特許第5833259号(P5833259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧
特許5833259熱誘導相分離法によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法
<>
  • 特許5833259-熱誘導相分離法によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法 図000006
  • 特許5833259-熱誘導相分離法によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法 図000007
  • 特許5833259-熱誘導相分離法によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833259
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】熱誘導相分離法によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20151126BHJP
【FI】
   C08J9/28 101
   C08J9/28CES
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-554660(P2014-554660)
(86)(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公表番号】特表2015-504964(P2015-504964A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】KR2013000590
(87)【国際公開番号】WO2013111982
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0007723
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボン−テイ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヒョン−シク
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジュン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン−ミン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−513590(JP,A)
【文献】 特表2008−540795(JP,A)
【文献】 特開平09−003222(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/070930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微細多孔膜の製造方法であって、
(a)ポリオレフィン30〜60重量%及び前記ポリオレフィンと熱力学的に液―液相分離可能な希釈剤70〜40重量%を含む組成物を押出機内に注入し、溶融混練して単一相の溶融物を製造する段階と、並びに
(b)液―液相分離温度以下である区間を通過させて液―液相分離させ、押出してシート状に成形する段階とを含んでなり、
前記希釈剤の総ハンセン溶解度パラメータが、前記ポリオレフィンの総ハンセン溶解度パラメータより0.1〜3.0程大きいものであり、
前記希釈剤が、トリメチロールプロパンのエステルまたはトリエチレングリコールのエステルを含んでなり、
前記組成物が、ポリオレフィンと熱力学的な単一相を成す補助希釈剤とを更に含んでなり、
前記補助希釈剤が、液体パラフィン、パラフィンオイル、鉱油、及びパラフィンワックスからなる群より選択された一種以上を含んでなり、
前記希釈剤と前記補助希釈剤との重量比が、3:7〜7:3であることを特徴とする、ポリオレフィン微細多孔膜の製造方法。
【請求項2】
前記押出時の押出機のティーダイとキャスティングロールとの温度差(delta T)が、120〜160℃であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン微細多孔膜の製造方法。
【請求項3】
