(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4に記載されているヘッドは、隙間に入り込んだインク、または、溝や吸収体によりインクを吸い上げてインクの除去を行っている。そのため、インクが乾燥固化した場合に、メンテナンス時にワイプで掻き出されノズルが詰まるという問題は解消されていなかった。
【0008】
また、隙間にインクを吸い上げるため、ヘッドモジュール間には、ある程度の距離が必要であった。しかしながら、ヘッドモジュール間の隙間が大きいとラインヘッドにおける印字抜けの原因となるため、隙間部を補正するように、ノズル配置を平行四辺形にする、ヘッドモジュールの配置を千鳥配置とすることが行われている。しかしながら、千鳥配置とした場合は、ラインヘッドの記録媒体の紙送り方向の幅が大きくなるので、システムの大型化に繋がっていた。
【0009】
このように、ヘッドモジュール間の隙間は狭くする必要があるが、ヘッドモジュール間の隙間を狭くするためには、ヘッドモジュール側面に厚塗り表面処理を行うことができなかった。特に、高画質な高密度ノズルを有するヘッドにおいては、モジュール間の間隔が狭いため、表面処理により形成される膜厚にも制限があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドモジュール間の隙間への液体の入り込みを防止することができる液体吐出ヘッド、および、ヘッドモジュール間の隙間を小さくするための設計、安定化を実施できる液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記目的を達成するために、液体を吐出する複数のノズルが配置されたノズル面を有するヘッドモジュールを複数連続して繋ぎ合わせた液体吐出ヘッドであって、ヘッドモジュールのつなぎ部の側面は、撥水材料を含む溶液から形成された撥水膜を有し、側面のノズル面側端部には、ノズル面に沿って溝を有する液体吐出ヘッドを提供する。
【0012】
本発明によれば、ヘッドモジュールを複数繋ぎ合わせた液体吐出ヘッドの、各ヘッドモジュールのつなぎぶ側面は撥水膜を有しているので、このヘッドモジュール同士の隙間に液体が入り込むことを防止することができる。したがって、ヘッドモジュール同士の隙間から液体が垂れ流れたり、隙間に入った液体が乾燥し、固まった固形物がワイプ時などに出てきてノズル詰まりを起こすことを防止することができる。
【0013】
また、撥水膜を形成する際、側面のノズル面側端部に溝を設けているので、撥水材料を含む溶液がノズル面に流れ出ることを防止することができる。したがって、ノズル面に流れ出た場合に乾燥固化した撥水材料がワイプ時に剥離し、ノズル詰まりを起こすことを防止することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、ヘッドモジュールの側面は、さらに、少なくとも1つ以上の排出溝を有することが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドによれば、ヘッドモジュールの側面、すなわち、撥水処理を施す面に少なくとも1つ以上の排出溝を備えているので、撥水処理時に余剰の撥水材料を排出溝に流すことができるので、均一の厚みで撥水処理を行うことができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、撥水膜は、膜厚が50μm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、撥水膜の膜厚が50μm以下としているので、繋ぎ合わせたヘッドモジュール同士の隙間を短くすることができる。したがって、液体の隙間への入り込みを防止することができるとともに、印字の際のヘッドモジュール間の隙間の補正も少なくて良いので、システム全体が大型化することを防止することができ
る。
【0018】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、撥水膜の表面粗さRaが10nm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドによれば、撥水膜の表面粗さRaが10nm以下であるので、撥水性の良好な膜を形成することができる。また、撥水膜の表面粗さRaを上記範囲とすることにより、例えば、霧状の液体などが、ヘッドモジュール間の隙間に入り込んだとしても、表面粗さが低いので、動的撥水性(滑落性)を向上させることができるので、撥水膜上の液体を流れ易くすることができる。したがって、ヘッドモジュール間に液体が入り込むことを防止することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、溝からノズル面までの距離が1mm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドによれば、溝からノズル面までの距離を1mm以下とすることにより、ヘッドモジュール間の隙間に液体が入り込むことを防止することができる。溝は、撥水膜を形成する際に、撥水材料がノズル面に流れ込むことを防止するために、形成されている。ノズル面との端部から溝までは撥水膜が形成されていないが溝とノズル面の端部との距離を1mm以内と狭くすることにより、例え、液体が隙間に入り込んだとしても液体の量を減らすことができるので、液体が集まり液体の粒子が大きくなり、自重で液体が垂れ落ちることを防止することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、ヘッドモジュール間の隙間が200μm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、ヘッドモジュール間の隙間を200μm以下としているので、ヘッドモジュール間の隙間への液体の入り込みを防止し、印字の際の隙間の補正も少なくて済むので、システムが大型になるのを防止することができる。また、本発明においては、撥水膜の膜厚を薄くすることができるので、ヘッドモジュール間の隙間を200μm以下とすることができる。
