(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して15モル%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において光とは、極紫外線(EUV光)のみならず、電子線も含む。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、極紫外線(EUV光)による露光のみならず、電子線による描画も露光に含める。
【0022】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、
(ア)下記一般式(1−0)で表される繰り返し単位と、下記一般式(1−2)で表される繰り返し単位とを有する樹脂(A)を含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて膜を形成する工程、
(イ)前記膜を電子線又は極紫外線を用いて露光する工程、及び
(ウ)該露光された膜を、有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を少なくとも有し、
下記一般式(1−0)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して45モル%以上である。
【0024】
上記一般式(1−0)中、
R
1及びR
2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R
11及びR
12はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R
13は水素原子又はアルキル基を表す。R
11及びR
12は連結して環を形成してもよく、R
11及びR
13は連結して環を形成しても良い。
Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、L
1は単結合又は2価の連結基を表す。
上記一般式(1−2)中、
Rbは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
R
3は置換基を表す。n
1は1又は2を、n
2は0〜4の整数を表す。n
2が2〜4の整数のとき、複数のR
3は互いに連結して環を形成していてもよい。
L
2は、単結合、−COO−、又は−CONR
4−を表し、R
4は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0025】
上記の本発明のパターン形成方法によれば、スペース幅100nm以下の微細な孤立スペースパターン形成においては、感度、解像力、スペースウィズスラフネスに優れ、微細な孔径(例えば、50nm以下)を有するホールパターンを形成する場合においては、高解像力、良好なEL、局所的なパターン寸法の均一性(Local−CDU)に優れる。その理由は定かではないが、以下のように推定される。
【0026】
本発明における樹脂(A)は、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を有するとともに、一般式(1−0)で表される繰り返し単位の酸分解反応の活性化エネルギー(Ea)が小さく、そのモル比率が45モル%以上であることにより、高感度であり、かつ溶解コントラストが高くなる結果、スペース幅100nm以下の微細な孤立スペースパターンの形成において、高解像力、優れたスペースウィズスラフネスとすることができるものと考えられる。
微細な孔径(例えば、50nm以下)を有するホールパターンを形成する場合においても同様に、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を有するとともに、一般式(1−0)で表される繰り返し単位の酸分解反応のEaが小さく、そのモル比率が45モル%以上であることにより、発生酸の実効拡散長が短く、かつ溶解コントラストが高くなる結果、高解像力、良好なEL、局所的なパターン寸法の均一性(Local−CDU)とすることができるものと考えられる。
上記効果は、電子線又は極紫外線露光により微細なパターンを形成する場合において特に顕著であるものと考えられる。
【0027】
また、電子線又は極紫外線により露光を行うパターン形成方法は、微細なパターン(例えば、50nm以下の線幅ないしスペース幅を有するパターン)を良好に形成できるものとして期待されている。
しかしながら、例えば、線幅ないしスペース幅が50nm以下であり、かつ、線幅とスペース幅との比が1:1のラインアンドスペースパターンを形成する場合においては、現像時に形成された微細なスペース空間内には、より強い毛管力(キャピラリーフォース)が発生しやすく、上記スペース空間から現像液が排出される際には、この毛管力が、微細な線幅を有するパターンの側壁に掛かる。そして、アルカリ現像液によりポジ型のパターンを形成する場合には、樹脂を主成分とするパターンとアルカリ現像液との親和性は低い傾向となるため、パターンの側壁に掛かる毛管力が大きく、パターンの倒れが発生しやすい。
一方、本発明のように、有機系現像液によりネガ型のパターンを形成する場合、樹脂を主成分とするパターンと有機系現像液との親和性は高い傾向となるため、パターンの側壁に掛かる毛管力が小さく、パターンの倒れが発生しにくい。これにより、本発明によれば、高い解像力を達成できるものと考えられる。また、上記毛管力が小さいことが、スペースウィズスラフネスの改善にも寄与するものと考えられる。
【0028】
(1)製膜
本発明のレジスト膜は、上記した感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物により形成される膜である。
より具体的には、レジスト膜の形成は、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の後述する各成分を溶剤に溶解し、必要に応じてフィルター濾過した後、支持体(基板)に塗布して行うことができる。フィルターとしては、ポアサイズ0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下、更に好ましくは0.1μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上にスピンコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後乾燥し、感光性の膜を形成する。乾燥の段階では加熱(プリベーク)を行うことが好ましい。
膜厚には特に制限はないが、好ましくは10〜500nmの範囲に、より好ましくは10〜200nmの範囲に、更により好ましくは10〜100nmの範囲に調整する。スピナーに感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を塗布する場合、その回転速度は、通常500〜3000rpm、好ましくは800〜2000rpm、より好ましくは1000〜1500rpmである。
加熱(プリベーク)の温度は60〜200℃で行うことが好ましく、80〜150℃で行うことがより好ましく、90〜140℃で行うことが更に好ましい。
加熱(プリベーク)の時間は、特に制限はないが、30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
必要により、市販の無機あるいは有機反射防止膜を使用することができる。感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の下層に反射防止膜を塗布して用いることもできる。反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0029】
(2)露光
露光は、極紫外線(EUV光)又は電子線(EB)により行う。極紫外線(EUV光)を露光源とする場合、形成した該膜に、所定のマスクを通してEUV光(13nm付近)を照射することが好ましい。電子ビーム(EB)の照射では、マスクを介さない描画(直描)が一般的である。露光は、極紫外線を使用することが好ましい。
【0030】
(3)ベーク
露光後、現像を行う前にベーク(加熱)を行うことが好ましい。
加熱温度は60〜150℃で行うことが好ましく、80〜150℃で行うことがより好ましく、90〜140℃で行うことが更に好ましい。
加熱時間は特に限定されないが、30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行っても良い。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。加熱温度及び加熱時間は上述の通りである。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。
【0031】
(4)現像
本発明においては、有機溶剤を含む現像液を用いて現像を行う。
・現像液
現像液の蒸気圧(混合溶媒である場合は全体としての蒸気圧)は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機溶剤の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化するものと考えられる。
現像液に用いられる有機溶剤としては、種々の有機溶剤が広く使用されるが、たとえば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤等の溶剤を用いることができる。
【0032】
本発明において、エステル系溶剤とは分子内にエステル基を有する溶剤のことであり、ケトン系溶剤とは分子内にケトン基を有する溶剤のことであり、アルコール系溶剤とは分子内にアルコール性水酸基を有する溶剤のことであり、アミド系溶剤とは分子内にアミド基を有する溶剤のことであり、エーテル系溶剤とは分子内にエーテル結合を有する溶剤のことである。これらの中には、1分子内に上記官能基を複数種類有する溶剤も存在するが、その場合は、その溶剤の有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤いずれにも該当するものとする。また、炭化水素系溶剤とは置換基を有さない炭化水素溶剤のことである。
特に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0033】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等を挙げることができる。
【0034】
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
【0035】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール、3−メトキシ−1−ブタノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1−メトキシ−2−プロパノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等の水酸基を含有するグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。これらの中でもグリコールエーテル系溶剤を用いることが好ましい。
【0036】
エーテル系溶剤としては、例えば、上記水酸基を含有するグリコールエーテル系溶剤の他、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の水酸基を含有しないグリコールエーテル系溶剤、アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。好ましくは、グリコールエーテル系溶剤、又はアニソールなどの芳香族エーテル溶剤を用いる。
【0037】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
【0038】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1−メチルプロピルベンゼン、2−メチルプロピルベンゼン、ジメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、ジプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0039】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。特に好ましくは、実質的に有機溶剤のみからなる場合である。なお、実質的に有機溶剤のみからなる場合とは、微量の界面活性剤、酸化防止剤、安定剤、消泡剤などを含有する場合を含むものとする。
【0040】
上記溶剤のうち、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−へプタノン及びアニソールの群から選ばれる1種以上を含有することがより好ましい。
現像液として用いる有機溶剤としては、エステル系溶剤を好適に挙げることができる。
エステル系溶剤としては、後述する一般式(S1)で表される溶剤又は後述する一般式(S2)で表される溶剤を用いることがより好ましく、一般式(S1)で表される溶剤を用いることが更により好ましく、酢酸アルキルを用いることが特に好ましく、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルを用いることが最も好ましい。
【0041】
R−C(=O)−O−R’ 一般式(S1)
【0042】
一般式(S1)に於いて、
R及びR’は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。R及びR’は、互いに結合して環を形成してもよい。
R及びR’についてのアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基の炭素数は、1〜15の範囲であることが好ましく、シクロアルキル基の炭素数は、3〜15であることが好ましい。
R及びR’としては水素原子又はアルキル基が好ましく、R及びR’についてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、及びRとR’とが互いに結合して形成する環は、水酸基、カルボニル基を含む基(例えば、アシル基、アルデヒド基、アルコキシカルボニル等)、シアノ基などで置換されていても良い。
【0043】
一般式(S1)で表される溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等を挙げることができる。
【0044】
