特許第5836230号(P5836230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5836230パターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5836230
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20151203BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20151203BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G03F7/038 601
   G03F7/004 503A
   G03F7/039 601
【請求項の数】12
【全頁数】104
(21)【出願番号】特願2012-196110(P2012-196110)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2013-76991(P2013-76991A)
(43)【公開日】2013年4月25日
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-202044(P2011-202044)
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 裕雄
(72)【発明者】
【氏名】椿 英明
(72)【発明者】
【氏名】平野 修史
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−217884(JP,A)
【文献】 特開2011−123469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/004
G03F 7/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸分解性繰り返し単位を含有し、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂と、(B)電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物と、(C)溶剤とを含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程(2)、及び、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像して、ネガ型のパターンを形成する工程(4)をこの順番で有するパターン形成方法であって、前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対する下記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が4モル%以下であり、かつ前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として21〜70質量%である、パターン形成方法。
【化1】

式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【請求項2】
(A)酸分解性繰り返し単位を含有し、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂と、(B)電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物と、(C)溶剤とを含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程(2)、及び、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像して、ネガ型のパターンを形成する工程(4)をこの順番で有するパターン形成方法であって、前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として31〜60質量%である、パターン形成方法。
【請求項3】
前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として31〜60質量%である、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記樹脂(A)が、更に、極性基を有する繰り返し単位を有する、請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記極性基が、ヒドロキシル基、シアノ基、ラクトン基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、アンモニウム基、スルホニウム基及びこれらの2つ以上を組み合わせてなる基より選択される、請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記樹脂(A)が、更に、酸性基を有する繰り返し単位を有する、請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記酸性基が、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、又は、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基である、請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対する下記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が4モル%以下である、請求項2に記載のパターン形成方法。
【化3】

式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【請求項9】
半導体微細回路作成用である、請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法を供せられる感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて形成されるレジスト膜。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる、有機溶剤を含む現像液を用いたパターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関するものである。更に詳しくは、電子線又はEUV光(波長:13nm付近)を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる、有機溶剤を含む現像液を用いたパターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。更には、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
これら電子線やX線、あるいはEUV光リソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のレジスト組成物が望まれている。
特にウェハー処理時間の短縮化のため、高感度化は非常に重要な課題であるが、高感度化を追求しようとすると、パターン形状や、限界解像線幅で表される解像力が低下してしまい、これらの特性を同時に満足するレジスト組成物の開発が強く望まれている。
【0004】
高感度と、高解像性、良好なパターン形状はトレードオフの関係にあり、これを如何にして同時に満足させるかが非常に重要である。
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、一般に、アルカリ現像液に難溶性若しくは不溶性の樹脂を用い、放射線の露光によって露光部をアルカリ現像液に対し可溶化することでパターンを形成する「ポジ型」と、アルカリ現像液に可溶性の樹脂を用い、放射線の露光によって露光部をアルカリ現像液に対して難溶化若しくは不溶化することでパターンを形成する「ネガ型」とがある。
かかる電子線、X線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物としては、高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型ポジ型レジスト組成物が検討され、主成分としてアルカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性樹脂(以下、フェノール性酸分解性樹脂と略す)、及び酸発生剤からなる化学増幅型ポジ型レジスト組成物が有効に使用されている。
【0005】
一方、半導体素子等の製造にあたってはライン、トレンチ、ホール、など種々の形状を有するパターン形成の要請がある。種々の形状を有するパターン形成の要請に応えるためにはポジ型だけではなく、ネガ型の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の開発も行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
超微細パターンの形成においては、解像力の低下、パターン形状の更なる改良が求められている。
この課題を解決するために、酸分解性樹脂をアルカリ現像液以外の現像液を用いて現像する方法も提案されている(たとえば、特許文献3及び4参照)。
しかしながら、超微細領域において、高感度、高解像性、高ラインウィズスラフネス(LWR)性能を更に高次元で同時に満足することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−148806号公報
【特許文献2】特開2008−268935号公報
【特許文献3】特開2010−217884号公報
【特許文献4】特開2011−123469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電子線あるいは極紫外線(EUV光)を使用する半導体素子の微細加工における性能向上技術の課題を解決することであり、高感度、高解像性(高解像力など)、高ラインウィズスラフネス(LWR)性能を極めて高次元で同時に満足するパターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は以下の通りである。
<1>
(A)酸分解性繰り返し単位を含有し、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂と、(B)電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物と、(C)溶剤とを含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程(2)、及び、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像して、ネガ型のパターンを形成する工程(4)をこの順番で有するパターン形成方法であって、前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対する下記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が4モル%以下であり、かつ前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として21〜70質量%である、パターン形成方法。
【化1】

式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
<2>
(A)酸分解性繰り返し単位を含有し、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂と、(B)電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物と、(C)溶剤とを含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程(2)、及び、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像して、ネガ型のパターンを形成する工程(4)をこの順番で有するパターン形成方法であって、前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として31〜60質量%である、パターン形成方法
<3
前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として31〜60質量%である、<1>に記載のパターン形成方法。

前記樹脂(A)が、更に、極性基を有する繰り返し単位を有する、<2>に記載のパターン形成方法。

前記極性基が、ヒドロキシル基、シアノ基、ラクトン基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、アンモニウム基、スルホニウム基及びこれらの2つ以上を組み合わせてなる基より選択される、<>に記載のパターン形成方法。

前記樹脂(A)が、更に、酸性基を有する繰り返し単位を有する、<2>に記載のパターン形成方法。

前記酸性基が、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、又は、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基である、<>に記載のパターン形成方法。

前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対する下記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が4モル%以下である、<2>に記載のパターン形成方法。
【化3】

式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。

半導体微細回路作成用である、<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
10
<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法を供せられる感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物。
11
10>に記載の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて形成されるレジスト膜。
12
<1>〜<>のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
本発明は、上記<1>〜<12>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕〜〔12〕)についても記載している。
【0009】
〔1〕 (A)酸分解性繰り返し単位を含有し、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂と、(B)電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物と、(C)溶剤とを含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程(2)、及び、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像して、ネガ型のパターンを形成する工程(4)をこの順番で有するパターン形成方法であって、前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として21〜70質量%である、パターン形成方法。
〔2〕 前記化合物(B)の含有率が、前記組成物の全固形分を基準として31〜60質量%である、上記〔1〕に記載のパターン形成方法。
〔3〕 前記樹脂(A)が、更に、極性基を有する繰り返し単位を有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載のパターン形成方法。
〔4〕 前記極性基が、ヒドロキシル基、シアノ基、ラクトン基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、アンモニウム基、スルホニウム基及びこれらの2つ以上を組み合わせてなる基より選択される、上記〔3〕に記載のパターン形成方法。
〔5〕 前記樹脂(A)が、更に、酸性基を有する繰り返し単位を有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載のパターン形成方法。
〔6〕 前記酸性基が、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、又は、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基である、上記〔5〕に記載のパターン形成方法。
〔7〕 前記樹脂(A)の全繰り返し単位に対する下記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が4モル%以下である、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化1】

