(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記初期音速記憶部は、複数の前記初期音速を記憶しておき、操作部からの入力に基づいて、前記画質判定部による画質判定に使用する前記初期音速を選択する請求項1に記載の超音波検査装置。
前記画質判定部は、前記初期音速に基づいて生成した画像のシャープネス、輝度、コントラスト、周波数のいずれかに基づいて画質判定を行う請求項1〜5のいずれかに記載の超音波検査装置。
前記画質判定部は、前記初期音速に基づいて生成した前記領域の整相加算後の受信データに基づいて生成した基準データと、整相加算前の受信データとの類似性を評価して画質判定を行う請求項1〜6のいずれかに記載の超音波検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る超音波検査装置、超音波検査装置の信号処理方法およびプログラムを添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の超音波検査装置の構成の一実施例を概念的に示すブロック図である。
図1に示すように、超音波検査装置10は、超音波プローブ12と、超音波プローブ12に接続される送信部14及び受信部16と、A/D変換部18と、素子データ記憶部20と、画像生成部24と、表示制御部26と、表示部28と、制御部30と、操作部32と、格納部34と、領域設定部50と、音速決定部52と、初期音速記憶部64とを有する。
【0019】
超音波プローブ(超音波探触子)12は、通常の超音波検査装置に用いられる振動子アレイ36を有する。
振動子アレイ36は、1次元又は2次元アレイ状に配列された複数の素子、即ち超音波トランスデューサを有している。これらの超音波トランスデューサは、検査対象物(以下、被検体という)の超音波画像の撮像の際に、それぞれ送信部14から供給される駆動信号に従って超音波ビームを被検体に送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して受信信号(アナログ素子信号)を出力する。本実施形態では、振動子アレイ36の複数の超音波トランスデューサの内の一組を成す所定数の超音波トランスデューサの各々は、1つの超音波ビームの各成分を発生し、一組の所定数の超音波トランスデューサは、被検体に送信する1つの超音波ビームを発生する。
【0020】
各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した素子、即ち振動子によって構成される。
【0021】
このような振動子の電極に、パルス状又は連続波状の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号(アナログ素子信号)として出力される。
【0022】
送信部14は、例えば、複数のパルサを含んでおり、制御部30からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに従い、振動子アレイ36の一組の所定数の超音波トランスデューサ(以下、超音波素子という)から送信される超音波ビーム成分が1つの超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して組を成す複数の超音波素子に供給する。
【0023】
受信部16は、制御部30からの制御信号に応じて、振動子アレイ36から送信された超音波ビームと被検体との間の相互作用によって発生された超音波エコーを、振動子アレイ36が受信して出力した、受信信号、即ち超音波素子毎のアナログ素子信号を増幅して出力する。
【0024】
ここで、受信部16は、1回の超音波ビームの送信に対応して、複数の超音波素子が受信した複数のアナログ素子信号を、受信した超音波素子の情報および受信時間の情報を含む、1つのアナログの素子データとして出力する。すなわち、素子データは、素子の位置と受信時間とに対する受信信号の強度を表すデータである。
また、受信部16は、送信部14による1回の超音波ビームの送信ごとに、超音波エコーを受信してアナログの素子データを出力する。したがって、送信部14が、複数回の超音波ビームの送信を行うことにより、各送信に対応した複数のアナログの素子データを出力する。
受信部16は、アナログの素子データをA/D変換部18に供給する。
【0025】
