特許第5833460号(P5833460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5833460金型及び熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833460
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】金型及び熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/08 20060101AFI20151126BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20151126BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20151126BHJP
   B29C 43/10 20060101ALI20151126BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20151126BHJP
【FI】
   B29C33/08
   B29C33/04
   B29C43/36
   B29C43/10
   B29C43/34
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-19267(P2012-19267)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154624(P2013-154624A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構 サステナブルハイパーコンポジット技術の開発における委託研究による発明で産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願である。
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(74)【代理人】
【識別番号】100149021
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 有佳理
(72)【発明者】
【氏名】葭原 法
(72)【発明者】
【氏名】辻井 彰司
(72)【発明者】
【氏名】名合 聡
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章亘
(72)【発明者】
【氏名】林 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】濱田 泰以
(72)【発明者】
【氏名】仲井 朝美
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−249861(JP,A)
【文献】 特開2008−200939(JP,A)
【文献】 特開2011−098514(JP,A)
【文献】 特開平08−039571(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/125079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 43/00−43/58
B29C 35/00−35/18
B29C 70/00−70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kである非磁性金属材料により形成されたキャビティ面を有する一対のキャビティ型を具備し、前記一対の型のそれぞれに、内部に冷媒を流通して前記キャビティ型を冷却するための、該型内を貫通する冷却回路を有し、かつ前記一対のキャビティ型の外面にそれぞれ20℃における固有抵抗値が4.0〜100μΩ・cmである高周波誘導により発熱する磁性体を密接し、かつ該磁性体の外面に誘導加熱コイルが設けられていることを特徴とする金型。
【請求項2】
前記一対のキャビティ型がそれぞれアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記一対のキャビティ型表面が、窒化金属コート、炭化金属コート、金属メッキのいずれかで処理されたアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記一対のキャビティ型のそれぞれの厚さが、5〜150mmである請求項1〜3のいずれかに記載の金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
加圧チューブの周囲に巻き付けた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を、該加圧チューブがキャビティの長手方向に沿うように、前記金型のキャビティ内に配置して該金型を閉じる配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導によりキャビティ型を熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の成形温度に調節した後、前記加圧チューブを加圧して膨張させ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料をキャビティ面に内側から密着させ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料に内部から圧力をかけて内圧成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させてキャビティ面を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前記金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体を高周波誘導加熱し、熱伝導によりキャビティ型を熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の成形温度に調節した後、金型で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させてキャビティ面を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型及び熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス樹脂が強化繊維で強化された熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料等の成形材料の成形方法としては、所望の形状のキャビティを有する金型による成形方法が挙げられる。特に、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の成形では、高温の金型で成形材料を溶融成形し、該金型を冷却して成形材料を固化した後に、金型から成形品を取り出す手法が用いられ、金型の加熱、冷却を繰り返す必要がある。このような成形品の製造のハイサイクル化には、金型の加熱及び冷却を急速で行うことが重要である。
