特許第5831402号(P5831402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831402
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】車両用充電コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20151119BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
   H01R13/64
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-186823(P2012-186823)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-44874(P2014-44874A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】兼安 昌美
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 崇史
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 博之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】及川 実
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−249164(JP,A)
【文献】 特開2012−156032(JP,A)
【文献】 特開平08−078093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の開口が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに固定され、車両に設けられた車両側コネクタに嵌合し、前記車両に充電電流を出力するコネクタ部と、
前記第1の開口から前記ハウジングの外部に突出して前記車両側コネクタに係止される係止部、前記第2の開口から露出して使用者によって操作される操作部、及び前記係止部と前記操作部とを一体に連結する連結部を有し、前記操作部の操作によって前記係止部の前記車両側コネクタへの係止が解除されるレバー部材と、
前記ハウジングの内部に配置され、前記ハウジングの外部から供給される電流によって作動状態と非作動状態とが切り替えられ、前記作動状態において前記操作部の操作を規制する操作規制機構と、を備え
前記操作規制機構は、前記電流が供給される電磁石と、前記電磁石が発生する磁界によって動作する可動子とを備え、前記電磁石への通電により前記可動子が前記操作部の操作を規制する位置に移動し、
前記可動子は、前記ハウジングに設けられた支持部に回転可能に支持されると共に、その回転中心から外周面までの距離が互いに異なる大径部と小径部とを備え、
前記操作規制機構は、前記電磁石に通電された作動状態では、前記操作部の操作によって前記大径部が前記レバー部材に当接して前記操作を規制し、前記電磁石に通電されない非作動状態では、前記小径部が前記レバー部材に対向して前記操作を許容する、
車両用充電コネクタ。
【請求項2】
前記操作規制機構は、前記使用者によって前記レバー部材の前記操作部が操作されているときに前記電流が供給された場合、前記操作が解除された際に前記可動子が前記操作部の操作を規制する位置に移動する、
請求項1に記載の車両用充電コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動源として電動モータを搭載した車両に対して充電を行うための車両用充電コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用充電コネクタを車両から抜き取る操作を行う使用者が正規の使用者か否かを判定し、正規の使用者でない場合には抜き取り操作を不可とする機構を備えた車両用充電コネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用充電コネクタ(給電プラグ)は、車両側のコネクタに係止されて抜け止めを行う係止爪と、係止爪とは別体で、使用者によって操作される操作部材と、係止爪を操作部材に連結可能な連結機構とを備えている。連結機構は、係止爪と操作部材とを連結し、操作部材の操作による係止爪の係止を解除可能とするアンロック状態と、係止爪と操作部材とを連結しないことにより、操作部材の操作による係止爪の係止を解除不能とするロック状態とを切り替え可能である。
【0004】