【0024】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドは、溝はノズル面に平行に設けられていることが好ましい。
【0025】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドによれば、溝をノズル面と平行に設けているため、撥水膜の成膜時に、溝に撥水材料を流し易くすることができ、撥水膜を均一に成膜することができる。
【0026】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッド、溝の少なくとも一方の端部は、溝方向に開放された切り欠き形状となっていることが好ましい。
【0027】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドによれば、溝の少なくとも一方の端部は、切り欠き形状となっているので、撥水膜の成膜時に、溝に流れ込んだ余剰の撥水材料を溝から溢れることなく流すことができる。
【0028】
本発明は前記目的を達成するために、液体を吐出する複数のノズルが配置されたノズル面を有するヘッドモジュールを複数連続して繋ぎ合わせた液体吐出ヘッドの製造方法であって、ヘッドモジュールの側面のノズル面側に溝が設けられ、ヘッドモジュールの側面に撥水材料を塗布する撥水材料塗布工程と、塗布された撥水材料の厚みの均一化、および、
余剰の撥水材料を溝に流す膜厚均一化工程と、撥水材料を乾燥し撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。
【0029】
本発明によれば、撥水材料を塗布した後、撥水材料の膜厚の均一化を行っている。このとき、ヘッドモジュール側面には、余剰の撥水材料を流し出す溝を設けているので、この溝から余剰の撥水材料を流すことで、撥水材料の膜厚を均一にすることができる。また、撥水材料がノズル面に流れることを防止することができる。その後、乾燥を行い、撥水材料を固まらせることで、撥水膜を有する液体吐出ヘッドを形成することができる。
【0030】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、撥水材料の粘度が1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。
【0031】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、撥水材料の粘度を上記範囲とすることにより、撥水材料を濡れ広がりやすくすることができるので、膜厚の薄い撥水膜を均一に形成することができる。
【0032】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドの製造方法は、ヘッドモジュールの側面に、さらに、少なくとも1つ以上の排出溝を有することが好ましい。
【0033】
本発明の他の態様に係る液体吐出ヘッドの製造方法によれば、ヘッドモジュールの側面に排出溝を有しているので、撥水材料塗布工程で塗布した撥水材料の余剰分をこの排出溝から流し出すことができるので、より撥水膜を均一の膜とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法によれば、ヘッドモジュール側面に撥水処理が施されているので、ノズル面側から液体がヘッドモジュールの隙間に侵入することを防止することができる。また、ヘッドモジュール側面に溝を設けることで、撥水処理を施す際に、撥水材料の余剰分がノズル面側に流れることを防止することができる。また、余剰分を溝に流すことができるので、均一な厚さで撥水処理を行うことができる。したがって、ヘッドモジュールとの接触を防止し、撥水性が劣化することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明に係る液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下では、液体吐出ヘッドの一例として、インクジェットヘッドについて説明する。また、このインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置について説明する。
【0037】
≪インクジェット記録装置の全体構成≫
まず、インクジェット記録装置の全体構成について説明する。
図1は、インクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。
【0038】
このインクジェット記録装置10は、描画部16の圧胴(描画ドラム70)に保持された記録媒体24(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド72M、72K、72C、72Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体24上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体24上に画像形成を行なう2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0039】
図示のように、インクジェット記録装置10は、主として、給紙部12、処理液付与部14、描画部16、乾燥部18、定着部20、および排出部22を備えて構成される。
【0040】
(給紙部)
給紙部12は、記録媒体24を処理液付与部14に供給する機構であり、当該給紙部12には、枚葉紙である記録媒体24が積層されている。給紙部12には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から記録媒体24が一枚ずつ処理液付与部14に給紙される。
