【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0046】
実施例1
(チタニア担体の調製)
チタニア粉末〔昭和タイタニウム(株)製のF−1R、ルチル型チタニア比率93%〕100重量部と有機バインダー2重量部〔ユケン工業(株)製のYB−152A〕とを混合し、次いで純水29重量部、チタニアゾル〔堺化学(株)製のCSB、チタニア含有量40%〕12.5重量部を加えて混練した。この混合物を直径3.0mmφのヌードル状に押出し、60℃で2時間乾燥した後、長さ3〜5mm程度に破砕した。得られた成形体を、空気中で室温から600℃まで1.7時間かけて昇温した後、同温度で3時間保持して焼成し、白色のチタニアの焼成物〔ルチル型チタニア比率90%以上〕を得た。
【0047】
上記で得られたチタニアの焼成物の内60.0g(容量:46mL)を、200mLのナス型フラスコに入れ、回転式含浸−乾燥装置にセットし、テトラエトキシシラン〔和光純薬工業(株)製のSi(OC
2H
5)
4〕1.06gをエタノール10.2gに溶解して調製した溶液を、チタニアの焼成物を仕込んだナス型フラスコを鉛直方向から60度傾けて80rpmで回転させながら該ナス型フラスコ内に20分間で滴下することにより該溶液を含浸させた。次いで、含浸後のチタニアの焼成物が入ったナス型フラスコを80rpmで回転させることにより該焼成物を撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を30℃とし、ナス型フラスコ内に水蒸気と窒素との混合ガス(水蒸気濃度:2.7体積%)を277mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に4時間30分の間供給し、流通させた。チタニアの焼成物の容量に対する該混合ガスの供給速度の比(GHSV)は、360/h(0℃、0.1MPa換算)であった。得られた乾燥物64.6gを、空気流通下、室温から300℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、チタニアにシリカが担持されてなるチタニア担体59.5gを得た。得られたチタニア担体について、ICP発光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ(株)製、IRIS Advantage)を用いてICP分析を行うことによりシリカの含有量を求めたところ、0.49重量%(ケイ素含有量:0.23重量%)であった。
【0048】
(担持酸化ルテニウムの製造)
上記で得られたチタニア担体の内50.17g(容量:38.6mL)を、200mLのナス型フラスコに入れ、回転式含浸−乾燥装置にセットし、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl
3・nH
2O、Ru含有量40.0重量%〕1.21g(4.79mmol)を純水10.27gに溶解して調製した水溶液を、チタニア担体を仕込んだナス型フラスコを鉛直方向から60度傾けて80rpmで回転させながら該ナス型フラスコ内に30分間で滴下することにより該水溶液を含浸させ、61.65gの固体を得た。得られた固体に含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を下式により求めたところ、20.9重量%であった。
【0049】
固体に含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量(重量%)=〔(含浸に使用した水の量(g))+(含浸に使用した塩化ルテニウム水和物に含まれる水の量(g))〕/(含浸に使用したチタニア担体の量(g))×100
【0050】
次いで、上記の固体が入ったナス型フラスコを80rpmで回転させることにより該固体を撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を35℃とし、ナス型フラスコ内に空気を1150mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に2時間20分の間供給し、流通させることにより乾燥し、56.18gの乾燥物Aを得た。尚、チタニア担体の容量に対する空気の供給速度の比(GHSV)は、1800/h(0℃、0.1MPa換算)であった。乾燥物Aに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を下式により計算し、表1に示した。尚、乾燥における乾燥速度は、チタニア担体1gあたりの水の蒸発速度として、0.047g/hであった。
【0051】
乾燥物Aに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量(重量%)=〔(含浸に使用した水の量(g))+(含浸に使用した塩化ルテニウム水和物に含まれる水の量(g))−(乾燥前後の重量変化量(g)〕/(含浸に使用したチタニア担体の量(g))×100
【0052】