連結機構は、認証システムによって正規の使用者であると判定されたとき、電気駆動源から電流が供給され、この電流によって係止爪と操作部材とを電磁的に連結するように構成されている。また、認証システムは、固有のキーコードが記録された無線通信機能を有する電子キーが所定の通信エリア内にあり、この電子キーとの通信によってキーコードを照合した結果に基づいて、正規の使用者であるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−165609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の車両用充電コネクタでは、連結機構によって係止爪と操作部材とが連結されていないときでも、操作部材の操作(押し操作)は可能である。したがって、例えば使用者が電子キーを所持していない場合に操作部材を操作すると、操作部材を操作しているにもかかわらず、車両用充電コネクタが係止爪によって車両側のコネクタに係止されたままの状態となる。一方、使用者はこの状態を認識し得ないので、車両用充電コネクタを取り外そうとし、取り外しができないとさらに強い力で車両用充電コネクタを引き抜こうとする場合がある。このため、係止爪や連結機構、あるいはこれらを収容するハウジングの強度によっては、破損等が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、車両側コネクタへの係止を解除する使用者の操作を規制する機構を備えると共に、この機構が作動しているときに車両用充電コネクタへの係止を解除できない状態であることを使用者に確実に認識させることが可能な車両用充電コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、第1及び第2の開口が形成されたハウジングと、前記ハウジングに固定され、車両に設けられた車両側コネクタに嵌合し、前記車両に充電電流を出力するコネクタ部と、前記第1の開口から前記ハウジングの外部に突出して前記車両側コネクタに係止される係止部、前記第2の開口から露出して使用者によって操作される操作部、及び前記係止部と前記操作部とを一体に連結する連結部を有し、前記操作部の操作によって前記係止部の前記車両側コネクタへの係止が解除されるレバー部材と、前記ハウジングの内部に配置され、前記ハウジングの外部から供給される電流によって作動状態と非作動状態とが切り替えられ、前記作動状態において前記操作部の操作を規制する操作規制機構と、を備え、前記操作規制機構は、前記電流が供給される電磁石と、前記電磁石が発生する磁界によって動作する可動子とを備え、前記電磁石への通電により前記可動子が前記操作部の操作を規制する位置に移動し、前記可動子は、前記ハウジングに設けられた支持部に回転可能に支持されると共に、その回転中心から外周面までの距離が互いに異なる大径部と小径部とを備え、前記操作規制機構は、前記電磁石に通電された作動状態では、前記操作部の操作によって前記大径部が前記レバー部材に当接して前記操作を規制し、前記電磁石に通電されない非作動状態では、前記小径部が前記レバー部材に対向して前記操作を許容する車両用充電コネクタを提供する。
【0012】
また、前記操作規制機構は、前記使用者によって前記レバー部材の前記操作部が操作されているときに前記電流が供給された場合、前記操作が解除された際に前記可動子が前記操作部の操作を規制する位置に移動するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用充電コネクタによれば、車両側コネクタへの係止を解除する使用者の操作を規制する機構が作動しているときに、この係止を解除できない状態であることを使用者に確実に認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用充電コネクタを車両側コネクタと共に示す一部断面図である。
図2】車両用充電コネクタをコネクタ部から見た外観図である。
図3】操作規制機構の構成例をその周辺部と共に示す構成図であり、(a)は非作動状態を、(b)は作動状態をそれぞれ示す。
図4】可動子を示す斜視図である。
図5】車両用充電コネクタの使用態様を示す模式図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る車両用充電コネクタを車両側コネクタと共に示す一部断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る操作規制機構を示す斜視図であり、(a)は操作規制機構の非作動状態を、(b)は操作規制機構の作動状態を、それぞれ示す。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る操作規制機構を示す模式図であり、(a)は操作規制機構の非作動状態を、(b)は操作規制機構の作動状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用充電コネクタを車両側コネクタと共に示す一部断面図である。
【0016】
(車両用充電コネクタ1の構成)
この車両用充電コネクタ1は、ハウジング10と、ハウジング10に固定されたコネクタ部11と、ハウジング10に揺動可能に支持されたレバー部材2とを備えている。また、車両用充電コネクタ1は、ハウジング10の内部に、使用者によるレバー部材2の押し込み操作を規制する操作規制機構3を備えている。
【0017】
