(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜の上に、入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の走査プローブ顕微鏡のカンチレバー。
前記貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜は、金、銀、プラチナ又はこれらを含む合金の微粒子又は薄膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の走査プローブ顕微鏡のカンチレバー。
前記探針がカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバ、酸化シリコン、高密度カーボン(HDC:DLC)、タングステン(W)で形成されていることを特徴とする請求項5記載の走査プローブ顕微鏡のカンチレバー。
前記磁性体膜の表面に形成した貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜の上に、入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜を更に形成することを特徴とする請求項7記載の走査プローブ顕微鏡のカンチレバーの製造方法。
前記カンチレバーの探針は、前記磁性膜の表面に貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜が形成されており、前記近接場光を発生させた試料の表面に前記探針を近接させることにより、前記近接場光により前記貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜から散乱光を発生させることを特徴とする請求項9記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査装置。
前記カンチレバーの探針の表面に形成された磁性膜の上に、入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜が形成されており、前記近接場光を発生させた試料の表面に前記探針を近接させることにより前記探針の表面の磁性膜から発生した散乱光を前記入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜により前記近接場光とは異なる波長の散乱光を発生させることを特徴とする請求項9記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査装置。
前記カンチレバーの探針の表面に形成された磁性膜の上には貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜が形成されており、該貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜の上には入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜が形成されており、前記近接場光を発生させた試料の表面に前記探針を近接させることにより前記探針に形成した貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜から発生した散乱光の波長を前記入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜で変換して前記近接場光と異なる波長の散乱光を発生し、該発生した散乱光を前記散乱光検出手段で検出することを特徴とする請求項9記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査装置。
前記カンチレバーの探針は、酸化シリコン、窒化シリコン、高密度カーボン(HDC:DLC)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバ(CNF)、タングステン(W)の何れかを材料とする細線で形成されていることを特徴とする請求項9又は13に記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査装置。
前記上下に振動しているカンチレバーの探針の前記磁性膜の表面には貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜が形成されており、前記熱アシスト磁気ヘッド素子の近接場光発光部から発生させた近接場光に前記探針を近接させることより前記探針に形成した微粒子又は薄膜で増強させた散乱光を発生させ、該増強させた散乱光を検出することにより前記近接場光の強度分布、前記近接場光発光部の表面形状、磁界発生部と近接場光発光部との位置関係の情報を得ることを特徴とする請求項16記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査方法。
前記上下に振動しているカンチレバーの探針の前記磁性膜の表面には貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜が形成され、該微粒子又は薄膜の上に入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜が形成されており、前記熱アシスト磁気ヘッド素子の近接場光発光部から発生させた近接場光に前記探針を近接させることより前記探針に形成した微粒子又は薄膜で増強させた散乱光を発生させ、該発生させた散乱光を前記入射した光の波長を変換して出射させる材料の微粒子又は薄膜により波長を変換して出射させ、該波長を変換して出射させた散乱光を検出することにより前記近接場光の強度分布、前記近接場光発光部の表面形状、磁界発生部と近接場光発光部との位置関係の情報を得ることを特徴とする請求項16記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査方法。
前記上下に振動しているカンチレバーの探針の前記磁性膜の表面には貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜が形成されており、前記レーザを前記カンチレバーに照射することにより前記貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜から前記近接場光を発生させることを特徴とする請求項20記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査方法。
前記上下に振動しているカンチレバーの探針の表面に形成された磁性膜が、前記熱アシスト磁気ヘッド素子の磁界発生部で発生された交流磁界を通過するときに該交流磁界の影響を受けることによる前記カンチレバーの振動の変化を検出することにより前記磁界発生部の位置情報を得ることを特徴とする請求項16又は20に記載の熱アシスト磁気ヘッド素子の検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
図1A及び
図1Bにより、本発明の実施例1に係る近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10の概略の構成について説明する。
図1Aは本実施例に係る近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10の概略の構成を示す平面図、
図1Bは、その側面図である。
【0021】
図1A及び
