特許第5833921号(P5833921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833921
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】円筒型リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20151126BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20151126BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20151126BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20151126BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M10/0525
   H01M10/0569
   H01M10/0587
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-516104(P2011-516104)
(86)(22)【出願日】2009年2月12日
(65)【公表番号】特表2011-526726(P2011-526726A)
(43)【公表日】2011年10月13日
(86)【国際出願番号】KR2009000646
(87)【国際公開番号】WO2010002089
(87)【国際公開日】20100107
【審査請求日】2011年12月16日
【審判番号】不服-12536(P-12536/J1)
【審判請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】10-2008-0062688
(32)【優先日】2008年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミ‐ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョン‐ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ホ‐チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジョン‐ホ
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 小川 進
【審判官】 河本 充雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−213366(JP,A)
【文献】 特開2000−48801(JP,A)
【文献】 米国特許第5741606(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01M10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型リチウム二次電池であって、
負極と、正極と、非水電解液と、及び内圧が増加すると電流を遮断して内圧を低下させる電流遮断装置(CID)を備えてなり、
前記CIDが、活性化圧力が5ないし20Kgf/cm2であり、
完全充電状態の前記二次電池を75℃で恒温放置したとき、活性化される時間が600時間以上であり、
前記二次電池を10V/1Cの定電流電圧方式で過充電したとき、活性化される時間が2時間以下であり、
前記非水電解液が、リチウム塩と、非水溶媒とを含んでなり、
前記非水溶媒が、(a)環状カーボネート化合物と、(b)プロピオネート系エステル、メチルブチレート、プロピルアセテート及びこれらの混合物からなる群より選択される線状エステル化合物とを含んでなり、
前記非水電解液が、線状カーボネート系化合物を含まないものであり、
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な炭素材からなる負極であり、
前記負極と前記正極との間にセパレータが介在されてなる、円筒型リチウム二次電池。
【請求項2】
前記CIDの活性化圧力が、10ないし15Kgf/cm2である、請求項1に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項3】
前記CIDが、
完全充電状態の前記二次電池を75℃で恒温放置したとき、活性化される時間が670時間以上であり、
前記二次電池を10V/1Cの定電流電圧方式で過充電したとき、活性化される時間が1.6時間以下である、請求項1又は2に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項4】
前記(a)環状カーボネート化合物と、前記(b)線状エステル化合物との混合が、体積比で1:9ないし9:1である、請求項1〜3の何れか一項に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項5】
前記環状カーボネート化合物が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びブチレンカーボネートからなる群より選択された何れかの一種又はこれらのうちの二種以上の混合物を含んでなるものである、請求項1〜4の何れか一項に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項6】