式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
〔8〕 半導体微細回路作成用である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
〔9〕 上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を供せられる感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物。
〔10〕 上記〔9〕に記載の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて形成されるレジスト膜。
〔11〕 上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
〔12〕 上記〔11〕に記載の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高感度、高解像性(高解像力など)、高ラインウィズスラフネス(LWR)性能を極めて高次元で同時に満足するパターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において光とは、極紫外線(EUV光)のみならず、電子線も含む。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、極紫外線(EUV光)による露光のみならず、電子線による描画も露光に含める。
【0012】
[パターン形成方法]
まず、本発明のパターン形成方法を説明する。
本発明のパターン形成方法は、(A)酸分解性繰り返し単位を含有し、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂と、(B)電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物と、(C)溶剤とを含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程(1)、該膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程(2)、及び、露光後に有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)をこの順番で有する。そして、本発明のパターン形成方法においては、化合物(B)の含有率が、組成物の全固形分を基準として21〜70質量%となっている。
【0013】
本発明によれば、高感度、高解像性、高ラインウィズスラフネス(LWR)性能を極めて高次元で同時に満足するパターン形成方法、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物、及び、レジスト膜、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法、及び、電子デバイスを提供できる。その理由は定かではないが、以下のように推定される。
【0014】
先ず、酸分解性繰り返し単位を有する樹脂を含有するレジスト膜に対して、電子線又は極紫外線により露光を行うパターン形成方法においては、光(すなわち、電子線又は極紫外線)が、レジスト膜中に存在する、二次電子を発生可能な部位(典型的には、極性度又は酸性度が他の部位よりも高い部位)に照射される。次いで、上記部位から発生した二次電子が酸発生剤を分解して酸を発生させることにより、露光部において、酸と樹脂との反応が行われる。
【0015】
ここで、上記のレジスト膜を露光後、アルカリ現像液によりポジ型のパターンを形成する場合においては、二次電子を発生可能な部位(上記したように、典型的には、極性度や酸性度が高い部位)をレジスト膜中に高い含有率で存在させると、露光部における酸と樹脂との反応効率は高くても、元々のレジスト膜の極性度や酸性度が高くなるため、未露光部までもがアルカリ現像液に溶けやすくなり、パターンの解像性等に悪影響を及ぼす傾向となる。そのため、アルカリ現像液によるポジ型のパターンを形成する場合においては、レジスト組成物において、二次電子を発生可能な部位の含有率を抑制するような処方とする必要があるものと考えられる。
しかしながら、本発明者らは、電子線又は極紫外線により露光を行い、有機溶剤を含む現像液(以下、有機系現像液とも言う)によりネガ型のパターンを形成する系が、感度を向上させるために、レジスト膜中の二次電子を発生可能な部位の含有率を高くしても、未露光部の有機系現像液に対する溶解速度が充分に高く、良好な解像性が得られる系であることを見出した。これは、元々のレジスト膜は、樹脂を主成分としており、有機系現像液との親和性が高く、上記の二次電子を発生可能な部位の含有率の大小は、未露光部の有機系現像液に対する溶けやすさに大きな影響を与えないためと推測される。
【0016】
また、電子線又は極紫外線により露光を行うパターン形成方法は、極めて微細なパターン(例えば、50nm以下の線幅を有するパターン)を良好に形成できるものとして期待されている。
しかしながら、例えば、線幅が50nm以下であり、かつ、線幅とスペース幅との比が1:1のラインアンドスペースパターンを形成する場合においては、現像時に形成された微細なスペース空間内には、より強い毛管力(キャピラリーフォース)が発生しやすく、上記スペース空間から現像液が排出される際には、この毛管力が、微細な線幅を有するパターンの側壁に掛かる。そして、アルカリ現像液によりポジ型のパターンを形成する場合には、樹脂を主成分とするパターンとアルカリ現像液との親和性は低い傾向となるため、パターンの側壁に掛かる毛管力が大きく、パターンの倒れが発生しやすい。
一方、本発明のように、有機系現像液によりネガ型のパターンを形成する場合、樹脂を主成分とするパターンと有機系現像液との親和性は高い傾向となるため、パターンの側壁に掛かる毛管力が小さく、パターンの倒れが発生しにくい。これにより、本発明によれば、高解像度を達成できる(限界解像力に優れる)ものと考えられる。また、上記毛管力が小さいことが、ラインウィズスラフネス(LWR)性能の向上にも寄与したものと考えられる。
【0017】
更に、上記した本発明のパターン形成方法においては、上記化合物(B)(酸発生剤)の含有率が、組成物の全固形分を基準として21〜70質量となっており、これは、酸発生剤の濃度が非常に高いことを意味する。これにより、二次電子と酸発生剤との反応効率が高く、高い感度が得られるものと考えられる。酸発生剤の濃度が高いことにより、露光部には充分な酸が発生するため、酸と樹脂との反応のムラ等が抑制され、結果、LWR性能の向上に寄与したものと考えられる。
一方、組成物中の酸発生剤の濃度が高くなるということは、他の成分の濃度が低くなり得るため、他の性能に影響を与える可能性がある。例えば、酸の濃度が高くなった分、樹脂の濃度が低くなると、パターンの強度が低下するなどして、上記毛管力の影響が顕在化し、解像度の低下や、LWR性能の低下が起こり得る。
しかしながら、本発明は、前述のように、上記毛管力の影響が小さい、有機系現像液によりネガ型のパターンを形成する方法であるため、酸発生剤の濃度が高くなることによる上記不具合が起こりにくく、その結果、高感度、高解像性、高LWR性能を極めて高次元で同時に満足したものと考えられる。
【0018】
(1)製膜
本発明のレジスト膜は、上記した感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物により形成される膜である。
より具体的には、レジスト膜の形成は、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の後述する各成分を溶剤に溶解し、必要に応じてフィルター濾過した後、支持体(基板)に塗布して行うことができる。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上にスピンコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後乾燥し、感光性の膜を形成する。乾燥の段階では加熱(プリベーク)を行うことが好ましい。
膜厚には特に制限はないが、好ましくは10〜500nmの範囲に、より好ましくは10〜200nmの範囲に、更により好ましくは10〜80nmの範囲に調整する。スピナーにより感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を塗布する場合、その回転速度は、通常500〜3000rpm、好ましくは800〜2000rpm、より好ましくは1000〜1500rpmである。
加熱(プリベーク)の温度は60〜200℃で行うことが好ましく、80〜150℃で行うことがより好ましく、90〜140℃で行うことが更に好ましい。
加熱(プリベーク)の時間は、特に制限はないが、30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
必要により、市販の無機あるいは有機反射防止膜を使用することができる。更に感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の下層に反射防止膜を塗布して用いることもできる。反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0019】
(2)露光
露光は、極紫外線(EUV光)又は電子線(EB)により行う。極紫外線(EUV光)を露光源とする場合、形成した該膜に、所定のマスクを通してEUV光(13nm付近)を照射することが好ましい。電子ビーム(EB)の照射では、マスクを介さない描画(直描)が一般的である。露光は、極紫外線を使用することが好ましい。
【0020】
(3)ベーク
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことが好ましい。
加熱温度は60〜150℃で行うことが好ましく、80〜150℃で行うことがより好ましく、90〜140℃で行うことが更に好ましい。
加熱時間は特に限定されないが、30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。加熱温度及び加熱時間は上述の通りである。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。
【0021】
(4)現像
本発明においては、有機溶剤を含む現像液を用いて現像を行う。
・現像液
現像液の蒸気圧(混合溶媒である場合は全体としての蒸気圧)は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機溶剤の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
現像液に用いられる有機溶剤としては、種々の有機溶剤が広く使用されるが、たとえば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤等の溶剤を用いることができる。
【0022】
本発明において、エステル系溶剤とは分子内にエステル基を有する溶剤のことであり、ケトン系溶剤とは分子内にケトン基を有する溶剤のことであり、アルコール系溶剤とは分子内にアルコール性水酸基を有する溶剤のことであり、アミド系溶剤とは分子内にアミド基を有する溶剤のことであり、エーテル系溶剤とは分子内にエーテル結合を有する溶剤のことである。これらの中には、1分子内に上記官能基を複数種類有する溶剤も存在するが、その場合は、その溶剤の有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤いずれにも該当するものとする。また、炭化水素系溶剤とは置換基を有さない炭化水素溶剤のことである。
特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0023】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等を挙げることができる。
【0024】
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
【0025】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール、3−メトキシ−1−ブタノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1−メトキシ−2−プロパノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の水酸基を含有するグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。これらの中でもグリコールエーテル系溶剤を用いることが好ましい。
【0026】
エーテル系溶剤としては、例えば、上記水酸基を含有するグリコールエーテル系溶剤の他、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の水酸基を含有しないグリコールエーテル系溶剤、アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。好ましくは、グリコールエーテル系溶剤、又はアニソールなどの芳香族エーテル溶剤を用いる。
【0027】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
【0028】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、2−メチルプロピルベンゼン、ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0029】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。特に好ましくは、実質的に有機溶剤のみからなる場合である。なお、実質的に有機溶剤のみからなる場合とは、微量の界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを含有する場合を含むものとする。
【0030】
上記溶剤のうち、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びアニソールの群から選ばれる1種以上を含有することがより好ましい。
現像液として用いる有機溶剤としては、エステル系溶剤を好適に挙げることができる。
エステル系溶剤としては、後述する一般式(S1)で表される溶剤又は後述する一般式(S2)で表される溶剤を用いることがより好ましく、一般式(S1)で表される溶剤を用いることが更により好ましく、酢酸アルキルを用いることが特に好ましく、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルを用いることが最も好ましい。
【0031】
R−C(=O)−O−R’ 一般式(S1)
【0032】
一般式(S1)に於いて、
R及びR’は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。R及びR’は、互いに結合して環を形成してもよい。
R及びR’についてのアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基の炭素数は、1〜15の範囲であることが好ましく、シクロアルキル基の炭素数は、3〜15であることが好ましい。
R及びR’としては水素原子又はアルキル基が好ましく、R及びR’についてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、及びRとR’とが互いに結合して形成する環は、水酸基、カルボニル基を含む基(例えば、アシル基、アルデヒド基、アルコキシカルボニル等)、シアノ基などで置換されていても良い。
【0033】
一般式(S1)で表される溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等を挙げることができる。
【0034】
これらの中でも、R及びR’が無置換のアルキル基であることが好ましい。
一般式(S1)で表される溶剤としては、酢酸アルキルであることが好ましく、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルであることがより好ましい。
【0035】
一般式(S1)で表される溶剤は他の有機溶剤1種以上と併用して用いても良い。この場合の併用溶剤としては、一般式(S1)で表される溶剤に分離することなく混合できれば特に制限は無く、一般式(S1)で表される溶剤同士を併用して用いても良いし、一般式(S1)で表される溶剤を他のエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤から選択される溶剤に混合して用いても良い。併用溶剤は1種以上用いることができるが、安定した性能を得る上では、1種であることが好ましい。併用溶剤1種を混合して用いる場合の、一般式(S1)で表される溶剤と併用溶剤の混合比は、質量比で通常20:80〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは60:40〜95:5、最も好ましくは60:40〜90:10である。
【0036】
R’’−C(=O)−O−R’’’−O−R’’’’ 一般式(S2)
【0037】
一般式(S2)に於いて、
R’’及びR’’’’は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。R’’及びR’’’’は、互いに結合して環を形成してもよい。
R’’及びR’’’’は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。R’’及びR’’’’についてのアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基の炭素数は、1〜15の範囲であることが好ましく、シクロアルキル基の炭素数は、3〜15であることが好ましい。
R’’’は、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。R’’’は、アルキレン基であることが好ましい。R’’’についてのアルキレン基の炭素数は、1〜10の範囲であることが好ましい。R’’’についてのシクロアルキレン基の炭素数は、3〜10の範囲であることが好ましい。
R’’及びR’’’’についてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、R’’’についてのアルキレン基、シクロアルキレン基、及びR’’とR’’’’とが互いに結合して形成する環は、水酸基、カルボニル基を含む基(例えば、アシル基、アルデヒド基、アルコキシカルボニル等)、シアノ基などで置換されていても良い。
【0038】
一般式(S2)に於ける、R’’’についてのアルキレン基は、アルキレン鎖中にエーテル結合を有していてもよい。
【0039】
一般式(S2)で表される溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが好ましい。
これらの中でも、R’’及びR’’’’が無置換のアルキル基であり、R’’’が無置換のアルキレン基であることが好ましく、R’’及びR’’’’がメチル基及びエチル基のいずれかであることがより好ましく、R’’及びR’’’’がメチル基であることが更により好ましい。
【0040】
一般式(S2)で表される溶剤は他の有機溶剤1種以上と併用して用いても良い。この場合の併用溶剤としては、一般式(S2)で表される溶剤に分離することなく混合できれば特に制限は無く、一般式(S2)で表される溶剤同士を併用して用いても良いし、一般式(S2)で表される溶剤を他のエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤から選択される溶剤に混合して用いても良い。併用溶剤は1種以上用いることができるが、安定した性能を得る上では、1種であることが好ましい。併用溶剤1種を混合して用いる場合の、一般式(S2)で表される溶剤と併用溶剤の混合比は、質量比で通常20:80〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは60:40〜95:5、最も好ましくは60:40〜90:10である。
また、現像液として用いる有機溶剤としては、エーテル系溶剤も好適に挙げることができる。
用いることができるエーテル系溶剤としては、前述のエーテル系溶剤が挙げられ、このなかでも芳香環を一つ以上含むエーテル系溶剤が好まく、下記一般式(S3)で表される溶剤がより好ましく、最も好ましくはアニソールである。
【0041】
【化2】
【0042】
一般式(S3)に於いて、
は、アルキル基を表す。アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
本発明において、現像液の含水率は、通常10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、実質的に水分を含有しないことが最も好ましい。
【0043】
・界面活性剤
有機溶剤を含む現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量含有させることができる。
界面活性剤としては、後述する、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物に用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができる。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0044】
・現像方法
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは、20秒〜120秒である。
現像液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
【0045】
(5)リンス
本発明のパターン形成方法では、現像工程(4)の後に、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程(5)を含んでいてもよい。
【0046】
・リンス液
現像後に用いるリンス液の蒸気圧(混合溶媒である場合は全体としての蒸気圧)は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0047】
前記リンス液としては、種々の有機溶剤が用いられるが、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤又は水を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0048】
より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤又は炭化水素系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
特に好ましくは、一価のアルコール及び炭化水素系溶剤の群から選ばれる少なくとも1種以上を含有するリンス液を用いる。