図1Bにおいて、近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10は、板状のレバー1の先端部に四面体構造をしている探針4が形成されている。レバー1と探針4とはシリコン(Si)で形成されている。レバー1と探針4の正面側には薄い磁性膜2(例えばCo、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等)が形成されており、磁性膜2の表面には貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3が形成されている。カンチレバー10は、レバー1と探針4、薄い磁性膜2、貴金属の粒子又は薄膜3とを備えて、近接場光と磁界との両方を測定できる構成となっている。
【0022】
本実施例における近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10の各部分の役割は以下の通りである。
【0023】
近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10は、カンチレバーの構成として一般的な走査型プローブ顕微鏡におけるものと形状的には同様であるが、本実施例においては、近接場光と磁界との両方を測定できるようにするために、カンチレバー10のレバー1の先端の探針4の表面に形成した薄い磁性膜2は、磁界を測定する際の感度と分解能を決め、磁界を測定する時に被測定物の磁場を感受する。また、貴金属(例えば金又は銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3は、探針4が近接場光発生領域内に位置した時に局在型表面プラズモン増強効果により増強された散乱光を発生する。また、外部からレーザ光が照射された場合には、微粒子または薄膜3は励起され、近接場光を発光する。
【0024】
次に、
図2A乃至
図2Cにより、本発明の実施例1に係る近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10の製造方法について説明する。
【0025】
まず、
図2Aに示すように、レバー1とレバー1の先端部分に四面体構造をしている探針4を形成する。次に、探針4の真正面の側から、レバー1と探針4とに磁性膜2をコーティングする。磁性膜2をコーティングする手段としては、真空蒸着装置、又は、スパッタリング装置を用いればよい。磁性膜の成膜量は実際測定対象の磁界強度とサイズにより決めるが、一般的に10nm〜40nmである。磁性体の材料は測定目的によって、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等の軟磁性材料を選べるし、Co、Al−Ni−Co、Fe−Pt等の硬磁性材料も選べる。
【0026】
次に、
図2Bに示したように、探針4の磁性膜2をコーティングした面に、正面の側から貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を形成して近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10が完成する。微粒子または薄膜3の材料はAu、Pt、Cu、Ag等をはじめ、貴金属または貴金属を含む合金材料である。薄膜の膜厚は1〜20nmである。
【0027】
この微粒子または薄膜3を形成する面を、
図2Cにカンチレバー10’として示したように、斜後方の2方向から、角度をつけて、付加することも可能である。この場合も、微粒子または薄膜3の材料はAu、Pt、Cu、Ag等をはじめ、貴金属または貴金属を含む合金材料である。この合金材料が薄膜である場合には、膜厚は1〜20nmであり、微粒子である場合には、その径は4〜20nmである。
【0028】
図3Aは、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100の第1実施形態の基本的な構成図である。
図3Aの熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100は、磁気ヘッド素子の製造工程において、多数の薄膜磁気ヘッド素子が形成されたウエハを加工してスライダ単体(薄膜磁気ヘッドチップ)を切り出す前の工程のローバー40(ヘッドスライダが配列されたブロック)の状態で熱アシスト磁気ヘッド素子の発生する近接場光の強度分布を測定することが可能なものである。通常、3cm〜10cm程度の細長いブロック体として多数の薄膜磁気ヘッド素子が形成されたウエハから切り出されたローバー40は、40個〜90個程度のヘッドスライダ(薄膜磁気ヘッド素子)が配列された構成となっている。
【0029】
本実施例に係る熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100は、このローバー40をワークとして所定の検査を行うように構成されている。ローバー40は、通常、図示していないトレイ内に20〜30本程度、短軸方向に所定間隔で配列収納されている。図示していないハンドリングロボットを用いて、ローバー40を図示していないトレイからで一本ずつ取り出して検査ステージ101に搬送する。検査ステージ101に搬送設置されたローバー40は後述のように検査される。
【0030】
本実施例に係る熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100は、走査型プローブ顕微鏡をベースとしている。熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100の検査ステージ101は、ローバー40をX,Y方向に移動可能なXステージ106、Yステージ105を備えて構成されている。
【0031】
ローバー40は、その長軸方向の片側面がYステージ105の上面に設けられているローバー100の位置決め用の載置部114の基準面1141(Yステージ105に形成された段差面)に一旦突き当てられることによってY方向に位置決めされる。この載置部114には、ローバー40の形状にほぼ合致した段差部1142が設けられている。ローバー40は、
図3B(ローバー40を載置していない状態のYステージ105と位置決め用の載置部114の平面図)に示すようにこの段差部1142の底面1143と側面1144にそれぞれ当接されることによってZ方向及びX方向の所定位置に設置されるようになっている。
【0032】
段差部の後面(基準面1141)には、ローバー40の後側面(熱アシスト磁気ヘッド素子の各接続端子のある面の反対面)が当接される。各当接面1143及び1144は、Xステージ106の移動方向(X軸)及びZステージ104の移動方向(Z軸)にそれぞれ平行で、かつ、直交した位置関係となる基準面を備えているので、ローバー40をYステージ105の段差部1142の底面1143と側面1144に当接設置させることによってX方向とZ方向の位置決めが実行されるようになっている。
【0033】
Yステージ105の上方にはローバー40の位置ずれ量測定用のカメラ103が設けられている。Zステージ104は検査ステージ101のカラム1011に固定されており、カンチレバー10をZ方向に移動させるものである。検査ステージ101のXステージ106、Yステージ105、Zステージ104は、それぞれ図示していないピエゾ素子で駆動されるピエゾステージで構成されている。ローバー40の所定の位置決めが終了すると、ローバー40に対して、制御部PC30から出力する励磁信号と発光用信号又は直接に励起用レーザ301を供給し、ローバー40は、載置部114に熱アシスト磁気ヘッド素子の書込み磁界発生部402が磁界発生可能、近接場光発光部404が発光可能な状態で、Yステージ105に設けた図示していない吸着手段により吸着保持される。
