特許第5832719号(P5832719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5832719
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20151126BHJP
【FI】
   G03G9/08 331
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2009-229158(P2009-229158)
(22)【出願日】2009年10月1日
(65)【公開番号】特開2011-75960(P2011-75960A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2012年9月26日
【審判番号】不服-10801(P-10801/J1)
【審判請求日】2014年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 将
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃史
【合議体】
【審判長】 藤原 敬士
【審判官】 本田 博幸
【審判官】 西村 仁志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−20631(JP,A)
【文献】 特開2008−281884(JP,A)
【文献】 特開2001−249492(JP,A)
【文献】 特開平10−3182(JP,A)
【文献】 特開2003−316076(JP,A)
【文献】 特開2007−25622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを、全酸成分100モル部に対し1モル部以上5モル部未満含む単量体混合物を縮重合した、軟化温度が120℃以上150℃未満で、重量平均分子量(Mw)が10,000〜50,000のポリエステル樹脂(A)と、
3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを、全酸成分100モル部に対し5モル部以上30モル部未満含む単量体混合物を縮重合した、軟化温度が90℃以上120℃未満のポリエステル樹脂(B)を含み、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の比は、10:90〜90:10(質量比)の範囲であり、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計量が、トナー全量中の20質量%以上であり、トナー全量中に前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)以外の結着樹脂成分が、前記ポリエステル樹脂(A)と前記樹脂(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下であるトナー。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の質量比が80:20である請求項1に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、静電記録法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられるトナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電荷像より恒久的な顕像を得る方法においては、光導電性感光体または静電記録体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像した後、これを定着する。定着は光導電性感光体または静電記録体上に現像によって得られたトナー像を紙やフィルム上に直接融着させるか、または紙やフィルム上にトナー像を転写した後これを転写シート上に融着させることによって行われる。
【0003】
また、カラー画像を得るためには、上述の現像工程において、3〜4色のトナーを転写紙に付着させ、次いで定着工程において、各色のトナーを溶融混合しながら発色させ、定着させなければならない。このため、フルカラートナーには、貯蔵時のトナーの凝集を起こさない耐ブロキング性、定着工程での混合性、発色性、発色性をより効率的に行うためのシャープメルト性、紙やOHPフィルムへの定着性等の種々の特性が要求されている。また、複写機やプリンターの高速化や長期ランニング化への対応のために、トナーのフィルミングによる画像濃度の低下のない優れた耐フィルミング性も要求されている。
【0004】
一方、近年省エネの要請から、特に低温定着性に優れたトナーが要求されるようなり、この観点から、本質的に定着性が良好なポリエステル樹脂を用いたトナーが使用されるようになってきた。しかしながら、低温定着性に優れるポリエステル樹脂を用いた場合、定着工程でのオフセット現象が生じるという問題がある。
【0005】
このオフセット現象を防止するために、多価カルボン酸等を使用してポリエステル樹脂に架橋構造を導入する検討がなされてきた。
【0006】
例えば特許文献1、特許文献2には、軟化温度と3価以上の単量体量の異なる2種類のポリエステル樹脂を混合して用いるトナーが記載されている。
【特許文献1】特開昭63−225244号公報
【特許文献2】特開平4−338973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の方法では、軟化温度の高い樹脂と組み合わせる、軟化温度の低いポリエステル樹脂を構成する3価以上の単量体の量が多いため、光沢が低位になる問題がある。
【0008】
また特許文献2の方法では、軟化温度の低い樹脂と組み合わせる、軟化温度の高いポリエステル樹脂を構成する3価以上の単量体の量が多いため、光沢が低位になる問題がある。
【0009】