【0041】
本例のインクジェット記録装置10では、記録媒体24として、紙種や大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体24を使用することができる。給紙部12において各種の記録媒体をそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(不図示)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ50に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。なお、本例では、記録媒体24として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0042】
(処理液付与部)
処理液付与部14は、記録媒体24の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部16で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0043】
図1に示すように、処理液付与部14は、給紙胴52、処理液ドラム54、および処理液塗布装置56を備えている。処理液ドラム54は、記録媒体24を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)55を備え、この保持手段55の爪と処理液ドラム54の周面の間に記録媒体24を挟み込むことによって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム54は、その外周面に吸着穴を設けるとともに、吸着穴から吸引を行なう吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体24を処理液ドラム54の周面に密着保持することができる。
【0044】
処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置56が設けられる。処理液塗布装置56は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム54上の記録媒体24に圧接されて計量後の処理液を記録媒体24に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置56によれば、処理液を計量しながら記録媒体24に塗布することができる。
【0045】
処理液付与部14で処理液が付与された記録媒体24は、処理液ドラム54から中間搬送部26を介して描画部16の描画ドラム70へ受け渡される。
【0046】
(描画部)
描画部16は、描画ドラム(第2の搬送体)70、用紙抑えローラ74、およびインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yを備えている。描画ドラム70は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)71を備える。描画ドラム70に固定された記録媒体24は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yからインクが付与される。
【0047】
インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、記録媒体24における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)とすることが好ましい。インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、記録媒体24の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0048】
描画ドラム70上に密着保持された記録媒体24の記録面に向かって各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部14で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体24上での色材流れなどが防止され、記録媒体24の記録面に画像が形成される。
【0049】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0050】
描画部16で画像が形成された記録媒体24は、描画ドラム70から中間搬送部28を介して乾燥部18の乾燥ドラム76へ受け渡される。
【0051】
(乾燥部)
乾燥部18は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、
図1に示すように、乾燥ドラム76、および溶媒乾燥装置78を備えている。
【0052】
乾燥ドラム76は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)77を備え、この保持手段77によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。
【0053】
溶媒乾燥装置78は、乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置され、複数のIRヒータ82と、各IRヒータ82の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル80とで構成される。
【0054】
各温風噴出しノズル80から記録媒体24に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各IRヒータ82の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0055】