【0034】
ピエゾドライバ107は、この検査ステージ101のXステージ106、Yステージ105、Zステージ104をそれぞれ駆動するピエゾ素子(図示せず)を駆動制御するものである。制御部PC30は、モニタを含むパーソナルコンピュータ(PC)を基本構成とする制御用コンピュータで構成されている。図に示すように、検査ステージ101のYステージ105上に載置されたローバー40の上方の対向する位置には、前記近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10が配置されている。カンチレバー10は、Zステージ104の下側に設けられた加振部122に取り付けられている。加振部122はピエゾ素子で構成され、ピエゾドライバ107からの励振電圧によって機械的共振周波数近傍の周波数の交流電圧が印加され、カンチレバー10の先端部の探針4は上下方向(Z方向)に振動される。
【0035】
カンチレバー10の探針4のZ方向の振動は、半導体レーザ素子109と、4分割光ディテクタ素子からなる変位センサ110とを備えて構成される変位検出部130により検出される。この変位検出部130においては、半導体レーザ素子109から出射したレーザがカンチレバー1の探針4が形成されている面と反対側の面に照射され、カンチレバー1で反射したレーザは変位センサ110に入射する。
【0036】
変位センサ110は、受光面が4つの領域に分割された4分割センサであり、変位センサ110の分割されたそれぞれの受光面に入射したレーザはそれぞれ光電変換されて4つの電気信号として出力される。ここで、変位センサ110は、カンチレバー10が加振部122により振動が加えられていない状態、即ち静止した状態で半導体レーザ素子109からレーザが照射されたときに、カンチレバー10からの反射光が4つに分割された受光面のそれぞれに等しく入射するような位置に設置されている。
【0037】
差動アンプ111は、変位センサ110から出力される4つの電気信号の差分信号に所定の演算処理を施してDCコンバータ112に出力する。すなわち、差動アンプ111は、変位センサ110から出力される4つの電気信号間の差分に対応した変位信号をDCコンバータ112に出力する。従って、カンチレバー10が加振部122により加振されていない状態では、差動アンプ111からの出力はゼロになる。DCコンバータ112は、差動アンプ111から出力される変位信号を実効値の直流信号に変換するRMS−DCコンバータ(Root Mean Squared value to Direct Current converter)で構成される。
【0038】
差動アンプ111から出力される変位信号は、カンチレバー10の変位に応じた信号であり、カンチレバー10は振動しているので交流信号となる。DCコンバータ112から出力される信号は、フィードバックコントローラ113に出力される。フィードバックコントローラ113は、カンチレバー10の現在の振動の大きさをモニタするための信号として制御部PC30にDCコンバータ112から出力される信号を出力すると共に、カンチレバー10の励振の大きさを調整するためのZステージ104の制御用信号として制御部PC30を通じて、ピエゾドライバ107にDCコンバータ112から出力される信号を出力する。この信号を制御部PC30でモニタし、その値に応じて、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、測定開始前に、カンチレバー10の初期位置を調整するようにしている。
【0039】
この実施の形態では、ハードディスクドライブのヘッド浮上高さをカンチレバー10の初期位置として設定する。発信機102は、カンチレバー10を励振するための発振信号をピエゾドライバ107に供給するものである。ピエゾドライバ107は、この発信機102からの発振信号に基づいて加振部122を駆動してカンチレバー10を所定の周波数で振動させる。
【0040】
図4A及び
図4Bは、
図3Aに示した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100による磁界と近接場光の検出原理の概略を示す図であり、ローバー40に形成されている熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402と熱アシスト光(近接場光)発光部404の構成を拡大してカンチレバー10と一緒に示した図である。
【0041】
図4Aに示すように、カンチレバー10は、振動したときの最下点Hfが、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部401の表面に接触した状態から数10nm離れた位置(高さ)の間で、熱アシスト磁気ヘッド素子部401からの磁界信号と近接場光の検出信号とが最も大きく、分解能が良く検出できる高さにカンチレバー10の磁性膜及び貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を形成した探針4の先端部41が位置するように、Zステージ104によって位置決めされる。カンチレバー10は、ローバー40のヘッドの記録面410に平行する平面に数百nm〜数μmの範囲内でスキャンされる。
【0042】
この実施の形態では、Xステージ106及びYステージ107によってローバー40が移動される。このとき、熱アシスト磁気ヘッド素子部401は
図3Aに示した制御部PC30から出力される励磁信号と発光用信号301又は直接に励起用レーザ光を供給され、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402は書込み磁界(交流磁界)403を発生し、近接場光発光部404は熱アシスト光(近接場光)405を発光させる。
【0043】
カンチレバー10が加振部122により振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106をピエゾドライバ107で制御されたピエゾ素子(図示せず)により一定の速度でX方向に移動させることにより、カンチレバー10の磁性体2と貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3が表面に形成された探針4が書込み磁界発生部402により発生した書込み磁界403の中に入ると、探針4の表面に形成された薄膜の磁性体2が磁化され、探針4が磁気力を受けることにより、カンチレバー10の振動状態が変化する。
【0044】
この振動の変化を
図3の変位センサ110で検出する。すなわち、カンチレバー10の振動状態が変わると、半導体レーザ素子109から発射されてカンチレバー10で反射されたレーザの変位センサ110の4つに分割された受光面への入射位置が変化する。この変位センサ110の出力を差動アンプ111で検出することによりカンチレバー10の振動状態の変化を検出することができる。その結果、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界403の強度分布を検出することが可能となる。
【0045】
一方、
図4Bに示すように、カンチレバー10が加振部122によりローバー40の表面410に対して上下方向に振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106を一定の速度でX方向に移動させることにより探針4が近接場光発光部404により近接場光405が発生している領域に到達すると、探針4の表面の磁性膜3の上に形成された貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3による局在型表面プラズモン増強効果により、近接場光405が発生している領域に到達した探針4から発生した散乱光406が増強される。この増強された散乱光406は、カンチレバー10の近傍に配置された光検出器115で検出される。