上記で得られた乾燥物Aの内5.63gを、密閉容器中、10〜20℃で20時間保持した。保持後の乾燥物Aの重量は5.62gであった。保持後の乾燥物Aに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量は9.8重量%と計算され、保持における水の蒸発速度は、チタニア担体1gあたり、1.0×10
−4g/hであった。5.62gの保持後の乾燥物Aを、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.49重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム5.02gを得た。
【0053】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウム1.0gを、直径2mmのα−アルミナ球〔ニッカトー(株)製のSSA995〕12gで希釈し、ニッケル製反応管(内径14mm)に充填し、さらに反応管のガス入口側に上と同じα−アルミナ球12gを予熱層として充填した。この中に、塩化水素ガスを0.214mol/h(0℃、0.1MPa換算で4.8L/h)、及び酸素ガスを0.107mol/h(0℃、0.1MPa換算で2.4L/h)の速度で常圧下に供給し、触媒層を282〜283℃に加熱して反応を行った。反応開始1.5時間後の時点で、反応管出口のガスを30%ヨウ化カリウム水溶液に流通させることによりサンプリングを20分間行い、ヨウ素滴定法により塩素の生成量を測定し、塩素の生成速度(mol/h)を求めた。この塩素の生成速度と上記の塩化水素の供給速度から、下式より塩化水素の転化率を計算し、表1に示した。
【0054】
塩化水素の転化率(%)=〔(塩素の生成速度(mol/h))×2÷(塩化水素の供給速度(mol/h))〕×100
【0055】
(担持酸化ルテニウムの熱安定性試験)
上記で得られた担持酸化ルテニウム1.2gを、石英製反応管(内径21mm)に充填した。この中に、塩化水素ガスを0.086mol/h(0℃、0.1MPa換算で1.9L/h)、及び酸素ガスを0.075mol/h(0℃、0.1MPa換算で1.7L/h)、塩素ガスを0.064mol/h(0℃、0.1MPa換算で1.4L/h)、水蒸気を0.064mol/h(0℃、0.1MPa換算で1.4L/h)の速度で常圧下に供給し、触媒層を435〜440℃に加熱して反応を行った。反応開始50時間後の時点で、反応を停止し、窒素ガスを0.214mol/h(0℃、0.1MPa換算で4.8L/h)の速度で供給しながら冷却した。
【0056】
(熱安定性試験後の担持酸化ルテニウムの活性評価)
上記熱安定性試験に付された担持酸化ルテニウム1.2gのうち、1.0gを分取し、上記初期活性評価と同様の方法で塩化水素の転化率を求め、表1に示した。
【0057】
実施例2
(担持酸化ルテニウムの製造)
実施例1で得られた乾燥物Aの内5.63gを、密閉容器中、10〜20℃で96時間保持した。保持後の乾燥物Aの重量は5.61gであった。保持後の乾燥物Aに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量は9.6重量%と計算され、保持における水の蒸発速度は、チタニア担体1gあたり、4.1×10
−5g/hであった。5.61gの保持後の乾燥物Aを、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.49重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム5.02gを得た。
【0058】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0059】
実施例3
(担持酸化ルテニウムの製造)
実施例1で得られた乾燥物Aの内44.93g(容量:34.6mL)を、回転式含浸−乾燥装置にて、ナス型フラスコを80rpmで回転させることにより乾燥物Aを撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を35℃とし、ナス型フラスコ内に空気を920mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に1時間25分の間供給し、流通させることにより、さらに乾燥させ、42.68gの乾燥物Bを得た。尚、チタニア担体の容量に対する空気の供給速度の比(GHSV)は、1800/h(0℃、0.1MPa換算)であった。乾燥物Bに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を下式により計算し、表1に示した。尚、さらなる乾燥における乾燥速度は、チタニア担体1gあたりの水の蒸発速度として、0.040g/hであった。
【0060】
乾燥物Bに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量(重量%)=(乾燥物Bに含まれる水の量(g))/(乾燥物Bに含まれるチタニア担体の量(g))×100
【0061】