前記液―液相分離が、押出機のフィルター以後の溶融物の温度(ティーダイ温度)を200℃に徐々に低下させ、滞留時間を調節することで、均一な大きさの気孔を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリオレフィン微細多孔膜の製造方法。
【請求項4】
前記押出時の押出機のティーダイ(T‐die)とキャスティングロールとの温度差(delta T)を小さくして結晶化度を高め、均一な大きさの気孔を形成することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリオレフィン微細多孔膜の製造方法。
【請求項5】
前記成形されたシートを延伸してフィルムを製造し、
前記延伸されたフィルムから有機溶媒を用いて希釈剤を抽出して乾燥し、
前記乾燥したフィルムを熱硬化してポリオレフィン微細多孔膜を製造する段階を更に含むことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリオレフィン微細多孔膜の製造方法。
【請求項6】
前記製造されたポリオレフィン微細多孔膜をエイジングする段階を更に含むことを特徴とする、請求項5に記載のポリオレフィン微細多孔膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微細多孔膜の製造方法及びそれによって製造されたポリオレフィン微細多孔膜に関する。
【0002】
本出願は、2012年1月26日出願の韓国特許出願第10−2012−0007723号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン微細多孔膜(microporous film)は、その化学的安定性と優れた物性のため、各種の電池用隔離膜(battery separator)、分離用フィルター、及び微細濾過用分離膜(separation membrane)などとして広く用いられている。ポリオレフィンから微細多孔膜を作る方法のうち湿式法は、ポリオレフィンを高温で希釈剤と混練して単一相を形成し、冷却過程でポリオレフィンと希釈剤とを相分離させた後、希釈剤部分を抽出してポリオレフィンに気孔を形成する方法である。この方法によれば、厚さが均一な薄膜のフィルムが製造でき、延伸による物性にも優れるため、リチウムイオン2次電池の隔離膜用に広く使用されている。
【0004】
湿式法による多孔性フィルムの製造方法は、フィルムを構成する高分子と混練された希釈剤が如何なる過程を経て相分離して気孔を形成するかによって、固―液相分離法と液―液相分離法とに分類される。二つの方法は、高分子と希釈剤とを高温で混合して単一相を形成する段階までは同一であるが、相分離メカニズムの相違によって最終的に製造される微細多孔膜の特性が異なる。
【0005】
固―液相分離の場合、冷却を通じて高分子が結晶化して、固体化するまで高分子の固体化のみが進み、希釈剤が高分子の固体相間で除去されることによって、相分離が起きる。すなわち、高分子鎖が結晶化しながら結晶の外側に希釈剤を押し出すことで相分離が起きるため、このとき発生する分離相の大きさは、高分子結晶の大きさに比べれば非常に小さく、分離された相の形状及び大きさなどの構造を多様に調節できないという短所がある。この場合、最近2次電池メーカーで開発中の高性能、高出力、長寿命の2次電池に求められる高透過性を有する、2次電池の隔離膜として適用するには限界がある。固―液相分離の代表的な組成としては、ポリオレフィン樹脂にパラフィンオイル(paraffin oil)、鉱油(mineral oil)、及びパラフィンワックス(paraffin wax)を混合する組成が周知されている。
【0006】
液―液相分離の場合、液―液相分離温度以上では均一な単一相として存在し、温度を低めて、高分子が結晶化する温度以上で、液体状態である高分子物質と他の液体状態である希釈剤と(部分的に不混和)が熱力学的な不安定性により相分離し、このとき相分離条件の変化によって分離される相(液滴)の模様と大きさなどが変化する。従って、液―液相分離法の場合、高分子の種類(例えば、高分子の分子量)と希釈剤の組合せ(例えば、溶解度パラメータ)によって、液―液相分離の温度及び分離される相の大きさを調節できるだけでなく、熱力学的な液―液相分離温度(曇り点;cloud point)と固―液相分離温度との差だけ、液―液相分離による相(液滴)が成長できる時間が存在する。膜の製造時に、押出機ティーダイ(T‐die)とキャスティングロール(casting roll)との間で急冷工程を経るが、実際液―液相分離と固―液相分離とを行なう温度の差、及び押出段階における滞留時間によって、相の大きさを多様に調節することができる。液―液相分離法によって製造される微細多孔膜の場合、固―液相分離法による微細多孔膜と違って、気孔の大きさを調節でき、固―液相分離法による微細多孔膜の気孔に比べて数倍以上大きい気孔を有する微細多孔膜の製造も可能である。