前記プロピオネート系エステルが、下記化学式1で表される、請求項1〜5の何れか一項に記載の円筒型リチウム二次電池。
【化1】
[化学式1]
〔上記式において、
1鎖状または分枝状のC2アルキル基であり、
2は、直鎖状または分枝状のC1-6アルキル基であり、
1及びR2は、それぞれ少なくとも一種のハロゲンに置換されてなり又は置換されていないものである。〕
【請求項7】
前記化学式1で表されるプロピオネート系エステル化合物が、メチルプロピオネート系化合物、エチルプロピオネート系化合物、プロピルプロピオネート系化合物及びブチルプロピオネート系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる、請求項6に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項8】
前記エチルプロピオネート系化合物が、エチルプロピオネート、エチル3‐フルオロプロパノエート、エチル3,3‐ジフルオロプロパノエート、エチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエート、2‐フルオロエチルプロピオネート、2,2‐ジフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチル3‐フルオロプロパノエート、2,2,2‐トリフルオロエチル3,3‐ジフルオロプロパノエート及び2,2,2‐トリフルオロエチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエートからなる群より選択された何れか一種又はこれらのうちの二種以上の混合物を含んでなる、請求項7に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム塩が、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO22、CF3SO3Li及びLiC(CF3SO23からなる群より選択された何れか一種又はこれらのうちの二種以上の混合物を含んでなる、請求項1〜8の何れか一項に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項10】
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵または放出できる炭素材で構成されてなる、請求項1〜9の何れか一項に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項11】
前記正極が、リチウム含有酸化物で構成されてなる、請求項1〜10の何れか一項に記載の円筒型リチウム二次電池。
【請求項12】
円筒型リチウム二次電池であって、
負極と、正極と、非水電解液と、及び内圧が増加すると電流を遮断して内圧を低下させる電流遮断装置(CID)を備えてなり、
前記CIDが、活性化圧力が10ないし15Kgf/cm2であり、
完全充電状態の前記二次電池を75℃で恒温放置したとき、活性化される時間が670時間以上であり、
前記二次電池を10V/1Cの定電流電圧方式で過充電したとき、活性化される時間が1.6時間以下であり、
前記非水電解液が、エチルプロピオネート系化合物を含んでなるものであり、
前記非水電解液が、線状カーボネート系化合物を含まないものであり、
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な炭素材からなる負極であり、
前記負極と前記正極との間にセパレータが介在されてなる、円筒型リチウム二次電池。
【請求項13】
前記エチルプロピオネート系化合物が、エチルプロピオネート、エチル3‐フルオロプロパノエート、エチル3,3‐ジフルオロプロパノエート、エチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエート、2‐フルオロエチルプロピオネート、2,2‐ジフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチル3‐フルオロプロパノエート、2,2,2‐トリフルオロエチル3,3‐ジフルオロプロパノエート及び2,2,2‐トリフルオロエチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエートからなる群より選択された何れか一種又はこれらのうちの二種以上の混合物を含んでなる、請求項12に記載の円筒型リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型リチウム二次電池に関し、より詳しくは、内圧が増加すると電流を遮断して内圧を低下させるCID(Current Interruptive Device:カレント インターラップティブ デバイス:電流遮断装置)を備える円筒型二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー、及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、このような電子機器の電源として使用される電池の高エネルギー密度化に対する要求が高くなっている。リチウム二次電池は、このような要求に最も応えられる電池であって、これに対する研究が活発に行われている。
