特許第5831393号(P5831393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831393
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】めっき被膜の異物採取方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20151119BHJP
   G01N 1/32 20060101ALI20151119BHJP
   G01N 33/20 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   G01N1/28 M
   G01N1/28 N
   G01N1/28 P
   G01N1/32 B
   G01N33/20 Q
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-178952(P2012-178952)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-37985(P2014-37985A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】古市 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】薦田 真彦
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−047876(JP,A)
【文献】 特開2001−255292(JP,A)
【文献】 特開平08−184537(JP,A)
【文献】 特開2009−266841(JP,A)
【文献】 特開平05−107744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
G01N 1/32
G01N 33/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を被覆しためっき被膜に存在する異物と、前記異物の周囲を被覆するように硬化性を有する液状樹脂組成物を流し込み、前記液状樹脂組成物を硬化させ、固体樹脂組成物を形成する第一の手順を行い、
次いで、前記固体樹脂組成物を、前記基材より引き剥がす第二の手順を順番に行うことによって、
前記固体樹脂組成物に、少なくとも一部分が埋め込まれた状態で前記異物が転写されることを特徴とする異物採取方法。
【請求項2】
前記異物が、前記めっき被膜に被覆された状態で存在する場合、前記異物を覆うめっき被膜をエッチングにより除去して、前記異物の一部分を露出させるエッチング手順を、前記第一の手順の前に行うことを特徴とする請求項1に記載の異物採取方法。
【請求項3】
前記エッチング手順が、前記めっき被膜の凹部欠陥の深さ、又は凸部欠陥の高さを計測する測定手順の後に行われることを特徴とする請求項2に記載の異物採取方法。
【請求項4】
前記エッチング手順におけるめっき被膜に対するエッチングが、化学エッチングであり、湿式手順で行われることを特徴とする請求項2または3に記載の異物採取方法。
【請求項5】
前記めっき被膜が、乾式めっき被膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の異物採取方法。
【請求項6】
前記めっき被膜が、湿式めっき被膜であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の異物採取方法。
【請求項7】
前記めっき被膜が、銅めっき被膜であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の異物採取方法。
【請求項8】
前記硬化性を有する液状樹脂組成物が、熱硬化性或いは光硬化性の液状樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の異物採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき被膜に存在する異物の採取方法に関するもので、対象とする異物は、めっき被膜からその一部が露出した異物および、めっき被膜に被覆された異物を含むものである。
さらに、本発明は電子材料に用いられる金属化ポリイミドフィルム上の凹みや凸欠陥の要因となる異物を解析するために異物を採取する方法に適している。
【背景技術】
【0002】
電子回路を形成する電子部品を搭載する基板は、硬い板状の「リジット配線基板」と、フィルム状で柔軟性があり、自由に曲げることのできる「フレキシブル配線基板」(以下、FPCと称す場合がある)が一般に使用されている。