尚、乾燥物Bに含まれる水の量及び乾燥物Bに含まれるチタニア担体の量は、それぞれ下式により計算した。
【0062】
乾燥物Bに含まれる水の量(g)=(実施例1で得られた乾燥物A全量中に含まれる水の量(g))/(実施例1で得られた乾燥物Aの取得量(g))×(実施例3で使用した乾燥物Aの量(g))−〔(実施例3で使用した乾燥物Aの使用量(g))−(実施例3で得られた乾燥物Bの取得量(g))〕
【0063】
乾燥物Bに含まれるチタニア担体の量(g)=(実施例1で含浸に使用したチタニア担体の量(g))/(実施例1で得られた乾燥物Aの取得量(g))×(実施例3で使用した乾燥物Aの量(g))
【0064】
上記で得られた乾燥物Bの内5.35gを、密閉容器中、10〜20℃で96時間保持した。保持後の乾燥物Bの重量は5.32gであった。保持後の乾燥物Bに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量は3.8重量%と計算され、保持における水の蒸発速度は、チタニア担体1gあたり、6.2×10
−5g/hであった。5.32gの保持後の乾燥物Bを、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.49重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム5.04gを得た。
【0065】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0066】
比較例1
(担持酸化ルテニウムの製造)
実施例3で得られた乾燥物Bの内10.66gを、保持することなく直ちに、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.49重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム10.08gを得た。
【0067】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0068】
実施例4
(担持酸化ルテニウムの製造)
実施例3で得られた乾燥物Bの内21.32g(容量:16.4mL)を、回転式含浸−乾燥装置にて、ナス型フラスコを80rpmで回転させることにより乾燥物Bを撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を35℃とし、ナス型フラスコ内に空気を460mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に42分の間供給し、流通させることにより、さらに乾燥させ、20.86gの乾燥物Cを得た。尚、チタニア担体の容量に対する空気の供給速度の比(GHSV)は、1800/h(0℃、0.1MPa換算)であった。乾燥物Cに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を下式により計算し、表1に示した。尚、さらなる乾燥における乾燥速度は、チタニア担体1gあたりの水の蒸発速度として、0.033g/hであった。
【0069】
乾燥物Cに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量(重量%)=(乾燥物Cに含まれる水の量(g))/(乾燥物Cに含まれるチタニア担体の量(g))×100
【0070】
尚、乾燥物Cに含まれる水の量及び乾燥物Cに含まれるチタニア担体の量は、それぞれ下式により計算した。
【0071】
乾燥物Cに含まれる水の量(g)=(実施例3で得られた乾燥物B全量中に含まれる水の量(g))/(実施例3で得られた乾燥物Bの取得量(g))×(実施例4で使用した乾燥物Bの量(g))−〔(実施例4で使用した乾燥物Bの使用量(g))−(実施例4で得られた乾燥物Cの取得量(g))〕
【0072】
乾燥物Cに含まれるチタニア担体の量(g)=(実施例3で得られた乾燥物B全量中に含まれるチタニア担体の量(g))/(実施例3で得られた乾燥物Bの取得量(g))×(実施例4で使用した乾燥物Bの量(g))
【0073】
上記で得られた乾燥物Cの内5.23gを、密閉容器中、10〜20℃で96時間保持した。保持後の乾燥物Cの重量は5.23gであった。保持後の乾燥物Cに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量は保持前と変化はみられず、水の蒸発量は0gであった。5.23gの保持後の乾燥物Cを、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.49重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム5.09gを得た。
【0074】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0075】
比較例2
(担持酸化ルテニウムの製造)