【0003】
リチウム二次電池は多様な形態で製造し得るが、代表的には角型リチウム二次電池、円筒型リチウム二次電池、及びパウチ型リチウム二次電池が挙げられる。
【0004】
周知のように、円筒型リチウム二次電池は一般に、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な炭素材負極及びリチウム酸化物正極、前記負極と正極との間に介在して両者の電気的接触を防止するセパレーター、及び非水電解液を備える。このような円筒型リチウム二次電池は、例えば、正極、負極及びセパレーターを備えたゼリーロール(Jelly roll)型電極組立体を金属缶に組み込んだ後、電極組立体の負極を缶の下端に溶接して非水電解液を注入し、電池を封止するためにトップキャップの突出端子に電極組立体の正極を溶接して製造する。
【0005】
このような円筒型リチウム二次電池は容量が大きいため、安全性に格別の注意を払わなければならない。それ故に、円筒型リチウム二次電池には電池が非正常に作動すると電流を遮断して内圧を低下させるためのCIDが使用されている。
【0006】
図1の(a)ないし(c)は、従来のCIDの作動過程を段階的に示した図である。
【0007】
図面を参照すれば、突出した形態のトップキャップ10には正極端子が設けられ、排気口が穿孔されている。トップキャップ10の下部には、電池内部の温度が上昇すると、電池抵抗が大幅に増加して電流を遮断するPTC素子(Positive Temperature Coefficient element)20が位置している。その下部に、常態では下向に突出した形状であって、電池内部の圧力が上昇すると、上向に突出しながら破裂してガスを排気する安全ベルト30、及び上端一側が安全ベルト30に結合され、下端一側が電極組立体40の正極に連結されている接続プレート50が順次位置している。
【0008】
したがって、正常な作動条件で電極組立体40の正極はリード42、接続プレート50、安全ベルト30、及びPTC素子20を経由してトップキャップ10に連結されて通電する。
【0009】
しかし、過充電などのような原因により電極組立体40からガスが発生して内圧が増加すれば、図1の(b)に示したように、安全ベルト30は上向に突出するようにその形状が逆になり、このとき、安全ベルト30が接続プレート50から分離して電流が遮断される。したがって、過充電がそれ以上進まず、安全性が確保される。それにもかかわらず内圧が増加し続けば、図1の(c)に示したように、安全ベルト30が破裂し、加圧ガスが破裂部位を通ってトップキャップ10の排気口から排気されることで、電池の爆発を防止するようになる。
【0010】
一方、円筒型電池が使用されるノートパソコンなどは様々な環境に晒され得る。例えば、完全充電状態で長期間高温に放置され得る。この場合、電池の安定性が保証されても、一時的な内圧増加によってCIDが早期に活性化するという問題が生じる。
【0011】
このような問題点を解決するため、円筒型二次電池に注入される電解液の量を調整するか又はCIDブレーカーを調整する方法が用いられるが、これらは過充電時の電池の安全性を低下させる問題点がある。すなわち、過充電時の電池の安全性と高温環境における電池の使用安定性を同時に解決することは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、過充電時の電池の安全性を確保すると共に、高温環境で電池が使用されるとき、CID(カレント インターラップティブ デバイス:電流遮断装置)が早期に活性化されることを防止した円筒型リチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するため、本発明の円筒型リチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な負極及び正極、非水電解液、及び内圧が増加すると電流を遮断して内圧を低下させるCID[Current Interruptive Device:カレント インターラップティブ デバイス:電流遮断装置(機器、器具)]を備える円筒型リチウム二次電池であって、前記CIDの活性化圧力が5ないし20Kgf/cmである。完全充電(フル充電、満充電)状態の前記二次電池を75℃で恒温放置すると、600時間以上で短絡が起き、前記二次電池を10V/1Cの定電流/定電圧方式で過充電すると、2時間以内で短絡が起きる。前記非水電解液は、リチウム塩;(a)環状カーボネート化合物と(b)エチルプロピオネート系化合物のようなプロピオネート系エステル化合物、メチルブチレート、及びプロピルアセテートからなる群より選択されるいずれか1つの線状エステル化合物またはこれらのうち2種以上の混合物とからなる非線状カーボネート(環状カーボネート)系溶媒;を含む非線状カーボネート(環状カーボネート)系非水電解液である。
【0014】
また、本発明の円筒型リチウム二次電池において、非水電解液の(a)成分である環状カーボネート化合物と(b)成分である線状エステル化合物との混合比(a:b)は、体積比で1:9ないし9:1であることが望ましい。
【0015】