また、乾燥ドラム76の表面温度は50℃以上に設定されている。記録媒体24の裏面から加熱を行なうことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。なお、乾燥ドラム76の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム76の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0056】
乾燥ドラム76の外周面に、記録媒体24の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体24の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体24のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0057】
乾燥部18で乾燥処理が行なわれた記録媒体24は、乾燥ドラム76から中間搬送部30を介して定着部20の定着ドラム84へ受け渡される。
【0058】
(定着部)
定着部20は、定着ドラム84、ハロゲンヒータ86、定着ローラ88、およびインラインセンサ90で構成される。定着ドラム84は、処理液ドラム54と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)85を備え、この保持手段85によって記録媒体24の先端を保持できるようになっている。
【0059】
定着ドラム84の回転により、記録媒体24は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ86による予備加熱と、定着ローラ88による定着処理と、インラインセンサ90による検査が行なわれる。
【0060】
ハロゲンヒータ86は、所定の温度(例えば、180℃)に制御される。これにより、記録媒体24の予備加熱が行なわれる。
【0061】
定着ローラ88は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性熱可塑性樹脂微粒子を溶着し、インクを皮膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体24を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ88は、定着ドラム84に対して圧接するように配置されており、定着ドラム84との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体24は、定着ローラ88と定着ドラム84との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行なわれる。
【0062】
また、定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(たとえば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体24を加熱することによって、インクに含まれる熱可塑性樹脂微粒子のTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、熱可塑性樹脂微粒子が溶融される。これにより、記録媒体24の凹凸に押し込み定着が行なわれるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0063】
なお、
図1の実施形態では、定着ローラ88を1つだけ設けた構成となっているが、画像層厚みや熱可塑性樹脂微粒子のTg特性に応じて、複数段設けた構成でもよい。
【0064】
一方、インラインセンサ90は、記録媒体24に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0065】
上記の如く構成された定着部20によれば、乾燥部18で形成された薄層の画像層内の熱可塑性樹脂微粒子が定着ローラ88によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体24に固定定着させることができる。また、定着ドラム84の表面温度を50℃以上に設定することで、定着ドラム84の外周面に保持された記録媒体24を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
【0066】
また、インク中にUV硬化性モノマーを含有させた場合は、乾燥部で水分を充分に揮発させた後に、UV照射ランプを備えた定着部で、画像にUVを照射することで、UV硬化性モノマーを硬化重合させ、画像強度を向上させることができる。
【0067】
(排出部)
図1に示すように、定着部20に続いて排出部22が設けられている。排出部22は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と定着部20の定着ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体24は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
【0068】
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置10には、上記構成の他、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部14に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行なうヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体24の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0069】
〔インクジェットヘッドの構成〕
図2に、インクジェットヘッドの斜視図を示す。