実施例4で得られた乾燥物Cの内10.39g(容量:8.0mL)を、回転式含浸−乾燥装置にて、ナス型フラスコを80rpmで回転させることにより乾燥物Cを撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を35℃とし、ナス型フラスコ内に空気を230mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に55分の間供給し、流通させることにより、さらに乾燥させ、10.23gの乾燥物Dを得た。尚、チタニア担体の容量に対する空気の供給速度の比(GHSV)は、1800/h(0℃、0.1MPa換算)であった。乾燥物Dに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を下式により計算し、表1に示した。尚、さらなる乾燥における乾燥速度は、チタニア担体1gあたりの水の蒸発速度として、0.017g/hであった。
【0076】
乾燥物Dに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量(重量%)=(乾燥物Dに含まれる水の量(g))/(乾燥物Dに含まれるチタニア担体の量(g))×100
【0077】
尚、乾燥物Dに含まれる水の量及び乾燥物Dに含まれるチタニア担体の量は、それぞれ下式により計算した。
【0078】
乾燥物Dに含まれる水の量(g)=(実施例4で得られた乾燥物C全量中に含まれる水の量(g))/(実施例4で得られた乾燥物Cの取得量(g))×(比較例2で使用した乾燥物Cの量(g))−〔(比較例2で使用した乾燥物Cの使用量(g))−(比較例2で得られた乾燥物Dの取得量(g))〕
【0079】
乾燥物Dに含まれるチタニア担体の量(g)=(実施例4で得られた乾燥物C全量中に含まれるチタニア担体の量(g))/(実施例4で得られた乾燥物Cの取得量(g))×(比較例2で使用した乾燥物Cの量(g))
【0080】
上記で得られた乾燥物Dの内5.15gを、密閉容器中、10〜20℃で96時間保持した。保持後の乾燥物Dの重量は5.15gであった。保持後の乾燥物Dに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量は保持前と変化はみられず、水の蒸発量は0gであった。5.15gの保持後の乾燥物Dを、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.49重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム5.04gを得た。
【0081】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0082】
実施例5
(チタニア担体の調製)
実施例1(チタニア担体の調製)と同様の操作で白色のチタニアの焼成物を得た。得られたチタニアの焼成物の内50.2g(容量:38.6mL)を、200mLのナス型フラスコに入れ、回転式含浸−乾燥装置にセットし、テトラエトキシシラン〔和光純薬工業(株)製のSi(OC
2H
5)
4〕0.88gをエタノール8.30gに溶解して調製した溶液を、チタニアの焼成物を仕込んだナス型フラスコを鉛直方向から60度傾けて80rpmで回転させながら該ナス型フラスコ内に20分間で滴下することにより該溶液を含浸させた。次いで、含浸後のチタニアの焼成物が入ったナス型フラスコを80rpmで回転させることにより該焼成物を撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を30℃とし、ナス型フラスコ内に水蒸気と窒素との混合ガス(水蒸気濃度:2.7体積%)を231mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に5時間20分の間供給し、流通させた。チタニアの焼成物の容量に対する該混合ガスの供給速度の比(GHSV)は、360/h(0℃、0.1MPa換算)であった。得られた乾燥物50.9gを、空気流通下、室温から300℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、チタニアにシリカが担持されてなるチタニア担体50.5gを得た。得られたチタニア担体について、ICP発光分析装置(日本ジャーレル・アッシュ(株)製、IRIS Advantage)を用いてICP分析を行うことによりシリカの含有量を求めたところ、0.47重量%(ケイ素含有量:0.22重量%)であった。
【0083】
(担持酸化ルテニウムの製造)
上記で得られたチタニア担体の内40.18g(容量:30.9mL)を、200mLのナス型フラスコに入れ、回転式含浸−乾燥装置にセットし、塩化ルテニウム水和物〔NEケムキャット(株)製のRuCl
3・nH
2O、Ru含有量40.0重量%〕0.97g(3.84mmol)を純水8.70gに溶解して調製した水溶液を、チタニア担体を仕込んだナス型フラスコを鉛直方向から60度傾けて80rpmで回転させながら該ナス型フラスコ内に30分間で滴下することにより該水溶液を含浸させ、49.85gの固体を得た。得られた固体に含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を実施例1と同様にして求めたところ、22.1重量%であった。
