特許第5834662号(P5834662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5834662フィルム状接着剤、接着シート、半導体装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834662
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤、接着シート、半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20151203BHJP
   C09J 161/04 20060101ALI20151203BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20151203BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20151203BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20151203BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20151203BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20151203BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20151203BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J161/04
   C09J201/00
   C09J11/04
   C09J7/02 Z
   H01L21/52 E
   H01L25/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-199672(P2011-199672)
(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2013-60524(P2013-60524A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】徳安 孝寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 正之
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−062551(JP,A)
【文献】 特開2010−132884(JP,A)
【文献】 特開2010−222577(JP,A)
【文献】 特開2009−124115(JP,A)
【文献】 エポキシ樹脂技術協会創立30周年記念出版編集委員会,総説 エポキシ樹脂 基礎編I,日本,エポキシ樹脂技術協会,2003年11月19日,p.175-185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01L 21/52
H01L 25/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)軟化点が80℃以下であり且つ150℃におけるゲル化時間が90秒以下である第1のエポキシ樹脂6〜20質量%、及び、150℃におけるゲル化時間が150秒以上である第2のエポキシ樹脂35〜50質量%を含む熱硬化性成分と、
(b)架橋性官能基をモノマー比率で3〜15%有し、重量平均分子量が10万〜80万であり且つTgが−50〜50℃である高分子量成分と、
(c)無機フィラーと、
(d)イミダゾール系の化合物を含む硬化促進剤と、を含有し、
前記熱硬化性成分がフェノール樹脂を更に含み、
前記第1のエポキシ樹脂及び前記第2のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、前記フェノール樹脂との含有量の比率が、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比で0.70/0.30〜0.30/0.70であり、
前記高分子量成分の含有量が前記熱硬化性成分100質量部を基準として30〜100質量部であり、
前記無機フィラーの含有量が前記熱硬化性成分100質量部を基準として10〜60質量部である、熱硬化性フィルム状接着剤。
【請求項2】
前記(d)硬化促進剤の含有量が前記熱硬化性成分100質量部を基準として0.07質量部以下である、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
硬化前の80℃におけるずり粘度が200〜11000Pa・sであり、
120℃で1時間加熱したときの150℃における引張弾性率が0.01MPa以上であり、
120℃で1時間加熱した後に150℃で1時間加熱したときの175℃における引張弾性率が20MPa以下である、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
SiN膜に対する硬化後の接着強度が1.0MPa以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
基材フィルムと、当該基材フィルム上に配置された請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤とを備える、接着シート。
【請求項6】
半導体素子と支持部材とを請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤を介して80〜140℃、0.01〜0.50MPa、1〜5秒の条件で圧着する圧着工程と、
前記圧着工程の後、前記フィルム状接着剤を110〜130℃で0.5〜2.0時間加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、170〜185℃、4.5〜8.0MPa、60〜180秒の条件で前記半導体素子を樹脂封止する封止工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記支持部材がワイヤを有しており、
前記圧着工程において前記ワイヤが前記フィルム状接着剤に覆われるように前記半導体素子と前記支持部材とを圧着する、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、接着シート、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の多機能化に伴い、チップを多段に積層し、高容量化したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及しており、半導体素子の実装には、実装工程において有利なフィルム状接着剤がダイボンディング用の接着剤として広く用いられている。このようなフィルム状接着剤を使用した多段積層パッケージの一例としてワイヤ埋込型のパッケージが挙げられる。これは、高流動なフィルム状接着剤を用いたパッケージであり、ワイヤが接続されたチップに接着剤を圧着させてワイヤを接着剤で覆ったパッケージある。このようなパッケージは、携帯電話、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージなどに搭載されている。
【0003】
上記スタックドMCPなどの半導体装置に求められる重要な特性の一つとして接続信頼性が挙げられる。接続信頼性を向上させるため、耐熱性、耐湿性、耐リフロー性などの特性を考慮したフィルム状接着剤の開発が行われている。このようなフィルム状接着剤に関して、例えば、特許文献1では、高分子量成分と、エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分とを含む樹脂及びフィラーを含有する、厚さ10〜250μmの接着シートが提案されている。また、特許文献2では、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む混合物とアクリル共重合体とを含む接着フィルムが提案されている。
【0004】
また、半導体装置の接続信頼性は、接着剤と支持部材(半導体素子や基板)との接着面に空隙を発生させること無く接着剤を介してチップと支持部材とを圧着できているか否かにより大きく左右される。そのため、空隙を発生させずにチップと支持部材とが圧着されるように高流動なフィルム状接着剤を使用することや、発生した空隙を封止工程で消失させるために弾性率の低いフィルム状接着剤を使用することなどの工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2005/103180号パンフレット
