特許第5836221号(P5836221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧
<>
  • 特許5836221-荷電粒子線装置 図000002
  • 特許5836221-荷電粒子線装置 図000003
  • 特許5836221-荷電粒子線装置 図000004
  • 特許5836221-荷電粒子線装置 図000005
  • 特許5836221-荷電粒子線装置 図000006
  • 特許5836221-荷電粒子線装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5836221
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20151203BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20151203BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   H01J37/22 502H
   H01J37/22 502F
   H01L21/66 N
   H01J37/28 B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-172473(P2012-172473)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-32833(P2014-32833A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】坂 直磨
(72)【発明者】
【氏名】小原 健二
(72)【発明者】
【氏名】平井 大博
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−313862(JP,A)
【文献】 特開2004−239877(JP,A)
【文献】 特開2009−087893(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/052854(WO,A1)
【文献】 特開2000−243338(JP,A)
【文献】 特開2007−003539(JP,A)
【文献】 特開2000−314710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227、
H01J 37/00−37/02、37/05、
37/09−37/244、37/252−37/295、
H01L 21/64−21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を集束して試料に照射する電子光学系と、
前記電子線の照射によって前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する検出器と、
複数の画像を比較して欠陥を検出する画像処理部と、を有し、
前記電子光学系は前記試料の同じ箇所に対して前記電子線を複数の加速電圧で照射し、
前記画像処理部は、前記複数の加速電圧のそれぞれに対応して取得された複数の画像における前記同じ箇所のコントラスト変化量に基づいて、グレインとボイドを区別することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数の加速電圧は、グレインの前記電子線の加速電圧変化に対するコントラスト依存性とボイドの前記電子線の加速電圧変化に対するコントラスト依存性との差に基づいて決められることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数の画像は、第一の加速電圧で撮像された第一の画像と前記第一の加速電圧とは異なる第二の加速電圧で撮像された第二の画像とを少なくとも含み、
前記第一の加速電圧におけるボイドとグレインとのコントラストの差は、前記第二の加速電圧におけるボイドとグレインとのコントラストの差よりも大きく、
前記画像処理部は、前記第一の画像と前記第二の画像を比較することで前記第一の画像と前記第二の画像の差を求め、前記差の領域をボイドと判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
電子線を集束して試料に照射する電子光学系と、
前記電子線の照射によって前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する検出器と、
複数の画像を比較して欠陥を検出する画像処理部と、を有し、
前記電子光学系は前記試料の同じ箇所に対して前記電子線を複数の加速電圧で照射し、
