(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像生成部は、前記受信データの全ての受信開口の水準に対応する超音波画像を生成する複数の画像生成ユニットを有し、前記設定された受信開口の水準に対応する2以上の画像生成ユニットを同時に使用して、前記設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を並列に生成するものである請求項1または2に記載の超音波診断装置。
前記画像生成部は、前記受信データから超音波画像を生成する1つの画像生成ユニットを有し、該1つの画像生成ユニットを時分割に使用して、前記設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を順次生成するものである請求項1または2に記載の超音波診断装置。
前記画質判定部は、前記画像生成部によって生成された超音波画像の輝度値に基づいて、該超音波画像の画質を判定するものである請求項1〜4のいずれかに記載の超音波診断装置。
前記画質判定部は、前記画像生成部によって生成された超音波画像の鮮鋭度に基づいて、該超音波画像の画質を判定するものである請求項1〜4のいずれかに記載の超音波診断装置。
前記画質判定部は、前記設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の全ての画質を比較して、最も画質が高い超音波画像を選択するものである請求項5または6に記載の超音波診断装置。
前記画質判定部は、前記設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の中から、所定の画質の超音波画像に対応する閾値以上の値を有する超音波画像を選択するものである請求項5または6に記載の超音波診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のフォーカスの調整方法のように、受波遅延補正値の切替間隔の値を複数用意して適宜切り替えたとしても、元の受信信号の質が悪い場合には、最適なフォーカスに調整することが難しいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解消し、たとえ元の受信信号の質が悪い場合であっても、超音波画像を最適なフォーカスに調整することができる超音波診断装置およびデータ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、超音波ビームを被検体に送信し、超音波ビームが被検体から反射した超音波エコーを受信して受信データを生成する超音波送受信部と、
受信データにおける超音波エコーの到達時刻の差である遅延時間を補正し、受信データの位相を揃える遅延補正部と、
前記遅延補正部による遅延時間の補正後の受信データから超音波画像を生成する場合に使用する受信データの受信開口を2水準以上設定する受信開口水準設定部と、
受信開口水準設定部によって設定された各々の受信開口の水準について、受信開口に対応する遅延時間の補正後の受信データを整合加算し、所定のデータ処理を施して設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を生成する画像生成部と、
設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の画質を判定し、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の中から所定の画質の超音波画像を選択する画質判定部とを備えることを特徴とする超音波診断装置を提供するものである。
【0010】
ここで、さらに、超音波送受信部によって生成された受信データを保持する受信データ保持部を備え、
遅延補正部は、受信データ保持部から供給された受信データの遅延時間を補正し、受信データの位相を揃えるものであることが好ましい。
【0011】
また、画像生成部は、受信データの全ての受信開口の水準に対応する超音波画像を生成する複数の画像生成ユニットを有し、設定された受信開口の水準に対応する2以上の画像生成ユニットを同時に使用して、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を並列に生成するものであることが好ましい。
【0012】
また、画像生成部は、受信データから超音波画像を生成する1つの画像生成ユニットを有し、1つの画像生成ユニットを時分割に使用して、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を順次生成するものであることが好ましい。
【0013】
また、画質判定部は、画像生成部によって生成された超音波画像の輝度値に基づいて、超音波画像の画質を判定するものであることが好ましい。
【0014】
また、画質判定部は、画像生成部によって生成された超音波画像の鮮鋭度に基づいて、超音波画像の画質を判定するものであることが好ましい。
【0015】
また、画質判定部は、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の全ての画質を比較して、最も画質が高い超音波画像を選択するものであることが好ましい。
【0016】
また、画質判定部は、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の中から、所定の画質の超音波画像に対応する閾値以上の値を有する超音波画像を選択するものであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、超音波ビームを被検体に送信し、超音波ビームが被検体から反射した超音波エコーを受信して受信データを生成するステップと、
受信データにおける超音波エコーの到達時刻の差である遅延時間を補正し、受信データの位相を揃えるステップと、
遅延時間の補正後の受信データから超音波画像を生成する場合に使用する受信データの受信開口を2水準以上設定するステップと、