【0049】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、4−メチル−2−ヘキサノール、4,5−ジメチル−2−ヘキサール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール、8−メチル−2−ノナール、9−メチル−2−デカノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノールであり、最も好ましくは、1−ヘキサノール又は4−メチル−2−ペンタノールである。
炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0050】
前記リンス液は、1−ヘキサノール、4−メチルー2−ペンタノール、デカンの群から選ばれる1種以上を含有することがより好ましい。
【0051】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。上記溶剤は水と混合しても良いが、リンス液中の含水率は通常60質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。含水率を60質量%以下にすることで、良好なリンス特性を得ることができる。
【0052】
リンス液には、界面活性剤を適当量含有させて使用することもできる。
界面活性剤としては、後述する、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物に用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができ、その使用量はリンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0053】
・リンス方法
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。
洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転吐出法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転吐出方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
リンス時間には特に制限はないが、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは10秒〜180秒であり、最も好ましくは20秒〜120秒である。
リンス液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
【0054】
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
更に、現像処理又はリンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する溶剤を除去するために加熱処理を行うことができる。加熱温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。加熱温度は50℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上110℃以下が最も好ましい。加熱時間に関しては良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されないが、通常15秒〜300秒であり、好ましくは、15〜180秒である。
【0055】
・アルカリ現像
本発明のパターン形成方法は、更に、アルカリ水溶液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程(アルカリ現像工程)を含むことができる。これにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明において、有機溶剤現像工程(4)によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975[0077]と同様のメカニズム)。
アルカリ現像は、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)の前後どちらでも行うことが出来るが、有機溶剤現像工程(4)の前に行うことがより好ましい。
【0056】
アルカリ現像に使用しうるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が望ましい。
アルカリ現像時間は特に制限はなく、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは、20秒〜120秒である。
アルカリ現像液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
【0057】
アルカリ水溶液による現像の後、リンス処理を行うことができる。リンス処理におけるリンス液としては、純水が好ましく、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
更に、現像処理又はリンス処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行うこともできる。
また、加熱により、残存している現像液又はリンス液を除去する処理を行うことができる。加熱温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。加熱温度は50℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上110℃以下が最も好ましい。加熱時間に関しては良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されないが、通常15秒〜300秒であり、好ましくは、15〜180秒である。
【0058】
本発明に係るレジスト組成物から形成された膜について、活性光線又は放射線の照射時に、膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。
【0059】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0060】
水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D2O)を用いてもよい。
【0061】
本発明の組成物による膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、組成物膜上層部への塗布適正、液浸液難溶性である。トップコートは、組成物膜と混合せず、さらに組成物膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0062】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、有機溶媒を含んだ現像液で剥離できることが好ましい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。液浸液として水を用いる場合には、トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
トップコートは、膜と混合せず、さらに液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。さらに、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0063】
〔1〕感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物
以下、本発明で使用し得る感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物について説明する。
本発明に係る感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、ネガ型の現像(露光されると現像液に対して溶解性が減少し、露光部がパターンとして残り、未露光部が除去される現像)に用いられる。即ち、本発明に係る感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、有機溶剤を含む現像液を用いた現像に用いられる有機溶剤現像用の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物とすることができる。ここで、有機溶剤現像用とは、少なくとも、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程に供される用途を意味する。
このように、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法に供される感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物にも関する。
本発明の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、典型的にはレジスト組成物であり、ネガ型のレジスト組成物(即ち、有機溶剤現像用のレジスト組成物)であることが、特に高い効果を得ることができることから好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
【0064】
本発明で使用する組成物は、酸分解性繰り返し単位を有し、酸の作用により有機溶剤に対する溶解度が減少する樹脂(A)と、電子線又は極紫外線照射により酸を発生する化合物(B)と、溶剤(C)を含有する。以下、樹脂(A)について説明する。
【0065】
[1](A)樹脂(a)酸分解性基を有する繰り返し単位
樹脂(A)は、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂であり、酸分解性繰り返し単位を有している。酸分解性繰り返し単位とは、例えば、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解する基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する繰り返し単位である。分解して生じる基は極性基であることが、有機溶剤を含む現像液との親和性が低くなり、不溶化又は難溶化(ネガ化)を進行するため好ましい。また、極性基は酸性基であることがより好ましい。極性基の定義は後述する繰り返し単位(b)の項で説明する定義と同義であるが、酸分解性基が分解して生じる極性基の例としては、アルコール性水酸基、アミノ基、酸性基などが挙げられる。
【0066】
酸分解性基が分解して生じる極性基は、酸性基であることが好ましい。
酸性基としては、有機溶剤を含む現像液中で不溶化する基であれば特に限定されないが、好ましくは、フェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基であり、より好ましくは、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、フェノール性ヒドロキシル基、スルホン酸基等の酸性基(従来レジストの現像液として用いられている、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)が挙げられる。
【0067】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
繰り返し単位(a)としては、下記一般式(V)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0068】
【化3】
【0069】
一般式(V)中、
51、R52、及びR53は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。R52はLと結合して環を形成していてもよく、その場合のR52はアルキレン基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表し、R52と環を形成する場合には3価の連結基を表す。
54はアルキル基を表し、R55及びR56は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、又はアラルキル基を表す。R55及びR56は互いに結合して環を形成してもよい。但し、R55とR56とが同時に水素原子であることはない。
【0070】
一般式(V)について、更に詳細に説明する。
一般式(V)におけるR51〜R53のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していても良いメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R51〜R53におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。好ましくは置換基を有していても良いシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個で単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
【0071】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0072】
またR52がアルキレン基でありLと環を形成する場合、アルキレン基としては、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基が特に好ましい。R52とLとが結合して形成する環は、5又は6員環であることが特に好ましい。
【0073】
式(V)におけるR51及びR53としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)が特に好ましい。R52としては、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルキレン基(Lと環を形成)がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)、メチレン基(Lと環を形成)、エチレン基(Lと環を形成)が特に好ましい。
【0074】
で表される2価の連結基としては、アルキレン基、2価の芳香環基、−COO−L−、−O−L−、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基等が挙げられる。ここで、Lはアルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、アルキレン基と2価の芳香環基を組み合わせた基を表す。
は、単結合、−COO−L−で表される基又は2価の芳香環基が好ましい。Lは炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、メチレン、プロピレン基がより好ましい。2価の芳香環基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
がR52と結合して環を形成する場合における、Lで表される3価の連結基としては、Lで表される2価の連結基の上記した具体例から1個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
54〜R56のアルキル基としては炭素数1〜20のものが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のものであり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが特に好ましい。
55及びR56で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。
【0075】
また、R55及びR56が互いに結合して形成される環としては、炭素数3〜20のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環性のものであってもよいし、ノルボニル基、アダマンチル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、等の多環性のものであってもよい。R55及びR56が互いに結合して環を形成する場合、R54は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
55及びR56で表される1価の芳香環基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、単環でも多環でもよく、置換基を有しても良い。例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4―メトキシフェニル基等が挙げられる。R55及びR56のどちらか一方が水素原子の場合、他方は1価の芳香環基であることが好ましい。
55及びR56で表されるアラルキル基としては、単環でも多環でもよく、置換基を有しても良い。好ましくは炭素数7〜21であり、ベンジル基、1−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0076】
一般式(V)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの合成方法としては、一般的な重合性基含有エステルの合成法を適用することが可能であり、特に限定されることはない。
以下に、一般式(V)で表される繰り返し単位(a)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
具体例中、Rx、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は、炭素数7〜19のアラルキル基を表す。Zは、置換基を表す。pは0又は正の整数を表し、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。Zが複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。Zとしては、酸分解前後での有機溶剤を含有する現像液に対する溶解コントラストを増大させる観点から、水素原子及び炭素原子のみからなる基が好適に挙げられ、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基であることが好ましい。
【0077】
【化4】
【0078】
【化5】
【0079】
【化6】
【0080】
【化7】
【0081】
【化8】
【0082】
【化9】
【0083】
また、樹脂(A)は、繰り返し単位(a)として、下記一般式(VI)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0084】
【化10】
【0085】
一般式(VI)中、
61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0086】
一般式(VI)について更に詳細に説明する。
一般式(VI)におけるR61〜R63のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R61〜R63におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
シクロアルキル基としては、単環型でも多環型でもよく、好ましくは置換基を有していても良いシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜8個の単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子がより好ましい。
【0087】
62がアルキレン基を表す場合、アルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
により表わされる−CONR64−(R64は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、R61〜R63のアルキル基と同様のものが挙げられる。
としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
におけるアルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。R62とLとが結合して形成する環は、5又は6員環であることが特に好ましい。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していても良く、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0088】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n−1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していても良い。
【0089】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、上述した一般式(V)におけるR51〜R53により表わされる各基が有し得る置換基と同様の具体例が挙げられる。
nは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、n個中の少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
酸の作用により脱離する基Yとしては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−CH(R36)(Ar)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基を組み合わせた基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、アルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基、又はアルケニル基を表す。
【0090】
Arは、1価の芳香環基を表す。
36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0091】
36〜R39、R01、R02及びArの1価の芳香環基は、炭素数6〜10の1価の芳香環基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
【0092】
36とR37とが、互いに結合して形成する環は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等を挙げることができる。尚、シクロアルキル構造中の炭素原子の一部が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36〜R39、R01、R02、及びArとしての上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
酸の作用により脱離する基Yとしては、下記一般式(VI−A)で表される構造がより好ましい。