このなかで、フレキシブル配線基板は、その柔軟性を生かしてLCDドライバー用配線基板、ハードディスクドライブ(HDD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)モジュール、携帯電話のヒンジ部のような屈曲性が要求される部分で使用できることから、その需要はますます増加してきている。
【0003】
このようなフレキシブル配線基板は、樹脂フィルムの1種であるポリイミドフィルムの表面に金属層を設けた金属化樹脂フィルムの一種である金属化ポリイミドフィルムを用い、この金属層をサブトラクティブ法、又はセミアディティブ法により配線加工して配線を形成したものである。
【0004】
ところで、この金属化ポリイミドフィルムを大別すると以下の2種類に分けられる。
第一に、絶縁フィルムと銅箔(導体層)を接着剤で貼り付けた金属化ポリイミドフィルム(通常「3層金属化ポリイミドフィルム」と呼ばれる)である。
第二に、絶縁フィルムと導体層となる銅箔などの銅層を、接着剤を使わずに、キャスティング法、ラミネート法、メタライジング法等により直接、複合させた金属化ポリイミドフィルム(通常「2層金属化ポリイミドフィルム」と呼ばれる)である。
【0005】
この3層金属化ポリイミドフィルムと2層金属化ポリイミドフィルムとを比較すると、3層金属化ポリイミドフィルムの方がハンドリング性など製造する上で容易なため製造コスト的に安価であるが、一方で、耐熱性、薄膜化、寸法安定性等の特性については、メタライジング法で得られる2層金属化ポリイミドフィルムの方が優れている。そのため、近年電子部品の軽薄短小化に伴い、フレキシブル配線基板の狭ピッチ化配線の要求も高まりへの対応にはメタライジング法が合致している。
【0006】
このメタライジング法による2層金属化ポリイミドフィルムは、通常、ポリイミドフィルム表面にスパッタリング法等の乾式めっき法で直接金属層を積層させた後に、電気めっき法を用いて金属層を厚付けする方法によって作製されている。
【0007】
この金属層を厚付けする電気めっき法は、乾式めっき法に比べて成膜速度が速く、2層金属化ポリイミドフィルムの生産性向上に寄与している。
特許文献1には、ポリイミド系フィルムにニッケル−クロム合金のスパッタ層を形成し、次いで銅めっき層を形成し、さらに電解銅厚付けめっきで銅めっき層を形成して、半導体キャリアフィルムを製造する技術が開示されている。
【0008】
ところで、電気めっき法、乾式めっき法を問わずに、めっき被膜に微小な(20μm前後)欠陥が発生してしまうことがある。特に、金属化ポリイミドフィルムに微小な欠陥が存在すると、微細配線の欠落につながる恐れがあり、欠陥の無い基板が求められている。
【0009】
そこで、このような微小な欠陥を厳密に調査したところ、めっき被膜に存在する異物を起因としていることを確認したが、この欠陥を無くす為には、その欠陥の要因となる異物の同定が要求される。そのためには、異物を採取することが必要であるが、その採取法として、めっき被膜を慎重に研磨等すれば、異物を採取することは可能であるが、作業中の異物の破損や、飛散することもあり、困難な作業となる。
そのため、めっき被膜の内部や表面に存在する異物を容易に採取する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−252257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように欠陥の要因となる異物の解析が必要とされているが、欠陥の要因となる異物の表面が、金属層で被覆されている場合、金属層の表層からは分析することができず、このような金属層で被覆された異物の分析を簡便に実施する方法が要求されている。
そこで、本発明は、金属層、特にめっき被膜中に埋め込まれ、被覆された異物を採取する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために、金属化ポリイミドフィルムのめっき被膜内に埋め込まれた金属層で被覆された異物を特定する解析方法を鋭意研究した結果、異物を覆うように異物の周囲に、液状の硬化性樹脂組成物を配し、その液状の樹脂組成物を硬化させた樹脂固形物を剥がすことで、その樹脂固形物表面に、異物が転写できることを確認し、本発明に至ったものである。
【0013】
即ち、上記課題を解決するための本発明の方法は、めっき被膜の異物解析方法において、金属層に被覆された異物を、被膜の厚みによっては異物周囲の被膜を溶解した後、異物及びその異物周囲を硬化性の樹脂組成物で覆い、硬化させた後に引き剥がして、その硬化した樹脂組成物上に転写させることで、異物表面を露出させることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第1の発明は、基材を被覆しためっき被膜に存在する異物と、その異物の周囲を被覆するように硬化性の液状樹脂組成物を配し、その液状樹脂組成物を硬化させ、固体樹脂組成物を形成する第一の手順を行い、次いで、得られた固体樹脂組成物を、基材より引き剥がす第二の手順を順番に行うことによって、その固体樹脂組成物に、少なくとも一部分が埋め込まれた状態で、異物が転写されることを特徴とする異物採取方法である。