【特許文献2】特開2002−220576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、更なるパッケージの高容量化・高密度化を実現するため、チップの厚みを極限まで薄くする試みがなされており、このような極薄チップを使用してパッケージを組み立てる場合には、様々な問題が発生する。例えば、フィルム状接着剤を使用する場合、接着剤付きチップは、コレットと呼ばれる穴の開いたツールが吸着し、持ち上げられることでダイシングテープから剥離され、支持部材上へ圧着される。ここで、チップが薄くなることにより、コレットの吸着穴に起因してチップが凸状に撓み易くなり、結果として圧着後の品質が低下し、接着剤と支持部材との間に空隙が発生して接続信頼性が低下し易くなる。
【0007】
このように空隙が生じて接続信頼性が低下し易くなる現象は、ワイヤ埋込型パッケージのように被着体であるチップの端部にワイヤに起因する凹凸が存在する場合に顕著なものとなっている。例えば、上記特許文献1の接着シート等は、圧着時にワイヤを埋め込むため、高流動化を目的としてエポキシ樹脂などを多く含んでいる。このため、半導体素子の製造工程中の熱により熱硬化が進行し、高弾性化してしまうため、封止工程における高温・高圧条件においてもフィルム状接着剤が変形せず、圧着時に形成された空隙が最終的に消失し難くなる場合がある。
【0008】
一方、上記特許文献2の接着フィルムは、弾性率が低いため封止工程で空隙を消失させ易いものの、粘度が高いため、そもそも接着フィルムの圧着時にワイヤを充分に埋め込み難くなる場合がある。
【0009】
このように、従来のワイヤ埋込用のフィルム状接着剤を使用して極薄チップを圧着した場合には、フィルム状接着剤の圧着時に空隙が発生しその後も消失し難いため、充分な接続信頼性が得られない場合がある。
【0010】
このような課題を解決するため、本発明者らは、接着剤を高流動化することで圧着時にワイヤを埋め込むことが可能であると共に、半導体装置の製造工程中の加熱(例えば150℃/1時間の加熱)による熱硬化の進行が抑制されて低弾性状態が維持され、封止時に空隙を消失させることができるフィルム状接着剤の開発を進めてきた。
【0011】
ここで、半導体装置の製造工程中の加熱に対してフィルム状接着剤を低弾性状態に維持する観点から、熱硬化性成分の硬化速度を単純に遅くした場合には、製造工程中の加熱によりフィルム状接着剤が発泡し易くなる。この場合、空隙が圧着時よりも増加することとなり、封止時に空隙を充分に消失させ難くなり、接続信頼性が低下する傾向がある。そのため、フィルム状接着剤に対しては、半導体素子と支持部材との接続において接着剤と支持部材との間に空隙が残存することを抑制し、接続信頼性を向上させることが求められている。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体素子と支持部材との接続において接続信頼性を向上させることが可能なフィルム状接着剤、当該フィルム状接着剤を用いた接着シート、半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、フィルム状接着剤に使用する樹脂の選定と物性の調整に鋭意研究を重ねた。そして、本発明者等は、熱硬化性成分、反応性の官能基を有する高分子量成分及び無機フィラーの含有割合を調整した上で、高分子量成分の分子量及び架橋性官能基の比率を調整すると共に、硬化速度の異なる熱硬化成分を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明に係るフィルム状接着剤は、(a)軟化点が80℃以下であり且つ150℃におけるゲル化時間が90秒以下であるエポキシ樹脂6〜20質量%、及び、150℃におけるゲル化時間が150秒以上であるエポキシ樹脂35〜50質量%を含む熱硬化性成分と、(b)架橋性官能基をモノマー比率で3〜15%有し、重量平均分子量が10万〜80万であり且つTgが−50〜50℃である高分子量成分と、(c)無機フィラーと、を含有し、高分子量成分の含有量が熱硬化性成分100質量部を基準として30〜100質量部であり、無機フィラーの含有量が熱硬化性成分100質量部を基準として10〜60質量部である。
【0015】
本発明に係るフィルム状接着剤では、半導体素子と支持部材とを当該接着剤を介して接続するに際し、フィルム状接着剤が高流動であることから、圧着時において、フィルム状接着剤と支持部材との接着面に凹凸が形成されている場合においても当該凹凸に充分に追従して接着剤を充填することができる。また、本発明に係るフィルム状接着剤では、フィルム状接着剤の加熱時において当該接着剤が発泡することを抑制することが可能であると共に、加熱によって弾性率が過度に増加することが抑制されることにより半導体素子の封止時(モールド時)においてフィルム状接着剤と支持部材との間に空隙が残存することを抑制することが可能である。以上のような本発明に係るフィルム状接着剤では、半導体素子と支持部材との接続において接続信頼性を向上させることができる。
【0016】
特に、本発明に係るフィルム状接着剤では、厚さの薄い(例えば、厚さ20〜100μm)半導体素子を用いた場合においても、フィルム状接着剤と支持部材との間に空隙が残存することを抑制して接続信頼性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るフィルム状接着剤では、圧着時において凹凸に充分に追従して接着剤を充填しつつ、圧着時に空隙が生じた場合であっても当該空隙を封止時に消失させることができるため、圧着時に空隙が発生しないようにするために半導体装置の製造工程を煩雑化する必要がなく、半導体装置を安定的に且つ容易に得ることができる。
【0018】
本発明に係るフィルム状接着剤における(d)硬化促進剤の含有量は、熱硬化性成分100質量部を基準として0.07質量部以下であることが好ましい。この場合、半導体素子を封止する前にフィルム状接着剤が急激に硬化して弾性率が高くなることを更に抑制することが可能である。これにより、半導体素子の封止時においてフィルム状接着剤と支持部材との間に空隙が残存することを更に抑制することが可能であり、接続信頼性を更に向上させることができる。
【0019】
本発明に係るフィルム状接着剤は、熱硬化性であり、硬化前の80℃におけるずり粘度が200〜11000Pa・sであり、120℃で1時間加熱したときの150℃における引張弾性率が0.01MPa以上であり、120℃で1時間加熱した後に150℃で1時間加熱したときの175℃における引張弾性率が20MPa以下であることが好ましい。この場合、圧着工程において、フィルム状接着剤と支持部材との接着面に凹凸が形成されている場合においても当該凹凸に充分に追従して接着剤を充填することが容易となり、例えば圧着時にワイヤ下の空隙を更に良好に埋め込むことができる。また、封止時に接着界面の空隙を十分に消失させることが容易となる。これらにより、接続信頼性を更に向上させることができる。
【0020】
本発明に係るフィルム状接着剤におけるSiN膜に対する硬化後の接着強度は、1.0MPa以上であることが好ましい。この場合、SiN膜を有する支持部材の当該SiN膜にフィルム状接着剤を接着する場合においても、接続信頼性を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る接着シートは、基材フィルムと、当該基材フィルム上に積層された上記フィルム状接着剤とを備える。本発明に係る接着シートにおいても、半導体素子と支持部材との接続において接続信頼性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体素子と支持部材とを上記フィルム状接着剤を介して80〜140℃、0.01〜0.50MPa、1〜5秒の条件で圧着する圧着工程と、圧着工程の後、フィルム状接着剤を110〜130℃で0.5〜2.0時間加熱する加熱工程と、加熱工程の後、170〜185℃、4.5〜8.0MPa、60〜180秒の条件で半導体素子を樹脂封止する封止工程と、を備える。
【0023】
