特許第5835235号(P5835235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5835235マグネトロンスパッタリング用磁場発生装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835235
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】マグネトロンスパッタリング用磁場発生装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   C23C14/35 C
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-554716(P2012-554716)
(86)(22)【出願日】2012年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2012050505
(87)【国際公開番号】WO2012102092
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-12315(P2011-12315)
(32)【優先日】2011年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-38791(P2011-38791)
(32)【優先日】2011年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(72)【発明者】
【氏名】栗山 義彦
(72)【発明者】
【氏名】三田 正裕
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008-156735(JP,A)
【文献】 特開2009-127109(JP,A)
【文献】 特開2006-16634(JP,A)
【文献】 特表平11-510563(JP,A)
【文献】 特開平9-67668(JP,A)
【文献】 特開昭60-116774(JP,A)
【文献】 特開昭57-188679(JP,A)
【文献】 特開平1-177370(JP,A)
【文献】 特開平6-207271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット表面に磁場を発生させるための、直線部及びコーナー部からなるレーストラック形状のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置であって、
前記直線部は、磁性体のベースと、前記磁性体のベースの表面に設置された長方形状の中央部永久磁石と、前記中央部永久磁石の両側に離間して、前記中央部永久磁石と平行に、前記磁性体のベースの表面に設置された長方形状の2つの側部永久磁石とを有し、
前記中央部永久磁石及び前記側部永久磁石は、磁化方向が前記ターゲット表面に垂直であり、前記中央部永久磁石の極性と前記側部永久磁石の極性とが互いに異なるように配置され、
前記コーナー部は、非磁性体からなるベースと、前記非磁性体からなるベースの表面に設置された中央磁極部材と、前記中央磁極部材を中心として半円状又は半多角形状に設置された外周磁極部材と、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間に設置された複数の永久磁石とを有し、
前記複数の永久磁石は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材に対向するように配置され、
前記複数の永久磁石の前記中央磁極部材に対向する磁極が、前記中央部永久磁石の前記ターゲットに対向する磁極と同極性であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記コーナー部を構成する前記永久磁石が、平面視で扇形又は台形の複数の永久磁石からなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記コーナー部を構成する前記永久磁石が、平面視で前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間の面積の30%以上を占めることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間は、前記永久磁石と、前記永久磁石以外の部分を充填する非磁性体のスペーサとからなることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記直線部における前記中央部永久磁石と前記側部永久磁石との間が、非磁性体のスペーサで充填されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる位置が、前記コーナー部での前記中央磁極部材からの水平距離をr、前記直線部での前記中央部永久磁石からの水平距離をRとしたとき、R≦rであることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる位置における磁束密度水平成分が、前記コーナー部において10 mT以上であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記直線部を構成する前記中央部永久磁石及び前記側部永久磁石が希土類磁石であり、前記コーナー部を構成する前記複数の永久磁石がフェライト磁石であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記直線部と前記コーナー部とが対向する部分における前記直線部の幅が、前記対向する部分における前記コーナー部の幅より大きいことを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記コーナー部の前記永久磁石の前記ベース側に、磁場を調節するためのシャント用磁性体が配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項11】
非磁性体からなるベースと、その表面に設置された棒状の中央磁極部材と、前記中央磁極部材を取り囲むように設置された外周磁極部材と、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間に設置された複数の永久磁石とを有する、ターゲット表面に磁場を発生させるためのレーストラック形状のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置であって、
前記複数の永久磁石は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材に対向するように配置され、
前記複数の永久磁石の前記ベース側に、前記発生した磁場を調節するためのシャント用磁性体が配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項12】
請求項11に記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記外周磁極部材がコーナー部で多角形状であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記シャント用磁性体が、前記非磁性体からなるベース内又はベース表面に配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかに記載のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記シャント用磁性体が複数の部分からなり、それぞれ脱着可能であることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【請求項15】
非磁性体からなるベースと、その表面に設置された円形状の中央磁極部材と、前記中央磁極部材の周囲に設けられた円環状の外周磁極部材と、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間に設置された複数の永久磁石とを有する、ターゲット表面に磁場を発生させるための円形状のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置であって、
前記複数の永久磁石は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材に対向するように配置され、
前記複数の永久磁石の前記ベース側に、前記発生した磁場を調節するためのシャント用磁性体が配置されていることを特徴とするマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に薄膜を形成するために使用されるマグネトロンスパッタリング装置に組み込まれる磁場発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体IC等の電子部品の製造プロセスにおいては、基板表面に薄膜を形成するために、ターゲットの堆積速度が速く、しかも基板への電子の衝突が起こらないため低温で成膜が可能なマグネトロンスパッタリング法が多く用いられている。