なお、液―液相分離法を用いるためには、高い加工温度でのポリマーの加工条件に適した液―液相分離条件(温度)を満たす希釈剤を探せねばならない。
【0007】
米国特許第4,247,498号には、液―液相分離が可能な様々な高分子と希釈剤との組合せが開示されており、このように液―液相分離された組成物から希釈剤を抽出して、広範囲な厚さの製品を製造できることが開示されている。米国特許第4,867,881号には、液―液相分離された組成物を延伸、抽出、乾燥、及び熱硬化することで、配向された微細多孔膜を製造する方法が開示されている。
韓国特許公開KR2008-0055061Aにも、押出加工するときの高分子と希釈剤との混合比、及び二つの希釈剤成分の混合比が開示されている。
【0008】
このとき、液―液相分離によって製造するとき使用できる希釈剤の種類が挙げられているが、これは米国特許第4,247,498号で挙げられた液―液相分離可能な従来の希釈剤を製造特性に応じて選定したものである。
【0009】
しかし、依然として、ポリオレフィンとの優れた液―液相分離特性を有する希釈剤を使用することで、気孔の大きさを効率的に制御したポリオレフィン微細多孔膜に対する開発が求められている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、液―液相分離段階を有する新規な希釈剤を選定し、製造条件(押出機の温度、新規な希釈剤の種類、押出機の滞留時間)に応じてポリオレフィン微細多孔膜の気孔の大きさを制御することで、二次電池において高出力、長寿命の特性を具現できるポリオレフィン微細多孔膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するため、本発明の一態様によれば、(a)ポリオレフィン30〜60重量%及び前記ポリオレフィンと熱力学的に液―液相分離可能な希釈剤70〜40重量%を含む組成物を押出機内に注入し、溶融混練して単一相の溶融物を製造する段階;並びに(b)液―液相分離温度以下の区間を通過させて液―液相分離させ、押出してシート状に成形する段階を含むポリオレフィン微細多孔膜の製造方法が提供される。
前記希釈剤の総ハンセン溶解度パラメータ(Total Hansen solubility parameter)は、ポリオレフィンより大きくなり得る。
前記希釈剤の総ハンセン溶解度パラメータは、ポリオレフィンの総ハンセン溶解度パラメータより0.1〜3.0程大きくなり得る。
前記希釈剤は、トリメチロールプロパンのエステルまたはトリエチレングリコールのエステルを含むことができる。
【0012】
押出時の押出機のティーダイ(T−die)とキャスティングロール(casting roll)との温度差(delta T)は、120〜160℃であり得る。
前記組成物は、ポリオレフィンと熱力学的な単一相を成す補助希釈剤を更に含むことができる。
前記補助希釈剤は、液体パラフィン、パラフィンオイル、鉱油及びパラフィンワックスからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
前記希釈剤と補助希釈剤との含量比は、50〜70重量%:50〜30重量%であり得る。
【0013】
上記の液―液相分離は、押出機のフィルター以後の溶融物の温度(ティーダイ温度)を200℃に徐々に低下させ、滞留時間を調節することで、均一な大きさの気孔を形成することができる。
【0014】
前記押出時に、押出機のティーダイとキャスティングロールとの温度差(delta T)を小さくして結晶化度を高め、均一な大きさの気孔を形成することができる。
【0015】
前記成形されたシートを延伸してフィルムを製造し、前記延伸されたフィルムを有機溶媒を用いて希釈剤を抽出及び乾燥し、前記乾燥したフィルムを熱硬化してポリオレフィン微細多孔膜を製造する段階を更に含むことができる。
また、前記製造されたポリオレフィン微細多孔膜をエイジング(aging)する段階を更に含むことができる。
