特許第5833712号(P5833712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5833712-画像表示装置 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833712
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20151126BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20151126BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20151126BHJP
【FI】
   G09F9/00 313
   B32B7/02 103
   G02F1/1335 510
   G09F9/00 342
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-140487(P2014-140487)
(22)【出願日】2014年7月8日
(62)【分割の表示】特願2011-27087(P2011-27087)の分割
【原出願日】2011年2月10日
(65)【公開番号】特開2014-225027(P2014-225027A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】実藤 竜二
(72)【発明者】
【氏名】脇田 拓
【審査官】 田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−107005(JP,A)
【文献】 特開2010−237339(JP,A)
【文献】 特開2005−092197(JP,A)
【文献】 特開平08−240802(JP,A)
【文献】 特開2010−085533(JP,A)
【文献】 特開2007−133350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
G02B5/00−5/08、5/10−5/136
G02F1/13−1/141
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部と、透光性の保護部と、表面に凹凸形状を有する光学フィルムとを、前記画像表示部と前記透光性の保護部との間であって画像表示部の表面上に前記光学フィルムが配置されるように配置する工程;及び
前記光学フィルムと前記透光性の保護部との間の空隙に、粘着剤、接着剤、又は硬化性樹脂組成物を硬化させてなる材料からなる充填層を配置する工程:
を含む、画像表示装置の製造方法であって、
前記画像表示装置が、画像表示部、及び該画像表示部上に配置された透光性の保護部を有する画像表示装置であり、
前記画像表示部の表面上に、表面に凹凸形状を有する光学フィルムが配置され、
該光学フィルムと保護部との間の空隙に、粘着剤、接着剤、又は硬化性樹脂組成物を硬化させてなる材料からなる充填層を有し、
前記光学フィルムと前記充填層との隣接面が、屈折率差Δnが0.01〜0.2の界面であって、前記画像表示部と前記保護部との間の光路長の面内分布の標準偏差σが40nm以上である、
前記の画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記充填層が、硬化性樹脂組成物を硬化させてなる材料からなる、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記透光性の保護部が、ガラス板又はプラスチック基板からなる、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
前記光学フィルムの隣接面の表面粗さRaが150nm〜10000nmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法
【請求項5】
前記光学フィルムの隣接面の凹凸の平均間隔が10μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法
【請求項6】
前記光学フィルムが、透光性粒子を含有することを特徴とする請求項5に記載の方法
【請求項7】
前記透光性粒子の平均粒子径が5.0〜20.0μmであることを特徴とする請求項6に記載の方法
【請求項8】
前記光学フィルムが、基材フィルムと、その上に、透光性粒子を少なくとも含む層とを有する積層構造のフィルムであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法
【請求項9】
前記光学フィルムの隣接面サンドブラスト処理する工程を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法
【請求項10】
前記光学フィルム流延法によって作製する工程を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法
【請求項11】
前記光学フィルムが、偏光板の保護フィルムであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に明室環境下における黒締まりに優れ、且つ反射光に現れる虹色の回折パターンの発生が軽減された画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
美観の改善等を目的として、液晶表示パネル等の画像表示部の上部に、透光性の保護部を配置した画像表示装置が提案されている。この構成の画像表示装置では、画像表示部と保護部との間に空隙が存在するのが一般的であるが、この空隙が存在することにより屈折率界面での光反射が生じ、コントラストが低下するとういう問題がある。この問題を解決するため、この空隙を、樹脂硬化物で充填することが提案されている(例えば特許文献1)。
しかし、画像表示部と保護部との空隙を一様に樹脂硬化物で充填すると、虹色の回折パターンが表示面で認識され、視認性が低下する場合がある。この原因の詳細については従来知られておらず、その解決手段も提案されていない。
【0003】
ところで、従来、画像表示装置の視認性の低下は、明室環境下における外光の映り込みに一因があるとされ、かかる外光の映り込みを防止するために、表面に微細凹凸形状を有する防眩性フィルムを配置することが行われている。しかし、防眩性フィルムを配置すると、黒締まりが悪くなり、画面が白っぽくなるという問題がある。これを解決するために、屈折率が0.06以上異なる、凹凸形状の表面を有する層を積層した構造の防眩フィルムが提案されている(特許文献2)。
また、凹凸形状の表面を有するディスプレイ用表面材は、付着した指紋を目立たなくするためにも提案されている(例えば、特許文献3)。さらに、互いに異なる屈折率を有する層を複数含む、画像表示装置用のハードコート層についても、異なる屈折率を有する層の界面に凹凸形状を形成することが提案されている(例えば、特許文献4〜6)。
【0004】
しかし、画像表示装置の表面材に凹凸形状の表面を形成することは、上記した通り、黒締まりの低下を招き、特に、美観を重要視する保護部を備えた上記構成の画像表示装置では、凹凸形状界面を利用することを避けたいというのが技術常識である。また、そもそも、保護部を備えた上記構成の画像表示装置において認識される虹色の回折パターンの原因は解明されておらず、上記特許文献2〜6に記載の課題も異なるものである。例えば、特許文献4〜6の開示の技術では、互いに異なる屈折率を有する層が積層されていることによって生じる干渉ムラ等に起因して視認性が低下するのを、所定の凹凸形状を界面に形成して軽減している。しかし、保護部を有する上記構成の画像表示装置は、屈折率差が異なる層が積層された構成を前提とするものではなく、特許文献4〜6で解決している干渉ムラと、保護部を備えた上記構成の画像表示装置の虹色の回折パターンとは、異なる原因によって生じている現象である。従って、背景技術では、保護部を備えた上記構成の画像表示装置において、凹凸形状の界面を導入することについては、動機付けがなかったと言うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【特許文献2】特開2009−150998号公報
【特許文献3】特開2007−34027号公報
【特許文献4】特開平8−197670号公報
【特許文献5】特開2003−205563号公報
