特許第5835215号(P5835215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835215
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】カップリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 49/02 20060101AFI20151203BHJP
   H02K 49/10 20060101ALI20151203BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20151203BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   H02K49/02 Z
   H02K49/10 A
   F16D7/02 C
   F16H49/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-515854(P2012-515854)
(86)(22)【出願日】2011年5月12日
(86)【国際出願番号】JP2011060961
(87)【国際公開番号】WO2011145509
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2010-113320(P2010-113320)
(32)【優先日】2010年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘光
(72)【発明者】
【氏名】酢谷 淳一
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526738(JP,A)
【文献】 特開平08−135682(JP,A)
【文献】 特開平07−131970(JP,A)
【文献】 実開平03−074186(JP,U)
【文献】 特開2001−224152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/02
F16D 7/02
F16H 49/00
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる磁極が交互に円周方向に並ぶように配置された磁石を含む円筒状の磁石回転体と、
非磁性体からなる導体部とヨークとを含み、前記磁石回転体の内側または外側に前記磁石回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された円筒状のヨーク側部材とを備え、
前記ヨーク側部材の導体部は、少なくとも前記磁石と対向する側において、円周方向に所定の間隔を隔てた状態で回転軸線方向に延びるとともに、円周方向の外周面が前記磁石と対向するように配置される複数の第1導体部を有し、
前記ヨーク側部材のヨークは、前記磁石と対向する側で、かつ、前記複数の第1導体部間の間隙に少なくとも配置されており、
前記第1導体部の各々の円周方向の長さと、前記第1導体部間の間隙に配置される前記ヨークの円周方向の長さとの比率(前記第1導体部の各々の円周方向の長さ/前記ヨークの円周方向の長さ)は、1/1以上2.1/1以下である、カップリング装置。
【請求項2】
前記ヨーク側部材のヨークは、前記磁石と対向する側に配置されており、かつ、前記ヨークの凸部が前記複数の第1導体部間に配置されている、請求項1に記載のカップリング装置。
【請求項3】
前記第1導体部の各々の円周方向の長さと、前記第1導体部間の間隙に配置される前記ヨークの円周方向の長さとの比率は、1.2/1以上1.8/1以下である、請求項1または2に記載のカップリング装置。
【請求項4】
前記磁石回転体と略同じ回転軸線周りに略同じ回転速度で回転可能なように前記磁石回転体と前記ヨーク側部材との間に配置され、前記磁石回転体に対する相対的な位置を変化させることにより、前記磁石回転体の磁石から発せられる磁束の前記ヨーク側部材への伝達量を切り替えることが可能な切替部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカップリング装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記磁石回転体の磁石から発せられる前記磁束を前記ヨーク側部材へ伝達することが可能な強磁性体からなる伝達部と、前記磁石回転体の磁石から発せられる前記磁束を減衰させる減衰部とを含む、請求項4に記載のカップリング装置。
【請求項6】
前記切替部は、円筒状に形成されており、
前記伝達部と前記減衰部とは、円周方向に交互に配置されている、請求項5に記載のカップリング装置。
【請求項7】
前記伝達部および前記減衰部は、共に、前記磁石回転体の磁極と同じ数だけ形成されている、請求項6に記載のカップリング装置。
【請求項8】
前記磁石回転体から発せられる磁束が伝達される状態において、前記伝達部は前記磁石回転体の磁極に対向する位置に配置されるとともに、前記減衰部は前記磁石回転体の磁極同士の境界に対向する位置に配置されるように構成されており、
前記磁石回転体から発せられる磁束が伝達されにくい状態において、前記伝達部は、前記磁石回転体の磁極同士の境界に対向する位置に配置されるとともに、前記減衰部は、前記磁石回転体の磁極に対向する位置に配置されるように構成されている、請求項5〜7のいずれか1項に記載のカップリング装置。
【請求項9】
前記複数の第1導体部は、各々、回転軸線方向に対して所定の角度傾斜している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカップリング装置。
【請求項10】
前記ヨークの前記磁石と対向する面近傍には、複数の溝部または複数の孔部が回転軸線方向に所定の角度傾斜した状態で延びるように形成され、
回転軸線方向に所定の角度傾斜した状態で延びる前記複数の溝部または前記複数の孔部の各々に前記複数の第1導体部の各々が配置されることによって、前記複数の第1導体部は、各々、回転軸線方向に対して所定の角度傾斜している、請求項9に記載のカップリング装置。
【請求項11】
異なる磁極が交互に円周方向に並ぶように配置された磁石を含む円筒状の磁石回転体と、非磁性体からなる導体部とヨークとを含み、前記磁石回転体の内側または外側に前記磁石回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された円筒状のヨーク側部材とを備え、前記ヨーク側部材の導体部は、少なくとも前記磁石と対向する側において、円周方向に所定の間隔を隔てた状態で回転軸線方向に延びるとともに、円周方向の外周面が前記磁石と対向するように配置される複数の第1導体部を有し、前記ヨーク側部材のヨークは、前記磁石と対向する側で、かつ、前記複数の第1導体部間の間隙に少なくとも配置されており、前記第1導体部の各々の円周方向の長さと、前記第1導体部間の間隙に配置される前記ヨークの円周方向の長さとの比率(前記第1導体部の各々の円周方向の長さ/前記ヨークの円周方向の長さ)は、1/1以上2.1/1以下である、カップリング装置の製造方法であって、
外周近傍に外側穴が複数形成されている円盤状のヨーク板材を複数枚準備する工程と、
複数枚の前記ヨーク板材を積層することによって、前記外側穴から構成される穴部が回転軸線方向に延びるように、前記回転軸線方向に延びる円筒状の前記ヨークを形成する工程と、
前記ヨークの前記穴部に前記非磁性体からなる前記導体部の前記複数の第1導体部を形成することによって、前記ヨーク側部材を形成する工程とを備える、カップリング装置の製造方法。
【請求項12】
前記ヨーク側部材を形成する工程は、前記ヨークの前記穴部に前記非磁性体を流し込むことにより、前記非磁性体からなる前記導体部の前記複数の第1導体部を鋳造する工程を含む、請求項11に記載のカップリング装置の製造方法。
【請求項13】
前記ヨーク側部材のヨークは、前記磁石と対向する側に配置されており、かつ、前記ヨークの凸部が前記複数の第1導体部間に配置されている、請求項11または12に記載のカップリング装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カップリング装置に関し、特に、磁石回転体と磁石回転体にカップリングするヨーク側部材とを備えるカップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石回転体と磁石回転体にカップリングするヨーク側部材とを備えるカップリング装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、異なる磁極が交互に円周方向に並ぶように配置された複数の永久磁石を含む円盤状(ディスク状)の駆動部材(磁石回転体)と、駆動部材の永久磁石と対向するように配置された円盤状の被駆動部材(ヨーク側部材)とを備える発進装置(カップリング装置)が開示されている。この特許文献1に記載された発進装置の被駆動部材は、永久磁石と対向する位置に貫通孔が複数形成された導電材(導体部)と、貫通孔に対応する凸部を有し、導電材の駆動部材とは反対側に配置されたコア材(ヨーク)とから構成されている。このコア材が導電材の貫通孔を貫通して凸部の端面が永久磁石に近づくことによって、コア材の凸部(貫通孔)を通る磁束が増加する。これにより、導電材に流れる渦電流が増加することによって、被駆動部材にある程度大きなトルクを発生させることが可能になる。ここで、より大きなトルクを被駆動部材に発生させるためには、駆動部材と被駆動部材とが対向する面積を増加させて、発生する渦電流を増加させる必要があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−135682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発進装置では、駆動部材および被駆動部材が共に円盤状に形成されているので、駆動部材と被駆動部材とが対向する面積を増加させるためには、円盤状の駆動部材および被駆動部材を共に半径方向に増加させる必要がある。このため、上記特許文献1に開示された発進装置では、より大きなトルクを発生させるためには、円盤状の駆動部材および被駆動部材が半径方向に増加することに起因して発進装置が半径方向に大型化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、半径方向に大型化するのを抑制しながら、より大きなトルクを発生することが可能なカップリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の第1の局面によるカップリング装置は、異なる磁極が交互に円周方向に並ぶように配置された磁石を含む円筒状の磁石回転体と、非磁性体からなる導体部とヨークとを含み、磁石回転体の内側または外側に磁石回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された円筒状のヨーク側部材とを備え、ヨーク側部材の導体部は、少なくとも磁石と対向する側において、円周方向に所定の間隔を隔てた状態で回転軸線方向に延びるとともに、円周方向の外周面が磁石と対向するように配置される複数の第1導体部を有し、ヨーク側部材のヨークは、磁石と対向する側で、かつ、複数の第1導体部間の間隙に少なくとも配置されており、第1導体部の各々の円周方向の長さと、第1導体部間の間隙に配置されるヨークの円周方向の長さとの比率(第1導体部の各々の円周方向の長さ/ヨークの円周方向の長さ)は、1/1以上2.1/1以下である。
【0008】