【0003】
加熱や冷却が効率的に行える金型としては、下記の金型が知られている。
(1)金型のキャビティ面に薄肉の金属殻が形成されており、該金属殻を高周波誘導加熱により直接加熱する金型(特許文献1)。
(2)金型のキャビティ面を加熱する加熱配管を加熱するために、発熱体及び該発熱体を高周波誘導加熱する誘導加熱コイルを設けた金型(特許文献2)。
(3)樹脂の転写性と流動性を高めるため、金型のキャビティ近傍に、高周波誘導加熱する誘導加熱コイルが設けられ、かつ金型内に冷水を流通して金型を冷却する冷却水路が形成された射出成形用金型(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4242644号公報
【特許文献2】特許第3651163号公報
【特許文献3】特開2008−110583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)の金型は、成形材料と接触する薄肉の金属殻を、高周波誘導により直接加熱するため、成形時において急速な加熱が可能である。しかし、キャビティ面の金属殻を直接高周波誘導加熱した場合、昇温速度は速くなり、ハイサイクル化に有効であったが、金型のキャビティ表面の誘導発熱は、コイルの配置やキャビティ面の凹凸に大きく依存することから、表面温度のバラツキは大変大きかった。プリプレグの成形には、プリプレグの加熱温度を適正温度範囲内に制御しなければならないが、(1)の金型では表面の温度分布が広く、プリプレグの未溶融状態と熱分解や熱変色が共存し、良好な成形品を得ることは、大変困難であった。また押し型に絶縁性が必須であり、型締め時に絶縁破壊するトラブルが起こりやすく量産型として問題があった。また冷却手段が空冷であるため、金属殻の冷却に時間がかかった。
【0006】
(2)の金型は、金型を温調配管により加熱するために、高周波誘導で温調配管を加熱するものである。熱媒体を高温に加熱するために、金型の加熱に適するが、成形後成形品を取り出す際に、金型を冷却するまで時間がかかり量産型としては要求に合わなかった。
【0007】
(3)の金型は、高周波誘導により金型を直接加熱し、また金型内に冷水を流通することで金型を冷却するものである。しかし、該金型は、金型全体を加熱及び冷却するものであり、通常の金型の熱容量は高く、加熱、冷却に時間がかかる。また、発熱や冷却は、コイルや冷却管の配置に強く依存する。熱伝導率が低いため伝熱が均一化されず、温度分布を有し、温度に敏感なプリプレグの成形において良品を得るには問題があった。
【0008】
以上のように、(1)〜(3)の金型では、加熱、冷却サイクルの効率化はなされたが、金型の場所による温度分布が広く、従って、成形される樹脂の温度分布も広く、樹脂の流動ムラや黄変やヤケムラが発生し、良品を得ることは困難であった。特に、成形に厳密な温度管理が必要な熱可塑性樹脂の圧縮成形や内圧成形には使用できるものでなかった。また適正成形温度幅の狭いプリプレグ成形用に、温度分布が狭く、かつ短時間に加熱・冷却サイクルできる金型の強い開発要求があった。
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料等の成形材料を成形する金型であって、キャビティ面の加熱及び冷却を急速に行って、かつ温度分布が均一であり、ハイサイクルに品質のよい成形品を製造できる金型の提供を目的とする。
また、本発明は、前記金型を用いたハイサイクルな熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
〔1〕20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kである非磁性金属材料により形成されたキャビティ面を有する一対のキャビティ型を具備し、前記一対の型のそれぞれに、内部に冷媒を流通して前記キャビティ型を冷却するための、該型内を貫通する冷却回路を有し、かつ前記一対のキャビティ型の外面にそれぞれ20℃における固有抵抗値が4.0〜100μΩ・cmである高周波誘導により発熱する磁性体を密接し、かつ該磁性体の外面に誘導加熱コイルが設けられている金型。
〔2〕キャビティ型がアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、前記〔1〕に記載の金型。
〔3〕キャビティ型表面が、窒化金属コート、炭化金属コート、金属メッキのいずれかで処理されたアルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成されている、前記〔1〕に記載の金型。
〔4〕一対のキャビティ型それぞれの厚さが、5〜150mmである前記〔1〕又は、〔2〕又は、〔3〕に記載の金型。
〔5〕前記〔1〕又は、〔2〕又は、〔3〕又は、〔4〕に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
加圧チューブの周囲に巻き付けた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を、該加圧チューブがキャビティの長手方向に沿うように、前記金型のキャビティ内に配置して該金型を閉じる配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、熱伝導によりキャビティ型を熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の成形温度に調節した後、前記加圧チューブを加圧して膨張させ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料をキャビティ面に内側から密着させ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料に内部から圧力をかけて内圧成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させてキャビティ面を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
〔6〕前記〔1〕又は、〔2〕又は、〔3〕又は、〔4〕に記載の金型を用いた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法であって、
前記金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置する配置工程と、
前記誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、熱伝導によりキャビティ型を熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料の成形温度に調節した後、金型で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を圧縮成形する成形工程と、
