特許第5835852号(P5835852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5835852
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】非水電解液及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20151203BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20151203BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20151203BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20151203BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0525
   H01M4/13
   H01M4/139
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-17360(P2014-17360)
(22)【出願日】2014年1月31日
(62)【分割の表示】特願2010-512065(P2010-512065)の分割
【原出願日】2008年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-112549(P2014-112549A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年2月6日
(31)【優先権主張番号】10-2007-0056724
(32)【優先日】2007年6月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ホチュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョン‐ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スジン
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−038722(JP,A)
【文献】 特開2008−166271(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/077763(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043624(WO,A1)
【文献】 特開2007−5242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極活物質が炭素材であるリチウム二次電池用液状電解液であって、
電解質塩と、及び電解質溶媒とを含んでなり、
i)少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物と、及び
ii)電極表面の一部又は全部に固体電解質界面被膜(SEI)を形成させる電解液添加剤として、ビニル基を分子内に含有してなるアクリレート系化合物を含んでなり、
前記ビニル基が、下記式1で表われる基である、液状電解液。
【化1】
[上記式中、
nは、0〜6であり、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜Cのアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜C12のシクロアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜C12のアリール基、又は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜Cのアルケニル基である。]
【請求項2】
前記ハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物が、3−フルオロエチレンカーボネート、3−クロロエチレンカーボネート、4−フルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、シス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネート、及びトランス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の液状電解液。
【請求項3】
前記ビニル基が、分子内末端に位置することを特徴とする、請求項1又は2に記載の液状電解液。
【請求項4】
前記ビニル基を含有するアクリレート系化合物が、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の液状電解液。
【請求項5】
前記i)少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート系化合物と、
前記ii)ビニル基を分子内に含有してなるアクリレート系化合物との成分比率が、1:0.1〜10であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の液状電解液。
【請求項6】
前記i)少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート系化合物と、