本発明はこれらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを、全酸成分100モル部に対し1モル部以上5モル部未満含む単量体混合物を縮重合した、軟化温度が120℃以上150℃未満で、重量平均分子量(Mw)が10,000〜50,000のポリエステル樹脂(A)と、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを、全酸成分100モル部に対し5モル部以上30モル部未満含む単量体混合物を縮重合した、軟化温度が90℃以上120℃未満のポリエステル樹脂(B)を含むトナーにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトナーは、低温定着性、耐ホットオフセット性、光沢性、耐久性及び貯蔵安定性に優れたものであり、電子写真法、静電印刷法、静電記録法等における定着システムに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のトナーは、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを、全酸成分100モル部に対し1モル部以上5モル部未満含む単量体混合物を縮重合した、軟化温度が120℃以上150℃未満のポリエステル樹脂(A)と、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを、全酸成分100モル部に対し5モル部以上30モル部未満含む単量体混合物を縮重合した、軟化温度が90℃以上120℃未満のポリエステル樹脂(B)を含むことが必要である。
【0013】
ポリエステル樹脂(A)を重縮合する際の単量体混合物中の、3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールが全酸成分100モル部に対し1モル部未満の場合、耐ホットオフセット性及び粉砕性が不十分となる。また、該単量体混合物中の3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールが全酸成分に対し5モル部を超えると光沢が不十分となる。
【0014】
なお3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコール成分の含有量の下限値は1.5モル%以上がより好ましく、2モル%以上が特に好ましい。また、上限値は4.5モル%未満であることがより好ましく、4モル%未満であることが特に好ましい。
【0015】
さらにポリエステル樹脂(A)の軟化温度が、120℃未満では耐ホットオフセット性が不十分となり、150℃以上では低温定着性及び光沢が不十分となる。ポリエステル樹脂(A)の軟化温度の130℃以上、140℃未満が好ましい。
【0016】
また、ポリエステル樹脂(A)の酸価としては、0.1〜50mgKOH/gであることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の酸価が0.1mgKOH/g以上である場合に、帯電性が良好となり、また、50mgKOH/g以下である場合に、耐湿性が良好となる。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)の酸価の下限値は0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂(A)の酸価の上限値は、20mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
【0018】
さらにポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、45〜75℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度が、45℃以上の場合に耐ブロッキング性が良好となり、75℃以下の場合にトナーの定着性が良好となる。ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度の下限値は50℃以上であることがより好ましく、55℃以上であることが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂(A)の上限値は70℃以下であることがより好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。
【0019】
また、ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜50,000であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が10,000以上の場合に耐ホットオフセット性が良好となる傾向にあり、50,000以下の場合に粉砕性が良好となる。ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の下限値は15,000以上がより好ましく、20,000以上が特に好ましい。ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限値は40,000以下がより好ましく、30,000以下が特に好ましい。
【0020】
また本発明では、ポリエステル樹脂(B)を重縮合する際の単量体混合物中の3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコール成分の含有量が、全酸成分100モル部に対し5モル部未満では低温定着性が不十分となり、30モル部以上では光沢及び耐久性が不十分となる。
【0021】
なお3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコール成分の含有量の下限値は10モル部以上がより好ましく、15モル部以上が特に好ましい。また、上限値は29モル部未満であることがより好ましく、25モル部未満であることが特に好ましい。
【0022】
さらにポリエステル樹脂(B)の軟化温度が90℃未満では耐オフセット性、耐久性、耐ブロッキング性が不十分となる。
【0023】
ポリエステル樹脂(B)の軟化温度の下限値は95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂(B)の軟化温度の上限値は115℃未満であることがより好ましく、110℃未満であることが特に好ましい。
【0024】
また、ポリエステル樹脂(B)の酸価としては、0.1〜50mgKOH/gであることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)の酸価が0.1mgKOH/g以上である場合に、帯電性が良好となる傾向にあり、また、50mgKOH/g以下である場合に、耐湿性が良好となる傾向にある。
【0025】