ハウジング10は、内部に収容空間1aが形成された中空の本体部100を有している。本体部100には、収容空間1aと外部とを連通する第1の開口10a及び第2の開口10bが形成されている。ハウジング10は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PPA(ポリフタルアミド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、エポキシ系樹脂等の絶縁性の樹脂からなる。
【0018】
ハウジング10の本体部100には、後述する複数の端子を有するコネクタ部11が固定されている。コネクタ部11は、車両に設けられた車両側コネクタ91に嵌合し、車両に充電電流を出力する。コネクタ部11における複数の端子は、ハウジング10の内部にて多芯ケーブル130の各電線に接続されている。
【0019】
レバー部材2は、第1の開口10aからハウジング10の外部に突出して車両側コネクタ91に係止(引っ掛かって相対移動が抑止されること)される係止部21、第2の開口10bから露出して使用者によって操作される操作部22、及び係止部21と操作部22とを一体に連結する連結部23を有している。連結部23は、ハウジング10の収容空間1a内にて揺動可能に軸支されている。より具体的には、連結部23に形成された貫通孔230をハウジング10の本体部100に設けられた円柱状の支持部101が挿通し、この支持部101を中心として、所定の角度範囲内でレバー部材2が回転することが可能である。
【0020】
車両側コネクタ91には、係止部21に形成された係止爪210が係合する凹部910が形成されている。レバー部材2は、使用者が操作部22をハウジング10の本体部100の内部に向かって押し込む操作(以下、この操作を「押込操作」という)を行うと、支持部101を中心として揺動し、係止部21の車両側コネクタ91への係止(係止爪210と凹部910との係合)が解除される。図1では、係止部21が車両側コネクタ91に係止された係止状態を実線で示し、この係止が解除された非係止状態におけるレバー部材2の輪郭を二点鎖線で示している。
【0021】
ハウジング10には、本体部100の内面とレバー部材2の連結部23との間に弾性部材12が配置されている。レバー部材2は、弾性部材12によって係止爪210が凹部910に係合する方向に付勢されている。本実施の形態では、弾性部材12がコイルバネからなり、その復元力によって連結部23を付勢している。
【0022】
操作規制機構3は、ハウジング10の内部に、ハウジング10の外部に露出しないように配置され、ハウジング10の外部から供給される電流によって作動状態と非作動状態とが切り替えられ、作動状態において操作部22の押込操作を規制する。本実施の形態では、操作規制機構3が、円筒状の筒部31及び扇状の磁石32からなる可動子30と、電線330によってハウジング10の外部から励磁電流が供給される電磁石33とを有して構成されている。筒部31は、例えばアルミニウム等の金属からなり、磁石32は、例えば鉄やフェライト等の強磁性体からなる。
【0023】
筒部31には、ハウジング10の本体部100に設けられた円柱状の軸部102が挿通されている。可動子30は、この軸部102に回転可能に支持され、軸部102を中心として筒部31及び磁石32が一体となって回転する。
【0024】
また、ハウジング10の本体部100には、電磁石33を保持する一対の保持部材103、及び多芯ケーブル130をコネクタ部11に案内する一対のガイド部材104が設けられている。多芯ケーブル130及び電線330は、ハウジング10の内部にて、充電ケーブル13から分岐している。
【0025】
図2は、車両用充電コネクタ1をコネクタ部11の側から見た外観図である。
【0026】
コネクタ部11は、筒状のコネクタハウジング110の内部に、L端子111、N端子112、GND端子113、C端子114、及びP端子115を有している。L端子111及びN端子112は、車両に単相200Vの充電電流を供給するための一対の出力端子である。GND端子113は接地された端子である。C端子114は、後述する制御装置と車両側との通信を行うための端子である。また、P端子115は、車両側コネクタ91とコネクタ部11との嵌合を検知するための嵌合検知用の端子である。
【0027】
図3は、操作規制機構3の構成例をその周辺部と共に示す構成図であり、(a)は非作動状態を、(b)は作動状態をそれぞれ示す。図4は、可動子30を示す斜視図である。
【0028】
筒部31には、その中心部に貫通孔310が形成され、この貫通孔310に軸部102が挿通されている。筒部31の外周面31aにおける周方向の一部の範囲には、磁石32が相対回転不能に固定されている。軸部102の中心軸Cから磁石32の外周面32aまでの距離は、軸部102の中心軸Cから筒部31の外周面31aまでの距離よりも大きく、筒部31のうち外周面31aに磁石32が固定されていない部分は可動子30の小径部として、また磁石32が固定された部分は可動子30の大径部として、それぞれ機能する。
【0029】
磁石32は、周方向の一端部321がS極に、他端部322がN極に、それぞれ磁化されている。一端部321と他端部322との間では、磁性がS極からN極に徐々に変化している。
【0030】
