(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主面が平坦な板状のセラミックス基体と、前記基体の上側主面に形成された、実質的に上部に向かって拡開するテーパー状の内壁面を有するセラミックス枠体とを有し、前記基体の上側主面の一部を底面とし前記枠体の内壁面を側面として形成されるキャビティの底面に発光素子の搭載部を有する発光素子用基板を製造する方法であって、前記セラミックス基体およびセラミックス枠体は下記するグリーンシートにより作製され、下記(A)工程から(F)工程を含むことを特徴とする発光素子用基板の製造方法。
(A)セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、主面が平坦な板状の基体用グリーンシートおよび中央部に互いに相似形状で面積がそれぞれ異なる開口部を有する複数枚の板状の枠体積層用グリーンシートを作製し、前記基体用グリーンシート上側主面に、前記複数枚の枠体積層用グリーンシートを、該枠体積層用グリーンシートの積層部内壁面が階段状となるように、下側から開口部の面積が小さい順に積層して第1の積層体を得る工程、
(B)前記(A)工程で得られた第1の積層体を等方圧加圧して、前記枠体積層用グリーンシートの積層部が内壁面に有する階段状の角を丸める工程、
(C)セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、中央部に前記枠体積層用グリーンシートの開口部と相似形状で面積が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの開口部の面積より小さい開口部を有する板状の枠体最外層用グリーンシートを作製する工程、
(D)前記(C)工程で得られた枠体最外層用グリーンシートを、前記(B)工程後の第1の積層体の最上部に、前記開口部の中心が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの前記開口部の中心と略一致するようにさらに積層して第2の積層体を得る工程、
(E)前記(D)工程で得られた第2の積層体を等方圧加圧して、前記枠体最外層用グリーンシートが前記枠体積層用グリーンシート積層部の最上面から内壁面を覆う構成となるように加工し、未焼結発光素子用基板を得る工程、
(F)前記未焼結発光素子用基板を焼成する工程。
主面が平坦な板状のセラミックス基体と、前記基体の上側主面に形成された、実質的に上部に向かって拡開するテーパー状の内壁面を有するセラミックス枠体とを有し、前記基体の上側主面の一部を底面とし前記枠体の内壁面を側面として形成されるキャビティの底面に発光素子の搭載部を有する発光素子用基板を製造する方法であって、前記セラミックス基体およびセラミックス枠体は下記するグリーンシートにより作製され、下記(a)工程から(e)工程を含むことを特徴とする発光素子用基板の製造方法。
(a)セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、主面が平坦な板状の基体用グリーンシートおよび中央部に互いに相似形状で面積がそれぞれ異なる開口部を有する複数枚の板状の枠体積層用グリーンシートを作製し、前記基体用グリーンシート上側主面に、前記複数枚の枠体積層用グリーンシートを、該枠体積層用グリーンシートの積層部内壁面が階段状となるように、下側から開口部の面積が小さい順に積層して第1の積層体を得る工程、
(b)前記(a)工程で得られた第1の積層体を等方圧加圧して、前記枠体積層用グリーンシートの積層部が内壁面に有する階段状の角を丸める工程、
(c)セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、中央部に前記枠体積層用グリーンシートの開口部と相似形状で面積が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの開口部の面積より小さい開口部を有する板状の枠体最外層用グリーンシートを作製し、該枠体最外層用グリーンシートを前記(b)工程後の第1の積層体の最上部に開口部の中心が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの開口部の中心と略一致するようにさらに積層して第2の積層体を得る工程、
(d)前記(c)工程で得られた第2の積層体を等方圧加圧して、前記枠体最外層用グリーンシートが前記枠体積層用グリーンシート積層部の最上面から内壁面を覆う構成となるように加工し、未焼結発光素子用基板を得る工程、
(e)前記未焼結発光素子用基板を焼成する工程。
前記(b)工程、および前記(B)工程において丸められた階段状の角の曲率半径Rが、前記丸められた角を有する枠体積層用グリーンシート毎に、該グリーンシートの焼成後の厚さ(mm)に0.7〜1.5を乗じた値である請求項1または2に記載の製造方法。
前記(b)工程、および前記(B)工程おける前記第1の積層体の等方圧加圧は、前記第1の積層体の少なくとも上側加圧面上に第1の樹脂フィルムを配設して行ない、前記(d)工程、または前記(E)工程における前記第2の積層体の等方圧加圧は、前記第2の積層体の少なくとも上側加圧面上に第2の樹脂フィルムを配設して行なう請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
前記(b)工程、および前記(B)工程における等方圧加圧は、前記枠体積層用グリーンシートが含有する前記バインダー樹脂のガラス転移点を超えガラス転移点より20℃高い温度以下の温度範囲、かつ10〜30MPaの圧力範囲で行ない、前記(d)工程、または前記(E)工程における等方圧加圧は、前記枠体最外層用グリーンシートが含有する前記バインダー樹脂のガラス転移点を超えガラス転移点より20℃高い温度以下の温度範囲、かつ10〜30MPaの圧力範囲で行なう請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
前記第1の樹脂フィルムの膜厚が50〜80μm、かつJIS C 2318により測定される破断強度が150〜210MPaであり、前記第2の樹脂フィルムの膜厚が30〜50μm、かつJIS C 2318により測定される破断強度が230〜300MPaである請求項4または5に記載の製造方法。
前記枠体積層用グリーンシートおよび前記枠体最外層用グリーンシートの厚さが、それぞれ焼成後の厚さとして50〜200μmである請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法。
前記(A)工程後の前記枠体積層用グリーンシート積層部の階段状の内壁面において、前記階段の段毎に、焼成後における該段の前記基体用グリーンシートの主面に水平な面の幅が、該段の高さの0.8〜1.2倍である請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
【0023】
図1は本発明の製造方法により得られる素子基板を用いた発光装置の一例を示す平面図(a)およびそのX−X線断面図(b)である。
本発明の製造方法は、例えば、
図1に示されているような、主面が平坦な板状のセラミックス基体2(以下、単に基体ともいう)と、前記基体2の上側主面21に形成された、実質的に上部に向かって拡開するテーパー状の内壁面25を有するセラミックス枠体3とを有し、前記基体2の上側主面の一部を底面24とし前記枠体の内壁面を側面として形成されるキャビティ4の底面24に発光素子の搭載部22を有する素子基板1の製造に適用される。
【0024】
本明細書において、主面が平坦な板状の基体とは、上側、下側の主面がともに目視レベルで平板形状と認識できるレベルの平坦面を有する基体をいい、以下、「略平板状の基体」とは、上下の主面がこのような平坦面からなる基体のことをいう。また、以下基体の上側主面を単に主面といい、下側主面を裏面という。さらに、以下、略を付けた表記は、上記同様に、特に断わらない限り目視レベルでそう認識できるレベルのことをいう。
【0025】
素子基板1においては、基体2の主面21の一部で構成されるキャビティ4の底面24上に、発光素子が有する一対の電極とそれぞれ電気的に接続される素子接続端子5が、この発光素子搭載部22の外側となる周辺部、具体的には両側に対向するようにして略長方形状に一対設けられている。
【0026】
基体2の裏面23には、外部回路と電気的に接続される一対の外部接続端子6が設けられ、基体2の内部に、上記素子接続端子5と外部接続端子6とを電気的に接続する貫通導体7が一対設けられている。以下、素子接続端子5、外部接続端子6および貫通導体7をまとめて「配線導体」ということもある。
図1に示す発光装置10においては、上記素子基板1の搭載部22に発光素子11が搭載され、その図示しない発光素子11の電極が、ボンディングワイヤ12によって素子接続端子5に電気的に接続されている。発光装置10は、さらに、キャビティ4の底面24に上記のように配設された発光素子11やボンディングワイヤ12を覆いながら、キャビティ4を充填するように封止層13が設けられることにより構成されている。
【0027】
以下、
図1に示される発光装置10における素子基板1を例にして、
図2〜
図7を参照しながら、(A)工程から(F)工程を有する本発明の製造方法、および下記(a)工程から(e)工程を有する本発明の製造方法について説明する。
なお、以下、本発明の製造方法の説明においては、(A)工程および(a)工程は、(A)工程として説明し、(B)工程および(b)工程は、(B)工程として説明し、(E)工程および(d)工程は、(E)工程として説明し、(F)工程および(e)工程は、(F)工程として説明する。また、(c)工程の説明については、(C)工程および(D)工程の説明を準用する。
【0028】
(A)工程
セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、主面が平坦な板状の基体用グリーンシート、および中央部に互いに相似形状で面積がそれぞれ異なる開口部を有する複数枚の板状の枠体積層用グリーンシートを作製し、前記基体用グリーンシート上側主面に、前記複数枚の枠体積層用グリーンシートを、該枠体積層用グリーンシートの積層部内壁面が階段状となるように、下側から開口部の面積が小さい順に積層した積層体(以下、第1の積層体という)を作製する工程(以下、第1の積層工程という。)。