【特許文献6】特開2007−90656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、クリア感があって、黒締りが良く、且つ虹色の回折パターンの発生が軽減されている画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、保護部を備えた上記構成の画像表示装置の虹色の回折パターン(以下、「虹色回折パターン」という場合がある)の原因について種々検討した結果、虹色回折パターンが生じる主な原因は、画像表示部内部の周期構造(例えば複数の同一形状の画素又は電極等がそれぞれ所定の周期で配置されていることによって形成される周期構造)にあることがわかった。外光の一部は、透光性の保護部から入射し、画像表示部内部の種々の部材によって反射される。画像表示部内部に上記周期構造があると、反射光が回折し、回折光が干渉し合うので、反射光の波長域が方向によって異なり、それが虹色回折パターンとして認識されることがわかった。上記特許文献4〜6等で解決している干渉ムラ等に起因しても色ムラが生じる場合もあるが、これは膜厚のムラがあることによって反射スペクトルが変化することによるものであり、本発明の虹色回折パターンとは異なる現象である。また、上記特許文献4〜6等に記載の干渉ムラは、屈折率が異なる複数の層が積層されているという、表示材等の構造そのものに原因があったのに対して、虹色回折パターンは、上記した通り画像表示部内部に存在する周期構造に主な原因があり、画面のどこにでも一様に現れる点でも、前記干渉ムラとは異なるものである。
【0008】
本発明者は、上記知見に基づいて、さらに種々検討した結果、上記構成の画像表示装置の保護部と画像表示部との間に、屈折率差が所定の範囲である界面を存在させ、且つ保護部と画像表示部との間の光路長が面内において所定の範囲で分布するように構成することで、黒締まりを低下させることなく、虹色回折パターンの発生を軽減できることがわかった。この知見に基づき、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 画像表示部、及び該画像表示部上に配置された透光性の保護部を有する画像表示装置であって、
前記画像表示部と前記保護部との間に、屈折率差Δnが0.01〜0.2である界面が存在し、及び
前記画像表示部と前記保護部との間の光路長の面内分布の標準偏差σが40nm以上であることを特徴とする画像表示装置。
[2] 前記画像表示部と前記保護部との間に光学フィルムを有し、前記界面が、該光学フィルムとそれに隣接する層との隣接面であることを特徴とする[1]の画像表示装置。
[3] 前記光学フィルムの隣接面の表面粗さRaが150nm〜10000nmであることを特徴とする[2]の画像表示装置。
[4] 前記光学フィルムの隣接面の凹凸の平均間隔が10μm〜1000μmであることを特徴とする[2]又は[3]の画像表示装置。
[5] 前記光学フィルムが、透光性粒子を含有することを特徴とする[4]の画像表示装置。
[6] 前記透光性粒子の平均粒子径が5.0〜20.0μmであることを特徴とする[5]の画像表示装置。
[7] 前記光学フィルムが、基材フィルムと、その上に、透光性粒子を少なくとも含む層とを有する積層構造のフィルムであることを特徴とする[2]〜[6]のいずれかの画像表示装置。
[8] 前記光学フィルムの隣接面がサンドブラスト処理されていることを特徴とする[2]〜[7]のいずれかの画像表示装置。
[9] 前記光学フィルムが、流延法によって作製されたフィルムからなる又は該フィルムを含むことを特徴とする[2]〜[8]のいずれかの画像表示装置。
[10]前記光学フィルムが、誘電率が35以上の溶媒によって調製された主成分ポリマーを含む溶液から流延法によって作製されたフィルムからなる又は該フィルムを含む[2]〜[9]のいずれかの画像表示装置。
[11] 前記光学フィルムが、少なくとも粒子と主成分ポリマーとを含む溶液を用いた流延法によって作製されたフィルムからなる又は該フィルムを含むことを特徴とする[2]〜[10]のいずれかの画像表示装置。
[12]前記光学フィルムが、少なくとも粒子と主成分ポリマーとを含む溶液、及び該主成分ポリマーを含み粒子を含まない溶液を用いた共流延法によって作製されたフィルムからなる又は該フィルムを含むことを特徴とする[2]〜[11]のいずれかの画像表示装置。
[13] 前記光学フィルムが、偏光板の保護フィルムであることを特徴とする[2]〜[12]のいずれかの画像表示装置。
[14] 前記光学フィルムに隣接する層が、硬化性樹脂組成物からなる充填層である[2]〜[13]のいずれかの画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリア感があって、黒締りが良く、且つ虹色の回折パターンの発生が軽減されている画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の画像表示装置の一例の断面模式図である。
図2】従来の画像表示装置の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。以下、図面を参照して本発明を説明するが、図面はいずれも模式図であり、各層の厚みの相対的関係も実際の関係を反映しているわけではない。
【0013】
本発明は、画像表示部、及び該画像表示部上に配置された透光性の保護部を有する画像表示装置に関する。従来、液晶パネル等の画像表示部の上部にガラス板又はプラスチック基板等の透光性の保護部を備えた画像表示装置では、図2(a)に示す通り、画像表示部50と保護部52との間にスペーサー54が配置され、空隙56が形成されているか、又は図2(b)に示す通り、硬化性樹脂組成物を充填し、硬化させてなる充填層56’とするのが一般的である。即ち、従来技術では、画像表示部50及び保護部52との間には、空隙56又は一様な硬化性樹脂からなる充填層56’が存在し、屈折率差のある界面は存在しないし、また、光路長は、各層の屈折率と各層の厚みの積の総和から算出されるので(詳細については後述)、一様な空隙56及び充填層56’がそれぞれ存在する画像表示部50と保護部52との間の光路長は、面内においてほぼ一定になっている。しかし、図2(a)及び(b)に示す従来技術では、虹色回折パターンが画面上に認識され、視認性が低下する場合があった。
【0014】
本発明では、前記画像表示部と前記保護部との間に、屈折率差Δnが0.01〜0.2である界面が存在し、及び前記画像表示部と前記保護部との間の光路長の面内分布の標準偏差σが40以上とすることで、黒締まりを高く維持しつつ、上記問題点を解決している。ここで、本明細書では、光路長とは、Σni×hiで算出される値として定義され、niはi番目の層の屈折率を、hiはi番目の層の厚さを意味する。iは1以上N以下(但し、Nは前記画像表示部と前記保護部との間に存在する層の数であって、Nは2以上)の整数を意味する。
【0015】
図2(a)及び(b)に示す従来技術において、画面上に虹色回折パターンが生じる一因は、本発明者が検討した結果、画像表示部内部に存在する周期構造にあることがわかった。ここでいう周期構造とは、電極、画素、画素内のITO微細構造等の同一形状の部材が所定の周期で配置されることによって形成されるものである。透光性の保護部から外光が入射すると、その一部は画像表示部まで達して、画像表示部内部の種々の反射要素によって反射される。画像表示内部に上記周期構造が存在すると、周期構造によって反射された光は回折し、互いに干渉し合う。ある方向に反射した光は干渉によって強められ、また他の方向に反射した光は干渉によって弱められるし、また保護部から入射する外光は単色光ではないので、ある方向に反射した光は所定の波長域の光が強められ、他の方向に反射した光は他の波長域の光が強められるといった現象が生じる。それが画像上に虹色回折パターンとして現れる。本発明では、この画像表示部内部に存在する周期構造に起因した虹色回折パターンを、画像表示部と保護部との間に、屈折率差が所定の範囲である界面を存在させるとともに、画像表示部と保護部との間の光路長を面内において所定の範囲で分布させることで、黒締まりを低下させることなく、軽減している。
【0016】
光路長について面内に分布を持たせるためには、屈折率差の異なる界面が存在するとともに、凹凸形状のある面の存在が必要である。一方で、凹凸形状のある面を、画像表示部の上部に配置することは、黒締まりの低下の要因になることが従来知られている。例えば、凹凸構造が空気に面している場合、空気との界面での屈折率差が大きいため多くの光を反射する。更に凹凸構造が光をさまざまな方向に散らすため、画面全体が白っぽくなり、黒締りが悪化する。一方、本発明では、凹凸形状のある面が存在していても、屈折率差を所定の範囲とし、且つ光路長を面内において所定の範囲で分布させることで、黒締まりを低下させることなく、虹色回折パターンを軽減していて、かかる構成で、本発明の効果が得られたことは、背景技術等に鑑みれば、予測し得ない驚くべきことと言える。