設定した各々の受信開口の水準について、受信開口に対応する遅延時間の補正後の受信データを整合加算し、所定のデータ処理を施して設定した各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を生成するステップと、
設定した各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の画質を判定し、設定した各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の中から所定の画質の超音波画像を選択するステップとを含むことを特徴とするデータ処理方法を提供する。
【0018】
ここで、さらに、生成した受信データを受信データ保持部に保持するステップを含み、
受信データ保持部から読み出した受信データの遅延時間を補正して、受信データの位相を揃えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、遅延時間補正後の受信データから超音波画像を生成する場合に使用する受信データの受信開口を2水準以上設定し、遅延時間補正後の受信データから、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を生成し、生成された超音波画像の中から、所定の画質の超音波画像を選択する。
これにより、本発明によれば、たとえ元の受信データの質が悪い場合であっても、超音波画像を最適なフォーカスに調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の超音波診断装置およびデータ処理方法を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明のデータ処理方法を実施する超音波診断装置の一実施形態の構成を表すブロック図である。
同図に示す超音波診断装置10は、超音波プローブ12と、超音波プローブ12に接続される装置本体13とによって構成されている。
また、装置本体13は、送信回路14および受信回路16と、受信データ保持部22と、遅延補正部44と、受信開口水準設定部24と、画像生成部18と、画質判定部52と、表示制御部32と、表示部34と、制御部36と、操作部38と、格納部40とを有する。
超音波診断装置10は、超音波プローブ12から被検体に超音波ビームを送信して、超音波ビームが被検体から反射した超音波エコーを受信し、超音波エコーの受信信号から超音波画像を生成して表示する装置である。
【0023】
超音波プローブ12は、被検体に当接させて使用するものであり、通常の超音波診断装置に用いられる振動子アレイ42を有する。
振動子アレイ42は、1次元または2次元に配列された複数の超音波トランスデューサ(超音波送受信素子)を有する。これらの超音波トランスデューサは、超音波画像の撮像の際に、それぞれ送信回路14から供給される駆動信号に従って超音波ビームを被検体に送信すると共に、超音波ビームが被検体から反射した超音波エコーを受信して受信信号を出力する。
【0024】
各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0025】
そのような振動子の電極に、パルス状または連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0026】
一方、装置本体13において、送信回路14は、例えば、複数のパルサを有し、制御部36によって選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ42の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するように、それぞれの駆動信号の遅延量(駆動信号を印加するタイミング)を調節する送信フォーカスを行って、複数の超音波トランスデューサに供給する。これにより、複数の超音波トランスデューサから被検体へ超音波ビームが送信される。
【0027】
受信回路16は、振動子アレイ42の各超音波トランスデューサから供給される受信信号を増幅し、A/D(アナログ/デジタル)変換して受信データを生成する。
超音波プローブ12、送信回路14および受信回路16は、本発明の超音波送受信部を構成する。
【0028】
ここで、送信遅延パターンは、複数の超音波トランスデューサから送信される超音波によって所望の方向に超音波ビームを形成するために駆動信号に与えられる遅延時間のパターンデータである。受信遅延パターンは、複数の超音波トランスデューサによって受信される超音波によって所望の方向からの超音波エコーを抽出するために受信信号に与えられる遅延時間のパターンデータである。
複数の送信遅延パターンおよび受信遅延パターンが予め格納部40に格納されている。制御部36は、格納部40に格納されている複数の送信遅延パターンおよび受信遅延パターンの中から1つの送信遅延パターンおよび受信遅延パターンを選択し、選択した送信遅延パターンおよび受信遅延パターンに従って、送信回路14および遅延補正部44に制御信号を出力して超音波の送受信制御を行う。
【0029】
続いて、受信データ保持部(受信データメモリ)22は、受信回路16によって生成された受信データを順次格納する。また、受信データ保持部22は、制御部36から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記の受信データに関連付けて格納する。
受信データ保持部22に保持された受信データは、順次読み出されて遅延補正部44に供給される。
【0030】
各超音波トランスデューサと被検体内の超音波反射源との間の距離がそれぞれ異なるため、各超音波トランスデューサに超音波エコーが到達する時間が異なる。
遅延補正部44は、制御部36によって選択された受信遅延パターンに基づいて、受信データ保持部22から供給された輝度画像の受信データにおける超音波エコーの到達時刻の差(遅延時間)を補正して受信データの位相を揃える。
本実施形態の場合、遅延補正部44は、超音波エコーの到達時刻の差(遅延時間)に相当する分、各受信データを遅延して位相を揃える。
【0031】