【0003】
Ar等の不活性物質を高速で衝突させることによりターゲットを構成する原子や分子がたたき出される現象をスパッタリングといい、このたたき出された原子や分子を基板上に付着させることで、薄膜を形成することができる。マグネトロンスパッタリング法は、陰極内部に磁界を組み込むことにより、膜の生成速度を上げて生産性を向上させることができる手法である。
【0004】
マグネトロンスパッタリング装置は、真空チャンバー内に陽極側の基板と、基板と相対するように配置したターゲット(陰極)と、ターゲットの下方に配置した磁場発生装置とを具備する。陽極と陰極との間に電圧を印加することによりグロー放電を起こし、真空チャンバー内の不活性ガス(0.1 Pa程度のArガス等)をイオン化させ、一方でターゲットから放出された二次電子を磁場発生装置により形成した磁界により捕獲し、ターゲット表面でサイクロイド運動を行わせる。電子のサイクロイド運動によりガス分子のイオン化が促進されるため、膜の生成速度は磁界を用いない場合に比べ格段に大きくなり、膜の付着強度が大きくなる。
【0005】
マグネトロンスパッタリング装置に用いる磁気回路装置4は、図29に示すように、高さ方向(ターゲットの表面に垂直な方向)に磁化したロッド形状の中心磁石410と、前記中心磁石410と逆方向に磁化した、前記中心磁石410の周囲に配置される矩形の外周磁石420と、前記中心磁石410と前記外周磁石420を載置するヨーク430から構成され、ターゲット表面に平行にレーストラック状の漏洩磁場を発生させる(例えば、特開平8-134640号を参照)。磁気回路形状をレーストラック状とすることで、二次電子を閉じこめる領域を閉じた空間にすることができ、二次電子密度を高めることによりスパッタリング効率を高めることができる。この閉じた空間を作り出すためには、通常10 mT以上の磁場(磁束密度水平成分)が必要となる。
【0006】
ターゲットの浸食(エロージョン)は、磁束密度垂直成分がゼロとなる部分(図30に破線で示す部分)で最も速く進行するので、この部分でエロージョンが均一に起こるように磁場を調節することによりターゲットをできるだけ長く使用することができる。しかしながら、図29に示すような磁気回路装置4によってターゲット表面にプラズマを閉じこめた場合、直線部分で生成されたプラズマがコーナー部分に集中し、コーナー部でのエロージョンが最も速く進行してしまう。このプラズマの集中は、磁束密度垂直成分がゼロとなる部分が、直線部では中心磁石410から距離Rの位置であるのに対し、コーナー部ではそれより近い距離r(r<R)となるため、磁束がコーナー部に集中することによって起こる。
【0007】
特開平8-134640号は、コーナー部の磁石をT字状に配置し残留磁束密度の比較的小さい磁石で構成することにより、コーナー部での磁束密度垂直成分の偏りを改善する技術を開示しているが改善効果は十分ではなく、コーナー部への磁束の集中を緩和する技術の開発が望まれている。
【0008】
特開2008-156735号は、図31(a)及び図31(b)に示すような、非磁性体からなるベース510と、その表面に設置された長方形状の中央磁極片520と、その周囲に設けられた長円形状の外周磁極片530と、前記中央磁極片と前記外周磁極片との間に連設された複数の永久磁石540,550とを有し、前記永久磁石540,550が水平方向(ターゲットの表面に平行な方向)に磁化されかつ同極性の磁極が前記中央磁極片に対向するように配置されているとともに、前記中央磁極片の高さ及び前記外周磁極片の高さは前記永久磁石の高さ以上に形成されているマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置5を開示しており、この磁場発生装置は永久磁石の各磁極面に磁極片が接触しているため、永久磁石からの漏洩磁束が低減され、前述の高さ方向に磁化した磁石を用いた磁気回路装置よりも少ない永久磁石で所定の磁束を発生することができると記載している。特開2008-156735号は、さらにプラズマ状態に励起された不活性ガスを閉じこめるために必要な磁場強度(磁束密度水平成分が10 mT以上)となる領域が従来に比べ拡大するので、ターゲットのエロージョン領域が拡大し、直線部とコーナー部のエロージョンを均一にし、基板上に均一な厚さで成膜することができると記載している。
【0009】
しかしながら、特開2008-156735号に記載の磁場発生装置は、ベースに非磁性体を使用しているため、磁気回路のターゲットと反対面に磁場が漏洩し、ターゲット反対面に設置したスパッタリング装置の制御機器に悪影響を及ぼす可能性がある。このためターゲットの反対側への漏洩磁場が大きい場合、磁気回路背面には電子機器が設置できないというデメリットがある。磁場の漏洩を避けるために磁気回路設置面(ベース)を鉄等の磁性体で構成することもできるが、発生した磁場のほとんどが磁性体のベース内を通るためターゲット側に発生する磁場を減少させてしまう。さらに特開2008-156735号に記載の磁場発生装置は、直線部の大部分が磁石で占められているため、ここにネジ等の固定部材を配置するのが困難であり、スパッタリング装置への固定が容易ではない。
【0010】
従って、漏洩磁場のスパッタリング装置への影響を少なくし、磁場発生装置を効率的に使用し、スパッタリング装置への取り付けが容易であるとともに、ターゲットのエロージョンを均一にすることのできるマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の開発が望まれている。
【0011】
図29に示すような磁気回路装置4を用いた場合に、ターゲット表面における磁場の垂直成分が適切な分布となるようにし、エロージョン領域を広くするための技術として、特開2006-16634号は、前記中央磁石の磁極と前記外周磁石の磁極の間に、ターゲット面と平行になるように板状磁性部材(シャント板)を配置した磁場発生装置を開示しており、このシャント板により、磁気回路により発生する磁場のターゲット面に対する垂直成分が、ゼロ又はゼロ近傍でフラットとなる領域、もしくはゼロ点を3回交差するような領域が形成されると記載している。
【0012】
しかしながら、特開2006-16634号に記載の磁界発生装置は、前記磁気回路部とターゲットとの間にシャント板が配置された構造を有しているため、磁場の調節を行うためにシャント板を取り外したり位置を調節したりすることは容易ではない。またターゲットを配置したチャンバーが真空状態である場合には真空を開放する必要があるため、例えばスパッタリングの途中でターゲットの浸食量に応じて磁場を調節したいといった要求を満足することができない。
【0013】
半導体用のIC等のような多層薄膜で構成する電子部品では、多種多様な金属膜、合金膜が必要であり、層ごとに必要なターゲットの材質が異なる場合がある。このような電子部品を製造するスパッタリング装置では、層ごとに異なるターゲットを用い、それぞれの材質に適合した条件でスパッタを行う必要がある。磁場強度は、スパッタ条件の中でも製造効率や金属膜特性に大きな影響を与える要因の一つであるため、異なるターゲット材質に合わせて層ごとに適切な磁場強度に調節したいといった要求がある。磁場発生装置とターゲットとの距離を変更することにより磁場強度の調節がある程度可能であるが、ターゲット材料の位置によって細かく磁場を変更することは非常に困難であり、最適な磁気回路を作り上げるためのさらなる磁場調節手段の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の第1の目的は、磁束密度水平成分の高い領域を広げることによりターゲットのエロ-ジョン進行を均一にし、基板上に均一な厚さの薄膜を形成するとともに、漏洩磁場を減少させ、スパッタリング装置への影響を少なくしたマグトロンスパッタリング用磁場発生装置を提供することである。
【0015】
本発明の第2の目的は、ターゲットを取り外すことなく磁場の調節が可能であり、かつスパッタリングの途中であっても容易に磁場を調節することができ、その結果、複数のターゲット材料に対して共用可能なマグトロンスパッタリング用磁場発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、高さ方向に磁化したロッド形状の中心磁石と、前記中心磁石の周囲に配置される逆方向に磁化した矩形の外周磁石とによって構成される磁場発生装置において、コーナー部のみを中央磁極部材及び外周磁極部材と、ターゲットの表面に平行な方向に磁化した永久磁石とからなる構成に置き換えることにより、漏洩磁場が少なく、スパッタリング装置への取り付けが容易で、かつコーナー部における磁束密度垂直成分がゼロになる部分を外側に広げ、直線部とコーナー部とで均一なエロージョンを与える磁場発生装置が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0017】