【0017】
図1に本発明の画像表示装置の一例の断面模式図を示す。
図1に示す画像表示装置は、液晶パネル等からなる画像表示部10と、ガラス板又はプラスチック基板等の透光性の保護部12と、その間16に、屈折率差Δnが0.01〜0.2の界面sを有する。画像表示部10と保護部12との間16には、層16a及び層16bが配置されていて、界面sは、これらの層16aと層16bとの間に存在し、即ちそれらの隣接面である。
【0018】
層16a及び層16bの隣接面は、微細な凹凸形状を有しているのが好ましい。例えば、表面に凹凸形状を有する光学フィルムを層16aとして配置し、空隙に硬化性樹脂組成物を充填し、該組成物を硬化させて充填層を形成すると、光学フィルム16aとの隣接面の凹凸形状を維持することができる。この態様では、光学フィルムが層16aとなり、充填層が層16bとなり、界面sは、光学フィルムと充填層との隣接面になる。
【0019】
上記態様では、層16aとして配置される光学フィルムの表面粗さRaは150nm〜10000nmであるのが好ましく、1000nm〜3000nmであるのがより好ましい。また、前記光学フィルムの凹凸の平均間隔Smは、10μm〜1000μmであるのが好ましく、20μm〜200μmであるのがより好ましい。表面粗さRa及び凹凸の平均間隔がそれぞれ前記範囲の光学フィルムを画像表示部と保護部との間に配置し、前記範囲の屈折率差がある充填層と隣接させることにより、画像表示部と保護部との間の光路長の面内分布の標準偏差を、40nm〜1000nm程度に容易に調整することができる。
なお、RaおよびSmはJIS B 0601(1994)に準拠して測定することができる。
【0020】
界面sの屈折率差Δnは、0.01〜0.2であり、0.01〜0.15であるのが好ましく、0.01〜0.1であるのがより好ましい。屈折率差Δnが上記範囲である限り、層16a及び16bの屈折率については特に制限はない。但し、界面での光反射による表示品位低下抑制の観点では、屈折率が過度に高い部材を配置することは好ましくなく、その観点では、層16a及び層16bの屈折率はそれぞれ、1.35〜1.7程度の範囲内であるのが好ましく、1.35〜1.55程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0021】
画像表示部10と保護部12との間の光路長(Σni×hi)の面内分布の標準偏差σは、40以上になっている。上限値については特に制限はないが、光散乱による表示品位低下抑制の観点からは1000nm以下であるのが好ましく、即ち前記標準偏差σは40nm〜1000nmであるのが好ましく、60nm〜500nmであるのがより好ましく、80nm〜200nmであるのがさらに好ましい。ここで、光路長は、層面に対して垂直な法線方向の光路長をいい、具体的には、画像表示部と保護部との間に存在する全ての層について、屈折率nと、厚さhとの積を合計することで算出されるものである。例えば層が2つ存在する場合は、一方の界面の屈折率nと厚さhとの積と、他方の界面の屈折率nと厚さhとの積の和として算出される。もしくは一方の層の屈折率nと平均線からの高さh’の積と、他方の層の屈折率nと平均線からの高さの符号を逆にした−h’の積の和として算出される。これは、本発明の効果を得るために重要なのは光路長の面内揺らぎの大きさであるため、平均値からのずれを計測して標準偏差を求める方法も適用可能なことによる。実際に光路長の面内分布の標準偏差を測定するためには、凹凸を有する層の厚さの面内分布を測定することは難しいため、凹凸を有する層の高さ分布h’を測定し、これをもとに光路長の面内分布の標準偏差を算出する。凹凸を有する層の高さ分布h’は、JIS B 0601(1994)に準拠した測定装置で測定することができる。測定装置としては例えば小坂研究所(株)製、サーフコーダーMODEL SE‐3500などを用いることが可能である。
【0022】
図1では、画像表示部と保護部との間に2層が配置された構成を示したが、3層以上が配置されていてもよい。但し、3層以上が配置されている態様では、少なくとも一つの界面の屈折率差Δnが0.01〜0.2であり、他の界面についても屈折率差があってもよいが、その屈折率差Δnも、0.01〜0.2であるのが好ましい。また、屈折率差のある界面の全てが凹凸形状を有している必要はないが、少なくとも一つの界面は、凹凸形状を有しているのが好ましい。3層以上が配置されている態様の一例は、層16aとして、基材フィルムとその上に凹凸形状の表面を有する層を有する積層構造の光学フィルムが配置されている態様である。
【0023】
なお、本発明では、画像表示部及び保護部のそれぞれと、その間に配置される光学フィルムや充填層との界面、具体的には、図1中の画像表示部10と層16aとの界面、及び保護部12と層16bとの界面は、「画像表示部と保護部との間に存在する界面」には含まれない。また、本発明において、画像表示部は、画像を表示可能とする部材を含むユニットを意味し、画像表示部として液晶パネルを例に挙げると、液晶セルと、少なくとも表示面側に配置される偏光膜とを含むユニットである。液晶パネルを画像表示部として用いた態様では、表示面側偏光膜が、層16aと隣接する層になる場合がある。
【0024】
以下、本発明の液晶表示装置に利用可能な種々の部材の詳細について説明する。
光学フィルム:
本発明の画像表示装置では、上記条件を満足する界面を、画像表示部と保護部との間に存在させること等を目的として、画像表示部と保護部との間に光学フィルムを配置するのが好ましい。該光学フィルムは、画像表示装置内において、所定の用途の機能層として用いられていてもよい。例えば、画像表示部の保護部側最表層が、偏光膜であり、且つ光学フィルムを図1中の層16aとして配置する態様では、該偏光膜を保護する保護フィルムを層16aとして配置してもよいし、又は保護フィルムを含んでいる積層構造のフィルムを層16aとして配置してもよい。
【0025】
本発明に使用する光学フィルムは、表面に凹凸形状を有しているのが好ましい。その表面粗さRa及び凹凸の平均間隔Smの好ましい範囲は、上記した通りであり、表面粗さRaは150nm〜10000nmであるのが好ましく、1000nm〜3000nmであるのがより好ましい。また、凹凸の平均間隔Smは、10μm〜1000μmであるのが好ましく、20μm〜200μmであるのがより好ましい。
【0026】
上記表面構造の光学フィルムは種々の方法で製造することができる。一例は、透光性粒子を添加する方法である。ここで、「透光性粒子」とは、可視光をほとんど吸収しない粒子をいう。表面粗さRaが前記範囲のフィルムの製造に用いられる透光性粒子の平均粒径は、0.1〜20μmであるのが好ましく、5.0〜20.0μmであるのも好ましく、1〜15μmであるのがより好ましく、3〜15μmであるのがさらに好ましい。本発明において、粒子の平均粒径が上記の範囲であると、表面形状の安定性に優れる。また、画面の黒締まりがよりよくなるので好ましい。但し、表面性状は透光性粒子の粒径のみならず、製法やその条件によっても調整可能であるので、使用する透光性粒子の平均粒径は前記範囲に限定されるものではない。
【0027】
前記界面の屈折率差Δnを前記範囲に調整するためには、屈折率が過度に高い透光性粒子を用いることは好ましくない。一方で、添加する透光性粒子の屈折率を、界面の屈折率差Δnを所定の範囲に調整するために積極的に利用してもよい。これらの観点から、使用する透光性粒子の屈折率は1.4〜1.7であるのが好ましく、1.45〜1.55であるのがより好ましい。また、透光性粒子を分散含有するマトリックスとなる主成分ポリマーとの屈折率差が、0.00〜0.1であるのが、粒子での光散乱による表示品位の低下抑制の観点で好ましく、同観点では0.00〜0.02であるのがより好ましい。
【0028】
使用可能な光学フィルムの例には、単層構造のフィルム及び積層構造のフィルムの双方が含まれる。
【0029】
透光性粒子を含有する単層構造のフィルムは、主成分ポリマー及び透光性粒子を少なくとも含むポリマー組成物を、溶液製膜法又は溶融製膜法等によって製膜することで製造することができる。溶液製膜法によって、即ち、主成分ポリマーと透光性粒子と溶媒とを少なくとも含むドープを、支持体上に流延し、ドープ中の溶媒を蒸発させて乾燥し、製膜するのが好ましい。製膜後に、延伸処理等の後処理を施したフィルムを使用してもよい。
【0030】
本態様では、透光性粒子の使用量は、単位面積あたり0.1g/m〜5.0g/mが好ましく、更に好ましくは、0.2g/m〜3.0g/m、最も好ましくは0.3g/m〜2.0g/mである。この範囲の使用量にすることで、所望の表面形状を得ることができる。