【0015】
本発明の第2の発明は、採取しようとする異物が、めっき被膜に被覆された状態で存在する場合、異物を覆うめっき被膜をエッチングにより除去して、その異物の一部分を露出させるエッチング手順を、第1の発明における第一の手順の前に行うことを特徴とする異物採取方法である。
【0016】
本発明の第3の発明は、第2の発明におけるエッチング手順が、めっき被膜の凹部欠陥の深さ、又は凸部欠陥の高さを計測する測定手順の後に行われることを特徴とする異物採取方法である。
【0017】
本発明の第4の発明は、第2及び第3の発明におけるエッチング手順において、めっき被膜に対するエッチングが、化学エッチングであり、湿式手順で行われることを特徴とする異物採取方法である。
【0018】
本発明の第5の発明は、第1から第3の発明におけるめっき被膜が、乾式めっき被膜であることを特徴とする異物採取方法である。
【0019】
本発明の第6の発明は、第1から第4の発明におけるめっき被膜が、湿式めっき被膜であることを特徴とする異物採取方法である。
【0020】
本発明の第7の発明は、第1から第6の発明におけるめっき被膜が、銅めっき被膜であることを特徴とする異物採取方法である。
【0021】
本発明の第8の発明は、第1から第7の発明における硬化性を有する液状の樹脂組成物が、熱硬化性或いは光硬化性の液状樹脂組成物であることを特徴とする異物採取方法である。
【発明の効果】
【0022】
基材上に被覆されためっき被膜の中に埋め込まれた異物を特定するために、本発明の説明に用いた金属化ポリイミドフィルムの凹み起因となるめっき被膜の異物採取方法において、銅層などのめっき被膜に被覆された異物を、その被覆厚みによっては異物周囲のめっき被膜を溶解させた後、異物及びその異物周囲を硬化性樹脂で覆い、その樹脂を硬化させて形成した樹脂固形物を引き剥がして樹脂固形物上に転写させることで、異物表面を露出させることができ、その結果、金属化ポリイミドフィルムのめっき被膜内に埋め込まれた金属層に被覆された異物の特定を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】メタラインジング法で作製された金属化樹脂フィルム(金属化ポリイミドフィルム)の断面を示した模式図である。
図2】金属薄膜付樹脂フィルム(金属化ポリイミドフィルム)の金属薄膜である下地金属層および銅薄膜層を成膜する巻取式スパッタリング装置の一例を示す概要図である。
図3】金属化樹脂フィルムの製造に用いるロールツーロール方式の連続めっき装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る異物の採取方法は、金属層により被覆された異物を、その金属層の被膜厚みによっては、異物周囲の金属層の被膜を溶解させた後、異物及び異物の周囲(被膜溶解部を含む)を覆うように、その異物周囲に硬化性の樹脂を流し込み、硬化させて形成した樹脂固形物を、異物周辺部から引き剥がして樹脂固形物表面に異物を転写することで、その異物表面を露出させることを特徴とするものである。
【0025】
以後、実施形態の説明に際しては、金属化樹脂フィルムである、ポリイミドフィルムを基材に用い、そのフィルム表面上にニッケル−クロム合金層(下地金属層)の被膜を設け、その被膜上に銅層を形成した金属層を有する金属化ポリイミドフィルムの銅層、或いはニッケル−クロム金属層(下地金属層)の表面或いは内部に存在する異物の採取方法を用いて本発明を説明する。
先ず金属化ポリイミドフィルムの構成を説明し、次いで、その製造方法を示す。
【0026】
[金属化ポリイミドフィルム]
図1は、本発明の実施に際して用いたメタラインジング法で作製した金属化樹脂フィルム(金属化ポリイミドフィルム)7の断面模式図である。
この金属化樹脂フィルム(以後、説明に際しては金属化ポリイミドフィルムと称す)7の構成は、樹脂フィルムにポリイミドフィルム1を用い、そのポリイミドフィルム1の少なくとも一方の面には、ポリイミドフィルム側から下地金属層2、銅薄膜層3、銅めっき方法によって形成された銅めっき被膜4(銅薄膜層3と銅めっき被膜4から銅層5を形成)の順に成膜して積層された金属積層体6で構成されている。
【0027】
基材として用いる樹脂フィルムとしては、ポリイミドフィルムの他に、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルムなどを用いることもでき、これらの樹脂フィルムは市場で入手することが可能であるが、機械的強度や耐熱性や電気絶縁性の観点から、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0028】