この発明の第1の局面によるカップリング装置では、上記のように、磁石を含む円筒状の磁石回転体と、磁石回転体の内側または外側に磁石回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された円筒状のヨーク側部材とを設けることによって、円筒状のヨーク側部材と円筒状の磁石回転体とを共に回転軸線方向に延びるように形成することにより、磁石回転体とヨーク側部材とが対向する面積を増加させることができる。これにより、磁石回転体とヨーク側部材とが対向する面積を増加させるために磁石回転体およびヨーク側部材を共に半径方向に増加させる必要がないので、より大きなトルクを発生させるためにカップリング装置が半径方向に大型化するのを抑制することができる。また、ヨークを磁石と対向する側で、かつ、複数の第1導体部間の間隙に配置することによって、磁石の対向する側にヨーク全体を覆うように導体部を設ける場合と比べて、ヨークを磁石により近づけることができる。これにより、ヨークに生じる磁束をより増加させることができるので、第1導体部に流れる渦電流をより増加させることができる。したがって、渦電流を利用してヨーク側部材に回転力を伝達する伝達系の場合、ヨーク側部材に発生するトルクをより大きくすることができる。また、渦電流を利用してヨーク側部材に制動力を発生させる制動系の場合、発生するジュール熱(ジュール損)をより増加させることができるので、カップリング装置においてより大きな制動力を発生させることができる。
【0009】
上記第1の局面によるカップリング装置において、好ましくは、ヨーク側部材のヨークは、磁石と対向する側に配置されており、かつ、ヨークの凸部が複数の第1導体部間に配置されている
【0011】
上記比率が1/1以上2.1/1以下であるカップリング装置において、好ましくは、第1導体部の各々の円周方向の長さと、第1導体部間の間隙に配置されるヨークの円周方向の長さとの比率は、1.2/1以上1.8/1以下である
【0012】
上記第1の局面によるカップリング装置において、好ましくは、磁石回転体と略同じ回転軸線周りに略同じ回転速度で回転可能なように磁石回転体とヨーク側部材との間に配置され、磁石回転体に対する相対的な位置を変化させることにより、磁石回転体の磁石から発せられる磁束のヨーク側部材への伝達量を切り替えることが可能な切替部をさらに備える。このように構成すれば、切替部を用いて磁束のヨーク側部材への伝達量を切り替えることによりヨーク側部材に発生する渦電流の増加量を切り替えることができるので、トルクおよびジュール熱をより正確に制御することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、切替部は、磁石回転体の磁石から発せられる磁束をヨーク側部材へ伝達することが可能な強磁性体からなる伝達部と、磁石回転体の磁石から発せられる磁束を減衰させる減衰部とを含む。このように構成すれば、減衰部を通過する磁束(磁束密度)を伝達部を通過する磁束(磁束密度)よりも減少させることができるので、減衰部と磁石回転体との相対的な位置を変化させることによって、磁束のヨーク側部材への到達量を容易に切り替えることができる。
【0014】
上記切替部が伝達部と減衰部とを含むカップリング装置において、好ましくは、切替部は、円筒状に形成されており、伝達部と減衰部とは、円周方向に交互に配置されている。このように構成すれば、異なる磁極が交互に円周方向に並んで配置された磁石回転体に対応するように、伝達部と減衰部とを円周方向に交互に配置することができるので、磁束のヨーク側部材への到達量をより容易に切り替えることができる。
【0015】
上記伝達部と減衰部とが円周方向に交互に配置されているカップリング装置において、好ましくは、伝達部および減衰部は、共に、磁石回転体の磁極と同じ数だけ形成されている。このように構成すれば、磁石回転体の磁極と同じ数だけ形成された伝達部と減衰部とを円周方向に交互に配置することにより、磁石回転体の磁極と切替部の伝達部および減衰部とを一対一で対応させることができる。これにより、磁束が伝達される状態においては、磁石回転体の磁極と切替部の伝達部とが一対一で対応する一方、磁束が伝達されにくい状態においては、磁石回転体の磁極と切替部の減衰部とが一対一で対応するように構成することができるので、磁束のヨーク側部材への到達量を正確に切り替えることができる。
【0016】
上記切替部が伝達部と減衰部とを含むカップリング装置において、好ましくは、磁石回転体から発せられる磁束が伝達される状態において、伝達部は磁石回転体の磁極に対向する位置に配置されるとともに、減衰部は磁石回転体の磁極同士の境界に対向する位置に配置されるように構成されており、磁石回転体から発せられる磁束が伝達されにくい状態において、伝達部は、磁石回転体の磁極同士の境界に対向する位置に配置されるとともに、減衰部は、磁石回転体の磁極に対向する位置に配置されるように構成されている。このように構成すれば、磁束が伝達される状態においては、磁石回転体の磁極に対向する位置に伝達部を配置することによって、磁石回転体からの磁束は伝達部を通過することができる。これにより、磁石回転体からの磁束がヨーク側部材に伝達されるように構成することができる。一方、磁束が伝達されにくい状態においては、磁石回転体の磁極に対向する位置に減衰部を配置することによって、磁石回転体からの磁束は減衰部によって切替部を通過するのが抑制される。これにより、磁石回転体からの磁束がヨーク側部材に伝達されにくくすることができる。
【0017】
上記第1の局面によるカップリング装置において、好ましくは、複数の第1導体部は、各々、回転軸線方向に対して所定の角度傾斜している。このように構成すれば、第1導体部が回転軸線方向に対して平行に延びる場合と比べて、複数の第1導体部の各々に発生する渦電流を略均等にすることができる。これにより、複数の第1導体部の各々に発生するトルクおよびジュール熱を略均等にすることができるので、導体部において局所的にトルクおよびジュール熱が増加するのを抑制することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、ヨークの磁石と対向する面近傍には、複数の溝部または複数の孔部が回転軸線方向に所定の角度傾斜した状態で延びるように形成され、回転軸線方向に所定の角度傾斜した状態で延びる複数の溝部または複数の孔部の各々に複数の第1導体部の各々が配置されることによって、複数の第1導体部は、各々、回転軸線方向に対して所定の角度傾斜している。このように構成すれば、回転軸線方向に所定の角度傾斜した状態で延びる複数の溝部または複数の孔部の各々に複数の第1導体部の各々を配置するだけで、容易に、回転軸線方向に所定の角度傾斜した状態で延びる複数の第1導体部を形成することができる。
【0019】
この発明の第2の局面によるカップリング装置の製造方法は、異なる磁極が交互に円周方向に並ぶように配置された磁石を含む円筒状の磁石回転体と、非磁性体からなる導体部とヨークとを含み、磁石回転体の内側または外側に磁石回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された円筒状のヨーク側部材とを備え、ヨーク側部材の導体部は、少なくとも磁石と対向する側において、円周方向に所定の間隔を隔てた状態で回転軸線方向に延びるとともに、円周方向の外周面が磁石と対向するように配置される複数の第1導体部を有し、ヨーク側部材のヨークは、磁石と対向する側で、かつ、複数の第1導体部間の間隙に少なくとも配置されており、第1導体部の各々の円周方向の長さと、第1導体部間の間隙に配置されるヨークの円周方向の長さとの比率(第1導体部の各々の円周方向の長さ/ヨークの円周方向の長さ)は、1/1以上2.1/1以下である、カップリング装置の製造方法であって、外周近傍に外側穴が複数形成されている円盤状のヨーク板材を複数枚準備する工程と、複数枚のヨーク板材を積層することによって、外側穴から構成される穴部が回転軸線方向に延びるように、回転軸線方向に延びる円筒状のヨークを形成する工程と、ヨークの穴部に非磁性体からなる導体部の複数の第1導体部を形成することによって、ヨーク側部材を形成する工程とを備える。
【0020】
上記第2の局面によるカップリング装置の製造方法において、好ましくは、ヨーク側部材を形成する工程は、ヨークの穴部に非磁性体を流し込むことにより、非磁性体からなる導体部の複数の第1導体部を鋳造する工程を含む。また、上記第2の局面によるカップリング装置の製造方法において、好ましくは、ヨーク側部材のヨークは、磁石と対向する側に配置されており、かつ、ヨークの凸部が複数の第1導体部間に配置されている

【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態によるカップリング装置を示した断面図である。
図2図1に示すカップリング装置をX2側から見た平面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるカップリング装置の負荷側回転体を示した斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態による負荷側回転部の製造工程におけるヨークが積層された状態を示した断面図である。
図5】本発明の第1実施形態による負荷側回転部の製造工程における導体部が金型鋳造された状態を示した断面図である。
図6】本発明の第1実施形態による負荷側回転部の製造工程における金型を取り外した状態を示した断面図である。
図7】本発明の第1実施形態による負荷側回転部の製造工程におけるヨークの外周面を切削した状態を示した断面図である。
図8】本発明の比較例1を示した平面図である。
図9】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験に用いる測定系を示した概略図である。
図10】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例1と比較例1との相対回転数に対するトルクを示した表である。
図11】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例1と比較例1との相対回転数に対するトルクを示したグラフである。
図12】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例1と比較例1とのトルクに対するジュール損を示した表である。
図13】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例1と比較例1とのトルクに対するジュール損を示したグラフである。
図14】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例1と比較例1との相対回転数に対するジュール損を示した表である。
図15】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例1と比較例1との相対回転数に対するジュール損を示したグラフである。
図16】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例2〜8と比較例2との相対回転数に対するトルクを示した表である。
図17】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例2〜8と比較例2との相対回転数に対するトルクを示したグラフである。
図18】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例4および9と比較例2との相対回転数に対するトルクを示した表である。
図19】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例4および9と比較例2との相対回転数に対するトルクを示したグラフである。
図20】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例10および11と比較例3および4との相対回転数に対するトルクを示した表である。
図21】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例10および11と比較例3および4との相対回転数に対するトルクを示したグラフである。