【0029】
(B)工程
前記(A)工程で得られた第1の積層体を等方圧加圧して、前記枠体積層用グリーンシートの積層部が内壁面に有する階段状の角を丸める工程(以下、第1の等方圧加圧工程という。)。
(C)工程
セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、中央部に前記枠体積層用グリーンシートの開口部と相似形状で面積が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの開口部の面積より小さい開口部を有する板状の枠体最外層用グリーンシートを作製する工程。
(D)工程
前記(C)工程で得られた枠体最外層用グリーンシートを前記(B)工程後の第1の積層体の最上部に前記開口部の中心が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの前記開口部の中心と略一致するようにさらに積層して第2の積層体を得る工程(以下、第2の積層工程という。)。
【0030】
(E)工程
前記(D)工程で得られた第2の積層体を等方圧加圧して、前記枠体最外層用グリーンシートが前記枠体積層用グリーンシート積層部の最上面から内壁面を覆う構成となるように加工し、発光素子用基板となる未焼結素子基板を得る工程(以下、第2の等方圧加圧工程という。)。
(F)工程
前記未焼結素子基板を焼成する工程(以下、焼成工程という。)。
【0031】
図2〜
図7は、本発明の素子基板の製造方法の実施形態の一例を工程毎に模式的に示す平面図および断面図である。以下、製造に用いる部材については、完成品の部材と同一の符号を付して説明するものである。例えば、セラミック基体とセラミック基体用グリーンシートとは、同じ2の符号をもって表記し、また、素子接続端子と素子接続端子用ペースト層とは、同じ5の符号をもって表記しており、他も同様である。
【0032】
(A)工程:第1の積層工程
図2は、本発明の製造方法の一例において、第1の積層工程((A)の工程)により得られた第1の積層体1Aの平面図(a)およびそのX−X線断面図(b)を示す図である。
前記(A)工程について、セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて、略平板状の基体用グリーンシート2を作製する工程((A−1)の工程)、中央部に互いに相似形状で面積がそれぞれ異なる開口部を有する複数枚(
図2においては3枚)の板状の枠体積層用グリーンシート(3a、3b、3c)を作製する工程((A−2)の工程)、上記(A−1)および(A−2)の工程で得られた各グリーンシートを所定の順に積層する工程((A−3)の工程)の順で以下に説明する。
【0033】
(A−1)基体用グリーンシート2の作製
基体用グリーンシート2の作製に用いるセラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物としては、素子基板の製造に通常用いられるセラミックス組成物が挙げられる。このようなセラミックス組成物として、具体的には、主に含有するセラミックス粉末の違いにより、酸化アルミニウム粉末を主成分とする酸化アルミニウム質焼結体用のセラミックス組成物、窒化アルミニウム粉末を主成分とする窒化アルミニウム質焼結体用のセラミックス組成物、ムライト粉末を主成分とするムライト質焼結体用のセラミックス組成物、セラミックス粉末の他にガラス粉末を含有するLTCC用のガラスセラミックス組成物等のセラミックス組成物が挙げられる。セラミックス組成物が含有するバインダー樹脂およびその他の任意成分については後述の通りであり、上記各セラミックス組成物において同様のものが使用される。
【0034】
ここで、グリーンシートを構成するセラミックス組成物は、最終的に(F)工程で焼成されてセラミックスとなるが、上記セラミックス組成物はそれぞれ焼成温度が異なるため、通常、基体2と以下に説明する枠体3は枠体最外層を含めて同種のセラミックスから構成される。各グリーンシートを構成するセラミックス組成物は、同種のセラミックスから構成される限りにおいて、必要に応じてグリーンシート毎に原料組成を変えられるが、通常、原料組成についてもグリーンシート間で差がないものが用いられる。本発明の製造方法は、セラミックス組成物としてLTCC用のガラスセラミックス組成物を用いた場合に、これが製造の容易性、易加工性を有することから、特に枠体の内壁面で形成されるテーパーの傾斜について角度の精度や均一性の効果が顕著に得られる。
【0035】
なお、本発明の製造方法において、上記各セラミックス組成物のうちでも、拡散反射性の高いセラミックス組成物を用いれば、キャビティの底面や側面に、特に銀等の反射層を設けることなしに、光の指向性および光取り出し効率がともに高い素子基板を製造できる。なお、拡散反射性を評価する指標として、JIS K 7105により測定されるヘイズ値が用いられるが、その値が95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。
また、セラミックス組成物としてLTCC用のガラスセラミックス組成物を選択した場合には、低温焼成が可能なことから、必要に応じてキャビティの底面や側面に銀等の反射層を有する素子基板を、一度の焼成で製造可能である。セラミックスとして、LTCC材料を選択した場合には、発光素子の搭載時、その後の使用時における損傷等を抑制する観点から、例えば、抗折強度が250MPa以上となるように原料組成を調整することが好ましい。
【0036】
以下に、LTCC用のガラスセラミックス組成物を例にして、基体用グリーンシートの作製方法を説明する。
(ガラスセラミックス組成物の調製)
LTCC用のガラスセラミックス組成物は、ガラス粉末とセラミックス粉末とバインダー樹脂を含有し、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加して調製される。
【0037】
上記ガラスセラミックス組成物に用いるガラス粉末は、必ずしも限定されないものの、ガラス転移点が550℃以上、700℃以下が好ましい。ガラス転移点が550℃未満の場合、脱脂が困難となるおそれがあり、700℃を超える場合、収縮開始温度が高くなり、寸法精度が低下するおそれがある。
【0038】
また、800℃以上、930℃以下で焼成したときに結晶が析出することが好ましい。結晶が析出しない場合、十分な機械的強度を得ることができないおそれがある。さらに、DTA(示差熱分析)により測定される結晶化ピーク温度であるTcが880℃以下が好ましい。Tcが880℃を超える場合、寸法精度が低下するおそれがある。
【0039】
このようなガラス粉末としては、例えば、下記の酸化物換算のmol%の表示で、SiO
2を57mol%以上、65mol%以下、B
2O
3を13mol%以上、18mol%以下、CaOを9mol%以上、23mol%以下、Al
2O
3を3mol%以上、8mol%以下、K
2OおよびNa
2Oから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5mol%以上、6mol%以下含有するものが好ましい。これにより、得られる基体や枠体の表面の平坦度を向上させることが容易となる。
【0040】
ここで、SiO
2は、ガラスのネットワークフォーマとなる。SiO
2の含有量が57mol%未満の場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。一方、SiO
2の含有量が65mol%を超える場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。SiO
2の含有量は、好ましくは58mol%以上、より好ましくは59mol%以上、特に好ましくは60mol%以上である。また、SiO
2の含有量は、好ましくは64mol%以下、より好ましくは63mol%以下である。
【0041】
B
2O
3は、ガラスのネットワークフォーマとなる。B
2O
3の含有量が13mol%未満の場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。一方、B
2O
3の含有量が18mol%を超える場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。B
2O
3の含有量は、好ましくは14mol%以上、より好ましくは15mol%以上である。また、B
2O
3の含有量は、好ましくは17mol%以下、より好ましくは16mol%以下である。
【0042】
Al
2O
3は、ガラスの安定性、化学的耐久性、および強度を高めるために添加される。Al
2O
3の含有量が3mol%未満の場合、ガラスが不安定となるおそれがある。一方、Al
2O
3の含有量が8mol%を超える場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。Al
2O
3の含有量は、好ましくは4mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。また、Al
2O
3の含有量は、好ましくは7mol%以下、より好ましくは6mol%以下である。
【0043】
CaOは、ガラスの安定性や結晶の析出性を高めると共に、ガラス溶融温度やガラス転移点を低下させるために添加される。CaOの含有量が9mol%未満の場合、ガラス溶融温度が過度に高くなるおそれがある。一方、CaOの含有量が23mol%を超える場合、ガラスが不安定となるおそれがある。CaOの含有量は、好ましくは12mol%以上、より好ましくは13mol%以上、特に好ましくは14mol%以上である。また、CaOの含有量は、好ましくは22mol%以下、より好ましくは21mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
【0044】
K
2O、Na
2Oは、ガラス転移点を低下させるために添加される。K
2OおよびNa
2Oの合計した含有量が0.5mol%未満の場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。一方、K
2OおよびNa
2Oの合計した含有量が6mol%を超える場合、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがあり、電気的絶縁性も低下するおそれがある。K