A/D変換部18は、受信部16に接続され、受信部16から供給されたアナログの素子データを、デジタルの素子データ(第1の素子データ)に変換する。A/D変換部18は、A/D変換されたデジタルの素子データを素子データ記憶部20および画像生成部24に供給する。
【0026】
素子データ記憶部20は、A/D変換部18から出力されるデジタルの素子データを順次格納する。また、素子データ記憶部20は、制御部30から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記のデジタルの素子データ(以下、単に素子データという)に関連付けて格納する。
【0027】
領域設定部50は、操作者による操作部32からの入力に応じて、あるいは、制御部30からの指示に応じて、超音波による検査を行う撮像領域に、複数の領域を設定する。本装置においては、この領域単位で適切な音速を決定する。
図3に、設定した領域を模式的に表す図を示す。
図3において、y方向が超音波の送信方向に対応し、x方向が超音波素子の配列方向に対応している。
図3に破線で示すように、撮像領域を複数の矩形状の部分ごとに分割して領域を設定する。
なお、図示例においては、領域は矩形状としたが、これに限定はされず、超音波ビームを送信するラインに対応するライン状の領域であってもよいし、1画素に対応する点であってもよい。また、撮像領域の形状に対応して、例えば、コンベックスプローブの場合であれば、各領域は扇型であってもよい。また、図示例においては、各領域の大きさは同じとしたが、これに限定はされず、領域ごとに異なる大きさとしてもよい。
また、設定する領域の大きさには特に限定はないが、領域を小さく設定するほど、超音波画像全体の精度は向上するものの、音速を決定する際の処理時間が長くなるおそれがある。
領域設定部50は、設定した領域の情報を音速決定部52(素子データ取得部56)に供給する。
【0028】
初期音速記憶部64は、音速決定部52で各領域の音速を決定するために使用する、予め設定された所定の音速値である初期音速を記憶する部位である。
初期音速記憶部64が記憶する初期音速は、生体内の音速値に近い値であることが好ましく、1400〜1700m/sの範囲、特に、1450〜1550m/sの範囲であることが好ましい。
【0029】
なお、初期音速記憶部64は、少なくとも1つの初期音速値を記憶すればよいが、診断部位(臓器の種類)ごとに適切な初期音速値をそれぞれ記憶しておいてもよい。
初期音速記憶部64は、初期音速の情報を音速決定部52の音速取得部58に供給する。
【0030】
音速決定部52は、領域設定部50が設定した領域ごとの適切な音速を順次、決定する部位である。
音速決定部52は、素子データ取得部56と、音速取得部58と、画質判定部60と、音速算出部62とを有する。
なお、本発明において、領域の音速とは、この領域と超音波プローブ12(振動子アレイ36)との間が均一な物質で満たされていると仮定した場合の、超音波プローブ12から領域までの音速を表すものである。すなわち、領域と超音波プローブ12との間の平均的な音速であり、これを環境音速ともいう。
【0031】
素子データ取得部56は、領域設定部50が設定した領域の情報に基づいて、音速を求める領域(以下、注目領域、ともいう)に対応する素子データを素子データ記憶部20から読み出す部位である。
素子データ取得部56は、読み出した素子データを画質判定部60に供給する。
【0032】
音速取得部58は、初期音速記憶部64が記憶している初期音速値を読み出す部位である。
初期音速記憶部64が、1つの初期音速値を記憶している場合には、この初期音速を取得すればよい。また、初期音速記憶部64が、複数の初期音速値を記憶している場合には、操作部32から入力された、あるいは、予め設定されている診断部位の情報等に応じて、適切な初期音速値を選択して取得すればよい。
音速取得部58は、取得した初期音速値を画質判定部60に供給する。
【0033】
画質判定部60は、音速取得部58が取得した初期音速に基づいて、素子データ取得部56が取得した注目領域の素子データから注目領域の画像(注目画像)を生成して、この注目画像の画質を判定する部位である。
画質判定部60は、まず、供給された素子データから注目領域の画像を生成する。画像の生成方法は、基本的には、後述する画像生成部24と同様である。すなわち、音速取得部58が取得した初期音速に基づく受信遅延パターンに従って、素子データに遅延を加えて加算することにより、受信フォーカス処理を行い、受信データ(音線信号)を生成する。生成した音線信号に対して、深度に応じた減衰の補正を施して、包絡線検波処理を施すことにより、Bモード画像データを生成する。