図22】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例10および11と比較例3および4とのトルクに対するジュール損を示した表である。
図23】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例10および11と比較例3および4とのトルクに対するジュール損を示したグラフである。
図24】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例10および11と比較例3および4との相対回転数に対するジュール損を示した表である。
図25】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った確認実験における実施例10および11と比較例3および4との相対回転数に対するジュール損を示したグラフである。
図26】本発明の第2実施形態によるカップリング装置を示した断面図である。
図27図26に示すカップリング装置をX2側から見た平面図である。
図28図27に示すスイッチ部材のモータ側回転体に対する相対的な位置を変化させた状態を示した平面図である。
図29】本発明の第1実施形態の変形例によるカップリング装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
まず、図1図3を参照して、本発明の第1実施形態によるカップリング装置1の構造について説明する。
【0024】
本発明の第1実施形態によるカップリング装置1は、図1に示すように、磁石側部10と、ヨーク側部20とからなる。磁石側部10は、図示しないモータに一方端部側(X1側)が接続された軸部10aと、軸部10aの他方端部側(X2側)に設けられた磁石側回転体30とを含む。また、ヨーク側部20は、駆動部などからなる図示しない負荷部に一方端部側(X2側)が接続された軸部20aと、軸部20aの他方端部側に設けられたヨーク側部材40とを含む。つまり、磁石側部10は、モータ側に接続されているとともに、ヨーク側部20は、負荷部側に接続されている。また、軸部10aと軸部20aとは、X方向に延びる略同一の回転軸線300を回転中心として回転するように構成されている。なお、磁石側回転体30は、本発明の「磁石回転体」の一例である。
【0025】
ここで、磁石側部10をモータ側ではなく負荷部側に接続するとともに、ヨーク側部20を負荷部側ではなくモータ側に接続してもよい。なお、これ以降の説明においては、磁石側部10をモータ側に接続するとともに、ヨーク側部20を負荷部側に接続した例について説明する。
【0026】
また、磁石側回転体30は、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体からなり、X2側の部分が凹状の円筒状に形成されている。また、磁石側回転体30は、軸部10aが挿入される軸孔部30aを有する。この軸孔部30aに軸部10aが挿入されることによって、軸部10aの回転に伴い磁石側回転体30も回転軸線300を回転中心として回転するように構成されている。なお、磁石側回転体30の凹状の内周面30bにおける内径L1は、約90mmであり、磁石側回転体30の外径L2は、約102mmである。
【0027】
また、図2に示すように、磁石側回転体30には、12個の磁石31が凹状の内周面30bの円周方向に沿って異なる磁極が交互に並ぶように配置されている。この12個の磁石31は、図1に示すように、回転軸線300に対して平行に延びるように配置されている。
【0028】
具体的には、図2に示すように、12個の磁石31は、N極が回転軸線300(図1参照)側に配置された磁石31aと、S極が回転軸線300側に配置された磁石31bとから構成されている。そして、磁石31aと磁石31bとが、交互に略等角度(約30度)間隔で磁石側回転体30の円筒状の内周面30bに円周方向に沿って並ぶように配置されている。なお、図2においては、回転軸線300側の磁極のみを図示しているとともに、後述するX2側の短絡部42bの図示を省略している。また、図1に示すように、12個の磁石31は、約5mmの半径方向の厚みW1を有する。また、図2に示すように、磁束は磁石31aと、磁石31aと隣接する磁石31bとの間を流れるように構成されている。
【0029】
また、ヨーク側部材40は、回転軸線300を回転中心として回転可能なように構成されており、円筒状に形成されている。また、ヨーク側部材40は、12個の磁石31が設けられた磁石側回転体30の内側に配置されており、磁石側回転体30に対して所定の間隔を隔てて非接触の状態でカップリングして相対的に回転することが可能なように構成されている。なお、ヨーク側部材40と磁石側回転体30との間隔(クリアランス)は、約1mmである。
【0030】
また、ヨーク側部材40は、珪素鋼板が積層されることによって形成されたヨーク41と、主に非磁性体であるAlまたはCuを含む合金からなる導体部42とから構成されている。なお、珪素鋼板はSiを含むFe合金であり、強磁性体で、かつ、磁束を透過させやすい(透磁率が大きい)性質を有する。また、図1に示すように、ヨーク41は、約78mmの外径L3と、約60mmのX方向の長さL4とを有する円筒状に形成されている。また、ヨーク41は、軸部20aが挿入される軸孔部41aを有する。この軸孔部41aに軸部20aが挿入されることによって、軸部20aの回転に伴いヨーク41(ヨーク側部材40)も回転軸線300を回転中心として回転するように構成されている。また、ヨーク41の外周面41bは、磁石側回転体30の内周面30bに配置された12個の磁石31と対向するように配置されている。
【0031】
また、図2に示すように、ヨーク41の外周面41bには、44箇所の溝部41cが、略等角度(約8.2度)で配置されるとともに、回転軸線300の延びる方向(図1のX方向)に延びるように形成されている。すなわち、溝部41cの間の間隙に、溝部41cが形成されていない44箇所の凸部41dがそれぞれ位置するように構成されている。ここで、凸部41dは平面的に見て扇形形状に形成されており、扇形形状の凸部41dの両外側面の間の角度θ1は約3.7度になるように構成されている。一方、溝部41cの両内側面の間の角度θ2は、約4.5度になるように構成されている。これにより、凸部41dの外周の長さが約0.802mm(78mm×3.7度/360度)になるとともに、溝部41cが形成されている部分の外周の長さが約0.975mm(78mm×4.5度/360度)になるように構成されている。すなわち、溝部41cの外周の長さは、凸部41dの外周の長さの約1.2倍になるように構成されている。
【0032】
また、図3に示すように、44箇所の溝部41cは、X方向に延びる回転軸線300に対して、角度θ3で傾斜(スキュー)するように構成されている。また、44箇所の溝部41cは、約9mmの半径方向の深さを有する。
【0033】
ここで、第1実施形態では、図1に示すように、導体部42は、ヨーク41の44箇所の溝部41cの各々に配置される44個の軸方向導体部42a(図2参照)と、ヨーク41および軸方向導体部42aのX方向の両端部にそれぞれ形成される一対の短絡部42bとから構成されている。この軸方向導体部42aは、回転軸線300の延びる方向(X方向)に延びるように形成されている。なお、軸方向導体部42aは、本発明の「第1導体部」の一例であり、短絡部42bは、本発明の「第2導体部」の一例である。
【0034】
また、軸方向導体部42aは、図2に示すように、各々、ヨーク41の外周面41b近傍から、溝部41cの回転軸線300側の底部にまで配置されている。これにより、導体部42は、半径方向に約9.0mmの厚みW2(図1参照)を有する。したがって、導体部42の半径方向の厚みW2(約9.0mm)が磁石31の半径方向の厚みW1(約5.0mm)の約1.8倍になるように構成されている。また、上記のように軸方向導体部42aが配置される溝部41cの外周の長さ(約0.975mm)が、ヨーク41の凸部41dの外周の長さ(約0.802mm)の約1.2倍になるように構成されているため、軸方向導体部42aの外周の長さは、ヨーク41の凸部41dの外周の長さの約1.2倍になるように構成されている。
【0035】
また、図3に示すように、44箇所の溝部41cがX方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3で傾斜するように構成されていることによって、44個の軸方向導体部42aも同様に、X方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3で傾斜するように構成されている。また、44箇所の溝部41cに配置される44個の軸方向導体部42a間には、ヨーク41の凸部41dが配置されている。
【0036】
また、一対の短絡部42bは、それぞれ、44個の軸方向導体部42aのX1側の端部とX2側の端部とに配置されている。すなわち、一対の短絡部42bは、44個の軸方向導体部42aとヨーク41とをX方向の両側から挟み込むように配置されている。また、一対の短絡部42bは円環状に形成されており、44個の軸方向導体部42aを円周方向において接続するように構成されている。さらに、44個の軸方向導体部42aと一対の短絡部42bとは、一体的に形成されている。なお、一対の短絡部42bの半径方向の厚みL5(図1参照)は、約10mmである。
【0037】
また、カップリング装置1では、磁石側回転体30が回転した際、ヨーク41の凸部41dにおいて磁石31からの磁束が変化するように構成されている。そして、この磁束の変化に基づいて、44個の軸方向導体部42aおよび一対の短絡部42bに渦電流が発生するように構成されている。この渦電流によって、磁石側回転体30の回転方向と同じ回転方向に働く力が44個の軸方向導体部42aの各々に加えられて、ヨーク側部材40は、磁石側回転体30に対して非接触の状態で磁石側回転体30と同じ回転方向に相対的に回転されるように構成されている。この際、磁石側回転体30の回転数とヨーク側部材40の回転数とに回転数差(相対回転数)が生じることによって、磁石側回転体30から供給されるエネルギーとヨーク側部材40に伝えられるエネルギーとに差が生じる。この差に対応するエネルギーが力および熱に変換されることによって、ヨーク側部材40にトルクおよびジュール熱が発生する。
【0038】
一方、渦電流によって、磁石側回転体30の回転方向と同じ回転方向に働く力が44個の軸方向導体部42aの各々に加えられた際に、ヨーク側部材40が、磁石側回転体30に対して回転しない場合がある。この場合には、ヨーク側部材40にジュール熱が発生するように構成されている。
【0039】
なお、渦電流は、2つの軸方向導体部42aと一対の短絡部42bとによって構成されるループ状の経路を流れるように構成されている。
【0040】
次に、図3図7を参照して、本発明の第1実施形態によるヨーク側部材40の製造方法について説明する。
【0041】
まず、約0.5mmの板厚の円盤状の珪素鋼板(図示せず)を準備する。なお、円盤状の珪素鋼板には、中心に軸孔部41aに対応する中央穴が形成されているとともに、外周近傍に44箇所の溝部41cに対応する外側穴が44箇所形成されている。そして、円盤状の珪素鋼板を約120枚積層することによって、図4に示すように、軸孔部41aを有し、回転軸線300の延びる方向(X方向)に延びる円筒状のヨーク41を形成する。この際、約120枚の珪素鋼板の外側穴から構成される44箇所の穴部41eがX方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3(図3参照)で傾斜するように、珪素鋼板を積層する。
【0042】
その後、ヨーク41のX1側およびX2側に、それぞれ、金型50および51を配置する。この金型50には、X1側の短絡部42bが形成される合わせ面50aが形成されているとともに、金型51には、X2側の短絡部42bが形成される合わせ面51aが形成されている。さらに、金型50には、合わせ面50aおよび51aとヨーク41の穴部41eとにAlまたはCuを含む合金を流し込むための注入穴50bが形成されている。