前記ii)ビニル基を分子内に含有してなるアクリレート系化合物のそれぞれが、前記電解液100重量部当り0.05〜10重量部で含有されてなり、
前記二つの化合物の全含量が、前記電解液100重量部に対して0.1〜20重量部であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の液状電解液。
【請求項7】
固体電解質界面被膜(SEI)が表面の一部又は全部に形成されてなる電極であって、
前記固体電解質界面被膜(SEI)が、
少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物と、及び
ビニル基を分子内に含有してなるアクリレート系化合物又はこれらの化学反応生成物を含有してなり、
前記ビニル基が、下記式1で表される基である、電極。
【化2】
[上記式中、
nは、0〜6であり、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜Cのアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜C12のシクロアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜C12のアリール基、又は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されたC〜Cのアルケニル基である。]
【請求項8】
前記ハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物が、3−フルオロエチレンカーボネート、3−クロロエチレンカーボネート、4−フルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、シス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネート、及びトランス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7記載の電極。
【請求項9】
前記電極が、陰極であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の電極。
【請求項10】
陽極、陰極、及び電解液を備えてなる二次電池であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の液状電解液と、
請求項7〜の何れか一項に記載の電極の、少なくとも何れか一方を備えることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液及びこれを含む二次電池に関し、より具体的には、寿命性能、高温性能などの電池の諸性能を同時に向上させることができる非水電解液及びこれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、エネルギー蓄積技術に対する関心が高まっている。携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコン、さらには、電気自動車のエネルギーにまで適用されるようになり、電気化学デバイスに関する研究開発が具体化されている。このなかで最も注目される分野は、電気化学デバイスであり、特に充放電が可能な二次電池が関心を集めている。
【0003】
現在適用されている二次電池の中で、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、通常、約3.6〜3.7Vの平均放電電圧を保持でき、Ni−MH、Ni−Cdなどの在来型電池に比べて、作動電圧が高く、エネルギー密度が著しく高いため、脚光を浴びている。
【0004】
しかしながら、リチウム二次電池の適用分野が広がるにつれて、高率特性、サイクル特性、安定性など、様々な側面において、電池性能の向上が求められている。例えば、高率特性は、高電流で高速充放電可能な能力を示す指標であって、電動工具、ハイブリッド車(HEV)など、大電力を必要とする分野で重要視されている性能である。しかし、非水系電解液を使用するリチウム二次電池は、水系電解液を使用するNi−MH、Ni−Cdなどの在来型電池に比べてリチウムイオン伝導度が著しく低いという問題がある。
【0005】
また、二次電池に使用される非水系電解液は、通常、電解液溶媒と電解質塩を含むが、前記電解液溶媒は、電池の充放電中に電極の表面から分離したり、炭素材陰極の層間にコインターカレーションして陰極の構造が崩壊され、電池の安定性を損なうおそれがある。このような問題は、電池の初期充填を行う時、電解液溶媒の還元により陰極の表面に形成される固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface、以下「SEI」と略する)被膜によって解決できると知られているが、一般に、前記SEI膜は、陰極の保護膜としての役割を持続的に十分に果たすことができない。それで、電池の充放電中に上記の問題が生じ、電池の寿命性能が低下するという問題がある。特に、前記SEI膜は、熱的に不安定であるため、電池が高温下で作動または放置される場合、時間がたつにしたがい、増加した電気化学的エネルギーと熱エネルギーによって崩壊し易くなる。従って、高温下では電池の性能が低下してしまうという問題があり、特にSEI膜の崩壊、電解液の分解などによってCOなどのガスが継続して発生し、電池の耐圧及び厚さが増大するという問題がある。
【0006】