下地金属層2は、樹脂フィルム(ポリイミドフィルム1)と銅などの金属層との密着性や耐熱性などの信頼性を確保するものである。従って、下地金属層の材質は、ニッケル、クロム又はこれらの合金の中から選ばれる何れか1種とするが、密着強度や配線作製時のエッチングしやすさを考慮すると、ニッケル・クロム合金が好ましい。また、クロム濃度の異なる複数のニッケル・クロム合金の薄膜を積層して、ニッケル・クロム合金の濃度勾配を設けた下地金属層を構成しても良い。
【0029】
また、上記したニッケルを含む合金からなる下地金属層2を設けることによって、金属化ポリイミドフィルムの耐食性及び耐マイグレーション性が向上する。なお、下地金属層2の耐食性を更に高めるために、ニッケル含む合金には、クロム、バナジウム、チタン、モリブデン、コバルト等を添加しても良い。
【0030】
この下地金属層2は、乾式めっき法で成膜することができる。
乾式めっき法には、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、真空蒸着法、CVD法等がある。
いずれの方法を用いても良いが、生産効率が高いことから、工業的にはマグネトロンスパッタ法を一般的に用いる。
【0031】
この下地金属層の膜厚は、3〜50nmとすることが好ましい。
下地金属層の膜厚が3nm未満では、最終的に得られた金属化ポリイミドフィルムの金属皮膜層をエッチングして配線を作製したとき、エッチング液が金属薄膜を浸食してポリイミドフィルムと金属皮膜層の間に染み込み、配線が浮いてしまう場合がある。一方、下地金属層の膜厚が50nmを超えると、エッチングして配線を作製する場合、金属薄膜が完全に除去されず、残渣として配線間に残るため、配線間の絶縁不良を発生させる恐れがある。
【0032】
下地金属層上に積層される銅薄膜層は、下地金属層の上に銅などの金属層を電気めっき法により直接設けようとすると通電抵抗が高く、電気めっきの電流密度が不安定になるため設けるものである。
下地金属層の上に銅薄膜層を設けることによって通電抵抗が下がり、電気めっき時の電流密度の安定化を図ることができる。
【0033】
次に、銅薄膜層は、乾式めっき法で形成することが好ましい。
乾式めっき法では、スパッタリング法、マグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、真空蒸着法、CVD法等がいずれも使用でき、下地金属層と銅薄膜層の成膜は同じ方法でも、又は異なる方法でも可能である。
例えば下地金属層をマクネトロンスパッタリング法で成膜した後、銅薄膜層を蒸着法で設けることもできる。
【0034】
好ましい銅薄膜層の成膜方法は、銅ターゲットをスパッタリング用カソードに装着したスパッタリング装置を用いて成膜する方法である。
この時、下地金属層と銅薄膜層は、同一の真空装置内で連続して形成することが好ましい。また、下地金属層を成膜した後、ポリイミドフィルムを装置内から大気中に取り出し、他のスパッタリング装置を用いて銅薄膜層を形成する場合には、銅薄膜を成膜する前に水分を十分に取り除いておく必要がある。
【0035】
銅薄膜層の膜厚は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、20nm〜0.8μmの範囲が更に好ましい。銅薄膜層の膜厚が10nmより薄いと、電気めっき時の通電抵抗を十分下げることができない。また、膜厚が1μmよりも厚くなると、成膜に時間が掛かりすぎ、生産性を悪化させ、経済性を損なうからである。
【0036】
以上、示したように下地金属薄層上に銅薄膜層を積層してなる金属薄膜の表面に、湿式めっき法の銅電気めっき方法を用いて銅層を成膜する。
この銅層の厚みは、例えばサブトラクティブ法によって配線パターンを形成する場合、数μm〜12μmが一般的である。なお、電気めっきによる銅層などの金属層の形成に先立って、予め金属薄膜の表面に銅等の金属を無電解めっき法で成膜しておくこともできる。
【0037】
[金属化ポリイミドフィルムの製造方法]
次に、金属化ポリイミドフィルムの製造方法を説明する。先ず、基材のポリイミドフィルム上に下地金属層と銅薄膜層を設けた金属薄膜付ポリイミドフィルムの製造方法を示し、次に、その金属薄膜付樹脂フィルム上に銅めっき被膜である銅層を設けた金属化ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0038】
図2は、金属薄膜付ポリイミドフィルムの下地金属層および銅薄膜層を成膜する巻取式スパッタリング装置の一例を示す概要図である。
巻取式スパッタリング装置10は、その構成部品のほとんどを収納した直方体状の筐体12を備えている。
