特許第5834859号(P5834859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834859
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】発光装置、照明器具
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20151203BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20151203BHJP
【FI】
   H01L33/00 410
   H01L33/00 432
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-268438(P2011-268438)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-118346(P2013-118346A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-239855(P2011-239855)
(32)【優先日】2011年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】徳永 英司
(72)【発明者】
【氏名】宮入 洋
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−302339(JP,A)
【文献】 特開2009−170825(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/093427(WO,A1)
【文献】 特開2010−141354(JP,A)
【文献】 特開2006−286896(JP,A)
【文献】 特開2011−054829(JP,A)
【文献】 特表2007−513378(JP,A)
【文献】 特開2002−033520(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/004796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹部と、
前記第1凹部の底面に設けられた第2凹部と、
前記第2凹部の底面上に配置された複数の発光素子と、
前記第1凹部を封止し、拡散材粒子は含有するが蛍光体粒子は実質的に含有しない第1層と、
前記第2凹部を封止し、蛍光体粒子を下方ほど高密度に含有する第2層と、
前記第1凹部の底面に設けられ、前記第1層に封止される溝状のアンカーと、
を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2層の断面視において前記第2凹部底面と前記第2層上面との距離は均一であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1層の組成は前記第2層の組成と同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2層の断面視において前記発光素子上面と前記第2層上面との距離は均一であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の発光素子が前記第2凹部の底面において散在していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2凹部の側面に反射材が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1凹部の側面に反射材が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体粒子の粒径が6μm以上であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
集光装置と、前記集光装置に取り付けられた請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の発光装置と、を備えたことを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具などに利用可能な発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、YAG蛍光体が石英粒子から構成される拡散層により覆われている発光ダイオードが提案された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−352030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の発光ダイオードでは、発光面において輝度の偏り(輝度ムラ)や色の偏り(色ムラ)が多く、また、発光ダイオードをどの角度から見るのかによって光の色が異なるため(配光色ムラ)、レンズやリフレクタなどの集光装置を用いて集光を行った場合に、各種のムラが増幅されて照明品質を悪化させてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、集光装置を用いて集光を行っても優れた照明品質を得ることができる発光装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、次の手段により解決される。