2OおよびNa
2Oの合計した含有量は、0.8mol%以上5mol%以下が好ましい。
【0045】
なお、ガラス粉末は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、ガラス転移点等の諸特性を満たす範囲で他の成分を含有できる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10mol%以下が好ましい。
【0046】
ガラス粉末は、上記したようなガラス組成となるように調合されたガラス原料を溶融してガラスを製造し、得られたガラスを乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕することにより得る。湿式粉砕法の場合、溶媒としては水が好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行う。
【0047】
ガラス粉末の50%粒径(D
50)は0.5μm以上、2μm以下が好ましい。ガラス粉末の50%粒径が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集しやすく、取り扱いが困難となると共に、均一に分散させることが困難となる。一方、ガラス粉末の50%粒径が2μmを超える場合、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。粒径の調整は、例えば粉砕後に必要に応じて分級することにより行う。なお、本明細書において、粒径はレーザ回折散乱法による粒子径測定装置により得られる値をいう。
【0048】
一方、セラミックス粉末としては、従来からLTCC基板の製造に用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばアルミナ粉末、ジルコニア粉末、またはアルミナ粉末とジルコニア粉末との混合物を好適に用いることができる。また、本発明において必要に応じて用いられる、拡散反射性を有するLTCCを作製する場合には、上記セラミックス粉末として、アルミナ粉末とジルコニア粉末との混合物が好ましく用いられる。アルミナ粉末とジルコニア粉末の混合物としては、(アルミナ粉末:ジルコニア粉末)の混合割合が、質量比で90:10〜60:40の混合物が好ましい。セラミックス粉末の50%粒径(D
50)は、上記いずれの場合も、例えば0.5μm以上、4μm以下が好ましい。
【0049】
このようなガラス粉末とセラミックス粉末とを、例えばガラス粉末が30質量%以上、50質量%以下、セラミックス粉末が50質量%以上、70質量%以下となるように配合、混合することによりガラスセラミックス混合物を得る。
【0050】
このガラスセラミックス混合物に、バインダー樹脂、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加し十分に混合することによりスラリー状のガラスセラミックス組成物を得る。バインダー樹脂としては、例えばポリビニルブチラール、アクリル樹脂等が好適に用いられる。また、ガラスセラミックス組成物におけるバインダー樹脂の配合量としては、ガラスセラミックス混合物100質量部に対して5〜15質量部が好ましい。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等が用いられる。また、溶剤としては、トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノール等の有機溶剤が好適に用いられる。
【0051】
なお、LTCC用のガラスセラミックス組成物に換えて、酸化アルミニウム質焼結体用のセラミックス組成物や窒化アルミニウム質焼結体用のセラミックス組成物等を用いる場合には、上記ガラスセラミックス混合物に換えて酸化アルミニウム粉末や窒化アルミニウムを主成分とする従来公知のセラミックス粉末を用いて、その他成分は上記の場合と同様として、スラリー状の上記各セラミックス組成物を調製する。
【0052】
(基体用グリーンシートの作製)
上記で得られたスラリー状のガラスセラミックス組成物を、ドクターブレード法等により、焼成後の形状・厚さが所望の範囲内となるような所定の形状、厚さのシートに成形し、乾燥させることで基体用グリーンシート2を作製する。
【0053】
通常、複数のセラミックスグリーンシートを積層して素子基板を作製する場合、素子基板となる領域の周辺に余剰部を有するように各グリーンシートを成形する。そして、この余剰部を用いて工程ごとに準備された支持体等に固定することで、積層ズレや以下の配線導体用ペースト等の印刷ズレを防止することが行われている。グリーンシートの余剰部は、分割溝等により素子基板となる領域と区分され、焼成後、素子基板から切り離される。
【0054】
また、サイズが小さい素子基板を作製する場合には、通常、素子基板のような配線基板を作製する際に用いられる、多数個取りの、素子基板ユニットが複数個、連結して備えられた連結基板(以下、連結基板という)を作製し、これを分割する工程を得て個々の素子基板を作製する方法が取られる。この場合には、グリーンシートは、複数個の素子基板となる領域が配列した大きさとなるように、好ましくは、さらに上記余剰部を有するように成形される。この余剰部は、上記基体用グリーンシートのみでなく、後述の枠体積層用グリーンシートおよび枠体最外層用グリーンシートにも適用される。
【0055】
以下の説明は、素子基板1個の単位で行うが、上記余剰部を有する場合であっても、連結基板を製造する場合においても、素子基板について行われる配線導体層の形成や貫通導体の形成等の処理自体は特に変わるものではない。なお、上記切り離しや分割のタイミングは、焼成後であれば、素子基板に発光素子を搭載する前でもよいし、発光素子搭載後、プリント配線基板等に半田固定・実装される前でもよい。
【0056】
ここで、
図2に示すように基体用グリーンシート2は、配線導体用のペースト層(素子接続端子用ペースト層5、外部接続端子用ペースト層6、および貫通導体用ペースト層7を含めて、配線導体用のペースト層ともいう。)を有するが、これらの配線導体用ペースト層は、通常、枠体積層用グリーンシートの積層が行われる前の段階で、基体用グリーンシート2に形成される。
【0057】
基体用グリーンシート2に配線導体用ペースト層を形成するには、基体用グリーンシート2の上記所定位置に一対の貫通導体7を配設するための、主面21から裏面23に貫通する一対の貫通孔を作製し、この貫通孔を充填するように貫通導体用ペースト層7を形成する。また、主面21に貫通導体用ペースト層7を覆うように略長方形状に素子接続端子用ペースト層5を形成するとともに、裏面23に貫通導体用ペースト層7と電気的に接続する外部接続端子用ペースト層6を形成する。
【0058】
配線導体用ペースト層の形成に用いる導体ペーストとしては、例えば銅、銀、金等を主成分とする金属粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを使用できる。なお、上記金属粉末としては、銀からなる金属粉末、銀と白金からなる金属粉末、または銀とパラジウムからなる金属粉末が好ましく用いられる。
【0059】
なお、LTCC用のガラスセラミックス組成物に換えて、酸化アルミニウム質焼結体用のセラミックス組成物や窒化アルミニウム質焼結体用のセラミックス組成物等を用いる場合には、上記配線導体用ペースト層の形成に用いる導体ペーストの金属粉末として、上記銅、銀、金等を主成分とする金属粉末に換えて、タングステンやモリブデン等の高融点金属を主成分とした金属粉末を用いればよい。
【0060】
素子接続端子用ペースト層5、外部接続端子用ペースト層6、および貫通導体用ペースト層7の形成方法としては、スクリーン印刷法により上記導体ペーストを塗布、あるいは充填する方法が挙げられる。形成される素子接続端子用ペースト層5および外部接続端子用ペースト層6の膜厚は、最終的に得られる素子接続端子および外部接続端子の膜厚が所定の膜厚となるように、好ましくは5〜15μmとなるように調整される。
【0061】
さらに、
図1には示されていないが、必要に応じて、基体2のキャビティ底面24となる領域の発光素子搭載部22や素子接続端子5形成部を除いた部分に反射層を設ける場合や、熱抵抗を低減するために基体2の内部に基体2の主面21と直交する方向にサーマルビアを埋設したり、主面21に平行する方向に放熱層を配設する場合には、この段階で、上記配線導体用ペースト層を形成するのと同様にして、基体用グリーンシート2の所望の位置にこれらを形成させるための金属ペースト層を形成する。金属ペーストとしては、セラミックス組成物の種類に応じて上記導体ペーストと同様のものが使用できる。
【0062】
以上、基体用グリーンシート2について説明したが、基体用グリーンシート2は必ずしも単一のグリーンシートからなる必要はなく、複数枚のグリーンシートを積層したものであってもよい。また、各部の形成方法等についても、素子基板の製造が可能な限度において適宜変更できる。
【0063】
(A−2)枠体積層用グリーンシート(3a、3b、3c)の作製
図2に示す3枚の枠体積層用グリーンシート(3a、3b、3c)は、上記基体用グリーンシートと同種のセラミックス組成物を用いて、通常は原料組成も同様のセラミックス組成物を用いて、上記基体用グリーンシート2と同様の方法で、まず、以下に説明する厚さのシートに成形する。
【0064】
本発明の製造方法に用いる枠体積層用グリーンシートの厚さは、用いられる枠体積層用グリーンシートの枚数により決まる。枠体積層用グリーンシートの枚数については、得られる枠体3の内壁面をテーパー状とするために複数枚用いることが必須であるが、その枚数は2枚以上であれば特に制限されない。用いる枠体積層用グリーンシートの枚数および厚さは、具体的には、最終的に得られる素子基板1の枠体3の高さや内壁面25のテーパーの角度等により適宜調整される。用いる枠体積層用グリーンシートの枚数は、2〜6枚が好ましい。
【0065】
例えば、
図1に示す素子基板1において、枠体3の高さ、すなわちキャビティ4の底面24から枠体3の最高位までの距離および枠体3の内壁面25のテーパーの角度は、搭載される発光素子からの光を光取り出し方向に十分反射できるように設計される。
【0066】