これらの中でも、R及びR’が無置換のアルキル基であることが好ましい。
一般式(S1)で表される溶剤としては、酢酸アルキルであることが好ましく、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチルであることがより好ましい。
【0045】
一般式(S1)で表される溶剤は他の有機溶剤1種以上と併用して用いても良い。この場合の併用溶剤としては、一般式(S1)で表される溶剤に分離することなく混合できれば特に制限は無く、一般式(S1)で表される溶剤同士を併用して用いても良いし、一般式(S1)で表される溶剤を他のエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤から選択される溶剤に混合して用いても良い。併用溶剤は1種以上用いることができるが、安定した性能を得る上では、1種であることが好ましい。併用溶剤1種を混合して用いる場合の、一般式(S1)で表される溶剤と併用溶剤の混合比は、質量比で通常20:80〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは60:40〜95:5、最も好ましくは60:40〜90:10である。
【0046】
R’’−C(=O)−O−R’’’−O−R’’’’ 一般式(S2)
【0047】
一般式(S2)に於いて、
R’’及びR’’’’は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。R’’及びR’’’’は、互いに結合して環を形成してもよい。
R’’及びR’’’’は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。R’’及びR’’’’についてのアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基の炭素数は、1〜15の範囲であることが好ましく、シクロアルキル基の炭素数は、3〜15であることが好ましい。
R’’’は、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。R’’’は、アルキレン基であることが好ましい。R’’’についてのアルキレン基の炭素数は、1〜10の範囲であることが好ましい。R’’’についてのシクロアルキレン基の炭素数は、3〜10の範囲であることが好ましい。
R’’及びR’’’’についてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基、R’’’についてのアルキレン基、シクロアルキレン基、及びR’’とR’’’’とが互いに結合して形成する環は、水酸基、カルボニル基を含む基(例えば、アシル基、アルデヒド基、アルコキシカルボニル等)、シアノ基などで置換されていても良い。
【0048】
一般式(S2)に於ける、R’’’についてのアルキレン基は、アルキレン鎖中にエーテル結合を有していてもよい。
【0049】
一般式(S2)で表される溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート等が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが好ましい。
これらの中でも、R’’及びR’’’’が無置換のアルキル基であり、R’’’が無置換のアルキレン基であることが好ましく、R’’及びR’’’’がメチル基及びエチル基のいずれかであることがより好ましく、R’’及びR’’’’がメチル基であることが更により好ましい。
【0050】
一般式(S2)で表される溶剤は他の有機溶剤1種以上と併用して用いても良い。この場合の併用溶剤としては、一般式(S2)で表される溶剤に分離することなく混合できれば特に制限は無く、一般式(S2)で表される溶剤同士を併用して用いても良いし、一般式(S2)で表される溶剤を他のエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤から選択される溶剤に混合して用いても良い。併用溶剤は1種以上用いることができるが、安定した性能を得る上では、1種であることが好ましい。併用溶剤1種を混合して用いる場合の、一般式(S2)で表される溶剤と併用溶剤の混合比は、質量比で通常20:80〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは60:40〜95:5、最も好ましくは60:40〜90:10である。
また、現像液として用いる有機溶剤としては、エーテル系溶剤も好適に挙げることができる。
用いることができるエーテル系溶剤としては、前述のエーテル系溶剤が挙げられ、このなかでも芳香環を一つ以上含むエーテル系溶剤が好まく、下記一般式(S3)で表される溶剤がより好ましく、最も好ましくはアニソールである。
【0052】
一般式(S3)に於いて、
R
Sは、アルキル基を表す。アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
本発明において、現像液の含水率は、通常10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、実質的に水分を含有しないことが最も好ましい。
【0053】
・界面活性剤
有機溶剤を含む現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量含有させることができる。
界面活性剤としては、後述する、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物に用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができる。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0054】
・塩基性化合物
有機溶剤を含む現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、後述する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が含みうる塩基性化合物におけるものと同様である。
【0055】
・現像方法
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは、20秒〜120秒である。
現像液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
【0056】
(5)リンス
本発明のパターン形成方法では、現像工程(4)の後に、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程(5)を含んでいてもよいが、スループット、リンス液使用量等の観点から、リンス工程を含まない方が好ましい。
【0057】
・リンス液
現像後に用いるリンス液の蒸気圧(混合溶媒である場合は全体としての蒸気圧)は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0058】
前記リンス液としては、種々の有機溶剤が用いられるが、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤又は水を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0059】
より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤又は炭化水素系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
特に好ましくは、一価のアルコール及び炭化水素系溶剤の群から選ばれる少なくとも1種以上を含有するリンス液を用いる。
【0060】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、4−メチル−2−ヘキサノール、4,5−ジチル−2−ヘキサール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール、8−メチル−2−ノナール、9−メチル−2−デカノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノールであり、最も好ましくは、1−ヘキサノール又は4−メチル−2−ペンタノールである。
炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0061】
前記リンス液は、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、デカンの群から選ばれる1種以上を含有することがより好ましい。
【0062】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。上記溶剤は水と混合しても良いが、リンス液中の含水率は通常60質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。含水率を60質量%以下にすることで、良好なリンス特性を得ることができる。
【0063】
リンス液には、界面活性剤を適当量含有させて使用することもできる。
界面活性剤としては、後述する、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物に用いられる界面活性剤と同様のものを用いることができ、その使用量はリンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0064】
・リンス方法
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。
洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転吐出法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転吐出方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
リンス時間には特に制限はないが、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは10秒〜180秒であり、最も好ましくは20秒〜120秒である。
リンス液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
【0065】
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
更に、現像処理又はリンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する溶剤を除去するために加熱処理を行うことができる。加熱温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。加熱温度は50℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上110℃以下が最も好ましい。加熱時間に関しては良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されないが、通常15秒〜300秒であり、好ましくは、15〜180秒である。
【0066】
・アルカリ現像
本発明のパターン形成方法は、更に、アルカリ水溶液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程(アルカリ現像工程)を含むことができる。これにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明において、有機溶剤現像工程(4)によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975号公報[0077]と同様のメカニズム)。
アルカリ現像は、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(4)の前後どちらでも行うことが出来るが、有機溶剤現像工程(4)の前に行うことがより好ましい。
【0067】
アルカリ現像に使用しうるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が望ましい。
アルカリ現像時間は特に制限はなく、通常は10秒〜300秒であり。好ましくは、20秒〜120秒である。
アルカリ現像液の温度は0℃〜50℃が好ましく、15℃〜35℃が更に好ましい。
【0068】
アルカリ水溶液による現像の後、リンス処理を行うことができる。リンス処理におけるリンス液としては、純水が好ましく、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
更に、現像処理又はリンス処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行うこともできる。
また、加熱により、残存している現像液又はリンス液を除去する処理を行うことができる。加熱温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。加熱温度は50℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上110℃以下が最も好ましい。加熱時間に関しては良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されないが、通常15秒〜300秒であり、好ましくは、15〜180秒である。
【0069】
本発明に係るレジスト組成物から形成された膜について、電子線又は極紫外線の照射時に、膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸媒体)を満たして露光(液浸露光)を行ってもよい。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸媒体としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。
【0070】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、更に屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0071】
水の電気抵抗は、18.3MΩcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D
2O)を用いてもよい。
【0072】