ポリエステル樹脂(B)の酸価の下限値は0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂(B)の酸価の上限値は、30mgKOH/g以下であることがより好ましく、20mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
【0026】
さらに、ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は、35〜75℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度が、35℃以上の場合にトナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあり、75℃以下の場合にトナーの定着性が良好となる傾向にある。ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度の下限値は45℃以上であることがより好ましく、55℃以上であることが特に好ましい。また、ポリエステル樹脂(B)の上限値は70℃以下であることがより好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。
【0027】
またポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜50,000であることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が5,000以上の場合にトナーの貯蔵安定性が良好となる傾向にあり、50,000以下の場合にトナーの定着性が良好となる。ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の下限値は、10,000以上がより好ましく、20,000以上が特に好ましい。ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の上限値は、40,000以下がより好ましく、30,000以下が特に好ましい。
なおポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量とポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量との差は耐久性の点から20,000以下であることが好ましい。
【0028】
また、本発明で用いられる3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸またはこれらの酸無水物等が挙げられる。
また、3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸としてはトリメリット酸またはその酸無水物、3価以上の多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0029】
これら3価以上の多価カルボン酸、3価以上の多価アルコールは、単独または2種以上を組合わせて使用することができる。
【0030】
またポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を構成する他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物等が挙げられる。これらジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、モノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステル等が挙げられる。中でも、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸は、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げ、樹脂強度を付与するとともに、トナーの耐ブロッキング性、ブレード融着性、フィルミング性の向上に寄与し、疎水性のためトナーの耐湿性向上にも効果がある。
【0031】
なお、芳香族ジカルボン酸は、ポリエステル樹脂(A)またはポリエステル樹脂(B)のそれぞれの樹脂において、全酸成分100モル部中に50モル部以上であることが好ましく、60モル部以上の範囲がより好ましく、70モル部以上が特に好ましい。中でも、テレフタル酸系のものは結着樹脂のガラス転移温度をアップさせる効果があり、またイソフタル酸系のものは反応性を高める効果があるので目的によってその使用バランスを変えて用いることが好ましい。
【0032】
一方、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸は、トナーの定着性や耐ブロッキング性に大きく影響を与えるので、これらの特性を考慮して使用することが重要であり、全酸成分100モル部中に40モル部以下の範囲で使用することが好ましく、30モル部以下が特に好ましい。これらジカルボン酸は、単独または2種以上を組合せて使用することができる。
【0033】
また、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を構成するジオールとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、ポリエーテルグリコール等が使用できる。
【0034】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられ、芳香族ジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のエチレンキサイドを付加したビスフェノールA誘導体、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のプロピレンオキサイドを付加したビスフェノールA誘導体等があげられ、ポリエーテルグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を併用することができる。
【0035】
これらのジオールのうち、脂肪族ジオールは樹脂の縮重合反応速度を向上させるものであり、トナーの定着性の点から、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールが好ましい。また、特にエチレングリコールは反応性を高める効果が大きいため、特に好ましい。
【0036】