【0034】
次に、生成した注目領域のBモード画像データのシャープネス値を評価して画質を判定する。シャープネス値が所定の閾値以上であれば、画質は良いと判定し、閾値より小さければ画質は低いと判定する。
なお、画像のシャープネス値の算出方法としては、公知の算出方法を利用すればよく、例えば、注目領域における最大輝度点の半値幅をシャープネス値として算出する算出方法等が利用可能である。
【0035】
図3を用いて、画質判定部60が行う画質判定の一例を説明する。
図3においては、一例として、撮像領域に5×5の領域が設定されている。画質判定部60は、領域ごとに画質判定を行い、それぞれの領域で判定結果が良(OK)か否(NG)かが判断される。図示例のように、画質判定の結果、NGと判定された領域((2、3)〜(2、5)、(3、3)〜(3、5))については、音速算出部62による詳細な音速の算出が行われる。
【0036】
なお、画質判定部60が行う画質の判定方法は、シャープネス値による判定に限定はされず、コントラストや輝度値、画像の空間周波数、積分値、2乗積分値、ピーク値、半値幅、周波数スペクトル積分、最大値や直流成分で規格化された周波数スペクトル積分値や2乗積分値、自己相関値等の評価指標により画質の判定を行ってもよい。
また、画質判定部60が行う画質の判定方法は、画像のシャープネス値(評価指標)を、所定の閾値と比較する構成に限定はされず、前回フレームの同じ領域の画像のシャープネス値と比較して、差が所定範囲以内であれば、良と判定する構成としてもよい。
【0037】
また、画質判定部60は、注目領域の画像ではなく、音速取得部58が取得した予備音速に基づく受信遅延パターンに従って、素子データに遅延を加えて加算することにより、受信フォーカス処理を行った受信データに基づいて画質判定を行うこともできる。具体的には、予備音速における整相加算後の受信データを整相加算前と同じ受信素子分並べた基準信号と、予備音速で遅延時間補正して整相加算を行う前の受信データ(遅延時間補正された素子データ)との類似性を評価し、類似性が所定の閾値以上であれば、画質は良いと判定し、閾値以下であれば画質は低いと判定する。
【0038】
画質判定部60は、注目領域の画質判定の結果、画質が良と判定された場合には、画質判定に利用した初期音速を注目領域の音速として採用して、画像生成部24の整相加算部38に供給し、判定の結果画質が悪いと判定された場合には、音速算出部62に判定結果を供給する。
【0039】
音速算出部62は、画質判定部60の画質判定の結果、画質が悪いと判定された注目領域について、詳細に音速を算出する部位である。
音速算出部62は、画質判定部60から画質が悪いとの判定結果が供給されると、素子データ取得部56が取得した、注目領域に対応する素子データを取得し、この素子データに対して、音速値(以下、設定音速という)を種々変更し、それぞれの設定音速に基づいて、受信フォーカス処理をして超音波画像を形成し、画像のコントラストおよび/またはシャープネスが最も高くなる設定音速を、注目領域の最適な音速値として算出する。
最適な音速値の判定方法としては、例えば、特開平8−317926号公報に記載のように、画像のコントラスト、スキャン方向の空間周波数、分散等に基づいて最適音速値の判定を行うことができる。
【0040】
音速算出部62について、
図4に示すフローチャートを用いてより詳細に説明する。
音速算出部62は、注目領域の素子データを取得すると、設定音速Vを、VstからVendまで、ΔV刻みで変化させて、それぞれの設定音速Vにおいて、設定音速Vに基づいて、素子データ取得部から供給された注目領域の素子データに対して受信フォーカス処理をして音線信号を生成し、この音線信号から超音波画像を形成し、それぞれの設定音速Vでの注目領域の画像のシャープネスを算出する。
各設定音速Vでの画像のシャープネス値を比較して、得られたシャープネスの値が最も高い設定音速Vを最適な音速値として採用する。
なお、設定音速Vの探索範囲としては、Vstは1400m/s、Vendは1700m/s、ΔVは10〜50m/s程度とすればよい。
音速算出部62は、算出した音速値を注目領域の音速値として、画像生成部24の整相加算部38に供給する。
【0041】