本発明の組成物による膜と液浸液との間には、膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、組成物膜上層部への塗布適性、液浸液難溶性である。トップコートは、組成物膜と混合せず、更に組成物膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0073】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程が膜の現像処理工程と同時にできるという点では、有機溶媒を含んだ現像液で剥離できることが好ましい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。液浸液として水を用いる場合には、トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
トップコートは、膜と混合せず、更に液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、本発明の組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。さらに、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【0074】
一方でEUV露光やEB露光の際、アウトガス抑止の目的、ブロッブ欠陥抑止の目的、逆テーパー形状改良による倒れ悪化、表面荒れによるLWR悪化等を防止する目的で、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜の上層にトップコート層を形成しても良い。以下、トップコート層の形成に用いられるトップコート組成物について説明する。
【0075】
本発明におけるトップコート組成物は溶媒が水又は有機溶剤であることが好ましい。より好ましくは水又はアルコール系溶剤である。
溶媒が有機溶剤である場合、レジスト膜を溶解しない溶剤であることが好ましい。使用しうる溶剤としては、アルコール系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤を用いることが好ましく、非フッ素系のアルコール系溶剤を用いることが更に好ましい。アルコール系溶剤としては、塗布性の観点からは1級のアルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数4〜8の1級アルコールである。炭素数4〜8の1級アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状のアルコールを用いることができるが、直鎖状、分岐状のアルコールが好ましい。具体的には、例えば1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノールおよび3−メチル−1−ブタノールなどが挙げられる。
【0076】
本発明におけるトップコート組成物の溶媒が水、アルコール系溶剤等である場合、水溶性樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂を含有することにより、現像液への溶解性の均一性をより高めることができると考えられる。好ましい水溶性樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルイミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオール、多糖類、等が挙げられる。特に好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールである。なお、水溶性樹脂としてはホモポリマーのみに限定されず、共重合体であっても構わない。例えば、上記で挙げたホモポリマーの繰り返し単位に相当するモノマーと、それ以外のモノマー単位を有する共重合体であってもよい。具体的には、アクリル酸―メタクリル酸共重合体、アクリル酸−ヒドロキシスチレン共重合体なども本発明に用いることができる。
また、トップコート組成物用の樹脂としては、特開2009−134177、特開2009−91798記載の酸性基を有する樹脂も、好ましく用いることができる。
水溶性樹脂の重量平均分子量は、特に制限はないが、2000から100万が好ましく、更に好ましくは5000から50万、特に好ましくは1万から10万である。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:THFあるいはN−メチル−2−ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0077】
トップコート組成物のpHは、特に制限はないが、好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜8、特に好ましくは1〜7である。
【0078】
トップコート組成物の溶剤が有機溶媒である場合、トップコート組成物は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の項において前述した疎水性樹脂(HR)のような疎水性の樹脂を含有していてもよい。疎水性樹脂としては、特開2008−209889号公報に記載の疎水性樹脂を用いることも好ましい。
【0079】
トップコート組成物中の樹脂の濃度は、好ましくは0.1から10質量%、さらに好ましくは0.2から5質量%、特に好ましくは0.3から3質量%である。
トップコート材料には樹脂以外の成分を含んでもよいが、トップコート組成物の固形分に占める樹脂の割合は、好ましくは80から100質量%であり、更に好ましくは90から100質量%、特に好ましくは95から100質量%である。
本発明におけるトップコート組成物の固形分濃度は、0.1〜10であることが好ましく、0.2〜6質量%であることがより好ましく、0.3〜5質量%であることが更に好ましい。固形分濃度を前記範囲とすることで、トップコート組成物をレジスト膜上に均一に塗布することができる。
【0080】
トップコート材料に添加し得る樹脂以外の成分としては、界面活性剤、光酸発生剤、塩基性化合物などが挙げられる。光酸発生剤及び塩基性化合物の具体例としては、上述した活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物及び塩基性化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0081】
界面活性剤を使用する場合、界面活性剤の使用量は、トップコート組成物の全量に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
トップコート組成物に界面活性剤を添加することによって、トップコート組成物を塗布する場合の塗布性が向上し得る。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性および両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、BASF社製のPlufaracシリーズ、青木油脂工業社製のELEBASEシリーズ、ファインサーフシリーズ、ブラウノンシリーズ、旭電化工業社製のアデカプルロニック P−103、花王ケミカル社製のエマルゲンシリーズ、アミートシリーズ、アミノーン PK−02S、エマノーン CH−25、レオドールシリーズ、AGCセイミケミカル社製のサーフロン S−141、第一工業製薬社製のノイゲンシリーズ、竹本油脂社製のニューカルゲンシリーズ、日信化学工業社製のDYNOL604、エンバイロジェムAD01、オルフィンEXPシリーズ、サーフィノールシリーズ、菱江化学社製のフタージェント 300、等を用いることができる。
アニオン性界面活性剤として、花王ケミカル社製のエマール20T、ポイズ 532A、TOHO社製のフォスファノール ML−200、クラリアントジャパン社製のEMULSOGENシリーズ、AGCセイミケミカル社製のサーフロンS−111N、サーフロンS−211、第一工業製薬社製のプライサーフシリーズ、竹本油脂社製のパイオニンシリーズ、日信化学工業社製のオルフィンPD−201、オルフィンPD−202、日本サーファクタント工業社製のAKYPO RLM45、ECT−3、ライオン社製のライポン、等を用いる事ができる。
カチオン性界面活性剤として、花王ケミカル社製のアセタミン24、アセタミン86等を用いる事ができる。
両性界面活性剤として、サーフロンS−131(AGCセイミケミカル社製)、エナジコールC−40H、リポミン LA (以上 花王ケミカル社製)等を用いる事ができる。
またこれらの界面活性剤を混合して用いることもできる。
【0082】
本発明のパターン形成方法では、基板上に上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成し得、該レジスト膜上に上記トップコート組成物を用いてトップコート層を形成し得る。このレジスト膜の膜厚は、好ましくは10〜100nmであり、トップコート層の膜厚は、好ましくは10〜200nm、更に好ましくは20〜100nm、特に好ましくは40〜80nmである。
基板上に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
例えば、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、レジスト膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。また、トップコート層の形成前にレジスト膜を乾燥することが好ましい。
次いで、得られたレジスト膜上に、上記レジスト膜の形成方法と同様の手段によりトップコート組成物を塗布、乾燥し、トップコート層を形成することができる。
トップコート層を上層に有するレジスト膜に、通常はマスクを通して、電子線(EB)、X線又はEUV光を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0083】
〔感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物〕
本発明に係る感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、ネガ型の現像(露光されると現像液に対して溶解性が減少し、露光部がパターンとして残り、未露光部が除去される現像)に用いられる。即ち、本発明に係る感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、有機溶剤を含む現像液を用いた現像に用いられる有機溶剤現像用の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物とすることができる。ここで、有機溶剤現像用とは、少なくとも、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程に供される用途を意味する。
このように、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法に供される感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物にも関する。
本発明の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、典型的にはレジスト組成物であり、ネガ型のレジスト組成物(即ち、有機溶剤現像用のレジスト組成物)であることが、特に高い効果を得ることができることから好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
【0084】
[1]樹脂(A)
樹脂(A)は、下記一般式(1−0)で表される繰り返し単位を有し、下記一般式(1−0)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して45モル%以上である。前記含有量が45モル%以上であることにより高いコントラスト(γ値が高い)を達成し、微細な孤立スペースパターン形成においては、解像力、スペースウィズスラフネスを向上させ、微細なホールパターンの形成においては、高解像力、良好なEL、局所的なパターン寸法の均一性を達成することができる。
下記一般式(1−0)で表される繰り返し単位は、極性基としてのカルボキシル基が酸の作用により分解し脱離する脱離基で保護された構造を有する繰り返し単位であり、これにより、樹脂(A)は、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂である。
【0086】
上記一般式(1−0)中、
R
1及びR
2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R
11及びR
12はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R
13は水素原子又はアルキル基を表す。R
11及びR
12は連結して環を形成してもよく、R
11及びR
13は連結して環を形成しても良い。
Raは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、L
1は単結合又は2価の連結基を表す。
【0087】
上記一般式(1−0)において、R
1、R
2、R
11〜R
13としてのアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基などが挙げられる。
R
1及びR
2についてのアルキル基としては、本発明の効果をより確実に達成する観点から、炭素数2〜10のアルキル基であることがより好ましく、R
1及びR
2のいずれもがエチル基であることが更に好ましい。
R
11及びR
12についてのアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
R
13としては水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
R
11及びR
12は連結してアルキレン基を形成し環を形成していることが特に好ましく、R
11及びR
13は連結してアルキレン基を形成し環を形成しても良い。
R
11及びR
12が連結して形成する環としては、3〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
R
11及びR
13が連結して形成する環としては、3〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
R
11及びR
13が連結して環を形成するときは、R