【0031】
また、主成分ポリマーと透光性粒子とを含むドープ、及び主成分ポリマーを含むが透光性粒子を含まないドープを少なくとも用いて、共流延法により製膜したフィルムを用いることもできる。共流延法で作製したフィルムを用いる場合は、主成分ポリマーと透光性粒子とを含むドープからなる層の表面が前記界面となるように配置するのが好ましい。共流延については、特開2010−237339号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
共流延法においても、透光性粒子の使用量の好ましい範囲は、上記と同様である。
【0032】
また流延法では、透光性粒子を使用しなくても、ドープ調製時の溶媒を選択することでも、表面に凹凸形状を有するフィルムを製造することができる。ドープ調製時の溶媒として、誘電率が35以上の溶媒(好ましくは水)を少なくとも含み、且つ互いに相溶しない溶媒を含む混合溶媒を用いることにより、透光性粒子等を用いることなく、表面に独立した所定の形状のくぼみを有するフィルムを製造可能であることが知られている。本発明では、この方法を利用して製造されたフィルムを、画像表示部と保護部との間に配置してもよい。この方法により製造したフィルムを用いる場合は、前記くぼみを有する表面が前記界面となるように配置するのが好ましい。高誘電率の溶媒を含む混合溶媒により調製したドープを用いた流延法によるフィルムの製造方法については、特開2009−263658号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0033】
また、本発明に利用可能なフィルムの例には、表面処理によって表面に凹凸形状が形成されたポリマーフィルムが含まれる。前記表面処理の例には、サンドブラスト法、エンボス加工法が含まれる。中でも、サンドブラスト法により形成された凹凸形状表面を有するポリマーフィルムが好ましい。
【0034】
前記単層構造の光学フィルムの製造に使用可能な主成分ポリマー(光学フィルムの原料の固形分の50質量%を超える割合のポリマー)については特に制限はない。熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体例には、セルロースアシレート(例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例えばシンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリシクロアルカン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVRL20A:商品名、三菱レイヨン社製、特開2004−70296号公報や特開2006−171464号公報記載の環構造含有アクリル系樹脂)等が含まれる。トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0035】
溶液製膜法により前記光学フィルムを製造する場合は、主成分ポリマーの溶液(ドープ
)の調製の容易性等の観点では、セルロースの脂肪酸エステル(セルロースアシレート)が好ましく、さらにはトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロースが特に好ましい。
【0036】
前記態様の光学フィルムの製造に使用する透光性粒子は、有機微粒子であっても無機微粒子であってもよい。無機粒子、有機粒子ともに用いることができる。無機粒子としては、シリカやアルミナなどが挙げられる。例えば(株)マイクロンの球状シリカ、球状アルミナが上げられる。有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂等を挙げることができる。市販品としては、スチレン、アクリル系樹脂として、綜研化学(株)製のケミスノーMXシリーズ、SXシリーズや、積水化成品工業(株)製のテクポリマーなどが挙げられ、ベンゾグアナミン系樹脂としては、日本触媒(株)製のエポスター、メラミン系樹脂としては、日産化学(株)製のオプトビーズなどが挙げられる。主成分ポリマーとの密着性の観点や、湿度や熱による界面剥離、脱落などの観点から、膨張率特性の近い有機粒子を用いるほうが好ましい。前記透光性粒子は、略球状の樹脂粒子であることが特に好ましい
【0037】
前記単層構造の光学フィルムは、主成分ポリマー、及び所望により透光性粒子を含有する。さらに所望により、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤の例には、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤(酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性剤、酸捕獲剤及びアミンを含む)、光学異方性調整剤、赤外線吸収剤等が含まれる。
【0038】
前記積層構造のフィルムの一例は、ポリマーフィルム等からなる基材フィルムと、その上に、透光性粒子を少なくとも含む組成物からなる層を有する積層構造のフィルムである。前記層の形成には、防眩層、及びハードコート層等の形成技術を利用することができる。一例は、前記組成物を硬化性組成物の塗布液として調製し、前記基材フィルムの表面、又はその上に形成された層の表面に塗布した後、電離放射線照射下で及び/又は加熱下で、硬化反応を進行させて、層を形成する方法である。硬化層中には透光性粒子が含まれているので、該透光性粒子の存在により表面に凹凸形状を有する層が形成できる。この積層構造のフィルムを用いる場合は、硬化層の表面が前記界面となるように配置するのが好ましい。本発明に利用可能な防眩層の形成技術については、特開2010−32916号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0039】
前記積層構造のフィルムは、3層以上からなっていてもよい。具体的には、ポリマーフィルムからなる基材フィルム上に前記防眩層以外の他の1以上の機能性層が配置されていてもよい。本発明の層構成に関しては、少なくとも、1層の防眩層と最表面に耐擦傷性層を有する。他の機能性層としては、例えば、耐擦傷性層、ハードコート層、帯電防止層、反射防止層、低屈折率層、防汚層等が挙げられる。
本発明に光学フィルムとして利用可能な積層フィルムの具体例は以下の通りであるが、以下の具体例に限定されるものではない。
・基材フィルム/防眩層
・基材フィルム/防眩層/耐擦傷性層
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/耐擦傷性層
・基材フィルム/防眩層/耐擦傷性層(低屈折率層を兼ねる)
・基材フィルム/防眩層/帯電防止層/耐擦傷性層
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/耐擦傷性層
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/耐擦傷性層
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/耐擦傷性層
・基材フィルム/防眩層/高屈折率層/耐擦傷性層
・基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/耐擦傷性層
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/耐擦傷性層
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/耐擦傷性層
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/耐擦傷性層
これら機能性層の詳細については、特開2010−32916号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0040】
防眩層:
前記防眩層の屈折率は1.4〜1.6であるのが好ましく、1.45〜1.55であるのがより好ましい。また表面に、表面粗さRa及び凹凸の平均間隔が前記範囲である凹凸形状を表面に有しているのが好ましい。一方、基材フィルムと防眩層との間にも界面が存在するが、当該界面の屈折率差については特に制限はない。当該界面が凹凸形状である場合は、屈折率差は小さいほうが好ましく、上記範囲内、即ち0.01〜0.2であるのが好ましい。防眩層上に又は防眩層と基材フィルムとの間に、他の機能性層が配置された態様では、防眩層と機能性層との間、又は基材フィルムと機能性層との間にも界面が存在し、また2層以上の機能性層を有する態様では、機能性層間にも界面が存在する場合がある。当該界面の屈折率差Δnについても特に制限はないが、当該界面が凹凸形状である場合は、屈折率差は小さいほうが好ましく、上記範囲内、即ち0.01〜0.2であるのが好ましい。