さらに本発明者らは、非磁性体からなるベース上に、中央磁極部材と、外周磁極部材と、それらの間に磁化方向がターゲット表面に平行になるように配置された複数の永久磁石とからなるマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置において、前記非磁性体からなるベース内に磁場を調節するためのシャント用磁性体を配置することにより、真空を開放することなく、簡単な操作で磁場の調節ができることを見出し、本発明に想到した。
【0018】
すなわち、ターゲット表面に磁場を発生させるための本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置は、直線部及びコーナー部からなるレーストラック形状を有し、
前記直線部は、磁性体のベースと、前記磁性体のベースの表面に設置された長方形状の中央部永久磁石と、前記中央部永久磁石の両側に離間して、前記中央部永久磁石と平行に、前記磁性体のベースの表面に設置された長方形状の2つの側部永久磁石とを有し、
前記中央部永久磁石及び前記側部永久磁石は、磁化方向が前記ターゲット表面に垂直であり、前記中央部永久磁石の極性と前記側部永久磁石の極性とが互いに異なるように配置され、
前記コーナー部は、非磁性体からなるベースと、前記非磁性体からなるベースの表面に設置された中央磁極部材と、前記中央磁極部材を中心として半円状又は半多角形状に設置された外周磁極部材と、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間に設置された複数の永久磁石とを有し、
前記複数の永久磁石は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材に対向するように配置され、
前記複数の永久磁石の前記中央磁極部材に対向する磁極が、前記中央部永久磁石の前記ターゲットに対向する磁極と同極性であることを特徴とする。
【0019】
前記コーナー部を構成する前記永久磁石は、平面視で扇形又は台形の複数の永久磁石からなるのが好ましい。
【0020】
前記コーナー部を構成する前記永久磁石は、平面視で前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間の面積の30%以上を占めるのが好ましい。
【0021】
前記前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間は、前記永久磁石と、前記永久磁石以外の部分を充填する非磁性体のスペーサとからなるのが好ましい。
【0022】
前記直線部における前記中央部永久磁石と前記側部永久磁石との間は、非磁性体のスペーサで充填されているのが好ましい。
【0023】
前記ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる位置は、前記コーナー部での前記中央磁極部材からの水平距離をr、前記直線部での前記中央部永久磁石からの水平距離をRとしたときR≦rであるのが好ましい。
【0024】
前記ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる位置における磁束密度水平成分は、前記コーナー部において10 mT以上であるのが好ましい。
【0025】
前記直線部を構成する前記中央部永久磁石及び前記側部永久磁石は希土類磁石であり、前記コーナー部を構成する前記複数の永久磁石はフェライト磁石であるのが好ましい。
【0026】
前記直線部と前記コーナー部とが対向する部分における前記直線部の幅は、前記対向する部分における前記コーナー部の幅より大きいのが好ましい。
【0027】
前記コーナー部の前記永久磁石の前記ベース側に、磁場を調節するためのシャント用磁性体が配置されているのが好ましい。
【0028】
本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置は、非磁性体からなるベースと、その表面に設置された棒状の中央磁極部材と、前記中央磁極部材を取り囲むように設置された外周磁極部材と、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間に設置された複数の永久磁石とを有する、ターゲット表面に磁場を発生させるためのレーストラック形状のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置であって、前記複数の永久磁石は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材に対向するように配置され、前記複数の永久磁石の前記ベース側に、前記発生した磁場を調節するためのシャント用磁性体が配置されていることを特徴とする。
【0029】
前記外周磁極部材はコーナー部で多角形状であるのが好ましい。
【0030】
前記シャント用磁性体は、前記非磁性体からなるベース内又はベース表面に配置されているのが好ましい。
【0031】
前記シャント用磁性体は複数の部分からなり、それぞれ脱着可能であるのが好ましい。
【0032】
本発明の第三のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置は、非磁性体からなるベースと、その表面に設置された円形状の中央磁極部材と、前記中央磁極部材の周囲に設けられた円環状の外周磁極部材と、前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間に設置された複数の永久磁石とを有する、ターゲット表面に磁場を発生させるための円形状のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置であって、前記複数の永久磁石は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材に対向するように配置され、前記複数の永久磁石の前記ベース側に、前記発生した磁場を調節するためのシャント用磁性体が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明の第一の磁場発生装置を用いることにより、コーナー部における磁束密度垂直成分がゼロになる部分を外側に広げることができ、その結果、直線部とコーナー部とで均一なエロージョンを得ることができる。このためターゲットの利用効率を向上させることができる。
【0034】
コーナー部の磁石の使用量を減らすことができるため、磁気回路全体の重量及び製造コストを低減できる。
【0035】
コーナー部と直線部とを分離することが可能なので、ターゲット材の材質や寸法に応じて磁場発生装置の設計変更が容易に行える。
【0036】
コーナー部の全ての領域に磁石を配置しなくても均一な磁場発生が可能なので、コーナー部の空いた部分にスパッタリング装置に必要な部材を配置することができる。
【0037】
直線部には磁石が配置されていない領域が多く存在するため、磁性体のベースに穴を開け、ターゲット側(磁石が配置されている側)からネジ止めすることにより、磁場発生装置のスパッタリング装置への固定が容易に行える。
【0038】
本発明の第二及び第三の磁場発生装置は、シャント用磁性体により磁場を調節することができるので、ターゲット材料に適した磁場を発生することができる。またレーストラック状の磁場発生装置の任意の場所において、それぞれ独立に磁場強度を調節することができる。その結果、ターゲットのエロージョン進行がより均一になり、基板上に均一な厚さの薄膜を形成することができる。特に、レーストラック状の磁場発生装置では、ターゲットのエロージョンが直線部よりもコーナー部で大きくなる傾向にあるが、シャント用磁性体の大きさ、配置等をコーナー部と直線部とで変えることにより、ターゲットのエロージョンを均一化させることができる。
【0039】
さらに本発明によれば、必要とする磁場よりも僅かに強い磁場を発生するように磁場発生装置を設計しておき、形成する薄膜の種類又はターゲットの種類に応じて、磁気回路のターゲット側と反対側の面に調節板(シャント用磁性体)を全面又は部分的に設置することで、ターゲット側に発生する磁場強度を全面的に又は部分的に容易に調節することができ、膜質に合わせた磁場を発生させることができる。その結果、生産能力に適合した一つの磁気回路で全ての薄膜に対応可能な磁場発生装置を提供することができる。
【0040】
シャント用磁性体は簡便な操作で脱着が可能なので、スパッタリングの途中であってもターゲットの浸食量に応じて磁場を調節することが可能である。また一般にターゲットは、材質やスパッタリング条件によって浸食速度が異なってくるため、ターゲット材質やスパッタリング条件によって磁場の強さを調節することが必要となるが、本発明の磁場発生装置はそのような要求にも対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1(a)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の一例を示す平面図である。