本発明の他の態様によれば、前記製造方法によって製造されたポリオレフィン微細多孔膜が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施例によれば、液―液相分離をする新規希釈剤を利用してポリオレフィンと混練押出し、押出過程でポリオレフィンと希釈剤との液―液相分離を起こすことで、物性に優れるポリオレフィン微細多孔膜を製造でき、その結果として得られたポリオレフィン微細多孔膜を電池用隔離膜及び各種のフィルターに有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】HDPEとBET、及びHDPEとEBN.Wの相分離度を示したグラフである。
図2】希釈剤混合物中のEBN.W含量比毎のHDPEと希釈剤混合物との液―液相分離温度を示したグラフである。
図3】希釈剤混合物中のBET含量比毎のHDPEと希釈剤混合物との液―液相分離温度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0019】
湿式ポリオレフィン微細多孔膜の製造に用いられる希釈剤(低分子量有機物質)は、二種類に大別することができる。ポリオレフィンの溶融後に単一相を成し、冷却時に固―液相分離のみを経る希釈剤と、ポリオレフィンが溶融している温度領域のうち高温のみでポリオレフィンと単一相を成し、相分離温度(曇り点)以下の温度では液―液相分離をする希釈剤とである。
【0020】
固―液相分離法には、高分子との溶解度パラメータも類似するため、高分子と希釈剤との間に混和性がある。これは、熱力学的に高温で混合するとき、ポリオレフィンとの相互作用が大きいため、よく混合されて安定した混合物を形成する。従って、高温で単一相を形成し、システムから熱を除去すれば、すなわち、冷却すれば、高分子の固体化による希釈剤の除去のみが起きる。固―液相分離メカニズムのみに従う希釈剤は、微細多孔膜の気孔の大きさを調節することができる。液―液相分離に適用する希釈剤は、高分子との溶解度パラメータが大きいため、高温で部分的に不混和性(Partially immiscible)である。単一相を成すために、相分離温度以上に維持すると、高分子と希釈剤との単一相になる。単一相が形成された温度で混合した後、液―液相分離が起きる温度を考慮して押出すれば、液―液相分離により所望の大きさの気孔を有する微細多孔膜を得ることができる。
【0021】
液―液相分離法は、高分子多含有(富化)相(Polymer rich phase)、及びポリオレフィンと希釈剤とからなる希釈剤多含有(富化)相(diluent rich phase)からなる。熱力学的に相分離された希釈剤多含有相は、時間が経つにつれて拡散によって液滴(droplet)同士が結合される凝集(coarsening)作用によって、希釈剤多含有相の液滴が大きくなり、これは抽出による気孔の大きさに該当する。凝集作用によって相分離された相が大きくなる程度は、液―液相分離状態における滞留時間と液―液相分離状態が維持される温度によって変わる。すなわち、滞留時間が長い程、液―液相分離が発生する温度と液―液相分離が実際に行われる温度との差が大きい程、それぞれの相は大きくなる。または、二つの液滴が結合して一つの液滴を形成する粒子成長(Oswald‐ripening)工程を経るようになる。
【0022】
それぞれの相の大きさの増加は、溶融物の温度がポリエチレン多含有相の結晶化温度以下に低下して、高分子多含有相が結晶化するまで続く。それ故に、液―液相分離法によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法は、固―液相分離法による製造方法とは違って、分離される相の大きさを調節することができる。すなわち、熱力学的な液―液相分離温度と実際相分離が起きる温度との差、及び各段階における滞留時間によって、相の大きさを多様に調節することができる。これによって、液―液相分離法によって製造される微細多孔膜の場合、固―液相分離法による微細多孔膜とは違って、気孔の大きさを調節できるため、固―液相分離法による微細多孔膜の気孔に比べて数倍以上の大きさの気孔を有する微細多孔膜を製造することもできる。実際に、押出時に急冷によって製造されるため、ポリオレフィンとの溶解度パラメータを考慮して混練性を予測でき、ポリオレフィンとの溶解度パラメータの差を考慮して所望の大きさの液滴を形成することができる。
【0023】
このとき、一般的な適正加工温度は、200〜250℃である。上記の条件を満たすと同時に、熱安定性及び商業的な安全性などを全て満たす新規な希釈剤を選定した。また、希釈剤の経済性も共に考慮した。
本発明の特徴は、溶解度パラメータの大きい新規な希釈剤を適用することで、微細多孔膜の気孔の大きさを自在に制御することにある。
【0024】