前記画像処理部は、前記複数の加速電圧のそれぞれに対応して取得された複数の画像における前記同じ箇所のコントラスト変化量に基づいて、前記試料の表面から予め指定された深さにあるボイドを判別することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数の加速電圧は、第一の深さにあるボイドの前記電子線の加速電圧変化に対するコントラスト依存性と前記第一の深さとは異なる第二の深さにあるボイドの前記電子線の加速電圧変化に対するコントラスト依存性との差に基づいて決められることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項4に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数の画像は、第一の加速電圧で撮像された第一の画像と前記第一の加速電圧とは異なる第二の加速電圧で撮像された第二の画像とを少なくとも含み、
前記第一の画像および前記第二の画像は、少なくとも第一のボイドの像と、前記第一のボイドとは異なる深さにある第二のボイドの像を含み、
前記第一の加速電圧における第一のボイドと第二のボイドとのコントラストの差は、前記第二の加速電圧における前記第一のボイドと前記第二のボイドとのコントラストの差よりも大きく、
前記画像処理部は、前記第一の画像と前記第二の画像を比較することで前記第一の画像と前記第二の画像の差を求め、前記差の領域を第一のボイドまたは第二のボイドと判定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造過程で生じた欠陥を検査するための荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの配線材料として、デバイスの動作周波数を高速化する目的で、配線遅延を減らす手段の一つとして抵抗率の低い銅(Cu)が用いられている。Cu配線プロセスは絶縁膜に形成したトレンチ(配線溝)に拡散防止膜(バリアメタル)と電界メッキの下地導電膜(Cuシード)をスパッタリング法で順次形成した後、電界メッキ法でCu配線を埋め込みながら形成する。Cu配線の埋め込み特性はシード層の被覆形状や電解めっきの埋込み能力などで決まるが、微細形状への埋込み能力には限界があり、微細幅のトレンチでは欠陥のない完全埋込みが困難でボイド欠陥が生じる場合がある。特に配線内部にボイド欠陥が生じた場合は断線や配線抵抗の増加、エレクトロマイグレーション耐性の低下を招くことから、Cu配線の埋込み不良は配線の信頼性、強いては半導体デバイス性能に係わる重大な問題になるため、Cu配線中のボイドをインラインで検出する技術が求められている。さらに、プロセス起因で生じるボイドをインラインで検出し、その結果をプロセス条件にフィードバックするためには非破壊で短時間に検出する必要がある。
【0003】
ボイドは配線内部に存在するため、通常の半導体デバイス検査で用いられる暗視野および明視野の光学式検査装置では検出することはできない。通常は平坦化工程(CMP)後にSEMを用いてボイドを検出する。SEMを用いて配線内部に存在するボイドを検出するためには、高エネルギーの電子線は試料の内部まで侵入することができる5kV以上の高加速電圧の電子線を照射する必要がある。しかし、高加速電圧下では、ボイドと同時に結晶粒(グレイン)のコントラストが現れるため、SEM画像だけではグレインとボイドを区別することが困難になる場合がある。ボイドを検出するためには、FIB(集束イオンビーム装置)による配線部分の断面加工とTEMあるいはSEMによるボイド検出を組み合わせたFIB+SEM/TEM法を適用しなければならない。FIB+SEM/TEM法では、FIBで作成された配線断面をSEM やTEM で観測することによってボイドを確実に特定することが可能であるが、本方法は部分的または完全な破壊検査のうえ、試料の準備と観察に多大の時間が要することが課題であった。以上のことからインライン検査に適用可能な非破壊で高速で簡便に検出できるボイド検出方法が望まれている。
【0004】
ボイドを検出する従来技術として 化学機械研磨(CMP)に依るウェーハ平面ポリッシュと光学式の外観検査装置によるボイド検出を組み合わせたCMP法がある。また、配線部の電気抵抗を測定し、ボイドが存在すると電気抵抗が大きくなることからCuボイドを検出するプローブテスト法などが挙げられる。
【0005】