【0084】
次いで、上記の固体が入ったナス型フラスコを80rpmで回転させることにより該固体を撹拌しながら、ナス型フラスコ内の温度を35℃とし、ナス型フラスコ内に空気を923mL/min(0℃、0.1MPa換算)の流量で連続的に5時間40分の間供給し、流通させ、41.14gの乾燥物Eを得た。尚、チタニア担体の容量に対する空気の供給速度の比(GHSV)は、1800/h(0℃、0.1MPa換算)であった。乾燥物Eに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を実施例1と同様にして計算したところ、0.41重量%であった。尚、乾燥における乾燥速度は、チタニア担体1gあたりの水の蒸発速度として、0.038g/hであった。
【0085】
上記で得られた乾燥物Eの内10.11gを、大気下、10〜20℃で24時間放置したところ、乾燥物Eの重量は10.21gとなり、24時間放置後の乾燥物Eに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量を下式により計算したところ、1.4重量%であった。
【0086】
24時間放置後の乾燥物Eに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量(重量%)=〔(放置前の乾燥物Eに含まれる水の量(g))+(放置後の乾燥物Eの量(g))−(放置前の乾燥物Eの量(g))〕/(放置後の乾燥物Eに含まれるチタニア担体の量(g))×100
【0087】
尚、放置前の乾燥物Eに含まれる水の量及び放置後の乾燥物Eに含まれるチタニア担体の量は、それぞれ下式により計算した。
【0088】
放置前の乾燥物Eに含まれる水の量(g)=(実施例5で得られた乾燥物E全量中に含まれる水の量(g))/(実施例5で得られた乾燥物Eの取得量(g))×(実施例5で使用した放置前の乾燥物Eの量(g))
【0089】
放置後の乾燥物Eに含まれるチタニア担体の量(g)=(実施例5で得られた乾燥物E全量中に含まれるチタニア担体の量(g))/(実施例5で得られた乾燥物Eの取得量(g))×(実施例5で使用した放置前の乾燥物Eの量(g))
【0090】
上記で得られた、チタニア担体の重量を基準とする水分量が1.4重量%である乾燥物E10.21gを、大気下、10〜20℃で72時間保持した。72時間保持後の乾燥物Eの重量は10.20gであった。保持後の乾燥物Eに含まれるチタニア担体の重量を基準とする水分量は1.3重量%と計算され、保持における水の蒸発速度は、チタニア担体1gあたり、1.4×10
−5g/hであった。10.20gの保持後の乾燥物Eを、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.47重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム10.02gを得た。
【0091】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0092】
比較例3
(担持酸化ルテニウムの製造)
実施例5で得られた乾燥物Eの内20.94gを、放置、保持することなく直ちに、空気流通下、室温から280℃まで1.2時間かけて昇温した後、同温度で2時間保持して焼成し、酸化ルテニウムの含有量が1.25重量%、シリカの含有量が0.47重量%である青灰色の担持酸化ルテニウム20.64gを得た。
【0093】
(担持酸化ルテニウムの初期活性評価、熱安定性試験、熱安定性試験後の活性評価)
上記で得られた担持酸化ルテニウムについて、実施例1と同様に、初期活性評価、熱安定性試験、及び熱安定性試験後の活性評価を行い、結果を表1に示した。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示すとおり、チタニア担体をルテニウム化合物及び溶媒を含む溶液で接触処理した後、溶媒の含有量がチタニア担体の重量を基準として0.10〜15重量%になるまで乾燥し、次いで、得られた乾燥物をチタニア担体の重量を基準として1.0〜15重量%の溶媒を含む状態で保持した後、酸化性ガス雰囲気下で焼成して得られた担持酸化ルテニウムを触媒として使用した実施例1〜5では、熱安定性試験の前後で塩化水素転化率が維持されており、熱安定性及び触媒寿命に優れる担持酸化ルテニウムが得られ、長時間にわたり安定して塩素を製造することができることがわかる。これに対して、乾燥後の保持を行わずに焼成を行うことにより得られた担持酸化ルテニウムを触媒として使用した比較例1及び3、並びに、乾燥物をチタニア担体の重量を基準として1.0重量%未満の溶媒を含む状態で保持して得られた担持酸化ルテニウムを触媒として使用した比較例2では、実施例1〜5に対して、熱安定性試験の前後で塩化水素転化率が維持されておらず、塩化水素転化率の低下割合が大きいことがわかる。