほど効果的であるが、酸化ホウ素に換算して200重量部を超えると経済的メリットが失われる。酸化ホウ素あるいはホウ酸のより好ましい量は、30〜150重量部である。
ルテニウムとバリウムの複合酸化物に酸化ホウ素を混合する方法は、両者が充分に混合できれば特に制限されない。一般的な方法は、ボールミル、らいかい機、シェーカーミキサーなどである。このルテニウムとバリウムの複合酸化物を酸化ホウ素と混合する際、Mn、Nb、Ta、Ti、又はSnから選ばれる1種以上を含む化合物を同時に混合することができる。
【0022】
この工程で酸化雰囲気かつ500℃以上の温度で熱処理を行う。ここで酸化雰囲気とは、酸素を10容積%以上含む気体であり、例えば空気を使用することができる。500℃よりも低い温度ではルテニウムとバリウムの複合酸化物の分解が完全に行われない。また、1000℃を超える温度ではルテニウムが6価や8価の酸化物となって揮発する割合が高くなり好ましくない。熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが15分以上は必要である。したがって、好ましい熱処理温度は、600〜1000℃とする。また、熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが15分以上とし、好ましくは30〜120分とする。
熱処理すると、ルテニウムとバリウムの複合酸化物が分解し、ルテニウム酸化物及び酸化バリウムと酸化ホウ素からなるガラスになる。また、ルテニウムとバリウムの複合酸化物がMn、Nb、Ta、Ti、又はSnから選ばれる化合物との混合物である場合は、Mn、Nb、Ta、Ti、又はSnが固溶したルテニウム酸化物及び酸化バリウムと酸化ホウ素からなる溶融物になる。板状の複合酸化物が分解しても、板状の形状は維持される。
【0023】
(3)ルテニウム酸化物の回収
最後に、得られたルテニウム酸化物及び酸化バリウムと酸化ホウ素からなるガラスから、溶剤によりガラス成分を溶解し、ルテニウム酸化物微粉末を回収し、必要に応じて洗浄・乾燥する。
酸化ホウ素を溶解する方法は、特に制限されないが、硝酸や塩酸、硫酸などの鉱酸や蟻酸、酢酸等の有機酸水溶液を溶剤として用いる方法が簡便である。これらの中でも硝酸や塩酸、硫酸などの鉱酸の使用が好適である。ルテニウム酸化物及び酸化バリウムと酸化ホウ素からなるガラスは、これら酸性の水溶液に浸すことによって、ガラス成分だけが溶け出して、酸に溶解しないルテニウム酸化物を粉末として回収できる。ガラス溶解に使用した酸は、水洗によって除去できる。
【0024】
2.ルテニウム酸化物粉末
本発明の製造方法で得られる板状酸化ルテニウム粉末は、実質的に酸化ルテニウムからなるが、前記ルテニウムとバリウムの複合酸化物を酸化ホウ素と混合する際、Mn、Nb、Ta、Ti、Snのうち少なくとも1種類以上を含む化合物を同時に混合した場合には、Mn、Nb、Ta、Ti、Snが固溶した板状酸化ルテニウム粉末を得ることができる。該化合物の混合量は、特に制限されるわけではないが、板状酸化ルテニウム粉末全体に対して、5〜30wt%とすることが好ましく、10〜20wt%とすることがより好ましい。
【0025】
板状酸化ルテニウム粉末は、TEM(透過電子顕微鏡)で観察すると、図1,2のような形状をしている。その大きさは、長径が1×10−6〜5×10−6mであり、厚みが2×10−7〜5×10−7mである。さらに倍率をあげて観察すると板状の粉末は、単結晶ではなく微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体になっていることが分かる。X線回折によって物質同定すると、RuO(ルチル)であって、結晶子径は、1.0×10−8〜2.5×10−8mである。
【0026】
3.厚膜抵抗体組成物
本発明は、板状のルテニウム酸化物粉末を合成し、それを厚膜抵抗組成物の導電成分とすることで、ガラス結合材の配合を少なくし、更に導電成分の間の接触を点から面にすることで厚膜抵抗体の固有抵抗値を低くしようとするものである。
【0027】
これまで板状あるいはフレーク状のAg粉末を導電成分として厚膜で低い抵抗値を得る手法が、液状とした熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂とからなる導電性樹脂ペーストの製造に利用されている。このフレーク状のAg粉末は、湿式あるいは乾式による製法で得られたAg粉末の表面に脂肪酸などの界面活性剤をつけた上で、ボールミルやスタンプミルでつぶす事によって製造できる。これは、Agが金属特有の延性を有している事から利用できる方法である。
しかしながら、ルテニウム酸化物は、Ag粉末とは異なり延性がほとんど無いので、ボールミルやスタンプミルでつぶす事によって、板状あるいはフレーク状の粉末を得る事が出来ない。また、ルテニウム酸化物粉末の合成方法は、前記のとおり、Ruの酸化アルカリ塩を中和反応や有機物で還元した水和酸化物、あるいはRuの塩化物水溶液を中和反応によって合成できる水和酸化物を酸化雰囲気で焙焼する方法が一般的である(特許文献2)。しかし、この一般的な方法でルテニウム酸化物の粉末を板状やフレーク状にコントロールすることは出来ない。
【0028】
このため、本発明では、前記のように、ルテニウム化合物とバリウム化合物を混合し酸化雰囲気で熱処理する事で板状のルテニウムとバリウムの複合酸化物を合成し、これを酸化ホウ素と共に再び酸化雰囲気で熱処理する事によって板状の酸化ルテニウムを合成している。そして、板状酸化ルテニウム粉末に、ガラス粉末を配合するか、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を配合して厚膜抵抗組成物とする。
【0029】
(1)ガラス粉末
酸化ルテニウム(RuO)粉末にガラス粉末を配合する場合、両者の割合は、目的とする面積抵抗値によって任意に変える事ができる。すなわち、目的とする抵抗値が高い場合には酸化ルテニウム(RuO)粉末を少なく配合し、目的とする抵抗値が低い場合には酸化ルテニウム(RuO)粉末を多く配合する。一般的な重量比は、酸化ルテニウム(RuO)粉末:ガラス粉末=5:95〜50:50の範囲である。これよりも酸化ルテニウム(RuO)粉末が少ないと抵抗値が高くなり過ぎて不安定となる。また、これよりも酸化ルテニウム(RuO)粉末が多いと形成される抵抗体膜が脆くなる。好ましい重量比は、酸化ルテニウム(RuO)粉末:ガラス粉末=5:95〜30:70の範囲である。