【0007】
本発明は、第1凹部と、前記第1凹部の底面に設けられた第2凹部と、前記第2凹部の底面上に配置された複数の発光素子と、前記第1凹部を封止する拡散材粒子含有の第1層と、前記第2凹部を封止する蛍光体粒子含有の第2層と、を備え、前記第1層は、蛍光体粒子を実質的に含有しない、ことを特徴とする発光装置である。
【0008】
また、本発明は、前記第2層に含有される蛍光体粒子が前記第2層の下方ほど高密度であることを特徴とする上記した発光装置である。
【0009】
また、本発明は、前記複数の発光素子が前記第2凹部の底面において散在していることを特徴とする上記した発光装置である。
【0010】
また、本発明は、前記第2凹部の側面に反射材が設けられていることを特徴とする上記した発光装置である。
【0011】
また、本発明は、前記第1凹部の側面に反射材が設けられていることを特徴とする上記した発光装置である。
【0012】
また、本発明は、前記蛍光体粒子の粒径が6μm以上であることを特徴とする上記した発光装置である。
【0013】
また、本発明は、集光装置と、前記集光装置に取り付けられた上記の発光装置と、を備えたことを特徴とする照明器具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集光装置を用いて集光を行っても優れた照明品質を得ることができる発光装置及び照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
図2】本発明の実施例1に係る発光装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る発光装置は、第1凹部20と、第1凹部20の底面に設けられた第2凹部30と、第2凹部30の底面上に配置された複数の発光素子50と、第1凹部20を封止する拡散材粒子70含有の第1層60と、第2凹部30を封止する蛍光体粒子90含有の第2層80と、を備えている。第1凹部20と第2凹部30は、パッケージ10に形成されている。
【0019】
本発明の実施形態に係る発光装置では、拡散材粒子70含有の第1層60を第1凹部20に設け、蛍光体粒子90含有の第2層80を第2凹部30に設け、第1凹部20と第2凹部30とを上段・下段の関係として凹部を2段構成にする。
【0020】
また、本発明の実施形態に係る発光装置では、第1層60が蛍光体粒子を実質的に含有しない。
【0021】
したがって、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、拡散材粒子70含有の第1層60と蛍光体粒子90含有の第2層80の厚みを均一にすることができ、発光装置の発光面(第1凹部20の上面)における輝度ムラ、色ムラ及び配光色ムラを少なくすることができる。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、拡散されていない光が蛍光体粒子90含有の第2層80を通過する、すなわち、発光素子50から出射した光が蛍光体粒子90含有の第2層80を通過した後に拡散層を通過する。
【0023】
このため、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第2層80における輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラの発生が抑制されるとともに、仮に第2層80で輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラが発生したとしても、これらは第1層60による光の拡散によって発光装置から光が出射する前に低減される。したがって、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、発光装置の輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラが少なくなる。
【0024】
以下、詳細に説明する。
【0025】
[パッケージ10]
パッケージ10には、2段構成の凹部(第1凹部20、第2凹部30)が形成されている。第2凹部30は、第1凹部20の底面に設けられており、第2凹部30の側面と第1凹部20の底面との間には、段差が設けられている。
【0026】
したがって、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第2凹部30を第2層80で封止する際に第2層80の表面張力が働いて、第1凹部20と第2凹部30との界面におけるヒケ(第2層80の上面が第2凹部30の上面付近における第1層60との界面において凹となる状態)が抑制され、第2層80の厚みが均一に形成される。
【0027】
このため、発光面を平面視した場合における単位面積当たりに存在する発光素子と蛍光体含有物質との比率が均一になるため、第2層80における光の光路長が第2層80の全領域において均一になり、第2層80における輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラの発生が抑制される。
【0028】