受信開口水準設定部24は、後述する操作者の操作部38を介しての指示入力に従って、制御部36の制御により、画像生成部18が、遅延補正部44による遅延時間補正後の受信データから超音波画像を生成する場合に使用する受信データの受信開口(チャネル)を2水準以上設定するための受信開口水準設定信号を出力する。
ここで、受信開口とは、超音波画像を生成する場合に使用する、超音波トランスデューサの配列方向における受信データの数ことである。つまり、超音波トランスデューサの配列方向の個数をNとすると、受信データの総チャネル数はNとなる。
受信開口をn(nはN以下の整数)とすると、本実施形態の場合、超音波トランスデューサの配列方向の中心のチャネルの受信データから両端のチャネルの受信データに向かって、それぞれn/2の範囲の受信データを使用して超音波画像が生成される。
【0032】
続いて、画像生成部18は、遅延補正部44から供給された遅延時間補正後の受信データ、および、受信開口水準設定部24から供給された受信開口水準設定信号に基づいて、超音波画像を生成する。つまり、画像生成部18は、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準について、受信開口に対応するチャネルの遅延時間補正後の受信データを使用して超音波画像を生成する。
画像生成部18は、
図2に示すように、全ての受信開口の水準1〜Nに対応するN個の画像生成ユニット18_1,18_2,…,18_Nを有する。また、各々の画像生成ユニット18_1,18_2,…,18_Nは、それぞれ、整相加算部46と、データ処理部48と、画像作成部50とを有する。
各々の画像生成ユニット18_1,18_2,…,18_Nは、それぞれ、受信開口の水準1〜Nに対応する超音波画像を作成するものである。
画像生成部18では、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準に対応する画像生成ユニットにより、それぞれ、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像が作成される。
【0033】
整相加算部46は、遅延補正部44から供給された遅延時間補正後の受信データを整合加算することによりデジタル的に受信フォーカス処理を行う。
超音波反射源と異なる位置に別の超音波反射源がある場合には、別の超音波反射源からの受信信号は到達時刻が異なるので、整相加算部46で加算することにより、別の超音波反射源からの受信信号の位相が打ち消し合う。これにより、超音波反射源からの受信信号が最も大きくなり、フォーカスが合う。受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
【0034】
データ処理部48は、整相加算部46によって受信フォーカス処理が行われた受信データに対して所定のデータ処理を施す。
本実施形態の場合、データ処理部48は、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号(超音波エコーの振幅を点の明るさ(輝度)により表した輝度画像の画像信号)を生成する。
生成されたBモード画像信号は、通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものである。そのため、データ処理部48は、生成されたBモード画像信号を通常の画像信号、例えば、テレビジョン信号の走査方式(例えば、NTSC方式)に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
【0035】
画像作成部50は、データ処理部48によるデータ処理後のBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、画像処理後のBモード画像信号に対応する超音波画像を作成する。
【0036】
続いて、画質判定部52は、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の画質を判定し、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の中から所定の画質の超音波画像を選択する。
画質判定部52は、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の輝度値、鮮鋭度などに基づいて、超音波画像の画質を判定する。例えば、画質判定部52は、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の中から、所定の画質の超音波画像に対応する輝度値、鮮鋭度などの閾値以上の値を有する超音波画像を選択する。もしくは、画質判定部52は、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の全ての画質を比較して、最も画質が高い超音波画像を選択する。
【0037】
続いて、表示制御部32は、画像生成部18によって生成された超音波画像を表示部34に表示させる。
表示部34は、例えば、LCD等のディスプレイ装置であり、表示制御部32の制御の下で、超音波診断画像(動画及び静止画)および各種の設定画面等を表示する。
【0038】
制御部36は、操作者により操作部38から入力された指示に基づいて超音波診断装置10各部の制御を行う。
操作部38は、操作者からの指示入力を受け付ける入力デバイスであり、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネルを用いることができる。
【0039】
格納部40は、制御部36が超音波診断装置10の各部の制御を実行するための動作プログラム、送信遅延パターンおよび受信遅延パターン等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、遅延補正部44、画像生成部18および表示制御部32は、CPU(コンピュータ)と、CPUに各種の処理を実行させるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0040】
次に、
図3に示すフローチャートおよび