具体的には、枠体3の高さについては、発光装置を搭載する製品の形状や波長変換のための蛍光体を含有した封止材を効率よく充填する等の観点から、発光素子が搭載されたときの発光素子の最高部の高さより100〜500μm高くすることが好ましい。なお、枠体3の高さは発光素子の最高部の高さに450μmを加えた高さ以下がより好ましく、400μmを加えた高さ以下がさらに好ましい。また、枠体3の内壁面25のテーパーの角度は、基体2の主面21と枠体3の内壁面25で挟まれた角の角度(
図1においてαで示す)で20〜80°である。キャビティ4の底面24と垂直方向への光度を大きくする(換言すると指向性を高くする)ためには、30〜70°が好ましく、40〜60°がより好ましい。
【0067】
上記枠体3の高さは、枠体積層用グリーンシートと後述の枠体最外層用グリーンシートを積層し焼成して得られる積層体の合計厚さである。本発明の製造方法においては、上記枠体積層用グリーンシートおよび枠体最外層用グリーンシートの厚さは、それぞれ焼成後の厚さとして50〜200μmであることが好ましく、50〜100μmがより好ましい。この厚さが50μm未満では積層ズレ等が発生しやすく、200μmを超えると(E)工程で枠体最外層用グリーンシートにより被覆した場合、枠体積層用グリーンシートとの間に空隙が発生するおそれがある。さらに、枠体最外層用グリーンシートについては、成形後に端部がキャビティの底面に達することから、焼成後の厚さは搭載される発光素子の高さより小さいことが好ましい。なお、枠体3を形成するためのこれらグリーンシートの厚さは、各グリーンシート間で異なっていてもよく、同じ厚さであってもよい。
【0068】
上記所定の厚さで成形された3枚のそれぞれのシートには、次いで中央部に、通常の方法により、キャビティ4の底面24の形と相似形状の開口部を形成する。
図2の例では底面24の形は円形である。開口部の大きさは、最下層を構成する枠体積層用グリーンシート3aについては、キャビティ4の底面24と同じ大きさであり、その上に積層される枠体積層用グリーンシート3b、さらにその上に積層される枠体積層用グリーンシート3cと順次開口部が大面積となるように形成される。
【0069】
枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cを上記構成とすることで、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cをその順に積層した場合に階段状の内壁面を有する枠体の積層部が得られる。ここで、最終的に得られる枠体3の内壁面25のテーパーの角度は、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの厚さ(
図2において、それぞれt1、t2、t3で示す)と、これらの開口部の大きさの違いによって調整される。
【0070】
具体的には、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cが有する開口部の半径を、それぞれr1、r2、r3とした場合に、r1<r2<r3の関係が成り立ち、枠体積層用グリーンシート3aの上面における枠体積層用グリーンシート3bが積層されていない部分の幅は、r2−r1(
図2においてx1で示す)となり、枠体積層用グリーンシート3bの上面における枠体積層用グリーンシート3cが積層されていない部分の幅は、r3−r2(
図2においてx2で示す)となる。ここで、例えば、枠体3の内壁面25のテーパーの角度を、上記αの値として45°とする場合には、x1/t1およびx2/t2が1となるように開口部の大きさを調整する。
【0071】
すなわち、本発明の製造方法においては、枠体積層用グリーンシートを積層して得られる枠体の積層部の階段状の内壁面について、これらの階段の段毎に、該段の基体用グリーンシートの主面に水平な面の幅(上記x1、x2に相当する)が、該段の高さ(上記t1、t2に相当する)と等しい場合に、最終的に得られる枠体3の内壁面25のテーパーの角度を上記αの値として45°とできる。上記角度αを例えば70〜30°の範囲とするには、階段の各段の上記幅がその段の高さの0.6〜1.4倍となるように開口部の大きさを調整する。上記階段の各段の幅と高さの関係は、好ましくは、0.8〜1.2倍であり、その場合、得られる角度αの値は60〜40°である。
【0072】
なお、前記階段の各段で上記幅と高さの関係が異なる値となるように枠体積層用グリーンシートの厚さと開口部の大きさを調整すれば、枠体3の内壁面25のテーパーの角度が部分的に異なる構成とすることもできる。
【0073】
(A−3)各グリーンシートの積層
上記(A−1)工程で作製した配線導体用ペースト層を有する基体用グリーンシート2の主面21上に、上記(A−2)工程で作製した3枚の枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cを基体用グリーンシート2の主面側からその順に積層して第1の積層体1Aを得る。
ここで、積層の方法としては、次いで行われる(B)工程の第1の等方圧加圧において第1の積層体1Aにおける各グリーンシートの積層ズレ等の発生を防止する目的で、グリーンシート同士を一軸加圧等により圧着して積層体とする方法が好ましい。
【0074】
例えば、一軸加圧により各グリーンシートを積層して第1の積層体1Aを得る場合、各グリーンシートを上記順に重ね合わせたものをPETフィルム等のスペーサに挟み込み、好ましくは、グリーンシートの余剰部等の領域においてスペーサを含む全体を固定し、これを一軸プレス機により圧着し積層する。積層時の条件としては、積層するグリーンシートの枚数、厚さ、セラミックス組成物の種類、原料組成等によるが、60〜80℃、1〜4MPaで1〜3分間程度の条件が好ましい。
【0075】
一軸加圧後、上記スペーサを取り除いて、第1の積層体1Aを次の(B)工程に供するが、必要に応じて上記スペーサに挟み込んだ状態で第1の積層体1Aを次の(B)工程に供してもよい。なお、(B)工程で第1の樹脂フィルムを用いて等方圧加圧を行う場合には、上記一軸加圧を行う際に、各グリーンシートを重ね合わせたものの上に第1の樹脂フィルムを配設しておき、一軸加圧後これを取り除かずにそのまま第1の積層体1Aとともに次の(B)工程に供してもよい。この場合、第1の樹脂フィルムが上記スペーサとして十分に機能する場合は、別にスペーサを使用する必要はないが、第1の樹脂フィルムがスペーサとして不十分な場合には、この上にさらにスペーサを配設して一軸加圧を行う。
【0076】
(B)工程:第1の等方圧加圧工程
次いで、上記で得られた第1の積層体1Aを(B)工程において等方圧加圧する。
図3は、本発明の素子基板の製造方法における(B)工程を模式的に示す断面図である。
図4は、本発明の製造方法の一例によって(B)工程が終了した後の第1の積層体1Bを示す平面図(a)およびそのX−X線断面図(b)である。
【0077】
ここで、等方圧加圧は、セラミックスグリーンシートを積層して一体化する方法として、一般的に用いられる方法である。通常は、加圧対象物を全方向から均一な圧力(等方圧力)で加圧することでグリーンシート同士を強固に接合された状態とするために、等方圧加圧が用いられる。また、上記と同様の理由から、好ましくは、温間等方圧加圧(WIP:warm isostatic press)方式が用いられる。温間等方圧加圧方式(以下、WIP方式ともいう)は、具体的には、温水等の加温した流体ないし液体を圧力媒体とし、グリーンシート積層体にこの圧力媒体を介して高圧の等方圧力を加えることにより、積層したグリーンシート同士を全方位から等しい圧力で圧着させるものである。
【0078】
本発明の製造方法においては、第1の等方圧加圧の工程は、上記(A)工程で得られた第1の積層体1Aにおいて、上記枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの積層部3’が内壁面に有する階段状の角を丸めることを目的として実行される。したがって、第1の等方圧加圧はこの目的を達成できる条件を選択して行うものである。本発明の製造方法における(B)工程では、上記丸められた階段状の角の曲率半径Rが、この丸められた角を有する枠体積層用グリーンシート毎に、該グリーンシートの厚さに0.7〜1.5を乗じた値となるように等方圧加圧を行うことが好ましい。この(B)工程により丸められた階段状の角の曲率半径Rは、より好ましくは、この丸められた角を有する枠体積層用グリーンシート毎に、該グリーンシートの厚さに0.85〜1.2を乗じた値である。ここで厚さの単位はmmである。
【0079】
例えば、
図4に示される(B)工程後の第1の積層体1Bにおいては、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの開口部側の上側端縁の角は丸められて、それぞれの曲率半径がR1、R2、R3となっている。上記グリーンシートの厚さと曲率半径の関係から、R1は、t1×0.7〜t1×1.5(mm)であることが好ましく、t1×0.85〜t1×1.2(mm)がより好ましい。同様にR2は、t2×0.7〜t2×1.5(mm)であり、R2は、t3×0.7〜t3×1.5(mm)であることが好ましく、R2は、t2×0.85〜t2×1.2(mm)、R3は、t3×0.85〜t3×1.2(mm)がより好ましい
【0080】
本発明の製造方法における第1の等方圧加圧は、例えば、上で説明したセラミックスグリーンシート積層体を一体化するのに従来用いられている等方圧加圧装置を特に制限なく用いることができる。そして、その等方圧加圧の条件を、上記枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの積層部3’が内壁面に有する階段状の角を丸めるように、好ましくは、曲率半径R1、R2、R3を上記好ましい範囲とするような条件に設定して実行される。なお、以下に説明する通り、第1の等方圧加圧は加温条件下で行うことが好ましいことから、等方圧加圧装置としては、WIP方式に対応した装置が好ましく用いられる。さらに、本発明においては、各層同士を接合させる目的でグリーンシートに含まれるバインダー樹脂の軟化点より高い温度でプレスする必要があるため、WIP方式の水圧プレスを用いることが好ましい。
【0081】
図3は、等方圧加圧装置としてWIP方式の水圧プレスを用いた場合を例にして、本発明の製造方法における第1の等方圧加圧工程を模式的に示した図である。以下、
図3を参照して第1の等方圧加圧工程の具体的な条件について説明する。