図1(b)】図1(a)のA-A断面図である。
図1(c)】図1(a)のB-B断面図である。
図1(d)】図1(a)のC-C断面図である。
図2】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置により発生する磁場の、ターゲット表面における磁束密度垂直成分がゼロとなる部分を示す模式図である。
図3】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部の他の一例を示す平面図である。
図4】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部のさらに他の一例を示す平面図である。
図5】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部のさらに他の一例を示す平面図である。
図6(a)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部に設けたシャント用磁性体の一例を示す模式断面図である。
図6(b)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部に設けたシャント用磁性体の他の一例を示す模式断面図である。
図6(c)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部に設けたシャント用磁性体のさらに他の一例を示す模式断面図である。
図6(d)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部に設けたシャント用磁性体のさらに他の一例を示す模式断面図である。
図6(e)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部に設けたシャント用磁性体のさらに他の一例を示す模式断面図である。
図6(f)】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部に設けたシャント用磁性体のさらに他の一例を示す模式断面図である。
図7】シャント用磁性体を挿入するための孔を設けた本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部の一例を示す斜視図である。
図8(a)】シャント用部材を挿入するための孔を設けた本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のコーナー部の他の一例を示す斜視図である。
図8(b)】図8(a)の磁場発生装置のコーナー部に使用するシャント用部材を示す斜視図である。
図9】本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の他の一例を示す部分平面図である。
図10(a)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の一例を示す平面図である。
図10(b)】図10(a)のD-D断面図である。
図11(a)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置における中央磁極部材の端部及び外周磁極部材のコーナー部の形状の一例を示す平面図である。
図11(b)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置における中央磁極部材の端部及び外周磁極部材のコーナー部の形状の他の一例を示す平面図である。
図11(c)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置における中央磁極部材の端部及び外周磁極部材のコーナー部の形状のさらに他の一例を示す平面図である。
図11(d)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置における中央磁極部材の端部及び外周磁極部材のコーナー部の形状のさらに他の一例を示す平面図である。
図12】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置により発生する磁力線の様子を示す模式断面図である。
図13】従来のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置により発生する磁力線の様子を示す模式断面図である。
図14図12及び図13に示す磁場発生装置によってターゲット表面に発生する磁場の磁束密度水平成分をシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
図15(a)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体の構成例を模式的に示す断面図である。
図15(b)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体の他の構成例を模式的に示す断面図である。
図15(c)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の構成例を模式的に示す断面図である。
図15(d)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の構成例を模式的に示す断面図である。
図15(e)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の構成例を模式的に示す断面図である。
図15(f)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の構成例を模式的に示す断面図である。
図16(a)】シャント用磁性体を挿入するための孔を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図16(b)】シャント用磁性体を挿入するための孔を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図17(a)】シャント用磁性体を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図17(b)】シャント用磁性体を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図18】シャント用磁性体を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のさらに他の一例を示す、ベース側から見た模式図である。
図19(a)】シャント用磁性体を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のさらに他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図19(b)】シャント用磁性体を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のさらに他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図19(c)】シャント用磁性体を設けた本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のさらに他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図20(a)】磁性体部分と非磁性のスペーサとを積層してなるシャント板の一例を模式的に示す部分断面図である。
図20(b)】磁性体部分と非磁性のスペーサとを積層してなるシャント板の他の一例を模式的に示す部分断面図である。
図20(c)】磁性体部分と非磁性のスペーサとを積層してなるシャント板のさらに他の一例を模式的に示す部分断面図である。
図20(d)】磁性体部分と非磁性のスペーサとを積層してなるシャント板のさらに他の一例を模式的に示す部分断面図である。
図21(a)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図21(b)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図21(c)】本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置のシャント用磁性体のさらに他の一例を模式的に示す一部断面斜視図である。
図22(a)】本発明の第三のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の一例を示す平面図である。
図22(b)】図22(a)のE-E断面図である。
図23(a)】比較例1の磁場発生装置を示す平面図である。
図23(b)】図23(a)のF-F断面図である。
図24】比較例1の磁場発生装置により発生する磁束密度分布を示すグラフである。
図25(a)】実施例1の磁場発生装置を示す平面図である。