【0030】
本発明の厚膜抵抗用組成物には、必要に応じて、酸化ルテニウム(RuO)粉末以外の導電性粒子を含んでも良い。これらの導電性粒子としては、パイロクロア型の結晶構造を有するルテニウム酸鉛、ルテニウム酸ビスマス、ペロブスカイト型結晶構造を有するルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、ルテニウム酸バリウム、ルテニウム酸ランタン等のルテニウム酸化物や、Ag、Pd等が挙げられる。
本発明の厚膜抵抗体組成物には、酸化ルテニウム(RuO)粉末、ガラス粉末の他に、面積抵抗値や抵抗温度係数の調整、膨張係数の調整、耐電圧性の向上やその他の改質を目的とした添加剤を含んでもなんら差し支えない。厚膜抵抗体組成物の添加剤としては、MnO、CuO、TiO、Nb、SiO、Al、ZrO、ZrSiOなどが一般に用いられている。また、添加剤の割合は、酸化ルテニウム(RuO)粉末とガラス粉末の重量の合計に対して0.05〜20%が一般的である。
【0031】
(2)樹脂成分
本発明の厚膜抵抗体用組成物は、ビヒクルと呼ばれる樹脂成分を溶解した溶剤中に分散されて厚膜抵抗体ペーストになる。本発明では、ビヒクルの樹脂、溶剤の種類や配合によって限定されない。樹脂成分としては、エチルセルロース、マレイン酸樹脂、ロジンなどが一般的であり、溶剤はターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が一般に用いられている。これらの配合比は所望する粘度によって調整される。また、ペーストの乾燥を遅らせる目的で沸点が高い溶剤を加える事もできる。抵抗体用組成物に対するビヒクルの割合は、特に限定されないが重量で30%〜100%が一般的である。好ましいビヒクルの量は、重量で30%〜80%、より好ましいビヒクルの量は、重量で30%〜50%である。
【0032】
本発明の厚膜抵抗体用組成物をビヒクル中に分散させて厚膜抵抗体ペーストを製造するには、スリーロールミルが用いる事ができ、このほか遊星ミル、ビーズミルなどを用いる事ができるが、ペーストの製造方法に限定はされない。予め本発明の厚膜抵抗体用組成物をボールミルやらいかい機で混合してから、ビヒクル中に分散させる事もできる。
【0033】
厚膜抵抗体ペーストでは、無機原料粉末の凝集を解し、樹脂成分を溶解した溶剤中に分散する事が望ましい。一般に、粉末の粒径が小さくなると凝集が強くなり、二次粒子を形成し易くなる。特に一次粒子の比表面積径が3×10−9m〜1.5×10−8mの酸化ルテニウム(RuO)粉末では、二次粒子をほぐし一次粒子に分散させることが困難になる。
このような酸化ルテニウム(RuO)粉末とガラス粉末を分散させて厚膜抵抗体用ペーストを作成するには、脂肪酸を分散剤として用いる事が有効である。脂肪酸は酸化ルテニウム(RuO)粉末の表面に付着して分散を容易にする働きがあると考えられる。
本発明で用いられる脂肪酸は、飽和、不飽和を問わないが、酸化ルテニウム(RuO)粉末を分散させ、再び凝集するのを防ぐ観点から、炭素数が12以上の高級脂肪酸がより望ましい。脂肪酸は無機原料粉末をビヒクル中に分散させる際に加えても、あるいは予め酸化ルテニウム(RuO)粉末に付着させた後に、ビヒクル中に分散させても良い。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を用いて本発明による板状ルテニウム酸化物粉末の製造方法を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
粉末の形状・物性を評価するために、X線回折により物質同定し結晶子径を測定した。結晶子径はX線回折のピークの広がりより算出できる。ここではX線回折によって得られたルチル構造のピークをKα1、Kα2に波形分離した後、Kα1のピークの広がりとして半価幅を測定し、Scherrerの式より算出した。
【0035】
(実施例1)
予めRu粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥を行い、Ru酸化物の水和物を得た。得られたRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gを、らいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を285g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。
また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径5×10−6〜10×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mの板状粉末である事が確認できた。
次に、得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物を酸化ホウ素60gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
その後、得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を130g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定すると、RuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.7×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径2×10−6〜3×10−6mであり、厚みが2×10−7〜3×10−7mの板状粉末である事が確認できた。
さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状粉末は単結晶ではなく、微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が1.7×10−8mである事からも裏付けられる。
【0036】
(実施例2)
Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物を600℃で1時間熱処理することによって、Ru酸化物を得た。このRu酸化物131gと炭酸バリウム試薬195gをらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を283g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径10×10−6〜15×10−6mであり、厚みが5×10−7〜7×10−7mである板状粉末である事が確認できた。
得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物を酸化ホウ素283gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を128g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定するとRuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は2.0×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径3×10−6〜5×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。
さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状の粉末は単結晶ではなく、微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が2.0×10−8mである事からも裏付けられる。
【0037】
(実施例3)
Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gをらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を285g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径5×10−6〜10×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。
得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物と二酸化マンガン粉末86gを酸化ホウ素150gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を157g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定するとRuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.5×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径2×10−6〜3×10−6mであり、厚みが2×10−7〜3×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状の粉末は単結晶ではなく微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が1.5×10−8mである事からも裏付けられる。
また、得られたルテニウム酸化物微粉末を過酸化ソーダと炭酸ソーダでアルカリ融解し、溶融物を塩酸で溶液にし、IPCで分析したところ、Mn含有量が11wt%であった。
【0038】
(実施例4)
Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gをらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を285g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径5×10−6〜10×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。
得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物、および五酸化ニオブ粉末60gを酸化ホウ素150gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を150g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定すると、RuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.2×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径1.5×10−6〜2×10−6mであり、厚みが1.5×10−7〜2×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状の粉末は単結晶ではなく微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が1.2×10−8mである事からも裏付けられる。
また、得られたルテニウム酸化物微粉末を過酸化ソーダと炭酸ソーダでアルカリ融解し、溶融物を塩酸で溶液にし、IPCで分析したところ、Nb含有量が20wt%であった。
【0039】
(実施例5)
Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gをらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を285g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径5×10−6〜10×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。