上記の問題を解決するため、EU683537及びJP1996−45545では、陰極の表面上にSEI膜を形成できる電解液添加剤として、ビニレンカーボネート(以下「VC」と略する)を使用する方法が示されている。しかし、VCが形成するSEI膜は、抵抗が多少大きく、高温下で崩壊し易いため、電池の高率特性及び高温性能を向上することはできない。
【0007】
このように、従来、電池性能を向上させるため、特定の化合物を電解液に添加する場合は、一部の性能は向上するが、他の性能は低下したりするなど、一部性能の向上を図ることに留まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ハロゲン置換された環状カーボネート化合物、及びビニル基を分子内に含有する化合物を同時に含む電解液を提供することにより、陰極の表面上に形成されるSEI層の特性、例えば、安定性及びリチウムイオン伝導性を最適化し、寿命性能、高温性能などの電池の諸性能を同時に向上させることにある。
本発明の態様
〔1〕電解質塩および電解質溶媒を含んでなる電解液であって、
前記電解液が、
i)少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物と、及び
ii)下記式1で表われるビニル基を分子内に含有してなる化合物を含んでなる、電解液。
[上記式中、
nは、0〜6であり、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜Cのアルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜C12のシクロアルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜C12のアリール基、又は、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜Cのアルケニル基である。]
〔2〕 前記ハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物が、3−フルオロエチレンカーボネート、3−クロロエチレンカーボネート、4−フルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、シス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネート、及びトランス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネートからなる群から選択されることを特徴とする、〔1〕に記載の電解液。
〔3〕 前記ビニル基が、分子内末端に位置することを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載の電解液。
〔4〕 前記ビニル基を含有する化合物が、アクリレート系化合物、スルホネート系化合物、またはエチレンカーボネート系化合物であることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の電解液。
〔5〕 前記ビニル基を含有するアクリレート系化合物が、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートからなる群から選択されることを特徴とする、〔4〕に記載の電解液。
〔6〕 前記ビニル基を含有するスルホネート系化合物が、下記式2で表われることを特徴とする、〔4〕に記載の電解液。
[上記式中、
及びRのうちの少なくとも1つはビニル基を含んでなり、 他方の基は、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、ハロゲン原子で置換されたC〜Cのアルキル基、ハロゲン原子で置換されたC〜C12のアリール基、又はハロゲン原子で置換されたC〜Cのアルケニル基である。]
〔7〕 前記ビニル基を含有するスルホネート系化合物が、プロペニルメタンスルホネート、エテニルベンゼンスルホネート、プロペニルプロペンスルホネート、プロペニルシアノエタンスルホネート、及びアリルプロパ−2−エン−1−スルホネートからなる群から選択されることを特徴とする、〔4〕に記載の電解液。
〔8〕 前記ビニル基を含有するエチレンカーボネート系化合物が、下記式3で表われることを特徴とする、〔4〕に記載の電解液。
[上記式中、
10乃至R13のうちの少なくとも1つはビニル基を含んでなり、 残りの基は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、スルホネート基、ハロゲン原子で置換されたC〜Cのアルキル基、ハロゲン原子で置換されたC〜C12のアリール基、ハロゲン原子で置換されたC〜Cのアルケニル基、またはハロゲン原子で置換されたスルホネート基である。]
〔9〕 前記ビニル基を含有するエチレンカーボネート系化合物が、3−ビニルエチレンカーボネート、3−アリルエチレンカーボネート、及び(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル プロパ−1−エン−1−スルホネートからなる群から選択されることを特徴とする、〔4〕に記載の電解液。
〔10〕 前記i)ハロゲン元素で置換された環状カーボネート系化合物と、前記ii)式1で示されるビニル基を分子内に含有してなる化合物との成分比率が、1:0.1〜10であることを特徴とする、〔1〕〜〔9〕の何れか一項に記載の電解液。
〔11〕 前記ハロゲン置換された環状カーボネート化合物及びビニル基を分子内に含有してなる化合物のそれぞれが、電解液100重量部当り0.05〜10重量部で含有されてなり、 前記二つの化合物の全含量が、電解液100重量部に対して0.1〜20重量部であることを特徴とする、〔1〕〜〔10〕の何れか一項に記載の電解液。