図25(b)】図25(a)のG-G断面図である。
図25(c)】図25(a)のH-H断面図である。
図26】実施例1の磁場発生装置により発生する磁束密度分布を示すグラフである。
図27】実施例6の磁場発生装置により発生する磁場のターゲット表面における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点を示す模式図である。
図28】実施例7の磁場発生装置により発生する磁場のターゲット表面における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点を示す模式図である。
図29】従来のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の一例を示す斜視図である。
図30】従来のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置により発生する磁場のターゲット表面における磁束密度垂直成分がゼロとなる部分を示す模式図である。
図31(a)】従来のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の他の一例を示す平面図である。
図31(b)】図31(a)のI-I断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[1]第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置
本発明の第一のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置1は、ターゲット表面にレーストラック状の磁場を発生させるための装置であり、図1に示すように、直線部20及び2つのコーナー部30,30からなるレーストラック形状を有している。
【0043】
前記直線部20は、磁性体のベース21と、前記磁性体のベース21の表面に設置された長方形状の中央部永久磁石22と、前記中央部永久磁石22の両側に離間して、前記中央部永久磁石22と平行に、前記磁性体のベース21の表面に設置された長方形状の2つの側部永久磁石23,23とを有し、前記中央部永久磁石22及び前記側部永久磁石23は、磁化方向が前記ターゲット表面に垂直であり、前記中央部永久磁石22の極性と前記側部永久磁石23の極性とが互いに異なるように配置されている。
【0044】
前記直線部を構成する中央部永久磁石22及び側部永久磁石23は、それぞれ一体に成形された平面視で長方形状ものでも良いが、平面視で長方形の永久磁石を複数連接して形成したものであっても良い。前記中央部永久磁石22と前記側部永久磁石23との間は、非磁性のスペーサ24で充填しても良いし、何も置かなくても良い。
【0045】
前記コーナー部30は、非磁性体からなるベース31と、前記非磁性体からなるベース31の表面に設置された中央磁極部材32と、前記中央磁極部材32を中心として半円状又は半多角形状に設置された外周磁極部材33と、前記中央磁極部材32と前記外周磁極部材33との間に設置された複数の永久磁石34とを有し、前記複数の永久磁石34は、磁化方向が前記ターゲットの表面に平行であり、同極性の磁極が前記中央磁極部材32に対向するように配置されており、前記複数の永久磁石34の前記中央磁極部材32に対向する磁極が、前記直線部20の前記中央部永久磁石22の前記ターゲットに対向する磁極と同極性になるように配置されている。
【0046】
従来構成の磁場発生装置4 (図29参照)では、磁束密度垂直成分がゼロとなる部分(図30に破線で示す部分)が、直線部では中心磁石410から距離Rの位置であるのに対し、コーナー部ではそれより近い距離r(r<R)となるため、磁束がコーナー部の磁束密度垂直成分がゼロとなる部分に集中し、このコーナー部の磁束が集中した部分のエロージョン進行が特に速くなる。
【0047】
これに対し、本発明の磁場発生装置1では、直線部とコーナー部とで磁気抵抗がほぼ均一であるため、図2に示すように、ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる部分をコーナー部で外側に広げることができる。ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる位置は、前記コーナー部での前記中央磁極部材からの水平距離をr、前記直線部での前記中央部永久磁石からの水平距離をRとしたとき、R≦rであるのが好ましい。このように磁場を形成することにより、コーナー部においてもより均一にエロージョンを進行させることができ、ターゲットの利用効率を向上させることができる。前記ターゲット表面における磁場の磁束密度垂直成分がゼロとなる位置における磁束密度の水平成分は、前記コーナー部において10 mT以上であるのが好ましい。
【0048】
なお、前記水平距離Rは、前記中央部永久磁石の長手方向中心線と、前記磁束密度垂直成分がゼロとなる部分をつないだ線との水平距離であり、前記水平距離rは、前記中央磁極部材の中心点(中央磁極部材端部を半円に近似したときの中心点)から、前記磁束密度垂直成分がゼロとなる部分をつないだ線までの長手方向の水平距離である。ただし、長手方向とは直線部での前記中央部永久磁石の長手方向中心線の方向である。
【0049】
前記コーナー部30を構成する複数の永久磁石34は、前記外周磁極部材33が半多角形状である場合、図1に示すように、平面視でほぼ台形であるのが好ましく、前記外周磁極部材33が半円状の場合、図3に示すように、平面視でほぼ扇形であるのが好ましい。また図31(a)に示す磁場発生装置のコーナー部と同様に、平面視で長方形であっても良い。前記複数の永久磁石34の数及び大きさは特に限定されず、製造上又は組立易さの観点からどのような大きさに分割してもよく、またそれぞれの大きさが異なっていても良い。
【0050】
前記コーナー部30を構成する前記永久磁石34は、平面視で前記中央磁極部材32と前記外周磁極部材33との間隙を全て満たすように配置しても良いが、図4及び図5に示すように、間隙35を設けて配置しても良い。このように間隙35を設けて前記永久磁石34を配置することにより磁束密度を調節することができる。前記間隙35には、非磁性体のスペーサを充填しても良い。前記中央磁極部材32と前記外周磁極部材33との間隙の総面積に対する前記永久磁石34の占有率は、30%以上であるのが好ましく、30〜80%であるのがより好ましい。
【0051】
前記コーナー部30において、前記永久磁石34の前記ベース31側に、図6(a)に示すように、磁場を調節するためのシャント用磁性体36が配置されているのが好ましい。前記シャント用磁性体36を配置することにより、ベース31側に流出する磁束線の量を増やし、相対的にターゲット側に流出する磁束線の量を減少させることができるので、磁場発生装置全体として均一な磁場とし、ターゲットのエロ-ジョンを均一にすることができる。
【0052】
シャント用磁性体36は、前記永久磁石34に対して、ターゲット側とは反対側に設けるのが好ましい。シャント用磁性体36をターゲットと同じ側に設けた場合にも、磁束線の量を調節することは可能であるが、シャント用磁性体36をターゲット側に設けるには、真空を開放し磁場発生装置1を分解して行う必要があるため、一旦シャント用磁性体36を設置してしまうと簡単には取り外すことができず、スパッタリングの途中で磁束線の量を調節することは不可能である。これに対して、ベース31側にシャント用磁性体36を設けた構成とすることにより、簡単な操作でシャント用磁性体36取り外すことが可能となり、スパッタリングに用いるターゲットの種類やスパッタ条件等によって、シャント用磁性体36の大きさ・厚さ・磁性体密度等を変更し、磁場を調節することができる。また、シャント用磁性体36をベース31側に設けることにより、ベース31の裏面から漏洩する磁束量を減少させるといった効果も得られる。
【0053】
シャント用磁性体36は、前記ベース31中(図6(a))、前記ベース31の上部表面(図6(b))又は前記ベース31の下部表面(図6(c))に設けるのが好ましく、2箇所以上(図6(d)又は図6(e))に設けても良い。これらの態様は、スパッタリングの目的、ターゲットの種類等に応じて適宜選択することができる。シャント用磁性体36を有するベース2の下部に、磁性体からなるシールド板37をさらに設けても良い(図6(f))。
【0054】
シャント用磁性体36は、図7に示すように、前記ベース31の幅方向の側面に開口した孔38から前記ベース31中に挿入できるようにすることで、簡単に脱着可能とすることができる。また図8(a)に示すように、前記ベース31の幅方向の側面に開口した孔38から、図8(b)に示すような、磁性体部39aと非磁性体部39bとからなるシャント用部材39を前記ベース31中に挿入できるようにしてもよい。
【0055】