11及びR
12が連結して環を形成するときであることが好ましい。
R
11及びR
12(ないしR
11及びR
13)が連結して形成する環としては、一般式(1−1)のXとして後述する脂環式基であることが更に好ましい。
【0088】
R
1、R
2、R
11〜R
13としてのアルキル基、R
11及びR
12(ないしR
11及びR
13)が連結して形成する環は、置換基を更に有していてもよい。
R
1、R
2、R
11〜R
13としてのアルキル基、R
11及びR
12(ないしR
11及びR
13)が連結して形成する環が更に有し得る置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基などが挙げられる。上記置換基同士が互いに結合して環を形成してもよく、上記置換基同士が互いに結合して環を形成するときの環は、炭素数3〜10のシクロアルキル基又はフェニル基が挙げられる。
【0089】
Raについてのアルキル基は置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
Raのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Raのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
Raとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)であることが好ましく、樹脂(A)のガラス転移点(Tg)を向上させ、解像力、スペースウィズスラフネスを向上させる観点からメチル基であることが特に好ましい。
ただし、L
1がフェニレン基の場合、Raは水素原子であることも好ましい。
【0090】
L
1で表される2価の連結基としては、アルキレン基、2価の芳香環基、−COO−L
11−、−O−L
11−、これらの2つ以上を組み合わせて形成される基等が挙げられる。ここで、L
11はアルキレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、アルキレン基と2価の芳香環基を組み合わせた基を表す。
【0091】
L
1及びL
11についてのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基が特に好ましい。
【0092】
L
11についてのシクロアルキレン基は、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であることが好ましく、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、ノルボルニレン基又はアダマンチレン基が挙げられる。
L
11についてのシクロアルキレン基は、環を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)は、カルボニル炭素であってもよく、酸素原子等のヘテロ原子であってもよく、エステル結合を含有しラクトン環を形成していても良い。
【0093】
L
1及びL
11についての2価の芳香環基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基等のフェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0094】
L
1は、単結合、2価の芳香環基、ノルボルニレン基を有する2価の基又はアダマンチレン基を有する2価の基であることが好ましく、単結合であることが特に好ましい。
L
1についての2価の連結基として好ましい具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
より高いコントラスト(γ値が高い)を達成し、微細な孤立スペースパターン形成においては、解像力、スペースウィズスラフネスをより向上させ、微細なホールパターンの形成においては、高解像力、良好なEL、局所的なパターン寸法の均一性をより確実に達成することができる観点から、前記一般式(1−0)で表される繰り返し単位が、下記一般式(1―1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0098】
上記一般式(1−1)中、
Xは脂環式基を表す。
R
1、R
2、Ra及びL
1は、それぞれ、一般式(1−0)におけるR
1、R
2、Ra及びL
1と同義であり、具体例、好ましい例についても一般式(1−0)におけるR
1、R
2、Ra及びL
1と同様である。
【0099】
Xとしての脂環式基は、単環、多環、有橋式であってもよく、好ましくは炭素数3〜25の脂環式基を表す。
また、脂環式基は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、R
1、R
2、R
11〜R
13としてのアルキル基、R
11及びR
12(ないしR
11及びR
13)が連結して形成する環が有し得る置換基として前述した置換基と同様のもの、及びアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、パーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)等)等を挙げることができる。
Xは、好ましくは炭素数3〜25の脂環式基を表し、より好ましくは炭素数5〜20の脂環式基を表し、特に好ましくは炭素数5〜15のシクロアルキル基である。
また、Xは3〜8員環の脂環式基又はその縮合環基であることが好ましく、5又は6員環又はその縮合環基であることが更に好ましい。
以下に、Xとしての脂環基の構造例を示す。
【0103】
上記脂環式基の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基であることがより好ましく、シクロヘキシル基、シクロペンチル基であることが更に好ましく、シクロヘキシル基であることが特に好ましい。
【0104】
以下に、上記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
樹脂(A)における一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、高いコントラスト(γ値が高い)をより確実にし、微細な孤立スペースパターン形成においては、解像力、スペースウィズスラフネスを向上させ、微細なホールパターンの形成においては、高解像力、良好なEL、局所的なパターン寸法の均一性をより確実に達成する観点から、前記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して45モル以上であり、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
上限値としては、特に制限はないが、後述の一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量を確保し、本発明の効果を確実に達成する観点から85モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましく、75モル%以下であることが更に好ましい。
【0112】
樹脂(A)は、下記一般式(1−2)で表される繰り返し単位を有する。
【0114】
上記一般式(1−2)中、
Rbは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
R
3は置換基を表す。n
1は1又は2を、n
2は0〜4の整数を表す。n
2が2〜4の整数のとき、複数のR
3は互いに連結して環を形成していてもよい。
L
2は、単結合、−COO−、又は−CONR
4−を表し、R
4は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0115】
Rbについてのアルキル基は置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
Rbのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rbのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rbとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)であり、樹脂(A)の解重合を抑える観点から水素原子であることが特に好ましい。
【0116】
R
3についての置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。
R
3についてのアルキル基としては、好ましくは置換基を有していても良いメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
R
3についてのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等であることが好ましい。R
4についてのアリール基としてはフェニル基等が好ましい。
複数のR
3は互いに連結して形成する環としては、5〜7員環が挙げられ、5又は6員環であることが好ましく、芳香環であってもよい。
n
1は1であることが好ましい。n
2は0であることが好ましい。
L
2により表わされる−CONR
4−(R
4は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR
4のアルキル基としては、R
3についてのアルキル基と同様のものが挙げられる。
L
2としては、単結合、又は−COO−が好ましく、単結合がより好ましい。
【0117】
以下に、一般式(1−2)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0120】
樹脂(A)は、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を2種類以上含んでいてもよい。
【0121】
樹脂(A)における一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、高い解像力、感度及びドライエッチング耐性、並びに良好なスペースウィズスラフネスをより確実に達成する観点から、前記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上55モル%以下であることが更に好ましく、20モル%以上45モル%以下であることが特に好ましく、30モル%以上45モル%以下であることが最も好ましい。
【0122】
樹脂(A)は、前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位以外にも酸の作用により分解する基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する繰り返し単位を有していてもよい。
併用する好ましい酸分解性基としては、カルボン酸3級アルキルエステル、カルボン酸2級ベンジルエステル、フェノール性水酸基のアセタール保護、フェノール性水酸基のt−ブトキシカルボニル基による保護ないし3級エーテル保護、アルコール性水酸基のアセタール保護、アルコール性水酸基のt−ブトキシカルボニル基による保護ないし3級エーテル保護が挙げられ、それらを混合して用いても良い。なお、好ましい酸分解性基の具体例としては特開2010−217884号公報に記載のものが挙げられる。
【0123】
上記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位以外の酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0124】
一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位以外の酸分解性基を有する場合、その繰り返し単位の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、前記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、3モル%以上25モル%以下であることがより好ましく、5モル%以上20モル%以下であることが更に好ましい。
【0125】
樹脂(A)は、下記一般式(4)により表される繰り返し単位を更に含んでも良い。
【0127】
R
41は、水素原子又はメチル基を表す。L
41は、単結合又は2価の連結基を表す。L
42は、2価の連結基を表す。Sは、電子線又は極紫外線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0128】
以下に、一般式(4)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0141】
樹脂(A)において、一般式(4)で表される繰り返し単位を含む場合、その含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、1〜40モル%の範囲が好ましく、2〜30モル%の範囲がより好ましく、5〜25モル%の範囲が特に好ましい。
【0142】
樹脂(A)は、一般式(1−2)で表される繰り返し単位とは異なる、極性基を有する繰り返し単位(b)を含んでいてもよい。繰り返し単位(b’)を含むことにより、例えば、樹脂を含んだ組成物の感度を向上させることができる。繰り返し単位(b)は、非酸分解性の繰り返し単位であること(すなわち、酸分解性基を有さないこと)が好ましい。
繰り返し単位(b)が含み得る「極性基」としては、例えば、以下の(1)〜(4)が挙げられる。なお、以下において、「電気陰性度」とは、Paulingによる値を意味している。
【0143】
(1)酸素原子と、酸素原子との電気陰性度の差が1.1以上である原子とが、単結合により結合した構造を含む官能基
このような極性基としては、例えば、ヒドロキシ基などのO−Hにより表される構造を含んだ基が挙げられる。
(2)窒素原子と、窒素原子との電気陰性度の差が0.6以上である原子とが、単結合により結合した構造を含む官能基
このような極性基としては、例えば、アミノ基などのN−Hにより表される構造を含んだ基が挙げられる。
(3)電気陰性度が0.5以上異なる2つの原子が二重結合又は三重結合により結合した構造を含む官能基
このような極性基としては、例えば、C≡N、C=O、N=O、S=O又はC=Nにより表される構造を含んだ基が挙げられる。
(4)イオン性部位を有する官能基
このような極性基としては、例えば、N
+又はS
+により表される部位を有する基が挙げられる。
以下に、「極性基」が含み得る部分構造の具体例を挙げる。
【0145】