図3(1)は、第1の積層体1Aを水圧プレスに供するために行う下準備を示す図である。
図3(2)は、
図3(1)により下準備された第1の積層体1Aが等方圧加圧されている状態を示す図である。
【0082】
図3(1)に示すように、等方圧加圧を行う際には、通常、第1の積層体1Aは、支持板32(例えば、ステンレス等の金属製の支持板)上に載置される。このとき、第1の積層体1Aと支持板32とが直接触れないように両者間に例えばPETフィルム等のスペーサ33を挟む。このスペーサを挟むことにより、支持板32への外部接続端子用ペースト層6の付着を防げる。このスペーサ33は、上記一軸プレス機による圧着の際に用いたスペーサをそのまま使用してもよい。また、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの積層部3’が内壁面に有する階段状の角を曲率半径が上記範囲となるように丸めるために、第1の積層体1Aの上側加圧面上に第1の樹脂フィルム31を配設する。
【0083】
このように第1の積層体1Aの上下に各種部材が積層されたものを
図3(1)に示すように、真空包装用の樹脂袋34に入れる。なお、第1の積層体1Aの上下に各種部材を積層する際には、例えば、グリーンシートの余剰部分を利用するなどをして、第1の積層体1Aや各種部材が自由に動かないように、これら全体が固定されていることが好ましい。次いで樹脂袋34から空気35を抜いて真空包装し、樹脂袋ごと圧力容器(図示されず)に入れて圧力容器を密閉することで下準備が終了する。
【0084】
上記密閉された圧力容器を、水圧プレスすることにより、第1の積層体1Aに等方圧加圧が施される。具体的には、以下の好ましい温度条件に加熱された水が満たされた熱水槽の中に圧力容器を浸漬する。この状態で圧力容器の内部圧力を増加させ、以下の好ましい圧力条件で数分から数10分間維持した後、圧力容器の内部加圧を解除する。
図3(2)は、水36(温水)の圧力により等方圧加圧中の第1の積層体1Aの状態を示す。
【0085】
圧力容器を熱水槽から回収し、その中から樹脂袋34を取り出し、さらに樹脂袋34から上下に各種部材が積層された等方圧加圧後の第1の積層体1Bを取り出す。さらに、支持板32、スペーサ33、第1の樹脂フィルム31を取り外すことで第1の等方圧加圧が終了する。
【0086】
ここで、曲率半径(R1、R2、R3)を上記好ましい範囲とするための第1の等方圧加圧の条件としては、温度条件については、枠体積層用グリーンシートが含有するバインダー樹脂のガラス転移点を超えガラス転移点より20℃高い温度以下の温度範囲が好ましい。例えば、上記セラミックス組成物の調製においてバインダー樹脂として、ポリビニルブチラールやアクリル樹脂等を用いた場合には、好ましい温度範囲は概ね60〜80℃の間である。第1の等方圧加圧の圧力条件としては、5〜30MPaの圧力範囲が好ましく、10〜20MPaがより好ましい。等方圧加圧時間は概ね3〜20分間が好ましい。
【0087】
また、上記第1の積層体1Aの上側加圧面上に配設される第1の樹脂フィルム31には、
図3(2)に示される通り、第1の等方圧加圧に際して、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの積層部3’が有する階段状の内壁面からキャビティの底面にまで十分に密着し、さらに上記温度、圧力条件での等方圧加圧により階段状の角が適度に押し潰されるように圧力が作用するような性質が求められる。
【0088】
上記のように作用するために第1の樹脂フィルム31は、膜厚が50〜80μm、かつJIS C 2318により測定される破断強度が150〜210MPaの性質を有する樹脂フィルムであることが好ましい。以下、特に断りのない限り、破断強度は、JIS C 2318により測定される破断強度をいう。
樹脂フィルムの膜厚はさらに65〜75μmがより好ましい。樹脂フィルムの膜厚が50μm未満では、上記階段の角が十分に丸められない場合があり、80μmを超えると、
図3(2)に示すように枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの積層部3’の下層部すなわち枠体積層用グリーンシート3aが構成する内壁部分への第1の樹脂フィルム31の密着性が十分でないことがある。
【0089】
第1の樹脂フィルム31の破断強度はさらに160〜190MPaがより好ましい。第1の樹脂フィルム31の破断強度が上記150MPa未満では、上記階段の角が十分に丸められない場合があり、210MPaを超えると上記階段の角が必要以上に押し潰されて所望のテーパー角度が得られないことがある。
本発明において用いる第1の樹脂フィルムは、上記好ましい膜厚と破断強度の関係を有する樹脂フィルムであれば材質は特に制限されないが、具体的な材質として、PETが挙げられる。
【0090】
(C)工程:枠体最外層用グリーンシートを作製する工程
枠体最外層用グリーンシート3dは、上記(A−1)工程、および(A−2) 工程で説明した各グリーンシートと同様に、セラミックス粉末とバインダー樹脂を含むセラミックス組成物を用いて作製される。用いるセラミックス組成物は、上記(A−1)工程で説明した通り、基体用グリーンシート2、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cと同種のセラミックス組成物とする。原料組成は適宜調整可能であるが、通常は原料組成も基体用グリーンシート2、枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cと同様のセラミックス組成物を用いる。
【0091】
枠体最外層用グリーンシート3dは、上記基体用グリーンシート2と同様の方法で、まず、焼成後の厚さが上記(A−2)工程で説明した所定の厚さとなるシート状成形物に成形した後、中央部に以下の形状、大きさの開口部となる貫通孔を通常の方法で形成することで作製される。枠体最外層用グリーンシート3dが有する開口部は、上記枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cの開口部と相似形状、すなわち本例においては円形であり、面積が上記最下部に積層された枠体積層用グリーンシート3aの開口部の面積より小さくなるように形成される。
【0092】
枠体最外層用グリーンシート3dが有する開口部の大きさは、具体的には、積層後、枠体最外層用グリーンシート3dが、後述の(E)工程の第2の等方圧加圧によって曲げ加工された際に、枠体積層用グリーンシート積層部3’最上面から内壁面を覆い、さらに基体用グリーンシート2の主面上の素子接続端子用ペースト層5に達しないような大きさであれば特に制限されない。枠体最外層用グリーンシート3dの開口部の大きさは、好ましくは、本例に示すように、積層した際にその開口部を構成する端面8が、上記枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁の最上部の位置つまり
図5(b)においてEで示す位置から、上記積層部3’の内壁面を覆う長さ、つまり
図5においてLで示されるだけ内側に位置するような大きさである。
【0093】
なお、枠体最外層用グリーンシート3dにおける上記の長さLを、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面を覆う長さよりも長くすると、枠体最外層用グリーンシート3dの一部がキャビティ4の底面24を覆うようになる。必要に応じて、このような構成の枠体最外層用グリーンシート3dを用いる場合もあるが、通常は、上記の長さLは、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面を覆う長さに等しい長さとする。
ただし、(E)工程の第2の等方圧加圧によって曲げ加工される際に、枠体最外層用グリーンシート3dは枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面を覆う部分では円周方向に延伸されるため、長さ方向での変化が起こる場合がある。したがって、より好ましくは、枠体最外層用グリーンシート3dの作製において、上記の長さLを、(E)工程の第2の等方圧加圧によって枠体最外層用グリーンシート3dが曲げ加工された際に、枠体積層用グリーンシート積層部3’最上面から内壁面を覆い、その開口部端面8が基体用グリーンシート2の主面21に達する程度の長さに調整する。
【0094】
また、枠体最外層用グリーンシート3dの作製は、予め、例えば(A)工程において他のグリーンシートを作製する際に同時に行ってもよいし、(B)工程後、第2の積層工程の前に単独で行ってもよい。
【0095】
さらに、必要に応じて、枠体最外層用グリーンシート3dは、積層した際に上側となる面に反射層用の金属ペースト層を有してもよい。金属ペースト層は、基体用グリーンシート2に反射層用の金属ペースト層を形成するのと同様の方法で形成できる。また、金属ペーストとしては、セラミックス組成物の種類に応じて上記(A−1)工程の基体用グリーンシート2の作製で記載した導体ペーストと同様のものが使用できる。
【0096】
(D)工程:第2の積層工程
図5は、本発明の製造方法の一例において(D)の第2の積層工程により得られた第2の積層体1Cの平面図(a)およびそのX−X線断面図(b)を示す図である。
(D)工程においては、上記(B)工程で得られた第1の積層体1B上に、上記(C)工程により作製された枠体3の最外層を構成する板状の枠体最外層用グリーンシート3dを積層する。
【0097】
すなわち、上記(C)工程により作製された枠体最外層用グリーンシート3dを、上記(B)工程で得られた第1の積層体1Bの最上部に、開口部が上記最下部に積層された枠体積層用グリーンシート3aの開口部の内側に位置するように積層して第2の積層体1Cを得る。積層の方法としては、次いで行われる(E)工程の第2の等方圧加圧において第2の積層体1Cにおける枠体最外層用グリーンシート3dの積層ズレ等の発生を防止する目的で、第1の積層体1Bに枠体最外層用グリーンシート3dを一軸加圧等により圧着して積層体とする方法が好ましい。
【0098】