【0093】
【化11】
【0094】
ここで、L及びLは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香環基、又はアルキレン基と1価の芳香環基とを組み合わせた基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい1価の芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
Q、M、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員もしくは6員環)を形成してもよい。
及びLとしてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
及びLとしてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15個のシクロアルキル基であって、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等を好ましい例として挙げることができる。
【0095】
及びLとしての1価の芳香環基は、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を好ましい例として挙げることができる。
及びLとしてのアルキレン基と1価の芳香環基を組み合わせた基は、例えば、炭素数6〜20であって、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基が挙げられる。
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基など)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基など)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)、2価の芳香環基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)、−S−、−O−、−CO−、−SO−、−N(R)−、およびこれらの複数を組み合わせた2価の連結基である。Rは、水素原子またはアルキル基(例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基など)である。
【0096】
Qとしてのアルキル基は、上述のL及びLとしての各基と同様である。
Qとしてのヘテロ原子を含んでいてもよいシクロアルキル基及びヘテロ原子を含んでいてもよい1価の芳香環基に於ける、ヘテロ原子を含まない肪族炭化水素環基及びへテロ原子を含まない1価の芳香環基としては、上述のL及びLとしてのシクロアルキル基、及び1価の芳香環基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3〜15である。
ヘテロ原子を含むシクロアルキル基及びヘテロ原子を含む1価の芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール、ピロリドン等のヘテロ環構造を有する基が挙げられるが、一般にヘテロ環と呼ばれる構造(炭素とヘテロ原子で形成される環、あるいはヘテロ原子にて形成される環)であれば、これらに限定されない。
【0097】
Q、M、Lの少なくとも2つが結合して形成してもよい環としては、Q、M、Lの少なくとも2つが結合して、例えば、プロピレン基、ブチレン基を形成して、酸素原子を含有する5員または6員環を形成する場合が挙げられる。
一般式(VI−A)におけるL、L、M、Qで表される各基は、置換基を有していてもよく、例えば、前述のR36〜R39、R01、R02、及びArが有してもよい置換基として説明したものが挙げられ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
−M−Qで表される基として、炭素数1〜30個で構成される基が好ましく、炭素数5〜20個で構成される基がより好ましい。
【0098】
以下に繰り返し単位(a)の好ましい具体例として、一般式(VI)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
【化12】
【0100】
【化13】
【0101】
【化14】
【0102】
【化15】
【0103】
【化16】
【0104】
【化17】
【0105】
一般式(VI)で表される繰り返し単位は、酸分解性基が分解することによりフェノール性の水酸基を生成する繰り返し単位であるが、この場合、露光部における樹脂の有機溶剤による溶解性が十分低くなりにくい傾向があり、解像度の点ではあまり加えない方が好ましい場合がある。この傾向は、ヒドロキシスチレン類に由来する繰り返し単位(すなわち、一般式(VI)において、XとLとがいずれも単結合である場合)により強く表れ、その原因は定かではないが、例えば主鎖の近傍にフェノール性水酸基が存在するためと推測される。そこで、本発明においては、酸分解性基が分解することによりフェノール性水酸基を生じる繰り返し単位(例えば、上記一般式(VI)で表される繰り返し単位であり、好ましくは、一般式(VI)で表される繰り返し単位であって、XとLとがいずれも単結合であるもの)の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、4モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0モル%である(すなわち、含有されない)ことが最も好ましい。
【0106】
また、樹脂(A)は、繰り返し単位(a)として、下記一般式(BZ)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0107】
【化18】
【0108】
一般式(BZ)中、ARは、アリール基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとARとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキルオキシカルボニル基を表す。
【0109】
ARのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又は、フルオレン基等の炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜15のものがより好ましい。
ARがナフチル基、アントリル基又はフルオレン基である場合、Rnが結合している炭素原子とARとの結合位置には、特に制限はない。例えば、ARがナフチル基である場合、この炭素原子は、ナフチル基のα位に結合していてもよく、β位に結合していてもよい。或いは、ARがアントリル基である場合、この炭素原子は、アントリル基の1位に結合していてもよく、2位に結合していてもよく、9位に結合していてもよい。
ARとしてのアリール基は、それぞれ、1以上の置換基を有していてもよい。このような置換基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及びドデシル基等の炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、これらアルキル基部分を含んだアルコキシ基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、これらシクロアルキル基部分を含んだシクロアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、チオフェンカルボニルオキシ基、チオフェンメチルカルボニルオキシ基、及びピロリドン残基等のヘテロ環残基が挙げられる。この置換基としては、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、これらアルキル基部分を含んだアルコキシ基が好ましく、パラメチル基又はパラメトキシ基がより好ましい。
【0110】
ARとしてのアリール基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基のうちの少なくとも2つが互いに結合して環を形成しても良い。環は、5〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。また、この環は、環員に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。
更に、この環は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、Rnが有していてもよい更なる置換基について後述するものと同様のものが挙げられる。
また、一般式(BZ)により表される繰り返し単位(a)は、ラフネス性能の観点から、2個以上の芳香環を含有ことが好ましい。この繰り返し単位が有する芳香環の個数は、通常、5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましい。
また、一般式(BZ)により表される繰り返し単位(a)において、ラフネス性能の観点から、ARは2個以上の芳香環を含有することがより好ましく、ARがナフチル基又はビフェニル基であることが更に好ましい。ARが有する芳香環の個数は、通常、5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましい。
【0111】
Rnは、上述したように、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Rnのアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。このアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基及びドデシル基等の炭素数が1〜20のものが挙げられる。Rnのアルキル基は、炭素数1〜5のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましい。
Rnのシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数が3〜15のものが挙げられる。
Rnのアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基及びアントリル基等の炭素数が6〜14のものが好ましい。
【0112】
Rnとしてのアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の各々は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、チオフェンカルボニルオキシ基、チオフェンメチルカルボニルオキシ基、及びピロリドン残基等のヘテロ環残基が挙げられる。中でも、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基及びスルホニルアミノ基が特に好ましい。
は、上述したように、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキルオキシカルボニル基を表す。
のアルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、先にRnについて説明したのと同様のものが挙げられる。これらアルキル基及びシクロアルキル基の各々は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、先にRnについて説明したのと同様のものが挙げられる。
【0113】
が置換基を有するアルキル基又はシクロアルキル基である場合、特に好ましいRとしては、例えば、トリフルオロメチル基、アルキルオキシカルボニルメチル基、アルキルカルボニルオキシメチル基、ヒドロキシメチル基、及びアルコキシメチル基が挙げられる。
のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。中でも、フッ素原子が特に好ましい。
のアルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基部分としては、例えば、先にRのアルキル基として挙げた構成を採用することができる。
RnとARとが互いに結合して非芳香族環を形成することが好ましく、これにより、特に、ラフネス性能をより向上させることができる。
【0114】
RnとARとは互いに結合して形成しても良い非芳香族環としては、5〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
非芳香族環は、脂肪族環であっても、環員として酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。
非芳香族環は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Rnが有していてもよい更なる置換基について先に説明したのと同様のものが挙げられる。
【0115】
以下に、一般式(BZ)により表される繰り返し単位(a)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0116】
【化19】
【0117】
【化20】
【0118】
【化21】
【0119】
【化22】
【0120】
【化23】
【0121】
【化24】
【0122】
【化25】
【0123】
【化26】
【0124】
【化27】
【0125】
また、上記で例示された繰り返し単位とは異なる酸分解性基を有する繰り返し単位の態様として、アルコール性水酸基を生じる繰り返し単位の態様であってもよい。この場合、下記一般式(I−1)乃至(I−10)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることが好ましい。この繰り返し単位は、下記一般式(I−1)乃至(I−3)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることがより好ましく、下記一般式(I−1)により表されることが更に好ましい。
【0126】
【化28】
【0127】
式中、
Raは、各々独立に、水素原子、アルキル基又は−CH−O−Raにより表される基を表す。ここで、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
は、(n+1)価の有機基を表す。
は、m≧2の場合は各々独立に、単結合又は(n+1)価の有機基を表す。
OPは、各々独立に、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる前記基を表す。n≧2及び/又はm≧2の場合、2以上のOPが互いに結合して、環を形成していてもよい。
Wは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
n及びmは、1以上の整数を表す。なお、一般式(I−2)、(I−3)又は(I−8)においてRが単結合を表す場合、nは1である。
lは、0以上の整数を表す。
は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−O−、−Ar−、−SO−又は−SONH−により表される連結基を表す。ここで、Arは、2価の芳香環基を表す。
Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
は、水素原子又は有機基を表す。
は、(m+2)価の連結基を表す。
は、m≧2の場合は各々独立に、(n+1)価の連結基を表す。
は、p≧2の場合は各々独立に、置換基を表す。p≧2の場合、複数のRは、互いに結合して環を形成していてもよい。
pは、0〜3の整数を表す。
【0128】
Raは、水素原子、アルキル基又は−CH−O−Raにより表される基を表す。Raは、水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
Wは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Wは、メチレン基又は酸素原子であることが好ましい。
は、(n+1)価の有機基を表す。Rは、好ましくは、非芳香族性の炭化水素基である。この場合、Rは、鎖状炭化水素基であってもよく、脂環状炭化水素基であってもよい。Rは、より好ましくは、脂環状炭化水素基である。
は、単結合又は(n+1)価の有機基を表す。Rは、好ましくは、単結合又は非芳香族性の炭化水素基である。この場合、Rは、鎖状炭化水素基であってもよく、脂環状炭化水素基であってもよい。
及び/又はRが鎖状炭化水素基である場合、この鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、この鎖状炭化水素基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。例えば、R及び/又はRがアルキレン基である場合、R及び/又はRは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基又はsec−ブチレン基であることが好ましい。
及び/又はRが脂環状炭化水素基である場合、この脂環状炭化水素基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。この脂環状炭化水素基は、例えば、モノシクロ、ビシクロ、トリシクロ又はテトラシクロ構造を備えている。この脂環状炭化水素基の炭素数は、通常は5以上であり、6〜30であることが好ましく、7〜25であることがより好ましい。
【0129】
この脂環状炭化水素基としては、例えば、以下に列挙する部分構造を備えたものが挙げられる。これら部分構造の各々は、置換基を有していてもよい。また、これら部分構造の各々において、メチレン基(−CH−)は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基〔−C(=O)−〕、スルホニル基〔−S(=O)−〕、スルフィニル基〔−S(=O)−〕、又はイミノ基〔−N(R)−〕(Rは水素原子若しくはアルキル基)によって置換されていてもよい。
【0130】
【化29】
【0131】
例えば、R及び/又はRがシクロアルキレン基である場合、R及び/又はRは、アダマンチレン基、ノルアダマンチレン基、デカヒドロナフチレン基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、ノルボルニレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基、又はシクロドデカニレン基であることが好ましく、アダマンチレン基、ノルボルニレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、テトラシクロドデカニレン基又はトリシクロデカニレン基であることがより好ましい。
及び/又はRの非芳香族性の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、カルボキシ基、及び炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、及びアルコキシ基が挙げられる。
は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−O−、−Ar−、−SO−又は−SONH−により表される連結基を表す。ここで、Arは、2価の芳香環基を表す。Lは、好ましくは−COO−、−CONH−又は−Ar−により表される連結基であり、より好ましくは−COO−又は−CONH−により表される連結基である。
Rは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0132】
は、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキニル基、及びアルケニル基が挙げられる。Rは、好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは、水素原子又はメチル基である。
は、(m+2)価の連結基を表す。即ち、Lは、3価以上の連結基を表す。このような連結基としては、例えば、後掲の具体例における対応した基が挙げられる。
は、(n+1)価の連結基を表す。即ち、Rは、2価以上の連結基を表す。このような連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基及び後掲の具体例における対応した基が挙げられる。Rは、互いに結合して又は下記Rと結合して、環構造を形成していてもよい。
は、置換基を表す。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
nは、1以上の整数である。nは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。また、nを2以上とすると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることが可能となる。従って、こうすると、限界解像力及びラフネス特性を更に向上させることができる。
mは、1以上の整数である。mは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
lは、0以上の整数である。lは、0又は1であることが好ましい。
pは、0〜3の整数である。
以下に、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位の具体例を示す。なお、具体例中、Ra及びOPは、一般式(I−1)乃至(I−3)における各々と同義である。また、複数のOPが互いに結合して環を形成している場合、対応する環構造は、便宜上「O−P−O」と表記している。
【0133】
【化30】
【0134】
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基は、下記一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることが好ましい。
【0135】
【化31】
【0136】
式中、
は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
は、各々独立に、1価の有機基を表す。Rは、互いに結合して、環を形成していてもよい。RとRとは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。少なくとも2つのRは、互いに結合して、環を形成していてもよい。但し、3つの前記Rのうち1つ又は2つが水素原子である場合は、残りの前記Rのうち少なくとも1つは、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基は、下記一般式(II−5)〜(II−9)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることも好ましい。
【0137】
【化32】
【0138】
式中、
は、一般式(II−1)〜(II−3)におけるものと同義である。