【0046】
このようにして、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の近接場光発光部404からこの近接場光発光部404の極近傍の領域に発生した近接場光を、近接場光発光部404から比較的離れた場所で検出することが可能となる。更に、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界(交流磁界)403と近接場光発光部404から発生する熱アシスト光(近接場光)405との位置関係も測定することが可能となる。
【0047】
製造工程途中のできるだけ早い段階で熱アシスト磁気ヘッド素子の書込み磁界と近接場光の強度分布の検査及び二者の位置関係の測定を行うことができるという効果がある。
【0048】
図5は、上述した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100を用いてローバー40を検査する動作の手順を示すフロー図である。
【0049】
先ず図示していないハンドリングユニットで供給トレイからローバー40を1本取り出し、検査ステージ101上に搬送してYステージ105の基準面1141にローバー40を押し当てた状態でYステージ105と載置部114により形成された段差部1142にローバー40を載置する(S501)。次に、カメラ103でローバー40を撮像してローバー40の位置情報を得、この得た位置情報に基づいてXステージ106又はYステージ105を駆動してローバー40の位置を調整するアライメントを行い(S502)、ローバー40を測定位置に移動する(S503)。
【0050】
次に、熱アシスト磁気ヘッド素子部401に励磁信号と発光用信号301又は直接に励起用レーザ光を供給して(S504)、磁界発生部402から書込み磁界(交流磁界)403を発生させ、近接場光発光部404から光アシスト光(近接場光)405を発生させる。次に、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、カンチレバー10を熱アシスト磁気ヘッド素子部401の記録面410にアプローチする(S505)。
【0051】
次に、ピエゾドライバ107によりピエゾ素子(図示せず)を駆動してXステージ106をX方向に一定の速度で移動させながら加振部122でカンチレバー10を振動させることにより、カンチレバー10を熱アシスト磁気ヘッド素子部401の記録面410に平行な平面内で数百nm〜数μmの範囲でスキャンする(S506)。
【0052】
このスキャンにより、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402から発生する書込み磁界403によるカンチレバー10の振動の変化を半導体レーザ素子109と位置センサ110とを備えて構成される変位検出部130からの出力信号から検出され、磁界発生部402の位置情報と磁界発生部402が発生する磁界の分布情報が得られる。
【0053】
一方、近接場光発光部404から発生した近接場光405の散乱光は、スキャンによりこの近接場光405の発生領域内に到達したカンチレバー10の探針4の表面に形成した貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3による局在型表面プラズモン増強効果により増強されて検出器115により検出される。
【0054】
この増強された近接場光を検出した検出器115からの検出信号302を制御部PC30で処理し、光アシスト光(近接場光)405のそれぞれの強度分布を求め、近接場光発光部404の位置情報と表面形状の情報を得る。そして、磁界発生部402の位置情報と近接場光発光部404の位置情報とから磁界発生部402と近接場光発光部404の位置関係の測定(側長)を行い(S507)、磁界発生部402と近接場光発光部404との間隔が、所定の間隔で形成されているかをチェックする。
【0055】
次に、更に測定する箇所があるかをチェックし(S508)、更に測定する箇所がある場合にはZステージ104でカンチレバー10を上昇させた状態で次のヘッドの測定位置に移動して(S509)、S504からの動作を繰返す。一方、更に測定する箇所がない場合には、Zステージ104でカンチレバー10を上昇させた状態で測定が終了したローバー40を図示していないハンドリングユニットで取出して回収トレイに収納する(S510)。
【0056】
次に、図示していない供給トレイに未検査のローバー40があるか否かをチェックし(S511)、未検査のローバー40がある場合にはS501に戻って未検査のローバー40を供給トレイ(図示せず)から取出して(S512),検査ステージ101に搬送してS501からのステップを実行する。一方、供給トレイうちに未検査のローバー40が無い場合には、測定を終了する(S513)。
【0057】
本実施例によれば、熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100でローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子401から発生する書込み磁界(交流磁界)と熱アシスト光(近接場光)とをカンチレバー10による1回のスキャンで検出することができ、製造工程の上流で、かつ、比較的短い時間で検査を行うことができる。
【0058】
なお、探針4としては、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、高密度カーボン(HDC:DLC)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバ(CNF)、タングステン(W)の何れかを材料とする細線で形成されているものを用いることができる。
【0059】
また、上記した実施例においては、探針4の正面側に形成した磁性膜2の上に貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を形成した構成で説明したが、本実施例はこれに限られるものではない。例えば、微粒子または薄膜3を形成せずに磁性膜2だけを形成した探針4を用いても、上記実施例で説明した場合に比べて検出信号のレベルはやや低くなるが、熱アシスト光(近接場光)により探針4から発生した散乱光を検出することが可能であり、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子401から発生する書込み磁界(交流磁界)と熱アシスト光(近接場光)とをカンチレバー10による1回のスキャンで検出することができる。
【0060】
また、探針4の表面に磁性膜2を薄膜状に形成した構成の例で説明したが、探針4に磁性材料をドーピングした構成にしても良い。
【0061】
また、上記実施例ではローバー40を検査対象としたが、本実施例ではこれに限定されるものではなく、ローバー40から切り出したチップ(スライダ単体又はヘッド素子単体)1個ずつを検査対象としてもよい。
【実施例2】
【0062】
図6は、本発明の第2の実施例に係る熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置600の全体の構成を示すブロック図である。
図6に示した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置600は、実施例1で説明した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100と基本的には同じ構造を有している。