磁石32の外周面32aは、軸部102の中心軸Cからの距離が一端部321と他端部322との間の中間の位置である中央部320において最も長く、一端部321又は他端部322に近づくにつれて中心軸Cからの距離が徐々に短くなる。つまり、中心軸Cを中心として中央部320における外周面32a含む仮想円(図3に二点鎖線で示す)と磁石32の外周面32aとの距離は、中央部320から一端部321及び他端部322に近づくにつれて徐々に拡大する。
【0031】
レバー部材2の操作部22は、使用者が触れる外面22aが、第2の開口10bからハウジング10の外部に露出している。操作部22における外面22aと反対側の内側には、可動子30に対向する対向面22bが形成されている。
【0032】
電磁石33に通電されていない非作動状態では、図3(a)に示すように、磁石32がその自重によって軸部102の下方に位置する。この状態では、操作部22の対向面22bが筒部31の外周面31aに対向し、操作部22の押込操作が許容される。図3(a)では、操作部22が押込操作された状態を示している。この状態では、係止部21の車両側コネクタ91への係止が解除されている。なお、可動子30を図3(a)に示す位置に付勢するバネ等の弾性体からなる付勢部材を設けてもよい。
【0033】
電磁石33に通電されると、磁石32の一端部321(S極)が電磁石33に吸引され、図3(a)の矢印Aに示す方向に可動子30が回転する。これにより、操作部22の対向面22bが磁石32の外周面32aに対向する。本実施の形態では、図3(b)に示すように、磁石32の中央部320における外周面32aが対向面22bに対向する。
【0034】
使用者が操作部22に触れていない場合、弾性部材12の付勢力が操作部22を可動子30から離間させる方向に作用し、対向面22bと磁石32の外周面32aとの間には隙間Gが形成される。操作部22は、この隙間Gの範囲内でのみ移動可能であり、この範囲内では、係止部21と車両側コネクタ91との係止状態が解除されない。
【0035】
磁石32の中央部320における外周面32aが対向面22bに対向した状態で操作部22が押込操作されると、対向面22bが磁石32の外周面32aに当接し、それ以上の移動が規制される。つまり、可動子30は、電磁石33が発生する磁界によって動作し、磁石32が操作部22の押込操作を規制する位置に移動(回転移動)する。すなわち、磁石32は、操作部22に当接して使用者による押込操作を規制する当接部材としても機能する。
【0036】
また、操作規制機構3は、使用者によって押込操作がされているときに電磁石33に電流が供給されると、可動子30が図3(a)の矢印A方向に所定量回転した状態で磁石32が操作部22の端部に当接し、それ以上の回転が不能となる。その後、押込操作が解除されると、操作部22がハウジング10の外方に移動して磁石32が矢印A方向に回転可能な状態となり、可動子30が図3(b)に示す位置まで回転する。
【0037】
(車両用充電コネクタ1の使用態様)
図5は、車両用充電コネクタ1の使用態様の一例を示す模式図である。車両用充電コネクタ1は、車両9の車両側コネクタ91に嵌合され、制御装置7から出力された充電電流が充電ケーブル13及び車両用充電コネクタ1を介して車両9に供給される。
【0038】
車両9は、駐車スペース80に駐車された状態で、充電電流の供給を受ける。駐車スペース80には、不使用時において車両用充電コネクタ1を保持するスタンド81が立設されている。
【0039】
車両9は、車両側コネクタ91の接続端子に接続された充電回路92と、充電回路92を制御する充電制御装置93と、蓄電池94と、蓄電池94に蓄えられた電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御によりスイッチングされた駆動電流として出力するインバータ95と、インバータ95から駆動電流の供給を受ける電動機96と、電動機96の出力を変速して前輪98に伝達する変速機97とが車体90に搭載されている。
【0040】
電動機96は、車両9の走行用の駆動源であり、例えばIPM(Interior Permanent Magnet Motor:埋込磁石型モータ)である。蓄電池94は、例えばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池である。
【0041】
なお、車両9は、電動機96に加え、ガソリン等の揮発油を燃料とする内燃機関(エンジン)を駆動源として備えたプラグインハイブリッド車であってもよい。また、変速機97の出力を後輪99に伝達する後輪駆動車であってもよい。
【0042】
制御装置7は、充電ケーブル13を介して車両用充電コネクタ1に接続され、充電制御部71と充電電流供給部72とを有している。充電制御部71は、車両側コネクタ91とコネクタ部11との嵌合を検知すると、充電ケーブル13及びハウジング10の内部における電線330を介して電磁石33に通電する。これにより、操作規制機構3が作動状態となり、使用者による押込操作が規制される。
【0043】
また、充電制御部71は、車両側コネクタ91とコネクタ部11との嵌合を検知すると、充電電流供給部72にオン信号を出力し、充電電流供給部72から充電電流を出力させる。なお、充電制御部71は、車両側コネクタ91とコネクタ部11との嵌合を検知したとき、直ちに充電電流供給部72にオン信号を出力してもよく、嵌合の検知から所定時間(例えば3〜5秒程度)経過後に充電電流供給部72にオン信号を出力してもよい。