は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基は、一般式(II−1)乃至(II−3)から選択される少なくとも1つにより表されることがより好ましく、一般式(II−1)又は(II−3)により表されることが更に好ましく、一般式(II−1)により表されることが特に好ましい。
【0139】
は、上述した通り、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。Rのアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。Rのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、及びn−ブチル基が挙げられる。
のシクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。Rのシクロアルキル基の炭素数は、3〜10であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。Rのシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、及びアダマンチル基が挙げられる。
【0140】
また、一般式(II−1)において、Rの少なくとも一方は、1価の有機基であることが好ましい。このような構成を採用すると、特に高い感度を達成することができる。
は、1価の有機基を表す。Rは、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。これらアルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
のアルキル基は、置換基を有していないか、又は、1つ以上のアリール基及び/又は1つ以上のシリル基を置換基として有していることが好ましい。無置換アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。1つ以上のアリール基により置換されたアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、1〜25であることが好ましい。1つ以上のシリル基により置換されたアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、1〜30であることが好ましい。また、Rのシクロアルキル基が置換基を有していない場合、その炭素数は、3〜20であることが好ましい。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。但し、3つのRのうち1つ又は2つが水素原子である場合は、残りのRのうち少なくとも1つは、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。Rは、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。アルキル基が置換基を有していない場合、その炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることが好ましい。
は、上述した通り、水素原子又は1価の有機基を表す。Rは、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は置換基を有していないアルキル基であることが更に好ましい。Rは、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜10であり且つ置換基を有していないアルキル基であることが更に好ましい。
なお、R、R及びRのアルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、先にRについて説明したのと同様のものが挙げられる。
以下に、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基の具体例を示す。
【0141】
【化33】
【0142】
【化34】
【0143】
【化35】
【0144】
以下に酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位の具体例を示す。下記具体例中、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。
【0145】
【化36】
【0146】
【化37】
【0147】
上記酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0148】
樹脂(A)における酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、前記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、5モル%以上75モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上65モル%以下であることが更に好ましい。
【0149】
(b)極性基を有する繰り返し単位
樹脂(A)は極性基を有する繰り返し単位(b)を含むことが好ましい。繰り返し単位(b)を含むことにより、例えば、樹脂を含んだ組成物の感度を向上させることができる。繰り返し単位(b)は、非酸分解性の繰り返し単位であること(すなわち、酸分解性基を有さないこと)が好ましい。
繰り返し単位(b)が含み得る「極性基」としては、例えば、以下の(1)〜(4)が挙げられる。なお、以下において、「電気陰性度」とは、Paulingによる値を意味している。
【0150】
(1)酸素原子と、酸素原子との電気陰性度の差が1.1以上である原子とが、単結合により結合した構造を含む官能基
このような極性基としては、例えば、ヒドロキシ基などのO−Hにより表される構造を含んだ基が挙げられる。
(2)窒素原子と、窒素原子との電気陰性度の差が0.6以上である原子とが、単結合により結合した構造を含む官能基
このような極性基としては、例えば、アミノ基などのN−Hにより表される構造を含んだ基が挙げられる。
(3)電気陰性度が0.5以上異なる2つの原子が二重結合又は三重結合により結合した構造を含む官能基
このような極性基としては、例えば、C≡N、C=O、N=O、S=O又はC=Nにより表される構造を含んだ基が挙げられる。
(4)イオン性部位を有する官能基
このような極性基としては、例えば、N又はSにより表される部位を有する基が挙げられる。
以下に、「極性基」が含み得る部分構造の具体例を挙げる。
【0151】
【化38】
【0152】
繰り返し単位(b)が含み得る「極性基」は、例えば、(I)ヒドロキシ基、(II)シアノ基、(III)ラクトン基、(IV)カルボン酸基又はスルホン酸基、(V)アミド基、スルホンアミド基又はこれらの誘導体に対応した基、(VI)アンモニウム基又はスルホニウム基、及び、これらの2以上を組み合わせてなる基からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0153】
この極性基は、ヒドロキシル基、シアノ基、ラクトン基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、アンモニウム基、スルホニウム基及びこれらの2つ以上を組み合わせてなる基より選択されることが好ましく、アルコール性ヒドロキシ基、シアノ基、ラクトン基、又は、シアノラクトン構造を含んだ基であることが特に好ましい。
樹脂にアルコール性ヒドロキシ基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、樹脂を含んだ組成物の露光ラチチュード(EL)を更に向上させることができる。
樹脂にシアノ基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、樹脂を含んだ組成物の感度を更に向上させることができる。
樹脂にラクトン基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることができる。また、こうすると、樹脂を含んだ組成物のドライエッチング耐性、塗布性、及び基板との密着性を更に向上させることも可能となる。
樹脂にシアノ基を有するラクトン構造を含んだ基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることができる。また、こうすると、樹脂を含んだ組成物の感度、ドライエッチング耐性、塗布性、及び基板との密着性を更に向上させることも可能となる。加えて、こうすると、シアノ基及びラクトン基のそれぞれに起因した機能を単一の繰り返し単位に担わせることが可能となり、樹脂の設計の自由度を更に増大させることも可能となる。
【0154】
繰り返し単位(b)が有する極性基がアルコール性ヒドロキシ基である場合、下記一般式(I−1H)乃至(I−10H)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることが好ましい。特には、下記一般式(I−1H)乃至(I−3H)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることがより好ましく、下記一般式(I−1H)により表されることが更に好ましい。
【0155】
【化39】
【0156】
式中、Ra、R、R、W、n、m、l、L、R、R、L、R、R及びpは、一般式(I−1)乃至(I−10)における各々と同義である。
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位と、上記一般式(I−1H)乃至(I−10H)からなる群より選択される少なくとも1つにより表される繰り返し単位とを併用すると、例えば、アルコール性ヒドロキシ基による酸拡散の抑制と、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基による感度の増大とにより、他の性能を劣化させることなしに、露光ラチチュード(EL)を改良することが可能となる。
アルコール性ヒドロキシ基を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜60mol%が好ましく、より好ましくは3〜50mol%、更に好ましくは5〜40mol%である。
以下に、一般式(I−1H)乃至(I−10H)の何れかにより表される繰り返し単位の具体例を示す。なお、具体例中、Raは、一般式(I−1H)乃至(I−10H)におけるものと同義である。
【0157】
【化40】
【0158】
繰り返し単位(b)が有する極性基がアルコール性ヒドロキシ基またはシアノ基である場合、好ましい繰り返し単位の一つの態様として、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが挙げられる。このとき、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基またはシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造が好ましい。これにより基板密着性、及び現像液親和性が向上する。
【0159】
【化41】
【0160】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
c〜Rcは、各々独立に、水素原子又は水酸基又はシアノ基を表す。ただし、Rc〜Rcの内の少なくとも1つは、水酸基を表す。好ましくは、Rc〜Rcの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、Rc〜Rcの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0161】
一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIIc)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0162】
【化42】
【0163】
一般式(AIIa)〜(AIIc)に於いて、
cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0164】
c〜Rcは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、Rc〜Rcと同義である。
【0165】
樹脂(A)は水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含有していても含有していなくてもよいが、含有する場合、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜60モル%が好ましく、より好ましくは3〜50モル%、更に好ましくは5〜40モル%である。
【0166】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0167】
【化43】
【0168】
繰り返し単位(b)は、極性基としてラクトン構造を有する繰り返し単位であってもよい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0169】
【化44】
【0170】
一般式(AII)中、
Rbは、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rbとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基であり、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0171】
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキル構造を有する2価の連結基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。Abは、好ましくは、単結合、−Ab−CO−で表される2価の連結基である。
Abは、直鎖又は分岐アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、ラクトン構造を有する基を表す。
【0172】
ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−8)、(LC1−13)、(LC1−14)である。
【0173】
【化45】
【0174】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7の1価のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0175】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0176】
樹脂(A)はラクトン構造を有する繰り返し単位を含有しても含有しなくてもよいが、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)中の前記繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、1〜70モル%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜65モル%の範囲であり、更に好ましくは5〜60モル%の範囲である。
以下に、樹脂(A)中のラクトン構造を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、Rxは、H,CH,CHOH,又はCFを表す。
【0177】
【化46】
【0178】
【化47】
【0179】
また、繰り返し単位(b)が有しうる極性基が酸性基であることも特に好ましい態様の一つである。好ましい酸性基としてはフェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基が挙げられる。なかでも繰り返し単位(b)はカルボキシル基を有する繰り返し単位であることがより好ましい。酸性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。酸性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接酸性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖に酸性基が結合している繰り返し単位、更には酸性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入のいずれも好ましい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0180】
繰り返し単位(b)が有しうる酸性基は、芳香環を含んでいてもいなくてもよいが、芳香環を有する場合はフェノール性水酸基以外の酸性基から選ばれることが好ましい。繰り返し単位(b)が酸性基を有する場合、酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。樹脂(A)が酸性基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)における酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
酸性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH、CHOH又はCFを表す。
【0181】
【化48】
【0182】
本発明の樹脂(A)は、フェノール性水酸基を有する、非酸分解の繰り返し単位(b)を有することができる。この場合の繰り返し単位(b)としては、下記一般式(I)で表される構造がより好ましい。
【0183】
【化49】
【0184】
式中、
41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、−COO−、又は−CONR64−を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1〜4の整数を表す。
【0185】
式(I)におけるR41、R42、R43のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、及びこれらの基が有し得る置換基の具体例としては、上記一般式(V)におけるR51、R52、及びR53により表される各基について説明した具体例と同様である。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0186】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n−1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していても良い。
【0187】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基及び(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、一般式(V)におけるR51〜R53で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
により表わされる−CONR64−(R64は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、R61〜R63のアルキル基と同様のものが挙げられる。
としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
【0188】
におけるアルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
Arとしては、置換基を有していても良い炭素数6〜18の芳香環基がより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、ビフェニレン環基が特に好ましい。
繰り返し単位(b)は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Arは、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0189】
以下に、一般式(I)で表される繰り返し単位(b)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0190】
【化50】
【0191】
【化51】
【0192】
樹脂(A)は、一般式(I)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよい。
【0193】
一般式(I)で表される繰り返し単位(b)のように、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位は、樹脂(A)の有機溶剤による溶解性を高くする傾向があり、解像度の点ではあまり加えない方が好ましい場合がある。この傾向は、ヒドロキシスチレン類に由来する繰り返し単位(すなわち、上記一般式(I)において、XとLとがいずれも単結合である場合)により強く表れ、その原因は定かではないが、例えば主鎖の近傍にフェノール性水酸基が存在するためと推測される。そこで、本発明においては、一般式(I)で表される繰り返し単位(好ましくは、一般式(I)で表される繰り返し単位であって、XとLとがいずれも単結合であるもの)の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して4モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることが好ましく、0モル%である(すなわち、含有されない)ことが最も好ましい。
【0194】
(c)複数の芳香環を有する繰り返し単位
樹脂(A)は下記一般式(c1)で表される複数の芳香環を有する繰り返し単位(c)を有していても良い。
【0195】
【化52】
【0196】
一般式(c1)中、
は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表し;
Yは、単結合又は2価の連結基を表し;
Zは、単結合又は2価の連結基を表し;
Arは、芳香環基を表し;
pは1以上の整数を表す。
としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、i−ブチル基があげられ、さらに置換基を有していても良く、好ましい置換基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基等があげられ、中でも置換基を有するアルキル基としては、CF基、アルキルオキシカルボニルメチル基、アルキルカルボニルオキシメチル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基等が好ましい。
【0197】
としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