特許文献1では、TEMを用いてグレインに相当する結晶欠陥やプラグおよびビア配線の欠陥を検出する技術として、TEMにおいて電子線入射方向を複数変化させて同一箇所を観察することによって結晶欠陥を観察する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−243338号公報(US6548811)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グレイン欠陥を特定するための従来技術であるCMP法はウェーハ全体の検査には時間を要するうえ完全な破壊である。また、プローブテスト法では抵抗値からボイドの有無を推測するにすぎず、配線中のボイド発生箇所やその大きさについて知ることはできず、最終的に微細なボイドや配線内部のボイドの検出には、FIBで配線断面を観察できるよう加工してSEMやTEMで観察することが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、電子線を集束して試料に照射する電子光学系と、前記電子線の照射によって前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する検出器と、複数の画像を比較して欠陥を検出する画像処理部と、を有し、前記電子光学系は前記試料の同じ箇所に対して前記電子線を複数の加速電圧で照射し、前記画像処理部は、前記複数の加速電圧のそれぞれに対応して取得された複数の画像における前記同じ箇所のコントラスト変化量に基づいて、グレインとボイドを区別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非破壊検査で微小なボイドの発生領域を特定することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の概略構成図である。
図2】撮像フローを示す図である。
図3】撮像フローを示す図である。
図4】ボイドとグレインのコントラストと加速電圧の関係を示す図である。
図5】ボイドとグレインがそれぞれ存在するCu配線の縦断面図である。
図6】ボイドとグレインを区別してボイド検出処理の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の課題についてさらに詳しく説明する。
【0014】
従来のSEMによるボイド検出は、観察時にCuのグレインとボイドを区別することができない理由を以下に説明する。
【0015】
ボイドのSEM像における視認性は、ボイドのコントラストによって決まる。ボイドコントラストとは、ボイドの有無によって試料内への電子線の侵入深さが変わり、結果として、ボイド有無部で反射電子の放出量が変わるために生じるコントラストである。試料内にボイドがある部位は、侵入長が長くなるため、反射電子放出量は減少する。一方、ボイドがない部位は、侵入深さが浅く、周辺のボイドが存在しない箇所より反射電子放出量が多くなり、SEM像では周辺部位より相対的にコントラストは下がり、ボイドは低輝度の黒点として観察することができる。
【0016】
しかし、Cu配線の埋め込み過程においては、Cuの電界めっき液の不均一な流れや被覆形状のばらつきによって、グレインのサイズは均一に形成されず、配線内に結晶方位の異なるグレインが生じる。周囲の結晶との方位差が大きい特定の方位を有したグレインは電子チャネリング現象が生じ、SEM画像においてはボイドと同じように輝度が下がり、特定の方位を有したグレインとボイドが同一SEM観察領域に存在する場合は、グレインとボイドを明確に区別することができない。
【0017】
これについてさらに詳細に説明する。電子チャネリング現象が生じると、試料から放出されるBSEの量は変化する。例えばCu結晶方位が電子線入射方向に対して並行に近づくと、入射電子はCu原子との衝突する確率が減少し、入射電子の侵入長は長くなり、結果として試料表面からの反射電子放出量は減少し、SEM像においては信号量が減るため、輝度値が低くなり、暗く見える。一方入射電子方向に対して、結晶方位が傾きを有している場合、入射電子はCu原子との衝突する確率が増加し、入射電子の侵入長は短くなり、結果として反射電子放出量は増加する。SEM像においては信号量が増えるため、輝度値が高くなり、明るく見える。このように特定の結晶方位を持ったグレインはBSE像において、ボイドと同様に暗いコントラストとして観測されるため、ボイドの観察を妨げていた。
【0018】
従来技術のCMP法はウェーハの研磨と外観検査を繰り返し行って、SEMや光学式検査装置を用いてボイドを検出することができる手法であるが、ウェーハ全体の検査には時間を要するにうえ完全な破壊検査である。また、プローブテスト法では抵抗値からボイドの有無を推測するにすぎず、配線中のボイド発生箇所やその大きさについて知ることはできず、最終的に微細なボイドや配線内部のボイドの検出には、FIB+SEM/TEM法による部分的または完全な破壊検査が必要であった。
【0019】
従来のボイドとグレインを区別して検出する技術として、例えば特許文献1ではレーザー照射時の発熱による電気抵抗の変化が故障箇所によって異なることを利用してCuボイドを検出するレーザー誘起法が示されている。
【0020】
この手法では、レーザー照射したときの温度上昇によって生じる電気抵抗の増大を観測電流の変化として捉え、ビーム走査と同期させて輝度変換することにより、ボイド発生箇所とグレインを画像として捉える。しかし、レーザー誘起法のような光学式の検査装置では、誘起レーザー波長に起因する空間分解能に限界があり、微細配線(100nm以下)への適用は困難である。さらに配線の微細化によって配線抵抗値の増大により、ボイドやグレインによって生じる微弱な抵抗値変化を観測することは困難である。