図9に示すように、前記直線部20と前記コーナー部30とが対向する部分において、前記直線部20の幅W1は、前記コーナー部30の幅W2より大きいのが好ましい。このような構成にすることにより、磁場発生装置により形成される直線部のエロージョンのライン(磁束密度垂直成分がゼロとなる部分に対応)と、コーナー部のエロージョンのラインとを滑らかにつなぐことができる。具体的には、例えば実施例1の磁場発生装置により発生する磁束密度分布を示すグラフ(図26)において、P点がQ点に近づくことになり、直線部とコーナー部のエロージョンラインが滑らかとなる。前記直線部20の幅W1と前記コーナー部30の幅W2との関係は、W1≧W2≧W1×0.8であるのが好ましい。
【0056】
前記直線部20の幅W1は150 mm以下であるのが好ましい。幅W1を150 mm以下にすることによって、基板上により均一な厚さで成膜することができる。幅W1は、実用上100 mm以下が好ましい。前記直線部20と前記コーナー部30とは一定の間隔を設けて配置するのが望ましい。間隔を設けることで直線部の磁石による磁界のコーナー部への影響を小さくすることができる。前記直線部20と前記コーナー部30との間には非磁性体のスペーサを配置しても良いし、何も設けなくても良い。
【0057】
永久磁石は、公知の永久磁石材料で形成することができる。特に高い磁束密度を得るために、前記直線部を構成する中央部永久磁石及び側部永久磁石には希土類磁石を使用するのが好ましく、R(Nd等の希土類元素のうちの少なくとも一種)、T(Fe又はFe及びCo)及びBを必須成分とするR-T-B系異方性焼結磁石(耐食性の点から各種の表面処理を施したもの)を使用するのがより好ましい。前記コーナー部を構成する複数の永久磁石にも前記希土類磁石を使用しても良いが、ターゲットの均一なエロージョンを得るためには、前記直線部に使用する永久磁石よりも弱い磁束密度で済むので、前記直線部に使用する永久磁石よりも小さな永久磁石を使用するか、希土類磁石よりも磁束密度の低いフェライト磁石を使用するのが好ましい。
【0058】
フェライト磁石のサイズは、その磁気特性に応じて適宜設定すれば良いが、例えば図1の構成ではフェライト磁石と磁極片の厚さ(非磁性体のベースからの高さ方向、フェライト磁石においては磁化と垂直方向)を希土類磁石の2〜3倍程度に設定することで、同等の磁束密度を得ることが可能である。このような構成にすることにより、ターゲットのエロージョン領域が拡大し、ターゲットの寿命を長くするとともに、基板上に均一な厚さで成膜することができる。
【0059】
磁性体のベース、磁極部材及びシャント板には公知の磁性体(軟磁性体)が用いられ、特に磁性を有する鋼材が好適に用いられる。
【0060】
本発明の磁場発生装置を複数個所定間隔で並列に配置し、各磁場発生装置を前記間隔と同程度に移動(揺動)させることにより、一体型のターゲットを使用して大型の基板に成膜することができる。また磁場発生装置には、磁場発生装置の上面とターゲット表面との距離を調節する機構を設けてもよい。
【0061】
[2]第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置
(1)構成
本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置2は、図10(a)及び図10(b)に示すように、非磁性体からなるベース202と、その中央に設置された棒状の中央磁極部材203と、その中央磁極部材203を取り囲むように設置された外周磁極部材204と、前記中央磁極部材203と前記外周磁極部材204との間のレーストラック形状の領域に、磁化方向がターゲットの表面に平行になるように配置された直線部用永久磁石205及びコーナー部用永久磁石206と、前記直線部用永久磁石205及びコーナー部用永久磁石206に対して、前記ベース202側に設けられたシャント用磁性体208とを有し、前記永久磁石がある面がターゲット207(図12参照)の裏面に対向するように所定間隔をおいて配置される。前記複数の直線部用永久磁石205及びコーナー部用永久磁石206は、同極性の磁極、例えばN極が前記中央磁極部材203に向くように設置されている。
【0062】
中央磁極部材203は、平面視で棒状の軟磁性体からなり、その両端部は、円弧状(図11(a)を参照)であっても良いし、多角形状(図11(b)又は図11(c)を参照)であっても良い。多角形状である場合、限定されないが、四角形状(図11(b))、六角形状(図11(c))等が好ましい。これらの中央磁極部材203の両端部の形状は、コーナー部に配置する永久磁石206の形状に応じたものにするのが好ましい。
【0063】
外周磁極部材204は、軟磁性体からなり、コーナー部の形状が、半円状(図10(a)を参照)、又は多角形状であるのが好ましい。製造のしやすさから、多角形状であるのがより好ましい。多角形の形状は特に限定されないが、図11(c)に示す六角形状、図11(d)に示す四角形状等の形状が好ましく、六角形状であるのがより好ましい。前記外周磁極部材204のコーナー部の形状は、前記中央磁極部材203の両端部の形状と対応した形状とする必要はなく、それぞれ独立して設計することができる。図10及び図11(a)〜図11(d)にこれらの組み合わせを示すが、本発明はこれらの組み合わせに限定されない。
【0064】
前記中央磁極部材203及び前記外周磁極部材204に用いる磁性体(軟磁性体)としては公知のものを使用でき、鋼材、ステンレス(磁性を有するもの)等が使用できる。
【0065】
本発明の磁場発生装置2により発生する磁力線の様子を図12に示す。各永久磁石のN極から流出した磁束線は中央磁極部材203を通過後、その上面203a(図10(b)参照)からターゲット207を経て外周磁極部材204の上面204a(図10(b)参照)に流入し、各永久磁石のS極に流入する。各永久磁石の上方を磁束が通過するため平面視でレーストラック状に分布された磁場(電極近傍の電場と直交する)が形成される。一方で、中央磁極部材203の下面203b(図10(b)参照)から流出した磁束線は、非磁性体からなるベース202中に流入し、その一部はシャント用磁性体208を通過し、外周磁極部材204の下面204b(図10(b)参照)に流入する。
【0066】
これに対して従来の磁場発生装置においては、図13に示すように、非磁性体からなるベース202中にシャント用磁性体が設置されていないので、本発明の磁場発生装置2に比べてベース202側の磁路の磁気抵抗が大きく、その結果、ターゲット207側の磁束量が相対的に多くなる。
【0067】
図14は、図12及び図13に示す磁場発生装置2によってターゲット表面に発生する磁束密度水平成分を、有限要素法を用いた磁場シミュレーションで求め、中央磁極部材203の中心からの距離(外周磁極部材204方向)に対してプロットした結果を示す。なお、図12に示す構成において、シャント用磁性体208として厚さ2.5 mmのSUS430製の板を使用した。図14から明らかなように、シャント用磁性体208を設置すること(図12の構成)で、シャント板を設置しない場合(図13の構成)に比べて、ターゲット表面に発生する磁場は43 mTから32 mTに減少した。
【0068】
本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置2は、前述のように磁化方向がターゲットの表面に平行になるように配置された磁石を使用して構成された磁気回路に、前記シャント用磁性体208を前記磁石に対してターゲットと反対側に設けてなるものであるが、図29に示すような、従来型の磁化方向がターゲットの表面に垂直になるように配置された磁石を使用して構成された磁気回路の場合、磁石に対してターゲットと反対側には磁性体からなるベースが配置されているため、前述のようにシャント用磁性体をベース側に配置して磁場を調節することができない。しかし従来型の磁気回路の一部を、ターゲットの表面に平行に磁化された磁石を有する磁気回路に置き換えて磁場発生装置を構成した場合、本発明の第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置2と同様にして、ターゲットの表面に平行に磁化された磁石が設置されている磁気回路部分については、非磁性体からなるベース側に前記シャント用磁性体208を設けて磁場の調節が可能である。
【0069】
(2)シャント用磁性体
本発明の磁場発生装置2において、前記シャント用磁性体208を非磁性体からなるベース202中に設けることにより、前記永久磁石によって形成される磁場の強度及び方向を調節することができる。例えば、図13に示すように、前記シャント用磁性体208を設置しない従来の磁場発生装置の場合、ベース202側に流出する磁束線の量が少なくなるので、ターゲット207側に流出する磁束線の量が多くなり、より強い磁場がターゲット207側に形成される。その結果、ターゲット207の局部的なエロージョンが進んでしまう場合がある。図12に示すように、前記シャント用磁性体208をベース202中に設置すると、ベース202側の磁路の磁気抵抗が小さくなるため、ベース202側の磁束量は増加する。一方、ターゲット207側の磁路の磁気抵抗は、ベース202側の磁路の磁気抵抗より相対的に大きくなるため、ターゲット207側の磁束量を減少させ、磁場が小さくなる。その結果、ターゲット207のエロージョンを抑制することができる。