【0044】
充電電流供給部72は、図略のリレー回路を有し、充電制御部71から出力されるオン信号に基づいてこのリレー回路の接点を接続し、単相200Vの交流電流を出力する。この交流電流は、充電ケーブル13及びハウジング10の内部における多芯ケーブル130を介してコネクタ部11のL端子111及びN端子112から充電電流として車両9側に出力される。
【0045】
充電制御部71は、例えばコネクタ部11のC端子114(図2参照)を介した車両9側との通信が成立したことにより車両側コネクタ91とコネクタ部11との嵌合を検知する。
【0046】
充電が完了すると、すなわち蓄電池94に蓄えられた電力が所定値以上になると、充電制御部71は、充電電流供給部72にオフ信号を出力し、充電電流供給部72からの充電電流の出力を停止させる。充電電流供給部72は、充電制御部71から出力されるオフ信号に基づいて、リレー回路の接点の接続を遮断する。また、充電制御部71は、充電が完了すると、電磁石33への励磁電流の出力を停止する。これにより、操作規制機構3が非作動状態となり、使用者による押込操作が可能な状態となる。
【0047】
なお、充電制御部71は、正規の使用者によって充電を中断する操作が行われた場合には、充電電流供給部72にオフ信号を出力すると共に電磁石33への励磁電流の出力を停止する機能を有していてもよい。正規の使用者であるとの認証は、例えば使用者が所持する固有のキーコードが記録された無線通信機能を有する電子キーとの通信に基づいて行うことができる。また、暗証番号の入力等によってこの認証を行ってもよい。またさらに、充電制御部71は、充電の開始にあたり、正規の使用者であるか否かの確認を行い、正規の使用者であることが確認された場合に限り、充電を開始する機能を有していてもよい。
【0048】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態によれば、次に示す作用及び効果が得られる。
【0049】
(1)操作規制機構3は、充電中においてレバー部材2の押込操作を規制するので、充電中にコネクタ部11が車両側コネクタ91から抜き取られることを防ぐことができる。これにより、例えば不注意や悪戯によって車両への充電が中断されることを抑制できる。また、充電中にコネクタ部11が抜き取られた場合には、コネクタ部11のL端子111及びN端子112と車両側コネクタ91の端子との間にスパークが発生し、これらの端子の接触面が損傷する場合があるが、このようなスパークの発生も抑制することができる。
【0050】
(2)操作規制機構3は、その作動状態において、可動子30の磁石32がレバー部材2の操作部22に当接することで、使用者による押込操作を規制する。これにより、使用者にレバー部材2の押込操作が規制された状態であることを確実に認識させることができ、使用者が強い力で車両用充電コネクタ1を引き抜こうとすることを抑制できる。
【0051】
(3)操作規制機構3は、ハウジング10の内部に配置されているので、悪意をもって外部から操作規制機構3が操作されることを抑止することができる。すなわち、ハウジング10の外部からの不正な操作を抑止することができる。
【0052】
(4)操作規制機構3は、電磁石33が発生する磁界により磁石32が受ける斥力及び引力によって可動子30が半回転し、この半回転した状態で磁石32の外周面32aに操作部22の対向面22bが当接する。これにより、例えば電動モータを駆動し、その出力を減速して可動子30を回転させる場合に比較して、機構の構成を単純化することができ、故障の発生を抑制できると共に、第1及び第2の開口10a,10b等からの侵入した異物によって作動不良が発生することを抑制できる。
【0053】
(5)操作規制機構3は、使用者によって押込操作されているときに電磁石33に電流が供給されると、この押込操作が解除された際に可動子30が操作部22の操作を規制する位置に移動する。つまり、使用者がコネクタ部11を車両側コネクタ91に嵌合し、レバー部材2の操作部22を押込操作しているときに電磁石33に電流を供給した場合でも、この押込操作が解除された際に可動子30が図3(b)に示す位置まで回転するので、押込操作が継続されている状態でも、電磁石33に通電することが可能である。つまり、充電制御部71は、押込操作の状態を確認することなく、電磁石33に電流を供給することが可能であるので、例えば操作部22の位置を検知するセンサ等を設ける必要がなく、車両用充電コネクタ1の構成を簡略化することが可能となる。
【0054】
(6)操作部22は、使用者が触れる外面22aの反対側における対向面22bが磁石32に当接するので、使用者が付与する押圧力を可動子30によって直接的に受けることができる。すなわち、押込操作がされた際に、連結部23を弾性変形させることなくレバー部材2の揺動を規制することができるので、連結部23の剛性が低い場合でも、使用者にレバー部材2の押込操作が規制された状態であることを認識させることができる。