繰り返し単位(b)が含み得る極性基は、ヒドロキシル基、シアノ基、ラクトン基、スルトン基、カルボン酸基、スルホン酸基、アミド基、スルホンアミド基、アンモニウム基、スルホニウム基、カーボネート基(−O−CO−O−)(例えば、環状炭酸エステル構造等)及びこれらの2つ以上を組み合わせてなる基より選択されることが好ましく、アルコール性ヒドロキシ基、シアノ基、ラクトン基、スルトン基、又は、シアノラクトン構造を含んだ基であることが特に好ましい。
樹脂にアルコール性ヒドロキシ基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、樹脂を含んだ組成物の露光ラチチュード(EL)を更に向上させることができる。
樹脂にシアノ基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、樹脂を含んだ組成物の感度を更に向上させることができる。
樹脂にラクトン基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることができる。また、こうすると、樹脂を含んだ組成物のドライエッチング耐性、塗布性、及び基板との密着性を更に向上させることも可能となる。
樹脂にシアノ基を有するラクトン構造を含んだ基を備えた繰り返し単位を更に含有させると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることができる。また、こうすると、樹脂を含んだ組成物の感度、ドライエッチング耐性、塗布性、及び基板との密着性を更に向上させることも可能となる。加えて、こうすると、シアノ基及びラクトン基のそれぞれに起因した機能を単一の繰り返し単位に担わせることが可能となり、樹脂の設計の自由度を更に増大させることも可能となる。
【0146】
極性基を有する繰り返し単位は、極性基としてラクトン構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては下記一般式(2)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0148】
上記一般式(2)中、
L
3、L
4は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、Yはラクトン構造を形成しうる原子団を表し、Rcは水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
L
3、L
4についての2価の連結基としては、置換基を有していてもよく、アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキル構造を有する2価の連結基、アリーレン基(例えば、フェニレン基)、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基が挙げられ、L
1についての2価の連結基の好ましい例と同様の好ましい例が挙げられる。
L
3、L
4は、単結合であることが特に好ましい。
ラクトン構造を形成しうる原子団Yが形成するラクトン構造としては、後述の一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造が挙げられる。
Rcについてのアルキル基は置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
Rcのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Rcのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。Rcとして、好ましくは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基)であり、水素原子、メチル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
ラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位であることが更に好ましい。
【0150】
一般式(AII)中、
Rcは、一般式(2)におけるRcと同義である。
Abは、単結合、アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキル構造を有する2価の連結基、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。Abは、好ましくは、単結合、−Ab
1−CO
2−で表される2価の連結基である。
Ab
1は、直鎖又は分岐アルキレン基、単環又は多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、ラクトン構造を有する基を表す。
【0151】
ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−8)、(LC1−13)、(LC1−14)である。
【0153】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb
2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb
2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7の1価のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n
2は、0〜4の整数を表す。n
2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb
2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb
2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0154】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0155】
樹脂(A)はラクトン構造を有する繰り返し単位を含有しても含有しなくてもよいが、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)中の前記繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、1〜40モル%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜30モル%の範囲であり、更に好ましくは8〜20モル%の範囲である。
本発明において、樹脂(A)が前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位、前記一般式(1−2)で表される繰り返し単位及び前記一般式(2)で表される繰り返し単位を含有し、
前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して45〜85モル%であり、
前記一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して10〜45モル%であり、かつ
前記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して1〜40モル%であることが好ましい。
【0156】
前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して45〜85モル%であり、
前記一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して15〜45モル%であり、かつ
前記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して1〜40モル%であることがより好ましい。
【0157】
前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して55〜80モル%であり、
前記一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して20〜45モル%であり、かつ
前記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して5〜30モル%であることが更に好ましい。
【0158】
前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して60〜80モル%であり、
前記一般式(1−2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して30〜45モル%であり、かつ
前記一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して8〜20モル%であることが特に好ましい。
【0159】
以下に、樹脂(A)中のラクトン構造を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、Rxは、H,CH
3,CH
2OH,又はCF
3を表す。
【0161】
【化40】
また、樹脂(A)が有するスルトン基としては、下記一般式(SL−1)、(SL−2)が好ましい。式中のRb
2、n
2は、上述した一般式(LC1−1)〜(LC1−17)と同義である。
【0163】
樹脂(A)が有するスルトン基を含む繰り返し単位としては、前述したラクトン基を有する繰り返し単位におけるラクトン基を、スルトン基に置換したものが好ましい。
【0164】
繰り返し単位(b)が有する極性基がアルコール性ヒドロキシ基である場合、下記一般式(I−1H)乃至(I−10H)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることが好ましい。特には、下記一般式(I−1H)乃至(I−3H)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることがより好ましく、下記一般式(I−1H)により表されることが更に好ましい。
【0166】
式中、
Raは、各々独立に、水素原子、アルキル基又は−CH
2−O−Ra
2により表される基を表す。ここで、Ra
2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
R
1は、(n+1)価の有機基を表す。
R
2は、m≧2の場合は各々独立に、単結合又は(n+1)価の有機基を表す。
Wは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
n及びmは、1以上の整数を表す。なお、一般式(I−2)、(I−3)又は(I−8)においてR
2が単結合を表す場合、nは1である。
lは、0以上の整数を表す。
L
1は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−O−、−Ar−、−SO
3−又は−SO
2NH−により表される連結基を表す。ここで、Arは、2価の芳香環基を表す。
Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
R
0は、水素原子又は有機基を表す。
L
3は、(m+2)価の連結基を表す。
R
Lは、m≧2の場合は各々独立に、(n+1)価の連結基を表す。
R
Sは、p≧2の場合は各々独立に、置換基を表す。p≧2の場合、複数のR
Sは、互いに結合して環を形成していてもよい。
pは、0〜3の整数を表す。
【0167】
Raは、水素原子、アルキル基又は−CH
2−O−Ra
2により表される基を表す。Raは、水素原子又は炭素数が1〜10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
Wは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Wは、メチレン基又は酸素原子であることが好ましい。
R
1は、(n+1)価の有機基を表す。R
1は、好ましくは、非芳香族性の炭化水素基である。この場合、R
1は、鎖状炭化水素基であってもよく、脂環状炭化水素基であってもよい。R
1は、より好ましくは、脂環状炭化水素基である。
R
2は、単結合又は(n+1)価の有機基を表す。R
2は、好ましくは、単結合又は非芳香族性の炭化水素基である。この場合、R
2は、鎖状炭化水素基であってもよく、脂環状炭化水素基であってもよい。
R
1及び/又はR
2が鎖状炭化水素基である場合、この鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、この鎖状炭化水素基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。例えば、R
1及び/又はR
2がアルキレン基である場合、R
1及び/又はR
2は、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基又はsec−ブチレン基であることが好ましい。
R
1及び/又はR
2が脂環状炭化水素基である場合、この脂環状炭化水素基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。この脂環状炭化水素基は、例えば、モノシクロ、ビシクロ、トリシクロ又はテトラシクロ構造を備えている。この脂環状炭化水素基の炭素数は、通常は5以上であり、6〜30であることが好ましく、7〜25であることがより好ましい。
【0168】
この脂環状炭化水素基としては、例えば、以下に列挙する部分構造を備えたものが挙げられる。これら部分構造の各々は、置換基を有していてもよい。また、これら部分構造の各々において、メチレン基(−CH
2−)は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基〔−C(=O)−〕、スルホニル基〔−S(=O)
2−〕、スルフィニル基〔−S(=O)−〕、又はイミノ基〔−N(R)−〕(Rは水素原子若しくはアルキル基)によって置換されていてもよい。
【0170】
例えば、R
1及び/又はR
2がシクロアルキレン基である場合、R
1及び/又はR
2は、アダマンチレン基、ノルアダマンチレン基、デカヒドロナフチレン基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、ノルボルニレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基、又はシクロドデカニレン基であることが好ましく、アダマンチレン基、ノルボルニレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、テトラシクロドデカニレン基又はトリシクロデカニレン基であることがより好ましい。