例えば、一軸加圧により第1の積層体1Bに枠体最外層用グリーンシート3dを積層して第2の積層体1Cを得る場合、第1の積層体1Bに枠体最外層用グリーンシート3dを重ね合わせたものをPETフィルム等のスペーサに挟み込み、好ましくは、グリーンシートの余剰部等の領域においてスペーサを含む全体を固定し、これを一軸プレス機により圧着し積層する。積層時の条件としては、積層するグリーンシートの厚さ、セラミックス組成物の種類、原料組成等によるが、60〜80℃、1〜4MPaで1〜3分間程度の条件が好ましい。
【0099】
一軸加圧後、上記スペーサを取り除いて、第2の積層体1Cを次の(E)工程に供するが、必要に応じて上記スペーサに挟み込んだ状態で第2の積層体1Cを次の(E)工程に供してもよい。なお、(E)工程で第2の樹脂フィルムを用いて等方圧加圧を行う場合には、上記一軸加圧を行う際に、第1の積層体1Bに枠体最外層用グリーンシート3dを重ね合わせたものの上に第2の樹脂フィルムを配設しておき、一軸加圧後これを取り除かずにそのまま第2の積層体1Cとともに次の(E)工程に供してもよい。この場合、第2の樹脂フィルムが上記スペーサとして十分に機能する場合は、別にスペーサを使用する必要はないが、第2の樹脂フィルムがスペーサとして不十分な場合には、この上にさらにスペーサを配設して一軸加圧を行う。
【0100】
(E)工程:第2の等方圧加圧工程
次いで、上記(D)工程で得られた第2の積層体を(E)工程において等方圧加圧する。
図6は、本発明の素子基板の製造方法における(E)工程を模式的に示す断面図である。
図7は、本発明の製造方法の一例によって(E)工程が終了した後の第2の積層体1C、すなわち本発明の発光素子用基板となる未焼結素子基板1を示す平面図(a)およびそのX−X線断面図(b)である。
【0101】
本発明の製造方法においては、第2の等方圧加圧は、
図7の特に断面図(b)に示すように、上記(D)工程で得られた第2の積層体1Cにおいて、上記枠体最外層用グリーンシート3dが上記枠体積層用グリーンシート積層部3’の最上面から内壁面を覆う構成となるように加工することを目的として行われる。したがって、第2の等方圧加圧はこの目的を達成できる条件を選択して行うものである。
【0102】
第2の等方圧加圧によって、枠体最外層用グリーンシート3dは、上記枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁の最上部の位置、つまり
図7(b)においてEで示す位置から折り曲げられ、その位置Eから開口部を構成する端面8までの長さLの部分が枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面を全て覆う形に加工され、未焼結素子基板1となる。また、
図7(b)において、加工後の枠体最外層用グリーンシート3dの端面8は、一部が基体用グリーンシート2の主面21の一部で構成されるキャビティ4の底面24に達している。
【0103】
なお、上記の通り、本例において枠体最外層用グリーンシート3dにおける上記の長さLは、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面を覆う長さに等しい長さとなっている。また、この枠体最外層用グリーンシート3dの端面8は、通常、第2の等方圧加圧後もほぼそのままの形状を維持している。したがって、
図7(b)に示される通り、得られる未焼結素子基板1における枠体の内壁面としては、枠体最外層用グリーンシート3dと基体用グリーンシート2との接合点から上に、まず枠体最外層用グリーンシート3dの端面8によって構成される最下部が位置し、その上に枠体最外層用グリーンシートの上側主面によって構成される枠体内壁面を実質的に構成する部分が位置する構成となる。
【0104】
すなわち、この未焼結素子基板1の段階で、枠体の内壁面が、基体との境界部から枠体最外層用グリーンシートの焼成後の厚さと略同等の高さの位置までは下部に向かって拡開するテーパー形状を有し、前記位置より上部は上部に向かって拡開するテーパー形状である本発明の素子基板の構成が形成される。さらに、この枠体最外層用グリーンシート3dの端面8の形状は、次の(F)工程の焼成工程後もほぼそのまま維持される。
【0105】
ここで、最終的に得られる焼成後の素子基板において、枠体の内壁面を実質的に構成する上部に向かって拡開するテーパー形状を有する部分の好ましいテーパーの角度は上記の通りである。一方、枠体最外層用グリーンシート3dの端面8によって構成される枠体内壁面の最下部においては、最終的に得られる焼成後の素子基板の状態として、下部に向かって拡開するテーパー形状のテーパーの角度(
図1においてβで示す)は、概ね60°以上、90°未満であることが好ましく、70以上、80°以内であることがより好ましい。80°以内とすることでキャビティに充填する蛍光体を含有した封止材がキャビティとの接着性の弱さから脱落しないという副次的な効果がより顕著になり、また70°以上とすることで封止剤がより隙間なく充填できる。
なお、この角度は、枠体最外層用グリーンシート3dにおける枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁の最上部の位置Eから開口部を構成する端面8までの長さLによって調整可能である。枠体内壁面の最下部がこのような形状を有することで、これを用いて発光装置とした際にキャビティ4を充填するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの充填剤からなる封止層13の素子基板からの剥離強度を高めることができる。
【0106】
上記構成の未焼結素子基板1を得るための第2の等方圧加圧は、上記第1の等方圧加圧において、加圧する積層体の上側加圧面上に配設する第1の樹脂フィルムを第2の樹脂フィルムに換える以外は、同様にして実行できる。したがって、用いる等方圧加圧装置としては、WIP方式に対応した装置が好ましく用いられる。さらに、本発明においては、各層同士を接合させる目的でグリーンシートに含まれるバインダー樹脂の軟化点より高い温度でプレスする必要があるため、WIP方式の水圧プレスを用いることが好ましい。
図6は、等方圧加圧装置としてWIP方式の水圧プレスを用いた場合を例にして、本発明の製造方法における第2の等方圧加圧工程を模式的に示す図である。以下、
図6を参照して第2の等方圧加圧工程の具体的な条件について説明する。
【0107】
図6(1)は、第2の積層体1Cを水圧プレスに供するために行う下準備を示す図である。
図6(2)は、
図6(1)により下準備された第2の積層体1Cが等方圧加圧されている状態を示す図である。
図6(1)に示すように、等方圧加圧を行う際には、通常、第2の積層体1Cは支持板32、例えばステンレス等の金属製の支持板上に載置される。このとき、第2の積層体1Cと支持板32とが直接触れないように両者間に、例えばPETフィルム等のスペーサ33を挟む。このスペーサ33は、上記一軸プレス機による圧着の際に用いたスペーサをそのまま使用してもよい。また、枠体最外層用グリーンシート3dが、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁の最上部の位置から折り曲げられ、上記長さLの部分が該積層部3’の内壁面を全て覆う形に加工されるように、第2の積層体1Cの上側加圧面上に第2の樹脂フィルム37を配設する。
【0108】
このように第2の積層体1Cの上下に各種部材が積層されたものを
図6(1)に示すように、真空包装用の樹脂袋34に入れる。なお、第2の積層体1Cの上下に各種部材を積層する際には、例えば、グリーンシートの余剰部分を利用するなどをして、第2の積層体1Cや各種部材が自由に動かないように、これら全体が固定されていることが好ましい。次いで樹脂袋34から空気35を抜いて真空包装し、樹脂袋ごと図示されていない圧力容器に入れて圧力容器を密閉することで下準備が終了する。
【0109】
上記密閉された圧力容器を、水圧プレスすることにより、第2の積層体1Cは等方圧加圧される。具体的には、以下の好ましい温度条件に加熱された水が満たされた熱水槽の中に圧力容器を浸漬する。この状態で圧力容器の内部圧力を増加させ、以下の好ましい圧力条件で数分から数10分間維持した後、圧力容器の内部加圧を解除する。
図6(2)は、温水である水36の圧力により等方圧加圧中の第2の積層体1Cの状態を示す。
【0110】
圧力容器を熱水槽から回収し、その中から樹脂袋34を取り出し、さらに樹脂袋34から上下に各種部材が積層された等方圧加圧後の第2の積層体1C、すなわち発光素子用基板となる未焼結素子基板1を取り出す。さらに、支持板32、スペーサ33、第2の樹脂フィルム37を取り外すことで第2の等方圧加圧が終了する。
【0111】
ここで、第2の等方圧加圧の条件としては、温度条件については、枠体最外層用グリーンシートが含有するバインダー樹脂のガラス転移点を超えガラス転移点より20℃高い温度以下の温度範囲が好ましい。例えば、上記セラミックス組成物の調製においてバインダー樹脂として、ポリビニルブチラールやアクリル樹脂等を用いた場合には、好ましい温度範囲は概ね60〜80℃の間である。通常、用いるセラミックス組成物は、素子基板内で同じ組成とするため、温度条件は、上記第1の等方圧加圧の条件と同様とすることができる。第2の等方圧加圧の圧力条件としては、5〜30MPaの圧力範囲が好ましく、10〜20MPaがより好ましい。等方圧加圧時間は概ね3〜20分間が好ましく、圧力条件、加圧時間ともに上記第1の等方圧加圧の条件と同様である。
【0112】
上記第2の積層体1Cの上側加圧面上に配設される第2の樹脂フィルム37には、
図6(2)に示される通り、第2の等方圧加圧に際して、上記温度、圧力条件で、枠体最外層用グリーンシート3dが枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁の最上部の位置から折り曲げられ、上記長さLの部分が該積層部3’の内壁面を全て覆う形に十分に密着されるように圧力が作用するような性質が求められる。
【0113】
上記のように作用するために第2の樹脂フィルム37は、膜厚が30〜50μm、かつ破断強度が230〜300MPaの性質を有する樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムの膜厚はさらに35〜40μmがより好ましい。樹脂フィルムの膜厚が30μm未満では、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面の階段状の形状が枠体最外層用グリーンシート3dの表面に上に現れる場合があり、50μmを超えると、上記枠体最外層用グリーンシート3dが折り曲げられる部分での角が潰れやすくなる。