【0041】
前記積層構造の態様の光学フィルムの製造において、防眩層の形成に利用される材料の例及び形成方法の例については以下の通りである。
防眩性層は、透光性粒子とそれを分散含有するマトリックスポリマー(マトリックスポリマーとなる重合性モノマーであってもよい)とを少なくとも含有する塗布液を、基材フィルム等の表面に塗布・乾燥・硬化して形成することができる。防眩層の厚みについては特に制限はないが、一般的には、1〜40μm程度であるのが好ましい。
【0042】
前記防眩層の形成に利用する透光性粒子の平均粒径の好ましい範囲は、前述の通りである。平均粒径が均一な透光性粒子を用いてもよいし、平均粒径が互いに異なる2種類以上の粒子を用いることもできる。使用可能な透光性粒子の平均粒径は、塗膜中で2つ以上の粒子が隣接して存在している場合も、独立して存在している場合も、平均粒径は一次粒径を意味する。但し、一次粒子径が0.1μm程度の凝集性の無機粒子が二次粒子として塗布液中に分散され、その後塗布されている場合には二次粒子の大きさとする。
【0043】
防眩層中の内部散乱性は少ない方が好ましい。必要な内部散乱性を得るために、粒子とマトリックスとの屈折率を調節するのが好ましく、少なくとも1種類の粒子とマトリックスとの屈折率差は0.0〜0.05であるのが好ましく、更に好ましくは0.0〜0.02であり、より更に好ましくは0.0〜0.01である。
【0044】
粒子の添加量は、防眩層の形成材料の全固形分中の1〜60質量%が好ましく、2〜50質量%であることが更に好ましく、より更に好ましくは3〜40質量%である。粒子がこの比率であると、塗布液の経時変化に伴う塗膜の表面形態の変動を小さくする効果に優れる。
【0045】
前記防眩層の形成に利用可能な透光性粒子の例には、樹脂粒子及び無機微粒子が含まれる。樹脂粒子の具体例としては、例えば架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アクリレート−スチレン共重合粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子等が好ましい。さらにはこれらの樹脂粒子の表面にフッ素原子、シリコン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、燐酸基等を含む化合物を化学結合させた所謂表面修飾した粒子やシリカやジルコニアなどのナノサイズの無機微粒子を表面に結合した粒子も好ましく挙げられる。また、透光性粒子として、無機微粒子を用いることもできる。無機微粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子等が好ましく挙げられるが、シリカ粒子が特に好ましく用いられる。
粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。
【0046】
前記防眩層の形成には、透光性粒子を分散含有するマトリックスとなるポリマー及び/又はモノマーを利用する。電離放射線及び/又は熱の供給下において、硬化するポリマーを用いるのが好ましく、硬化後に飽和炭化水素鎖、又はポリエーテル鎖を主鎖として有する透光性ポリマーを形成するモノマーを使用することが好ましい。また、硬化後の主たるバインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0047】
硬化後に飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、下記に述べる第一群の化合物より選ばれるエチレン性不飽和モノマー及びこれらの重合体が好ましい。また、ポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーとしては、下記に述べる第二群の化合物より選ばれるエポキシ系モノマー及びこれらの開環による重合体が好ましい。さらにこれらのモノマー類の混合物の重合体も好ましい。
【0048】
前記第一群の化合物として、飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0049】
前記防眩層の形成に利用可能なバインダーポリマーの形成に用いられる、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)等が挙げられる。
さらに、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂および多価アルコール等の、多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。これらのモノマーは2種以上併用してもよく、また、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂はバインダー全量に対して10〜100%含有することが好ましい。
【0050】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、および粒子、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤、有機溶媒等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を、基材フィルム又はその上に形成される層の表面に塗布後、光及び/又は熱の供給下、重合反応を進行させて、硬化させ、防眩層を形成することができる。光重合開始剤及び熱重合開始剤としては種々のものを利用することができ、市販の化合物を利用してもよい。それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。
【0051】
前記第二群の化合物として、硬化膜の硬化収縮低減のためには、以下で述べるエポキシ系化合物を用いることが好ましい。これらのエポキシ基を有するモノマー類としては、1分子中にエポキシ基を2基以上有するモノマーが好ましく、これらの例としては特開2004−264563号、同2004−264564号、同2005−37737号、同2005−37738号、同2005−140862号、同2005−140863号、同2002−322430号等に記載されているエポキシ系モノマー類が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマー類は層を構成する全バインダーに対して20〜100質量%含有することが硬化収縮低減のために好ましく、35〜100質量%含有することがより好ましく、50〜100質量%含有することがさらに好ましい。
【0052】
エポキシ系モノマー、化合物類を重合させるための、光の作用によってカチオンを発生させる光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の化合物やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の化合物等が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている化合物等種々の公知の光酸発生剤が使用できる。この中で特に好ましくはスルホニウム塩もしくはヨードニウム塩であり、対イオンとしてはPF、SbF、AsF、B(Cなどが好ましい。
【0053】
重合開始剤は、上記第一群又は第二群の化合物100質量部に対して、重合開始剤総量で0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲がより好ましい。
【0054】
前記防眩層の形成には、高分子化合物を使用してもよい。高分子化合物を添加することで、硬化収縮を小さくしたり、塗布液の粘度調整を行うことができる。
使用可能な高分子化合物の例には、セルロースエステル類(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースナイトレート等)、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリスチレン等の樹脂が含まれる。
【0055】
高分子化合物は、硬化収縮への効果や塗布液の粘度増加効果の観点から、前記防眩層に含まれる全バインダーに対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%の範囲で含有することが好ましい。また、高分子化合物の分子量は質量平均で0.3万〜40万が好ましく、0.5万〜30万がより好ましく、0.5万〜20万がさらに好ましい。