R
1及び/又はR
2の非芳香族性の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、カルボキシ基、及び炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、及びアルコキシ基が挙げられる。
L
1は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−O−、−Ar−、−SO
3−又は−SO
2NH−により表される連結基を表す。ここで、Arは、2価の芳香環基を表す。L
1は、好ましくは−COO−、−CONH−又は−Ar−により表される連結基であり、より好ましくは−COO−又は−CONH−により表される連結基である。
Rは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0171】
R
0は、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキニル基、及びアルケニル基が挙げられる。R
0は、好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは、水素原子又はメチル基である。
L
3は、(m+2)価の連結基を表す。即ち、L
3は、3価以上の連結基を表す。このような連結基としては、例えば、後掲の具体例における対応した基が挙げられる。
R
Lは、(n+1)価の連結基を表す。即ち、R
Lは、2価以上の連結基を表す。このような連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基及び後掲の具体例における対応した基が挙げられる。R
Lは、互いに結合して又は下記R
Sと結合して、環構造を形成していてもよい。
R
Sは、置換基を表す。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
nは、1以上の整数である。nは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。また、nを2以上とすると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることが可能となる。従って、こうすると、限界解像力及びラフネス特性を更に向上させることができる。
mは、1以上の整数である。mは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
lは、0以上の整数である。lは、0又は1であることが好ましい。
pは、0〜3の整数である。
【0172】
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を備えた繰り返し単位と、上記一般式(I−1H)乃至(I−10H)からなる群より選択される少なくとも1つにより表される繰り返し単位とを併用すると、例えば、アルコール性ヒドロキシ基による酸拡散の抑制と、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基による感度の増大とにより、他の性能を劣化させることなしに、露光ラチチュード(EL)を改良することが可能となる。
アルコール性ヒドロキシ基を有する場合、その繰り返し単位の含有率は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜60mol%が好ましく、より好ましくは3〜50mol%、更に好ましくは5〜40mol%である。
以下に、一般式(I−1H)乃至(I−10H)の何れかにより表される繰り返し単位の具体例を示す。なお、具体例中、Raは、一般式(I−1H)乃至(I−10H)におけるものと同義である。
【0174】
繰り返し単位(b)が有する極性基がアルコール性ヒドロキシ基又はシアノ基である場合、好ましい繰り返し単位の一つの態様として、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが挙げられる。このとき、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造が好ましい。これにより基板密着性、及び現像液親和性が向上する。
【0176】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
R
2c〜R
4cは、各々独立に、水素原子又は水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R
2c〜R
4cの内の少なくとも1つは、水酸基を表す。好ましくは、R
2c〜R
4cの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、R
2c〜R
4cの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0177】
一般式(VIIa)〜(VIIc)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIIc)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0179】
一般式(AIIa)〜(AIIc)に於いて、
R
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
【0180】
R
2c〜R
4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、R
2c〜R
4cと同義である。
【0181】
樹脂(A)は水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含有していても含有していなくてもよいが、含有する場合、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜60モル%が好ましく、より好ましくは3〜50モル%、更に好ましくは5〜40モル%である。
【0182】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0184】
また、繰り返し単位(b)が有しうる極性基が酸性基であることも特に好ましい態様の一つである。好ましい酸性基としてはフェノール性ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、フッ素化アルコール基(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基が挙げられる。なかでも繰り返し単位(b)はカルボキシル基を有する繰り返し単位であることがより好ましい。酸性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。酸性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接酸性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖に酸性基が結合している繰り返し単位、更には酸性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入のいずれも好ましい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0185】
繰り返し単位(b)が有しうる酸性基は、芳香環を含んでいてもいなくてもよい。繰り返し単位(b)が酸性基を有する場合、酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。樹脂(A)が酸性基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)における酸性基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
酸性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH
3、CH
2OH又はCF
3を表す。
【0187】
また、極性基を有する繰り返し単位が有しうる極性基が環状炭酸エステル構造等のカーボネート基であってもよく、樹脂(A)は環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0189】
一般式(A−1)中、R
A1は、水素原子又はアルキル基を表す。
R
A2は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の−O−C(=O)−O−で表される基と共に単環又は多環構造を形成する
原子団を表す。
nは0以上の整数を表す。
【0190】
一般式(A−1)について詳細に説明する。
R
A1で表されるアルキル基は、フッ素原子等の置換基を有していてもよい。R
A1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
R
A2で表される置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基である。好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数3〜5の分岐状アルキル基等を挙げることができる。アルキル基はヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。
nは置換基数を表す0以上の整数である。nは、例えば、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0である。
【0191】
Aにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
本発明の一形態において、Aは、単結合、アルキレン基であることが好ましい。
【0192】
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む単環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルにおいて、n
A=2〜4である5〜7員環が挙げられ、5員環又は6員環(n
A=2又は3)であることが好ましく、5員環(n
A=2)であることがより好ましい。
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む多環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルが1又は2以上の他の環構造と共に縮合環を形成している構造や、スピロ環を形成している構造が挙げられる。縮合環又はスピロ環を形成し得る「他の環構造」としては、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、複素環であってもよい。
【0194】
前記一般式(A−1)で表される繰り返し単位に対応する単量体は、例えば、Tetrahedron Letters,Vol.27,No.32 p.3741(1986)、Organic Letters,Vol.4,No.15 p.2561(2002)等に記載された、従来公知の方法により、合成することができる。
【0195】
樹脂(A)には、一般式(A−1)で表される繰り返し単位のうちの1種が単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0196】
以下に、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の具体例中のR
A1は、一般式(A−1)におけるR
A1と同義である。
【0198】
樹脂(A)は、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を1種単独で含有しても、2種以上を含有しても良い。
樹脂(A)が環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を含有する場合、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜55モル%、更に好ましくは10〜50モル%である。
【0199】
樹脂(A)は下記一般式(c1)で表される複数の芳香環を有する繰り返し単位(c)を有していても良い。
【0201】
一般式(c1)中、
R
3は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基を表し;
Yは、単結合又は2価の連結基を表し;
Zは、単結合又は2価の連結基を表し;
Arは、芳香環基を表し;
pは1以上の整数を表す。
R
3としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、i−ブチル基が挙げられ、更に置換基を有していても良く、好ましい置換基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基等があげられ、中でも置換基を有するアルキル基としては、CF
3基、アルキルオキシカルボニルメチル基、アルキルカルボニルオキシメチル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基等が好ましい。
【0202】
R
3としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
Yは、単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては、例えば、エーテル基(酸素原子)、チオエーテル基(硫黄原子)、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルフィド基、スルホン基、−COO−、−CONH−、−SO
2NH−、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−OCF
2O−、−CF
2OCF
2−、−SS−、−CH
2SO
2CH
2−、−CH
2COCH
2−、−COCF
2CO−、−COCO−、−OCOO−、−OSO
2O−、アミノ基(窒素原子)、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、若しくはこれらの組み合わせからなる基があげられる。Yは、炭素数15以下が好ましく、炭素数10以下がより好ましい。