本発明の円筒型リチウム二次電池において、環状カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどをそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用し得る。また、エチルプロピオネート系化合物としては、エチルプロピオネート、エチル3‐フルオロプロパノエート、エチル3,3‐ジフルオロプロパノエート、エチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエート、2‐フルオロエチルプロピオネート、2,2‐ジフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチル3‐フルオロプロパノエート、2,2,2‐トリフルオロエチル3,3‐ジフルオロプロパノエート、2,2,2‐トリフルオロエチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエートなどをそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)ないし(c)は従来の円筒型二次電池において、CIDの作動により電流が遮断されて高圧ガスが排出される過程を示した縦断面図である。
図2】恒温放置時間を変化させた電池を取り出して常温で冷まし、定電流で放電した後、その内圧を測定した結果を示したグラフである。
図3】実施例1及び比較例1の電池から正極を分離して測定したDSCグラフである(Endo:エンド mW/g Exo:エキソ)。
図4】(a)及び(b)は実施例2及び比較例2の電池を過充電したとき、CIDの活性化時間及び電池の温度を測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0018】
本発明の円筒型リチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な負極及び正極、非水電解液、及び内圧が増加すると電流を遮断して内圧を低下させるCIDを備える円筒型リチウム二次電池であって、前記CIDの活性化圧力は5ないし20Kgf/cmに調節される。本発明の円筒型リチウム二次電池は、完全充電状態の前記二次電池を75℃で恒温放置すると、600時間以上で短絡が起き、前記二次電池を10V/1Cの定電流/定電圧方式で過充電すると、2時間以内で短絡が起きる。
【0019】
上記の範囲で設計されたCIDを備えた円筒型リチウム二次電池は、過充電時の電池の安全性を確保すると同時に、高温環境で電池を使用するとき、CIDが早期に活性化されて電池使用が中断される問題点を解決することができる。
【0020】
本発明の円筒型リチウム二次電池において、CIDの活性化圧力が5Kgf/cm未満であれば、内圧が上昇すると、CIDによる回路の遮断が早過ぎて電池が不安定な状態で使用され得る。また、CIDの活性化圧力が20Kgf/cmを超過すれば、過充電など過度な条件下でも内圧上昇に対する短絡が遅過ぎて、電池の安全性を確保することができない。望ましいCIDの活性化圧力は10ないし15Kgf/cmである。
【0021】
また、本発明の円筒型リチウム二次電池において、完全充電状態の二次電池を75℃で恒温放置するとき、600時間以内にCIDが活性化されれば、高温環境下のCIDの活性化が早過ぎて早期に電池の使用が中断される可能性が高い。また、本発明の円筒型リチウム二次電池は、二次電池を10V/1Cの定電流/定電圧方式で過充電するとき、短絡の起きる時間が2時間を超えれば、過充電時のCIDの短絡が遅過ぎて電池の安定性を阻害する可能性が高い。より望ましくは、完全充電状態の二次電池を75℃で恒温放置するときは670時間以上でCIDが活性化され、二次電池を10V/1Cの定電流/定電圧方式で過充電するときは1.6時間以内でCIDが活性化される。
【0022】
一方、本発明による電極組立体に注入される非水電解液は、リチウム塩;(a)環状カーボネート化合物と(b)プロピオネート系エステル、メチルブチレート、プロピルアセテートなどのような線状エステル化合物またはこれらの混合物とからなる非線状カーボネート系溶媒;を含む非線状カーボネート系非水電解液である。
【0023】
本発明で使用される前記プロピオネート系エステルは、下記化学式1で表し得る。
【化1】
[化学式1]
【0024】
式において、R及びRはそれぞれ独立して直鎖状または分枝状のC1〜6アルキル基であり、前記R及びRはそれぞれ少なくとも1つのハロゲンに置換されるかまたは非置換され得る。
【0025】
前記化学式1で表されるプロピオネート系エステル化合物の非制限的な例としては、メチルプロピオネート系化合物、エチルプロピオネート系化合物、プロピルプロピオネート系化合物及びブチルプロピオネート系化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むが、エチルプロピオネート系エステル化合物であることが望ましい。
【0026】
(a)成分である環状カーボネート化合物と(b)成分である線状エステル化合物との望ましい混合比(a:b)は、体積比で1:9ないし9:1、より望ましくは2:8ないし4:6である。
【0027】
環状カーボネート化合物は、電解質内のリチウム塩をよく解離させるため電池の充放電容量の向上に寄与する。環状カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどをそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用し得る。特に、エチレンカーボネート(またはフルオロエチレンカーボネート)またはエチレンカーボネート(またはフルオロエチレンカーボネート)とプロピレンカーボネートとの混合物は誘電率が高く電解質内のリチウム塩をさらによく解離させる。