このような本発明に係る半導体装置の製造方法では、圧着工程において半導体素子と支持部材とを80〜140℃、0.01〜0.50MPa、1〜5秒の条件で圧着することで、フィルム状接着剤と支持部材との間に空隙が形成されることを抑制することできる。また、加熱工程において110〜130℃で0.5〜2.0時間の加熱を行うことで、加熱工程と封止工程との間においてフィルム状接着剤が加熱される場合であっても、フィルム状接着剤が発泡することを充分に抑制することができる。さらに、封止工程において170〜185℃、4.5〜8.0MPa、60〜180秒の条件で樹脂封止することで、圧着工程において空隙が形成される場合であっても当該空隙を充分に消失させることができる。以上のような本発明に係る半導体装置の製造方法では、半導体素子と支持部材との接続において接続信頼性を向上させることができる。
【0024】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、支持部材がワイヤを有しており、圧着工程においてワイヤがフィルム状接着剤に覆われるように半導体素子と支持部材とを圧着してもよい。
【0025】
本発明に係る半導体装置は、上記半導体基板の製造方法により得られる。本発明に係る半導体装置においても、半導体素子と支持部材との接続において接続信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、半導体素子と支持部材との圧着時において、フィルム状接着剤と支持部材との接着面に凹凸が形成されている場合であっても当該凹凸に充分に追従して接着剤を充填しつつ、フィルム状接着剤の加熱時において当該接着剤が発泡することを抑制することが可能であると共に、半導体素子の封止時においてフィルム状接着剤と支持部材との間に空隙が残存することを抑制することが可能である。これにより、本発明では、半導体素子と支持部材との接続において接続信頼性を向上させることができる。また、本発明では、フィルム状接着剤を耐熱性、耐湿性及び耐リフロー性に優れたものとすることができる。
【0027】
本発明に係るフィルム状接着剤は、ワイヤ埋込用途に加えて、配線回路等に起因する凹凸を有する基板や、リードフレーム等の金属基板などへ半導体素子を接着する用途に好適に用いられる。例えば、ワイヤ埋込用途では、圧着時においてフィルム状接着剤によりワイヤを良好に埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るフィルム状接着剤の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図4】本発明に係る接着シートの他の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図5】本発明に係る半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図6】本発明に係る半導体装置の他の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図7】実施例における半導体装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
図8】ワイヤ埋込性の評価に関するSEM写真を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0030】
<フィルム状接着剤>
図1は、本実施形態に係るフィルム状接着剤を模式的に示す断面図である。フィルム状接着剤1は、熱硬化性であり、半硬化(Bステージ)状態を経て、硬化処理後に完全硬化物(Cステージ)状態となり得る接着剤組成物をフィルム状に成形することにより作製することができる。
【0031】
フィルム状接着剤1は、(a)熱硬化性成分と、(b)高分子量成分と、(c)無機フィラーとを少なくとも含有しており、これらの成分を含有する接着剤組成物から構成されている。以下、各成分について説明する。
【0032】
(a)熱硬化性成分
(a)熱硬化性成分は、熱硬化性樹脂として、熱硬化の速度が速い樹脂である第1のエポキシ樹脂と、熱硬化の速度が遅い樹脂である第2のエポキシ樹脂とを含有している。このようにエポキシ樹脂を含有することにより、半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を向上させることができる。
【0033】
第1のエポキシ樹脂の軟化点は、80℃以下であり、75℃以下が好ましい。第1のエポキシ樹脂の軟化点が80℃以下であることにより、80℃におけるずり粘度を200〜11000Pa・sに調整し易くなる。なお、軟化点は、JIS K 2207に準拠して測定することができる。
【0034】
第1のエポキシ樹脂の150℃におけるゲル化時間は、90秒以下であり、80秒以下が好ましく、60秒以下がより好ましい。第2のエポキシ樹脂の150℃におけるゲル化時間は、150秒以上であり、160秒以上が好ましく、180秒以上がより好ましい。
【0035】
なお、ゲル化時間は、JIS C2161の熱板法により150℃で評価することにより算出できる。この際、硬化剤促進剤として四国化成(株)製の2PZ−CN(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)を使用し、硬化剤促進剤の添加量はエポキシ樹脂100質量部に対して4質量部とすることができる。
【0036】
第1のエポキシ樹脂の含有量は、(a)熱硬化性成分の全質量を基準として6〜20質量%であり、7〜19質量%が好ましく、8〜18質量%がより好ましい。第1のエポキシ樹脂の含有量が6〜20質量%であることにより、120℃で1時間加熱したときの150℃における引張弾性率を0.01MPa以上とすることが容易であり、半導体装置の製造工程においてフィルム状接着剤が発泡することを抑制することができる。
【0037】
第2のエポキシ樹脂の含有量は、(a)熱硬化性成分の全質量を基準として35〜50質量%であり、35〜45質量%が好ましく、37〜45質量%がより好ましい。第2のエポキシ樹脂の含有量が35〜50質量%であることにより、硬化途中及び硬化後の引張弾性率を低減し易くなり、封止時に空隙が残存することを抑制することができる。
【0038】
第1のエポキシ樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のEXA−1514が挙げられる。第2のエポキシ樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のHP−7200シリーズが挙げられる。
【0039】
上記制約にとらわれないその他のエポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールE型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、エポキシ樹脂として、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等の一般に知られているものを用いることもできる。
【0040】
(a)熱硬化性成分は、半導体素子を実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を更に向上させる観点から、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を更に含有していることが好ましい。
【0041】
フェノール樹脂は、水酸基当量が大きなフェノール樹脂であることが好ましい。このようなフェノール樹脂の例としては、三井化学株式会社製のミレックスXLC−シリーズとXLシリーズ(例えば、ミレックスXLC−LL)、エア・ウォーター株式会社製のHEシリーズ(例えば、HE200C−10)、東都化成株式会社製のナフトール樹脂SNシリーズ等が挙げられる。
【0042】
また、フェノール樹脂の軟化点は、80℃におけるずり粘度を200〜11000Pa・sに調整し易くなる観点から、80℃以下であることが好ましい。
【0043】
(a)熱硬化性成分がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む場合、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の含有量(配合量)は、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比で0.70/0.30〜0.30/0.70が好ましく、0.65/0.35〜0.35/0.65がより好ましく、0.60/0.40〜0.40/0.60が更に好ましく、0.60/0.40〜0.50/0.50が特に好ましい。含有量の比率が0.70/0.30〜0.30/0.70の範囲を超えると、作製したフィルム状接着剤の硬化性が劣る傾向があると共に、未硬化フィルム状接着剤の粘度が高くなり流動性に劣る傾向がある。なお、エポキシ樹脂の含有量は、第1のエポキシ樹脂の含有量、第2のエポキシ樹脂の含有量及びその他のエポキシ樹脂の含有量の総和であるものとする。