図2では、インクジェットヘッド72の下方(斜め下方向)から吐出面を見上げた様子が図示されている。このインクジェットヘッド72は、インクジェット記録装置の描画部に設置されるプリントヘッドであり、複数個のヘッドモジュール72−iを用紙幅方向に並べて繋ぎ合わせて長尺化したフルライン型のバーヘッド(シングルパス印字方式のページワイドヘッド)となっている。ここでは17個のヘッドモジュール72−iを繋ぎ合わせた例を示しているが、モジュールの構成、モジュールの個数及び配列形態については、図示の例に限定されない。符号104は、複数のヘッドモジュール72−iを固定するための枠体となるハウジング(バー状のラインヘッドを構成するためのハウジング)、符号106は、各ヘッドモジュール72−iに接続されたフレキシブル基板である。
【0070】
図3は、ヘッド72の構造例を示す平面図であり、ヘッド72をノズル面72A側から見た図である。また、
図4は
図3の一部拡大図である。
【0071】
図3に示すように、ヘッド72はn個のヘッドモジュール72−i(i=1,2,3,…,n)を長手方向(記録媒体24(
図1参照)の搬送方向と直交する方向)に沿ってつなぎ合わせた構造を有し、記録媒体の全幅に対応する長さにわたって複数のノズル(
図3中不図示)が設けられている。
【0072】
各ヘッドモジュール72−iは、ヘッド72における短手方向の両側からヘッドモジュール支持部材72Bによって支持されている。また、ヘッド72の長手方向における両端部はヘッド支持部材72Dによって支持されている。
【0073】
図4に示すように、各ヘッドモジュール72−i(n番目のヘッドモジュール72−n)は、複数のノズルがマトリクス状に配列された構造を有している。
図4において符号151Aを付して図示した斜めの実線は、複数のノズルが一列に並べられたノズル列を表している。
【0074】
図5(a)は、ヘッドモジュール72−iの平面透視図であり、
図5(b)はその一部の拡大図である。
【0075】
記録媒体24上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド72におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッドモジュール72−iは、
図5(a)、(b)に示すように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体24の搬送方向と直交する方向;主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0076】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル151が設けられ、他方に供給口154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0077】
かかる構造を有するインク室ユニット153を
図5(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向および主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0078】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0079】
<ヘッドモジュール側面の構成>
[第1実施形態]
次にヘッドモジュール側面の構成について説明する。
図6(a)は、ヘッドモジュールの側面図であり、
図6(b)は側面の拡大図である。
【0080】
図6に示すように、隣り合うヘッドモジュール72−iと対向する側面202は撥水膜204が形成されている。本発明において撥水膜204とは、水の静的接触角が60°以上の膜のことである。
【0081】
撥水膜の成膜方法は、特に限定されず、撥水材料を塗布、乾燥することで成膜することができる。具体的には、後述する方法で成膜を行うことができる。
【0082】
撥水膜の材料としては、フルオロカーボン系の撥水材料を用いることができる。
【0083】
撥水膜の膜厚は、ヘッドモジュール72−i間の距離により決定される。ヘッドモジュール72−i間の距離(隙間)を狭くすることにより、インクがヘッドモジュール72−
i間に侵入することを防止することができる。ヘッドモジュール72−i間の距離が大きくなると、隙間部を補正するようにノズルを配置しなくてはならないため、許容できるヘッドモジュール間距離は、ノズル間距離の2/3以下である。例えば、1200dpiの高密度ヘッドの場合、最低ノズル間距離は、300μmであるため、許容できるモジュール間距離は200μm以下であり、好ましくは100μm以下とすることが好ましい。したがって、撥水膜は、100μmより更に薄いことが好ましく、ヘッドモジュールの両側に形成されるため、モジュール間距離の1/2以下である50μm以下とすることが好ましく、さらに、1/6以下とすることが好ましい。
【0084】
また、膜厚は、撥水膜の最も厚い部分での膜厚により判断する。膜厚の最も厚い部分において、隣り合うヘッドモジュールに成膜された撥水膜と接し、撥水膜が剥離する可能性があるからである。
【0085】
したがって、撥水膜は膜厚が均一になるように形成することが好ましい。膜厚が均一になるように形成することで、対向するヘッドモジュールに成膜された撥水膜と接触することを防止することができ、耐水性が劣化することを防止することができる。
【0086】
このように、撥水膜は薄膜で、膜厚を均一に形成する必要があるので、撥水膜の形成に用いられる撥水材料の粘度を低くすることが好ましい。撥水材料の粘度を低くすることで、撥水材料を塗布した際、濡れ拡がり易くなり、薄膜で均一な膜を成膜することができる。
【0087】