脂肪族ジオールの含有量は特に制限されないが、ポリエステル樹脂(A)またはポリエステル樹脂(B)のそれぞれの樹脂において、全酸成分100モル部に対して、100モル部以下の範囲であることが好ましい。脂肪族ジオール(b1)の含有量が100モル部以下の場合に、ポリエステル樹脂のガラス転移温度および樹脂強度を高く維持することができ、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にある。脂肪族ジオール(b1)の含有量の上限値は、80モル部以下であることが特に好ましい。
【0037】
脂肪族ジオールの含有量の下限値は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂(A)またはポリエステル樹脂(B)のそれぞれの樹脂において、全酸成分100モル部に対して1モル部以上であることが好ましい。これは、脂肪族ジオールを1モル部以上含有する場合に、ポリエステル樹脂の縮合反応性が良好となるからである。脂肪族ジオールの含有量の下限値は、5モル部以上がより好ましく、10モル部以上がさらに好ましく、25モル部以上が特に好ましい。
【0038】
また、ジオールのうち、芳香族ジオールは、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げ樹脂強度を付与し、ポリエステル樹脂の低分子量成分を低減させるものであり、トナーの耐ブロッキング性を良好とするとともに、樹脂の反応性を制御する。この点から、特に、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0039】
芳香族ジオールの含有量は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂(A)またはポリエステル樹脂(B)のそれぞれの樹脂において、全酸成分100モル部に対して20〜140モル部であることが好ましい。芳香族ジオールが、20モル部以上の場合に、ポリエステル樹脂のガラス転移温度を高く維持することができ、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にある。また、芳香族ジオールが140モル部以下の場合に、反応性を低下させることがなく、目的の重合度まで反応を進行させることができる傾向にある。芳香族ジオールの下限値は30モル部以上がより好ましく、また、上限値は120モル部以下がより好ましい。
【0040】
さらにジオール(b)のうち、ポリエーテルグリコールは、樹脂のガラス転移温度を下げ、トナーの定着性を良好にする効果を有する。ポリエーテルグリコールの含有量は、ポリエステル樹脂(A)またはポリエステル樹脂(B)のそれぞれの樹脂において、全酸成分100モル部に対して0.1〜10モル部であることが好ましい。ポリエーテルグリコールの含有量が0.1モル部以上の場合に、低温定着性が良好となる傾向にあり、10モル部以下の場合に、貯蔵安定性が良好となる傾向にある。ポリエーテルグリコールの下限値は0.5モル部以上がより好ましく、また、上限値は8モル部以下がより好ましい。
【0041】

また、本発明においては、ポリエステル樹脂の特性を損なわない限り、全酸成分100モル部に対し、10モル部以下の範囲で、上記以外のモノマーを使用してもよい。
【0042】
本発明のトナーは、結着樹脂として前記のポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を含有するものである。本発明では、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計量が、トナー全量中の20質量%以上であることが好ましい。
【0043】
さらにポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の混合比率は、トナーの低温定着性と耐ホットオフセット性のバランスから5:95〜95:5(質量比)の範囲であることが好ましく、10:90〜90:10(質量比)の範囲がより好ましく、25:75〜75:25(質量比)の範囲がさらに好ましく、40:60〜60:40(質量)の範囲が特に好ましい。ポリエステル樹脂(A)の比率が、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計に対して5質量%以上の場合に、耐ホットオフセット性が良好となる傾向にあり、95質量%以下の場合に低温定着性が良好となる傾向にある。
【0044】
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の他に、結着樹脂としてポリエステル樹脂以外の樹脂を併用してもよい。
【0045】
結着樹脂として併用するその他の樹脂としては、例えば、環状オレフィン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種以上を選択して使用することができ、これらの樹脂とポリエステル樹脂とを併用して使用することにより、定着性を向上させることができる傾向にある。
【0046】
結着樹脂として、これらの樹脂を併用する場合は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下の範囲で併用することが好ましい。これは30質量部以下の範囲で併用することによって目的の効果を発揮することができるためである。併用する他の樹脂の含有量の上限値は、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
【0047】
本発明のトナーは、結着樹脂として前記のポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を含有するものであるが、必要に応じて、これに荷電制御剤、離型剤、着色剤、流動改質剤、磁性体等を配合することことができる。
【0048】
荷電制御剤としては、従来電子写真用に用いられている荷電制御剤を使用することができる。荷電制御剤の含有量は、トナー全量中0.5〜5質量%の範囲が好ましい。
【0049】
また離型剤としては、例えば、ポリオレフィン系ワックス、シリコン系ワックス、アミド系ワックス、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、高級アルコール、エステル系ワックス等が挙げられる。離型剤の含有量は、トナー全量中0.3〜15質量%の範囲が好ましい