〔12〕 固体電解質界面被膜(SEI)が表面の一部または全部に形成されてなる電極であって、
前記固体電解質界面被膜(SEI)が、少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物及び下記式1で表われるビニル基を分子内に含有してなる化合物、またはこれらの化学反応生成物を含有してなる、電極。
[上記式中、
nは、0〜6であり、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜Cのアルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜C12のシクロアルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜C12のアリール基、又は、ハロゲン原子またはシアノ基で置換されたC〜Cのアルケニル基である。]
〔13〕 前記電極が、
(a)電極活物質の表面または予め形成された電極の表面に、少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物及び式1で表われるビニル基を分子内に含有してなる化合物を被覆した電極、
(b)少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物及び式1で表われるビニル基を分子内に含有してなる化合物を電極の材料として使用して製造された電極、或いは、
(c)少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物及び式1で表われるビニル基を分子内に含有してなる化合物を含有した溶液に電極を浸漬して充放電を行った後、前記二つの化合物またはこれらの還元生成物を含む固体電解質界面被膜が表面上に形成された電極であることを特徴とする、〔12〕に記載の電極。
〔14〕 前記ハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物が、3−フルオロエチレンカーボネート、3−クロロエチレンカーボネート、4−フルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、シス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネート、及びトランス−3,4−ジフルオロエチレンカーボネートからなる群から選択されることを特徴とする、〔12〕又は〔13〕に記載の電極。
〔15〕 前記化1で表われるビニル基を分子内に含有してなる化合物が、アクリレート系化合物、スルホネート系化合物、またはエチレンカーボネート系化合物であることを特徴とする、〔12〕〜〔14〕の何れか一項に記載の電極。
〔16〕 前記電極が、陰極であることを特徴とする、〔12〕〜〔15〕の何れか一項に記載の電極。
〔17〕 陽極と、陰極と、及び電解液とを備えてなる二次電池であって、
〔1〕〜〔11〕の何れか一項に記載の電解液と、
〔12〕〜〔16〕の何れか一項に記載の電極と、又は、
前記電解液と前記電極の両方を備えることを特徴とする、二次電池。
【化1】
(式中、nは、0〜6であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子またはシアノ基で置換または非置換のC〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール(aryl)基、またはC〜Cのアルケニル基である)
【0009】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0010】
通常、二次電池は、初期充電を行う時、陰極活物質の表面上に、電解液、例えば、電解質塩及び/または電解液溶媒が還元分解され、その上に可逆性リチウム量が一部消耗され、SEI被膜が形成されるようになる。理想的なSEI膜とは、電解質に不溶性で且つ電子的絶縁体であり、イオン(例えばLi)に対する伝導度を持ち、充放電を繰り返しても崩壊することなく安定的で、崩壊しても速やかな再生性を備えるものである。
【0011】
従来、SEI膜を形成できる種々の電解液添加剤を使用することによってSEI膜の特性を改善しようとする様々な研究が行われているが、多くの場合、SEI膜の安定性とリチウムイオン伝導性とを同時に向上させることができなかった。例えば、堅固で且つ稠密なSEI膜を形成できる化合物を電解液添加剤として使用する場合は、SEI膜の安定性を高めることはできるが、SEI膜が厚膜化し、陰極活物質へのリチウムイオン移動に対する抵抗が高くなってイオン伝導度が低下し、これとは反対に、イオン伝導性を発揮できる電解液添加剤を使用する場合は、形成されたSEI膜の安定性が低下する。このように、SEI膜の安定性とリチウムイオン伝導性とは、相反している。
【0012】
本明細書では、安定性とリチウムイオン伝導性とが相反しているSEI膜を形成するハロゲン置換された環状カーボネート化合物及びビニル基含有化合物を電解液成分として混用すると、相乗効果が発揮され、電池の諸性能の向上を同時に図ることができることが示されている。
【0013】
従って、本発明は、前述のハロゲン置換された環状カーボネート化合物及び前記化1で示されるビニル基含有化合物を電解液成分として混用することにより、陰極の表面上に形成されるSEI層の特性、例えば、安定性及びリチウムイオン伝導性を同時に最適化することを特徴とする。