図6に示した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置600の構成において、
図3Aで説明した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100の構成と共通する部品については、同じ番号を付した。
【0063】
実施例2において、実施例1と異なる点は、カンチレバー10の真上にレーザ光源501を設置し、レーザ光源501によりカンチレバー10の上方からレーザを照射することにより探針4の表面に形成した貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3により近接場光を発生させ、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部401に当って散乱した近接場光を検出器515で検出するようにした点、及び、制御部PC30から近接場光発光部404に対して光アシスト光(近接場光)405を発生させるような発光用信号又はレーザを出力しない点である。
【0064】
実施例2において、
図7Aに示すように、制御部PC30から発振された励磁信号311により熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402に書込み磁界403を発生させ、カンチレバー10で走査して書込み磁界403の強度分布を計測することについては、実施例1において
図4Aを用いて説明した場合と同じである。
【0065】
このように、書込み磁界発生部402が発生する書込み磁界403の強度分布を計測することにより、書込み磁界発生部402の位置を確定することができる。この確定した書込み磁界発生部402の位置情報に基づいて、近接場光発光部404の位置を推定することが可能となる。
【0066】
一方、
図7Bに示すように、本実施例においては、近接場光発光部404には制御部PC30から実施例1の場合のような近接場光発光用の信号又はレーザが供給されず、レーザ光源501から発射されたレーザにより探針4の表面の薄膜磁性体2の上に形成された貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3から発生した近接場光が熱アシスト磁気ヘッド素子部401の表面に照射される。
【0067】
本実施例では、このようにして近接場光発光部404、磁界発生部402の表面状態を検出するが、この際、カンチレバー10は、振動したときの最下点Hfがローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部401の記録面410に接触した状態から数10nm離れた位置(高さ)の間で、熱アシスト磁気ヘッド素子部401からの磁界信号と近接場光の検出信号とが最も大きく、分解能がよく検出できる高さにカンチレバー10の磁性膜2及び貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を表面に形成した探針4の先端部が位置するように、Zステージ104によってカンチレバー10がZ方向に位置決めされる。
【0068】
このように、実施例2においては、磁界発生部402からの書込み磁界を検出するときと近接場光を検出するときとで、Zステージを制御してカンチレバーの高さを切替える。
【0069】
カンチレバー10は、ローバー40のヘッドの記録面410に平行な平面に数百nm〜数μmの範囲内でスキャンされる。この実施例では、Xステージ106及びYステージ107によってローバー40が移動されることでスキャンが行われる。
【0070】
探針4の先端の磁性膜2の上に形成された貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3は、レーザ光源501から発射されたレーザが照射されているため、近接場光を発生する。この発生した近接場光は、ローバー40がカンチレバー10によってスキャンされることによりカンチレバー10の探針4の先端部分41が熱アシスト磁気ヘッド素子部401の記録面410上で散乱される。
【0071】
この近接場光の散乱の度合いは、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の記録面410の形状によって異なるために、探針4が近接場光発光部404及びその近傍、書込み磁界発生部402及びその近傍を通過するときと記録面410上の他の平坦な領域を通過するときとで、探針4の先端部分41から発生した近接場光505の散乱のされ方が異なる。その散乱光506を光検出器515で検出して散乱光の強度分布を求めることにより、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の近接場光発光部404と磁界発生部402の表面形状及び位置関係を検査することが可能となる。
【0072】
本実施例では、磁界発生部402からの書込み磁界を検出するときと近接場光を検出するときとで、ローバー40のヘッドの記録面410上の同じ領域をカンチレバーの高さを切替えて2回スキャンすることになる。
【0073】
図7Aで説明した方法により求めた磁界発生部402の位置情報と、
図7Bで説明した方法により求めた近接場光発光部404と磁界発生部402の位置関係から、近接場光発光部404の位置情報を求めることができる。本実施例によれば、近接場光発光部404を発光させる手段を用いなくても近接場光発光部404の位置情報を求めることが可能になる。
【0074】
製造工程途中のできるだけ早い段階で熱アシスト磁気ヘッド素子の書込み磁界の強度分布、書込み磁界発生部と近接場光発光部の表面形状の検査及び二者の位置関係の測定を行うことができるという効果がある。
【0075】
上記した実施例1および2で説明したカンチレバー10の探針4は、角錐形状をしたものについて説明したが、本発明ではこれに限られず、探針4としては、レバー1とは異なる材質の酸化シリコン、窒化シリコン、高密度カーボン(HDC:DLC)、カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)や、カーボンナノファイバ(Carbon Nano Fiber:CNF)、タングステン(W)等の何れかを材料とする細線で形成されているものを用いることができる。
【0076】
また及び貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子又は薄膜3は、
図1B及び
図2Bに示した正面の側から探針4であるカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバの表面に形成すればよい。また、
図2Cに示したように、背面の側から形成しても良い。
【0077】
また、探針4の表面に磁性膜2を薄膜状に形成した構成の例で説明したが、探針4に磁性材料をドーピングした構成にしても良い。
【0078】
更に、上記した実施例において、探針4の正面側に形成した磁性膜2の上に貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を形成した構成で説明したが、本実施例はこれに限られるものではない。例えば、微粒子または薄膜3を形成せずに磁性膜2だけを形成した探針4を用いても、上記実施例で説明した場合に比べて検出信号のレベルはやや低くなるが、カンチレバー10の上方から照射されたレーザを受けて探針4の正面側に形成した磁性膜2により近接場光を発生させ、熱アシスト磁気ヘッド素子部401に当たって散乱した光(散乱光)を検出することが可能である。これにより、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子401から発生する書込み磁界(交流磁界)と熱アシスト磁気ヘッド素子401に照射した近接場光による散乱光とをカンチレバー10による1回のスキャンで検出することができる。