本発明の一態様によるポリオレフィン微細多孔膜の製造方法は、(a)ポリオレフィン30〜60重量%及び該ポリオレフィンと熱力学的に液―液相分離可能な希釈剤70〜40重量%を含む組成物を押出機内に注入し、溶融混練して単一相の溶融物を製造する段階;並びに(b)液―液相分離温度以下の区間を通過させて液―液相分離させ、押出してシート状に成形する段階を含む。
【0025】
また、前記ポリオレフィン微細多孔膜の製造方法は、前記成形されたシートを延伸してフィルムを製造し、前記延伸されたフィルムを有機溶媒を用いて希釈剤を抽出して乾燥し、前記乾燥したフィルムを熱硬化してポリオレフィン微細多孔膜を製造する段階を更に含むことができる。
【0026】
また、前記製造されたポリオレフィン微細多孔膜をエイジングする段階を更に含むことができる。このとき、前記エイジング段階は、例えば24時間、50〜80℃で行うことができる。
【0027】
前記ポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE、High Density Polyethylene)、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、Polyvinylidene fluoride)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Polymethylmethacrylate)、またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0028】
このうち、結晶化度が高く、樹脂の溶融点が低い高密度ポリエチレンが最も望ましい。ポリオレフィンの分子量は、シート状に成形できれば特に制限されないが、二次電池用隔離膜のように強い物性が求められる用途である場合は、分子量が大きい程良い。この場合、望ましいポリオレフィンの重量平均分子量は、1×105〜1×106であり、更に望ましくは2×105〜5×105である。
前記希釈剤の総ハンセン溶解度パラメータは、ポリオレフィンより大きいものであり得る。
例えば、前記希釈剤は、トリメチロールプロパンのエステルまたはトリエチレングリコールのエステルを含むことができる。
【0029】
前記トリメチロールプロパンのエステルとしては、LG化学社製の製品名BETが挙げられ、具体的に、BETは、トリメチロールプロパントリ(2‐エチルヘキサノエート)(Trimethylolpropane tri(2‐ethylhexanoate)(下記式のA)、トリメチロールプロパンジ(2‐エチルヘキサノエート)ベンゾエート(Trimethylolpropane di(2‐ethylhexanoate)benzoate)(下記式のB)、トリメチロールプロパン(2‐エチルヘキサノエート)ジベンゾエート(Trimethylolpropane(2‐ethylhexanoate)dibenzoate)(下記式のC)、及びトリメチロールプロパントリベンゾエート(Trimethylolpropane tribenzoate)(下記式のD)を含み、A:B:C:Dの組成比は、24±5:43±5:25±5:4±5であり得る。
これらの概略的な合成過程と化学式は、下記の通りである。
【化1】
【0030】
前記トリエチレングリコールのエステルの例としては、LG化学社製の製品名EBN.Wが挙げられ、具体的に、EBN.Wは、トリエチレングリコールジ(2‐エチルヘキサノエート)(Tri‐ethylene glycol di(2‐ethylhexanoate))(下記式のA)、トリエチレングリコール(2‐エチルヘキサノエート)ベンゾエート(Tri‐ethylene glycol(2‐ehtylhexanoate))benzoate(下記式のB)、及びトリエチレングリコールジベンゾエート(Tri‐ethylene glycol dibenzoate)(下記式のC)を含み、A:B:Cの組成比は、45±5:43±5:9±3であり得る。
これらの概略的な合成過程と化学式は、下記の通りである。
【化2】
【0031】
押出時の押出機のティーダイとキャスティングロールとの温度差(delta T)を小さくすることは、ポリオレフィン微細多孔膜の結晶化度を高め、均一な大きさの気孔を形成することにおいて有利である。従って、前記温度差は、例えば120〜160℃に調節することができる。このとき、ティーダイの温度は200℃、キャスティングロール(タッチロール(Touch roll)の温度は40〜80℃であり得る。