なお、音速算出部62は、シャープネス値が最も高くなる設定音速を最適な音速値とする構成に限定はされず、コントラストや輝度値、あるいは、画像の空間周波数等の評価指標に基づいて、画質が最も良くなる設定音速を最適な音速値とすればよい。
【0042】
また、音速算出部62による最適な音速の算出方法は、所定の探索範囲で設定音速を順次、変更して画質が最も良くなる音速値を求める構成に限定はされず、各種の、領域ごとの最適な音速値の算出方法が利用可能である。例えば、各設定音速における整相加算後の受信データを整相加算前と同じ受信素子分並べた基準信号と、各設定音速で遅延時間補正して整相加算を行う前の受信データ(遅延時間補正された素子データ)とを、それぞれ各設定音速で類似性を評価し、類似性の高いときの音速を最適な音速値とする方法が利用可能である。
【0043】
前述のとおり、超音波検査装置において、より高画質な画像を得るために、領域(画素、ライン)ごとに、複数の設定音速に基づいて、網羅的に画質を判定するための指標(フォーカス指標等)を求めて、画質の判定結果が最も良くなる設定音速を、最適な音速値として求めていた。そのため、全ての領域で最適な音速を求めるためには、時間を要するという問題があった。また、その結果、フレームレートが低下するという問題があった。
【0044】
これに対して、本発明は、設定された複数の領域ごとに、予め設定されている初期音速値に基づいて画像を生成した場合の画質を判定して、画質判定の結果が良であれば、初期音速値を該当する領域の音速として採用するので、複数の設定音速で、網羅的に画質判定のための指標を求めて、判定結果が最も良くなる設定音速を求める必要がないため、短時間で、領域ごとの適切な音速値を求めることができる。
また、初期音速に基づく画質判定の結果が否となった場合には、該当する領域の最適な音速を求めるので、高画質な画像を得ることができる。
以上から、本発明の超音波検査装置は、領域ごとの適切な音速値を短時間で求めることができ、フレームレートを低下させることなく、高精度な超音波画像を構築することができる。
【0045】
画像生成部24は、制御部30による制御下で、A/D変換部18あるいは素子データ記憶部20から供給された素子データから音線信号(受信データ)を生成し、この音線信号から超音波画像を生成するものである。
画像生成部24は、整相加算部38、検波処理部40、DSC42、画像作成部44、および、画像メモリ46を有する。
【0046】
整相加算部38は、制御部30において設定された受信方向に応じて、音速取得部58(画質判定部60および音速算出部62)から供給される各領域の音速(音速マップ)に基づいて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、素子データの素子ごとの信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信データ(音線信号)が生成される。
ここで、整相加算部38は、音速取得部58が取得した領域ごとの適切な音速を利用して、素子データの受信フォーカス処理を行うので、高精度な受信データを得ることができる。
整相加算部38は、受信データを検波処理部40に供給する。
【0047】
検波処理部40は、整相加算部38で生成された受信データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像データを生成する。
DSC(digital scan converter)48は、検波処理部40で生成されたBモード画像データを通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像データに変換(ラスター変換)する。
【0048】
画像作成部44は、DSC42から入力されるBモード画像データに階調処理等の各種の必要な画像処理を施して検査や表示に供するためのBモード画像データを作成した後、作成された検査用又は表示用Bモード画像データを表示のために表示制御部26に出力する、或いは画像メモリ46に格納する。
画像メモリ46は、画像作成部44で作成された検査用Bモード画像データを一旦格納する。画像メモリ46に格納された検査用Bモード画像データは、必要に応じて、表示部28で表示するために表示制御部26に読み出される。
【0049】
表示制御部26は、画像作成部44によって画像処理が施された検査用Bモード画像信号に基づいて、表示部28に超音波画像を表示させる。