【0079】
なお、上記実施例においては、磁気ヘッド素子をローバーの状態で検査することについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、磁気ヘッド素子をローバーから1個ずつ切り離したチップ(スライダー又はヘッド素子単体)の状態でも、実施例2で説明した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置を用いて磁気ヘッド素子から発生する近接場光による散乱光と磁界との両方を測定し、検査することができる。
【実施例3】
【0080】
図8A及び
図8Bにより、本発明の実施例3に係る近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10の概略の構成について説明する。
図8Aは本実施例に係る近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー210の概略の構成を示す側面図、
図8Bは、カンチレバー310の概略の構成を示す側面図である。
【0081】
図8Aにおいて、近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー210またカンチレバー310は、板状のレバー1の先端部に四面体構造をしている探針4が形成されている。レバー1と探針4とはシリコン(Si)で形成されている。レバー1と探針4の正面側には薄い磁性膜2(例えばCo、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等)が形成されており、磁性膜2の表面には光の波長を変換可能な材料(蛍光材料(例えば希土類イオンをドープしたセラミックス材料、希土類とバリウムの複合塩化物材料等)、高調波が発生できる材料(例えばパラニトロアニリン(pNA)、PDA(Poly Diallymethylammonium)ナノ結晶等)、またはラマン散乱が発生できる材料(例えば、アデニンナノ結晶、アゾベンゼンナノ結晶等の有機物ナノ結晶体や、生体分子、半導体等))の微粒子または薄膜801が形成されている。カンチレバー210は、レバー1と探針4、薄い磁性膜2、光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801とを備えて、近接場光と磁界との両方を測定できる構成となっている。
【0082】
図8Bにおいて、近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー210またカンチレバー310は、板状のレバー1の先端部に四面体構造をしている探針4が形成されている。レバー1と探針4とはシリコン(Si)で形成されている。レバー1と探針4の正面側には薄い磁性膜2(例えばCo、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等)が形成されており、磁性膜2の表面には貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3が形成されており、貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3の隙間または表面には光の波長を変換可能な材料(蛍光材料(例えば希土類イオンをドープしたセラミックス材料、希土類とバリウムの複合塩化物材料等)、高調波が発生できる材料(例えばパラニトロアニリン(pNA)、PDA(Poly Diallymethylammonium)ナノ結晶等)、またはラマン散乱が発生できる材料(例えば、アデニンナノ結晶、アゾベンゼンナノ結晶等の有機物ナノ結晶体や、生体分子、半導体等))の微粒子または薄膜801が形成されている。カンチレバー310は、レバー1と探針4、薄い磁性膜2、貴金属の粒子又は薄膜3と、光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801とを備えて、近接場光と磁界との両方を測定できる構成となっている。
【0083】
本実施例における近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー210の各部分の役割は以下の通りである。
【0084】
近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー210は、カンチレバーの構成として一般的な走査型プローブ顕微鏡におけるものと形状的には同様であるが、本実施例においては、近接場光と磁界との両方を測定できるようにするために、カンチレバー210のレバー1の先端の探針4の表面に形成した薄い磁性膜2は、磁界を測定する際の感度と分解能を決め、磁界を測定する時に被測定物の磁場を感受する。また、光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801は、探針4に近接場光が当った時に、近接場光による散乱光の波長を変換し、近接場光と異なる波長の散乱光を発生させる。
【0085】
本実施例における近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー310の各部分の役割は以下の通りである。
【0086】
近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー310は、カンチレバーの構成として一般的な走査型プローブ顕微鏡におけるものと形状的には同様であるが、本実施例においては、近接場光と磁界との両方を測定できるようにするために、カンチレバー310のレバー1の先端の探針4の表面に形成した薄い磁性膜2は、磁界を測定する際の感度と分解能を決め、磁界を測定する時に被測定物の磁場を感受する。
【0087】
また、貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3は、探針4に近接場光が当った時に局在型表面プラズモン増強効果により、近接場光による散乱光を増強する。また、光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801は、増強された近接場光による散乱光の波長を変換し、近接場光と異なる波長の散乱光を発生させる。
【0088】
次に、
図9A乃至
図9Cにより、本発明の実施例3に係る近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー310の製造方法について説明する。
【0089】
まず、
図9Aに示すように、レバー1とレバー1の先端部分に四面体構造をしている探針4を形成する。次に、探針4の真正面の側から、レバー1と探針4とに磁性膜2をコーティングする。磁性膜2をコーティングする手段としては、真空蒸着装置、又は、スパッタリング装置を用いればよい。磁性膜の成膜量は実際測定対象の磁界強度とサイズにより決めるが、一般的に10nm〜40nmである。磁性体の材料は測定目的によって、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等の軟磁性材料を選べるし、Co、Al−Ni−Co、Fe−Pt等の硬磁性材料も選べる。
【0090】
次に、