また、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第2層80の厚みが均一に形成されるため、第2層80の上部に形成される第1層60の厚みも均一に形成される。
【0029】
このため、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第1層60による拡散効果が第1層60内において均一になるため、第1層60中のどの領域においても拡散の程度が均一になり、仮に第2層80で輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラが発生したとしても、これらは第1層60による拡散によって発光装置から光が出射する前に低減される。
【0030】
さらに、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、2段構成とされた凹部のそれぞれに形成される第1層60及び第2層80の厚みがともに均一とされるため、第2層80の上面における様々な領域から同じ光量で光が出射されて第1層60に入射し、第1層60の上面における様々な領域から同じ光量で光が出射することとなり、輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラが抑制される。
【0031】
また、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、上段である第1凹部20の底面の一部領域に下段である第2凹部30が形成され、第1凹部20の底面の一部領域に形成された第2凹部30から出射した光が第1凹部20で拡散される構成とされる。
【0032】
したがって、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第1凹部20の作用と第2凹部30の作用とを分離させることができるため(第2凹部30は、複数の発光素子50から出射した光と蛍光体粒子90から出射した光(蛍光体粒子90は、複数の発光素子50から出射した光により励起されて複数の発光素子50から出射した光とは異なる波長の光を出射する)とを合成して均一な白色光を生成する作用を担い、第1凹部20は第2凹部30から出射した光の色(すなわち光の波長)を変化させることなく拡散する作用を担う)、発光面における輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラを少なくすることができる。
【0033】
第2凹部30の側面は、垂直状とすることもできるが、本発明の実施形態に係る発光装置のように、テーパー状とすることが好ましい。このようにすれば、発光素子50から出射した光が発光装置の上面(第1凹部20の上面)に向かい易くなるため、光取出し効率を向上させることができる。
【0034】
第2凹部30の開口の大きさは、特に限定されるものではないが、ツェナーダイオードなどの保護素子の実装や給電ワイヤボンディングなどを行える程度の領域を第1凹部20(例えば第1凹部20の底面)に形成可能な程度の大きさとすることが好ましい。
【0035】
このようにすれば、第2凹部30の底面において複数の発光素子を散在させることができることに加えて、第1凹部20の反射面に到達する光が少なくなるため、集光装置における集光率が高くなり、小型の灯具でも配光の制御が容易となる。
【0036】
なお、例えば第1凹部20の開口と第2凹部30の開口をともに円状に形成する場合は、第2凹部30の開口の径≦第1凹部20の開口の径−2mmであることが好ましい。このようにすれば、第1凹部20(例えば第1凹部20の底面)にツェナーダイオードなどの保護素子の実装や給電ワイヤボンディングなどを行える領域を十分に確保できるとともに、第1凹部20の反射面に到達する光がより一層少なくなり、集光装置における集光率がより一層高くなって、小型の灯具でも配光の制御がより一層容易となる。
【0037】
パッケージ10の外形は、特に限定されるものではなく、例えば、四角形、多角形、円形、楕円形、若しくは、それらを組み合わせたような形状とすることができる
【0038】
第1凹部20は、1つのパッケージ10に1つだけ設けることができるほか、1つのパッケージ10に複数設けることもできる。また、第2凹部30は、1つの第1凹部20に1つだけ設けることができるほか、1つの第1凹部20に2つ以上設けることができる。
【0039】
第1凹部20や第2凹部30の上面視形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、多角形、更にはそれらを組み合わせたような形状とすることができる。また、第2凹部30の上面視形状は、第1凹部20の上面視形とは異なる形状とすることができるほか、同じ形状(相似形)とすることができる。
【0040】
パッケージ10は、例えば樹脂成形体から構成することができる。樹脂成形体としては、例えば、PA6T、PA9Tといった芳香族系ポリアミド、LCPといった芳香族系ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物などの熱硬化性樹脂などをあげることができる。
【0041】
[反射材40]