【0043】
そして、図5に示すように、合わせ面50aおよび51aとヨーク41の穴部41eとに、注入穴50bを介して、約700℃以上約800℃以下に熱せられたAlまたはCuを含む合金を流し込む。これにより、AlまたはCuを含む合金からなる導体部42が鋳造される。この際、44箇所の穴部41eにおいて、導体部42の44個の軸方向導体部42aの各々が形成されるとともに、合わせ面50aおよび51aにおいて、導体部42の一対の短絡部42bの各々が形成される。これにより、44個の軸方向導体部42aと一対の短絡部42bとが一体的に形成される。
【0044】
その後、図6に示すように、ヨーク41のX1側およびX2側に配置されていた金型50および51を取り外す。そして、ヨーク41の外周面41bを所定の量だけ切削することによって、44箇所の穴部41eの側面の一部を削る。これにより、図7に示すように、軸方向導体部42aが個々に配置された44箇所の溝部41cが形成される。このようにして、ヨーク側部材40が形成される。
【0045】
第1実施形態では、上記のように、12個の磁石31を含む円筒状の磁石側回転体30と、磁石側回転体30の凹状の内周面30bに覆われるように磁石側回転体30の内側に配置され、磁石側回転体30に対して非接触の状態で相対的に回転することが可能に構成された円筒状のヨーク側部材40とを設ける。さらに、磁石側回転体30とヨーク側部材40とを共に回転軸線300の延びる方向に延びるように構成するとともに、略同一の回転軸線300上で回転するように構成することによって、磁石側回転体30とヨーク側部材40とが対向する面積を増加させることができる。これにより、磁石側回転体30とヨーク側部材40とが対向する面積を増加させるために磁石側回転体30およびヨーク側部材40を共に半径方向に増加させる必要がないので、より大きなトルクを発生させるためにカップリング装置1が半径方向に大型化するのを抑制することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、ヨーク41の外周面41b側に位置する凸部41dを、12個の磁石31と対向する側で、かつ、44個の軸方向導体部42a(溝部41c)間に配置することによって、ヨーク41の外周面41b側にヨーク41全体を覆うように導体部を設ける場合と比べて、ヨーク41を12個の磁石31により近づけることができる。これにより、ヨーク41に生じる磁束をより増加させることができるので、軸方向導体部42aに流れる渦電流をより増加させることができる。したがって、渦電流を利用してヨーク側部材40に回転力を伝達する伝達系の場合、ヨーク側部材40に発生するトルクをより大きくすることができる。また、渦電流を利用してヨーク側部材40に制動力を発生させる制動系の場合、発生するジュール熱(ジュール損)をより増加させることができるので、カップリング装置1においてより大きな制動力を発生させることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、44個の軸方向導体部42aを、円周方向に略等角度(約8.2度)で配置された状態で、回転軸線300の延びる方向に延びるように形成することによって、44個の軸方向導体部42aの各々に発生する渦電流が互いに略均等となった状態で回転軸線300の延びる方向に沿って流すことができるので、円周方向のみならず回転軸線300の延びる方向においても、略均等なトルクおよびジュール熱を発生させることができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、軸方向導体部42aの外周の長さ(約0.975mm)をヨーク41の凸部41dの外周の長さ(約0.802mm)の約1.2倍になるように構成することによって、軸方向導体部42aの外周の長さをヨーク41の凸部41dの外周の長さよりも小さくする場合と比べて、軸方向導体部42aの円周方向の断面積を増加させることができるので、軸方向導体部42aの電気抵抗を減少させることができる。これにより、軸方向導体部42aを流れる渦電流を増加させることができるので、トルクおよびジュール熱をより大きくすることができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、軸方向導体部42aの外周の長さをヨーク41の凸部41dの外周の長さの約1.2倍になるように構成することによって、軸方向導体部42aの外周の長さをヨーク41の凸部41dの外周の長さの2倍よりも大きくする場合と比べて、12個の磁石31から発せられる磁束がヨーク41の凸部41dで飽和するのを抑制することができるので、軸方向導体部42aを流れる渦電流が減少するのを抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、軸方向導体部42aの半径方向の厚みW2(約9.0mm)を磁石31の半径方向の厚みW1(約5.0mm)の約1.8倍にすることによって、軸方向導体部42aの円周方向の断面積を増加させることができるので、軸方向導体部42aの電気抵抗を減少させることができる。これにより、軸方向導体部42aを流れる渦電流を増加させることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、円環状の一対の短絡部42bを、それぞれ、44個の軸方向導体部42aのX1側の端部とX2側の端部とに配置することによって、一対の軸方向導体部42aと一対の短絡部42bとによって、ループ状の経路を構成することができる。これにより、異なる軸方向導体部42aの間で渦電流を発生させることができる。また、一対の短絡部42bを44個の軸方向導体部42aのX1側の端部とX2側の端部とに配置することによって、一対の短絡部42bがX方向の両端部に配置されていない場合と比べて、渦電流が流れる回転軸線300の延びる方向の長さをより大きくすることができる。これにより、より回転軸線300の延びる方向の広い範囲でヨーク側部材40にトルクおよびジュール熱を発生させることができるので、ヨーク側部材40のトルクおよびジュール熱をさらに大きくすることができる。また、一対の短絡部42bを44個の軸方向導体部42aのX1側の端部とX2側の端部とに配置することによって、異なる軸方向導体部42aと、両端部の短絡部42bとの間に渦電流が流れるように構成することができる。これにより、回転軸線300の延びる方向のさらに広い範囲で、ヨーク側部材40にトルクおよびジュール熱を発生させることができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、44個の軸方向導体部42aと一対の短絡部42bとを一体的に形成すれば、44個の軸方向導体部42aと一対の短絡部42bとの間の接触抵抗を減少させることができるので、導体部42により大きな渦電流を発生させることができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、44箇所の溝部41cをヨーク41の外周面41bで、かつ、回転軸線300の延びる方向(X方向)に延びるように形成するとともに、44箇所の溝部41cの各々に44個の軸方向導体部42aを配置することによって、回転軸線300の延びる方向に延びる44箇所の溝部41cに44個の軸方向導体部42aの各々を配置するだけで、容易に、円周方向に所定の間隔を隔てた状態で回転軸線300の延びる方向に延びる44個の軸方向導体部42aを形成することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、導体部42が主に非磁性体であるAlを含む合金からなるとともに、ヨーク41が珪素鋼板を積層することによって形成されるように構成することによって、非磁性体のAlを含む合金と、強磁性体で透磁率の高いSiを含むFe合金とを用いることにより、軸方向導体部42aを流れる渦電流をさらに増加させることができる。また、Alは、同じ非磁性体であるCuよりも融点が低いので、導体部42を鋳造などにより形成する場合に、より容易に、導体部42を形成することができる。
【0055】
また、第1実施形態では、上記のように、導体部42が主に非磁性体であるCuを含む合金からなるとともに、ヨーク41が珪素鋼板を積層することによって形成されるように構成することによって、非磁性体のCuを含む合金と、強磁性体で透磁率の高いSiを含むFe合金とを用いることにより、軸方向導体部42aを流れる渦電流をさらに増加させることができる。また、Cuは、同じ非磁性体であるAlよりも電気抵抗が小さいので、軸方向導体部42aに流れる渦電流をさらに増加させることができる。
【0056】
また、第1実施形態では、上記のように、44個の軸方向導体部42aをX方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3で傾斜させることによって、軸方向導体部42aが回転軸線300の延びる方向に対して平行に延びる場合と比べて、44個の軸方向導体部42aの各々に発生する渦電流を略均等にすることができる。これにより、44個の軸方向導体部42aの各々に発生するトルクおよびジュール熱を略均等にすることができるので、導体部42において局所的にトルクおよびジュール熱が増加するのを抑制することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、44箇所の溝部41cをX方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3で傾斜するように構成することによって、44個の軸方向導体部42aも同様に、X方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3で傾斜するように構成すれば、回転軸線300に対して角度θ3で傾斜した状態で延びる44箇所の溝部41cの各々に44個の軸方向導体部42aの各々を配置するだけで、容易に、回転軸線300に対して角度θ3で傾斜した状態で延びる44個の軸方向導体部42aを形成することができる。
【0058】
[実施例]
次に、図1図2および図8図15を参照して、上記第1実施形態によるカップリング装置1の効果を確認するために行った相対回転数−トルク測定、トルク−ジュール損測定、および、相対回転数−ジュール損測定の各確認実験について説明する。
【0059】
以下に説明する相対回転数−トルク測定、トルク−ジュール損測定、および、相対回転数−ジュール損測定では、実施例1として上記第1実施形態のカップリング装置1を用いた。具体的には、実施例1として、図2に示すように、ヨーク側部20のヨーク側部材40が、44個の軸方向導体部42aの間にヨーク41の凸部41dが配置されたカップリング装置1を用いた。この際、導体部42は、非磁性体のAlを含む合金からなる材料を用いた。
【0060】
一方、実施例1に対する比較例1として、図8に示すカップリング装置101を用いた。なお、比較例1では、ヨーク側部120のヨーク側部材140が、円筒状のヨーク141の外周面141bを覆うように配置された導体部142を有するように形成した。すなわち、比較例1(カップリング装置101)では、実施例1(カップリング装置1)における軸方向導体部42aとヨーク41の凸部41dとが交互に配置された構造とは異なり、凸部を有さずに導体部142のみを有する構造とした。また、この導体部142は、半径方向に略均等な2mmの厚みW3を有するとともに、非磁性体のCuからなる材料を用いた。このCuからなる比較例1の導体部142は、Alを含む合金からなる実施例1の導体部42と比べて電気抵抗が小さい。これにより、同じ条件下においては、比較例1の導体部142は、実施例1の導体部42と比べて流れる渦電流が増加する。また、比較例1のカップリング装置101のその他の構成は、実施例1のカップリング装置1の構成と同様である。なお、図8においては、回転軸線300(図1参照)側の磁極のみを図示している。また、磁束は磁石31aと、磁石31aと隣接する磁石31bとの間を流れるように構成されている。