【0021】
以上述べたように、高速で高感度かつ非破壊でボイドを検出し、ウェーハ全体を検査可能なボイド検査方法は無い。本発明の目的の一つは、Cu配線のグレインとボイドのSEM像における輝度に相当するコントラストが電子線照射加速電圧によって変化することに着目して、試料を破壊することなく、自動で高速にグレインとボイドを区別して検出することができる観察方法を提供することにある。
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、荷電粒子線装置の一例として走査型電子顕微鏡を用いた例を説明するが、これは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明において荷電粒子線装置とは荷電粒子線を用いて試料の画像を撮像する装置を広く含むものとする。荷電粒子線装置の一例として、走査型電子顕微鏡を用いた検査装置、レビュー装置、パターン計測装置が挙げられる。
【0023】
図1は、電子顕微鏡の概略構成を示す縦断面図である。走査型電子顕微鏡(SEM)を半導体ウェーハに形成された回路パターンの欠陥レビューやチップ内の予め指定された箇所を順次検査する欠陥検査や回路パターンの出来栄え検査に使用できるように改良した撮像装置8は、電子ビームEBの発生から半導体ウェーハWFまでの間が真空に保たれ、電子源9、コンデンサレンズ10、11、偏向走査用コイル12、対物レンズ13、非点収差補正コイル14、XYステージ15、二次電子検出器25と取り込角度の異なる二つの反射電子検出器27、28が設けられている。また、真空装置の外部には、各種データを記憶する記憶装置16、画像や検査結果を表示するディスプレイ17、装置の動作指示を入力する入力装置18、試料の画像を生成や演算をする画像演算部20、検出器からの信号をA/D変換するA/D変換部21、電子光学系に含まれる各部品を制御する電子光学系制御部22、ステージを制御するステージ制御部23、電子源9に接続された高電圧安定化電源24が設置されている。全体制御部19には欠陥検出処理やパターン出来栄え評価を行う画像処理サーバ26が設けられている。また必要に応じてネットワークを介して外部画像処理サーバ33が接続されている。
【0024】
システムの構成はこれに限られず、システムを構成する装置の一部または全部が共通の装置であってもよい。また、荷電粒子線装置にはこのほかにも各部分の動作を制御する制御部や、検出器から出力される信号に基づいて画像を生成する画像生成部が含まれている場合もある(図示省略)。制御部や画像処理部は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、荷電粒子線装置に接続されたコンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。また、これらの装置や回路、コンピュータ間は有線又は無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。
【0025】
検査対象となる半導体ウェーハWFは、XYステージ15に搭載される。全体制御部19からの制御信号がステージ制御部23に送られ、ステージ制御部23からXYステージ15に送られ、XYステージ15がX、Y方向に移動制御される。電子源9から発射された電子ビームEBは、コンデンサレンズ10、11、対物レンズ13によって収束され、偏向走査用コイル12によって半導体ウェーハWF上をスキャンされることにより、検査対象の半導体ウェーハWFに照射され、この照射によって半導体ウェーハWFから得られる二次電子が二次電子検出器25で、反射電子が反射検出器27と反射電子検出器28で検出され、A/D変換部21でアナログ信号からデジタル信号へ変換処理されて、半導体ウェーハWFのデジタル画像データ(SEM画像)が生成され、ディスプレイ17に表示される。以下、二次電子検出器25で生成されたSEM画像をSE像、反射電子検出器27と反射電子検出器28で生成されたSEM画像をBSE像と呼ぶ。欠陥のレビューやパターン検査をする電子顕微鏡は、反射電子信号から得られる陰影情報で凹凸判定を行うため、少なくとも一つ以上の反射電子検出器を備えている。本発明の実施形態で用いる撮像装置8は反射電子取り込方位の異なる二つの反射電子検出器27と反射電子検出器28が備えられている。欠陥検出処理などの画像処理は画像処理サーバ26で行われる。欠陥検査ではオペレータは入力装置18において、加速電圧やビーム電流などの光学条件、欠陥を検出するための感度や閾値などの欠陥検出条件、半導体ウェーハWFの検査対象チップとチップ内の検査座標の入力項目を入力し、それらはレシピとして登録され記憶装置16に保存される。