【0044】
(b)高分子量成分
(b)高分子量成分は、エポキシ基、アルコール性、フェノール性水酸基又はカルボキシル基等の架橋性官能基を有しており、例えばポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂である。なお、(b)高分子量成分としては(a)熱硬化性成分に該当するものを除く。
【0045】
(b)高分子量成分としては、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ基を架橋性官能基として有する官能性モノマーを重合して得た、Tg(ガラス転移温度)が−50℃〜50℃であり且つ重量平均分子量が10万〜80万であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
【0046】
このような樹脂としては、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ基含有アクリルゴム等が挙げられ、エポキシ基含有アクリルゴムが好ましい。エポキシ基含有アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体等からなるエポキシ基を有しているゴムである。
【0047】
(b)高分子量成分のTg(ガラス転移温度)は、−50℃〜50℃であり、−20℃〜40℃が好ましく、−10℃〜30℃がより好ましい。(b)高分子量成分のTgが50℃を超えると、フィルム状接着剤の柔軟性が低くなり、Tgが−50℃未満であると、フィルム状接着剤の柔軟性が高すぎるため、ウェハダイシング時にフィルム状接着剤が切断し難く、バリの発生によりダイシング性が低下する。ガラス転移温度は、DSC(熱示差走査熱量計)(例えば、(株)リガク製「Thermo Plus 2」)を用いて測定できる。
【0048】
(b)高分子量成分の重量平均分子量は、10万〜80万であり、15万〜80万が好ましい。(b)高分子量成分の重量平均分子量が10万未満であると、フィルム成膜性の低下やフィルム状接着剤の接着強度と耐熱性の低下を引き起こし、重量平均分子量が80万を超えると、未硬化フィルム状接着剤の切削性と破断性が低下し、ダイシングの品質が低下する。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0049】
ウェハダイシング時にフィルム状接着剤を切断し易くなり樹脂くずが発生し難い点、接着強度と耐熱性が更に高くなる点、及び、未硬化フィルム状接着剤の流動性を更に高める点で、(b)高分子量成分は、Tgが−20℃〜40℃であり且つ重量平均分子量が10万〜70万である高分子量成分が好ましく、Tgが−10℃〜30℃であり且つ重量平均分子量が15万〜55万である高分子量成分がより好ましい。
【0050】
(b)高分子量成分の含有量は、(a)熱硬化性成分100質量部に対して30〜100質量部であり、30〜60質量部が好ましい。含有量が30質量部未満であると、フィルムの可とう性が低下すると共に、加熱後に高弾性化して封止時に空隙を埋め込み難くなる。一方、含有量が100質量部を超えると、未硬化フィルムの流動性が低下し、硬化後の接着強度が低下する。
【0051】
(b)高分子量成分としては、異なるモノマーから重合した高分子量成分を混合したものや、異なる分子量を有する高分子量成分を混合したものを用いてもよい。特に、重量平均分子量が低い(例えば25万程度)高分子量成分のみを使用した場合、未硬化フィルムの流動性は高いものの、硬化後の接着強度が低下する傾向にある。このため、重量平均分子量が高い(例えば80万程度)高分子量成分を混合することは有効な手段となり得る。しかし、重量平均分子量の高い高分子量成分の含有量が大きいと、未硬化フィルムの流動性が低下する傾向があるため、上記重量平均分子量が高い高分子量成分の含有量は、(b)高分子量成分の全質量を基準として10〜40質量%程度が好ましい。
【0052】
架橋性官能基の存在量は、120℃で1時間加熱したときの引張弾性率をスムーズに上昇させ、硬化後に高い接着強度を発現させるため、モノマー比率で3〜15%であり、150℃で1時間加熱したときの引張弾性率を低く維持し易くなる観点から、3〜10%が好ましい。グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーのモノマー比率を上記範囲に調整することで架橋性官能基の存在量を調整することができる。
【0053】
(b)高分子量成分は、市販品として入手することも可能である。(b)高分子量成分としては、例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名「アクリルゴムHTR−860P」等が挙げられる。この化合物は、架橋性官能基としてグリシジル部位を有し、アクリル酸誘導体からなるアクリルゴムをベース樹脂とする化合物であり、重量平均分子量が80万、Tg(ガラス転移温度)が−7℃である。
【0054】
(c)無機フィラー
(c)無機フィラーとしては、Bステージ状態におけるフィルム状接着剤のダイシング性の向上、フィルム状接着剤の取扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与、接着強度の向上等の観点から、シリカフィラーを配合することが好ましい。
【0055】
(c)無機フィラーの含有量は、未硬化フィルム状接着剤の流動性と、硬化後フィルム状接着剤の引張弾性率及び接着強度を制御する観点から、(a)熱硬化性成分100質量部に対して10〜60質量部であり、15〜50質量部が好ましい。含有量が10質量部未満であると、未硬化フィルム状接着剤のダイシング性が低下し、硬化後の接着強度が低下する。一方、含有量が60質量部を超えると、未硬化フィルム状接着剤の流動性が低下し、硬化後の引張弾性率が高くなる。
【0056】
無機フィラーは、異なる平均粒径のものを混合して使用することができるが、ダイシング性を向上させる観点から、平均粒径が0.1〜5μmである無機フィラーを、(c)無機フィラーの全質量を基準として80質量%以上の割合を占める主たるフィラー成分として使用することが好ましい。
【0057】
平均粒径が0.1μm未満である無機フィラーを主たるフィラー成分として使用した場合、比表面積の増加と含有粒子数の増加により未硬化フィルム状接着剤の流動性が低下する場合があり、平均粒径が5μmを超える無機フィラーを主たるフィラー成分として使用した場合、含有粒子数の減少による接着強度の低下や、フィルム成膜性の低下を引き起こす場合がある。
【0058】
また、主たるフィラー成分に添加する異なる平均粒径の無機フィラーとしては、作製するフィルム状接着剤の膜厚を超えないものであれば特に制限はないが、ダイシング性の向上と硬化後フィルムの低弾性化等を目的とする場合には、平均粒径が5μm以上のフィラーが好ましく、粘度の極端な低下による半導体素子の製造工程におけるフィルム状接着剤の発泡の抑制や、硬化後の接着強度の向上等を目的とする場合には、平均粒径が0.1μm以下のフィラーが好ましい。
【0059】
(d)硬化促進剤
フィルム状接着剤1は、(d)硬化促進剤を更に含有することが好ましい。(d)硬化促進剤としては、イミダゾール系の化合物が好ましい。
【0060】
反応性が高すぎる硬化促進剤は、半導体素子の製造工程中でフィルム状接着剤の急激な硬化を引き起こし、150℃で1時間加熱したときの引張弾性率が高くなる傾向にある。一方、反応性が低すぎる硬化促進剤は、半導体素子の製造工程における熱履歴ではフィルム状接着剤が完全には硬化することが困難となり、未硬化のまま製品内に搭載されることとなり、素子不具合が生じる場合がある。
【0061】
硬化促進剤の含有量は、(a)熱硬化性成分100質量部に対して0.07質量部以下(0〜0.07質量部)が好ましく、未硬化のまま製品内に搭載されることを抑制し易くなる観点から、0.01〜0.07質量部がより好ましい。硬化促進剤の含有量が0.07質量部を超えると、半導体素子の製造工程中でフィルム状接着剤の急激な硬化を引き起こし、150℃で1時間加熱したときの引張弾性率が高くなる傾向にある。
【0062】
(e)その他の成分