【0061】
なお、実施例1(カップリング装置1)および比較例1(カップリング装置101)の共通の寸法として、磁石側回転体30の凹状の内周面30bにおける内径L1(図1参照)を90mmとし、磁石側回転体30の外径L2(図1参照)を102mmとした。また、12個の磁石31における半径方向の厚みW1(図1参照)を5mmとした。また、ヨーク側部材40(140)と磁石側回転体30との間隔(クリアランス)を1mmとした。また、ヨーク41(141)のX方向の長さL4(図1参照)を60mmとした。
【0062】
また、実施例1におけるヨーク41の直径L3(図1参照)を78mmの円筒状に形成した一方、比較例1におけるヨーク141の直径を74mmの円筒状に形成した。さらに、実施例1の44箇所の溝部41cにおける半径方向の深さを9.0mmとし、導体部42における半径方向の厚みW2を9.0mmとした。また、一対の短絡部42bにおける半径方向の厚みL5(図1参照)を10mmとした。
【0063】
また、相対回転数−トルク測定、トルク−ジュール損測定、および、相対回転数−ジュール損測定の各確認実験においては、図9に示す測定系を用いた。この測定系では、磁石側部10を負荷部に接続するとともに、ヨーク側部20をモータに接続した。具体的には、測定系は、第1実施形態におけるカップリング装置1と、カップリング装置1が内部に配置されたハウジング102と、軸部10aの一方端部(X1側)に接続された負荷部としてのパウダーブレーキ103と、軸部20aの一方端部(X2側)に接続されたモータ104と、ヨーク側部材40とモータ104との間の軸部20aに配置された測定器105とによって構成した。なお、実施例では、上記第1実施形態とは異なり、磁石側部10を負荷部(パウダーブレーキ103)側に接続するとともに、ヨーク側部20をモータ104側に接続して測定系を構成した。
【0064】
ここで、測定系の詳細について説明する。ハウジング102は、円筒状の形状を有するとともに、内部にカップリング装置1が配置されている。また、ハウジング102のX1側の側部およびX2側の側部には、それぞれ、穴部102aおよび102bが形成されている。この穴部102aおよび102bは、それぞれ、軸部10aおよび20aがX方向に貫通するために形成されている。また、穴部102aの内部および穴部102bの内部には、共に、ベアリング106が配置されている。さらに、穴部102aおよび102bの外側(X1側)にも、ベアリング106が配置されている。
【0065】
軸部10aの一方端部(X1側)に接続されたパウダーブレーキ103は、内部に配置されたロータ103aと、ロータ103aと軸部10aとの間に配置された図示しない磁性粉体と、図示しない励磁コイルとを含んでいる。このパウダーブレーキ103は、励磁コイルに電流を流して磁界を発生させることによって、ロータ103aと軸部10aとの間の磁性粉体によりロータ103aと軸部10aとが接続されて、軸部10aの回転がロータ103aに伝達されるように構成されている。また、パウダーブレーキ103は、励磁コイルに流す電流の大きさに応じて、発生する制動力が大きくなるように構成されている。なお、図9に示す測定系のパウダーブレーキ103では、後述する測定時に発生するトルクよりも大きなトルクが発生するように、励磁コイルに流す電流が制御されるように構成されている。これにより、パウダーブレーキ103によって軸部10aが回転されずに固定されるように構成されている。
【0066】
軸部20aの一方端部(X2側)に接続されたモータ104は、軸部20aを所定の回転数で回転軸線300(図1参照)回りに回転させるように構成されている。なお、カップリング装置1におけるエネルギーの損失の原因として、ジュール熱による損失(ジュール損)や、ヨーク41におけるヒステリシス損などが挙げられる。ここで、カップリング装置1では、ジュール損が他のヒステリシス損などの損失に比べて非常に大きいので、カップリング装置1におけるエネルギーの損失をジュール損による損失と近似することが可能である。
【0067】
また、ジュール損は、モータ104から軸部20aに加えられる入力エネルギーと、軸部10aから出力される出力エネルギーの差から求められる。ここで、軸部10aは固定されているため、モータ104に入力エネルギーとして加えられる電力をジュール損と近似することが可能である。
【0068】
測定器105は、軸部20aに配置されており、軸部20aの回転軸線300回りの回転数と、軸部20a加えられるトルクとを測定可能に構成されている。ここで、軸部10aは固定されているため、測定器105において測定された軸部20aの回転数が、磁石側回転体30の回転数とヨーク側部材40の回転数との回転数差(相対回転数)になるように構成されている。
【0069】
なお、比較例1においては、図9のカップリング装置1を図8に示すカップリング装置101に置き換える点以外は、同様の構成を有する測定系を用いて確認実験を行った。
【0070】
(相対回転数−トルク測定)
まず、相対回転数−トルク測定について説明する。この相対回転数−トルク測定では、実施例1と比較例1とにおける、磁石側回転体30の回転数とヨーク側部材40(140)の回転数との回転数差(相対回転数)に対するヨーク側部材40(140)におけるトルクの大きさを、図9に示した測定系を用いて測定した。この際、相対回転数が90rpm(min−1)、180rpm、450rpmおよび900rpmの場合におけるそれぞれのトルクを測定した。
【0071】
図10および図11に示した相対回転数−トルク測定の測定結果としては、相対回転数が90rpm、180rpm、450rpmおよび900rpmのいずれの場合においても、実施例1のカップリング装置1は、比較例1のカップリング装置101よりもトルクが大きくなった。
【0072】
具体的には、相対回転数(回転数差)が90rpmの場合、実施例1(カップリング装置1)では、トルクは16.5N×mになり、比較例1(カップリング装置101)では、トルクは6.0N×mになった。また、相対回転数が180rpmの場合、実施例1では、トルクは29.6N×mになり、比較例1では、トルクは11.8N×mになった。また、相対回転数が450rpmの場合、実施例1では、トルクは48.3N×mになり、比較例1では、トルクは27.3N×mになった。また、相対回転数が900rpmの場合、実施例1では、トルクは49.2N×mになり、比較例1では、トルクは45.2N×mになった。
【0073】
これにより、実施例1(カップリング装置1)は、比較例1(カップリング装置101)よりも、単位回転数差当たりのヨーク側部材40におけるトルクが大きくなることが判明した。これは、実施例1では、ヨーク41を12個の磁石31により近づけることができ、ヨーク41に生じる磁束をより増加させることができるので、軸方向導体部42aに流れる渦電流をより増加させることができる。この結果、相対回転数に対するヨーク側部材40におけるトルクが大きくなったと考えられる。また、図11に示すように、450rpm以下の低い相対回転数において、実施例1での単位回転数差当たりのトルクの増加量は、比較例1での単位回転数差当たりのトルクの増加量と比べて大きくなった。これにより、実施例1のカップリング装置1は、450rpm以下の低い相対回転数において大きなトルクを得るためにより有効な構成であると考えられる。
【0074】
(トルク−ジュール損測定)
次に、トルク−ジュール損測定について説明する。このトルク−ジュール損測定では、実施例1と比較例1とにおける、ヨーク側部材40(140)のトルクに対して発生するジュール熱(ジュール損)を、図9に示した測定系を用いて測定した。
【0075】
図12および図13に示したトルク−ジュール損測定の測定結果としては、実施例1(カップリング装置1)において、トルクが16.5N×mの場合、ジュール損が156.5Wになり、トルクが29.6N×mの場合、ジュール損が558.9Wになり、トルクが48.3N×mの場合、ジュール損が2273.5Wになった。一方、比較例1(カップリング装置101)において、トルクが6.0N×mの場合、ジュール損が56.6Wになり、トルクが11.8N×mの場合、ジュール損が222.4Wになった。また、トルクが27.3N×mの場合、ジュール損が1287.5Wになり、トルクが45.2N×mの場合、ジュール損が4269.4Wになった。
【0076】
これにより、図13に示すように、実施例1は、比較例1よりもヨーク側部材40(140)におけるトルクに対するジュール損が減少することが判明した。この結果から、実施例1は、比較例1よりも所定のトルクを得る際に失われるエネルギーが小さいので、磁石側回転体30からの入力エネルギーをトルクに効率的に変換することができることが判明した。これは、実施例1は、軸方向導体部42aに流れる渦電流をより増加させることができるので、所定のトルクを発生させるために相対回転数(回転数差)を比較例1よりも大きくする必要がなく、より少ない相対回転数で同じトルクが得られる分、ジュール損を減らせることが可能であることを意味すると考えられる。また、トルクの増加と共に、実施例1のカップリング装置1では、比較例1のカップリング装置101よりもジュール損の増加量が小さく抑えられた。これにより、実施例1では、より大きなトルクを得るために有効な構成であると考えられる。
【0077】
(相対回転数−ジュール損測定)
次に、相対回転数−ジュール損測定について説明する。この相対回転数−ジュール損測定では、実施例1と比較例1とにおける、相対回転数(回転数差)に対する発生するジュール熱(ジュール損)を、図9に示した測定系を用いて測定した。この際、相対回転数が90rpm、180rpm、450rpmおよび900rpmの場合におけるそれぞれのトルクを測定した。
【0078】
図14および図15に示した相対回転数−ジュール損測定の測定結果としては、相対回転数が90rpm、180rpm、450rpmおよび900rpmのいずれの場合においても、実施例1のカップリング装置1は、比較例1のカップリング装置101よりも相対回転数に対するジュール損が増加した。
【0079】
具体的には、相対回転数(回転数差)が90rpmの場合、実施例1(カップリング装置1)の装置全体におけるジュール損は156.5Wになった。一方、比較例1(カップリング装置101)の装置全体におけるジュール損は56.6Wになった。また、相対回転数が180rpmの場合、実施例1の装置全体におけるジュール損は558.9Wになった。一方、比較例1の装置全体におけるジュール損は222.4Wになった。
【0080】
また、相対回転数が450rpmの場合、実施例1の装置全体におけるジュール損は2273.5Wになった。一方、比較例1の装置全体におけるジュール損は1287.5Wになった。また、相対回転数が900rpmの場合、実施例1の装置全体におけるジュール損は4535.7Wになった。一方、比較例1の装置全体におけるジュール損は4269.4Wになった。
【0081】
これにより、実施例1は、比較例1よりも相対回転数(回転数差)に対するジュール損が増加することが判明した。すなわち、実施例1は、ジュール損をより増加させることができるので、比較例1よりもより大きな制動力を発生させることができることが判明した。これは、実施例1のカップリング装置1では、軸方向導体部42aに流れる渦電流をより容易に増加させることができるので、渦電流の増加に伴う制動力を容易に得ることが可能であることを意味すると考えられる。
【0082】
上述した相対回転数−トルク測定、トルク−ジュール損測定および相対回転数−ジュール損測定の結果から、44個の軸方向導体部42aの間にヨーク41の凸部41dが配置された実施例1は、比較例1と比べて、軸方向導体部42aに流れる渦電流をより増加させることができることが確認できた。したがって、渦電流を利用してヨーク側部材40に回転力を伝達する伝達系の場合、磁石側回転体30とヨーク側部材40との回転数の回転数差(相対回転数)に対するヨーク側部材40のトルクをより大きくすることができるので、実施例1のカップリング装置1においてより力を伝達させることができることが確認できた。また、渦電流を利用してヨーク側部材40に制動力を発生させる制動系の場合、磁石側回転体30とヨーク側部材40との回転数の差に対するジュール熱をより増加させることができるので、実施例1のカップリング装置1においてより大きな制動力を発生させることができることが確認できた。