【0014】
実際に、前述の2つの化合物の混用による電池の諸性能の向上作用は、下記のように推定可能である。
【0015】
ハロゲン置換された環状カーボネート化合物が電気的に還元して形成されたSEI被膜は、薄膜または多孔質膜であるため、充放電の繰り返しによってSEI被膜が崩壊し易くなることがある。このような安定性に欠けたSEI被膜部分に、ビニル基含有化合物が電気的還元によって堅固で且つ高密度な被膜を重ねて形成し、または、同時に交差/反復重合すると、より堅固なSEI被膜を形成することができる。よって、充放電を繰り返しても、SEI被膜の物的、構造的安定性が保持され、電池の寿命特性を持続的に発揮することができる。
【0016】
また、前記化1で示されるビニル基含有化合物は、重合可能な作用基、例えば、ビニル基が分子内に存在するため、このようなビニル基の連鎖重合反応で相対的に厚膜且つ高密度な被膜を形成し、安定性に優れている。しかし、形成されたSEI膜の多くの成分は、非極性炭化水素系であるため、リチウムイオン伝導度は、著しく低下する。実際に、イオン伝導度は、SEI膜に存在する極性基、特に、その個数増加の影響を受けるようになる。このような非極性SEI被膜に、環状カーボネート化合物に由来の極性基(ハロゲン)が結合されるため、SEI膜が厚く高密度であるにもかかわらず、優れたリチウムイオン伝導性を示すことができる。
【0017】
さらに、ハロゲン置換された環状カーボネート化合物は、電気的効果により還元電圧が低くなり(半電池では、還元電圧が高くなる)、陰極における還元反応が容易に行われるため、高温保存時において、SEI膜が崩壊しても、低電圧で速やかに再生されることができる。従って、電池の充放電またはSEI膜の再生性によって消耗される不可逆リチウムの量が減少して電池の容量低下が極力抑制され、寿命性能、高温性能などの諸性能を同時に向上することができる。
【0018】
本発明の非水電解液は、ハロゲン置換された環状カーボネート化合物及び前記化1で示されるビニル基を分子内に含有する化合物を同時に含む。
【0019】
前記ハロゲン置換された環状カーボネート化合物は、環状カーボネート分子内にF、Cl、Br、Iなどのハロゲン基を少なくとも1つ含む化合物である。これらは、開環反応で還元されてSEI膜を形成するため、SEI膜を形成する還元体のほかに、副産物が生成される可能性が低い。また、形成されたSEI膜は、ハロゲンの電子吸引作用で酸化し難いパッシベーション膜であるため、長期サイクルにおいても高い安定性を有することができる。
【0020】
前記ハロゲン置換された環状カーボネート化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(3-fluoro ethylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(3-chloro ethylene carbonate)、フルオロプロピレンカーボネート(4-fluoro methylethylene carbonate)、トリフルオロメチルエチレンカーボネート(trifluoro methylethylene carbonate)、ジフルオロエチレン(cis or trans-3,4-difluoro ethylene carbonate)などが挙げられるが、それらに限定されない。なお、これらの化合物は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
なお、前記化1で示されるビニル基含有化合物としては、分子内でビニル基を含有するものであれば、特に制限されないが、環内にビニル基が存在するものは、本発明の範疇に属しない。好ましくは、ビニル基が分子内末端に位置するものである。このようにビニル基が末端に位置する場合は、SEI膜形成の際に、重合反応がより容易で且つ連鎖的に行われるようになる。
【0022】
前記ビニル基含有化合物は、前記化1で示されるビニル基を含むアクリレート系化合物、スルホネート(sulfonate)系化合物、またはエチレンカーボネート系化合物であることができる。これらは、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
ビニル基を含有するアクリレート系化合物は、アクリル基(CH=CH−CO−)を少なくとも1つ含む化合物であって、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート(tetraethyleneglycol diacrylate)、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量50〜20,000)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(分子量100〜10,000)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0024】
また、ビニル基を含有するスルホネート系化合物は、下記化2で示され、例えば、プロペニルメタンスルホネート(propenyl methansulfonate)、エテニルベンゼンスルホネート(ethenyl benzenesulfonate)、プロペニルプロペンスルホネート(propenyl propensulfonate)、プロペニルシアノエタンスルホネート(propenyl cyanoethansulfonate)、アリルプロパ−2−エン−1−スルホネート(allyl prop-2-ene-11-sulfonate)などが挙げられるが、これらに制限されない。