Yは、単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては、例えば、エーテル基(酸素原子)、チオエーテル基(硫黄原子)、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルフィド基、スルホン基、−COO−、−CONH−、−SONH−、−CF−、−CFCF−、−OCFO−、−CFOCF−、−SS−、−CHSOCH−、−CHCOCH−、−COCFCO−、−COCO−、−OCOO−、−OSOO−、アミノ基(窒素原子)、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、若しくはこれらの組み合わせからなる基があげられる。Yは、炭素数15以下が好ましく、炭素数10以下がより好ましい。
【0198】
Yは、好ましくは単結合、−COO−基、−COS−基、−CONH−基、より好ましくは−COO−基、−CONH−基であり、特に好ましくは−COO−基である。
Zは、単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては、例えば、エーテル基(酸素原子)、チオエーテル基(硫黄原子)、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルフィド基、スルホン基、−COO−、−CONH−、−SONH−、アミノ基(窒素原子)、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、若しくはこれらの組み合わせからなる基があげられる。
Zは、好ましくは単結合、エーテル基、カルボニル基、−COO−であり、さらに好ましくは単結合、エーテル基であり、特に好ましくは単結合である。
【0199】
Arは、芳香環基を表し、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、フラニル基、チオフェニル基、フルオレニル−9−オン−イル基、アントラキノニル基、フェナントラキノニル基、ピロール基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。これらの芳香環基はさらに置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、フェニル基等のアリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、ヘテロ環残基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基が、アウトオブバンド光に起因した露光ラチチュードやパターン形状の悪化を抑制する観点から好ましい。
pは、1以上の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。
【0200】
繰り返し単位(c)としてさらに好ましいのは以下の式(c2)で表される繰り返し単位である。
【0201】
【化53】
【0202】
一般式(c2)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。Rとしてのアルキル基として好ましいものは、一般式(c1)と同様である。
【0203】
ここで、極紫外線(EUV光)露光に関しては、波長100〜400nmの紫外線領域に発生する漏れ光(アウトオブバンド光)が表面ラフネスを悪化させ、結果、パターン間におけるブリッジや、パターンの断線によって、解像性及びLWR性能が低下する傾向となる。
しかしながら、繰り返し単位(c)における芳香環は、上記アウトオブバンド光を吸収可能な内部フィルターとして機能する。よって、高解像及び低LWRの観点から、樹脂(A)は、繰り返し単位(c)を含有することが好ましい。
ここで、繰り返し単位(c)は、高解像性を得る観点から、フェノール性水酸基(芳香環上に直接結合した水酸基)を有さないことが好ましい。
【0204】
繰り返し単位(c)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0205】
【化54】
【0206】
【化55】
【0207】
【化56】
【0208】
樹脂(A)は、繰り返し単位(c)を含有してもしなくても良いが、含有する場合、繰り返し単位(c)の含有率は、樹脂(A)全繰り返し単位に対して、1〜30モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20モル%の範囲であり、更に好ましくは1〜15モル%の範囲である。樹脂(A)に含まれる繰り返し単位(c)は2種類以上を組み合わせて含んでもよい。
【0209】
本発明における樹脂(A)は、前記繰り返し単位(a)〜(c)以外の繰り返し単位を適宜有していてもよい。そのような繰り返し単位の一例として、更に極性基(例えば、前記酸基、水酸基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。これにより、有機溶剤を含む現像液を用いた現像の際に樹脂の溶解性を適切に調整することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0210】
【化57】
【0211】
一般式(IV)中、Rは少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0212】
が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3〜7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0213】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0214】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0215】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基を挙げることができる。
【0216】
上記水素原子の置換基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0217】
樹脂(A)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜20モル%が好ましく、より好ましくは5〜15モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0218】
【化58】
【0219】
また、樹脂(A)は、Tgの向上やドライエッジング耐性の向上、先述のアウトオブバンド光の内部フィルター等の効果を鑑み、下記のモノマー成分を含んでも良い。
【0220】
【化59】
【0221】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、レジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0222】
本発明の樹脂(A)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。
樹脂(A)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
例えば、一般的合成方法としては、不飽和モノマー及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤に不飽和モノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0223】
重合に使用される溶媒としては、例えば、後述の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤等を挙げることができ、より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタンなど)の存在下で重合を行ってもよい。
【0224】
反応の濃度は5〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは1〜12時間である。
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。例えば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0225】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0226】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0227】
本発明に係わる樹脂(A)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜60000の範囲であることがより好ましく、2000〜30000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量を1000〜100000の範囲とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:THFあるいはN−メチル−2−ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0228】
また分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜5.00、より好ましくは1.03〜3.50であり、更に好ましくは、1.05〜2.50である。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0229】
本発明の樹脂(A)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂(A)の含有率は、本発明の感活性光線性または感放射線性樹脂組成物中の全固形分を基準にして、20〜99質量%が好ましく、30〜89質量%がより好ましく、40〜79質量%が特に好ましい。
【0230】
[2](B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
酸発生剤としては、公知のものであれば特に限定されないが、活性光線又は放射線の照射により、有機酸、例えば、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、又はトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくともいずれかを発生する化合物が好ましい。
より好ましくは下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0231】
【化60】
【0232】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
【0233】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
【0234】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
【0235】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0236】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0237】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0238】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0239】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0240】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐(例えば、PF)、弗素化硼素(例えば、BF)、弗素化アンチモン(例えば、SbF)等を挙げることができる。
【0241】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0242】
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0243】
また、非求核性アニオンとしては、以下の一般式(AN1)で表されるアニオンも好ましい態様として挙げられる。
【0244】
【化61】
【0245】
式中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状の有機基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0246】
一般式(AN1)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfの具体的としては、フッ素原子、CF、C、C、C、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもフッ素原子、CFが好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0247】
、Rのアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R、Rの置換基を有するアルキル基の具体例としては、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
、Rとしては、好ましくはフッ素原子又はCFである。
【0248】
xは1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。
zは0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
Lの2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの複数が連結した連結基などを挙げることができ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O−が好ましく、―COO−、−OCO−がより好ましい。
【0249】
Aの環状の有機基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含む)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、露光後加熱工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF向上の観点から好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環由来のものが挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環由来のものが好ましい。
【0250】
また、環状の有機基としては、ラクトン構造も挙げることができ、具体例としては、前述の樹脂(A)が有していてもよい一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表されるラクトン構造を挙げることができる。
【0251】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
【0252】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。R201〜R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基等を挙げることができる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0253】
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成する場合、以下の一般式(A1)で表される構造であることが好ましい。
【0254】
【化62】
【0255】
一般式(A1)中、
1a〜R13aは、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。
1a〜R13aのうち、1〜3つが水素原子でないことが好ましく、R9a〜R13aのいずれか1つが水素原子でないことがより好ましい。
Zaは、単結合又は2価の連結基である。
は、一般式(ZI)におけるZと同義である。
【0256】
1a〜R13aが水素原子でない場合の具体例としては、ハロゲン原子、直鎖、分岐、環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が例として挙げられる。
1a〜R13aが水素原子でない場合としては、水酸基で置換された直鎖、分岐、環状のアルキル基であることが好ましい。
【0257】
Zaの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミノ基、ジスルフィド基、−(CH−CO−、−(CH−SO−、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基等が挙げられる(nは1〜3の整数)。
【0258】
なお、R201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0047,0048、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0259】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0260】
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0261】
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0262】
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0263】
【化63】
【0264】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
Ar、Ar、R208、R209及びR210のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI)におけるR201、R202及びR203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
208、R209及びR210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI)におけるR201、R202及びR203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0265】
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0266】
【化64】
【0267】
【化65】
【0268】
【化66】
【0269】
【化67】
【0270】
【化68】
【0271】
【化69】
【0272】
【化70】
【0273】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤の組成物中の含有率は、組成物の全固形分を基準として、21質量%〜70質量%である。前記含有率が21質量%未満であると、高感度と高LWR性能を発現することが難しくなる。前記含有率が70質量%超過であると、高解像度と高LWR性能を発現することが難しくなる。
酸発生剤の組成物中の含有率は、組成物の全固形分を基準として、31質量%〜60質量%であることが好ましく、31質量%〜50質量%であることがより好ましい。
【0274】
[3](C)レジスト溶剤(塗布溶媒)
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)など)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;1−メトキシ−2−プロパノール)など)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、アルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0275】
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0276】
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。
水酸基を有する溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、水酸基を有しない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。
【0277】
[4] 塩基性化合物
本願発明の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物は、含窒素有機塩基性化合物であることが好ましい。
使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば以下の(1)〜(4)に分類される化合物が好ましく用いられる。
【0278】
(1)下記一般式(BS−1)で表される化合物
【0279】
【化71】
【0280】
一般式(BS−1)中、
bs1は、各々独立に、水素原子、アルキル基(直鎖又は分岐)、シクロアルキル基(単環又は多環)、アリール基、アラルキル基の何れかを表す。但し、三つのRbs1の全てが水素原子とはならない。
bs1としてのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜12である。
bs1としてのシクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常3〜20、好ましくは5〜15である。
bs1としてのアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6〜20、好ましくは6〜10である。具体的にはフェニル基やナフチル基などが挙げられる。
bs1としてのアラルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常7〜20、好ましくは7〜11である。具体的にはベンジル基等が挙げられる。
bs1としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
一般式(BS−1)で表される化合物は、3つのRbs1の1つのみが水素原子であることが好ましく、全てのRbs1が水素原子でないことが更に好ましい。
【0281】
一般式(BS−1)の化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリンなどが挙げられる。
また、一般式(BS−1)において、少なくとも1つのRbs1が、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基である化合物が、好ましい態様の1つとして挙げられる。具体的化合物としては、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0282】