着色剤としては、一般に使用されているカーボンブラック、有彩色の顔料および染料が使用できる。
【0050】
流動性向上剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウムチタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ藻土、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0051】
本発明のトナーは、磁性トナー、非磁性トナーのいずれのトナーとしても使用できる。また、磁性トナー、非磁性トナーのいずれの場合においても、1成分系トナー、2成分系トナーとして、どちらでも使用できる。
【0052】
本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合には、トナー中に磁性体を含有する。磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等をはじめとする、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金;マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金等のように、化合物や強磁性元素を含まないが適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金;二酸化クロム等が挙げられる。これらの磁性体の含有量は、トナー全量中30〜70質量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
また、本発明のトナーを2成分系トナーとして用いる場合には、キャリアと併用して用いられる。キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などの磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリア等の公知のものを使用することができる。
【0054】
次に、本発明のトナーに結着樹脂として用いるポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
【0055】
本発明のトナーに用いるポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂の製造方法を用いて製造することができる。例えば、前記の3価以上の多価カルボン酸および/または3価以上の多価アルコールを反応容器に投入し、加熱昇温して、エステル化反応またはエステル交換反応を行う。エステル化反応またはエステル交換反応の温度は、特に制限されないが、150〜300℃であることが好ましい。エステル化反応またはエステル交換反応の温度が150℃以上である場合に、反応率を十分上げることができる傾向にあり、300℃以下である場合に分解反応を抑制することができる傾向にある。この反応温度の下限値は180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましく、240℃以上が最も好ましい。また、上限値は290℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。
【0056】
次いで、常法に従って該反応で生じた水またはアルコールを除去する。その後引き続き重合反応を実施するが、このとき150mmHg(20kPa)以下の真空下でジオール成分を留出除去させながら縮重合を行う。縮重合反応の温度は、特に制限されないが、150〜300℃であることが好ましい。縮重合反応の温度が150℃以上である場合に、反応率を十分上げることができる傾向にあり、300℃以下である場合に分解反応を抑制することができる傾向にある。この反応温度の下限値は180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましく、220℃以上が特に好ましい。また、上限値は290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましく、260℃以下が特に好ましい。
【0057】
また、真空度は100mmHg(13.3kPa)以下がより好ましく、50mmHg(6.7kPa)以下が特に好ましい。
【0058】
また、エステル化反応、エステル交換反応、縮重合時に用いる触媒としては、特に制限されず、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、ニ酸化ゲルマニウム等の公知の触媒を用いることができる。
【0059】
重合温度、触媒量については特に限定されるものではないが、高温で副生物として発生する脂肪族ジオール成分を低減させるためには、比較的反応温度が低い領域でも反応する触媒を選択することが好ましい。例えば、三酸化アンチモン、チタンブトキサイド、そしてジブチルスズオキサイドが好適に使用される。
【0060】
また、架橋構造を有するポリエステル樹脂を製造する場合には、高真空下で脂肪族ジオール成分を留出除去させながら縮重合を進めてゆく課程で、ゲル化反応が生じ反応系内の粘度が急激に上昇するので、この粘度上昇に対応しながら、反応系内の真空度を調整してゲル化反応を制御するのが好ましく、所望の粘度に到達した時に反応系内の圧力を常圧に戻し、窒素により加圧して反応容器より樹脂を取り出すのが好ましい。
【0061】
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。
【0062】
本発明のトナーは、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、結着樹脂として上述のポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)と、荷電制御剤、離型剤、着色剤、並びに所望により磁性体等を混合した後、2軸押出機などで溶融混練し、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子をトナー表面に付着させて製造することができる。特に、混練工程においては、押出機のシリンダー内温度がポリエステル系樹脂の軟化温度よりも高い温度で混練するのが好ましい。また、上記工程において、微粉砕〜分級後にトナー粒子を球形にするなどの処理を行ってもよい。
【0063】
以下に実施例により本発明をさらに説明する。また、実施例に示した樹脂およびトナーの評価方法を以下に示す。