得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物、および五酸化タンタル粉末50gを酸化ホウ素150gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を172g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定すると、RuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.5×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径2×10−6〜3×10−6mであり、厚みが2×10−7〜3×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状の粉末は単結晶ではなく、微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が1.5×10−8mである事からも裏付けられる。
また、得られたルテニウム酸化物微粉末を過酸化ソーダと炭酸ソーダでアルカリ融解し、溶融物を塩酸で溶液にし、IPCで分析したところ、Ta含有量が20wt%であった。
【0040】
(実施例6)
Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gをらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を285g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径5×10−6〜10×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。
得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物、および二酸化チタン粉末64gを酸化ホウ素150gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を193g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定すると、RuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.2×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径2×10−6〜2.5×10−6mであり、厚みが2×10−7〜2.5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状の粉末は単結晶ではなく微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が1.2×10−8mである事からも裏付けられる。また、得られたルテニウム酸化物微粉末を過酸化ソーダと炭酸ソーダでアルカリ融解し、溶融物を塩酸で溶液にし、IPCで分析したところ、Ti含有量が21wt%であった。
【0041】
(実施例7)
Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gをらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間焙焼してルテニウムとバリウムの複合酸化物粉末を285g得た。このルテニウムとバリウムの複合酸化物はX線回折パターンより、BaRuO<Hexagonal>とBaRuO<Cubic>の混合物であることが確認できた。また、この複合酸化物をTEMで観察すると、長径5×10−6〜10×10−6mであり、厚みが3×10−7〜5×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。
得られたルテニウムとバリウムの複合酸化物、および二酸化スズ粉末50gを酸化ホウ素150gとらいかい機で混合し、空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を165g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定すると、RuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.7×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察すると、長径2×10−6〜3×10−6mであり、厚みが2×10−7〜3×10−7mである板状の粉末である事が確認できた。さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、板状の粉末は単結晶ではなく、微細な1次粒子が強固に結合した多結晶体である事が確認できた。この事は、X線回折による結晶子径が1.7×10−8mである事からも裏付けられる。
また、得られたルテニウム酸化物微粉末を過酸化ソーダと炭酸ソーダでアルカリ融解し、溶融物を塩酸で溶液にし、IPCで分析したところ、Sn含有量が17wt%であった。
【0042】
(比較例1)
実施例1と同様に、Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。次に、実施例1とは異なり、得られたRu酸化物の水和物全量と酸化バリウム試薬153gに対して、酸化ホウ素60gを追加し、らいかい機で混合し空気中800℃で1時間熱処理をおこなった。
得られた溶融物を4.5Lの純水と500cmの硝酸の溶液に入れ、ルテニウム酸化物微粉末を129g回収した。このルテニウム酸化物微粉末をX線回折によって物質同定するとRuO<Rutile>の単相である事が確認できた。また、結晶子径は1.0×10−8mであった。得られたルテニウム酸化物粉末をTEMで観察しても、板状の粉末ではなかった。さらに倍率をあげたTEM像を観察すると、粉末はほぼ結晶子径と一致する微細な粉末であった。
【0043】
(実施例8)