【0070】
シャント用磁性体208は、前記直線部用永久磁石205及びコーナー部用永久磁石206に対して、ターゲット207側とは反対側に設ける。シャント用磁性体208をターゲット207と同じ側に設けた場合にも、磁束線の量を調節することは可能であるが、シャント用磁性体208をターゲット207側に設けるには、真空を開放し磁場発生装置2を分解して行う必要があるため、一旦シャント用磁性体208を設置してしまうと簡単には取り外すことができず、スパッタリングの途中で磁束線の量を調節することは不可能である。これに対して、ベース202側にシャント用磁性体208を設けた構成とすることにより、簡単な操作でシャント用磁性体208を取り外すことが可能となり、スパッタリングに用いるターゲット207の種類やスパッタ条件等によって、シャント用磁性体208の大きさ・厚さ・軟磁気特性等を変更し、磁場を調節することができる。また、シャント用磁性体208をベース202側に設けることにより、ベース202の裏面から漏洩する磁束量を減少させるといった効果も得られる。
【0071】
シャント用磁性体208は、前記ベース202中(図15(a))、前記ベース202の上部表面(図15(b))又は前記ベース202の下部表面(図15(c))に設けるのが好ましく、2箇所以上(図15(d)又は図15(e))に設けても良い。これらの態様は、スパッタリングの目的、ターゲット207の種類等に応じて適宜選択することができる。シャント用磁性体208を有するベース202の下部に、磁性体からなるシールド板209をさらに設けても良い(図15(f))。
【0072】
シャント用磁性体208は、図16(a)に示すように、前記ベース202の幅方向の側面に開口した孔210から前記ベース202中に挿入できるようにすることで、簡単に脱着可能とすることができる。また図16(b)に示すように、前記ベース202の長手方向の側面に一定間隔で開口した複数の孔211から、前記シャント用磁性体208を前記ベース202中に挿入できるようにしてもよい。この場合、前記シャント用磁性体208は、磁場発生装置2の長手方向には離散的に配置されるようになるが、本発明の磁場発生装置2のように中央磁極部材203と、外周磁極部材204と、磁化方向が前記ターゲット207の表面に平行に配置された直線部用永久磁石205及びコーナー部用永久磁石206とから構成される磁気回路においては、ある程度の不均一は前記中央磁極部材203及び外周磁極部材204によって平均化されるので、必ずしもシャント用磁性体208は長手方向に均一に設ける必要はなく、離散的に配置することができる。例えば、シャント用磁性体208は、図17(a)に示すように、円柱状であっても良いし、図17(b)に示すように、断面形状が長丸の柱状であっても良い。
【0073】
図16(a)及び図16(b)に示すように、前記ベース202の側面に開口した孔210,211から前記シャント用磁性体208を挿入する場合、前記シャント用磁性体208は全て同じものを用いる必要はなく、例えば、軟磁気特性の異なるものを組み合わせて使用しても良い。このように異なる種類のシャント用磁性体208を組み合わせて使用することにより、磁場発生装置2によって発生する磁場を細かく調節することができる。特に、レーストラック形状の前記ベース202の長手方向の側面に開口した孔211から前記シャント用磁性体208を挿入する場合、直線部分に配置するシャント用磁性体208とコーナー部分に配置するシャント用磁性体208との軟磁気特性、磁性体の厚さ、大きさ等を変更することにより、より均一な磁場を得ることができる。
【0074】
図15(c)又は図15(d)に示すように、ベース202の下部表面にシャント用磁性体208を設ける場合、図18に示すように、ベース202の下部表面にシャント用磁性体208を設けるための凹み212を設け、前記シャント用磁性体208をその凹み212にはめ込み、ネジ213止めできるような構成にすることで、簡単に前記シャント用磁性体208を取り外しすることができる。
【0075】
シャント用磁性体208は、図19(a)に示すように、ベース202中の磁束密度の高い部分にのみ磁性体が配置されるように、磁性体部分208aと非磁性のスペーサ208bとからなる板を用いて構成しても良いし、図19(b)に示すように、幅方向に一体となった磁性体からなる板を用いて構成しても良い。
【0076】
また、シャント用磁性体208は、図19(c)に示すように、磁性体部分208aと非磁性のスペーサ208bとを層状に貼り合わせて構成しても良い。この場合、磁性体部分208aと非磁性のスペーサ208bとの合計の厚さを一定にして、図20(a)〜図20(c)に示すように、磁性体部分208aの厚さを変化させたものを準備することにより、磁場の細かい調節が可能となる。さらに、磁性体部分208aを上面(永久磁石に近い側の面、図20(d))になるように配置するか、下面(永久磁石から遠い側の面、図20(a))になるように配置するかによっても磁場の微調節が可能である。磁性体部分208aと非磁性のスペーサ208bとの合計の厚さは、前記ベース202に設けた孔210,211の厚さに合わせて設定することにより、磁性体部分208aと非磁性のスペーサ208bとを層状に貼り合わせた板ががたつくことなくしっかりと固定される。
【0077】
シャント用磁性体208は、交換が容易にできるような形状にするのが好ましい。例えば、図21(a)に示すように、前記ベース202に設けた孔210,211に挿入したときに、前記孔210,211から少しはみ出るような長さに設定するのが好ましい。さらに、図21(b)に示すように、はみ出た部分が非磁性体のスペーサ208bとなるように構成しても良いし、図21(c)に示すように、はみ出た部分に突条部208cを設け、シャント用磁性体208を前記孔210,211から抜き取りやすいようにしても良い。
【0078】
シャント用磁性体208に用いる磁性体(軟磁性体)としては公知のものを使用でき、鋼材、ステンレス(磁性を有するもの)等が使用できる。
【0079】
(3)永久磁石
永久磁石は、公知の永久磁石材料で形成することができる。特に高い磁束密度を得るために、希土類磁石を使用するのが好ましく、R(Nd等の希土類元素のうちの少なくとも一種)、T(Fe又はFe及びCo)及びBを必須成分とするR-T-B系異方性焼結磁石(耐食性の点から各種の表面処理を施したもの)を使用するのがより好ましい。
【0080】
[3] 第三のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置
本発明のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の構成は、レーストラック状の磁場発生装置(第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置2)に限定されない。
【0081】
マグネトロンスパッタリング用磁場発生装置の他の構成例として、図22(a)及び図22(b)に示すような、円形状のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置(第三のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置3)が挙げられる。第三のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置3は、非磁性体からなるベース322と、その表面に設置された円形状の中央磁極部材323と、前記中央磁極部材323の周囲に設けられた円環状の外周磁極部材324と、前記中央磁極部材323と前記外周磁極部材324との間に磁化がターゲットの表面に平行になるように、かつ同極性の磁極が前記中央磁極部材323に対向するように設置された複数の永久磁石325とを有し、前記複数の永久磁石325の前記ベース322側に、ターゲット表面に発生した磁場を調節するためのシャント用磁性体326が配置されている(図22(a)の点線で示す領域)。シャント用磁性体326は、前記複数の永久磁石325によって発生する磁場の強度を調節することができればどのような形状でも良く、図22(a)に点線で示すような扇形であっても良いし、前記扇形がつながった円環状(図示せず。)であっても良い。また全ての永久磁石325に対して配置しなくても良い。
【0082】
第三のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置3は、その形状が円形状であることを除いて本質的には前記第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置2と同様であり、前記非磁性のベース322側にシャント用磁性体326を配置することにより、前記第二のマグネトロンスパッタリング用磁場発生装置2の場合と同様、簡単な操作で磁場の調節が可能となる。