【0056】
前記防眩層には、上記の透光性粒子とともに、屈折率の調整、膜強度の調整、硬化収縮減少、さらに低屈折率層を設けた場合の反射率低減の目的に応じて、無機フィラー添加してもよい。使用可能な無機フィラーの例には、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物からなり、一次粒子の平均粒径が、一般に0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下1nm以上である微細な高屈折率無機フィラーを含有することも好ましい。
【0057】
前記防眩層を有する光学フィルムを使用する態様であって、前記防眩層の他の層との界面(例えば、画像表示部と保護部との間に形成される樹脂充填層との界面や、他の機能性層や基材ポリマーフィルムとの界面)における屈折率差が大き過ぎると、本発明の効果が損なわれる場合もある。かかる場合は、前記防眩層の屈折率差を調整し、他の層との界面の屈折率差Δnを小さくする(例えば、0.01〜0.2にする)のが好ましい。例えば、マトリックスの屈折率を低くする必要がある場合には、無機フィラーとして、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等の微細な低屈折率無機フィラーを用いることができる。またマトリクスの屈折率を高くする必要がある場合には、無機フィラーとして、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物の微細な高屈折率無機フィラーを用いることができる。無機フィラーの粒径は光散乱を抑制する観点から小さい方が好ましいが、小さすぎると塗布液の粘度が増加する。そのため、一次粒子の平均粒径は一般に0.001μm以上、0.2μm以下であり、好ましくは0.001μm以上、0.1μm以下であり、より好ましくは0.001μm以上、0.06μm以下である。前記粒径範囲は、光の波長よりも十分短いので、前記粒径範囲の無機フィラーを含有する防眩層では、散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
【0058】
無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
無機フィラーの添加量は、防眩層の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%であり、特に好ましくは30〜75質量%である。
【0059】
前記防眩層の形成に用いられる塗布組成物には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の軽減のために使用されるであろう。これらの観点からは、フッ素系及びシリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を用いるのが好ましい。特に、フッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量で効果があるので好ましい。使用可能なフッ素系の界面活性剤の好ましい例には、特開2007−188070号公報の段落番号0049〜0074に記載の化合物が含まれる。
前記防眩層形成用塗布組成物中に添加される界面活性剤(特に、フッ素系ポリマー)の好ましい添加量は、塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0060】
前記防眩層の形成に用いられる塗布組成物の調製には、有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の例には、アルコール系では、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、イソアミルアルコール、1−ペンタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール等、ケトン系では、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等、エステル系では、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸n−アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等、エーテル、アセタール系では、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルアセタール等、炭化水素系では、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、リグロイン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、ジビニルベンゼン等、ハロゲン炭化水素系では、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、1,1,1,2−テトラクロルエタン等、多価アルコールおよびその誘導体系では、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセリンモノアセテート、グリセリンエーテル類、1,2,6−ヘキサントリオール等、脂肪酸系では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、絡酸、イソ絡酸、イソ吉草酸、乳酸等、窒素化合物系では、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル等、イオウ化合物系では、ジメチルスルホキシド等、が含まれる。
【0061】
有機溶媒の中でメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、1−ペンタノール等が特に好ましい。また、有機溶媒には、凝集性制御の目的でアルコール、多価アルコール系の溶媒を適宜混合して用いてもよい。これらの有機溶媒は、単独でも混合して用いてもよく、塗布組成物中に有機溶媒総量として、20重量%〜90重量%含有することが好ましく、30重量%〜80重量%含有することがより好ましく、40重量%〜70重量%含有することがよりさらに好ましい。防眩層の表面形状の安定化のためには、沸点が100℃未満の溶媒と沸点が100℃以上の溶媒を併用することが好ましい。
【0062】
前記防眩層の形成方法の一例は、以下の通りである。但し、この方法に制限されない。
まず、防眩層を形成するための成分を含有した塗布液を調製する。次に、この塗布液を、基材フィルム又は基材フィルム上に形成された層の表面に塗布する。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が好ましく、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号明細書参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0063】
塗布後に、乾燥して、溶媒を除去し塗膜とする。乾燥は、加熱下で行ってもよい。
次に、塗膜中の成分の硬化反応を進行させて、硬化して、防眩層を形成する。硬化反応は、電離放射線照射下及び/又は加熱下で進行させることができる。より具体的には、光照射、電子線ビーム照射、加熱処理などを実施して、硬化反応を進行させることができる。硬化反応の例には、架橋反応及び重合反応が含まれる。
【0064】
紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。紫外線による硬化は、窒素パージ等で酸素濃度が4体積%以下、更に好ましくは2体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下の雰囲気下で硬化することが好ましい。
【0065】
前記防眩層を形成した後、又は形成する前に、所望により、防眩層の表面に、耐擦傷性層等の他の機能性層を形成してもよい。他の機能性層の形成方法についても、防眩層の形成方法と同様である。他の機能性層の例については上記の通りであり、また各機能性層の形成に利用される材料については、特開2001−32916号公報の記載を参照することができる。
【0066】
前記防眩層を支持する基材フィルムとしては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVRL20A:商品名、三菱レイヨン社製、特開2004−70296号公報や特開2006−171464号公報記載の環構造含有アクリル系樹脂)などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