撥水材料の粘度の調整は、樹脂の濃度を調整することで行うことができる。撥水材料の粘度は、1mPa・s以上100mPa・s以下とすることが好ましい。撥水材料の粘度を上記範囲とすることにより、ヘッドモジュール側面202に撥水材料を塗布した際に流動性を有するため、均一の膜厚の撥水膜204を成膜することができる。
【0088】
また、ヘッドモジュールの側面202のノズル面側の端部には、ノズル面72Aと平行に溝206が形成されている。ヘッドモジュール側面202の端部に溝206を形成することにより、上述した撥水材料を側面202に塗布した際に、撥水材料がノズル面72Aに流れ出ることを防止することができる。なお、溝206は、ノズル面72Aと平行に形成されていることに限定されず、ノズル面72A側に撥水材料が流れ出さなければよく、ノズル面72Aに沿って形成されている。ノズル面72Aは、インクがノズル面72Aに付着し、吐出不良、記録媒体への落下を防止するため、撥水膜が形成されている。しかしながら、側面202の撥水膜を形成するための撥水材料がノズル面72Aに流れ込んだ撥水材料は、下地膜と結合していないため、メンテナンス時のワイプにより容易に剥離してしまい、ノズル詰まりの原因となる。したがって、側面202の撥水膜204を形成するための撥水材料は、ノズル面72Aに付着しないように製造することが好ましい。
【0089】
ノズル面側の端部から溝206までの領域は、撥水膜が成膜されないため、ノズル面側の端部から溝206までの距離は短くすることが好ましく、溝206の加工性を考慮して、1mm以下とすることが好ましい。
【0090】
溝206の断面形状は特に限定されず、正方形、長方形、半円形など、様々な形状とすることができる。また、溝206の大きさは、撥水材料を付与した際に余剰の撥水材料を流すことができれば特に限定されないが、例えば、幅500μm、深さ500μmの正方形の形状とすることができる。
【0091】
溝206は、ノズル面72Aへの撥水材料の流れ出しを防止するため、少なくともノズル面72Aと対応するヘッドモジュール側面に設けることが好ましい。また、溝206は
、余剰の撥水材料が流れ込むため、この余剰の撥水材料を排出するため、溝206の少なくとも片方の端部が、開放され、切り欠き部となっていることが好ましい。この切欠き部は、撥水膜成膜時には、廃棄用の容器につなげられている。
【0092】
また、溝206を有することにより、撥水材料のノズル面への流れ出しを防止するのみでなく、撥水材料の塗布液の厚さを均一にすることができる。粘度の低い塗布液を用いることにより、余剰の塗布液は溝206に流れ出すため、結果的に塗布液が均一な膜を形成することができ、均一な膜厚の撥水膜を成膜することができる。撥水膜の表面粗さRaは、10nm以下であることが好ましい。なお、溝206内は、余剰の撥水材料が流れ込むため、撥水性となっている。
【0093】
≪第2実施形態≫
図7(a)は、第2実施形態に係るヘッドモジュール372−iの側面図、
図7(b)は側面の拡大図である。第2実施形態に係るヘッドモジュール372−iは、側面302にさらに、溝306とは別に、さらに、複数の排出溝308を設けている点が、第1実施形態に係るヘッドモジュール72−iと異なっている。
【0094】
第2実施形態にかかるヘッドモジュール372−iによれば、溝306を備えることにより、第1実施形態と同様に、ノズル面に撥水材料が流れ出ることを防止することができる。さらに、複数の排出溝308を備えているので、ヘッドモジュール側面302に付与した撥水材料の塗布液を排出溝308に流すことができるので、より撥水膜の膜厚を均一にすることができるともに、より薄い膜を成膜することができる。排出溝308の構造としては、溝206、306と同様の構成とすることができる。ただし、幅方向の長さについては、特に限定されず、形成することができる。
【0095】
撥水膜304の膜厚を均一化することにより、隣り合う対向するヘッドモジュール372−i同士の撥水膜304が接触することを防止することができる。したがって、ヘッドモジュール交換時に、他方の交換しなくてもよいヘッドモジュールの撥水膜が接触により劣化することを防止することができる。
【0096】
また、撥水膜304の表面を均一化することにより、表面の凹凸が平坦化し、動的撥水性(滑落性)を向上させることができる。動的撥水性(滑落性)とは、液滴の流れ易さであり、表面性の影響を強く受ける。凹凸があると凸部におけるピニング効果により動的撥水性(滑落性)が悪くなる。撥水膜の動的撥水性(滑落性)が悪いと、仮にミスト状のインク液滴が撥水膜上に浸入した場合、接触角を保持したまま乾燥増粘固化することが考えられる。したがって、インク垂れ、固化物剥離の発生の原因になると考えられる。動的撥水性(滑落性)を向上させることにより、ミスト状のインク液滴が撥水膜上に浸入してきても、撥水膜上で移動、または、複数のミスト状の液滴が集まり、大きな液滴となり、撥水膜上を移動させることができるので、撥水膜上にインク液滴が残存することを防止することができる。したがって、撥水膜表面は平坦化することが好ましく、表面粗さRaは、10nm以下であることが好ましく、第1実施形態のヘッドモジュール72−iよりもさらに平坦化した撥水膜を成膜することができる。
【0097】
<撥水膜の成膜方法>
次に撥水膜の成膜方法について説明する。なお、以下に記載の製造方法は一例であり、本発明はこれに限定されない。撥水膜は上述したように、膜厚の薄い膜で、均一に形成することが好ましい。
【0098】
ヘッドモジュールとしては、例えば、高密度ノズル、高密度流路構造のノズルプレートがあり、さらに高密度圧電体および駆動用電極配線が形成された基板が隣接して配置され
たシリコン基板にエポキシ樹脂材料による流路部材が接着されたヘッド筐体からなるヘッドモジュールを使用する。このヘッドモジュールに、以下の材料、方法により、側面への撥水処理を行った。
【0099】
〔撥水材料塗布工程〕