【0083】
次に、図1図2図8図9および図16図19を参照して、上記第1実施形態によるカップリング装置1の軸方向導体部の円周方向の長さとヨークの円周方向の長さとの比率を異ならせた場合の相対回転数−トルク測定と、軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとの比率を異ならせた場合の相対回転数−トルク測定とについて説明する。
【0084】
以下に説明する軸方向導体部の円周方向の長さとヨークの円周方向の長さとの比率を異ならせた場合の相対回転数−トルク測定と、軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとの比率を異ならせた場合の相対回転数−トルク測定とでは、実施例2〜9として、上記第1実施形態のカップリング装置1(図1および図2参照)と同様の構成を有する一方、第1実施形態のカップリング装置1とは寸法が異なるカップリング装置を用いた。また、比較例2として、上記比較例1のカップリング装置101(図8参照)と同様の構成を有する一方、比較例1のカップリング装置101とは寸法が異なるカップリング装置を用いた。具体的には、図1に示すように、実施例2〜9および比較例2のカップリング装置は、モータ側回転体の凹状の内側面における内径L1を73mmとし、モータ側回転体の外径L2を83mmとした。また、ヨーク側部材とモータ側回転体との間隔(クリアランス)を1mmとした。また、ヨークの直径L3を63mmとし、X方向の長さL4を30mmとした。また、実施例2〜9において、溝部の半径方向の深さを6.8mmとし、軸方向導体部の半径方向の厚みW2を6.3mmとするとともに、短絡部の半径方向の厚みL5を8mmとした。
【0085】
ここで、実施例2〜8は、軸方向導体部の円周方向の長さとヨークの円周方向の長さとの比率が各々異なる値になるように構成した。具体的には、図16に示すように、実施例2は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1.4の比率になるように設定した。また、実施例3は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1の比率になるように設定した。また、実施例4は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1.2:1の比率になるように設定した。なお、実施例4の軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとの比率(1.2:1)は、上記第1実施形態のカップリング装置1における軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとの比率と同じ比率である。
【0086】
また、実施例5は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1.4:1の比率になるように設定した。また、実施例6は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1.8:1の比率になるように設定した。また、実施例7は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが2.1:1の比率になるように設定した。また、実施例8は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが3.4:1の比率になるように設定した。
【0087】
また、実施例4および9では、軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとの比率が各々異なる値になるように構成した。具体的には、実施例4は、軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとが1.7:1の比率になるように設定した。なお、実施例4の軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとの比率(1.7:1)は、上記第1実施形態のカップリング装置1における軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとの比率(1.8:1)に近似した比率である。また、実施例9は、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1の比率になるように設定した。
【0088】
また、相対回転数−トルク測定では、実施例2〜9における、モータ側回転体の回転数とヨーク側部材の回転数との回転数差(相対回転数)に対するヨーク側部材におけるトルクの大きさを、図9に示した測定系を用いて測定した。この際、相対回転数が0rpm、50rpm、100rpm、500rpmおよび1000rpmの場合におけるそれぞれのトルクを測定した。
【0089】
図16および図17に示した実施例2〜8および比較例2に関する測定結果としては、相対回転数(回転数差)が50rpm、100rpm、500rpmおよび1000rpmのいずれの場合においても、実施例2〜8のカップリング装置は、比較例2のカップリング装置よりもトルクが大きくなった。
【0090】
具体的には、相対回転数(回転数差)が0rpmの場合、実施例2〜8および比較例2のいずれのトルクも、0N×mになった。また、相対回転数が50rpmの場合、トルクは、それぞれ、実施例2では1.24N×mに、実施例3では1.44N×mに、実施例4では1.50N×mに、実施例5では1.50N×mに、実施例6では1.45N×mに、実施例7では1.36N×mに、実施例8では1.06N×mに、比較例2では0.62N×mになった。また、相対回転数が100rpmの場合、トルクは、それぞれ、実施例2では2.36N×mに、実施例3では2.76N×mに、実施例4では2.88N×mに、実施例5では2.90N×mに、実施例6では2.83N×mに、実施例7では2.65N×mに、実施例8では2.04N×mに、比較例2では1.22N×mになった。
【0091】
また、相対回転数が500rpmの場合、トルクは、それぞれ、実施例2では7.91N×mに、実施例3では8.93N×mに、実施例4では9.27N×mに、実施例5では9.47N×mに、実施例6では9.49N×mに、実施例7では9.26N×mに、実施例8では7.90N×mに、比較例2では5.45N×mになった。また、相対回転数が1000rpmの場合、トルクは、それぞれ、実施例2では9.58N×mに、実施例3では10.17N×mに、実施例4では10.35N×mに、実施例5では10.41N×mに、実施例6では10.45N×mに、実施例7では10.41N×mに、実施例8では9.76N×mに、比較例2では9.55N×mになった。
【0092】
これにより、実施例2〜8のカップリング装置は、比較例2のカップリング装置よりも、相対回転数(回転数差)に対するヨーク側部材におけるトルクが大きくなることが判明した。また、実施例3〜6のカップリング装置は、実施例2、7および8のカップリング装置よりも、相対回転数(回転数差)に対するヨーク側部材におけるトルクが大きくなることが判明した。これは、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1.4の比率になる実施例2では、軸方向導体部の円周方向の断面積が減少することに起因して軸方向導体部の電気抵抗が増加して、軸方向導体部を流れる渦電流が減少したため、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1〜1.8:1の比率になる実施例3〜6よりもトルクが小さくなったと考えられる。また、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが2.1:1の比率になる実施例7および3.4:1の比率になる実施例8では、軸方向導体部に対向する磁石から発せられる磁束がヨークの凸部で飽和することに起因して軸方向導体部を流れる渦電流が減少したため、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1〜1.8:1の比率になる実施例3〜6よりもトルクが小さくなったと考えられる。
【0093】
また、図18および図19に示した実施例4および9と比較例2とに関する測定結果としては、相対回転数(回転数差)が50rpm、100rpm、500rpmおよび1000rpmのいずれの場合においても、実施例4および9のカップリング装置は、比較例2のカップリング装置よりもトルクが大きくなった。
【0094】
具体的には、相対回転数(回転数差)が0rpmの場合、実施例4および9と比較例2とのいずれも、0N×mになった。また、相対回転数が50rpmの場合、実施例4は上記のように1.50N×mになり、実施例9は0.81N×mになる一方、比較例2は上記のように0.62N×mになった。また、相対回転数が100rpmの場合、実施例4は上記のように2.88N×mになり、実施例9は1.60N×mになる一方、比較例2は上記のように1.22N×mになった。また、相対回転数が500rpmの場合、実施例4は上記のように9.27N×mになり、実施例9は6.94N×mになる一方、比較例2は上記のように5.45N×mになった。また、相対回転数が1000rpmの場合、実施例4は上記のように10.35N×mになり、実施例9は10.26N×mになる一方、比較例2は上記のように9.55N×mになった。
【0095】
これにより、実施例4および9のカップリング装置は、比較例2のカップリング装置よりも、相対回転数(回転数差)に対するヨーク側部材におけるトルクが大きくなることが判明した。また、実施例4のカップリング装置は、実施例9のカップリング装置よりも、相対回転数(回転数差)に対するヨーク側部材におけるトルクが大きくなることが判明した。これは、軸方向導体部における円周方向の長さとヨークの凸部の円周方向の長さとが1:1の比率になる実施例9では、軸方向導体部の円周方向の断面積が減少することに起因して軸方向導体部の電気抵抗が増加して、軸方向導体部を流れる渦電流が減少したため、軸方向導体部の半径方向の厚みと磁石の半径方向の厚みとが1.7:1の比率になる実施例4よりもトルクが小さくなったと考えられる。
【0096】
次に、図2図8図9および図20図25を参照して、上記第1実施形態によるカップリング装置1のヨーク側部材40の導体部42の合金組成を異ならせた場合の、相対回転数−トルク測定、トルク−ジュール損測定、および、相対回転数−ジュール損測定の各確認実験について説明する。
【0097】
以下に説明する相対回転数−トルク測定、トルク−ジュール損測定、および、相対回転数−ジュール損測定では、実施例10および11として上記第1実施形態のカップリング装置1を用いた。具体的には、実施例10では、導体部42として非磁性体のAlを含む合金からなる材料を用いた。また、実施例11では、導体部42として非磁性体のCuを含む合金からなる材料を用いた。それ以外は、図2に示す実施例1のカップリング装置1と同様の構成を有するカップリング装置1を用いた。つまり、実施例10は実施例1と同様の構成とした。
【0098】
一方、実施例10に対する比較例3として、図8に示すカップリング装置101のうち、導体部142として非磁性体のAlを含む合金からなる材料を用いた。また、実施例11に対する比較例4として、図8に示すカップリング装置101のうち、導体部142として非磁性体のCuを含む合金からなる材料を用いた。それ以外は、図8に示す比較例1のカップリング装置101と同様の構成を有するカップリング装置101を用いた。つまり、比較例4は比較例1と同様の構成とした。