【0028】
エチルプロピオネート系化合物、メチルブチレート及びプロピルアセテートは、氷点が低く、且つ、沸点が比較的高く、優れた低温特性を示す線状エステル化合物である。また、炭素材負極に対する反応性が比較的低い。このような線状エステル化合物は上記の環状カーボネートと混合され、特にリチウム二次電池の高率放電特性に寄与する。すなわち、線状エステル化合物は、リチウムイオンを適切に配位して常温及び低温における高いイオン伝導度を示すことで、電池の高率放電特性を向上させる。また、電池を充電するとき、正極における電解液分解反応に対する抵抗性を高めることで、電池の膨れ現象を抑制して電池の寿命の性能を向上させる。さらに、炭酸エステル系溶媒のみを非水電解液として使用する場合より電極に対する濡れ性(wettability)が向上するため、電極表面にリチウムデンドライト(dendrite)の形成を抑制して電池の安全性向上に寄与する。これら線状エステル化合物はそれぞれ単独でまたはこれらのうち2種以上を混合して使用し得る。エチルプロピオネート系化合物としては、エチルプロピオネート、エチル3‐フルオロプロパノエート、エチル3,3‐ジフルオロプロパノエート、エチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエート、2‐フルオロエチルプロピオネート、2,2‐ジフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチルプロピオネート、2,2,2‐トリフルオロエチル3‐フルオロプロパノエート、2,2,2‐トリフルオロエチル3,3‐ジフルオロプロパノエート、2,2,2‐トリフルオロエチル3,3,3‐トリフルオロプロパノエートなどをそれぞれ単独でまたはこれらを2種以上混合して使用し得るが、これに限定されることはない。
【0029】
このように、上記の組成の非水電解液を使用すれば、本発明による特性を有する円筒型リチウム二次電池を容易に製造することができる。
【0030】
本発明の円筒型リチウム二次電池において、非水電解液の電解質としては通常のリチウム塩を制限なく使用し得る。リチウム塩の非制限的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSOなどが挙げられるが、これに限定されることはない。その他に、非水電解液には本発明の目的から逸脱しない限度内でラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、ケトンなどの化合物をさらに添加し得る。
【0031】
本発明の円筒型リチウム二次電池は通常の構造を持つ。例えば、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な炭素材からなる負極及びリチウム含有酸化物からなる正極を含み、セパレーターが正極と負極との間に介在し得る。
【0032】
リチウムイオンを吸蔵又は放出可能な炭素材としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが挙げられるが、これに限定されない。低結晶性炭素としては軟化炭素及び硬化炭素が代表的であり、高結晶性炭素としては天然黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso−carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)、及び石油または石炭系コークスなどの高温焼結炭素が代表的であるが、これに限定されない。ここで、負極は結着剤を含み得、結着剤としてはフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF‐co‐HFP)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)共重合体、及び改質されたSBR共重合体など、多様な種類のバインダー高分子を使用し得る。
【0033】
また、リチウムイオンを吸蔵又は放出可能なリチウム含有酸化物としては、リチウム含有遷移金属酸化物を望ましく使用し得る。例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−yCo、LiCo1−yMn、LiNi1−yMn(0≦y<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−zNi、LiMn2−zCo(0<z<2)、LiCoPO及びLiFePOからなる群より選択されるいずれか1つまたはこれらのうち2種以上の混合物を使用し得る。
【0034】
本発明の円筒型リチウム二次電池の電極は、通常の方法、例えば電極活物質粒子とバインダー高分子とを必要に応じて導電材、分散剤とともに溶媒に添加してスラリーを製造した後、集電体に塗布及び圧縮し、乾燥して製造し得る。また、セパレーターとしては、従来セパレーターとして使用した通常の多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムが単独でまたはこれらを積層して使用し得る。その他に、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用し得るが、これに限定されることはない。