前記基材フィルムの厚さは、通常25μm〜1000μm程度であり、好ましくは25μm〜250μmであり、30μm〜90μmであることがより好ましい。
【0067】
基材フィルムの幅は任意のものを使うことができるが、ハンドリング、得率、生産性の点から通常は100〜5000mmのものが用いられ、800〜3000mmであることが好ましく、1000〜2000mmであることがさらに好ましい。基材フィルムはロール形態の長尺で取り扱うことができ、通常100m〜5000m、好ましくは500m〜3000mのものである。
【0068】
基材フィルムとして、表面が平滑であるプラスチックフィルムを用いることができる。具体的には、平均粗さRaの値が1μm以下である、又は0.0001〜0.5μmである、又は0.001〜0.1μmである、プラスチックフィルムを用いることができる。
【0069】
上記した通り、画像表示部と保護部との間に光学フィルムを配置する態様では、該光学フィルムは、画像表示装置内において、所定の用途の機能層として用いられていてもよい。例えば、画像表示部の保護部側最表層が、偏光膜である態様では、前記光学フィルムは、該偏光膜の保護フィルムであってもよい。前記光学フィルムの主成分ポリマーがトリアセチルセルロースである場合、又は前記光学フィルムを構成する基材フィルムの主成分ポリマーがトリアセチルセルロースである場合は、偏光膜の保護フィルムとして適している。
【0070】
前記光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして使用する態様では、光学フィルムを十分に接着させるためには、光学フィルムの偏光膜と接着する面(防眩層等を有する態様では、防眩層等が形成されていない側の表面)を、鹸化処理を実施することが好ましい。防眩層等を有する積層構造の態様では、防眩層等を形成した後に、鹸化処理を実施するのが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施してもよい。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。鹸化処理することにより、親水化することができ、偏光膜との接着性が改善される。鹸化処理は、水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0071】
充填層:
本発明の画像表示装置は、画像表示部と保護部との間に、充填層を有しているのが好ましい。充填層としては、粘着剤、接着剤、硬化性樹脂組成物を硬化させてなる材料を用いることができる。特に硬化性樹脂組成物を硬化させてなる材料が好ましい。本発明の画像表示装置の一態様は、画像表示部と保護部との間であって、画像表示部の表面上に、表面に凹凸形状を有する前記光学フィルムを配置し、該光学フィルムと保護部との間の空隙に、硬化性樹脂組成物を充填し、硬化させてなる充填層を有する態様である。本態様では、光学フィルムと充填層との隣接面が、屈折率差Δnが0.01〜0.2の界面であって、当該界面が凹凸形状を有することによって、光路長が面内において所定の範囲で分布していることが好ましい。
【0072】
前記硬化性樹脂組成物を硬化させて成る材料を用いた充填層の例には、ポリマーとアクリレート系モノマーを含有する光硬化型樹脂組成物の硬化物からなる層が含まれる。前記充填層の形成に利用可能な重合性基を有するポリマーの例には、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化合物、テルペン系水素添加樹脂、ブタジエン重合体等が含まれる。また前記充填層の形成に利用可能な重合性基を有するモノマーの例には、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等が含まれる。
【0073】
前記硬化性組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。使用可能な重合開始剤の例には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等の光重合開始剤が含まれる。但し、これらの例に限定されるものではなく、使用される重合性基を有するポリマーやモノマーの種類に応じて選択することができる。熱重合開始剤を使用してもよい。
【0074】
前記充填層は、画像表示部上に配置されている光学フィルムと保護部との間の空隙に、前記硬化性組成物を充填し、紫外線等の光の照射下及び/又は加熱下で硬化反応を進行させ、硬化させることによって形成することができる。
形成される充填層の厚みについては特に制限はないが、形成される充填層の厚みは、50〜1000μm程度になるであろう。但し、この範囲に制限されるものではない。
【0075】
前記充填層の屈折率については特に制限はないが、充填層と保護部(一般的にはガラス基板であって屈折率は1.5程度)との間の屈折率差Δnが大き過ぎると、界面反射による表示品位低下等の問題が生じることから、1.45〜1.55であるのが好ましく、1.47〜1.53であるのがより好ましい。但し、併用する光学フィルムの屈折率(光学フィルムが積層構造を有する態様では、充填層と隣接する最表層の屈折率)との差Δnが、0.01〜0.2になっていればよく、前記範囲に制限されるものではない。
【0076】
画像表示部:
本発明の画像表示装置が有する画像表示部は、液晶表示装置(LCD)の液晶パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)パネル、陰極管表示装置(CRT)、表面電界ディスプレイ(SED)パネル等の種々の画像表示パネルを用いることができる。特に好ましくは液晶表示装置(LCD)の液晶パネルである。液晶パネルのモードについては特に制限はなく、本発明の効果を得ることができる。ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶パネルを用いることができる。
【0077】
画像表示部として液晶パネルを用いる態様では、画像表示部の一例は、液晶セル、及びその上下に配置される一対の偏光膜とを少なくとも有する。液晶セルと一対の偏光膜の双方又は一方との間には、光学補償フィルムや偏光膜の保護フィルム等のポリマーフィルムが配置されていてもよい。また、一対の偏光膜のそれぞれのさらに外側にも、偏光膜の保護フィルムとして作用するポリマーフィルム等が配置されていてもよい。また上記した通り、保護部側に配置される偏光膜の保護フィルムとして、前記凹凸形状を表面に有する光学フィルムを配置してもよい。
【0078】
保護部:
本発明の画像表示装置が有する保護部は、透光性である。ここで、「透光性」とは、
可視光をほとんど吸収しないことを意味する。保護部としては、画像表示部と同程度の大きさの板状、シート状又はフィルム状の透光性部材から形成される。保護部として利用可能な透光性部材の例には、光学ガラス、プラスチック(ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂等)が含まれる。保護部の表面又は裏面には、反射防止膜、遮光膜、視野角制御膜等を配置してもよい。
【0079】
本発明の画像表示装置は、テレビ表示装置、モニター、サイネージ、タッチパネル用表示装置、パーソナルコンピュータ用表示装置、携帯電話用表示装置等の種々の用途の画像表示装置として用いることができる。特に保護部を有することで美観に優れているので、映像鑑賞等の用途に適している。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0081】
1.光学フィルムの製造
基材フィルム上に防眩層を有する積層構造の光学フィルムを、以下の方法でそれぞれ製造した。
(1)基材フィルムの準備
ロール形態に巻き上げられた、長尺状の80μmの厚みの市販のアセチルセルロースフィルム(「TAC−TD80U」富士フイルム社製)を準備した。
【0082】
(2)防眩層の形成
下記表に記載の組成の塗布液をそれぞれ調製した。下記表中の数値は、質量%を意味する。また、下記表中の粒子1及び粒子2は、それぞれ以下の通りである。
粒子1:
平均粒径8.0μm[積水化成品工業(株)製]の架橋アクリル・スチレン粒子の30質量%MIBK分散液であって、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散して調製された粒子分散液。粒子の屈折率は1.555である。
粒子2:
エポスターM05(ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、(株)日本触媒製)の平均粒径5μmの粒子の30質量%MIBK分散液であって、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散して調製された粒子分散液。粒子の屈折率は1.66である。
【0083】
また、下記表中の記号の意味は以下の通りである。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製];
Z7404:ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製]);
Irg127:重合開始剤(イルガキュア127[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]);
MIBK:メチルイソブチルケトン;
MEK:メチルエチルケトン;
SP−13:下記構造のフッ素系の界面活性剤(MEKの10質量%溶液として溶解した後に使用した。)
【0084】
【化1】
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
上記ロール形態のフィルムを巻き出して、上記組成の各塗布液をそれぞれ、スロットダイ(特開2006−122889号公報の実施例1で使用したスロットダイと同様)を用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量100mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、防眩層をそれぞれ形成した。
形成した各防眩層のバインダー部分の厚みは、実施例1〜2及び比較例3に関しては4μm、実施例3〜4及び比較例4に関しては2μm;並びに比較例2に関しては10μmであり、塗布量を調整することで上記厚みとした。なお、比較例1に用いた光学フィルムは防眩層を形成しておらず、即ち市販のセルロースアセテートフィルムをそのまま使用した。
【0088】
この様にして各光学フィルムを製造した。各光学フィルムの特性の測定の詳細及び結果は後述する。
【0089】
(3)光学フィルムの鹸化処理
上記で作製した各光学フィルムに、以下の条件の鹸化処理を行った。
まず、1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した各光学フィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し、水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に各フィルムを温度120℃で十分に乾燥させた。このようにして、鹸化処理済み光学フィルムをそれぞれ製造した。
【0090】
2.偏光板の製造
80μmの厚さの市販のアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)を準備し、1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬した後、中和及び水洗をした。
別途、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜を準備した。
偏光膜の一方の表面に、鹸化処理後の各光学フィルムを、他方の表面に上記鹸化処理後のアセチルセルロースフィルムを接着して、偏光板を作製した。
この様にして、偏光板をそれぞれ作製した。
【0091】
3.画像表示装置の作製
市販のIPSモード液晶表示装置について、フロント側の偏光板を剥がして、上記作製した各偏光板を、防眩層がフロント側になるように貼合した。貼合には、粘着剤を用いた。
保護部として、コーニング社 Corning EAGLE XG 厚さ0.5mmを準備し、それをスペーサーを介して、液晶セル上に接着された光学フィルム上に配置し、固定した。光学フィルムと保護部との空隙は1mmであった。
【0092】
保護部と光学フィルムとの間の空隙に、以下の組成の硬化性樹脂組成物を充填した。
充填層用硬化性樹脂組成物の組成:
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物 100重量部
ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート 30重量部
2−ヒドロキシブチルメタクリレート 10重量部
テルペン系水素添加樹脂 30重量部
ブタジエン重合体 210重量部
光重合開始剤
(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)
7重量部
【0093】
空隙に充填された硬化性樹脂組成物をUVコンベアで搬送して紫外線を照射し、硬化反応を進行させて、充填層とした。この充填層の屈折率については下記表に示す。
この様にして、上記で作製した各光学フィルムを用い、図1と同様の構成の画像表示装置をそれぞれ作製した。
但し、比較例2では、保護部を配置しなかった。
【0094】
4.評価
(1)光学フィルム及び充填層の屈折率
光学フィルム及び充填層の屈折率は、別途表面が平滑になるようにサンプルを作成し、アッベ屈折率計を用いて測定した。各光学フィルムについて、各防眩層用塗布液組成から透光性粒子を抜いた塗布液を作成し、ガラス基板上に塗布液を塗布後、防眩層と同条件で硬化させた。また充填層について、充填層と同じ塗布液をガラス基板上に塗布後、UVコンベアで搬送して紫外線を照射し硬化させた。
(2)光学フィルムの表面性状の測定
上記で作製した各光学フィルムの防眩層の表面のRaを菱化システム社製VertScan2.0を用いて測定した。
【0095】
(3)画像表示部と保護部との間の光路長の面内標準偏差
上記で作製した各光学フィルムの防眩層の表面のRMS(二乗平均平方根粗さ)を菱化システム社製VertScan2.0を用いて測定した。光学フィルムと保護と光学フィルムの間の層の屈折率差をΔnとし、式σ=Δn×RMSを用いて面内標準偏差を算出した。
【0096】
(4)画像表示装置の評価(光学特性評価法)
別途、以下の方法で評価用サンプルをそれぞれ作製した。
ガラス1の上に粘着剤を介して、各光学フィルムを貼り、比較例2以外は最表面に、前記組成の硬化性樹脂組成物を塗布した。その上にガラス2を配置して封止し、紫外線を照射して硬化性樹脂組成物を硬化させて充填層を形成した。ガラス1の粘着剤の裏側は黒ペンキで塗りつぶした。
・鏡面反射率、積分球反射率
日本分光製 紫外可視分光光度計V550を用いて測定した。積分球反射率の値が小さいほど、その画像表示装置が明室環境下で黒締りが良好であることを示す。
・写像性
スガ試験機製 写像性測定器 ICM−1Tを用いて測定した。光学くし歯0.125mmの写像性評価値を表に記す。この値が小さいほど、その画像表示装置が虹色回折パターンを発生しにくいことを示す。
【0097】
(5)画像表示装置の評価(目視評価法)
高さ2.5mの天井に蛍光灯(東芝製蛍光灯FHF32E)が備えられた部屋に、電源OFFの状態で各画像表示装置を設置し、虹色回折パターン及び黒締まりについて目視評価した。
・虹色回折パターン
回折虹の目視評価は、ディスプレイ表面に天井の蛍光灯を写り込ませ、その蛍光灯の周辺に虹色パターンが見えるかどうかで、以下の基準で評価した。
◎ 見えない
○ 少し見える
× はっきり見える
・黒締まり
黒締まりの目視評価は、画像表示装置を正面から観察し、画面の黒さで評価した。比較のため、各画像表示装置の隣に、裏を黒ペンキで塗りつぶしたガラス(以下、黒ガラス)板を置き、黒さを比較することで、以下の基準で評価した。
◎ 黒ガラスと同等
○ 黒ガラスよりも少し白い
× 黒ガラスよりも白い
【0098】
上記の各評価の結果を以下の表に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
上記表に示す結果から、本発明の画像表示装置は、優れた黒締まりを示し且つ虹色回折パターンが軽減されている、表示特性に優れた画像表示装置であることが理解できる。
一方、画像表示部と保護部との間の光路長が面内で一様な比較例1の画像表示装置では、虹色解決パターンが観察され、実施例と比較して表示特性が顕著に悪かった。
また、保護部を配置しなかった比較例2では、黒締まりが悪く、画面全体が白っぽかった。
比較例3及び4はそれぞれ、画像表示部と保護部との間に、防眩層を有する光学フィルムを配置しているので、屈折率差Δnが0.01〜0.2の界面が存在し、且つ光路長も面内において分布していたが、標準偏差が本発明の範囲外であったので、虹色回折パターンの軽減効果は得られなかった。
【符号の説明】
【0102】
10 画像表示部
12 保護部
16a 光学フィルム
16b 充填層
s 界面
図1
図2