前記成形工程の後に、前記高周波誘導加熱を停止し、前記冷却回路に冷媒を流通させてキャビティ面を冷却し、前記熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する冷却工程と、
前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す取り出し工程と、
を有する熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金型は、キャビティ面の加熱及び冷却を急速に行うことができ、かつ温度分布が均一であり、これを用いると広い成形条件幅で成形品を製造できる。
また、本発明の製造方法によれば、ムラがなく高品質な熱可塑性樹脂系複合材料成形品をハイサイクルに製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の金型の実施形態の一例を示した斜視図である。(A)開いた状態、(B)閉じた状態。
図2図1の金型を短手方向に沿って切断したときの縦断面図である。(A)開いた状態、(B)閉じた状態。
図3】本発明の金型の他の実施形態例を示した断面図である。(A)開いた状態、(B)閉じた状態。
図4図1の金型を用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した斜視図である。
図5図1の金型を用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した斜視図である。
図6図1の金型を用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した縦断面図である。材料をチャージした状態。
図7図1の金型を用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した縦断面図である。成形した状態。
図8】本発明の製造方法により得られる熱可塑性樹脂系複合材料成形品の一実施形態例を示した斜視図である。
図9図3の金型を用いた本発明の熱可塑性樹脂系複合材料成形品の製造方法の一工程を示した縦断面図である。(A)材料をチャージした状態、(B)成形した状態。
図10】実施例1で使用した金型における上型の冷却回路を平面状に展開したときの構成を示した概略図である。
図11】実施例1で使用した金型における上型における誘導加熱コイルの配置の様子を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<金型>
本発明の金型は、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/Kである非磁性金属材料により形成されたキャビティ面を有する一対の型を具備し、前記一対の型のそれぞれに、内部に冷媒を流通して前記キャビティ型を冷却するために、該型内を貫通する冷却回路を有し、かつ前記一対のキャビティ型の外面にそれぞれ20℃における固有抵抗値が4.0〜100μΩ・cmである高周波誘導により発熱する磁性体を密接し、かつ該磁性体の外面に誘導加熱コイルが設けられている金型である。
以下、本発明の金型の実施形態の一例を示して詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
本実施形態の金型1は、図1及び図2に示すように、相対移動可能な、直方体形状の一対の上型10と下型20を具備している。
上型10は、キャビティ型11の短手方向の中央に、キャビティ型11の長手方向に沿ってキャビティ26が形成されている。上型のキャビティ型11と下型のキャビティ型21が型締めで接触する。また、上型10は、上型10の長手方向に沿ってキャビティ型11を貫通する複数本の冷却回路14が並べて設けられている。また、上型10の内部の冷却回路14より更に外側(キャビティ型11の反対側)には、磁性体(加熱板)12を高周波誘導加熱する誘導加熱コイル15が設けられている。
下型20は、上型10と同様に、キャビティ型21の短手方向の中央に、キャビティ型21の長手方向に沿ってキャビティ26が形成されている。また、下型20は、下型20の長手方向に沿ってキャビティ型21を貫通する複数本の冷却回路24が並べて設けられており、下型20の外側(キャビティ型21の反対側)に、磁性体22を高周波誘導加熱する誘導加熱コイル25が設けられている。
上型誘導加熱コイルケース13と下型誘導加熱コイルケース23は、電気的に完全に絶縁されている本実施形態では、キャビティ型21と11が絶縁層となっている。
金型1は、図1(B)及び図2(B)に示すように、上型10と下型20を閉じることで、両端が開放された円柱状のキャビティ26が形成される。
【0015】
型の取り付け板や側板を形成する材料としては、高周波誘導により加熱されない絶縁物を用いる。また熱伝導度も低い無機物が特に好ましい。
取り付け板や側板を形成する材料の具体例としては、例えば、セラミック、耐熱強化プラスチック、無機断熱材、コンクリートが挙げられる。
【0016】
キャビティ26の形状は、目的の成形品の形状に応じて決定すればよく、本実施形態では、短手方向に沿った断面形状が半円形状である。
【0017】
成形工程において、成形性がよく、かつ良好な成形品を得るには、キャビティ型のキャビティ面の温度分布はできるだけ均一であることが重要である。特に、急速加熱、急速冷却を意図した本発明に使用される金型においては、均一な温度分布は必須の要求項目である。
【0018】
本発明者等が鋭意検討した結果、加熱源である加熱板をキャビティ面から離して配置し、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/K、好ましくは150〜400W/m/Kである材料がキャビティの材質として好ましいことが分かった。熱伝導率が100W/m/K未満では、伝熱に時間がかかり、急速加熱や急速冷却が達成されなく、また450W/m/Kを超えると、加熱板からの温度分布が解消できず、キャビティ面での温度分布が広くなり好ましくない。また本発明では、加熱源として、誘導加熱コイルによる誘導加熱を使用することから、温度制御の面から、キャビティの材質は、誘導加熱しにくいことが必要であり、非磁性金属材料が好ましい。20℃における熱伝導率が150〜450W/m/Kの材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金が挙げられる。特にアルミニウムやアルミニウム合金は熱伝導率が高く、キャビティの加工性がよく好ましい。アルミニウム合金としては、アルミニウムと亜鉛、銅、マグネシウム、ケイ素、マンガンなどからなる合金が挙げられる。キャビティの耐磨耗性の面から表面硬度が高い方が、型として耐用年数が長くなり好ましい。このため本発明には、アルミニウム単体より、銅とマグネシウムや、亜鉛とマグネシウムとなどとの合金が特に好ましい。
【0019】