第1凹部20及び第2凹部30の側面に特に何らかの部材を設ける必要はないが、本発明の実施形態に係る発光装置では、第1凹部20及び第2凹部30の側面にAl、Ag、TiO含有成形材料などの反射材40が設けられている。なお、反射材40を設ける場合は、第1凹部20及び/又は第2凹部30の側面に設けることができる。
【0042】
一般に、拡散材粒子70含有の層で封止された凹部の側面に反射材40を設けると、発光素子50上面と凹部の側面の輝度が高くなるため発光面の輝度ムラが多くなり、また、発光素子50上面の輝度の高い部分と蛍光体のみが光っている部分とでは色味も変わってくるため発光面の色ムラが多くなる。
【0043】
しかしながら、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、拡散材粒子70含有の層である第1層60の厚みが均一になるため、第1層60中のどの領域においても拡散の程度が均一になり、発光面(拡散材粒子70含有の層で封止された凹部の上面)と反射面(拡散材粒子70含有の層で封止された凹部の側面)の輝度が等しくなり、このような輝度ムラ及び色ムラを少なくすることができる。
【0044】
また、一般に、反射材40で光が1回反射することによる光量のロスは2〜10%程度とされており、反射材40で複数回反射を繰り返すと更に光量のロスが増大するとされている。しかしながら、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第2凹部30では拡散が行われず、最低限の反射にて第1凹部20に光が導かれる。
【0045】
また、第2凹部30から第1凹部20に導かれた光は、第2凹部30の上面を通過し、第1凹部20内における第2凹部30の上方に達するため、第2凹部30の上面の面積が第1凹部20の底面の面積よりも小さい本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第1凹部20の側面に設けられた反射材40にまで到達する光量が少なくなる。したがって、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、パッケージ10の凹部側面における反射ロスを抑制して光取出し効率を向上させることができる。
【0046】
[複数の発光素子50]
複数の発光素子50は、第2凹部30の底面上に配置される。複数の発光素子50は、第2凹部30の底面に対して直接的に配置されてもよいし、何らかの部材を介して間接的に配置されてもよい。
【0047】
複数の発光素子50は、その配置態様が特に限定されるものでないが、第2凹部30の底面において散在していることが好ましい。このようにすれば、第2凹部30の底面における最外周に配置された発光素子50と第2凹部30の側面との間に広がる蛍光体粒子90のみが発光する領域を狭めることができるため、発光面の色ムラを低減することができる。
【0048】
また、複数の発光素子50を第2凹部30の底面において散在させれば、第2層の全領域に光を伝播させることができるため、第2凹部30の幅及び奥行きを小さくしても、有効な幅及び奥行きを持つ発光領域を確保することができる。
【0049】
なお、発光素子50と同じ面に設けられることが多い給電ワイヤボンディングを行う領域やツェナーダイオードなどの保護素子などを実装する領域などを第1凹部20上に設ければ、これらの領域を第2凹部30の底面に設ける必要がなくなるため、第2凹部30の底面外周付近まで発光素子50を配置することが可能となり、複数の発光素子50を第2凹部30の底面において散在させることができる。
【0050】
発光素子50としては、任意の波長の半導体発光素子50を選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子50としては、ZnSeや窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子50としては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる発光素子50を用いることもできる。用いる発光素子50の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
[第1層60]
第1層60は、第1凹部20を封止する。封止の程度は厳密に限定されるものではないが、例えば、第1凹部20の底面高さから第1凹部20の上面高さまで封止する。
【0052】
第1層60は、拡散材粒子70を含有する。これにより、第2層80を通過してきた光を第1層60で拡散して発光装置から出射することができ、発光面の輝度ムラ、色ムラ、及び配光色ムラを少なくすることができる。
【0053】
拡散材粒子70の種類は、1種とすることもできるし、複数種とすることもできる。拡散材粒子70は、第1層60中のどの領域においても拡散の程度が均一になるよう、第1層60中で均一に分散していることが好ましい。拡散材粒子70としては、第1層60とは異なる屈折率の粒子を適時濃度にて用いることができる。拡散材粒子70の一例としては、例えば、SiO、Al、TiO、MgFなどを挙げることができる。
【0054】
第1層60としては、例えば透光性樹脂を用いることができるが、その組成は、第2層80と同一であることが好ましい。このようにすれば、第1層60が第2層80から剥離してしまうことを防止することができる。
【0055】