【0026】
全体制御部19では、レシピに登録された検査座標位置に基づいて、検査位置が撮像装置8の視野に入るようにステージ制御部23にステージ移動命令を送り、XYステージ15が移動し、指定した倍率設定で撮像する。この画像を観察画像という。また必要に応じて半導体ウェーハWF内の観察部位が存在するチップに隣接したチップの同部位を指定した倍率設定で撮像する。この部位は観察部位と同じパターンが形成されている部位であり、この画像を参照画像と呼ぶ。参照画像は観察対象パターンが繰り返しパターンで形成されるセルの場合は、観察画像から生成される場合もある。また、複数のチップにおいてチップ内の同一箇所を検査する定点検査においては、検査感度を高める目的や検査時間を短縮する目的で、検査で取得した複数の画像を合成することによって参照画像を生成する。さらに、参照画像を実際のSEM画像ではなく、CADデータ等を用いて人為的に作り出した参照画像を用いることもできる。取得した観察画像と参照画像の画像比較による欠陥検出処理が画像処理サーバ26で行われる。また必要に応じて取得した画像データは、ネットワークを介して外部画像処理サーバ33へ転送され、外部の画像処理サーバ33で欠陥検出処理や半導体パターンの出来栄えなどを定量化する画像評価が行われる。
【0027】
電子源9から発射された電子ビームEBの加速電圧は引出電極40の印加電圧によって制御される。本実施形態では、加速電圧の制御は引出電極40の印加電圧を制御する方式を例に説明するが、加速電圧の制御方法は問わず様々な形態をとってもよく、電子線照射の過程で最終的に半導体ウェーハWFに照射される加速電圧を制御できればよい。例えば、半導体ウェーハWFに負の電圧を印加して、電子ビームEBを半導体ウェーハWFに入射する直前で減速させるリターディング方式によっても半導体ウェーハWFに照射される加速電圧を制御することが可能である。また、電子線照射経路に電子ビームを加速および減速させる電極を設けることによっても加速電圧を制御することが可能である。
【0028】
次に前述の装置での実施を例にとり、本実施例における自動欠陥観察時の画像取得フローを図2を用いて説明する。ウェーハをロード後(201)、第一の加速電圧を設定する(202)。ウェーハアライメント(203)を行った後、予め検査条件としてレシピに登録された検査位置情報に基づいてXYステージの移動(204)により、検査位置へ撮像装置8の視野を移動し、観察画像を撮像する(205)。
【0029】
以降、次の検査位置があれば、XYステージの移動により、各検査位置へ順次移動し、全ての検査位置の観察画像を取得して、第一の加速電圧での観察画像取得フローが終了する(206)。次に第二の加速電圧に設定し、第一の加速電圧での観察画像取得フローと同じように、第一の加速電圧で観察した全ての検査位置について観察画像を撮像し、第二の加速電圧での観察画像取得フローが終了する(207)。その後、ウェーハをアンロードする(208)。順次撮像する複数の加速電圧は、ユーザが検査情報としてレシピで設定することができ、第三の加速電圧、第四の加速電圧と複数の加速電圧が検査条件としてレシピに登録されている場合は、第三の加速電圧、第四の加速電圧と設定した複数の加速電圧で前記フローが繰り返し実行される。
【0030】
前述の観察画像取得フローは一例であり、同一箇所を複数の加速電圧で撮像した観察画像を取得できるのであれば、その順序は問わない。例えば、図3に示すように、検査位置へ移動後(303)、加速電圧を設定(304)し観察画像を取得(305)した後、次の加速電圧に設定し(306)繰り返し複数の加速電圧で同一箇所を撮像した後、次の検査位置があれば(307)、次の検査位置へXYステージ移動(303)するというフローでもよい。また通常光学条件を変更すると光軸がずれ、結果としてSEMで観察する視野が移動してしまう場合があるため、加速電圧変更時に予め既知の加速電圧間の視野ずれ量を補正してもよいし、加速電圧変更後のウェハアライメントを実行してもよい。
【0031】
ここで、本発明の特徴である複数の加速電圧の決定方法と複数の加速電圧で同一箇所を撮像する理由について説明する。加速電圧はボイドとグレインのコントラストに影響を与えることは先に述べた。SEM画像におけるボイドのコントラストは、ボイドが存在する部位とその周辺のボイドが存在しない部位から放出される反射電子量の差で生じる輝度の差で、グレインのコントラストは部位ごとの結晶方位の相違で生じる輝度値の差である。
【0032】