また、キャビティ面は、成形する材料により磨耗や腐蝕や離型性の面から硬度や耐食性が要求される。本発明において、キャビティ型で温度分布が均一化するから、キャビティ型をメッキやコーティングすることが出来る。メッキとしては、クロムメッキや無電解ニッケルメッキなどが例示される。またコーティングとしては、TiN,TiCN,TiAlN,CrN,AlCrNなどの窒化金属コートや炭化金属コートが例示される。
【0020】
加熱源となる磁性体12と22は、それぞれキャビティ型11と誘導加熱コイルのケース13、キャビティ型21と誘導加熱コイルのケース23の間に配置される。磁性体12と22は、20℃における固有抵抗値(以下、単に「ρ」という。)が4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料からなる。すなわち、上型の磁性体12と下型の磁性体22は、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により形成されている。前記磁性金属材料のρが4.0μΩ・cm以上であれば、高周波誘導により加熱され、密着したキャビティ型に急速に伝熱される。また、前記磁性金属材料のρが100μΩ・cm以下であれば、充分な電流が流れるため、急速に加熱できる。磁性体(加熱板)12と22を形成する磁性金属材料のρは、5.0〜90μΩ・cmが好ましく、6.0〜80μΩ・cmがより好ましい。
【0021】
本発明でいう磁性体とは、磁石に吸い付くような強い磁性を示す強磁性体をさし、磁界Hと磁化の強さIとの関係を示す磁化曲線は、直線的ではなく、強いHでIは一定の値Isに飽和し、この飽和磁界強さが、0.1(Wb/m2)以上、特に0.5(Wb/m2)以上の強磁性材料が好ましい。例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどから選ばれた1種以上の原子を質量にして50%以上を含む金属や合金が上げられる。加熱板12と22を形成する磁性金属材料は、具体的には鋼鉄、炭素鋼、軟鋼、珪素鋼、MK鋼、ステンレス鋼、ニッケル、四三酸化鉄などが上げられる。特に、強磁性体である鋼やニッケルが好ましい。
【0022】
高周波誘導加熱された磁性金属材料から、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/K、好ましくは150〜400W/m/Kである非磁性金属材料により形成されたキャビティ型11と21に伝熱される。磁性金属材料は、誘導加熱コイル15と25の配置による磁界の強弱により、発熱度合いが異なり、位置に依存して大きな温度分布を有する。しかし、上型と下型のキャビティ型を通して伝熱されたキャビティ面における温度分布は大変小さくなる。熱伝導率が100W/m/K未満では、磁性金属材料をより高温にする必要があり、省エネルギーの面から好ましくない。また450W/m/Kを超えると熱効率はよくなるが、本発明ではキャビティ型と加熱板を密着させているので、キャビティ型の熱伝導率が極端に高いと、キャビティ型の表面温度は、加熱板の温度分布をそのまま拾って、キャビティ面での温度分布の均一化が不十分となり好ましくない。
【0023】
本発明に使用されるキャビティ面への伝熱距離となるキャビティ型の厚さは、特に限定されないが、5〜150mm、好ましくは、10〜120mmである。5mm未満では、キャビティ面の温度分布の均一化が不十分で好ましくなく、また150mmを超えると、キャビティ面の加熱に時間がかかり好ましくない。キャビティ型の厚さは、成形する際の温度分布と加熱速度の要求度により選択される。なお、本発明における熱伝導率は、JIS A1412−2付属書Aの平板比較法に準拠して測定される。
【0024】
キャビティ型11と21に配置された冷却回路14と24は、その内部に冷媒を流通させ、熱伝導によりキャビティ面を冷却するものであり、キャビティ型を長手方向に貫通するように配管されている。また、冷却回路14と24は、それぞれがキャビティ型に貫通するように穴加工され、型の外表面で連結されている。冷媒が熱伝導率の高いキャビティ型内を直接流れるから、急速に冷却される。
【0025】
本実施形態の冷却回路14と24は、キャビティ型に貫通孔を開け、図10に示したように金型表面で隣接する貫通孔を配管でつなぐことで敷設される。キャビティ内は、貫通孔とすることが冷却時の熱交換性から好ましいが、この貫通孔中にも配管することができる。この配管は、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により形成されることが好ましい。前記ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路14と24が形成されていることにより、冷却回路14と24は、加熱板12と22より誘導加熱コイルからの遠距離であることと合わせて、材質的にも加熱板12と22に比べて高周波誘導による加熱効率が著しく低くなる。そのため、高周波誘導により、加熱板12と22を加熱し、それからの伝熱で加熱されるキャビティ型11と21の加熱時に、その高周波誘導により冷却回路14と24が同時に加熱されることを防止することができ、冷却回路14と24の温度が低いまま保たれるので、その後のキャビティ型11と21の冷却を速やかに高効率で行える。
【0026】
冷却回路14と24を形成する非磁性金属材料のρは、4.0μΩ・cm以下がより好ましい。
【0027】
また、冷却回路14と24は、キャビティ型11と21の冷却効率の点から、熱伝導度の高い非磁性金属材料から形成されていることが好ましい。
【0028】
冷却回路14と24を形成する非磁性金属材料としては、特に制限はないが、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられる。なかでも、銅が好ましい。
【0029】
冷却回路14と24の断面形状及び断面積は、適宜設定できる。
冷却回路14と24の本数は、キャビティ型11と21を急速に冷却するのに充分な本数であればよく、上型10の強度を考慮しつつ適宜設定できる。冷却回路14と24は、キャビティ型11と21全体を均一に冷却できるように、複数本を平行にかつ等間隔に設けることが好ましい。
【0030】
コイルケース13と23中に敷設された誘導加熱コイル15と25は、電流を通じることで発生する磁界により、加熱板12と22を高周波誘導加熱するものである。
誘導加熱コイル15と25は、加熱板12と22を高周波誘導加熱して伝熱によりキャビティ型11と21を加熱できるものであればよく、一般には外側が絶縁された集束された銅線が用いられる。
【0031】
誘導加熱コイル15と25の形状、大きさ、位置及び数は、加熱板12と22を高周波誘導加熱して伝熱によりキャビティ型11と21を急速に加熱できる範囲であれば特に限定されない。
誘導加熱コイル15と25は、本実施形態では、型本体の内部で加熱板12と22の外側(キャビティ型11と21の反対側のコイルケース13と23内)に設けられている。誘導加熱コイル15と25を敷設するコイルケースは、誘導加熱しくい材質であることが好ましく、樹脂製、セラミック製、石綿製、木網セメント板製、非磁性金属製などが挙げられる。これらの中では、断熱性が高い樹脂製や石綿製、木網セメント板が好ましい。