図9Bに示したように、探針4の磁性膜2をコーティングした面に、正面の側から貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を形成して近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー10が完成する。微粒子または薄膜3の材料はAu、Pt、Cu、Ag等をはじめ、貴金属または貴金属を含む合金材料である。薄膜の膜厚は1〜20nmである。
【0091】
この微粒子または薄膜3を形成する面を、
図2Cにカンチレバー10’として示したように、斜後方の2方向から、角度をつけて、付加することも可能である。この場合も、微粒子または薄膜3の材料はAu、Pt、Cu、Ag等をはじめ、貴金属または貴金属を含む合金材料である。この合金材料が薄膜である場合には、膜厚は1〜20nmであり、微粒子である場合には、その径は1〜20nmである。
【0092】
次に、
図9Cに示したように、前記貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3の隙間又は表面に光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801を形成して近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー310が完成する。光の波長を変換可能な材料微粒子または薄膜801の材料は蛍光材料(例えば希土類イオンをドープしたセラミックス材料、希土類とバリウムの複合塩化物材料等)、高調波が発生できる材料(例えばパラニトロアニリン(pNA)、PDA(Poly Diallymethylammonium)ナノ結晶等)、ラマン散乱が発生できる材料(例えば、アデニンナノ結晶、アゾベンゼンナノ結晶等の有機物ナノ結晶体や、生体分子、半導体等)である。この材料が薄膜である場合には、膜厚は1〜20nmであり、微粒子である場合には、その径は1〜20nmである。
【0093】
カンチレバー210の製造方法はカンチレバー310の製造方法から貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を除いたことである。
【0094】
図10Aは、本実施例に係る熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置1000の基本的な構成図である。
図10Aに示した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置1000は、実施例1で
図3A及び
図3Bを用いて説明した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100と、カンチレバー210,310の構成と検出器115にフィルタ1015を設けた構成以外は同じであり、同じ部品には同じ番号を付してある。実施例1で説明した検査装置と共通する構成については、説明を省略する。また、
図5で説明した検査手順のフローも共通であるので、説明を省略する。
【0095】
図11A及び
図11Bは、
図10Aに示した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100による磁界と近接場光の検出原理の概略を示す図であり、ローバー40に形成されている熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402と熱アシスト光(近接場光)発光部404の構成を拡大してカンチレバー210と一緒に示した図である。
【0096】
図11Aに示すように、カンチレバー210は、振動したときの最下点Hfが、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部401の表面に接触した状態から数10nm離れた位置(高さ)の間で、熱アシスト磁気ヘッド素子部401からの磁界信号と近接場光の検出信号が最も大きく、分解能が良く検出できる高さにカンチレバー210の磁性膜2、波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801を形成した探針4の先端部41が位置するように、Zステージ104によって位置決めされる。カンチレバー210は、ローバー40のヘッドの記録面410に平行する平面に数百nm〜数μmの範囲内でスキャンされる。
【0097】
この実施の形態では、Xステージ106及びYステージ107によってローバー40が移動される。このとき、熱アシスト磁気ヘッド素子部401は
図10Aに示した制御部PC30から出力される励磁信号と発光用信号301又は直接に励起用レーザ光を供給され、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402は書込み磁界(交流磁界)403を発生し、近接場光発光部404は熱アシスト光(近接場光)405を発光させる。
【0098】
カンチレバー210が加振部122により振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106をピエゾドライバ107で制御されたピエゾ素子(図示せず)により一定の速度でX方向に移動させることにより、カンチレバー210の磁性体2と波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801が表面に形成された探針4が書込み磁界発生部402により発生した書込み磁界403の中に入ると、探針4の表面に形成された薄膜の磁性体2が磁化され、探針4が磁気力を受けることにより、カンチレバー210の振動状態が変化する。
【0099】
この振動の変化を
図10の変位センサ110で検出する。すなわち、カンチレバー210の振動状態が変わると、半導体レーザ素子109から発射されてカンチレバー210で反射されたレーザの変位センサ110の4つに分割された受光面への入射位置が変化する。この変位センサ110の出力を差動アンプ111で検出することによりカンチレバー210の振動状態の変化を検出することができる。その結果、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界403の強度分布を検出することが可能となる。
【0100】
一方、
図11Bに示すように、カンチレバー210が加振部122によりローバー40の表面410に対して上下方向に振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106を一定の速度でX方向に移動させることにより探針4が近接場光発光部404により近接場光405が発生している領域に到達すると、探針4の表面の磁性膜3の上に形成された光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801により近接場光405による散乱光406が波長を変換され、近接場光と異なる波長の散乱光1106を発生させる。この散乱光1106のみの光は、カンチレバー210の近傍に配置されたフィルタ1015を通じて、光検出器115で検出される。
【0101】
このようにして、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の近接場光発光部404からこの近接場光発光部404の極近傍の領域に発生した近接場光を、近接場光発光部404から比較的離れた場所で検出することが可能となる。更に、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界(交流磁界)403と近接場光発光部404から発生する熱アシスト光(近接場光)405との位置関係も測定することが可能となる。