【0035】
また、正極と負極との組立体は通常の外装材である金属缶に収納され得、上述した回路遮断機能を持つCIDは通常の方法によって製造し得る。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0037】
比較例1
フルオロエチレンカーボネート(FEC):エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=5:15:10:70:5(重量比)の溶媒にLiPFを1Mになるように添加して非水電解液を製造した。正極活物質としてLiCoOを使用した正極と負極活物質として人造黒鉛を使用した負極との間にポリエチレン多孔性膜を介在させて製造したゼリーロール型電極組立体を金属缶に収納した後、これを通常の方法で封止し、製造した上記非水電解液を注入した。また、図1に示された通常のCIDを装着した。CIDの活性化圧力は8〜14Kgf/cmである。
【0038】
比較例2
電解液の溶媒をFEC:PC:DMC=2:1:7(重量比)の溶媒に変更したことを除き、比較例1と同様に実施した。
【0039】
実施例1
電解液の溶媒をFEC:EC:PC:EP=5:15:10:75(重量比)の溶媒に変更したことを除き、比較例1と同様に実施した。
【0040】
実施例2
電解液の溶媒をFEC:PC:EP=2:1:7(重量比)の溶媒に変更したことを除き、実施例1と同様に実施した。
【0041】
完全充電状態における75℃恒温放置時のCID活性化時間の測定
比較例1、2、実施例1、2の円筒型電池を4つずつ用意した後、非水電解液を注入し、常温で1.5日間エージングしてから0.2C−レートで50分間充電し、製造過程を完了した。その後、活性化過程を経て出荷充電状態で電池を用意した。それぞれを0.8C−レートで4.35Vまで定電流/定電圧条件で充電し、カットオフ条件を50mAにセットして完全充電した。完全充電された円筒型電池を75℃の高温恒温チャンバに入れ、経時的な電圧の変化を観察した。その結果を表1及び表2に示した。
【表1】
【表2】
【0042】
表1及び表2に示されたように、比較例1及び2は完全充電状態で75℃で保存したとき、100〜150時間で内圧増加によりCIDが活性化される(回路を遮断する)。しかし、実施例1及び2の電池は600時間以上長期保存する場合も、一般的な電圧降下は現れてもCIDによる回路の遮断は起きない。
【0043】
一定時点で、上記の恒温放置測定を行った電池のうち比較例1及び実施例2の電池を取出して常温で冷ました後、0.5C−レートで3Vまで定電流放電した。ガス分析装備を用いて放電された電池の内部に生成されたガスを定量/定性分析した後、内圧に換算して表3に示した。内圧の単位はKgf/cmである。
【表3】
【0044】
134時間保存したとき、比較例1の電池は既にCIDが活性化された状態であって、ガス分析結果に基づいて換算された内圧は13.83であった。この結果は、組立過程で使用したCIDの活性化仕様範囲の最高値に近接する。しかし、実施例1の電池は600時間以上保存してもCIDが活性化されず、648時間経過後のガス分析に基づいた内圧の換算結果は9.59程度であった。これもCID活性化仕様の範囲内であるが、内圧が実質的な活性化圧力に達していないため、CIDが活性化されなかったと見られる。
【0045】
高温保存時の内圧の増加速度は、比較例1の電解液を使用した電池では速く、実施例1の場合は非常にゆっくりガスが生成されるため非常に遅いことが分かる。これは次のような事実からも説明し得る。つまり、完全充電された比較例1及び実施例1の電池から正極を分離してDSCを撮ると、100℃以下で、比較例1は発熱ピークが明確に現れるが、実施例1の正極DSCではピークが現れない。一般に、ピークは100℃以下の温度で電解液と正極界面活物質との反応によって現われる。したがって、ピークが現われないことから、実施例1の電解液組成が非常に安定的であることが分かる。正極DSCの結果は図3に示した。
【0046】
過充電時のCID活性化時間の測定
比較例1、2、実施例1、2で製造された電池に対して10V/1Cの定電流/定電圧方式で過充電実験を行い、CID活性化時間及び活性化温度を測定した結果を表4に示した。
【表4】
【0047】
一方、図4の(a)及び(b)は実施例2及び比較例2の電池に対する上記過充電実験の結果を示したグラフである。
【0048】
これらの図面から、実施例2の過充電時の安全性は比較例2の電池より向上したことが分かる。比較例2と実施例2の電池ともに断熱過充電テストは通過したが、CIDが活性化され回路を遮断する時点における電池の温度は実施例2の場合がさらに低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明による円筒型リチウム二次電池は、過充電時の電池の安全性を確保すると同時に、高温環境で電池を使用するとき、CIDが早期に活性化されて電池使用が中断される問題点を解決することができる。
【0050】
特に、所定組成の非線状カーボネート系非水電解液を使用した本発明の円筒型リチウム二次電池は、高温でもガス発生が少なく内圧上昇を抑制することができ、過充電時の電池安定性を保証し、高温環境でCIDが早期に活性化されるという問題点を解決するのに優れた効果を奏する。
図1
図2
図3
図4