前記組成物は、ポリオレフィンと熱力学的な単一相を成す補助希釈剤を更に含むことができる。
【0032】
前記単一相を成す補助希釈剤としては、ポリオレフィンが溶融される全温度領域にわたって、ポリオレフィンと熱力学的に単一相を成す、すなわち、ポリオレフィンと液―液相分離しない全ての有機液状化合物を使用することができる。工程の安定性と安全性を考慮すれば、液体パラフィン、パラフィンオイル、鉱油、またはパラフィンワックスなどのような不活性有機物質が望ましい。これらは、1種または2種以上の混合物として使用可能である。
【0033】
前記希釈剤と補助希釈剤との重量比は、3:7〜7:3であり得る。前記重量比が3:7未満である場合には相分離温度が低過ぎて、以後得られるポリオレフィン微細多孔膜の気孔が大き過ぎる恐れがある。前記重量比が7:3を超過する場合には相分離温度が高過ぎて、ポリオレフィンに対して希釈剤が不溶性を呈し、混合性が低下して相分離挙動が起きなくなる。
【0034】
また、前記液―液相分離は、押出機のフィルター以後の溶融物の温度(ティーダイ温度)を200℃に徐々に低下させ、滞留時間を調節することで行なわれ、均一な大きさの気孔を形成することができる。例えば、前記押出機の混合ゾーンの温度は220℃にし、押出機のティーダイ温度(溶融物の温度)は200℃に低める。
【0035】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤、結晶核剤(nucleating agent)など、特定の機能向上のための一般の添加剤を更に添加することができる。
ポリオレフィンと希釈剤とが互いに混練されて、単一相を成すことができるか否かをハンセン溶解度パラメータを通じて予測することができる。
【0036】
前記ハンセン溶解度パラメータとは、一つの物質が他の物質に溶解されて溶液を形成できるか否かを予測する方法であって、チャールズハンセン(Charles M.Hansen)によって発見されたパラメータである。
【0037】
通常、溶解度パラメータを計算するためには、凝集エネルギー(cohesive energy)を求めねばならない。ハンセン溶解度パラメータでは、溶解度パラメータに影響を与える凝集エネルギーを下記の3個のエネルギーに細分化したパラメータで表す:
δD:非極性の分散エネルギーによって発生する溶解度パラメータ(J/cm31/2
δP:永久双極子による極性エネルギーによって発生する溶解度パラメータ(J/cm31/2
δH:水素結合によるエネルギーによって発生する溶解度パラメータ(J/cm31/2
【0038】
前記3個のハンセン溶解度パラメータは、ハンセンスペース(Hansen space)として知られている3次元空間にある1つの点に対する座標値として理解され得る。
これら3個のハンセン溶解度パラメータの総和である総ハンセン溶解度パラメータ(δTot)は、下記のように定義される:
δTot=(δD2+δP2+δH21/2
【0039】
すなわち、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、上記の3個の要素を有するベクトル特性を示し、総ハンセン溶解度パラメータ(δTot)は、そのベクトルの大きさを示している。
【0040】
希釈剤のそれぞれのハンセン溶解度パラメータ(HSP)値であるδD、δP、及びδHは、ハンセン溶解度パラメータを提案した創始者であるチャールズハンセン博士グループが開発したHSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)というプログラムを用いて計算することができる。
【0041】
また、Raは、二つの物質のハンセン溶解度パラメータ(HSP)の距離を示し、両物質の類似性の差を意味する値であって、その値が大きい程、両物質の類似性が低い。
二つの物質AとBに対するそれぞれのハンセン溶解度パラメータ(HSP)が下記のようであると仮定すれば、
HSPA=(δDA、δPA、δHA
HSPB=(δDB、δPB、δHB
Raは下記のように計算することができる。
Ra=[4×(δDA−δDB2+(δPA−δPB2+(δHA−δHB21/2
【0042】