フィルム状接着剤1は、上記(a)〜(d)以外に、接着性を向上させる観点から、カップリング剤を含有することが好ましい。カップリング剤としては、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
フィルム状接着剤1の膜厚は、半導体素子接続用のワイヤや、基板の配線回路等の凹凸を充分に充填し易くするため、5〜200μmが好ましい。膜厚が5μmより薄いと、接着強度が乏しくなる傾向があり、200μmより厚いと、経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる傾向がある。なお、接着性が高く、また、半導体装置を薄型化できる点で、フィルム状接着剤1の膜厚は、10〜100μmがより好ましく、20〜75μmが更により好ましい。
【0064】
フィルム状接着剤1は、硬化前の80℃におけるずり粘度が200〜11000Pa・sであり、120℃で1時間加熱したときの150℃における引張弾性率が0.01MPa以上であり、120℃で1時間加熱した後に150℃で1時間追加加熱したときの175℃における引張弾性率が20MPa以下であることが好ましい。
【0065】
80℃におけるずり粘度が200〜11000Pa・sであることにより、80℃以上(例えば80〜140℃)、0.01〜0.50MPa、1〜5秒の条件の圧着でワイヤ下の空隙又は基板段差に由来する凹凸を容易に埋め込むことができる。軟化点が80℃以下であるエポキシ樹脂やフェノール樹脂を用いることにより、ずり粘度を200〜11000Pa・sに調整することが容易となる。なお、上記ずり粘度は、ARES(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用い、フィルム状接着剤1に5%の歪みを与えつつ5℃/分の昇温速度で昇温させながら測定した場合の測定値を意味する。
【0066】
120℃で1時間加熱したときの150℃における引張弾性率が0.01MPa以上であることにより、フィルム状接着剤1を150℃で加熱した場合における発泡を容易に抑制することが可能である。(b)高分子量成分の架橋性官能基をモノマー比率で3〜15%に調整すること、(d)硬化促進剤の含有量を0.07質量部以下に調整すること、あるいは、上記第1のエポキシ樹脂の含有量を6〜20質量%に調整することにより、上記引張弾性率を0.01MPa以上に調整することが容易となる。
【0067】
また、120℃で1時間加熱した後に150℃で1時間追加加熱したときの175℃における引張弾性率が20MPa以下であることにより、例えば175℃、4.5〜8.0MPa、90秒等の封止条件で半導体素子を樹脂封止する際に、残存する空隙を容易に消失させることができる。上記第2のエポキシ樹脂の含有量を35〜50質量%にすることにより、上記引張弾性率を20MPa以下に調整することが容易となる。なお、引張弾性率は、動的粘弾性測定装置((株)UBM社製)を用いて、3℃/分の昇温速度で昇温させながら測定した場合の測定値を意味する。
【0068】
フィルム状接着剤1におけるSiN膜に対する硬化後の接着強度(接着力)は、1.0MPa以上であることが好ましい。SiN膜は、例えば厚さ0.05〜1.00μmの薄膜であり、被着体の表面を表面処理して形成されたSiN膜であってもよい。フィルム状接着剤1の接着強度は、上記(a)〜(e)の含有量等により調整可能であり、フィルム状接着剤1が(e)カップリング剤等の添加剤を含むことにより、充分な接着強度を容易に得ることができる。接着強度は、未硬化又は半硬化の状態でSiN膜に接着したフィルム状接着剤1を硬化させた後の接着強度であり、ダイシェア強度として測定することできる。
【0069】
<フィルム状接着剤の製造方法>
フィルム状接着剤1は、上記(a)〜(c)を少なくとも含有する接着剤組成物のワニスから作製することができる。具体的には、まず、(a)熱硬化性成分、(b)高分子量成分及び(c)無機フィラーの必須成分と、必要に応じて(d)硬化促進剤や、カップリング剤等の他の添加成分とを有機溶媒中で混合・混練してワニスを調製する。
【0070】
次に、得られたワニスを基材フィルム上に塗布することによりワニス層を形成する。続いて、加熱乾燥によりワニス層から溶媒を除去した後、基材フィルムを除去することにより、フィルム状接着剤1が得られる。
【0071】
上記の混合・混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常、60〜200℃で0.1〜90分間加熱して行うことができる。
【0072】
上記基材フィルムとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。
【0073】
上記有機溶媒は、上記各成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン等が挙げられる。有機溶媒としては、乾燥速度が速く、価格が安い点で、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を使用することが好ましい。
【0074】
<接着シート>
フィルム状接着剤1は、当該接着剤を単独で用いても構わないが、フィルム状接着剤1を基材フィルム上に配置した接着シートとして用いてもよい。フィルム状接着剤1は、基材フィルムに接して配置されていてもよく、粘着剤層等を介して基材フィルム上に配置されていてもよい。
【0075】
図2は、本実施形態に係る接着シートを模式的に示す断面図である。図2に示す接着シート100は、基材フィルム2と、基材フィルム2の一方の主面2a上に配置されたフィルム状接着剤1とを備えている。
【0076】
接着シート100は、予め得られたフィルム状接着剤1を基材フィルム2に積層することにより得ることができる。また、より厚膜の接着シート100を製造する方法の1つとして、予め得られたフィルム状接着剤1と、接着シート100のフィルム状接着剤1とを貼り合わせることもできる。
【0077】
図3は、他の実施形態に係る接着シートを模式的に示す断面図である。図3に示す接着シート110は、基材フィルム2と、基材フィルム2の一方の主面2a上に配置されたフィルム状接着剤1と、フィルム状接着剤1上に配置されたカバーフィルム3とを備えている。すなわち、カバーフィルム3は、基材フィルム2上に配置されたフィルム状接着剤1における基材フィルム2とは反対側の主面1a上に配置されている。
【0078】
接着シート100、110における基材フィルム2としては、例えば、PETフィルム、OPPフィルム等が挙げられる。カバーフィルム3としては、例えば、PETフィルム、PEフィルム、OPPフィルム等が挙げられる。
【0079】
また、接着シートは、フィルム状接着剤1を従来公知のダイシングテープ上に積層したダイシング・ダイボンディング一体型接着シートであってもよい。この場合、ウェハへのラミネート工程が一回で済む点で、作業の効率化が可能である。
【0080】
このようなダイシング・ダイボンディング一体型接着シートとしては、例えば、図4に示される構成を有するものが挙げられる。図4に示す接着シート120は、引張テンションを加えたときの伸び(通称、エキスパンド)を確保できる基材フィルム7の一方の主面7a上に粘着剤層6が配置されたダイシングテープを支持基材とし、当該ダイシングテープの粘着剤層6の一方の主面6a上に、フィルム状接着剤1が配置された構造を有している。
【0081】
基材フィルム7としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、粘着剤層6は、例えば、液状成分及び高分子量成分を含み適度なタック強度を有する樹脂組成物を基材フィルム7上に塗布し乾燥する、又は、PETフィルム等の基材フィルムに塗布・乾燥させたものを基材フィルム7と貼り合せることで形成可能である。タック強度は、例えば、液状成分の比率、高分子量成分のTgを調整することにより、所望の値に設定される。なお、ダイシングテープは、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理が行われていてもよい。
【0082】
ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートが半導体装置の製造に用いられる場合、ダイシング時には半導体素子が飛散しない粘着力を有し、その後のピックアップ時にはダイシングテープから容易に剥離できることが必要である。係る特性は、上述したように粘着剤層6のタック強度の調整、光反応等によるタック強度を変化させることによって得ることができるが、フィルム状接着剤1の粘着性が高すぎるとピックアップが困難になることがある。そのため、フィルム状接着剤1のタック強度を適宜調節することが好ましい。その方法としては、例えば、フィルム状接着剤1の室温(25℃)におけるフローを上昇させると、粘着強度及びタック強度も上昇する傾向があり、フローを低下させると、粘着強度及びタック強度も低下する傾向があることを利用すればよい。