透光性樹脂としては、発光素子50からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化しにくい耐光性を有するものが好ましい。具体的には、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物など発光素子50からの光を透過可能な透光性を有する絶縁樹脂組成物などを透光性樹脂の一例として挙げることができる。また、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂なども透光性樹脂の一例として挙げることができる。
【0056】
[第2層80]
第2層80は、第2凹部30を封止する。封止の程度は厳密に限定されるものではないが、例えば、第2凹部30の底面高さから第2凹部30の上面高さ(第1凹部20の底面高さ)まで封止する。
【0057】
第2層80は、蛍光体粒子90を含有する。蛍光体粒子90の種類は、1種とすることもできるし、複数種とすることもできる。蛍光体粒子90は、第2層80中に均一に分散していてもよいが、本発明の実施形態に係る発光装置のように、第2層80の下方ほど高密度であることが特に好ましい。
【0058】
このようにすれば、蛍光体粒子90が第2凹部30の底面と発光素子50の上面とに設けられるため、蛍光体粒子90が積層している部分の厚みが均一となって第2層80から出射する光の輝度や色が場所によらず均一となり、第1層60において光を拡散させる必要性が低下する。このため、第1層60において拡散材粒子70の密度を下げることができるため、光量ロスの抑制が可能となり、光取出し効率や輝度を向上させることが可能となる。
【0059】
蛍光体粒子90は、第2層80を硬化などさせる前は第2層80において均一に分散しているが、自然沈降や遠心沈降などの方法を用いれば、第2層80を硬化させる際に蛍光体粒子90を第2層80において沈降させることができ、第2層80の下方ほど蛍光体粒子90を高密度で存在させることができる。
【0060】
なお、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、第2凹部30と第1凹部20との界面におけるヒケが抑制され、第2層80の厚みが均一に形成されるため、第2層80において均一に分散している蛍光体粒子90を第2層80の底面において均一の厚みで設けることができ、発光面における色ムラを低減させることができる。
【0061】
第2層80としては、例えば透光性樹脂を用いることができる。なお、第2層80として用いることができる透光性樹脂の種類は、第1層60と同じであるため説明を省略する。
【0062】
蛍光体粒子90としては、用いる発光素子の出射光の波長、得ようとする光の色などを考慮して、公知のもののいずれをも用いることができる。例えばY(イットリウム)、Al(アルミニウム)、およびGa(ガーネット)を混合してCeなどで賦活されたYAG系蛍光体や、Eu、Ceなどのランタノイド系元素で主に賦活された、窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体などを用いることができる。
【0063】
蛍光体粒子90の粒径は、特に限定されるものではないが、6μm以上、より好ましくは10μmであることが好ましい。一般に、蛍光体粒子90の粒径が大きいほど励起効率が高くなり発光効率が向上するが、粒径を大きくすると、発光装置の直上方向の青みが増すとともに、側面方向の黄色味も増し、配光色ムラが増えて照明品質が悪化する。
【0064】
したがって、従来は、発光効率と照明品質とがトレードオフの関係にあり、かかる観点から蛍光体粒子90の粒径の大きさが制限されていたが、本発明の実施形態に係る発光装置によれば、配光色ムラを少なくすることができるから、従来よりも高い照明品質を達成しつつ又は従来と同程度の照明品質を維持しつつ、従来よりも粒径の大きい蛍光体粒子90を使用して従来よりも発光効率を向上させることが可能となる。
【0065】
なお、本明細書では、本発明の実施形態に係る発光装置の理解を容易にするため、上記で説明した部材以外の部材の説明を省略するが、本発明の実施形態に係る発光装置において、例えば発光素子50に給電するための導電部材(例えばリードフレーム)などをパッケージ10に設けることができることはいうまでもない。
【0066】
以上説明した本発明の実施形態に係る発光装置によれば、発光面の輝度ムラ・色ムラ及び配光色ムラが少なく、集光装置を用いて集光を行っても優れた照明品質を得ることができる発光装置を提供することができる。
【0067】
本発明の実施形態に係る発光装置は、集光装置を用いて集光を行っても優れた照明品質を得ることができる上に、量産に適した簡易な構成を有しているため、ベースライト、スポットライト、ダウンライトなどの一般照明用の照明器具や、街路灯、道路灯、投光器、看板照明などの種々の商業照明用の照明器具などに好適に利用することができる。
【0068】
本発明の実施形態では、第1凹部20や第2凹部30がパッケージ10により形成されるとしたが、これらの凹部がどのような部材により形成されるのかは特に限定されない。したがって、第1凹部20や第2凹部30は、例えば、リードフレームなどの導電部材により形成されてもよい。
【0069】