また、Rbs1としてのアルキル基は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては−CHCHO−が好ましい。具体的例としては、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、米国特許第6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物などが挙げられる。
【0283】
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0284】
一般式(BS−1)で表される塩基性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0285】
【化72】
【0286】
【化73】
【0287】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
複素環構造としては、芳香族性を有していてもいなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよく、更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物(N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど)、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、アンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン、ヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンなどが挙げられる。
【0288】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのアルキレンオキシ鎖を有する化合物である。1分子中のアルキレンオキシ鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。アルキレンオキシ鎖の中でも−CHCHO−が好ましい。
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。
【0289】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いられる。好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。これ以外にも上記(1)〜(3)のアミンから誘導されるアンモニウム塩を使用可能である。
【0290】
(5)グアニジン化合物
本発明の組成物は、下式で表される構造を有するグアニジン化合物を更に含有していてもよい。
【0291】
【化74】
【0292】
グアニジン化合物は3つの窒素によって共役酸のプラスの電荷が分散安定化されるた
め、強い塩基性を示す。
本発明のグアニジン化合物(A)の塩基性としては、共役酸のpKaが6.0以上であることが好ましく、7.0〜20.0であることが酸との中和反応性が高く、ラフネス特性に優れるため好ましく、8.0〜16.0であることがより好ましい。
【0293】
このような強い塩基性のため、酸の拡散性を抑制し、優れたパターン形状の形成に寄与することができる。
【0294】
なお、ここで「pKa」とは、水溶液中でのpKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
【0295】
ソフトウェアパッケージ1:Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994−2007ACD/Labs)。
【0296】
本発明において、logPとは、n−オクタノール/水分配係数(P)の対数値であり、広範囲の化合物に対し、その親水性及び疎水性を特徴づけることのできる有効なパラメータである。一般的には実験によらず計算によって分配係数は求められ、本発明においては、CS ChemDraw Ultra Ver.8.0 software package(Crippen’s fragmentation method)により計算された値を示す。
【0297】
また、グアニジン化合物(A)のlogPが10以下であることが好ましい。上記値以下であることによりレジスト膜中に均一に含有させることができる。
【0298】
本発明におけるグアニジン化合物(A)のlogPは2〜10の範囲内であることが好ましく、3〜8の範囲内であることがより好ましく、4〜8の範囲内であることが更に好ましい。
【0299】
また、本発明におけるグアニジン化合物(A)はグアニジン構造以外に窒素原子を有さないことが好ましい。
【0300】
以下、グアニジン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0301】
【化75】
【0302】
その他使用可能な塩基性化合物としては、特開2011−85926号公報に記載の化合物、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物なども使用可能である。
【0303】
本発明に係る組成物は、塩基性化合物として、窒素原子を有し且つ酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(以下において、「低分子化合物(D)」又は「化合物(D)」ともいう)を含んでいてもよい。
酸の作用により脱離する基としては、特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基又はヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
化合物(D)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
化合物(D)としては、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
化合物(D)は、窒素原子上に、保護基を有するカルバメート基を有していてもよい。カルバメート基を構成する保護基は、例えば、下記一般式(d−1)で表すことができる。
【0304】
【化76】
【0305】
一般式(d−1)において、
R’は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルコキシアルキル基を表す。R’は相互に結合して環を形成していても良い。
R’として好ましくは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。より好ましくは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基である。
このような基の具体例を以下に示す。
【0306】
【化77】
【0307】
化合物(D)は、上述した各種の塩基性化合物と一般式(d−1)で表される構造とを任意に組み合わせることで構成することも出来る。
化合物(D)は、下記一般式(F)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
なお、化合物(D)は、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物であるかぎり、上述した各種の塩基性化合物に相当するものであってもよい。
【0308】
【化78】
【0309】
一般式(F)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数20以下)若しくはその誘導体を形成していてもよい。
Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基を示す。但し、−C(Rb)(Rb)(Rb)において、1つ以上のRbが水素原子のとき、残りのRbの少なくとも1つはシクロプロピル基、1−アルコキシアルキル基又はアリール基である。
少なくとも2つのRbが結合して、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、n+m=3である。
【0310】
一般式(F)において、RaおよびRbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0311】
前記Ra及び/又はRbのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)としては、
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、これらのアルカンに由来する基を、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン、ノラダマンタン等のシクロアルカンに由来する基、これらのシクロアルカンに由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物に由来する基、これらの芳香族化合物に由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、インドール、インドリン、キノリン、パーヒドロキノリン、インダゾール、ベンズイミダゾール等の複素環化合物に由来する基、これらの複素環化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルキル基或いは芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基、直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基・シクロアルカンに由来する基をフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基等或いは前記の置換基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基で置換された基等が挙げられる。
【0312】
また、前記Raが相互に結合して、形成する2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20)若しくはその誘導体としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0313】
本発明における特に好ましい化合物(D)を具体的に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0314】
【化79】
【0315】
【化80】
【0316】
一般式(A)で表される化合物は市販のアミンから、Protective Groups in OrganicSynthesis 第四版等に記載の方法で簡便に合成できる。もっとも一般的な方法としては市販のアミンに対して二炭酸エステル又はハロギ酸エステルを作用させることによって得る方法がある。式中Xはハロゲン原子を表す。また、Ra、Rbの定義及び具体例は、上記一般式(F)で記載したものと同様である。
【0317】
【化81】
【0318】
また、光分解性塩基性化合物(当初は塩基性窒素原子が塩基として作用して塩基性を示すが、活性光線あるいは放射線の照射により分解されて、塩基性窒素原子と有機酸部位とを有する両性イオン化合物を発生し、これらが分子内で中和することによって、塩基性が減少又は消失する化合物。例えば、特登3577743、特開2001−215689号、特開2001−166476、特開2008−102383に記載のオニウム塩)、光塩基発生剤(例えば、特開2010−243773に記載の化合物)も適宜用いられる。
【0319】
塩基性化合物(化合物(D)を含む)は、単独であるいは2種以上併用して用いられる。
塩基性化合物の使用量は、組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0320】
酸発生剤/塩基性化合物のモル比は、2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。このモル比としてより好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0321】
[5] 界面活性剤
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
【0322】
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製);GF−300若しくはGF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0323】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
【0324】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、例えば、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基及びポリ(オキシブチレン)基が挙げられる。また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)及びポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等の、同じ鎖内に異なる鎖長のアルキレンを有するユニットであってもよい。
【0325】
さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体は、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー及び異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート等を同時に共重合してなる3元系以上の共重合体であってもよい。
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476及びF−472(DIC(株)製)が挙げられる。さらに、C13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、及び、C17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0326】
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0.0001〜2質量%、更に好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0327】
[6] その他の添加剤
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
特にカルボン酸は、性能向上のために好適に用いられる。カルボン酸としては、安息香酸、ナフトエ酸などの、芳香族カルボン酸が好ましい。
カルボン酸の含有量は、組成物の全固形分濃度中、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%である。
【0328】
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚10〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚20〜200nmで使用されることが好ましく、さらに好ましくは30〜100nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を前記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一なレジスト膜が形成できたものと考えられる。
固形分濃度とは、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
【0329】
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0330】
[用途]
本発明のパターン形成方法は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの半導体微細回路作成に好適に用いられる。なお、半導体微細回路作成時には、パターンを形成されたレジスト膜は回路形成やエッチングに供された後、残ったレジスト膜部は、最終的には溶剤等で除去されるため、プリント基板等に用いられるいわゆる永久レジストとは異なり、マイクロチップ等の最終製品には、本発明に記載の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物に由来するレジスト膜は残存しない。
【0331】
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0332】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0333】
合成例1(樹脂(A1−1−1)の合成)
窒素気流下、シクロヘキサノン20gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した(溶剤1)。これに、下記、M−1、M−2、M−3、M−4をモル比40/10/40/10の割合でシクロヘキサノンに溶解し、22質量%のモノマー溶液(200g)を調製した。更に、開始剤V−601(和光純薬工業製)をモノマーに対し6mol%を加え、溶解させた溶液を、(溶剤1)に対して6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘキサン1400ml/酢酸エチル600mlの混合溶液に注ぎ、析出した紛体をろ取、乾燥すると、樹脂(A1−1−1)が37g得られた。得られた樹脂(A1−1−1)のGPCから求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は10000、分散度(Mw/Mn)は、1.60であった。
【0334】
【化82】
【0335】
以下、同様の方法を用いて、樹脂(A1−1−2)、(A1−2)〜(A1−21)を合成した。合成したポリマー構造、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を以下に記す。また、下記ポリマー構造の各繰り返し単位の組成比をモル比で示した。
【0336】
【化83】
【0337】
【化84】
【0338】
【化85】
【0339】
【化86】
【0340】
合成例2(樹脂(A2−1)の合成)
1−メトキシ−2−プロパノール4.66質量部を窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、4−ヒドロキシスチレン5.05質量部、モノマー(M−5)4.95質量部(すなわち、4−ヒドロキシスチレンとモノマー(M−5)のモル比は7:3)、1−メトキシ−2−プロパノール18.6質量部、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕1.36質量部の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に4時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチルで再沈殿・真空乾燥を行うことで、本発明の樹脂(A2−1)を5.9質量部得た。
GPCから求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=15100、分散度(Mw/Mn)は、1.40であった。
【0341】
【化87】
【0342】
以下、同様の方法を用いて、樹脂(A2−2)〜(A2−4)を合成した。合成したポリマー構造、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を以下に記す。また、下記ポリマー構造の各繰り返し単位の組成比をモル比で示した。
【0343】
【化88】
【0344】
以降、実施例23、25、31、123、125及び131は、それぞれ、参考例23、25、31、123、125及び131に読み替えるものとする。
〔実施例1〜34、比較例1〜4(電子線(EB)露光)〕
(1)感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物溶液を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0345】
(2)EB露光及び現像
上記(1)で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。この際、1:1のラインアンドスペースが形成されるように描画を行った。電子線描画後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液をパドルして30秒間現像し、下表に記載のリンス液を用いてリンスをした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間加熱を行うことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0346】
〔比較例5及び6(電子線(EB)露光)〕
下表に示すように組成を変更し、有機系現像液に代えて、アルカリ水溶液(TMAH;2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)により現像を行い、リンス液を水とした以外は、実施例1と同様にして感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の調製、パターン形成を行った。
【0347】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、解像力、LWRについて評価した。結果を下表に示す。
【0348】
(3−1)感度
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。ただし、比較例5及び6については、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像することができなかったため、線幅100nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。
【0349】
(3−2)解像力
前記Eopに於いて、分離している(1:1)のラインアンドスペースパターンの最小線幅を解像力とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0350】
(3−3)ラインウィズスラフネス(LWR)
ラインウィズスラフネスは、前記Eopに於いて、線幅50nmのラインアンドスペースパターン(ただし、比較例5及び6については、線幅100nmの1:1ラインアンドスペースパターン)の長手方向0.5μmの任意の50点について、線幅を計測し、その標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0351】
【表1】