筐体12は円筒状でも良く、その形状は問わないが、10−4Pa〜1Paの範囲に減圧された状態を保持できれば良い。
この筐体12内には、ポリイミドフィルム(長尺樹脂フィルム)Fを巻き出す巻出ロール13、キャンロール14、スパッタリングカソード15a、15b、15c、15d、前フィードロール16a、後フィードロール16b、テンションロール17a、テンションロール17b、巻取ロール18を有する。
巻出ロール13、キャンロール14、前フィードロール16a、巻取ロール18にはサーボモータによる動力を備える。
【0039】
巻出ロール13、巻取ロール18は、パウダークラッチ等によるトルク制御によって長尺樹脂フィルムFの張力バランスが保たれるようになっている。
テンションロール17a、17bは、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられている。
スパッタリングカソード15a〜15dは、マグネトロンカソード式でキャンロール14に対向して配置される。スパッタリングカソード15a〜15dの長尺樹脂フィルムFの巾方向の寸法は、長尺樹脂フィルムFの巾より広ければよい。
【0040】
長尺樹脂フィルムFは、ロールツーロール真空成膜装置である巻取式スパッタリング装置10内を搬送されて、キャンロール14に対向するスパッタリングカソード15a〜15dで成膜され、長尺の金属薄膜付ポリイミドフィルムF2に加工される。
キャンロール14は、その表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体12の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整される。
【0041】
この図2に示す巻取式スパッタリング装置10を用いて下地金属層と銅薄膜層を成膜する場合、下地金属層の組成を有するターゲットをスパッタリングカソード15aに、銅ターゲットをスパッタリングカソード15b〜15dにそれぞれ装着する。次に、ポリイミドフィルムをセットした装置10を収容した筐体12内を真空排気した後、アルゴンガスを導入して装置内を1.3Pa程度に保持する。
【0042】
また、乾式めっきを行う前に、ポリイミドフィルムと下地金属層の密着性を改善するため、ポリイミドフィルム表面をコロナ放電やイオン照射などで表面処理した後、酸素ガス雰囲気下において紫外線照射処理を行うことが好ましい。
これらの処理条件は、特に限定されるものではなく、通常の金属化ポリイミドフィルムの製造方法に適用されている条件でよい。
【0043】
次に、上記作製した金属薄膜付ポリイミドフィルム上に銅めっき被膜を形成して、金属化ポリイミドフィルムを製造するものであるが、その製造には例えば図3に示すようなロールツーロール方式の連続めっき装置2を用いて行われる。
【0044】
図3のロールツーロール方式の連続めっき装置20において、図2の巻き取り式スパッタリング装置(図2の符号10参照)により下地金属層と銅薄膜層からなる金属薄膜を成膜した金属薄膜付ポリイミドフィルムF2は、巻出ロール22から巻き出され、電気めっき槽21内のめっき液28への浸漬を繰り返しながら連続的に搬送される。金属薄膜付樹脂フィルムFは、めっき液28に浸漬されている間に電気めっきにより金属薄膜の表面に銅めっき被膜が成膜され、所定の膜厚の銅めっき被膜が形成された後、金属化ポリイミドフィルムSとして巻取ロール29に巻き取れられる。なお、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2の搬送速度は、数m〜数十m/分の範囲が好ましい。
【0045】
具体的に説明すると、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2は巻出ロール22から巻き出され、給電ロール26aを経て、電気めっき槽21に貯留されためっき液28に浸漬される。
電気めっき槽21に貯留されためっき液28に浸漬された金属薄膜層付樹脂フィルムF2は、反転ロール23を経て搬送方向が反転され、給電ロール26bにより電気めっき槽21外へ引き出される。このように、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2がめっき液への浸漬を複数回(図3では4回)繰り返す間に、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2の銅薄膜層の表面に銅層が形成される。
【0046】
給電ロール26aと陽極24aの間には電源(図示せず)が接続されている。給電ロール26a、陽極26aおよび、陽極24a、めっき液28、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2、および前記電源により電気めっき回路が構成される。また、陽極は、銅製の可溶性陽極であっても、導電性セラミックで表面をコーティングした不溶性陽極であってもよい。なお、不溶性陽極を用いる場合には、電気めっき槽21の外部に、めっき液28に銅イオンを供給する機構を備える必要がある。