図4に示す概念図を参照して、超音波診断装置10の動作を説明する。
図3は、
図1に示す超音波診断装置の処理の流れを表すフローチャート、
図4は、同処理の流れを表す概念図である。
【0041】
超音波プローブ12が被検体に当接され、操作者による操作部38からの指示入力により超音波診断が開始される。
【0042】
超音波診断が開始されると、制御部36は、超音波トランスデューサごとに超音波ビームの送信方向と超音波エコーの受信方向を設定し、超音波ビームの送信方向に応じて送信遅延パターンを選択するとともに、超音波エコーの受信方向に応じて受信遅延パターンを選択する。そして、選択した送信遅延パターンおよび受信遅延パターンに従って、送信回路14および遅延制御部44に制御信号を出力して超音波の送受信制御を行う。
【0043】
これに応じて、送信回路14では、選択された送信遅延パターンに基づいて、各超音波トランスデューサの駆動信号の送信フォーカスが行われて、複数の超音波トランスデューサから被検体へ超音波ビームが送信される。
そして、被検体からの超音波エコーが複数の超音波トランスデューサによって受信され、複数の超音波トランスデューサから受信信号が出力される。
受信回路16では、各超音波トランスデューサから供給される受信信号が増幅され、A/D変換されて受信データが生成される(ステップS10)。
受信回路16によって生成された受信データは、受信データ保持部22に順次保持される(ステップS12)。
【0044】
続いて、受信データ保持部22に保持された受信データが順次読み出され、遅延補正部44に供給される。
遅延補正部44は、選択された受信遅延パターンに基づいて、受信データ保持部22から供給された受信データの遅延時間を補正し、その位相を揃える(ステップS14)。
【0045】
一方、受信開口水準設定部24は、操作者の操作部38を介しての指示入力に従って、制御部36の制御により、画像生成部18が超音波画像を生成する場合に使用する受信開口を2水準以上設定するための受信開口水準設定信号を出力する(ステップS16)。
【0046】
ここで、受信データの受信開口の水準を設定するタイミングと、受信データの遅延時間を補正するタイミングは、どちらを先に実施しても同じ結果を得ることができる。ただし、本実施形態のように、受信データの遅延時間の補正を先にした方が、遅延時間の補正処理が1回で済むので望ましい。これに対し、受信データの受信開口の水準の設定を先にする場合、例えば、各々の画像処理ユニットにおいて、受信データの遅延時間の補正を実施することになる。
【0047】
画像生成部18は、遅延補正部44から供給された遅延時間補正後の受信データ、および、受信開口水準設定部24から供給された受信開口水準設定信号に基づいて、超音波画像を生成する。
【0048】
画像生成部18では、受信開口水準設定信号によって設定された各々の受信開口の水準に対応する画像生成ユニットにより、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像が生成される(ステップS18)。
すなわち、設定された各々の受信開口の水準に対応する画像生成ユニットにおいて、整相加算部46では、遅延時間補正後の受信データに対してデジタル的に受信フォーカス処理が行われ、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データが生成される。
続いて、受信フォーカス処理が施された受信データは、データ処理部48によりデータ処理されてBモード画像信号が生成され、画像作成部50によりBモード画像信号から超音波画像が作成される。これにより、受信開口水準設定信号によって設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像が作成される。
【0049】
そして、画質判定部52により、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像の画質が判定され、所定の画質の超音波画像、例えば、最も画質が高い超音波画像が選択される(ステップS20)。
【0050】
最後に、画像生成部18によって生成された超音波画像は、表示制御部32の制御により表示部34に表示される(ステップS22)。
【0051】
なお、受信データ保持部22を備えることは必須ではない。受信データを保持していなくても、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を生成することが可能である。この場合、例えば、あらかじめ決められた受信開口で整相加算する画像処理ユニットを複数用意しておき、受信回路16よって生成された受信データを分岐して、受信開口の違う、設定された各々の受信開口の水準に対応する画像処理ユニットに供給して超音波画像を生成する。
【0052】
一般的に、超音波トランスデューサの配列方向の中心の受信データの方が両端の受信データよりも信号強度が強く、S/N(信号/ノイズ)比がよい。
従って、整相加算部46が、遅延補正部44から供給された遅延時間補正後の受信データを整合加算する場合に、両端の受信データのS/N比が悪い場合には、受信開口を減らし、両端の受信データを除外して整合加算した方がS/N比のよい受信データを得ることができる。その一方で、受信開口を減らすと、整合加算する前の各々の受信データの重みが重くなるため、例えば、ある1つの受信データがノイズを持っていると、整合加算後の受信データは、その影響を大きく受けることになる。
【0053】
上記のように、元の受信データないし受信信号の質に応じて、超音波画像を最適なフォーカスに調整するための受信開口は異なってくる。
例えば、超音波反射源が孤立した点反射の場合、受信データにはノイズが少ない可能性が高いため、受信開口を小さくした方が望ましいと考えられる。これに対し、乳癌の石灰化した部位のように、超音波反射源として点反射が密集している場合には、各々の受信データがノイズを持っている可能性が高いため、受信開口を大きくした方が望ましいと考えられる。
【0054】