【0032】
下型20は、上型10と基本的に同じ仕様の型や材質が使用できる。成形する製品により、上型のキャビティ11と下型のキャビティ21の厚さは異なることもある。その熱容量バランスを考慮して、キャビティ11と21の温度が等しく昇温するように加熱板12と22や加熱コイル15と25の容量が選択されることが好ましい。また冷却工程でキャビティ11とキャビティ21の温度が等しくなるように、冷却管(冷却孔)14と24を敷設することが好ましい。
【0033】
本発明の成形用型では、積層型の層間に絶縁層は特に必要がない。ただ加熱コイル15と25のそれぞれのコイル間の絶縁性は保たれなければならない。またコイルケース13と23は、熱的のみならず電気的にも絶縁性を有する材質が好ましい。材質としては、樹脂製、セラミック製、石綿製、木網セメント板などが挙げられる。
【0034】
金型1は、誘導加熱コイル15,25に電流を通じることにより、高周波誘導により加熱板12,22を加熱して、伝熱によりキャビティ型11,21を急速に加熱できる。また、誘導加熱コイル15,25の電流を停止して加熱板12,22の高周波誘導加熱を停止した後、冷却回路14,24に冷媒を流通させることで、キャビティ型11,21を急速に冷却できる。そのため、キャビティ型11,21の急速な加熱と冷却を繰り返しながら成形材料を成形することで、ハイサイクルに成形品を製造できる。
【0035】
なお、本実施形態の金型1における誘導加熱コイル15,25を設ける位置は、加熱板12,22を高周波誘導加熱できる位置であればよく、型本体10,20の内部に設ける積層位置の態様には限定されない。例えば、加熱板12,22とコイルケース13,23の間に断熱板や空間を設けることができる。この場合においても、キャビティ型の加熱速度を向上させるために、加熱板12,22をキャビティ型11,21に密着するように設置する。
【0036】
キャビティ型11,21の冷却速度を向上させるために、冷却回路14,24は、キャビティ型11,21内のキャビティ面近傍に設置することが好ましい。
また、冷却回路は、金型本体の長手方向に沿って設ける態様には限定されず、金型の短手方向に沿って設けてもよい。ただし、冷却回路は、キャビティ面の冷却効率の点から、キャビティが形成されている向きに沿って設けることが好ましい。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の金型の他の実施形態例を示して詳細に説明する。
本実施形態の金型2は、図3(A)に示すように、相対移動可能な一対の上型と下型を具備する。金型2は、上型と下型がそれぞれ直方体形状であり、図3(B)に示すように、上型と下型を閉じることで、キャビティ型31,41に発現する密閉空間として36,46が形成される。すなわち、金型2により、立体状の成形品を製造できる。
【0038】
キャビティ型31,41の長手方向に沿ってキャビティ型31,41を貫通する複数本の冷却回路37,47が、キャビティ面36,46に密着するように並べて設けられている。また、キャビティ型31,41の外側(金型表面側)には、加熱板32,42を高周波誘導加熱して、熱伝導によりキャビティ型31,41を加熱する誘導加熱コイル38,48が、コイルケース33,43中に設けられている。更に成形機への取り付け板34,44と側板35,45が取り付けられている。誘導加熱コイル38,48や、加熱板32,42は、電気的に完全に絶縁されている必要があり、コイルケース33,43に電気絶縁が施されている。
【0039】
キャビティ型31と41により形成されるキャビティ36,46の形状は、目的の成形品の形状に応じて決定すればよく、本実施形態ではその断面形状は矩形である。
キャビティ型31,41の材質としては、第1実施形態のキャビティ型11で挙げた材質と同じ材質が挙げられ、好ましい態様も同じである。
加熱板32,42は、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料からなり、第1実施形態の加熱板12,22と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0040】
冷却回路37,47は、その内部に冷媒を流通させ、熱伝導によりキャビティ型31,41を冷却してキャビティ面36,46を冷却するものであり、第1実施形態の冷却回路14,24と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0041】
誘導加熱コイル38,48は、電流を通じることで加熱板32,42を高周波誘導加熱して、伝熱により密着したキャビティ型31,41を成形温度まで急速に加熱するものであり、第1実施形態の誘導加熱コイル15,25と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0042】
取り付け板34,44や側板35,45に用いることができる材料としては、無機物等の絶縁物、20℃における固有抵抗値が5.0μΩ・cm以下の非磁性体である誘導加熱されにくい金属材料等が挙げられる。
【0043】
金型2は、誘導加熱コイル38,48に電流を通じることで、高周波誘導により加熱板32,42を加熱して、伝熱によりキャビティ型31,41を急速に加熱できる。また、誘導加熱コイル38,48の電流を停止して加熱板32,42の高周波誘導加熱を停止した後、冷却回路37,47内に冷媒を流通させることで、キャビティ型31,41を冷却してキャビティ面36,46を急速に冷却できる。そのため、キャビティ面36,46の急速な加熱と冷却を繰り返しながら成形材料を成形することで、ハイサイクルに成形品を製造できる。
【0044】
なお、本実施形態の金型2においては、誘導加熱コイルを設ける位置は、加熱板32,42を高周波誘導加熱できる位置であればよく、型本体の内部に設ける積層位置の態様には限定されない。例えば、加熱板32,42とコイルケース33,43の間に断熱板や空間を設けることができる。この場合においても、キャビティ型の加熱速度を向上させるために、加熱板32,42をキャビティ型31,41に密着するように設置する。コイルケース33,43は、加熱板32,42や取り付け板34,44と電気絶縁性を有することが必要であり、樹脂製やセラミック製が好ましい。
【0045】
<熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]>
本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、本発明の金型を用いた製造方法であって、下記工程を有する。
配置工程:金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置し、金型を閉じる。なお、予め、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を溶融させておき、キャビティ内に配置してもよい。この態様は、後述する第2実施形態においても採用可能である。