輝度の差が生じる原因について詳細に説明する。ボイドが配線内部に存在する部位においては、電子の試料内における侵入を妨げる物質が存在しないため、一次電子の侵入長は長くなり、ボイドが存在しない部位より深く侵入し、試料表面すなわち配線の表面から放出される反射電子の信号量は減少し、結果としてSEM画像において画素の輝度は下がり、当該部位は黒くなる。一方、試料に入射する一次電子線と平行の結晶方位を持ったグレインにおいては、電子チャネリング現象が生じにくくなり、侵入長が長くなることにより試料表面から放出される反射電子量は減少する。前述の結晶方位を有したグレインはSEM画像において輝度が下がり当該部位は暗くなる。ボイドやグレインが存在する部位における輝度の低下は、周辺部位との輝度差はSEM画像においてコントラストの上昇を意味する。以上より、ボイドのコントラストは加速電圧と存在深さに依存し、グレインのコントラストの大きさは加速電圧とグレインの結晶方位に依存することから、ボイドとグレインのコントラストは、そのサイズや存在する深さや結晶方位の違いによってコントラストの大小はあるものの、基本的に加速電圧に依存してそれぞれ異なる変化を示す。
【0033】
ボイドとグレインのコントラストと加速電圧の関係について、線幅が30nm、深さが60nmの微細Cu配線を例に、図4を用いて詳細に説明する。図4は加速電圧E0を300Vから20kVまで変更したときの、絶縁膜で囲まれたCu配線に存在する深さ位置の異なるボイドA(22)、ボイドB(23)、ボイドC(24)と結晶方位の異なるグレインA(25)とグレインB(26)のコントラストの変化の例を示している。横軸は加速電圧で縦軸はコントラスト値である。コントラスト値が大きいほど、当該部位とその周辺部位との輝度値の差が大きいことを意味しており、ボイド観察や検出が容易になる。なお、ボイドが存在しない場合は加速電圧に依らずコントラスト値は1となる。
【0034】
図4で図示されたボイドA(22)とボイドB(23)とボイドC(24)とグレインA(25)とグレインB(26)がそれぞれ存在するCu配線の縦断面図を、図5に示す。ボイドA(22)は配線の上部に位置し、ボイドB(23)は配線中部に位置し、ボイドC(24)は配線下部に位置している。グレインA(25)とグレインB(26)は結晶方位がそれぞれ異なっている。図4からボイドA(22)とボイドB(23)とボイドC(24)は加速電圧の上昇につれてコントラストが上昇していることがわかる。ボイドA(22)はボイドB(23)より配線表面に近接する位置に存在するため、一次電子の侵入長は短くてすみ、5kVから7kVの範囲でコントラストが上昇する傾向を示し、10kVでその最大値を得ることができる。一方、ボイドC(24)は配線下部の深い位置に存在するため、一次電子の侵入長が長い必要があり、5kVから7kVの範囲ではコントラストを得ることはできず、7kVから上昇し、10kVで最も高いコントラスト値を得る。10kV以上の加速電圧では一次電子の侵入長がCu配線の深さより長くなるため、ボイドAとBとCのコントラストは低下していく。グレインA(25)とグレインB(26)は結晶方位の差異によってコントラスト値は異なるものの、どちらも加速電圧が5kVでコントラストが最大となる傾向を示し、5kV以上ではボイドと比べコントラストの変化は小さい。
【0035】
以上述べたように、グレインとボイドのコントラスト値は加速電圧に大きく依存し、それぞれ特徴的な傾向を有していることが分かる。また、ボイドの存在する深さによってもコントラスト値の加速電圧依存性は異なることが分かる。
【0036】
図4で示した、ボイドC(24)とグレインA(25)が撮像視野内に両方とも存在するCu配線に対して5kVまでの加速電圧では、グレインAを観察することはできるが、ボイドC(24)はコントラストが得られず観察できない。また、加速電圧10kVから20kVの範囲では、ボイドC(24)とグレインA(25)が観察可能であるが、ボイドC(24)とグレインA(25)のコントラストはおおよそ同等になり、従来の同一加速電圧で撮像した観察画像と参照画像を用いた比較検査による欠陥検出処理においては、観察画像と参照画像の差画像のコントラストの変化量に閾値を設けて検出するため、ボイドC(24)とグレインA(25)は同一の欠陥として検出されてしまう。そのため、検出するのに十分なコントラストの差が得られる複数の加速電圧で繰り返し同一の箇所を撮像し、画像を比較することが重要であることがわかる。
【0037】
複数の加速電圧として選択されるのに最適な加速電圧は、グレインのコントラスト変化量が小さいのに対してボイドのコントラスト変化量が大きくなる加速電圧である。図4で図示した各ボイドおよび各グレインが存在する例では、3〜7kVと10〜20kVの内から選択することが望ましい。例えば、5kVと10kVで観察された変化量が小さいコントラストはグレイン起因によるものと容易に推測できる。逆にコントラスト変化量が大きい場合、ボイドと特定することができる。
【0038】
複数の加速電圧は少なくとも二つ以上必要であるが、高精度にボイドとグレインを区別するためには3つ以上の加速電圧で同一箇所を撮像することが望ましい。例えば、ボイドを観測することができない3kVや10kVに対してボイドのコントラストが低下する20kVを加えることで、ボイドとグレインを区別する判定精度を高めることができる。さらに、多くの加速電圧によって撮像すれば、加速電圧とコントラスト変化の特性から深さ位置を特定することも可能である。