【化2】
(式中、R及びRのうちの少なくとも1つがビニル基を含み、残りの1つは、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換または非置換のC〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール基、またはC〜Cのアルケニル基である)
【0025】
さらに、ビニル基を含有するエチレンカーボネート系化合物は、下記化3で示され、例えば、ビニルエチレンカーボネート(3-vinyl ethylene carbonate)、アリルエチレンカーボネート(3-allyl ethylene carbonate)、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル プロパ−1−エン−1−スルホネート((2-oxo-1,3-dioxolan-4yl)methyl prop-1-ene-1-sulfonate)またはこれらの誘導体などが挙げられるが、これらに制限されない。
【化3】
(式中、R10乃至R13のうちの少なくとも1つがビニル基を含み、残りは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換または非置換のC〜Cのアルキル基、C〜C12のシクロアルキル基、C〜C12のアリール基、C〜Cのアルケニル基、またはスルホネート基を示す)
【0026】
前記ハロゲン置換された環状カーボネート化合物及び化1で示されるビニル基含有化合物の含量は、電池性能向上の目標に応じて調節することができるが、その成分比(重量比)は、1:0.1〜10である。好ましくは、1:0.2〜4、より好ましくは、1:0.4〜2の範囲である。なお、前記化合物のいずれか一方が過剰に使用される場合は、形成されるSEI膜の安定性及びリチウムイオン伝導性を同時に向上できないことがあり得る。
【0027】
なお、上記2つの化合物の含量は、それぞれ電解液100重量部当り0.05〜10重量部の範囲であり、全含量は、電解液100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲であることができる。化1で示されるビニル基含有化合物の含量は、電解液100重量部当り0.01〜5重量部の範囲であることが好ましい。
【0028】
なお、前記ハロゲン置換された環状カーボネート化合物の含量が0.05重量部を下回る場合は、化合物使用による電池性能向上の効果が十分でなく、10重量部を上回る場合は、不可逆反応量の増加による電池性能の低下が生じるおそれがある。また、前記ビニル基含有化合物の含量が非常に低い場合は、電池性能向上の効果が十分でなく、これとは反対に、含量が非常に高い場合は、ガス発生及びインピーダンス増加の問題が生じる。
【0029】
前記化合物が添加される電池用電解液は、当業界で周知の電解液成分、例えば、電解質塩と電解液溶媒を含む。
【0030】
前記電解質塩は、(i)Li、Na、Kからなる群から選択されるカチオンと、(ii)PF、BF、Cl、Br、I、ClO、AsF、CHCO、CFSO、N(CFSO、C(CFSOからなる群から選択されるアニオンとの組み合わせで形成されることができるが、これに限定されない。これらの電解質塩は、単独または2種以上を混合して使用することができる。特に、前記電解質塩としては、リチウム塩が好ましく使用される。
【0031】
前記電解質溶媒としては、環状カーボネート、線状カーボネート、ラクトン、エーテル、エステル、アセトニトリル、ラクタム、及び/又はケトンを使用することができる。
【0032】
前記環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられ、前記線状カーボネートとしては、例えば、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びメチルプロピルカーボネート(MPC)などが挙げられる。前記ラクトンとしては、 例えば、ガンマブチロラクトン(GBL)が挙げられ、前記エーテルとしては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどが挙げられる。前記エステルとしては、例えば、ギ酸メチル(methyl formate)、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ピバル酸メチルなどが挙げられる。前記ラクタムとしては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが挙げられ、前記ケトンとしては、例えば、ポリメチルビニルケトンなどが挙げられる。なお、前記有機溶媒のハロゲン誘導体を使用することもできるが、これに限定されない。これらの有機溶媒は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
また、本発明は、少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物及び前記化1で示されるビニル基含有化合物、またはこれらの化学反応生成物を含有するSEI被膜が表面の一部または全部に形成された電極、好ましくは、陰極を提供する。
【0034】