成形工程:誘導加熱コイルに電流を通じて磁性体(加熱板)を高周波誘導加熱し、加熱板から伝熱でキャビティを均一に加熱する。熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を加熱し、必要に応じて溶融させ、更に内部から圧力をかけることによって内圧成形する。なお、「必要に応じて溶融させ」るのは、配置工程で、溶融していない熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置した場合のことである。この態様は、後述する第2実施形態においても同様である。
冷却工程:前記成形工程の後に、前記加熱板の高周波誘導加熱を停止し、キャビティ型内の冷却回路に冷媒を流通させてキャビティ面を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する。
取り出し工程:前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す。
【0046】
以下、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の実施形態の一例として、前述の金型1を用いた製造方法について説明する。
【0047】
配置工程では、図4および図6に示すように、加圧チューブ51の周囲に巻き付けられた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xを、加圧チューブ51がキャビティ16,26の長手方向に沿うように、キャビティ26内に配置し、金型1を閉じる。
この状態でチューブ内にガスを送入して加圧チューブ51を膨張させることで熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xを内側からキャビティ面16,26に密着させて、さらに加圧することができるようになっている。
【0048】
熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xは、マトリックス樹脂が強化繊維で強化された繊維強化複合材料からなる公知の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を用いることができる。なお、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を溶融させた状態でキャビティの上に載置しても構わない。
【0049】
強化繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、高強度ポリエステル繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維等の各種の無機繊維または有機繊維等が挙げられる。強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、一方向に引き揃えた状態、織物、編み物、不織布、チョップされた短繊維形状等いずれの状態であっても使用できる。
【0050】
マトリックス樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂(ポリアミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル等)等が挙げられる。
【0051】
成形工程では、誘導加熱コイル15,25に電流を通じて加熱板12,22を高周波誘導加熱し、伝熱することでキャビティ型11,21を加熱し、キャビティ面16,26を成形温度に調節し、図7に示すように、チューブ内にガスを送入して加圧チューブ51を加圧して膨張させ、加圧チューブ51に巻き付けた熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xをキャビティ面16,26に密着させる。これにより、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xが未溶融の場合でも、高温のキャビティ面16,26により溶融され、加圧チューブ51とキャビティ面16,26に挟まれた状態で、内部から圧力がかかって円筒状に溶融成形される。
【0052】
キャビティ面16,26の加熱温度は、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xが充分に溶融する温度であればよく、用いる熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xの種類によっても異なるが、80〜400℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。加熱板の温度は、伝熱するキャビティ型の厚さによるが、キャビティ型より5〜50℃高いことが好ましく、より好ましくは10〜30℃、特に10〜20℃高いことが好ましい。
【0053】
成形工程の後、冷却工程において、誘導加熱コイル15,25の電流を停止し、加熱板12,22の高周波誘導加熱を停止する。そして、冷却回路14,24の内部に冷媒を流通させ、熱伝導によりキャビティ面16,26を冷却し、円柱状に成形された状態で熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xを固化する。
【0054】
冷却工程では、キャビティ面16,26の温度を、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xが固化するのに充分な温度まで冷却すればよい。冷却工程では、用いる熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xの種類によっても異なるが、ハイサイクルな成形品の製造が容易な点から、キャビティ面16,26を30〜200℃まで冷却することが好ましく、70〜160℃まで冷却することがより好ましい。
【0055】
冷却回路14,24の内部に流通させる冷媒としては、水、オイル(例えば、松村石油(株)製バーレルサーム#400、綜研テクニックス(株)製NeoSK−OIL1400等)等が挙げられる。冷媒の温度は、10〜100℃が好ましい。
【0056】
冷却工程において熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Xを固化した後、加圧チューブ51の加圧を停止し、加圧チューブ51を抜き取り、金型1から成形品を取り出す。
以上の工程により、図8に例示した円筒状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品50が得られる。
【0057】