【0083】
例えば、フローを上昇させる場合には、可塑剤として機能する化合物の含有量を増加させる等の方法が挙げられる。フローを低下させる場合には、例えば、可塑剤として機能する化合物の含有量を減らす方法が挙げられる。上記可塑剤としては、例えば、単官能のアクリルモノマー、単官能エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0084】
ダイシングテープ上にフィルム状接着剤1を積層する方法としては、上述したワニスをダイシングテープの全面に塗布し乾燥する、又は印刷により部分的に塗工する方法の他、予め作製したフィルム状接着剤1をダイシングテープ上に、プレス、ホットロールラミネートにより積層する方法が挙げられる。本実施形態においては、連続的に製造でき、効率がよい点で、ホットロールラミネートによる方法が好ましい。
【0085】
ダイシングテープの膜厚は、特に制限はなく、フィルム状接着剤1の膜厚やダイシングテープ一体型接着シートの用途によって適宜、当業者の知識に基づいて定めることができる。ダイシングテープの厚みが60μmを下回ると、取扱い性が充分でなくなる傾向があり、また、ダイシングにより小片化されたチップをダイシングテープから剥離する工程においてエキスパンドによりダイシングテープが破れる傾向がある。一方、ダイシングテープの厚みは、経済性と取扱い性の良さという観点から、180μm以下が好ましい。以上の観点から、ダイシングテープの膜厚は60〜180μmが好ましい。
【0086】
<半導体装置>
フィルム状接着剤1の用途として、フィルム状接着剤1を備える半導体装置(半導体パッケージ)について図面を用いて具体的に説明する。なお、近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、フィルム状接着剤1の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0087】
図5は、本実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。図5に示す半導体装置200は、半導体素子搭載用支持基板9と、フィルム状接着剤1の硬化物(接着部材)11a,11bと、一段目の半導体素子13aと、二段目の半導体素子13bと、封止材15とを備えている。半導体素子搭載用支持基板9、硬化物11a及び半導体素子13aは、半導体素子13bの支持部材17を構成している。
【0088】
半導体素子搭載用支持基板9の一方の主面9aには、外部接続端子19が複数配置されており、半導体素子搭載用支持基板9の他方の主面9bには、端子21が複数配置されている。半導体素子搭載用支持基板9は、半導体素子13a及び半導体素子13bの接続端子(図示せず)と、外部接続端子19とを電気的に接続するためのワイヤ23を有している。半導体素子13aは、主面9a上に配置された硬化物11aを介して半導体素子搭載用支持基板9に接着されている。半導体素子13bは、半導体素子13a上に配置された硬化物11bを介して半導体素子13aに接着されている。半導体素子13a、半導体素子13b及びワイヤ23は、封止材15によって封止されている。このようにフィルム状接着剤1は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置に好適に使用できる。
【0089】
また、図6は、他の実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図である。図6に示す半導体装置210は、半導体素子搭載用支持基板9と、フィルム状接着剤1の硬化物11と、半導体素子13と、封止材15とを備えている。半導体素子搭載用支持基板9は、半導体素子13の支持部材であり、半導体素子13の接続端子(図示せず)と半導体素子搭載用支持基板9の主面9a上に配置された外部接続端子(図示せず)とを電気的に接続するためのワイヤ23を有している。半導体素子13は、半導体素子搭載用支持基板9の主面9a上に配置された硬化物11を介して半導体素子搭載用支持基板9に接着されている。半導体素子13及びワイヤ23は、封止材15によって封止されている。
【0090】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態に係る半導体装置は、フィルム状接着剤1を用いて得ることが可能であり、例えば、図5及び図6に示す半導体装置200,210は、フィルム状接着剤1が接着されたチップ(以下、「接着剤付きチップ」という)を用いて得ることができる。
【0091】
接着剤付きチップは、接着シート及びダイシングテープを個別に、又は、ダイシング・ダイボンディング一体型接着シートとして一括して、ウェハ又は既に小片化されているチップに0〜90℃で貼りつけた後、回転刃やレーザーにより切断又は伸張により分断することにより得ることができる。接着シートに代えてフィルム状接着剤1を単体で用いる場合には、ウェハにフィルム状接着剤1を貼り付けた後、フィルム状接着剤面にダイシングテープを貼り付ければよい。
【0092】
ウェハとしては、単結晶シリコンの他、多結晶シリコン、各種セラミック、ガリウム砒素等の化合物半導体等が挙げられる。
【0093】
フィルム状接着剤1をウェハに貼り付ける温度、即ちラミネート温度は、通常0〜90℃であり、好ましくは15〜80℃であり、より好ましくは40〜80℃である。ラミネート温度が90℃を超えると、フィルム状接着剤1の過度な溶融による厚みの変化が顕著となる場合がある。ダイシングテープ又はダイシング・ダイボンディング一体型接着シートを貼り付ける際にも、上記温度で行うことが好ましい。
【0094】
以下、図5に示す半導体装置200の製造方法を一例として、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、圧着工程と、加熱工程と、封止工程とをこの順に備える。
【0095】
圧着工程では、上記フィルム状接着剤1を介して半導体素子(第1の半導体素子)13bと支持部材17とを80〜140℃、0.01〜0.50MPa、1〜5秒の条件で圧着することが好ましい。本実施形態では、フィルム状接着剤1を用いることで、ワイヤ下の空隙や基板段差に由来する凹凸を良好に埋め込むことが可能であり、上記条件で半導体素子13bと支持部材17とを圧着することで、凹凸を更に良好に埋め込むことが可能である。
【0096】
支持部材17は、半導体素子搭載用支持基板9と半導体素子(第2の半導体素子)13aとをフィルム状接着剤1の硬化物11aを介して接続することにより得ることができる。支持部材17は、半導体素子13bと、支持部材17の半導体素子搭載用支持基板9とを電気的に接続するワイヤ23を有している。圧着工程では、例えばワイヤ23の少なくとも一部がフィルム状接着剤1に覆われるように半導体素子13bと支持部材17とが圧着される。
【0097】
なお、支持部材17に代えて、フィルム状接着剤との接着面に凹凸を有する基板を用いてもよい。この場合、圧着工程では、凹凸の形状に追従して接着剤が充填されるように半導体素子及び支持部材が圧着される。
【0098】
圧着工程における荷重は、0.01〜0.50MPaが好ましく、0.02〜0.20MPaがより好ましい。荷重が0.01MPa未満であると、未充填部位が過度に存在し、封止時の圧力により半導体素子(例えばチップ)が動いてしまい、半導体装置の品質が低下する場合がある。一方、圧着荷重が0.50MPaを超えると、半導体素子が破損する場合がある。
【0099】
圧着工程における加熱温度は、80〜140℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。加熱温度が80℃未満であると、ワイヤの埋込性や凹凸の埋込性が低下する傾向がある。一方、加熱温度が140℃を超えると、フィルム状接着剤1が発泡する傾向や、又は支持部材(例えば基板)が変形して反りが大きくなる傾向がある。
【0100】
接着面に凹凸を有する基板に接着剤付きチップを圧着する際には、支持部材及び/又は接着剤付きチップを加熱することが好ましい。加熱方法としては、加熱した熱板に加熱対象を接触させる、赤外線又はマイクロ波を加熱対象に照射する、加熱対象に熱風を吹きかける等の方法が挙げられる。