表示部28は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部26の制御の下で、超音波画像を表示する。
【0050】
制御部30は、操作者により操作部32から入力された指令に基づいて超音波検査装置10の各部の制御を行う。
ここで、制御部30は、操作者によって操作部32を介して種々の情報、特に、領域設定部50で領域を設定するために必要な情報、および、音速決定部52で音速を決定するために必要な情報の入力が行われた際に、操作部32から入力された上述の種々の情報を、必要に応じて、送信部14、受信部16、素子データ記憶部20、画像生成部24、表示制御部26、領域設定部50および音速決定部52等の各部に供給する。
【0051】
操作部32は、操作者が入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
また、操作部32は、操作者が必要に応じて各種の情報、特に上述の領域の設定に用いられる情報、ならびに、音速決定に用いられる情報等を入力操作するための入力装置を備えている。
【0052】
格納部34は、操作部32から入力された各種の情報等や、送信部14、受信部16、素子データ記憶部20、画像生成部24、表示制御部26、領域設定部50および音速決定部52等の制御部30で制御される各部の処理や動作に必要な情報、並びに、各部の処理や動作を実行させるための動作プログラムや処理プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、整相加算部38、検波処理部40、DSC42、画像作成部44、音速取得部58、画質判定部60、音速算出部62及び表示制御部26は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0053】
本発明の超音波検査装置の動作、作用について説明する。
まず、領域設定部50は、操作部32からの入力、あるいは、制御部30からの指示に応じて、超音波による走査を行う撮像領域に、複数の領域を設定する。また、初期音速記憶部64には、予め設定された初期音速が記憶されている。
【0054】
操作者が、超音波プローブ12を被検体の表面に当接し、測定を開始すると、送信部14から供給される駆動信号に従って振動子アレイ36から超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを、振動子アレイ36が受信し、受信信号としてアナログ素子信号を出力する。
受信部16は、各素子が出力するアナログ素子信号を1つのアナログの素子データとして出力し、A/D変換部18に供給する。A/D変換部18は、アナログの素子データをデジタルの素子データに変換して素子データ記憶部20に供給して、記憶保持させる。
【0055】
素子データが記憶されると、音速決定部52により、領域ごとの音速が決定される。
音速決定部52の動作を、
図5のフローチャートを用いて説明する。
音速決定部52の音速取得部58は、初期音速記憶部64に記憶されている初期音速を読み出して、画質判定部60に供給する。また、素子データ取得部56は、画質を判断する領域(注目領域)に対応する素子データを読み出し、画質判定部60に供給する。
画質判定部60は、まず、音速取得部58が取得した初期音速に基づく受信遅延パターンに従って、素子データ取得部56が取得した注目領域の素子データの受信フォーカス処理を行い、受信データを生成し、深度に応じた減衰の補正を施して、包絡線検波処理を施すことにより、Bモード画像データを生成する。次に、生成した注目領域のBモード画像データのシャープネス値を評価して画質を判定し、画質が良と判定された場合には、画質判定に利用した初期音速を注目領域の音速として採用し、画像生成部24の整相加算部38に供給する。また、画質判定の結果が否の場合には、判定結果を音速算出部62に供給する。
音速算出部62は、画質判定の結果が否の場合に、設定音速を網羅的に変更して、最も画質が良くなる音速を、注目領域の音速として算出し、整相加算部38に供給する。
【0056】
画像生成部24の整相加算部38は、素子データ記憶部20から素子データを読み出して、素子データ対して、画質判定部60および音速算出部62から供給された領域ごとの音速に基づいて、受信遅延パターンを選択して、受信フォーカス処理を施して受信データ(音線信号)を生成し、検波処理部40に供給する。検波処理部40は、音線信号を処理してBモード画像信号を生成する。Bモード画像信号を、DSC42がラスター変換し、画像作成部44が画像処理を施し、超音波画像が生成される。生成された超音波画像は、画像メモリ46に格納されると共に、表示制御部26により超音波画像が表示部28に表示される。