【0047】
陽極24a、24b、24c、24d,24e、24f、24g、24hは金属薄膜付樹脂フィルムF2の搬送が進むにつれて電流密度が上昇する。このように電流密度を上昇させることで、銅層の変色を防ぐことができる。特に銅層の膜厚が薄い場合に電流密度が高いと銅層の変色が起こりやすい。
【0048】
[異物の採取方法]
1.欠陥と異物の関係
上記で説明したメタライジング法により金属化ポリイミドフィルムを製造すると、微小な(20μm前後)欠陥が発生してしまうことがある。この欠陥は、異物を起因としている。
この異物は、基材のポリイミドフィルムの表面に元々付着していたもの、乾式めっき工程や湿式めっき工程の工程内で付着したものなどが原因として挙げられる。例えば、乾式めっき装置内の異物や、湿式めっき装置のめっき槽内の異物が付着してしまうことで発生すると考えられる。
【0049】
この異物を起因として欠陥が生じる過程を考察すると、例えば、ポリイミドフィルム上に異物があれば、異物のポリイミドフィルムの法線方向には、スパッタリングにより膜で覆われるが、異物のポリイミドフィルムの平面方向(異物の側面方向)の成膜はされ難くなる。即ち、異物の側面方向に乾式めっき法で成膜を形成し難いことは、電気めっき等の湿式めっき法でも膜が成長し難い状態となり、その結果、湿式めっき法で成膜した被膜においては、異物の周辺に凹欠陥が生じる。
【0050】
また、湿式めっき法の電気めっき法で成膜中に異物が付着しても同様な過程で欠陥が生じる。特に絶縁性の異物であれば、異物の表面のうちポリイミドフィルムの法線方向には湿式めっき被膜は成膜されずに欠陥が生じる。
湿式めっき法の無電解めっきで成膜を行うときは、スパッタリング法等の乾式めっき法と同様に異物の側面方向にはめっき被膜がつきにくい。
このように異物へのめっき皮膜の成膜の異方性や、異物の絶縁性等の電気特性の影響によりめっき被膜の欠陥が生じるのである。
なお、乾式めっき法での成膜前に異物が付着すれば、乾式めっき法で薄膜層をつけた段階のフィルムにおいても異物による凸として欠陥を確認することができる。
【0051】
2.異物の採取方法
発見した金属化ポリイミドフィルムの銅層の微小な欠陥部を、レーザー顕微鏡で観察すると、異物の表面が金属層で被覆されているかどうか、および銅層表面から異物までの深さを知ることができる。
【0052】
また、多くの異物は、少なくとも一部がめっき被膜に覆われており、めっき被膜の表面よりポリイミドフィルム側(深い位置)にある。
そこで、めっき被膜(例えば銅)を、エッチング等によって溶解して異物を露出させる。
この処理は異物の周囲が、めっき被膜に覆われていると、めっき被膜による拘束力が強いため、異物は硬化させた樹脂固形物に転写され難いために行うものである。
【0053】
2−1.異物周辺のめっき被膜の溶解
金属化ポリイミドフィルムの場合、その表層のめっき被膜は銅層なので、塩化第二銅水溶液や塩化第二鉄水溶液等の銅用の公知のエッチング液を用いれば、めっき被膜を溶解することができる。したがって、異物が塩化第二銅水溶液や塩化第二鉄水溶液などに溶解しなければ、異物の採取は可能である。しかし、異物によっては、これらのエッチング液では溶解することもあるが、エッチング液は適宜選択すればよい。また、めっき被膜が銅以外の金属では、異物を溶解しない、そのめっき被膜の金属に適したエッチング液を用いればよい。
【0054】
2−2.異物の採取
異物周囲のめっき被膜を、エッチングにより溶解除去して異物表面を露出させ、次に異物とその周辺(めっき被膜溶解部を含む)を硬化性の液相樹脂組成物で覆い、硬化させる。硬化した樹脂(樹脂固形物)を、金属化ポリイミドフィルムから引き剥がすと、樹脂固形物表面に異物が転写されてくる。
具体的には、硬化性の樹脂組成物で異物の一部分が被服され、樹脂の硬化後、その樹脂固形物を引き剥がすと、異物の一部分が樹脂固形物に埋めこまれた状態で、異物全体が、金属化ポリイミドフィルム(めっき被膜)から剥離されることによって、異物の採取が行われる。
【0055】
使用する硬化性の樹脂組成物は、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、アクリルなどの熱硬化性を有する各種樹脂組成物を用いることが可能であり、例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡の観察試料を作成に用いる埋め込み樹脂を用いることができる。
さらに、エポキシ、シリコーン、アクリルなどの光硬化性を有する各種樹脂組成物を用いることも可能である。なお、樹脂組成物とは、構成樹脂に対応した適量の硬化剤や重合開始剤などの添加剤を含むものである。