【0099】
(相対回転数−トルク測定)
この相対回転数−トルク測定では、実施例10、11と比較例3、4とにおける、磁石側回転体30の回転数とヨーク側部材40(140)の回転数との回転数差(相対回転数)に対するヨーク側部材40(140)におけるトルクの大きさを、図9に示した測定系を用いて測定した。この際、相対回転数が90rpm(min−1)、180rpm、450rpmおよび900rpmの場合におけるそれぞれのトルクを測定した。
【0100】
図20および図21に示した相対回転数−トルク測定の測定結果としては、導体部42(142)にAlを含む合金からなる材料を用いた場合では、相対回転数(回転数差)が90rpmの場合、実施例10(カップリング装置1)では、トルクは17.9N×mになり、比較例3(カップリング装置101)では、トルクは4.3N×mになった。また、相対回転数が180rpmの場合、実施例10では、トルクは31.4N×mになり、比較例3では、トルクは8.0N×mになった。また、相対回転数が450rpmの場合、実施例10では、トルクは49.6N×mになり、比較例3では、トルクは18.7N×mになった。また、相対回転数が900rpmの場合、実施例10では、トルクは49.2N×mになり、比較例3では、トルクは33.8N×mになった。
【0101】
また、導体部42(142)にCuを含む合金からなる材料を用いた場合では、相対回転数(回転数差)が90rpmの場合、実施例11(カップリング装置)では、トルクは26.0N×mになり、比較例4(カップリング装置101)では、トルクは6.5N×mになった。また、相対回転数が180rpmの場合、実施例11では、トルクは41.5N×mになり、比較例4では、トルクは12.1N×mになった。また、相対回転数が450rpmの場合、実施例11では、トルクは51.1N×mになり、比較例4では、トルクは27.8N×mになった。また、相対回転数が900rpmの場合、実施例11では、トルクは44.4N×mになり、比較例4では、トルクは46.0N×mになった。
【0102】
これにより、相対回転数が450rpm以下の場合において、実施例10および11(カップリング装置1)は、それぞれ、比較例3および4(カップリング装置101)よりも、相対回転数に対するヨーク側部材40におけるトルクが大きくなることが判明した。これにより、実施例10および11に適用された第1実施形態のカップリング装置1の構成は、比較例3および4に適用された従来のカップリング装置101の構成よりも、450rpm以下の低い相対回転数において大きなトルクを得るためにより有効な構成であると考えられる。
【0103】
また、導体部42(142)にAlを含む合金からなる材料を用いる場合において、実施例10は比較例3に比べて、より大きなトルクを得ることができることが判明した。この結果、導体部としてAlを含む合金からなる材料を用いる場合、上記第1実施形態のカップリング装置1の構造を採用すれば、より大きなトルクを得ることが可能であると考えられる。
【0104】
(トルク−ジュール損測定)
次に、トルク−ジュール損測定について説明する。このトルク−ジュール損測定では、実施例10、11と比較例3、4とにおける、ヨーク側部材40(140)のトルクに対して発生するジュール熱(ジュール損)を、図9に示した測定系を用いて測定した。
【0105】
図22および図23に示したトルク−ジュール損測定の測定結果としては、導体部42(142)にAlを含む合金からなる材料を用いた場合では、実施例10(カップリング装置1)において、トルクが17.9N×mの場合、ジュール損が168.9Wになり、トルクが31.4N×mの場合、ジュール損が591.5Wになり、トルクが49.6N×mの場合、ジュール損が2327.1Wになった。一方、比較例3(カップリング装置101)において、トルクが4.3N×mの場合、ジュール損が37.0Wになり、トルクが8.0N×mの場合、ジュール損が145.7Wになった。また、トルクが18.7N×mの場合、ジュール損が873.5Wになり、トルクが33.8N×mの場合、ジュール損が3167.3Wになった。
【0106】
また、導体部42(142)にCuを含む合金からなる材料を用いた場合では、実施例11(カップリング装置1)において、トルクが26.0N×mの場合、ジュール損が244.9Wになり、トルクが41.5N×mの場合、ジュール損が783.6Wになり、トルクが51.1N×mの場合、ジュール損が2372.0Wになった。一方、比較例4(カップリング装置101)において、トルクが6.5N×mの場合、ジュール損が57.6Wになり、トルクが12.1N×mの場合、ジュール損が225.7Wになった。また、トルクが27.8N×mの場合、ジュール損が1306.5Wになり、トルクが46.0N×mの場合、ジュール損が4329.4Wになった。
【0107】
これにより、実施例10および11(カップリング装置1)は、それぞれ、比較例3および4(カップリング装置101)よりもヨーク側部材40(140)におけるトルクに対するジュール損が減少することが判明した。これにより、実施例10および11に適用された第1実施形態のカップリング装置1の構成は、比較例3および4に適用された従来のカップリング装置101の構成よりも、エネルギーの損失(ジュール損)を減少させるために有効な構成であると考えられる。
【0108】
(相対回転数−ジュール損測定)
次に、相対回転数−ジュール損測定について説明する。この相対回転数−ジュール損測定では、実施例10、11と比較例3、4とにおける、相対回転数(回転数差)に対する発生する装置全体のジュール熱(ジュール損)を、図9に示した測定系を用いて測定した。この際、相対回転数が90rpm、180rpm、450rpmおよび900rpmの場合におけるそれぞれのトルクを測定した。
【0109】
図24および図25に示した相対回転数−ジュール損測定の測定結果としては、導体部42(142)にAlを含む合金からなる材料を用いた場合では、相対回転数(回転数差)が90rpmの場合、実施例10(カップリング装置1)のジュール損は168.9Wになり、比較例3(カップリング装置101)のジュール損は37.0Wになった。また、相対回転数が180rpmの場合、実施例10のジュール損は591.5Wになり、比較例3のジュール損は145.7Wになった。また、相対回転数が450rpmの場合、実施例10のジュール損は2372.1Wになり、比較例3のジュール損は873.5Wになった。また、相対回転数が900rpmの場合、実施例10のジュール損は4616.5Wになり、比較例1のジュール損は3167.3Wになった。
【0110】
また、導体部42(142)にCuを含む合金からなる材料を用いた場合では、相対回転数(回転数差)が90rpmの場合、実施例11(カップリング装置1)のジュール損は244.9Wになり、比較例4(カップリング装置101)のジュール損は57.6Wになった。また、相対回転数が180rpmの場合、実施例11のジュール損は783.6Wになり、比較例4のジュール損は225.7Wになった。また、相対回転数が450rpmの場合、実施例11のジュール損は2372.0Wになり、比較例4のジュール損は1306.5Wになった。また、相対回転数が900rpmの場合、実施例11のジュール損は4144.5Wになり、比較例1のジュール損は4329.4Wになった。
【0111】
これにより、相対回転数が450rpm以下の場合において、実施例10および11(カップリング装置1)は、それぞれ、比較例3および4(カップリング装置101)よりも、相対回転数(回転数差)に対するジュール損が増加することが判明した。これにより、実施例10および11に適用された第1実施形態のカップリング装置1の構成は、比較例3および4に適用された従来のカップリング装置101の構成よりも、450rpm以下の低い相対回転数において制動力を得るためにより有効な構成であると考えられる。
【0112】
また、導体部42(142)にAlを含む合金からなる材料を用いる場合において、実施例10は比較例3に比べて、より制動力が発生させやすいことが判明した。この結果、導体部としてAlを含む合金からなる材料を用いる場合、上記第1実施形態のカップリング装置1の構造を採用すれば、制動力が発生させやすくすることが可能であると考えられる。
【0113】
(第2実施形態)
次に、図26図28を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態によるカップリング装置201では、上記第1実施形態に加えて、磁石側回転体30とヨーク側部材40との間に、磁石側回転体30に対して相対的に位置を変更することが可能なスイッチ部材260を配置した場合について説明する。なお、スイッチ部材260は、本発明の「切替部」の一例である。
【0114】
本発明の第2実施形態によるカップリング装置201では、図26に示すように、磁石側回転体30とヨーク側部材40との間に、磁石側回転体30に対して相対的に位置を変更することが可能なスイッチ部材260が配置されている。このスイッチ部材260は、磁石側回転体30およびヨーク側部材40と略同一の回転軸線300を回転中心として回転可能に構成されているとともに、回転軸線300の延びる方向(X方向)に延びる円筒形状を有している。また、スイッチ部材260は、回転軸線300周りに磁石側回転体30と略同じ回転速度で回転可能なように構成されている。
【0115】
また、スイッチ部材260は、図27に示すように、12個の磁石31の内径よりも小さな外径を有し、略等角度(約30度)間隔で配置された12個の伝達部260aと、12個の伝達部260aの間に配置され、略等角度(約30度)間隔で配置された12個の減衰部260bとから構成されている。これにより、伝達部260aと減衰部260bとは、磁石31を同じ数(12個)だけ形成されるとともに、円周方向に交互に並ぶように配置されている。なお、図27に示す状態(磁石側回転体30から発せられる磁束が伝達される状態)では、任意の磁石31と回転軸線300(図26参照)とを結ぶ半径方向の直線上に伝達部260aの中心が位置するとともに、任意の磁石31同士の境界を半径方向に延びる直線上に減衰部260bの中心が位置するように構成されている。なお、図27および後述する図28においては、回転軸線300側の磁極のみを図示しているとともに、X2側の短絡部42bの図示を省略している。
【0116】
また、スイッチ部材260の伝達部260aは、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体からなるとともに、減衰部260bは、主に非磁性体であるAlを含む合金からなる。これにより、12個の磁石31から発せられる磁束のうち、伝達部260aを通過する磁束は略減衰しないことによりヨーク側部材40のヨーク41に伝達される一方、減衰部260bを通過する磁束は減衰することによりヨーク側部材40のヨーク41に伝達されにくくなるように構成されている。なお、図27に示す状態においては、12個の磁石31から発せられる磁束は、伝達部260aを通過することが可能であるので、ヨーク側部材40のヨーク41に磁束が伝達される(ON状態)ように構成されている。すなわち、図27の状態では、スイッチ部材260と磁石側回転体30とを略同じ回転速度で回転させることによって、ヨーク側部材40に力を伝達させることができるとともに、ヨーク側部材40において制動力を発生させることができるように構成されている。
【0117】