【0203】
Yは、好ましくは単結合、−COO−基、−COS−基、−CONH−基、より好ましくは−COO−基、−CONH−基であり、特に好ましくは−COO−基である。
Zは、単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては、例えば、エーテル基(酸素原子)、チオエーテル基(硫黄原子)、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルフィド基、スルホン基、−COO−、−CONH−、−SO
2NH−、アミノ基(窒素原子)、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基、若しくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
Zは、好ましくは単結合、エーテル基、カルボニル基、−COO−であり、更に好ましくは単結合、エーテル基であり、特に好ましくは単結合である。
【0204】
Arは、芳香環基を表し、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、キノリニル基、フラニル基、チオフェニル基、フルオレニル−9−オン−イル基、アントラキノニル基、フェナントラキノニル基、ピロール基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。これらの芳香環基は更に置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、フェニル基等のアリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、ヘテロ環残基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基が、アウトバンド光に起因した露光ラチチュードやパターン形状の悪化を抑制する観点から好ましい。
pは、1以上の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。
【0205】
繰り返し単位(c)として更に好ましいのは以下の式(c2)で表される繰り返し単位である。
【0207】
一般式(c2)中、R
3は、水素原子又はアルキル基を表す。R
3としてのアルキル基として好ましいものは、一般式(c1)と同様である。
【0208】
ここで、極紫外線(EUV光)露光に関しては、波長100〜400nmの紫外線領域に発生する漏れ光(アウトオブバンド光)が表面ラフネスを悪化させ、結果、パターン間におけるブリッジや、パターンの断線によって、解像性及びスペースウィズスラフネス性能が低下する傾向となる。
しかしながら、繰り返し単位(c)における芳香環は、上記アウトオブバンド光を吸収可能な内部フィルターとして機能する。よって、高解像及び低スペースウィズスラフネスの観点から、樹脂(A)は、繰り返し単位(c)を含有することが好ましい。
ここで、繰り返し単位(c)は、高解像性を得る観点から、フェノール性水酸基(芳香環上に直接結合した水酸基)を有さないことが好ましい。
【0209】
繰り返し単位(c)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0213】
樹脂(A)は、繰り返し単位(c)を含有してもしなくても良いが、含有する場合、繰り返し単位(c)の含有率は、樹脂(A)全繰り返し単位に対して、1〜30モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20モル%の範囲であり、更に好ましくは1〜15モル%の範囲である。樹脂(A)に含まれる繰り返し単位(c)は2種類以上を組み合わせて含んでもよい。
【0214】
本発明における樹脂(A)は、前記繰り返し単位(b)、(c)以外の繰り返し単位を適宜有していてもよい。そのような繰り返し単位の一例として、更に極性基(例えば、前記酸基、水酸基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。これにより、有機溶剤を含む現像液を用いた現像の際に樹脂の溶解性を適切に調整することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0216】
一般式(IV)中、R
5は少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH
2−O−Ra
2基を表す。式中、Ra
2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0217】
R
5が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3〜7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0218】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.1
2,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0219】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0220】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基を挙げることができる。
【0221】
上記水素原子の置換基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0222】
樹脂(A)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜20モル%が好ましく、より好ましくは5〜15モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、又はCF
3を表す。
【0224】
また、樹脂(A)は、Tgの向上やドライエッジング耐性の向上、先述のアウトオブバンド光の内部フィルター等の効果を鑑み、下記のモノマー成分を含んでも良い。
【0226】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、レジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0227】
本発明の樹脂(A)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。
樹脂(A)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
例えば、一般的合成方法としては、不飽和モノマー及び重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤に不飽和モノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0228】
重合に使用される溶媒としては、例えば、後述の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤等を挙げることができ、より好ましくは本発明の組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤(例えば、アルキルメルカプタンなど)の存在下で重合を行ってもよい。
【0229】
反応の濃度は5〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
反応時間は、通常1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間、更に好ましくは1〜12時間である。
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。例えば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0230】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0231】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0232】
本発明に係わる樹脂(A)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜60000の範囲であることがより好ましく、2000〜30000の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量を1000〜100000の範囲とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(キャリア:THFあるいはN−メチル−2−ピロリドン(NMP))によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0233】
また分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜5.00、より好ましくは1.03〜3.50であり、更に好ましくは、1.05〜2.50である。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0234】
本発明における樹脂(A)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂(A)の含有率は、本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物中の全固形分を基準にして、20〜99質量%が好ましく、30〜89質量%がより好ましく、40〜79質量%が特に好ましい。
【0235】
以下に、樹脂(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記ポリマー構造の各繰り返し単位の組成比はモル比である。
【0245】
[2]樹脂(A)とは異なる、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂(A’)
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、樹脂(A)とは異なる、酸の作用により有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂(以下、樹脂(A’)とも言う)を含有していても良い。
【0246】
樹脂(A’)は、極性基が酸の作用により分解し脱離する脱離基で保護された構造(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂である。
樹脂(A’)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0247】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、スルホン酸基、チオール基等を挙げることができる。
【0248】
酸の作用により脱離する基としては、例えば、−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
36)(R
37)(OR
39)、−C(=O)−O−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
01)(R
02)(OR
39)、−C(R
01)(R
02)−C(=O)−O−C(R
36)(R
37)(R
38)等を挙げることができる。
【0249】
式中、R
36〜R
39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R
36とR
37とは、互いに結合して環を形成してもよい。R
01〜R
02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0250】
樹脂(A’)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。
【0251】
樹脂(A’)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは2,000〜20,000、更により好ましくは3,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜10,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
【0252】
分散度(分子量分布)は、通常1〜3であり、好ましくは1〜2.6、更に好ましくは1〜2、特に好ましくは1.4〜1.7の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0253】
樹脂(A’)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、樹脂(A’)を含有してもしなくても良いが、含有する場合、樹脂(A’)の添加量は、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の全固形分に対し、通常1〜50質量%であり、好ましくは1〜30質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
【0254】
樹脂(A’)としては、特開2010−217884号公報の段落[0059]〜[0169]に記載されているもの、特願2011−217048号の段落[0214]〜[0594]に記載されているものが挙げられる。
【0255】
[3]電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物(B)
本発明の組成物は、電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」又は「光酸発生剤」ともいう)を含有することが好ましい。
酸発生剤としては、公知のものであれば特に限定されないが電子線又は極紫外線の照射により、有機酸、例えば、スルホン酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド、又はトリス(アルキルスルホニル)メチドの少なくともいずれかを発生する化合物が好ましい。
電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物(B)は、低分子化合物の形態であっても良く、重合体の一部に組み込まれた形態であっても良い。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用しても良い。