撥水材料としては、溶剤型フッ素系撥水材料(主成分:フルオロカーボン)(商品名ダイキン製オプツール、エフトーンなど)を樹脂分濃度10、20、30、40%の4種類の濃度で行った。塗布は、ロータリーチュービングディスペンサー(ムサシエンジニアリング製)を用いて行った。本ディスペンサーは、テフロン(登録商標)チューブを外部からローラ押し圧かけることで、液体を順次送り出すことができる。したがって、低粘度の液体を塗布する場合に、液量の制御を容易に行うことができる。
【0100】
本ディスペンサーで塗布する際は、チューブ先端をモジュール側面に近接配置し、液滴面の先端部が常にモジュール側面に接触させながら、チューブを移動させていく。これにより、撥水材料を均一に塗布することができる。
【0101】
〔膜厚均一化工程〕
次に塗布した撥水材料の膜厚の均一化を行う。膜厚の均一化は、粘度の低い材料を用い、放置することで行う。粘度の低い材料を用いることで、撥水材料塗布工程後、側面に濡れ広がるため、膜厚を均一にすることができる。
【0102】
図8に樹脂分濃度と平均塗布膜厚との関係を示す。
図8に示すように、樹脂分濃度が低くなるにつれ、液体粘度が低くなるため、塗布膜が薄くなり、高くなるにつれ、液体粘度が高くなるため、塗布膜も厚くなる。
【0103】
塗布膜厚は、例えば、ヘッドの隙間仕様を150μmと想定した場合、目標塗布膜厚はMax20μm以下と設定する。膜厚バラツキによる対向面干渉防止の観点から平均膜厚はさらに薄くする必要がある。目標塗布膜厚をMax20μmと設定した場合、
図8より、使用可能な撥水剤濃度が20%以下と決まり、低粘度の撥水剤しか使用できなくなる。
【0104】
樹脂分濃度20%の撥水剤を使用した場合、粘度は水に近くなるため、塗布後に側面に濡れ広がる現象が見られた。
図6に示す第1実施形態のヘッドモジュール72−iを用いた場合においては、ヘッドモジュール側面202に塗布した撥水材料が濡れ広がるが、余剰の撥水材料は溝206に流れ込むため、ノズル面72Aに流れ出ることを防止することができる。
【0105】
また、
図7に示す第2実施形態のヘッドモジュール372−iを用いた場合においては、第1実施形態のヘッドモジュールと同様に、撥水材料がノズル面372Aに流れ出ることを防止することができる。また、第2実施形態のヘッドモジュール372−iは、複数の排出溝308を有しているので、余剰の撥水材料を排出溝308に流れ込ませることができるので、撥水膜304を、より均一の膜厚出形成することができる。
【0106】
しかしながら、側面に溝を有しないヘッドモジュールを使用した場合は、最も撥水処理を行いたいノズル面側端部近傍に塗布する際には、ノズル面側に流れ出す部分があった。高い粘度の液体、例えば、樹脂分濃度40%の場合では、このようなノズル面への流れ出し現象は抑えることができたが、膜厚のムラ、不均一性が明らかに見られた。ノズル面に撥水剤が流れた場合は、下地と化学結合して撥水膜が形成されているわけではなく、単に表面上に乾燥固化しているのみであるので、ノズル面のワイプにより撥水膜の樹脂成分がノズルを詰まらせる原因となるので、ノズル面への流れ出しを防止する必要がある。
【0107】
〔撥水膜形成工程〕
その後、側面撥水処理の乾燥固化は室温で大気中に24時間放置し乾燥を行った。
【実施例】
【0108】
(実施例1)
樹脂分濃度20%の撥水剤を用いて、ヘッドモジュール側面のノズル面側に幅500μm、深さ500μmの溝を形成したヘッドモジュールに、上記の方法で撥水膜の成膜を行った。撥水膜形成面の水による静的接触角の評価を行ったところ100°以上の接触角が得られていることが確認された。同様に動的撥水性の指標として水での滑落角を評価したところ30°以下の滑落角となっていることが確認された。溝はノズル面側の端部から1mmの位置にノズル面と水平に形成した。樹脂分濃度20%の撥水剤を用いても、余剰の撥水剤が溝に流れ込むため、撥水剤がノズル面に流れ出る流れ出し現象が生じなかった。
【0109】
(実施例2)
実施例1で用いたヘッドモジュールの側面に、複数の排出溝を設けたヘッドモジュールを用いて同様に撥水膜の成膜を行った。排出溝のサイズは、幅1mm、深さ1mmとし、排出溝の間の距離は、1mmとした。複数の排出溝を設けることで、余剰の撥水剤を溝に流すことができるので、ノズル面への流れ出しを防止することができるのみでなく、撥水膜の膜厚の均一性を良化させることができた。
【0110】
粘度が低いために、撥水剤が濡れ広がり易くなるため、薄く均一な膜を形成することができる。さらに、複数の溝を設けることで、余剰分を溝に流すことができるので、余剰分が非溝部に留まることがないので、膜厚のばらつきを低減することができる。したがって、平均膜厚と最大膜厚を近づけることができるので、粘度を高めに設定しても撥水膜の成膜を行うことができる。撥水膜は、対向するヘッドモジュールの撥水膜と接することで、剥離することが懸念されるため、膜厚が均一でない場合には、最大膜厚に合わせて撥水膜の成膜を設計する必要がある。撥水膜の膜厚を均一にすることで、撥水膜全域で撥水膜の撥水性を確保して成膜することができる。
【0111】
〔評価〕
側面撥水処理を行ったヘッドモジュールを連接したラインヘッドを用いて、吐出およびワイプメンテナンスの繰り返し評価を行った。また、側面撥水処理を行っていないヘッドモジュールを比較例として用いた。評価は、吐出およびワイプメンテナンス後のモジュール間の隙間へのインク侵入状況を目視により観察した。
【0112】
インクの吐出駆動条件は、顔料インクを用い、駆動用圧電体の駆動電圧30V、周波数100kHzとした。なお、0.5億dotごとにワイピング操作によるノズル面の洗浄メンテナンスを行なった。10億dotの連続印字ワイプの後に、仕上げワイピングを行い、ヘッドモジュール間の隙間のインクを観察した。また、比較例として、側面撥水未処理のヘッドモジュールについても同様の試験を行った。比較例では、明確にインクが入り込んでいるのに対し、側面撥水処理をした実施例では、インクの入り込みが全く確認されなかった。ヘッドモジュールを個別に取り出して側面部の観察を行っても同様の結果であった。