【0114】
第2の樹脂フィルム37の破断強度はさらに250〜280MPaがより好ましい。第2の樹脂フィルム37の破断強度が上記230MPa未満では、枠体最外層用グリーンシート3dの枠体積層用グリーンシート積層部3’への密着性が十分に得られない場合があり、300MPaを超えると上記枠体最外層用グリーンシート3dが折り曲げられる部分での角が潰れやすくなる。
本発明において用いる第2の樹脂フィルムは、上記好ましい膜厚と破断強度の関係を有する樹脂フィルムであれば材質は特に制限されないが、具体的な材質として、PETが挙げられる。
【0115】
(F)工程:焼成工程
上記(E)工程後、得られた未焼結素子基板1について、必要に応じてバインダー樹脂等を除去するための脱脂を行い、セラミックス組成物等を焼結させるための焼成を行う。焼成温度は、用いるセラミックス組成物により異なる。
【0116】
セラミックス組成物としてLTCC用のガラスセラミックス組成物を用いた場合は、焼成温度を800℃〜930℃とすることが好ましい。焼成に先立って脱脂を行う場合は、例えば、未焼結素子基板1を500℃以上、600℃以下の温度で1時間以上、10時間以下保持することにより行える。脱脂温度が500℃未満もしくは脱脂時間が1時間未満の場合、バインダー等を十分に除去できないおそれがある。一方、脱脂温度は600℃程度、脱脂時間は10時間程度とすれば、十分にバインダー等を除去でき、これを超えるとかえって生産性等が低下するおそれがある。
【0117】
焼成は、基体2および枠体3の緻密な構造の獲得と生産性を考慮して、800℃〜930℃の温度範囲で適宜時間を調整することで行える。具体的には、850℃以上、900℃以下の温度で20分以上、60分以下保持することが好ましく、特に860℃以上、880℃以下の温度で行うことが好ましい。焼成温度が800℃未満では、焼結が不充分となり基体2および枠体3が緻密な構造とならないおそれがある。一方、焼成温度は930℃を超えると基体が変形するなど生産性等が低下するおそれがある。また、上記配線導体用の導体ペーストやその他反射層やサーマルビア等の金属層用の金属ペーストとして、銀を主成分とする金属粉末を含有する金属ペーストを用いた場合、焼成温度が880℃を超えると、過度に軟化するために所定の形状を維持できなくなるおそれがある。
【0118】
セラミックス組成物としてアルミナセラミックス用組成物を用いた場合は、未焼結素子基板1を焼結させるための焼成温度は1400〜1700℃が好ましい。焼成に先立って脱脂を行う場合は、例えば、200℃以上、500℃以下の温度で約1時間以上10時間以下保持する条件が好ましい。焼成は、例えば、1400℃以上、1700℃以下の温度で数時間保持する条件が好ましい。ただし、加熱時、特に焼成時に導体を酸化させないために、還元雰囲気(例えば、水素雰囲気)中、もしくは不活性ガス雰囲気中、もしくは真空中などの、非酸化性雰囲気が保たれた状態で、加熱をしなければならない。
【0119】
以上、LTCC基板、アルミナ基板を例にして焼成条件について説明したが、上記焼成条件は、これらのセラミックス基板の製造において従来公知の条件であり、これ以外のセラミックス材料を用いた場合についても、その材料において通常適用される焼成条件により焼成を行えばよい。
【0120】
このようにして、未焼結素子基板1が焼成され、発光素子用基板1が得られるが、焼成後、必要に応じて素子接続端子5および外部接続端子6の全体を被覆するように、ニッケルメッキ、クロムメッキ、銀メッキ、ニッケル/銀メッキ、金メッキ、ニッケル/金メッキ等の通常、素子基板において導体保護用に用いられる導電性保護層をそれぞれ施してもよい。これらのうちでも、ニッケルメッキの上に金メッキを施すニッケル/金メッキが好ましく用いられ、例えば、ニッケルメッキ層はスルファミン酸ニッケル浴等を使用して、金メッキ層はシアン化金カリウム浴等を使用して、それぞれ電解メッキによって形成できる。
【0121】
また、LTCC基板以外のセラミックス基板では上記焼成温度が高いため、未焼結素子基板1において必要に応じて形成される反射層として反射性のよい銀等を主成分とする金属ペースト層を形成できない。LTCC基板以外のセラミックス基板において、銀反射層等を形成させる場合は、上記(F)工程の焼成工程後に、スクリーン印刷法、スパッタ蒸着法やインクジェット塗布法等の方法を組み合わせて形成させればよい。
【0122】
以上、本発明の素子基板の製造方法における実施形態について例を挙げて説明したが、本発明の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更できる。
【0123】
本発明の製造方法により得られるテーパー状側面のキャビティを有するセラミックス素子基板においては、実質的にテーパーの傾斜が均一であり発光装置とした際に、光の取り出し効率や光の指向性が良好なものとなる。さらに、本発明の製造方法によれば、キャビティ側面のテーパーの傾斜角度を精度よく制御できることから、光学装置の設計の自由度を増大させる効果も得られる。さらに、製造に係る金型等の高価な機材を必要としないため経済的に有利である。また、研磨機等による方法に比べて生産性もよい。
【0124】
また、本発明の製造方法においては、キャビティのテーパー状側面がキャビティ底面近傍を除く大部分の側面では上部に向かって拡開するテーパー形状を有しながら、キャビティ底面近傍の極く一部においてキャビティ底面に向かって拡開するテーパー形状を有する本発明のセラミックス素子基板が製造可能である。
【0125】
本発明の素子基板は、主面が平坦な板状のセラミックス基体と、前記基体の上側主面に形成されたセラミックス枠体とを有し、前記基体の上側主面の一部を底面とし前記枠体の内壁面を側面として形成されるキャビティの底面に発光素子の搭載部を有する素子基板であって、前記枠体の内壁面は、キャビティ底面近傍の領域においてはキャビティ底面に向かって拡開するテーパー形状を有し、前記キャビティ底面近傍を除く領域においては上部に向かって拡開するテーパー形状を有することを特徴とする。
【0126】
このような素子基板としては、例えば、前記セラミックス枠体が、互いに相似形状で面積がそれぞれ異なる開口部を中央部に有する複数枚の板状のグリーンシートを、基板用グリーンシートの上側主面に、開口部の面積が最小のグリーンシートを除いて下側から開口部の面積が小さい順に積層し、さらに最上部に開口部の面積が最小のグリーンシートを積層した後、前記最上部のグリーンシートをその開口部側の一部がそれ以外のグリーンシート積層体の内壁面を覆い、かつその開口部側の端面が前記キャビティの底面に達する構成となるように曲げ加工し、焼成して得られるセラミックス枠体であって、前記キャビティ底面近傍の領域においてキャビティ底面に向かって拡開するテーパー形状を有する部分は、焼成後の前記最上部のグリーンシートの開口部側の端面で構成される素子基板が挙げられる。
【0127】
また、前記枠体の内壁面においてキャビティ底面に向かって拡開するテーパー形状を有する領域としては、少なくとも該キャビティ底面から前記枠体の高さの1/10の高さの位置までの領域であることが好ましく、上限としては該キャビティ底面から前記枠体の高さの3/10の高さの位置までの領域とすることが好ましい。この領域の下限としては、キャビティ底面から前記枠体の高さの1.5/10の高さの位置までの領域とすることがより好ましく、上限としてはキャビティ底面から前記枠体の高さの2/10の高さの位置までの領域とすることがより好ましい。また、本発明の素子基板においては、
図1に示される素子基板のように、上記キャビティ底面近傍の領域を除く領域における枠体の内壁面は、上部に向かって拡開するテーパー形状を有するものである。
【0128】
ここで、本発明の素子基板を構成するセラミックスの種類および枠体内壁面のキャビティ底面近傍の領域におけるテーパーの角度およびキャビティ底面近傍の領域以外の領域におけるテーパーの角度等については特に限定されないが、具体的には、上記本発明の製造方法において説明した態様と同様とすることができる。
【0129】
このような本発明のセラミックス素子基板は、上記の通り、例えば上記本発明の製造方法により製造可能であるが、上記構成を有する限り製造方法はこれに限定されるものではない。また、上記テーパー状側面に特徴のあるキャビティを有する本発明のセラミックス素子基板においては、光の取り出し効率や光の指向性の特性に加えて、これを用いて発光装置を製造する際にキャビティ内に充填される充填剤からなる封止層との密着性を高めることが可能となる。
【0130】
本発明の素子基板、例えば、本発明の製造方法により得られる均一傾斜のテーパー状側面を有するキャビティを備えた素子基板を用いた発光装置は、例えば携帯電話やパソコンや平面テレビの液晶ディスプレイ等のバックライト、自動車用あるいは装飾用の照明、一般照明、その他の光源として好適に使用できる。
【実施例】
【0131】
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例]
以下に説明する、
図2〜
図7に模式的に示される方法で、
図1に示す発光装置10の素子基板1と同様の構造の素子基板を作製した。なお、上記と同様に、焼成の前後で部材に用いる符号は同じものを用いた。
【0132】
(A)第1の積層工程(第1の積層体を得る工程)
まず、素子基板1の基体2および枠体3を作製するための基体用グリーンシート2、枠体用グリーンシート(枠体積層用グリーンシートおよび枠体最外層用グリーンシート)を作製した。
各グリーンシートは、酸化物換算のmol%表示で、SiO
2が60.4mol%、B
2O
3が15.6mol%、Al
2O
3が6mol%、CaOが15mol%、K
2Oが1mol%、Na
2Oが2mol%の組成のガラスとなるように、原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0133】