【0102】
また、測定する際に、検出が容易である磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界(交流磁界)403を先に検出し、ヘッド素子の設計情報に基づき、近接場光発光部404の位置を推測するという高速アライメントが可能となる。(実施例1〜3共通)
製造工程途中のできるだけ早い段階で熱アシスト磁気ヘッド素子の書込み磁界と近接場光の強度分布の検査及び二者の位置関係の測定を行うことができるという効果がある。
【0103】
図12A及び
図12Bは、
図10Aに示した熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置100による磁界と近接場光の検出原理の概略を示す図であり、ローバー40に形成されている熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402と熱アシスト光(近接場光)発光部404の構成を拡大してカンチレバー310と一緒に示した図である。
【0104】
図12Aに示すように、カンチレバー310は、振動したときの最下点Hfが、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子部401の表面に接触した状態から数10nm離れた位置(高さ)の間で、熱アシスト磁気ヘッド素子部401からの磁界信号と近接場光の検出信号とが最も大きく、分解能が良く検出できる高さにカンチレバー310の磁性膜2、貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3および、波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801を形成した探針4の先端部41が位置するように、Zステージ104によって位置決めされる。カンチレバー310は、ローバー40のヘッドの記録面410に平行する平面に数百nm〜数μmの範囲内でスキャンされる。
【0105】
この実施の形態では、Xステージ106及びYステージ107によってローバー40が移動される。このとき、熱アシスト磁気ヘッド素子部401は
図10Aに示した制御部PC30から出力される励磁信号と発光用信号301又は直接に励起用レーザ光を供給され、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の書込み磁界発生部402は書込み磁界(交流磁界)403を発生し、近接場光発光部404は熱アシスト光(近接場光)405を発光させる。
【0106】
カンチレバー310が加振部122により振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106をピエゾドライバ107で制御されたピエゾ素子(図示せず)により一定の速度でX方向に移動させることにより、カンチレバー310の磁性体2と貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3と波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801が表面に形成された探針4が書込み磁界発生部402により発生した書込み磁界403の中に入ると、探針4の表面に形成された薄膜の磁性体2が磁化され、探針4が磁気力を受けることにより、カンチレバー310の振動状態が変化する。
【0107】
この振動の変化を
図10Aの変位センサ110で検出する。すなわち、カンチレバー310の振動状態が変わると、半導体レーザ素子109から発射されてカンチレバー310で反射されたレーザの変位センサ110の4つに分割された受光面への入射位置が変化する。この変位センサ110の出力を差動アンプ111で検出することによりカンチレバー310の振動状態の変化を検出することができる。その結果、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界403の強度分布を検出することが可能となる。
【0108】
一方、
図12Bに示すように、カンチレバー310が加振部122によりローバー40の表面410に対して上下方向に振動を加えられた状態で、ローバー40を載置したXステージ106を一定の速度でX方向に移動させることにより探針4が近接場光発光部404により近接場光405が発生している領域に到達すると、探針4の表面の磁性膜3の上に形成された貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3による局在型表面プラズモン増強効果により、近接場光405の散乱光406が増強される。さらに、貴金属(例えば金や銀、プラチナ等)又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3の隙間または表面に形成された光の波長を変換可能な材料の粒子又は薄膜801により、増強された近接場光による散乱光の波長が変換され、近接場光と異なる波長の散乱光を発生させる。この散乱光1106のみの光は、カンチレバー310の近傍に配置されたフィルタ1015を通じて、光検出器115で検出される。
【0109】
このようにして、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の近接場光発光部404からこの近接場光発光部404の極近傍の領域に発生した近接場光を、近接場光発光部404から比較的離れた場所で検出することが可能となる。更に、熱アシスト磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界(交流磁界)403と近接場光発光部404から発生する熱アシスト光(近接場光)405との位置関係も測定することが可能となる。
【0110】
また、測定する際に、検出が容易である磁気ヘッド素子部401の磁界発生部402が発生する書込み磁界(交流磁界)403を先に検出し、ヘッド素子の設計情報に基づき、近接場光発光部404の位置を推測するという高速アライメントが可能となる。これは、実施例1乃至3に共通する効果でもある。
【0111】
製造工程途中のできるだけ早い段階で熱アシスト磁気ヘッド素子の書込み磁界と近接場光の強度分布の検査及び二者の位置関係の測定を行うことができるという効果がある。
【0112】
なお、上記した実施例においては、探針4の正面側に形成した磁性膜2の上に貴金属又は貴金属を含む合金の微粒子または薄膜3を形成して、その上に光の波長を変換可能な材料の微粒子又は薄膜801を形成した構成で説明したが、本実施例はこれに限られるものではない。例えば、微粒子または薄膜3を形成せずに磁性膜2の上に直接波長を変換可能な材料の微粒子又は薄膜801を形成した探針4を用いても、上記実施例で説明した場合に比べて検出信号のレベルはやや低くなるが、熱アシスト磁気ヘッド素子部401で発生した近接場光により探針4から発生した散乱光を検出することが可能である。これにより、ローバー40に形成された熱アシスト磁気ヘッド素子401から発生する書込み磁界(交流磁界)と熱アシスト磁気ヘッド素子401から発生した近接場光による散乱光とをカンチレバー10による1回のスキャンで検出することができる。
【0113】
なお、上記実施例においては、磁気ヘッド素子をローバーの状態で検査することについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、磁気ヘッド素子をローバーから1個ずつ切り離したチップ(スライダー又はヘッド素子単体)の状態でも、熱アシスト磁気ヘッド素子検査装置1000を用いて近接場光と磁界との両方を測定し、検査することができる。