前記電極は、前述の少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物及びビニル基含有化合物を含む電解質を使用して一回以上充放電を行うと、電解質内において、2つの化合物が可逆的リチウムイオンと共に電極活物質の表面に形成され得る。また、電池を構成する前に、前記2つの化合物を電極活物質の表面または(予め形成された)既製の電極の表面にコートし、または電極材料として混用することができる。そのほか、電池の組立をする前に、前記化合物が含まれた電解液に電極が含浸された状態で電気的還元を行ってSEI膜が既に形成された電極を使用して電池を構成することもできる。
【0035】
なお、少なくとも1つのハロゲン元素で置換された環状カーボネート化合物とビニル基含有化合物は、上記の通りであり、電極のコート法及び製造方法は、同じく、通常の方法で行うことができる。
【0036】
本発明の電極は、当業界で周知の方法で製造することができる。例えば、電極活物質に分散媒、必要によってバインダー、導電剤、分散剤を混合及び攪拌してスラリーを製造した後、コレクタに塗布(コート)し、圧縮した後、乾燥して製造することができる。
【0037】
なお、分散媒、バインダー、導電剤、コレクタなどの電極材料は、当業界で周知のものを使用でき、電極活物質に対して、バインダーは、1〜10重量部、導電剤は、1〜30重量部の範囲で適宜使用することができる。
【0038】
陰極活物質は、従来、二次電池の陰極に使用し得る通常の陰極活物質を使用することができ、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能なリチウム金属、リチウム合金、炭素、石油コークス、活性炭、黒鉛、炭素繊維などが挙げられるが、これらに制限されない。その他、リチウムを吸蔵及び放出できると共に、リチウムに対する電位が2V未満のTiO、SnOなどのような金属酸化物を使用することができる。特に、黒鉛、炭素繊維、活性炭などの炭素材が好ましく使用される。
【0039】
陽極活物質としては、LiM(M=Co、Ni、Mn、CoNiMn)のようなリチウム遷移金属複合酸化物(例えば、LiMnなどのリチウムマンガン複合酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物及びこれら酸化物のマンガン、ニッケル、コバルトの一部を他の転移金属などに置換したもの又はリチウムを含有した酸化バナジウムなど)又はカルコゲン化合物(例えば、二酸化マンガン、二硫化チタン、二硫化モリブデンなど)などを使用することができる。好ましくは、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、Li(NiCoMn)O(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCo、LiCo1−YMn、LiNi1−YMn(0≦Y<1)、Li(NiCoMn)O(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNi、LiMn2−ZCo(0<Z<2)、LiCoPO、LiFePO又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0040】
さらに、本発明は、前述のハロゲン置換された環状カーボネート化合物及び前記化1で示されるビニル基含有化合物を同時に含む電解液および/または前記化合物の電気的還元によりSEI被膜が(電極)表面の一部または全部に形成された電極を含む二次電池を提供する。好ましくは、上記の電解液と電極とを同時に併用する。
【0041】
前記二次電池としては、例えば、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0042】
本発明の二次電池は、当業界で周知の方法で製造することができ、例えば、陰極と陽極との間にセパレータを介在して組み立てた後、本発明によって製造した電解液を注入して製造することができる。
【0043】
セパレータとしては、両電極の内部短絡を遮断すると共に電解液を含浸する役割を果たす多孔性物質であれば、制限なく使用することができ、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系又はポリオレフィン系の多孔性セパレータ或いは前記多孔性セパレータに無機物材料が加えられた複合多孔性セパレータなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0044】
上記の方法で製作された二次電池の外形は、特に制限されないが、缶からなる円筒形、コイン型またはポーチ型であることが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明の電解液によれば、陰極の表面上に形成されるSEI層の特性、例えば、安定性及びリチウムイオン伝導性を最適化することができ、また、寿命特性、高温性能などの諸特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7(体積基準)の1M LiPF溶液を製造した後、前記溶液100重量部に対して3−フルオロエチレンカーボネート2重量部とテトラエチレングリコールジアクリレート2重量部を添加して電解液を製造した。
【0048】
前記電解液と、陽極活物質としてLiCoO2、陰極活物質として人造黒鉛を使用し、通常の方法で800mAh容量を有するポーチ型電池を製造した。
【0049】
[実施例2]
テトラエチレングリコールジアクリレートを2重量部の代わりに、4重量部使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0050】