【0055】
(7)磁石32は、その外周面32aと軸部102の中心軸Cとの間の距離が一端部321と他端部322との間の中間の位置である中央部320において最も長く、一端部321又は他端部322に近づくにつれて中心軸Cからの距離が徐々に短くなるので、例えば第2の開口10bから磁石32と電磁石33との間に異物が侵入しても、この異物の掻き出しが促進される。
【0056】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図6から図8を参照して説明する。図6から図8において、第1の実施の形態について説明したものと同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図6は、本実施の形態に係る車両用充電コネクタ1Aを車両側コネクタ91と共に示す一部断面図である。図7は、本実施の形態に係る操作規制機構4を示す斜視図である。
【0058】
車両用充電コネクタ1Aは、ハウジング10A及び操作規制機構4の構成が、第1の実施の形態に係るハウジング10及び操作規制機構3とは異なっている。本実施の形態に係る操作規制機構4は、可動子40と電磁石44とを備えている。可動子40は、軸状のシャフト41を備え、このシャフト41の一方の端部に磁石部42が固定され、他方の端部には磁石部42の回転に伴って回転する回転部材43が固定されている。また、本実施の形態に係るハウジング10Aは、可動子40を回転可能に支持する第1及び第2の支持部105,106を収容空間1a内に有している。
【0059】
電磁石44には、磁性材料からなるヨーク441が設けられ、電線440から供給される励磁電流によって発生した磁束が、このヨーク441によって磁石部42側に導かれる。
【0060】
シャフト41は、その軸方向における回転部材43の両側で、第1及び第2の支持部105,106に支持されている。第1の支持部105は、シャフト41における磁石部42とは反対側の端部を支持し、第2の支持部106は、回転部材43と磁石部42との間にてシャフト41を支持している。
【0061】
ハウジング10Aは、回転部材43に当接してその回転範囲を制限する回り止め部107を有している。回り止め部107の詳細については後述する。また、ハウジング10Aには、電線440を電磁石44側に案内する一対のガイド部材108が設けられている。
【0062】
図7に示すように、可動子40の磁石部42は、円筒状の筒部421と、筒部421の外周面における周方向の一部の範囲に設けられた扇状の磁石422からなる。筒部421の中心部には、シャフト41が相対回転不能に連結されている。磁石422は、周方向の一端部422aがS極に、他端部422bがN極に、それぞれ磁化されている。一端部422aと他端部422bとの間では、磁性がS極からN極に徐々に変化している。
【0063】
回転部材43は、シャフト41の軸方向に厚みを有する直方体状であり、シャフト41が回転部材43をその厚み方向に貫通している。回転部材43とシャフト41とは、例えば圧入によって相対回転不能に連結されている。
【0064】
回転部材43は、シャフト41の軸方向に対して平行な第1乃至第4の側面43a〜43dを有している。回転部材43の長手方向に沿った第1の側面43a及び第3の側面43cは互いに平行であり、シャフト41は、この長手方向の中央部であってかつ第3の側面43c側に偏った位置で回転部材43を貫通している。また、回転部材43の長手方向の両端部における第2の側面43b及び第4の側面43dのうち、第2の側面43bはハウジング10Aの内面100aに対応する曲率を有する曲面で形成され、第4の側面43dは長手方向に対して垂直な平坦面に形成されている。
【0065】
電磁石44に通電されていない操作規制機構4の非作動状態では、図7(a)に示すように、シャフト41の偏心による回転部材43の自重によって、第1の側面43aがシャフト41の鉛直方向下方に位置する状態となる。この状態から電磁石44に通電されると、磁石部42が電磁石44の磁界によって矢印B方向に回転し、一端部422aがヨーク441に対向する。また、この磁石部42の回転に伴って回転部材43が回転し、図7(b)に示す作動状態となる。
【0066】
図8は、ハウジング10Aの本体部100を切断して操作規制機構4をシャフト41の軸方向から見た模式図であり、(a)は操作規制機構4の非作動状態を、(b)は操作規制機構4の作動状態を、それぞれ示す。図8では、第1及び第2の支持部105,106を仮想線(二点鎖線)で示し、回り止め部107及び可動子40(シャフト41,磁石部42,回転部材43)を実線で示している。
【0067】
第1及び第2の支持部105,106には、貫通孔105a,106aが形成され、この貫通孔105a,106aにシャフト41が挿入されている。貫通孔105a,106aの内径はシャフト41の外径よりも大きく、シャフト41は第1及び第2の支持部105,106に支持された状態で回転自在である。
【0068】
回り止め部107は、ハウジング10Aの本体部100における内面100aに立設され、第1の端面107aと第2の端面107bとを有している。図8に示す例では、第1の端面107aと第2の端面107bとのなす角度が90°である。