【実施例】
【0064】
(1)軟化温度T4
島津製作所社製フローテスターCFT−500を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度を測定した。
【0065】
(2)ガラス転移温度Tg
島津製作所社製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から測定した。
【0066】
(3)酸価
ポリエステル樹脂をベンジルアルコールに溶解させ、1/50N NaOHベンジルアルコール溶液にて滴定し、KOH換算した。
【0067】
(4)重量平均分子量(Mw)
GPC法によりポリスチレン換算値を以下の条件下で求めた。
装置:東洋ソーダ工業(株)製、高速GPC装置「CP8000」
カラム:東洋ソーダ工業(株)製、TSKgelG5000HXLとTSKgelG3000HXLを2本直列に連結に連結。
オーブン温度:40℃
溶離液:クロロホルム
試料濃度:3mg/10mL
濾過条件:0.45μmテフロン(登録商標)メンブレンフィルターで試料溶液を濾過。
流速:1ml/分
注入量:0.1ml
検出器:RI(示差屈折計)
(5)耐ホットオフセット性の評価法
シリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーを有し、ローラー速度100mm/秒に設定した温度変更可能であるプリンター(カシオ計算機(株)製SPEEDIA N4−614)を用いて印刷を行い、耐ホットオフセット性の評価を行った。また、定着時に定着ローラーにトナーが移行するときの最高温度をオフセット発生温度と定め、以下の基準を用いて非オフセット性を判断した。
◎(非常に良好):オフセット発生温度が200℃以上
○(良好) :オフセット発生温度が190℃以上200℃未満
△(使用可能) :オフセット発生温度が180℃以上190℃未満
×(劣る) :オフセット発生温度が180℃未満
(6)低温定着性の評価法
耐ホットオフセット性の評価方法と同一条件でトナーを紙に定着させたときに、トナーが紙に定着し始めるときの最低温度を定着温度とし、次の基準で判定した。
◎(非常に良好):定着温度が140℃未満
○(良好) :定着温度が140℃以上150℃未満
△(使用可能) :定着温度が150℃以上160℃未満
×(劣る) :定着温度が160℃以上
(7)光沢性の評価法
定着性試験と同様な条件で普通紙に定着させたトナーの光沢をハンディ光沢計(日本電色工業社製PG−1:75度)を用いて測定した。
◎(非常に良好):最大値が20GU以上
○(良好) :最大値が15GU以上20GU未満
△(使用可能) :最大値が10GU以上15GU未満
×(劣る) :最大値が10GU未満
(8)耐久性の評価法
画像安定性と同様の方法にて印刷を一万枚行った後、ブレード融着、印字面のカブリにより耐久性を評価した。
◎(非常に良好):ブレード融着やカブリは認められない。
○(良好) :ブレード融着やカブリはごくわずかに見られる程度。
△(使用可能):ブレード融着やカブリは若干認められるが添加剤などにより改良可能。
×(劣る) :ブレード融着やカブリが大いに見られる。
【0068】
(9)耐ブロッキング性の評価法
トナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを50℃に保温された乾燥機に24時間放置し、トナーの凝集程度を評価して耐ブロッキング性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
◎(非常に良好):サンプル瓶を逆さにするだけで分散する
○(良好) :サンプル瓶を逆さにし、1回叩くと分散する
△(使用可能) :サンプル瓶を逆さにし、2〜3回叩くと分散する
×(劣る) :サンプル瓶を逆さにし、4〜5回以上叩くと分散する
製造例1〜13
表1に示される仕込み組成に従って、モノマー及び全酸成分に対して500ppmのジブチルスズオキサイドを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、撹拌回転数を24rpm、反応系内温度265℃の条件でエステル化反応を行った。エステル化反応は、水が留出しなくなった時点で終了させた。
【0069】
さらに、反応系内の温度を235℃に保ち、反応容器内の真空度を約40分かけて1.0mmHg以下となるよう減圧し、反応系からジオール成分を留出させ、樹脂が所望の軟化温度となるまで縮合反応を行った。反応とともに、系内の粘度が徐々に上昇しはじめ、所望の軟化温度に相当する粘度となった時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止した後、反応物を窒素により加圧して約2時間かけて取り出し、ポリエステル樹脂を得た。液体ガスクロマトグラフィーによる組成分析結果及び特性値を表1に示す。
【0070】
実施例1〜5
表2に示される仕込み組成に従って、ポリエステル樹脂91質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製E02)を5質量部、カルナバワックス(東洋ペトロライト社製、カルナバワックス1号)3質量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−85)1重量部をヘンシェルミキサーで30分間混合し、得られた混合物を二軸押出機(池貝製作所社製、PCM29)で溶融混練した。溶融混練は内温を樹脂の軟化温度に設定して行った。混練後、冷却しトナー魂を得、ジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機でトナーの粒径を整え、粒径を8μmとした。得られた微粉末に対して、0.25質量%のシリカ(日本アエロジル社製、R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合し付着させ、トナーを得た。
【0071】
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。これらのトナーの評価結果を表2に示す。
比較例1〜8
表2に示される仕込み組成に従って、実施例と同様の方法でトナーを得た。
得られたトナーについて実施例と同様の方法でトナー評価を行なった。これらのトナーの評価結果を表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】