[実施例3]
テトラエチレングリコールジアクリレート2重量部の代わりに、アリルプロパ−2−エン−1−スルホネート(ally prop-2-ene-1-sulfonate)2重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0051】
[実施例4]
テトラエチレングリコールジアクリレート2重量部の代わりに、ビニルエチレンカーボネート2重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0052】
[実施例5]
3−フルオロエチレンカーボネート及びテトラエチレングリコールジアクリレートの代わりに、3,4−ジフルオロエチレンカーボネート2重量部及びアリルプロパ−2−ene−1−スルホネート2重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0053】
[比較例1]
テトラエチレングリコールジアクリレート2重量部の代わりに、ビニレンカーボネート2重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0054】
[比較例2]
3−フルオロエチレンカーボネート及びテトラエチレングリコールジアクリレートの代わりに、3−フルオロエチレンカーボネート2重量部のみを単独で使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0055】
[比較例3]
3−フルオロエチレンカーボネート及びテトラエチレングリコールジアクリレートの代わりに、3,4−ジフルオロエチレンカーボネート2重量部のみを単独で使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0056】
[比較例4]
3−フルオロエチレンカーボネート及びテトラエチレングリコールジアクリレートの代わりに、テトラエチレングリコールジアクリレート2重量部のみを単独で使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0057】
[比較例5]
3−フルオロエチレンカーボネート及びテトラエチレングリコールジアクリレートの代わりに、アリルプロパ−2−ene−1−スルホネート2重量部のみを単独で使用した以外は、実施例1と同様にして電解液及び電池を製造した。
【0058】
[比較例6]
3−フルオロエチレンカーボネート及びテトラエチレングリコールジアクリレートの代わりに、ビニルエチレンカーボネート2重量部のみを単独で使用した以外は、実施例1と同様にして非水電解液及び電池を製造した。
【0059】
[比較例7]
電解液に何等の化合物を加えない以外は、実施例1と同様にして電解液、及び前記電解液を含む二次電池を製造した。
【0060】
実験例1.寿命テスト
実施例1〜5及び比較例1〜7で製造した各電池を、0.8C/0.5Cで充放電を300回行い、初期容量に対する容量維持度を確認した。その結果を表1に示す。
【0061】
実験の結果、電解液添加剤としてハロゲン置換された環状カーボネート化合物とビニル基含有化合物とを混用する場合、単独で使用する場合に比べて寿命向上効果が増大することがわかった(表1参照)。
【0062】
実験例2.高温保存時における厚さ変化比較
実施例1〜5及び比較例1〜7で製造した電池を1時間常温から90℃まで昇温した後、90℃で4時間維持した。次に、再度90℃から1時間降温しながらリアルタイムで電池の厚さ変化を測定し、その結果を表1に示す。なお、電池の厚さ増加は、電池内のガス発生量に比例する。
【0063】
実験の結果、電解液添加剤を使用せずに通常の電解液を使用する場合またはハロゲン置換された環状カーボネートのみを電解液添加剤として使用する場合、高温保存時にガス発生による厚さ増加が大きくなることがわかった。これに対し、電解液添加剤として、ハロゲン置換された環状カーボネート化合物とビニル基含有化合物とを混用する場合、高温保存時においてガス発生による厚さ増加が著しく減少することが確認された(表1参照)。
【0064】
参考までに、化1で示されるビニル基含有化合物の代わりに、通常のビニル基含有化合物(ビニレンカーボネート)を電解液添加剤としてハロゲン置換された環状カーボネートと混用した比較例1の電池では、高温保存時において、他の電池に比べて著しく厚さが増加していることが確認された。
【表1】
【0065】
実験例3.陰極SEI被膜物性評価
実施例1〜4及び比較例2、4〜7で製造した電解液と、陽極として人造黒鉛、陰極としてリチウム箔を使用し、通常の方法でコイン型半電池を製造した。製造されたコイン型半電池を、23℃、0.2Cで充放電を3回行った後、放電状態で電池を分解して陰極を取り出した。この陰極に対してDSC分析を行い、得られた発熱ピーク温度を表2に示す。
【0066】
参考までに、前記発熱ピーク温度は、通常、陰極の表面に形成されたSEI膜の熱的崩壊によるものと考えられる。
【0067】
実験の結果、単独の添加剤成分を使用した比較例2〜6の電池では、陰極の発熱開始温度が互いに異なっている。これは、各添加剤の使用によるSEI膜の熱的特性が互いに相違していることを意味する。
【0068】
なお、ハロゲン置換された環状カーボネート化合物と前記化1で示されるビニル基含有化合物とを電解液添加剤として混用した実施例1〜4の電池では、単独使用した場合における発熱開始温度の中間値が示された。これによって、ハロゲン置換された環状カーボネート化合物及びビニル基含有化合物は、いずれも同時にSEI膜の形成に関与していることがわかった。
【表2】