【0101】
加熱工程は、発泡防止用の熱処理工程である。加熱工程では、フィルム状接着剤1を110〜130℃で0.5時間(30分)〜2.0時間加熱(熱処理)する。本実施形態では、フィルム状接着剤1に対して110〜130℃/0.5〜2.0時間の加熱処理を行うことで、加熱工程と封止工程との間にフィルム状接着剤1が加熱(例えば、熱履歴が150℃以下且つ1時間以下の加熱)される場合であっても当該接着剤が発泡することを抑制することができる。
【0102】
なお、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上記加熱工程(第1の加熱工程)と封止工程との間に必要に応じて第2の加熱工程を有していてもよく、この場合、加熱温度は120〜150℃が好ましく、加熱時間は1時間以下が好ましい。例えば、必要に応じて行われるワイヤボンディングの工程を、上記範囲となるように行うことができる。
【0103】
本実施形態では、第2の加熱工程における熱履歴が150℃以下且つ1時間以下であることで、フィルム状接着剤1の熱硬化が過度に進行することを抑制し、フィルム状接着剤1を低弾性状態に維持することができる。これにより、圧着後に空隙が残る場合であっても、封止工程において空隙を更に容易に消失することができる。
【0104】
封止工程では、170〜185℃、4.5〜8.0MPa、60〜180秒の封止条件で半導体素子13a,13bやワイヤ23を樹脂封止する。上記封止条件を採用することにより、接続信頼性の高い半導体装置を容易に得ることができる。封止工程の後、例えば175℃、5時間の条件で封止材とフィルム状接着剤1を加熱して硬化させてもよい。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1〜2及び比較例1〜3)
表1に示す品名及び組成比(単位:質量部)の(a)熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂及びフェノール樹脂と、(c)無機フィラーとを含有する組成物にシクロヘキサノンを加え、撹拌混合して混合物を得た。次に、表1に同様に示す(b)高分子量成分としてのアクリルゴムを上記混合物に加えて撹拌し、表1に同様に示すカップリング剤及び(d)硬化促進剤を更に加え、各成分が均一になるまで撹拌してワニスを得た。
【0107】
なお、表1中の各成分の名称は下記のものを意味する。
(エポキシ樹脂)
R2710:(商品名、株式会社プリンテック製、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、エポキシ当量:181、常温で液状、150℃ゲル化時間:120秒)。
YDF−8170C:(商品名、東都化成株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:159、常温で液体、150℃ゲル化時間:110秒)。
YDCN−700−10:(商品名、東都化成株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:210、軟化点:75〜85℃、150℃ゲル化時間:100秒)。
HP−7200H:(商品名、DIC株式会社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:280、軟化点:83℃、150℃ゲル化時間:200秒)。
EXA−1514:(商品名、DIC株式会社製、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エポキシ当量:300、軟化点:75℃、150℃ゲル化時間:40秒)。
【0108】
(フェノール樹脂)
LF−4871:(商品名、DIC株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:118、軟化点:130℃)。
ミレックスXLC−LL:(商品名、三井化学株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:175、軟化点:77℃)。
HE910−10:(商品名、エア・ウォーター株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:201、軟化点:78〜88℃)。
HE200C−10:(商品名、エア・ウォーター株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:200、軟化点:65〜75℃)。
【0109】
(高分子量成分)
HTR−試作品24:(サンプル名、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量:23万、グリシジル官能基モノマー比率:8%、Tg:−7℃)。
HTR−860P:(商品名、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量:80万、グリシジル官能基モノマー比率:3%、Tg:−7℃)。
【0110】
(無機フィラー)
SC2050−HLG:(商品名、アドマテックス株式会社製、シリカフィラー分散液、平均粒径:0.50μm)。
アエロジルR972:(商品名、日本アエロジル株式会社製、シリカ、平均粒径:0.016μm)。
SC1030−HJA:(商品名、アドマテックス株式会社製、シリカフィラー分散液、平均粒径:0.25μm)。
【0111】
(硬化促進剤)
キュアゾール2PZ−CN:(商品名、四国化成工業株式会社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)。
【0112】
(カップリング剤)
NUC A−189:(商品名、GE東芝株式会社製、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)。
NUC A−1160:(商品名、GE東芝株式会社製、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)。
【0113】
【表1】
【0114】
次に、得られたワニスを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡した。真空脱泡後のワニスを、基材フィルムとしての、厚さ38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した。塗布したワニスを90℃で5分間、続いて140℃で5分間の2段階で加熱乾燥した。これにより、基材フィルムとしてのPETフィルム上に、Bステージ状態にある厚み60μmのフィルム状接着剤を備えた接着シートを得た。
【0115】
<各種物性の評価>
上記接着シートのフィルム状接着剤について、80℃におけるずり粘度、120℃/1時間加熱したときの150℃における引張弾性率、120℃/1時間加熱後に150℃/1時間加熱したときの175℃における引張弾性率及び接着強度の測定、並びに、ワイヤ埋込性、150℃における発泡性、モールド埋込性及び耐リフロー性の評価を行った。
【0116】
[ずり粘度測定]
フィルム状接着剤の80℃におけるずり粘度は下記の方法により測定した。まず、上記接着シート3枚から、基材フィルムを剥離除去した後、3枚のフィルム状接着剤を70℃で3枚貼り合わせて厚み180μmの積層体を得た。次に、その積層体を、厚み方向に10mm角に打ち抜き、10mm角、厚み180μmの四角形の積層体を得た。動的粘弾性装置ARES(レオメトリック・サイエンティフィック社製)に直径8mmの円形アルミプレート治具をセットし、打ち抜いたフィルム状接着剤の積層体を上記治具にセットした。その後、35℃で5%の歪みを与えつつ5℃/分の昇温速度で昇温させながら測定し、80℃におけるずり粘度の値を測定値として記録した。測定結果を表2に示す。
【0117】
[ワイヤ埋込性の評価]
フィルム状接着剤のワイヤ埋込性を下記の方法により評価した。まず、上記接着シートのフィルム状接着剤(厚み60μm)を厚み50μmの半導体ウェハ(サイズ:8インチ)に70℃で貼り付けた。次に、それらを7.5mm角にダイシングして、フィルム状接着剤1が接着した半導体素子(チップ)13bを得た(図7参照)。
【0118】