なお、本明細書における「実質的に含有しない」には、全く含有しない場合のほか、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で含有している場合も含まれる。このような場合としては、例えば、第1層における透光性樹脂に対する拡散材粒子及び蛍光体粒子の含有量をそれぞれx(wt%)、y(wt%)と定義した場合、(y/x)≦0.1となる場合などを一例として挙げることができる。また、(y/x)≦0.1となる場合の一例としては、例えば、第1層において、透光性樹脂、拡散材粒子、及び蛍光体粒子の重量が、透光性樹脂の重量:拡散材粒子の重量:蛍光体粒子の重量=100:10:(1以下)となる場合を一例として挙げることができる。なお、単に蛍光体粒子と称されているに過ぎないもの、例えば、蛍光体としての一般的な性質は備えているが、第2凹部30に配置された複数の発光素子50から出射される光の波長によっては励起されないものは、本発明の実施形態との関係では蛍光体として機能しないものであるため、第1層60が実質的に含有しない蛍光体粒子から除かれる(このような蛍光体粒子は、本発明の実施形態において、第1層60が実質的に含有しない蛍光体粒子ではなく、第1層60が含有する拡散材粒子70の一例となる)。
【0070】
また、本明細書における「散在」とは、第2層の全領域に光が伝播されるように(実質的に全領域に伝搬されればよい)、適当な間隔をおいて(必ずしも均等な間隔でなくてもよい)、散らばるように配置されていることをいう。
【0071】
また、本明細書における「均一」、「等しい」、「同じ」、「同一」、及び「同程度」などには、完全な一致のほか、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での誤差を含む一致も含まれる。
【実施例1】
【0072】
図2は、本発明の実施例1に係る発光装置を説明する図であり、(a)は本発明の実施例1に係る発光装置の概略平面図であり、(b)は(a)中のA−A断面の概略図である。
【0073】
図2に示すように、本発明の実施例1に係る発光装置は、第1凹部21と、第1凹部21の底面に設けられた第2凹部31と、第2凹部31の底面上に配置された複数の発光素子51と、第1凹部21を封止する拡散材粒子(図示せず)含有の第1層61と、第2凹部31を封止する蛍光体粒子(図示せず)含有の第2層81と、リードフレーム101と、保護素子111と、を備えている。
【0074】
第1層61における透光性樹脂に対する拡散材粒子及び蛍光体粒子の含有量をそれぞれx(wt%)、y(wt%)と定義した場合、y=0となり、(y/x)=0≦0.1が成立する。したがって、第1層61は、蛍光体粒子を実質的に含有していない。
【0075】
第1凹部21と第2凹部31は、パッケージ11に形成されている。また、リードフレーム101には、複数の発光素子51と保護素子111とが実装されている。
【0076】
パッケージ11としては、光反射率の高い反射材(具体的には二酸化チタン)を含有した樹脂材料が用いられている。本発明の実施例1では、この樹脂材料により第2凹部31が形成されている。
【0077】
第1凹部21には、切り欠き部121が設けられている。これにより、保護素子111を実装する領域を第1凹部21の底面において無駄なく設けることが可能とされている。
【0078】
また、第1凹部21には、溝状のアンカー131が設けられている。これにより、第1層61の剥離が抑制されている。
【0079】
第1凹部21と第2凹部31は、その側面が傾斜している。このようにすれば、側面で反射した光が凹部の上面に向かい易くなるため、光取出し効率を向上させることができる。ただし、第1凹部21の側面は、第2凹部31の側面よりも傾斜が浅い。このようにすれば、発光面(本発明の実施例1では第1凹部21の上面)が小さくなり、発光装置を小型化することができる。
【0080】
本発明の実施例1では、パッケージ11として光反射率の高い反射材(具体的には二酸化チタン)を含有した樹脂材料を用いているため、第1凹部21や第2凹部31の側面には特に反射材を設けていないが、設けることも可能である。
【0081】
図2において特に図示しないが、リードフレーム101は第1凹部21から第2凹部31へわたり屈曲して形成されており、第2凹部31における複数の発光素子51を実装する領域と、第1凹部21における保護素子111を実装する領域とは、1つのリードフレーム101により形成されている。
【0082】
本発明の実施例1では、パッケージ11に第2凹部31が形成されている例について説明したが、第2凹部31はリードフレーム101に形成することもできる。この場合は、例えば、リードフレーム101を折り曲げてリードフレーム101に凹部を形成しこれを第2凹部31とすることもできるし、リードフレームの板厚の一部を薄くすることで凹部を形成しこれを第2凹部31とすることもできる。
【0083】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0084】
10、11 パッケージ
20、21 第1凹部
30、31 第2凹部
40 反射材
50、51 発光素子
60、61 第1層
70 拡散材粒子
80、81 第2層
90 蛍光体粒子
101 リードフレーム
111 保護素子
121 切り欠き部
131 アンカー
図1
図2