【0352】
【表2】
【0353】
【表3】
【0354】
【表4】

【0355】
以下、表中略号は、上記具体例のもの、及び、下記のものを表す。
<塩基性化合物>
D−1:テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド
D−2:1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
D−3:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
D−4:トリドデシルアミン
【0356】
【化89】
【0357】
<界面活性剤>
W−1: メガファックF176(DIC(株)製)(フッ素系)
W−2: メガファックR08(DIC(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−4: PF6320(OMNOVA(株)製)(フッ素系)
【0358】
<塗布溶剤>
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S−3:テトラハイドロフラン
S−4:シクロヘキサノン
<現像液・リンス液>
S−5:酢酸ブチル
S−6:酢酸ペンチル
S−7:アニソール
S−8:1−ヘキサノール
S−9:4−メチル−2−ペンタノール
S−10:デカン
S−11:オクタン
S−12:エチルベンゼン
S−13:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S−14:エトキシベンゼン
TMAH:2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液
【0359】
上記表から分かるように、実施例1〜34は、高感度、高解像性、高ラインウィズスラフネス(LWR)性能を極めて高次元で同時に満足することができた。
特に、実施例8,16と、これらの実施例と同じレジスト組成物を用いてアルカリ現像液によりポジ型現像を行った比較例5,6との比較から分かるように、有機系現像液を用いた本発明のパターン形成方法を用いることで、高解像性、高感度かつ高LWR性能にてパターンを形成できた。これは、上記したように、アルカリ現像液を用いる場合と比較して、有機系現像液を使用する場合は、パターンの側壁に掛かるキャピラリーフォースが低下し、その結果、パターン倒れが防止できたためと考えられる。
また、組成物の全固形分に対する酸発生剤の含有率が21質量%未満の比較例1〜4は、感度及びLWRに関して、実施例が達成した水準には至らなかった。これは、酸発生剤の量が少なく、実施例が達成した高い水準を満たすには、発生する酸が少なかったことに基づくと考えられる。
なお、リンス工程を行わない場合も、上記実施例と同様の優れた効果が得られるものである。
【0360】
〔実施例101〜134、比較例101〜104(極紫外線(EUV)露光)〕
(4)感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する塗液組成物を0.05μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物溶液を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0361】
(5)EUV露光及び現像
上記(4)で得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光を行った。照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液をパドルして30秒間現像し、下表に記載のリンス液を用いてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間ベークを行なうことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0362】
〔比較例105及び106(極紫外線(EUV)露光)〕
下表に示すように組成を変更し、有機系現像液に代えて、アルカリ水溶液(TMAH;2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)により現像を行い、リンス液を水とした以外は、実施例101と同様にして感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の調製、パターン形成を行った。
【0363】
(6)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380II)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、解像力、LWRについて評価した。結果を下表に示す。
【0364】
(6−1)感度
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0365】
(6−2)解像力
前記Eopに於いて、分離している(1:1)のラインアンドスペースパターンの最小線幅を解像力とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0366】
(6−3)ラインウィズスラフネス(LWR)
ラインウィズスラフネスは、前記Eopに於いて、線幅50nmのラインアンドスペースパターンの長手方向0.5μmの任意の50点について、線幅を計測し、その標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0367】
【表5】

【0368】
【表6】

【0369】
【表7】

【0370】
【表8】
【0371】
上記表から分かるように、実施例101〜134は、高感度、高解像性、高ラインウィズスラフネス(LWR)性能を極めて高次元で同時に満足することができた。
特に、実施例108,116と、これらの実施例と同じレジスト組成物を用いてアルカリ現像液によりポジ型現像を行った比較例105,106との比較から分かるように、有機系現像液を用いた本発明のパターン形成方法を用いることで、EUV露光においても、高解像性、高感度かつ高LWR性能にてパターンを形成できた。これは、上記したように、アルカリ現像液を用いる場合と比較して、有機系現像液を使用する場合は、パターンの側壁に掛かるキャピラリーフォースが低下し、パターン倒れが防止できたためと考えられる。
また、組成物の全固形分に対する酸発生剤の含有率が21質量%未満の比較例101〜104は、感度及びLWRに関して、実施例が達成した水準には至らなかった。これは、酸発生剤の量が少なく、実施例が達成した高い水準を満たすには、発生する酸が少なかったことに基づくと考えられる。
更に、例えば、実施例111及び113の評価結果から分かるように、樹脂が、複数の芳香環を有する繰り返し単位を含有すると、解像性、及び、LWR性能がより優れた。これはEUVにおけるアウトオブバンド光(紫外線領域に発生する漏れ光)を吸収し、それによる弊害(表面パターン荒れ等)がより抑制されたためと推測される。
なお、リンス工程を行わない場合も、上記実施例と同様の優れた効果が得られるものである。