下記の表1及び表2には、ポリオレフィンとしてHDPEを、希釈剤としてBET及びEBN.Wを使用した場合のハンセン溶解度パラメータの計算値がそれぞれ示されている。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1及び表2を参照すれば、ポリオレフィンの一例であるHDPEと液―液相分離挙動を示す希釈剤のうち、トリメチロールプロパンのエステルの一例であるBET、及びトリエチレングリコールのエステルの一例であるEBN.Wは、共にHDPEより総ハンセン溶解度パラメータ(δTot)が大きいことが分かる。このとき、前記希釈剤の総ハンセン溶解度パラメータは、ポリオレフィンの総ハンセン溶解度パラメータよりそれぞれ1.8及び1.5程大きい。
【0046】
また、図1は、HDPE(Mw=5×105)とBET、及びHDPEとEBN.Wの相分離度を示している。図1を参照すれば、ポリオレフィンであるHDPEの比率が30〜50重量%である場合、ポリオレフィンと希釈剤との液―液相分離温度が約180〜220℃であることが分かる。
【0047】
図2は、希釈剤混合物中のEBN.W含量比毎のHDPEと希釈剤混合物との液―液相分離温度を示したグラフであり、図3は、希釈剤混合物中のBET含量比毎のHDPEと希釈剤混合物との液―液相分離温度を示したグラフである。
【0048】
前記相分離温度を測定する前に、ポリオレフィンと希釈剤混合物とを含む組成物は、HAAKEミキサーを利用して230℃で10分間、溶融混合して製造し、その後、前記組成物を冷蔵庫で即時冷却した。
【0049】
バイノーダル(binodal)を示す曇り点(相分離温度、cloud point)曲線は、熱光学顕微鏡(thermo‐optical microscopy)を用いて実験的に測定した。
【0050】
このとき、曇り点及び結晶化温度(Tc)を、S.S Kim等(Polymer、Volume 33、Issue 5、1992、1047〜1057頁)が報告した方法によって測定した。
【0051】
この方法において、ポリマー‐希釈剤混合物の薄いサンプル(thin sample)を2個の顕微鏡スライドカバースリップの間に置き、厚さ100μmのテフロン(登録商標)テープ及びグリース(grease)で密閉して、前記希釈剤の蒸発を防止した。その後、これをLinkam THMS500ホットステージに載置し、230℃まで加熱した。
【0052】
20〜30秒後、前記カバースリップを軽く圧着して前記サンプルを広がせ、可能な限り薄いサンプルを形成した。溶融物の均一性を確認するため、230℃で1分間維持した後、前記カバースリップ組立体を10℃/分の速度で100℃まで冷却した。
前記サンプルの温度が10℃/分の速度で最終的に100℃まで冷却される間、光を前記サンプルの間に通過させて透過した光の強度をモニタリングした。
【0053】
本実験を、波長538nmの非偏光で行なった。液―液相分離が起きるとき、透過した光の強度は減少した。このような信号変化の始まり(onset)は、液―液相分離の始まりの標識として用いられた。
【0054】
図2は、希釈剤混合物中のEBN.W含量比毎のHDPEとEBN.Wとの液―液相分離温度を示したグラフであり、このときポリオレフィンであるHDPEと希釈剤混合物との重量比は35:65である。このときの希釈剤混合物では、希釈剤としてトリエチレングリコールのエステルの一例であるEBN.Wを、補助希釈剤としてパラフィンオイルを使用し、EBN.Wの含量が増加するほど相分離温度が上昇することが分かる。特に、EBN.Wの含量が50〜70重量%である場合、153.9℃、154.4℃、及び161.4℃の相分離温度を示しており、EBN.Wの含量が60重量%以下である場合、安定した相分離現象が起きることが分かる。また、EBN.Wの含量が80重量%になったとき、相分離温度が227.2℃に急上昇した。EBN.Wの含量が40重量%である場合には、相分離を確認することができなかった。
【0055】
図3は、希釈剤混合物中のBETの含量比毎のHDPEとBETとの液―液相分離温度を示したグラフである。このとき、ポリオレフィンであるHDPEと希釈剤混合物との重量比は35:65である。このときの希釈剤混合物では、希釈剤としてトリメチロールプロパンのエステルの一例であるBETを、補助希釈剤としてパラフィンオイルを使用した。
【0056】
希釈剤混合物中のBETの含量が60重量%、65重量%、70重量%、80重量%、及び100重量%に増加するとき、液―液相分離温度はそれぞれ142.2℃、167.2℃、187℃、193.3℃、及び223.9℃であった。すなわち、BETの含量が70重量%から60重量%に減少するとき、相分離温度は急激に低下する傾向があることが分かった。BETの含量が50重量%であるときは、液―液相分離が確認できず、固―液相分離のみが確認できた。

図1
図2
図3