金型1では、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により加熱板12,22が形成されているため、加熱板12,22を高周波誘導加熱により短時間で急速に加熱できる。一方、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路14,24が形成されているので、キャビティ面16,26を高周波誘導加熱する際に冷却回路14,24が同時に加熱されることが防止されている。そのため、冷却回路14,24は温度が低いまま保たれているので、冷却工程におけるキャビティ面16,26の冷却が効率的に行える。
【0058】
加熱板12,22の温度は、加熱コイル15,25に誘導される磁界の強さと時間に依存する。その磁界の強さは、コイルの配置と電流に依存する。コイル配置による加熱板面上の磁界の強さの分布は避けられず、それに伴い加熱板に温度分布として現れる。加熱板上の温度分布を樹脂成形に要求される10℃以内に抑制することは困難であった。しかし、この加熱板に密着した、20℃における熱伝導率が100〜450W/m/K、好ましくは200〜400W/m/Kである非磁性金属材料に伝熱通過する本発明により、伝熱過程で平均化され、キャビティ面16,26において温度分布は10℃以下に制御できる。
【0059】
なお、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、前述の金型1を用いる方法には限定されず、用いる金型は、前述した冷却回路及び誘導加熱コイルを有するものであれば、キャビティの形状は限定されない。
【0060】
<熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第2実施形態]>
以下、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の他の製造方法について説明する。該方法は、本発明の金型を用いた製造方法であって、下記工程を有する。
配置工程:金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を配置し、金型を閉じる。
成形工程:誘導加熱コイルに電流を通じて加熱板を高周波誘導加熱し、伝熱によりキャビティ型を成形温度まで加熱する。キャビティ内の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を加熱し、必要に応じて溶融させ、次いで加圧して、金型内で圧縮成形する。
冷却工程:前記成形工程の後に、前記加熱板の高周波誘導加熱を停止し、キャビティ型内の冷却回路に冷媒を流通させてキャビティ面を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を固化する。
取り出し工程:前記冷却工程の後に、金型から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す。
【0061】
以下、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法の実施形態の一例として、前述の金型2を用いた製造方法について説明する。
【0062】
配置工程では、図9(A)に示すように、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Yを金型2の下型のキャビティ46表面に配置し、金型を閉じる。次いで成形工程において、誘導加熱コイル38,48に電流を通じて加熱板32,42を高周波誘導加熱して、伝熱によりキャビティ型31,41を加熱するとともに金型を加圧し、図9(B)に示すように、上型と下型により熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Yを、必要に応じて溶融させ圧縮成形する。これにより、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品Zを得ることができる。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法では、誘導加熱コイル38,48に電流を通じて加熱板32,42を高周波誘導加熱して、伝熱によりキャビティ型31,41を加熱した後に熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Yを配置して圧縮成形を行ってもよい。
【0064】
キャビティ面36,46の加熱温度は、用いる熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Yの種類によっても異なるが、80〜400℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。なお伝熱元の加熱板32,42は、キャビティ面より10〜30℃高く加熱される。
【0065】
熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Yは、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]で使用したものと同じ、マトリックス樹脂が強化繊維で強化された繊維強化複合材料からなる公知の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を用いることができる。
【0066】
成形工程の後、冷却工程において、誘導加熱コイル38,48の電流を停止し、加熱板32,42の高周波誘導加熱を停止する。そして、キャビティ型31,41に配管された冷却回路37,47の内部に冷媒を流通させ、熱伝導によりキャビティ面36,46を冷却し、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料Yを固化する。
【0067】
冷却回路37,47の内部に流通させる冷媒としては、冷却水、冷却オイル等が挙げられる。冷媒の温度は、10〜100℃が好ましい。
【0068】
冷却工程の後、取り出し工程において、金型2を開き、金型2から熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品を取り出す。これにより、平板状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られる。
【0069】
金型2は、金型1と同様に、ρが4.0〜100μΩ・cmの磁性金属材料により加熱板32,42が形成され、ρが5.0μΩ・cm以下の非磁性金属材料により冷却回路37,47が形成されているため、冷却回路37,47を加熱せずに、加熱板から伝熱によりキャビティ型31,41を急速に加熱できる。また、前述の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法[第1実施形態]と同様に、高周波誘導により加熱されない絶縁物で取り付け板34,44や側板35,45を形成すれば、ハイサイクルな熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造がさらに容易になる。
【0070】