このガラス粉末が35質量%、アルミナ粉末(昭和電工社製、商品名:AL−45H)が40質量%、ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名:HSY−3F−J)が25質量%となるように配合し、混合することによりガラスセラミックス混合物を製造した。このガラスセラミックス混合物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダー樹脂としてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)0.5gを配合し、混合してスラリー状のガラスセラミックス組成物を調製した。
【0134】
このガラスセラミックス組成物をPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、グリーンシートを作製し、乾燥させ、得られたグリーンシートを積層して、略平板状であって焼成後の厚さが0.5mmとなる基体用グリーンシート2を作製した。同様の方法により、焼成後の厚さがそれぞれ0.10mm、0.09mm、0.06mmの3種類の枠体用グリーンシートを作製した。
これらの枠体用グリーンシートを用いて、枠外の形状が基体用グリーンシート2と同様であり、中央部に焼成後の直径が4.44mm(=2r
1)となる略円形状の開口部を有する焼成後の厚さが0.06mmの枠体積層用グリーンシート3a、中央部に焼成後の直径が4.56mm(=2r
2)となる略円形状の開口部を有する焼成後の厚さが0.09mmの枠体積層用グリーンシート3b、中央部に焼成後の直径が4.74mm(=2r
3)となる略円形状の開口部を有する焼成後の厚さが0.10mmの枠体積層用グリーンシート3cを作製した。なお、上記枠体用グリーンシートにおける開口部の作製は、孔空け機を用いて形成した。
【0135】
ここで、本実施例においては、素子基板1を連結基板として製造し、後述の焼成後に、1個ずつに分割して、5mm×5mmの外寸の略正方形の素子基板1とした。以下の記載は、連結基板のうちの、分割後、1個の素子基板1となる一区画について説明するものである。
【0136】
一方、導電性粉末(銀粉末:大研化学工業社製、商品名:S550)と、ビヒクルとしてのエチルセルロースとを、質量比85:15の割合で配合し、固形分が85質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って配線導体用ペーストを製造した。
【0137】
また、金属層用ペーストは、銀粉末(大研化学工業社製、商品名:S400−2)と、ビヒクルとしてのエチルセルロースとを質量比90:10の割合で配合し、固形分が87質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練し、さらに三本ロールにて3回分散して製造した。
【0138】
基体用グリーンシート2の一対の貫通導体7に相当する部分に孔空け機を用いて直径0.3mmの貫通孔を形成し、スクリーン印刷法により上記で得られた配線導体用ペーストを充填して貫通導体用ペースト層7を形成するとともに、裏面23に一対の外部接続端子用ペースト層6を形成した。さらに、基体用グリーンシート2の主面21上には、貫通導体用ペースト層7を覆うように略長方形状に一対の素子接続端子用ペースト層5をスクリーン印刷法により形成して配線導体ペースト層付き基体用グリーンシート2を得た。
【0139】
上記で得られた、配線導体用ペースト層を有する基体用グリーンシート2の主面21上に、上記で作製した3枚の枠体積層用グリーンシート3a、3b、3cを基体用グリーンシート2の主面側からその順に重ね合わせ、これを以下の方法で一軸加圧により積層圧着して
図2にその平面図および断面図が示される第1の積層体1Aを得た。
【0140】
すなわち、各グリーンシートを上記順に重ね合わせたものの上側と下側にそれぞれ、2枚ずつのPETフィルムA(PETフィルムA:厚さ75μm、破断強度180MPa)を重ねたスペーサを配設し、グリーンシートの余剰部の領域においてスペーサを含む全体を固定し、これを積層ジグに挟んで一軸プレス機により、80℃、4MPaで1分間加圧した。なお、一軸加圧は3分間の予熱の後に行った。
ここで、本実施例においては、連結基板として、素子基板となる各区画の四隅に位置するように貫通孔が設けられたものを用いた。これに対応して、上記スペーサとなる上下2枚ずつのPETフィルムAのうち積層体に接する側のPETフィルムAについては、連結基板が有する上記の各区画の四隅に位置する貫通孔の位置にこれと同様の貫通孔を形成したものを使用した。PETフィルムAにも、連結基板に形成した貫通孔と同じ位置に貫通孔を形成することにより、加圧時の貫通孔の変形を防ぐことができ、孔形状を良好に保つことが可能となる。
【0141】
(B)第1の等方圧加圧の工程(枠体積層用グリーンシートの積層部が内壁面に有する階段状の角を丸める工程)
一軸加圧後、第1の積層体1Aの上下に配設されたスペーサのうち上側についてのみPETフィルムAの外側の1枚を取り除いたものを支持板32上に載置し固定した。これを真空包装用の樹脂袋34に入れ(
図3(1)にその状態を示す)、真空包装した後、樹脂袋ごと圧力容器に入れ圧力容器を密閉した。ここで、
図3(1)において第1の樹脂フィルム31として示される樹脂フィルムは、上記1枚のPETフィルムAであり、スペーサ33と示されるのは、上記2枚のPETフィルムAを重ねたものである。
【0142】
上記密閉された圧力容器を水圧プレスにかけて、第1の積層体1Aに対して60℃、10MPaで5分間の等方圧加圧を行った。水圧プレスは日機装社製WL24−26−50、圧力容器はφ240mm、水量260mlを用いた。なお、等方圧加圧の前に10分間の予熱を行った。圧力容器から樹脂袋34を取り出し、さらに樹脂袋34から上下に各種部材が積層された等方圧加圧後の第1の積層体1Bを取り出し、さらに、支持板32と上下のPETフィルムAを取り外した。
【0143】
このようにして得られた第1の積層体1Bの平面図および断面図は
図4に示される通りであるが、この第1の積層体1Bにおいて、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面が有する階段の各段における曲率半径(
図4においてR1、R2、R3で示される)は、下段から順にそれぞれ、R1=0.06mm、R2=0.09mm、R3=0.10mmであった。
(C)枠体最外層用グリーンシートを作製する工程
枠体最外層用グリーンシート3dは、上記枠体積層用グリーンシートと同種のセラミックス組成物を用いて、通常は原料組成も同様のセラミックス組成物を用いて、上記枠体積層用グリーンシート2と同様の方法で、中央部に前記枠体積層用グリーンシートの開口部と相似形状で面積が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの開口部の面積より小さい開口部を有する板状の枠体最外層用グリーンシートを作製した。また、前記中央部の開口部は、略円形状とし、その焼成後の直径は、3.80mmとなるようし、また、その焼成後の厚さは、0.10mmとなるようにした。
【0144】
(D)第2の積層工程(第2の積層体を得る工程)
(D)工程では、上記(C)工程で得られた枠体最外層用グリーンシート3dを、上記(B)工程で得られた第1の積層体1Bの最上部に、前記開口部の中心が前記最下部に積層された枠体積層用グリーンシートの前記開口部の中心と略一致するように積層し、これを以下の方法で一軸加圧により積層圧着して
図5にその平面図および断面図が示される第2の積層体1Cを得た。枠体最外層用グリーンシート3d長さLは、枠体積層用グリーンシート積層部3’の内壁面を覆う長さに等しい長さとした。
【0145】
すなわち、第1の積層体1Bの最上部に枠体最外層用グリーンシート3dを重ね合わせたものの下側に2枚のPETフィルムAを重ねたスペーサ、および上側にPETフィルムB(PETフィルムB:厚さ36μm、破断強度270MPa)、PETフィルムAを重ねたスペーサを、上側においてはPETフィルムBが積層体に接する側となるように配設し、グリーンシートの余剰部の領域においてスペーサを含む全体を固定し、これを積層ジグに挟んで一軸プレス機により、80℃、4MPaで1分間加圧した。なお、一軸加圧は3分間の予熱の後に行った。
ここで、上記スペーサとなる上下2枚ずつのPETフィルムのうち積層体に接する側のPETフィルムについては、具体的には上側で積層体に接するPETフィルムBと下側で積層体に接するPETフィルムAは、連結基板が有する上記の各区画の四隅に位置する貫通孔の位置にこれと同様の貫通孔を形成したものを使用した。
【0146】
(E)第2の等方圧加圧工程(未焼結連結基板を得る工程)
一軸加圧後、第2の積層体1Cの上下に配設されたスペーサのうち上側についてのみPETフィルムAを取り除いたものを支持板32上に載置し固定した。これを真空包装用の樹脂袋34に入れ(
図6(1)にその状態を示す)、真空包装した後、樹脂袋ごと圧力容器に入れ、圧力容器を密閉した。ここで、
図6(1)において第2の樹脂フィルム37として示される樹脂フィルムは、上記1枚のPETフィルムBであり、スペーサ33と示されるものは、上記2枚のPETフィルムAを重ねたものである。
【0147】
上記密閉された圧力容器を水圧プレスにかけて、第2の積層体1Cに対して60℃、10MPaで5分間の等方圧加圧を行った。なお、等方圧加圧の前に10分間の予熱を行った。圧力容器から樹脂袋34を取り出し、さらに樹脂袋34から上下に各種部材が積層された等方圧加圧後の第2の積層体を取り出し、さらに、支持板32と上下のPETフィルムA、Bを取り外して未焼結連結基板1を得た。
【0148】
(F)未焼結連結基板の焼成工程
上記で得られた未焼成連結基板に、未焼結素子基板1の各区画が焼成後に5mm×5mmの外寸となるような分割用のカットラインを入れた後、550℃で5時間保持して脱脂を行い、さらに870℃で30分間保持して焼成を行って連結基板を製造した。得られた連結基板をカットラインに沿って分割して素子基板1を製造した。
【0149】
<評価>
得られた素子基板1のキャビティ側面のテーパー傾斜(α)は、45°であり、その均一性をレーザ変位計(コムス社製三次元形状測定システムEMS2002AD−3D)により評価したところ、均一性が良好であることが確認された。
また、得られた素子基板1のキャビティ底面近傍において、該底面から90μmの高さまでのキャビティ側面は、
図1に示す通りキャビティ底面に向かってテーパー状に拡開しており、そのテーパー傾斜、すなわちキャビティ底面と側面に挟まれる角の角度(β)を上記同様に測定したところ、75°であった。