ここで、第2実施形態では、図示しない切替手段によって、磁石側回転体30またはスイッチ部材260のいずれか一方を回転軸線300周りに約15度回転させることによって、スイッチ部材260と磁石側回転体30との相対的な位置を切り替えることが可能なように構成されている。これにより、図27の状態から磁石側回転体30またはスイッチ部材260のいずれか一方を回転軸線300周りに約15度回転させることによって、図28に示すように、任意の磁石31と回転軸線300とを結ぶ半径方向の直線上に減衰部260bの中心が位置するとともに、任意の磁石31同士の境界を半径方向に延びる直線上に伝達部260aの中心が位置するように構成されている。この結果、12個の磁石31から発せられる磁束は、減衰部260bを通過するので、ヨーク側部材40のヨーク41に磁束が伝達されにくくなる(OFF状態)ように構成されている。すなわち、図28の状態(磁石側回転体30から発せられる磁束が伝達されにくい状態)では、磁石側回転体30を回転させたとしても、磁石側回転体30と略同じ回転速度で回転するスイッチ部材260によって、ヨーク側部材40に力を伝達させにくくなるとともに、ヨーク側部材40において制動力を発生させにくくなるように構成されている。この結果、スイッチ部材260と磁石側回転体30との相対的な位置を切り替えることによって、力の伝達および制動力を調整することが可能なように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成およびヨーク側部材40の製造方法は、第1実施形態と同様である。
【0118】
第2実施形態では、上記のように、磁石側回転体30とヨーク側部材40との間に、磁石側回転体30に対して相対的に位置を変更することが可能なスイッチ部材260を設けることによって、スイッチ部材260を用いて磁束のヨーク側部材40への伝達量を切り替えることによりヨーク側部材40に発生する渦電流の増加量を切り替えることができるので、トルクおよびジュール熱をより正確に制御することができる。
【0119】
また、第2実施形態では、上記のように、スイッチ部材260が、磁束を略減衰しない状態でヨーク側部材40のヨーク41に伝達することが可能な強磁性体の伝達部260aと、磁束を減衰させる非磁性体の減衰部260bとからなるように構成することによって、減衰部260bを通過する磁束(磁束密度)を伝達部260aを通過する磁束(磁束密度)よりも減少させることができるので、減衰部260bと磁石側回転体30との相対的な位置を変化させることによって、磁束のヨーク側部材40への到達量を容易に切り替えることができる。
【0120】
また、第2実施形態では、上記のように、スイッチ部材260が、回転軸線300の延びる方向(X方向)に延びる円筒形状を有するとともに、伝達部260aと減衰部260bとを、円周方向に交互に並ぶように配置すれば、交互に略等角度(約30度)間隔で磁石側回転体30の円筒状の内周面30bに円周方向に沿って並ぶように配置された磁石側回転体30の磁石31aおよび31bに対応するように、伝達部260aと減衰部260bとを円周方向に交互に配置することができるので、磁束のヨーク側部材40への到達量をより容易に切り替えることができる。
【0121】
また、第2実施形態では、上記のように、伝達部260aと減衰部260bとを磁石31を同じ数(12個)だけ形成すれば、磁石側回転体30の磁石31と同じ数(12個)だけ形成された伝達部260aと減衰部260bとを円周方向に交互に配置することにより、磁石側回転体30の磁石31とスイッチ部材260の伝達部260aおよび減衰部260bとを一対一で対応させることができる。これにより、磁束が伝達される状態においては、磁石側回転体30の磁石31とスイッチ部材260の伝達部260aとが一対一で対応する一方、磁束が伝達されにくい状態においては、磁石側回転体30の磁石31とスイッチ部材260の減衰部260bとが一対一で対応するように構成することができるので、磁束のヨーク側部材40への到達量を正確に切り替えることができる。
【0122】
また、第2実施形態では、上記のように、磁石側回転体30から発せられる磁束が伝達される状態では、任意の磁石31と回転軸線300とを結ぶ半径方向の直線上に伝達部260aの中心が位置するとともに、任意の磁石31同士の境界を半径方向に延びる直線上に減衰部260bの中心が位置するように構成し、磁石側回転体30から発せられる磁束が伝達されにくい状態では、任意の磁石31と回転軸線300とを結ぶ半径方向の直線上に減衰部260bの中心が位置するとともに、任意の磁石31同士の境界を半径方向に延びる直線上に伝達部260aの中心が位置するように構成すれば、磁束が伝達される状態においては、磁石側回転体30の磁石31に対向する位置に伝達部260aを配置することによって、磁石側回転体30からの磁束は伝達部260aを通過することができるので、磁石側回転体30からの磁束がヨーク側部材40に伝達されるように構成することができる。一方、磁束が伝達されにくい状態においては、磁石側回転体30の磁石31に対向する位置に減衰部260bを配置することによって、磁石側回転体30からの磁束は減衰部260bによってスイッチ部材260を通過するのが抑制されるので、磁石側回転体30からの磁束がヨーク側部材40に伝達されにくくすることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0123】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0124】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、磁石側部10およびヨーク側部20が回転軸線300の延びる軸線方向(X方向)に移動しない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図29に示す第1実施形態の変形例のように、カップリング装置1の磁石側部10およびヨーク側部20を回転軸線300の延びる軸線方向(X方向)に移動可能なように構成してもよい。これにより、磁石側部10およびヨーク側部20を回転軸線300の延びる軸線方向(X方向)に移動させることによって、磁石側回転体30の磁石31とヨーク側部材40のヨーク41および導体部42とが対向する面積を容易に変化させることができるので、導体部42の渦電流の増減を変化させることが可能である。これにより、渦電流の大きさを制御することによって、トルクおよびジュール熱をより正確に制御することが可能になる。
【0125】
また、上記第1および第2実施形態では、12個の磁石31が設けられた磁石側回転体30の内側にヨーク側部材40を配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁石をモータ側回転体の外側に設けるとともに、ヨーク側部材をモータ側回転体の外側を覆うように配置してもよい。
【0126】
また、上記第1および第2実施形態では、軸方向導体部42aの外周の長さをヨーク41の凸部41dの外周の長さの約1.2倍になるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向導体部の外周の長さは、ヨークの凸部の外周の長さの約1.2倍でなくてもよい。なお、軸方向導体部の外周の長さは、ヨークの凸部の外周の長さ以上で、かつ、ヨークの凸部の外周の長さの2倍以下であるのが好ましい。
【0127】
また、上記第1および第2実施形態では、軸方向導体部42aの半径方向の厚みW2を磁石31の半径方向の厚みW1の約1.8倍にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向導体部の半径方向の厚みは、磁石の半径方向の厚みの約1.8倍でなくてもよい。なお、軸方向導体部の半径方向の厚みは、磁石の半径方向の厚み以上であるのが好ましい。
【0128】
また、上記第1および第2実施形態では、円環状の一対の短絡部42bを、それぞれ、44個の軸方向導体部42aのX1側の端部とX2側の端部とに配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、44個の軸方向導体部を電気的に接続することが可能であれば、短絡部を軸方向導体部の端部に配置せずに端部以外の場所に配置してもよい。
【0129】
また、上記第1および第2実施形態では、導体部42に44個の軸方向導体部42aを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向導体部は、43個以下でもよいし、45個以上でもよい。なお、軸方向導体部は40個以上50個以下が好ましい。
【0130】
また、上記第1および第2実施形態では、ヨーク41を珪素鋼板が積層されることによって形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ヨークは、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体からなるように形成してもよい。
【0131】
また、上記第1および第2実施形態では、44個の軸方向導体部42aを、X方向に延びる回転軸線300に対して角度θ3で傾斜するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向導体部を回転軸線に沿って平行に延びるように構成してもよい。
【0132】
また、上記第1および第2実施形態では、ヨーク41の外周面41bを所定の量切削することによって、44個の軸方向導体部42aが外周面41bの側に露出させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ヨークの外周面を切削せずに、ヨークの外周面から所定の距離離れた穴部に軸方向導体部を形成することによって、軸方向導体部を外周面側に露出させないように構成してもよい。
【0133】
また、上記第1および第2実施形態では、ヨーク側部20を冷却する部材を何も設けていないが、本発明では、ヨーク側部材を冷却するためにファンを設けてもよい。このファンは、ヨーク側部材に一体的に設けられてもよいし、ヨーク側部材とは別の部材としてカップリング装置に設けられてもよい。これにより、ヨーク側部材に生じた熱を外部に放出しやすくすることが可能である。
【0134】
また、上記第1および第2実施形態では、ヨーク41の外周面41bに44箇所の溝部41cを略等角度(約8.2度)で形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溝部を等角度間隔で形成しなくてもよい。
【0135】
また、上記第2実施形態では、スイッチ部材260が、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体からなり、磁束を伝達可能な伝達部260aと、主に非磁性体であるAlを含む合金からなり、磁束を減衰させる減衰部260bとからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、磁束を減衰させる減衰部を何も形成されていない穴部からなるように構成してもよい。また、減衰部の厚みを伝達部の厚みよりも小さくすることによって、減衰部において磁束を減衰させるように構成してもよい。
【0136】
また、上記第1および第2実施形態では、モータに接続された磁石側回転体30(磁石回転体)に12個の磁石31を設けるとともに、負荷部に接続されたヨーク側部材40(ヨーク側部材)にヨーク41と導体部42とを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石が設けられた磁石回転体を負荷部に接続するとともに、ヨークと導体部とが設けられたヨーク側部材をモータに接続してもよい。
【0137】
また、上記第1および第2実施形態では、12個の磁石31を、凹状の内周面30bの円周方向に沿って異なる磁極が交互に並ぶように磁石側回転体30に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、単体の磁石を、異なる磁極が交互に並ぶようにモータ側回転体に配置してもよい。また、磁石は、11個以下でもよいし、13個以上であってもよい。
図1
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