なお、本発明の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品の製造方法は、前述の金型2を用いる方法には限定されない。例えば、用いる金型は、前述した加熱板、熱伝導性の高いキャビティ型、冷却回路及び誘導加熱コイルを有するものであれば、所望のキャビティ形状を有する金型が使用できる。
【0071】
以上説明したように、本発明の金型は、特定の金属材料により形成した加熱板、キャビティ型及び冷却回路を用い、キャビティ面を急速加熱と急速冷却することができ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品等の成形品がハイサイクルで製造できる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0073】
[実施例1]
図1に例示した構造の金型を製作した。上型、下型とも全く同じ仕様とした。キャビティ型は、上型と下型を向き合わせて閉じたときに、直径50mmの円柱状のキャビティが形成されるようなキャビティ面を有し、上型と下型との接触面の幅が左右両側とも25mm、長手方向の長さが300mmであり、アルミニウム1000製(20℃における熱伝導率240W/m/K)のものを使用した。
冷却回路は、キャビティに直径6.0mmの貫通孔を開け、金型外は直径6.0mmの市販の銅管(非磁性体、ρ=1.69μΩ・cm、株式会社コベルコマテリアル製)を使用し、図10に示すように連通し、片側につき6本、合計13本をスネーク状に配置した。上型、下型それぞれまとめて冷却水を流せるようにした。
誘導加熱コイルは、直径10mmの市販の銅管(株式会社コベルコマテリアル製)の表面を絶縁コーティングしたものを用い、コイルケース内に、図11に示すように、銅管の間隔が10mmとなるよう渦状に配置した。コイルケースは、厚さ8mm、幅50mmの石綿スレート板製により枠組した。加熱板は、鉄鋼(磁性体、ρ=10.0μΩ・cm、厚さ5mm)を使用した。
【0074】
上型及び下型の誘導加熱コイルに、それぞれ2kWの出力でジェネレーターから通電した。熱電対をキャビティ表面に設置し、キャビティの温度変化を測定したところ、キャビティ表面は約50秒で室温から300℃まで加熱されることが確認できた。また直径50mm、長さ300mmのキャビティ内の最高と最低の温度差は7℃以内であった。ここで誘導加熱を中止し、冷却回路に冷却水を通水したところ、20秒でキャビティ表面の最高温度が80℃まで下がった。
【0075】
この金型を使用して成形確認を実施した。熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料としては、東洋紡績株式会社製の、ガラス繊維(連続繊維)にポリプロピレンを含浸させたテープ(Quick Form(登録商標)、巾15mm、厚み150μm、Vf=50%)からなる平織物(クロス材料)を使用した。成形した時に均等に10層になるように、300mm×1570mmのクロス材料を加圧用チューブに緩く巻きつけた。熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を巻きつけたチューブを図5に例示したように金型のキャビティ内に挿入し、チューブ内に8気圧の圧縮空気を充填して膨張させ、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料を内側からキャビティ型に押し付けると共に、高周波誘導加熱を開始した。熱電対により、キャビティ型のキャビティ表面温度が40秒で200℃に達したことを確認した後、3分経ってから誘導加熱を止め、冷却回路に冷却水を流した。キャビティ表面温度が100℃以下になったことを確認した後、冷却を止め、チューブから圧縮空気を抜いて、成形品を金型から取り出した。外径が50mm、厚みが約1.5mmの状態の良いチューブ状の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品が得られた。該成形品は、内部にもボイドは少なく充分にコンソリデーションされていることが観察された。
【0076】
[実施例2]
キャビティ型として、アルミニウム板の代わりに同じ寸法のジュラルミンA2017(アルミニウム−銅合金、20℃における熱伝導率230W/m/K)を使用した以外は、実施例1と全く同じ仕様、構成で金型を作製し、実施例1と同じ条件で誘導加熱を行った。その結果、約55秒でキャビティ型の温度が300℃に達した。誘導加熱を中止し、冷却回路に冷却水を通水したところ、キャビティ表面温度が20秒で80℃まで下がった。
【0077】
[比較例1]
キャビティ型として、アルミニウム板の代わりに同じ寸法の炭素鋼(20℃の熱伝導率53W/m/K)を使用した以外は、実施例1と全く同じ仕様、構成で金型を作製し、実施例1と同じ条件で誘導加熱を行った。その結果、キャビティ型の温度が平均250℃に達するのに340秒かかった。キャビティの最高温度と最低温度の差は72℃であった。誘導加熱を中止し、冷却回路に冷却水を通水したところ、キャビティ表面温度が45秒で80℃まで下がった。
以上のように、本発明の金型は、キャビティ型の加熱及び冷却が急速に行え、またキャビティ面の温度分布が均一であるため、熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品をハイサイクルで表面外観ムラのない成形ができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の金型は、金型の急速な加熱、冷却が可能であるため、自動車部品等の用途の熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品をハイサイクルに製造できる。
【符号の説明】
【0079】
<金型1>
10:上型、20:下型、11:上キャビティ型、21:下キャビティ型、12:上型発熱磁性体、22:下型発熱磁性体、13:上型誘導加熱コイルケース、23:下型誘導加熱コイルケース、14:上型冷却回路(冷却管)、24:下型冷却回路(冷却管)、15:上型加熱コイル、25:下型加熱コイル、16:上型キャビティ、26:下型キャビティ
<金型2>
30:上型、40:下型、31:上キャビティ型、41:下キャビティ型、32:上型発熱磁性体、42:下型発熱磁性体、33:上型誘導加熱コイルケース、43:下型誘導加熱コイルケース、34:上型取り付け板、44:下型取り付け板、35:上型側板、45:下型側板、36:上型キャビティ、46:下型キャビティ、37:上型冷却回路(冷却管)、47:下型冷却回路(冷却管)、38:上型加熱コイル、48:下型加熱コイル、
50:熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料成形品、 51:加圧チューブ、
X:熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料、
Y:成形前熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料
Z:成形後熱可塑性樹脂系繊維強化複合材料
図1
図2
図3
図4
図5
図8
図11
図6
図7
図9
図10