【0069】
操作規制機構4の非作動状態では、図8(a)に示すように、回転部材43の第3の側面43cが回り止め部107の第2の端面107bに当接することで、回転部材43が回り止め部107によって回転規制されている。この状態では、回転部材43の第1の側面43aがレバー部材2の連結部23に対向する。なお、可動子40を図8(a)に示す位置に付勢するバネ等の弾性体からなる付勢部材を設けてもよい。
【0070】
操作規制機構4の作動状態では、図8(b)に示すように、回転部材43の第1の側面43aが回り止め部107の第1の端面107aに当接することで、回転部材43が回り止め部107によって回転規制されている。この状態では、回転部材43の第4の側面43dがレバー部材2の連結部23に対向する。つまり、回転部材43は、90°の角度範囲でシャフト41を中心として回転する。
【0071】
操作規制機構4の非作動状態におけるシャフト41から回転部材43の第1の側面43aまでの距離は、操作規制機構4の作動状態におけるシャフト41から回転部材43の第4の側面43dまでの距離よりも短い。すなわち、可動子40は、回転部材43の回転によって、この回転部材43とレバー部材2との距離が変化する。
【0072】
操作規制機構4の非作動状態においてレバー部材2の操作部22が押込操作されると、レバー部材2が第1の側面43aに当接することなく図6の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に揺動し、係止部21が車両側コネクタ91に係止された係止状態が解除される。すなわち、操作部22の押込操作が許容され、コネクタ部11を車両側コネクタ91から抜き取ることが可能な状態となる。
【0073】
一方、操作規制機構4の作動状態においてレバー部材2の操作部22が押込操作されると、レバー部材2の連結部23が回転部材43の第4の側面43dに当接する。これにより、レバー部材2の揺動が係止部21と車両側コネクタ91との係止状態が解除されない範囲に規制される。すなわち、使用者による押込操作が回転部材43によって規制され、コネクタ部11を車両側コネクタ91から抜き取ることができない状態となる。
【0074】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態について説明した(1)〜(5)と同様の作用及び効果が得られる。また、操作規制機構4がハウジング10Aの収容空間1aにおける上部に配置されるので、第1及び第2の開口10a,10bから侵入する異物や水滴等が操作規制機構4の動作に与える影響を抑制することが可能となる。
【0075】
以上、本発明の第1及び第2の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0076】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記第1及び第2の実施の形態では、可動子30,40が、その回転位置の変化によってレバー部材2の操作部22の押込操作を規制する作動状態と、この押込操作を許容する非作動状態とが切り替えられるように構成したが、これに限らず、可動子がハウジング内で直線移動することにより、作動状態と非作動状態とが切り替えられるように操作規制機構を構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1,1A…車両用充電コネクタ、1a…収容空間、2…レバー部材、3,4…操作規制機構、7…制御装置、9…車両、10,10A…ハウジング、10a…第1の開口、10b…第2の開口、11…コネクタ部、12…弾性部材、13…充電ケーブル、21…係止部、22…操作部、22a…外面、22b…対向面、23…連結部、30,40…可動子、31…筒部(小径部)、31a…外周面、32…磁石(大径部)、32a…外周面、33…電磁石、41…シャフト、42…磁石部、43…回転部材、43a…第1の側面、43b…第2の側面、43c…第3の側面、43d…第4の側面、44…電磁石、71…充電制御部、72…充電電流供給部、80…駐車スペース、81…スタンド、90…車体、91…車両側コネクタ、92…充電回路、93…充電制御装置、94…蓄電池、95…インバータ、96…電動機、97…変速機、98…前輪、99…後輪、100…本体部、100a…内面、101…支持部、102…軸部、103…保持部材、104…ガイド部材、105…第1の支持部、106…第2の支持部、105a,106a…貫通孔、107…回り止め部、107a…第1の端面、107b…第2の端面、108…ガイド部材、110…コネクタハウジング、130…多芯ケーブル、111…L端子、112…N端子、113…GND端子、114…C端子、115…P端子、210…係止爪、230…貫通孔、310…貫通孔、320…中央部、321…一端部、322…他端部、330…電線、421…筒部、422…磁石、422a…一端部、422b…他端部、440…電線、441…ヨーク、910…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8