続いて、図7に示すように、個片化した半導体素子13bのフィルム状接着剤1を評価用基板300に120℃、0.10MPa、1秒間の条件で圧着してサンプル400を得た。なお、図7に示す評価用基板300では、一段目の半導体素子13aが、フィルム状接着剤31により、半導体素子搭載用支持基板9に接着されている。フィルム状接着剤31としては、日立化成工業(株)製のフィルム状接着剤FH−900−20を用いた。なお、半導体素子13aには、ワイヤ23が接続されている。ワイヤ23は、向かい合う2辺に接続されており、各辺に32本ずつ、225μm間隔で配置されている。図7に示すサンプル400は、評価用基板300に、個片化したチップ(二段目の半導体素子13b+フィルム状接着剤1)を圧着したものである。
【0119】
得られたサンプル400について、全てのワイヤ23の下部をSEMにより観察した。図8は、ワイヤ埋込性の評価に関するSEM写真を示す図面である。図8(a)は、ワイヤの下部にフィルム状接着剤が充分に埋め込まれていない領域の写真を示し、図8(b)では、ワイヤの下部にフィルム状接着剤が充分に埋め込まれている領域の写真を示している。
【0120】
全ワイヤ本数の内90%以上のワイヤにおいて、ワイヤ23の下部がフィルム状接着剤1で良好に充填されている場合にワイヤ埋込性が良好であるとして「A」と評価し、フィルム状接着剤1が良好に充填されているワイヤが90%に満たない場合は「B」として評価した。評価結果を表2に示す。
【0121】
[120℃/1時間加熱後の150℃における引張弾性率測定]
フィルム状接着剤の120℃/1時間加熱後の150℃における引張弾性率は下記の方法により測定した。まず、上記接着シート(厚み60μm)2枚から、基材フィルムを剥離除去した後、2枚のフィルム状接着剤を70℃で2枚貼り合わせて厚み120μmの積層体を得た。次いで、その積層体を、厚み方向に4mm幅、長さ30mmに切り出し、120℃のオーブンで1時間加熱した。得られたサンプルを動的粘弾性装置(製品名:Rheogel−E4000、(株)UMB製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、150℃における測定値を120℃/1時間加熱後の引張弾性率として記録した。測定結果を表2に示す。
【0122】
[120℃/1時間・150℃/1時間加熱後の175℃における引張弾性率測定]
フィルム状接着剤の120℃/1時間・150℃/1時間加熱後の175℃における引張弾性率は下記の方法により測定した。まず、上記接着シート(厚み60μm)2枚から、基材フィルムを剥離除去した後、2枚のフィルム状接着剤を70℃で2枚貼り合わせて厚み120μmの積層体を得た。次いで、その積層体を、厚み方向に4mm幅、長さ30mmに切り出し、120℃のオーブンで1時間加熱し(60℃から120℃まで30分かけて昇温、120℃で1時間保持した後、120℃から60℃まで30分かけて冷却)、その後150℃のオーブンで1時間加熱した。得られたサンプルを動的粘弾性装置(製品名:Rheogel−E4000、(株)UMB製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、175℃における測定値を120℃/1時間・150℃/1時間加熱後の引張弾性率として記録した。測定結果を表2に示す。
【0123】
[150℃における発泡性の評価]
上記[ワイヤ埋込性の評価]で得たサンプル400を超音波映像装置SAT(日立建機製、品番FS200II、プローブ:120MHz)にて検査し、ボイドの割合を確認した(ボイド割合A)。なお、「ボイドの割合」とは、チップ全体の面積に対するボイドが占める面積の割合である。
【0124】
次に、別途用意したサンプル400を120℃のオーブンで1時間加熱した(60℃から120℃まで30分かけて昇温し、120℃で1時間保持した後、120℃から60℃まで30分かけて冷却)。得られたサンプルを150℃のホットプレート上に10分間放置し、その後上記と同様にSATで検査し、ボイドの割合を確認した(ボイド割合B)。
【0125】
ボイド割合A,Bを比較し、ボイド割合の増加量(ボイド割合B−ボイド割合A)に基づき150℃における発泡性を確認した。評価結果を表2に示す。なお、発泡性の評価基準は以下の通りである。
A:ボイド割合の増加量が10%未満。
B:ボイド割合の増加量が10%以上。
【0126】
[モールド埋込性の評価]
上記[ワイヤ埋込性の評価]と同様のサンプル400を用いて、フィルム状接着剤のモールド埋込性を下記の方法により評価した。まず、上記で得られた接着シートのフィルム状接着剤60μmを厚み50μmの半導体ウェハに70℃で貼り付けた。次に、それらを7.5mm角にダイシングして、フィルム状接着剤1が接着した半導体素子(チップ)13bを得た。続いて、図7に示すように、個片化した半導体素子13bのフィルム状接着剤1を評価用基板300に120℃、0.10MPa、1秒間の条件で圧着してサンプル400を得た。
【0127】
続いて、得られたサンプルを120℃で60分間加熱し、更にホットプレートを用いて、ワイヤボンディングと同等の熱履歴(150℃、1時間)をサンプルに与えた。次いで、モールド用封止材(日立化成工業(株)製、商品名「CEL−9750ZHF10)を用いて、175℃/6.7MPa/90秒の条件で樹脂封止し、175℃、5時間の条件で封止材を硬化させてパッケージを得た。
【0128】
得られたパッケージの一部をSATにて分析し、上記発泡性の評価と同様にボイドの割合に基づき封止後の埋込性を確認した。評価結果を表2に示す。なお、埋め込み性の評価基準は以下の通りである。
A:ボイドの割合が15%未満。
B:ボイドの割合が15%以上。
【0129】
[接着強度の測定]
フィルム状接着剤のダイシェア強度(接着強度)を下記の方法により測定した。まず、上記で得られた接着シートのフィルム状接着剤60μmを厚み400μmの半導体ウェハに70℃で貼り付けた。次に、それらを5.0mm角にダイシングしてチップを得た。個片化したチップのフィルム状接着剤側をSiNで表面処理した厚み625μmの半導体チップ上に120℃、0.1MPa、5秒間の条件で熱圧着してサンプルを得た。その後、得られたサンプルの接着剤を120℃で1時間、150℃で1時間、170℃で3時間の順のステップキュアにより硬化した。更に、接着剤硬化後のサンプルを85℃、60RH%条件の下、168時間放置した。その後、サンプルを25℃、50%RH条件下で30分間放置し、250℃でダイシェア強度を測定し、これを接着強度とした。測定結果を表2に示す。
【0130】
[耐リフロー性の評価]
上記[ワイヤ埋込性の評価]と同様のサンプル400を用いて、フィルム状接着剤の耐リフロー性を下記の方法により評価した。まず、上記で得られた接着シートのフィルム状接着剤60μmを厚み50μmの半導体ウェハに70℃で貼り付けた。次に、それらを7.5mm角にダイシングして、フィルム状接着剤1が接着した半導体素子(チップ)13bを得た。続いて、図7に示すように、個片化した半導体素子13bのフィルム状接着剤1を評価用基板300に120℃、0.10MPa、1秒間の条件で圧着してサンプル400を得た。
【0131】
続いて、得られたサンプルを125℃で60分間加熱し、更にホットプレートを用いて、ワイヤボンディングと同等の熱履歴(150℃、1時間)をサンプルに与えた。次いで、モールド用封止材(日立化成工業(株)製、商品名「CEL−9750ZHF10)を用いて、175℃/6.7MPa/90秒の条件で樹脂封止し、175℃、5時間の条件で封止材を硬化させてパッケージを得た。
【0132】
上記のパッケージを24個準備し、これらをJEDECで定めた環境下(レベル3、30℃、60RH%、192時間)に曝して吸湿させた。続いて、IRリフロー炉(260℃、最高温度265℃)に吸湿後のパッケージを3回通過させた。パッケージの破損や厚みの変化、フィルム状接着剤と半導体素子との界面における剥離等が1個も観察されない場合を「A」と評価し、1個でも観察された場合を「B」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜2では、比較例1〜3と比較して、ワイヤ埋込性に優れ、120℃/1時間の加熱処理を施すことによって続く工程の熱(150℃)により発泡することが抑制されており、150℃/1時間以下の熱履歴後においても175℃/6.7MPa/90秒の封止条件で封止することにより空隙が消失し、耐リフロー性にも優れることが確認された。
【符号の説明】
【0135】
1…フィルム状接着剤、2,7…基材フィルム、13,13a,13b…半導体素子、17…支持部材、23…ワイヤ、100,110,120…接着シート、200,210…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8