【0039】
以上述べたように、ボイドとグレインを区別するためには、加速電圧に対するグレインとボイドに特徴的なコントラスト変化に基づいてボイドとグレインを検出する必要があることがわかる。
【0040】
次に複数の加速電圧で撮像した観察画像を用いたボイドおよびグレイン検出処理について述べる。撮像した観察画像は一旦記憶装置16に保存された後、画像処理サーバ26に転送され、異なる加速電圧で撮像した観察画像同士で差分処理が行われる。差分処理の結果得られる差画像から、グレインとボイドを区別して検出する検出処理が行われる。差分処理および検出処理は、観察画像の撮像と平行してリアルタイムで処理してもよいし、検査後に外部画像処理サーバ33へ転送し、オフラインで処理してもよい。これらの処理は、外部画像処理サーバ33で画像撮像フロー実行中にリアルタイムに処理できることは言うまでもない。
【0041】
ここで本実施形態における、第一の加速電圧5kVと第二の加速電圧10kVで同一箇所を撮像した画像を用いた例として、ボイドとグレインを区別してボイド検出処理の方法について、図6を用いて以下詳細に説明する。第一の加速電圧5kVで撮像した観察画像61と第二の加速電圧10kVで撮像した観察画像62とを用いたボイド領域の抽出は差分処理により行われる。観察画像61にはグレイン65が存在し、観察画像62にはグレイン66とボイド67が存在する。これらの画像を差分処理によって中間差画像67を生成する。その後、中間差画像63を適切なしきい値で二値化された差画像64を生成し、ボイド領域69を得る。しかし、一般的に、SEM画像においては、観察する光学条件や表面構造や材質および材料によっては、ボイドとグレインは検出に必要な十分なコントラストが得られない場合がある。
【0042】
中間差画像63を生成時に必要に応じて、中間差画像63の生成前に観察画像61と観察画像62に対して、検出感度や精度を高める目的で、様々な画像処理が行われる。例えば、複数の検出器を有している場合、複数の検出器で形成された複数の画像を合成することや、観察画像61と観察画像62の明るさやコントラストが異なる場合、それぞれの画像に対してコントラストや明るさの調整が行われる。試料の帯電によって生じるSEM画像全体のコントラストや明るさのムラは必要に応じて補正される。観察画像61と観察画像62の撮像位置がずれている場合は差画像を作成するときに位置合わせ処理を行う。
【0043】
また、観察画像61と観察画像62の差分のコントラスト値(輝度値)で構成された中間差画像63にはピクセル単位で構成されたボイド領域68が現れる。観察画像61と観察画像62の中間差画像63において輝度値の変化量が大きい部位がボイドとして検出することができる。中間差画像63におけるボイド領域68の輝度値は予めレシピに登録した感度の設定に基づいて増幅される。差画像64におけるボイド領域の大きさは予めレシピに登録した感度としきい値パラメータによって決まる。通常は検出対象のボイドが検出可能な値を設定する。また必要に応じて検査感度を向上させる目的で、観察画像内の検出したい領域のみを差分処理の対象とする。例えば、本実施例ではCu配線中のボイドのみが検出対象であるので、検出対象領域はCu配線601のみに限定すると効果的に検出できる。
【0044】
図6ではボイドとグレインの判別を主な具体例として説明したが、同様の方法により、検出対象としたい深さにあるボイドとそれ以外の深さにあるボイドを判別することも当然可能である。例えば、中間差画像から得ることができるボイドのコントラスト値とあらかじめボイドの深さとコントラスト値の関係が保存されたテーブルとを比較参照することによってボイドの深さを判別することができる。
【0045】
以上述べた方法によれば、複数の加速電圧で同一の箇所を撮像し、撮像した複数の画像の差分処理をするため、Cu配線中に存在するボイドをグレインと区別して検出することができる。これにより、半導体デバイスのメタル配線工程で生じるボイドをインラインで非破壊かつウェーハ全体を短時間で検査することで、半導体デバイスの配線工程のプロセス条件の最適化に要する時間を短縮することができる。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0047】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0048】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0049】
68 ボイド領域
69 ボイド領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6