【0057】
このように本発明の超音波検査装置は、設定された複数の領域ごとに、予め設定されている初期音速値に基づいて画像を生成した場合の画質を判定して、画質判定の結果が良であれば、初期音速値を該当する領域の音速として採用するので、複数の設定音速で、網羅的に画質判定のための指標を求めて、判定結果が最も良くなる設定音速を求める必要がないため、短時間で、領域ごとの適切な音速値を求めることができる。
また、初期音速に基づく画質判定の結果が否となった場合には、該当する領域の最適な音速を求めるので、高画質な画像を得ることができる。
以上から、本発明の超音波検査装置は、領域ごとの適切な音速値を短時間で求めることができ、フレームレートを低下させることなく、高精度な超音波画像を構築することができる。
【0058】
なお、上記実施例においては、画質判定部60は、注目領域の画像を生成して、画像に基づく評価指標(シャープネス値等)を求めて画質を評価する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、注目領域の画像を生成せずに、注目領域の素子データから画質の判定を行ってもよい。すなわち、複数の設定音速毎に、素子データに受信フォーカス処理を施して、フォーカス指標を求めて、フォーカス指標に基づいて最適な音速を決定する構成としてもよい。
フォーカス指標の算出方法および判定方法としては、例えば、特開2011−92686号公報に記載の方法を利用することができる。
【0059】
また、上記実施例においては、画質判定部60は、画質の判定を行うための画像を生成する機能を有する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、画像生成部24において、画質判定用の画像を生成して、画質判定部60において判定する構成としてもよい。この場合は、画質判定の結果NGとされた領域については、音速算出部62が算出した音速に基づいて、再度、画像生成部24が画像を生成し、全体の超音波画像を生成すればよい。
また、画質判定部による判定結果が良の領域では、画質の判定に利用した画像を、超音波画像に利用してもよい。
【0060】
また、上記実施例においては、初期音速記憶部64が記憶する初期音速は、予め設定されているものとしたが、本発明はこれに限定はされず、初期音速記憶部64が記憶されている初期音速を、適宜、更新するようにしてもよい。例えば、音速決定部52が決定した各領域の音速の平均値等を、次フレームでの初期音速に設定してもよい。
また、記憶される初期音速を更新するタイミングにも、特に限定はなく、毎フレームごとや所定のフレーム間隔で、初期音速の更新を行ってもよいし、画質判定部60による画質判定の結果NGとなった領域の数が所定数を超えた場合に、初期音速を更新するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施例においては、初期音速を取得して画質判定を行い、判定結果が否の場合には、音速算出部62により、注目領域の最適な音速を算出する構成としたが、これに限定はされず、判定結果が否の場合には、判定結果を表示部28に表示して、操作者に警告を行う構成としてもよい。この場合は、音速の算出を行わせるか否かは、操作者が決定すればよい。
【0062】
また、本実施形態の超音波検査装置は、図示を省略した制御部に付属したメモリに格納された信号処理プログラムによって制御される。すなわち、制御部によってメモリから信号処理プログラムが読み出され、該信号処理プログラムに従って、領域が設定され、設定された領域に対して順次、画質判定を行って音速を決定する機能が実行される。
【0063】
なお、超音波検査装置の信号処理プログラムは、このように制御部に付属のメモリに格納されるものに限定されず、該信号処理プログラムを、例えば、CD−ROMなど、本超音波検査装置に着脱可能に構成されるメモリ媒体(リムーバブル媒体)に記録しておき、リムーバブル媒体に対応するインターフェイスを介して本装置に読み込むように構成してもよい。
【0064】
以上、本発明の超音波検査装置、超音波検査装置の信号処理方法およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。