上記実施例1で得られたルテニウム酸化物粉末36重量部とSiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗ぺーストを試作した。
次に、こうして試作した抵抗ぺーストを予めAg/Pdぺースト(Ag/Pd=98.5/1.5)によって電極を形成したアルミナ基板に印刷し、ピーク温度850℃、ピーク時間9分のベルト焼成炉によって焼成し、抵抗体を形成した。抵抗体サイズは幅0.3mm、電極間0.3mmとした。形成された抵抗体は、200pFのコンデンサに1kV、2kV、3kVで充電した静電気を10回放電し、抵抗値変化を測定した(この試験をESD試験と呼ぶ)。
形成された抵抗体の膜厚、静電気放電前の抵抗値(初期抵抗値)、25℃から125℃の間の抵抗温度係数(TCR)と、静電気放電後の抵抗値変化率(ESD変化率)を表1にまとめた。
【0044】
(実施例9)
上記実施例3で得られたルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0045】
(実施例10)
上記実施例4で得られたルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0046】
(実施例11)
上記実施例5で得られたルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0047】
(実施例12)
上記実施例6で得られたルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、 Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0048】
(実施例13)
上記実施例7で得られたルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0049】
(比較例2)
従来法により、Ru粉末:100g、KOH:800g、KNO:100gを混合し、銀坩堝中において700℃、3時間溶融し、ルテニウム酸カリ(KRuO)を得た。このルテニウム酸カリを純水に溶解し、エタノール100cmを加え、水洗、乾燥をし、Ru酸化物の水和物を得た。このRu酸化物の水和物を600℃で1時間熱処理することによって、ルテニウム酸化物を得た。ルテニウム酸化物の形状は、粒状であった。
得られたルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0050】
(比較例3)
上記比較例1で得られた非板状のルテニウム酸化物粉末36重量部と、SiO:35wt%、B:20wt%、Al:5wt%、CaO:5wt%、BaO:20wt%、ZnO:15wt%であるガラスフリット24重量部と、有機ビヒクルとしてエチルセルロースをターピネオールに溶解したもの40重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ぺーストを試作した。
次に、実施例8と同様にして、試作した抵抗体ぺーストから抵抗体を形成し、ESD試験を行い、結果を表1にまとめた。
【0051】
【表1】
【0052】
(実施例14)
上記実施例1で得られたルテニウム酸化物粉末70重量部と、レゾール型フェノール樹脂10重量部、ブチルセロソルブ20重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ペーストを試作した。
次に、試作した抵抗体ペーストを予めAg/Pdペースト(Ag/Pd=98.5/1.5)によって電極を形成したアルミナ基板に印刷し、温度200℃に保持したオーブンに30分間いれ、フェノール樹脂を硬化させ抵抗体を形成した。抵抗体サイズは幅0.3mm、電極間0.3mmとした。
形成された抵抗体の膜厚、抵抗値、25℃から125℃の間の抵抗温度係数(TCR)を表2にまとめた。
【0053】
(比較例4)
上記比較例1で得られたルテニウム酸化物粉末70重量部と、レゾール型フェノール樹脂10重量部、ブチルセロソルブ20重量部を3本ロールミルによって混練し、抵抗体ペーストを試作した。
次に、実施例14と同様にして、試作した抵抗体ペーストから抵抗体を形成し、形成された抵抗体の膜厚、抵抗値、25℃から125℃の間の抵抗温度係数(TCR)を表2にまとめた。
【0054】
【表2】
【0055】
「評価」
表1の結果から明らかなように、本発明によって製造したルテニウム酸化物(実施例1〜7)を導電物とした厚膜抵抗体(実施例8〜13)は、ルテニウム酸化物が板状であるため、静電気の放電による抵抗値変化が少なく、抵抗体膜は3kVの静電気を放電しても抵抗体の焼成膜にクラックは確認されなかった。これに対し、従来法によって製造したルテニウム酸化物を導電物とした比較例2、3の抵抗体は、ルテニウム酸化物が粒状又は非板状であるため、焼成膜に微細なクラックが発生しており、静電気を放電すると、この微細なクラックが広がり抵抗値がプラスに変化し、さらに放電の電圧を高くしていくとクラックが更に広がり抵抗体の膜が破壊され、大きなプラスの抵抗値変化を示した。
また、表2から、実施例14で製造した本発明のルテニウム酸化物を導電物とした樹脂硬化型の厚膜抵抗体は抵抗値が低く、抵抗温度係数も0に近いことが判る。これに対し比較例4で製造したルテニウム酸化物を導電物とした樹脂硬化型の厚膜抵抗体は、抵抗値が極度に高く、抵抗温度係数もマイナスに大きい。これは、実施例14では、板状の導電粉末を用いているため導電粒子同士が面で接触しているのに対し、比較例4では、導電粒子同士が点で接触しているために非常に不安定になったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の板状酸化ルテニウム粉末を用いた厚膜抵抗組成物は、導電成分である板状酸化ルテニウム粉末のガラス結合剤に対する配合比を高めても、焼成膜の構造が強固で、静電気やサージ電流が負荷されても抵抗値変化が小さいので、チップ抵抗器、厚膜ハイブリッドICや抵抗ネットワーク等の厚膜抵抗体の製造に広く用いることができる。これにより、本厚膜抵抗組成物は、近年、サイズの極小化が進むチップ抵抗器などの電子部品の製造に有用である。
図1
図2
図3