【0083】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
比較例1
図23(a)及び図23(b)に示すような、鋼板(SS400)製のヨーク130と、R-T-B系異方性焼結磁石(日立金属製NMX50AH、最大エネルギー積:50 MGOe以上)からなる中央磁石110及び外周磁石120とを用いて、W=300 mm、L1=200 mm、L2=50 mm、a=100 mm、b=50 mm、c=20 mm、d=10 mm及びe=30 mmとなるように磁場発生装置100を作製した。磁場解析により、磁場発生装置100の表面から20 mmの位置(ターゲット表面の位置に相当)における磁束密度の水平成分及び垂直成分をそれぞれAライン及びDラインに沿って測定した。結果を図24に示す。
【0085】
なお図中、「A(h)」及び「D(h)」は前記磁束密度の水平成分をそれぞれAライン及びDラインに沿って測定した結果であり、「A(p)」及び「D(p)」は前記磁束密度の垂直成分をそれぞれAライン及びDラインに沿って測定した結果である。Aライン及びDラインにおいて前記磁束密度の垂直成分がゼロとなる点をそれぞれP点及びQ点で示す。比較例1の場合においてQ点及びP点はそれぞれ30 mm及び35 mmであり、コーナー部分における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点が直線部のそれよりも内側に寄っていることがわかる。
【0086】
実施例1
図25(a)、図25(b)及び図25(c)に示すような、鋼板(SS400)製のヨーク21、R-T-B系異方性焼結磁石(日立金属製NMX50AH、最大エネルギー積:50 MGOe以上)からなる中央部永久磁石22及び側部永久磁石23を有する直線部20と、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)製のベース31、鋼板(SS400)製の中央磁極部材32及び外周磁極部材33、並びにR-TM-B系異方性焼結磁石(日立金属製NMX50AH、最大エネルギー積:50MGOe以上)からなる永久磁石34を有するコーナー部30とからなり、W=300 mm、L1=200 mm、L2=50 mm、a=100 mm、b=50 mm、c=20 mm、d=10 mm、e=30 mm、f=100 mm、g=50 mm、h=20 mm、i=10 mm及びj=10 mmとなる磁場発生装置1を作製した。磁場解析により、磁場発生装置1表面から20 mmの位置(ターゲット表面の位置に相当)における磁束密度の水平成分及び垂直成分をそれぞれAライン及びDラインに沿って測定した。結果を図26に示す。
【0087】
なお図中、「A(h)」及び「D(h)」は前記磁束密度の水平成分をそれぞれAライン及びDラインに沿って測定した結果であり、「A(p)」及び「D(p)」は前記磁束密度の垂直成分をそれぞれAライン及びDラインに沿って測定した結果である。Aライン及びDラインにおいて前記磁束密度の垂直成分がゼロとなる点をそれぞれP点及びQ点で示す。実施例1の場合においてQ点及びP点はそれぞれ43 mm及び37 mmであり、コーナー部分における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点がコーナー部の外周磁極部材側に寄って(外側に広がって)いることがわかる。
【0088】
実施例2
実施例1の磁場発生装置1 (図25参照)においてコーナー部の磁石の配置を図4に示すような構成に変更した以外実施例1と同様にして、Aライン及びDラインにおいて、ターゲット表面における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点(P点及びQ点)を求めた。このときコーナー部における磁石の占有率(前記中央磁極部材と前記外周磁極部材との間隙の総面積に対する前記永久磁石の占有面積)は50%であった。この構成において、P点及びQ点は37 mm及び43 mmであり、P点とQ点の位置は実施例1の磁場発生装置1と同じであった。
【0089】
実施例3
実施例1の磁場発生装置1 (図25参照)においてコーナー部の磁石の配置を図5に示すような構成に変更した以外実施例1と同様にして、Aライン及びDラインにおいて、ターゲット表面における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点(P点及びQ点)を求めた。このときコーナー部における磁石の占有率は50%であった。この構成において、P点及びQ点はそれぞれ37 mm及び42 mmであり、P点とQ点の位置は実施例1とほぼ同じであった。
【0090】
実施例4
実施例1の磁場発生装置1 (図25参照)において、直線部の磁石の幅d及びcは変更せずに、中央部永久磁石22及び側部永久磁石23の距離が広がるように、ヨーク21の幅を両側に5 mmずつ均等に広げた構成(a=110 mm)の磁場発生装置(図9に示すような構成)を用いた以外実施例1と同様にして、Aライン及びDラインにおいて、ターゲット表面における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点(P点及びQ点)を求めた。この構成において、P点及びQ点はともに43 mmであった。
【0091】
実施例5
実施例4の磁場発生装置において、コーナー部の磁石の配置を実施例2で用いた構成(図4を参照)に変更した以外実施例4と同様にして、Aライン及びDラインにおいて、ターゲット表面における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点(P点及びQ点)を求めた。この構成において、P点及びQ点はともに43 mmであった。
【0092】
表1に実施例1〜5及び比較例1のP点及びQ点をまとめて示す。これらの結果から、比較例においてはQ点がP点より小さく、コーナー部における磁束密度の垂直成分がゼロとなる点(エロージョンライン)が内側に寄っているのに対し、実施例1〜5においてはQ点がP点より大きいか又は等しく、コーナー部において外側に広がったエロージョンラインを構成できていることがわかる。その結果、実施例1〜5の磁場発生装置においては、直線部とコーナー部とで均一なエロージョンを得ることができ、ターゲットの利用効率を向上させることができる。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例6
実施例5の磁場発生装置において、コーナー部の磁石の配置を図27に示すような構成に変更した以外実施例5と同様にして、ターゲット表面において磁束密度の垂直成分がゼロとなる点を求め、図27に点線で示した。なおこの構成において、直線部とコーナー部との間隔kは5 mmであり、またコーナー部における磁石の占有率は75%であった。
【0095】
実施例7
実施例5の磁場発生装置において、コーナー部の磁石の配置を図28に示すような構成に変更した以外実施例5と同様にして、ターゲット表面において磁束密度の垂直成分がゼロとなる点を求め、図28に点線で示した。なおこの構成において、直線部とコーナー部との間隔kは5 mmであり、またコーナー部における磁石の占有率は50%であった。
【0096】
実施例1〜7の磁場発生装置を用いた場合、ターゲット表面において磁束密度の垂直成分がゼロとなる点における磁束密度の水平成分は、コーナー部において10 mT以上であった。
【0097】
実施例8
実施例1に示す磁場発生装置1において、直線部を構成する磁石はそのままで、コーナー部を構成する磁石のみをフェライト磁石(日立金属製:異方性フェライト磁石)に変更した以外実施例1と同様にして磁場発生装置を構成した。なおフェライト磁石の、磁化方向に対して直角方向の厚さは、表面磁束密度の垂直成分がゼロになる点における水平成分が10 mT以上となるように設定した。中央磁極部材32及び外周磁極部材33の高さjは、前記フェライト磁石の厚さに合わせた。この磁場発生装置の、ターゲット表面において磁束密度の垂直成分がゼロとなる点(P点及びQ点)は実施例1とほぼ同じであった。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図6(e)】
図6(f)】
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図12
図13
図14
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】
図15(d)】
図15(e)】
図15(f)】
図16(a)】
図16(b)】
図17(a)】
図17(b)】
図18
図19(a)】
図19(b)】
図19(c)】
図20(a)】
図20(b)】
図20(c)】
図20(d)】
図21(a)】
図21(b)】
図21(c)】
図22(a)】
図22(b)】
図23(a)】
図23(b)】
図24
図25(a)】
図25(b)】
図25(c)】
図26
図27
図28
図29
図30
図31(a)】
図31(b)】