従って、本実施形態の超音波診断装置10のように、全ての受信開口の水準1〜Nに対応する画像生成ユニット18_1,18_2,…,18_Nを設け、受信開口を2水準以上設定し、設定された各々の受信開口の水準に対応する画像生成ユニットによって超音波画像を作成し、作成された超音波画像の中から、画質判定部52によって所定の画質の超音波画像を選択することにより、たとえ元の受信データないし画像信号の質が悪い場合であっても、超音波画像を最適なフォーカスに調整することができる。
【0055】
次に、
図5に示す概念図を参照して、受信データの総チャネル数N=64、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準である場合の例を挙げて説明する。
図5は、
図1に示す超音波診断装置の処理の流れを表す一実施形態の概念図である。
【0056】
本実施形態の場合、
図5に示すように、受信開口水準設定部24により、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準が設定される。これに応じて、画像生成部18では、受信開口水準設定部24によって設定された受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する画像生成ユニット18_64,18_32,18_16により、設定された受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する超音波画像が作成される。
そして、画質判定部52により、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する超音波画像の画質が判定され、所定の画質の超音波画像、例えば、最も画質が高い超音波画像が選択される。
【0057】
続いて、
図6(A),(B)および(C)は、それぞれ、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する遅延時間補正後の受信データと、その超音波画像(輝度画像)の様子を表す概念図である。
【0058】
例えば、
図6(A)に示すように、受信開口n1=64の場合、全てのチャネルN=64の受信データを使用して超音波画像が作成される。
図6(A)の左側に示すグラフは、遅延時間補正後の受信データの様子を表すものであり、横軸は、受信データのチャネルの配列方向(複数の超音波トランスデューサの配列方向)、縦軸は、時間である。同右側は、同左側に示すグラフにおいて、時刻t1における受信データに対応する超音波画像である。
【0059】
図6(A)のグラフに示す受信データは、遅延時間補正後の受信データであるが、前述のように、両端の受信データは信号強度が弱いためS/N比が悪い。受信開口n1=64の場合、画像生成ユニットは、全てのチャネルの受信データを使用して超音波画像を作成する。そのため、時刻t1において整合加算すると、両端の受信データのノイズの影響を受けて位相がずれている成分も加算してしまうため、輝度値が低下する。
【0060】
一方、
図6(B)に示すように、受信開口n2=32の場合、超音波トランスデューサの配列方向の中心のn2=32のチャネルの受信データを使用して超音波画像が作成される。この場合、両端の受信データのノイズの影響が軽減されるため、整合加算した場合に、両端の受信データの位相がずれている成分の影響が少なくなり、受信開口n1=64の場合と比べて、高輝度な超音波画像を得ることができる。
図6(C)に示す受信開口n3=16の場合も、受信開口n2=32の場合と同様である。
【0061】
最後に、
図7は、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する時刻t1における超音波画像の断面の様子を表すグラフである。このグラフの横軸は画素値、縦軸は輝度値である。
【0062】
このグラフに示すように、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する時刻t1における超音波画像の断面の様子を見ると、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の順序で順次輝度値が高くなり、鮮鋭度が大きく(画素値の広がりが小さく)なっている。
【0063】
画質判定部52は、受信開口n1=64,n2=32,n3=16の3水準に対応する時刻t1における超音波画像の断面の輝度値、鮮鋭度などに基づいて、超音波画像の画質を判定する。
本実施形態の場合、画質判定部52は、例えば、受信開口n3=16に対応する超音波画像が最も画質が高い画像であると判定する。
【0064】
なお、上記実施形態において、画像生成部18は、全ての受信開口の水準1〜Nに対応する超音波画像を生成する複数の画像生成ユニットを有し、受信開口水準設定部24によって設定された受信開口の水準に対応する2以上の画像生成ユニットを同時に使用して、設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を並列に生成する。このように、複数の画像生成ユニットを使用して並列処理することにより、処理時間を短縮することができる。
【0065】
これに対し、画像生成部18が、受信データから超音波画像を生成する1つの画像生成ユニットだけを有し、1つの画像生成ユニットを時分割に使用して、受信開口水準設定部24によって設定された各々の受信開口の水準に対応する超音波画像を順次生成することもできる。このように、1つの画像生成ユニットを時分割に使用することにより、回路規模を削減し、装置コストを低減することができる。
【0066】
また、1つの画像生成ユニットを時分割に使用する場合、画質判定部52は、各々の受信開口の水準1〜Nに対応する超音波画像の画質を順次判定し、所定の画質の超音波画像に対応する輝度値、鮮鋭度などの閾値以上の値を有する超音波画像が検出された時点で超音波画像の画質の判定を停止し、その検出された超音波画像を所定の画質の超音波画像として選択してもよい。これにより、画質の判定時間を短縮することができる。
【0067】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。