【0056】
また、本発明の異物採取方法は、めっき被膜内から異物を採取すればよく、剥がされた樹脂固形物を顕微鏡観察の際に行われる研磨作業は不要である。
採取される異物の大きさは、欠陥の大きさと同等もしくはそれよりも小さく、20μm以下と微細な異物も多くあり、物理的な研磨などで露出させることができても、ピンセット等で採取することは困難である。
本発明の異物採取方法であれば、硬化した樹脂を金属化ポリイミドフィルムから引き剥がすことで異物の採取が可能となるので、容易である。
【0057】
3.異物の同定
採取した異物は、公知の物理分析方法や化学分析方法により、その同定を行う。その際の分析方法は限定されない。
【0058】
これまで、金属化ポリイミドフィルムのめっき被膜の異物の採取方法を例に本発明を説明してきたが、異物が含まれるめっき被膜は金属化ポリイミドフィルムに限定されることは無く、各種めっき被膜でも同様に用いることができる。
【実施例】
【0059】
厚み38μmポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製 カプトンEN;登録商標)にスパッタリング法でNi/20%Cr合金からなる厚み20nmの下地金属層を形成し、その下地金属層の表面に銅薄膜を厚み100nm形成して金属薄膜付樹脂フィルムを作製した。
この金属薄膜付ポリイミドフィルムの作製は、図2に示すスパッタリング装置1を用い、スパッタリンカソード15aに20重量%Cr−Ni合金ターゲットを、スパッタリングカソード15b、15c、15dに銅ターゲットを装着し、アルゴンガス1.3Paの雰囲気で製造した。
【0060】
得られた金属薄膜付ポリイミドフィルムを、図3に示すロールツーロール連続めっき装置2で銅薄膜層の表面に銅層を厚み8.5μm成膜して金属化ポリイミドフィルムを形成した。使用しためっき液は、pH1以下の硫酸酸性硫酸銅水溶液を用いた。
作製した金属化ポリイミドフィルムには、スパッタリング後、銅めっき後において、表面が金属層で被覆されている異物が原因となった欠陥を確認した。
【実施例1】
【0061】
得られた金属化ポリイミドフィルムの欠陥部を、レーザー顕微鏡で観察し、表面の銅層から異物が埋没している位置までの深さを測定した。
異物は深さ(表面からポリイミドフィルム方向への深さ)7.5μmの位置に存在し、銅層に埋没しており、塩化第二鉄水溶液で銅層を溶解させて異物の一部を露出させた。
次に、露出させた異物とその周辺に熱硬化性の樹脂組成物(ストルアス社製 スペシフィックス樹脂・硬化剤(エポキシ系))を垂らし、硬化させた。その硬化した樹脂固形物を金属化ポリイミドフィルムから引き剥がすと、樹脂固形物表面上に、その異物が転写されてくることを確認した。
【0062】
採取された異物をFT−IRを用いて分析し、その異物を同定することができた。
【実施例2】
【0063】
電気めっきで銅層を成膜することなくスパッタリング後の金属薄膜付ポリイミドフィルム上の欠陥を確認したところ、高さ100nmの凸欠陥があり、金属層下部に異物が存在することが推定された。金属層を溶解せずに、それ以外は実施例1と同様に樹脂を引き剥がしたところ異物を採取できた。
その採取された異物をFT−IRにて分析し、その異物を同定することができた。
【0064】
(比較例1)
実施例1と同様に銅層を溶解して異物の表面を露出させ、本発明による樹脂への転写をさせず表面に突出した異物を直接分析することを試みたが、表面に難溶性の下地金属層が残っており、異物を同定できなかった。
【0065】
(比較例2)
実施例1と同様に銅層を溶解させることで異物の採取を試みたが、異物表面の金属層が完全に除去される溶液にて溶解させると、異物が脱落あるいは変質してしまい採取できなかった。
また実施例1と同様に異物を露出させた後にマニピュレーターにて異物の採取を試みたが、異物が小さすぎる、かつ脆くてくずれるためうまく採取できなかった。
【符号の説明】
【0066】
1 ポリイミドフィルム
2 下地金属層
3 銅薄膜層
4 銅めっき被膜
5 銅層
6 金属積層体
7 金属化ポリイミドフィルム(金属化樹脂フィルム)

10 巻取式スパッタリング装置
12 筐体
13 巻出ロール
14 キャンロール
15a、15b、15c、15d スパッタリングカソード
16a 前フィードロール
16b 後フィードロール
17a テンションロール
17b テンションロール
18 巻取ロール

20 ロールツーロール方式の連続めっき装置
21 電気めっき槽
22 巻出ロール
23 反転ロール
24a〜h 陽極
26a〜e 給電ロール
28 めっき液
29 巻取ロール

F ポリイミドフィルム(長尺樹脂フィルム)
F2 金属薄膜付ポリイミドフィルム(金属薄膜付樹脂フィルム)
S 金属化ポリイミドフィルム(金属化樹脂フィルム)
図1
図2
図3