電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物(B)が、低分子化合物の形態である場合、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物(B)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した酸分解性樹脂の一部に組み込まれても良く、酸分解性樹脂とは異なる樹脂に組み込まれても良い。
より好ましくは下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0257】
上記一般式(ZI)において、
R
201、R
202及びR
203は、各々独立に、有機基を表す。
R
201、R
202及びR
203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R
201〜R
203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R
201〜R
203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
Z
−は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
【0258】
非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
【0259】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
【0260】
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0261】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0262】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
【0263】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0264】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
また、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、互いに結合して環構造を形成してもよい。これにより、酸強度が増加する。
【0265】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐(例えば、PF
6−)、弗素化硼素(例えば、BF
4−)、弗素化アンチモン(例えば、SbF
6−)等を挙げることができる。
【0266】
非求核性アニオンとしては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0267】
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0268】
R
201、R
202及びR
203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。
R
201、R
202及びR
203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。R
201〜R
203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基等を挙げることができる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0269】
また、R
201〜R
203のうち2つが結合して環構造を形成する場合、以下の一般式(A1)で表される構造であることが好ましい。
【0271】
一般式(A1)中、
R
1a〜R
13aは、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。
R
1a〜R
13aのうち、1〜3つが水素原子でないことが好ましく、R
9a〜R
13aのいずれか1つが水素原子でないことがより好ましい。
Zaは、単結合又は2価の連結基である。
X
−は、一般式(ZI)におけるZ
−と同義である。
【0272】
R
1a〜R
13aが水素原子でない場合の具体例としては、ハロゲン原子、直鎖、分岐、環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が例として挙げられる。
R
1a〜R
13aが水素原子でない場合としては、水酸基で置換された直鎖、分岐、環状のアルキル基であることが好ましい。
【0273】
Zaの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミノ基、ジスルフィド基、−(CH
2)
n−CO−、−(CH
2)
n−SO
2−、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基等が挙げられる(nは1〜3の整数)。
【0274】
なお、R
201、R
202及びR
203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046、0047、0048、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0275】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
R
204〜R
207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0276】
R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR
201〜R
203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR
201〜R
203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0277】
Z
−は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZ
−の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0278】
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物も挙げられる。
【0280】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar
3及びAr
4は、各々独立に、アリール基を表す。
R
208、R
209及びR
210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
Ar
3、Ar
4、R
208、R
209及びR
210のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI)におけるR
201、R
202及びR
203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
R
208、R
209及びR
210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI)におけるR
201、R
202及びR
203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0281】
電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物(B)は、樹脂(A)が有する前記一般式(1−0)又は(1−1)で表される繰り返し単位の酸分解反応効率の観点から、下記一般式(3−1)又は(3−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0284】
上記一般式(3−1)中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR
11、R
12は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
L
11は2価の連結基を表し、複数存在する場合のL
11は同一でも異なっていてもよい。
Aは有機基を表す。M1
+はカチオンを表す。xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
上記一般式(3−2)中、
Rc
1及びRc
2は、それぞれ有機基を表し、Rc
1及びRc
2は互いに結合して環を形成していてもよい。M2
+はカチオンを表す。
【0285】
一般式(3−1)について、更に詳細に説明する。
Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜4である。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfの具体的としては、フッ素原子、CF
3、C
2F
5、C
3F
7、C
4F
9、CH
2CF
3、CH
2CH
2CF
3、CH
2C
2F
5、CH
2CH
2C
2F
5、CH
2C
3F
7、CH
2CH
2C
3F
7、CH
2C
4F
9、CH
2CH
2C
4F
9が挙げられ、中でもフッ素原子、CF
3が好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0286】
R
11、R
12のアルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。更に好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R
11、R
12の置換基を有するアルキル基の具体例としては、CF
3、C
2F
5、C
3F
7、C
4F
9、C
5F
11、C
6F
13、C
7F
15、C
8F
17、CH
2CF
3、CH
2CH
2CF
3、CH
2C
2F
5、CH
2CH
2C
2F
5、CH
2C
3F
7、CH
2CH
2C
3F
7、CH
2C
4F
9、CH
2CH
2C
4F
9が挙げられ、中でもCF
3が好ましい。
R
11、R
12としては、好ましくはフッ素原子又はCF
3である。
【0287】
xは1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
yは0〜4が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。
zは0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
L
11の2価の連結基としては特に限定されず、―COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO―、―SO
2−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの複数が連結した連結基などを挙げることができ、総炭素数12以下の連結基が好ましい。このなかでも―COO−、−OCO−、−CO−、−O−が好ましく、―COO−、−OCO−がより好ましい。
【0288】
Aの有機基としては、脂環基、アリール基、複素環基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含む)、アルキル基等が挙げられる。Aの有機基としては、環状の有機基であることが好ましく、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環基(芳香族性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含む)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等の炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、露光後加熱工程での膜中拡散性を抑制でき、MEEF向上の観点から好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環由来のものが挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環由来のものが好ましい。
【0289】
また、環状の有機基としては、ラクトン構造も挙げることができ、具体例としては、前述の樹脂(A)が有していてもよい一般式(LC1−1)〜(LC1−17)で表されるラクトン構造を挙げることができる。
【0290】
上記Aの有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
特に、Aがアリール基のとき、前記アリール基が置換基としてシクロアルキル基又はアルキル基を1〜3個有していることが好ましく、前記アリール基が置換基としてシクロアルキル基を1〜3個有していることがより好ましく、前記アリール基が置換基としてシクロヘキシル基を1〜3個有していることが更に好ましい。
カチオンM1
+としては、前記一般式(ZI)、(ZII)、(AI)におけるカチオン部分等が挙げられる。
【0291】
一般式(3−2)について、更に詳細に説明する。
Rc
1、Rc
2についての有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。
Rc
1、Rc
2についてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。
Rc
1、Rc
2についてのシクロアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等を挙げることができる。
Rc
1、Rc
2についてのアリール基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
これらのアルキル基、シクロアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0292】
Rc
1及びRc
2が互いに結合してアルキレン基を形成して環を形成していてもよい。
Rc
1及びRc
2が互いに結合して形成するアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキレン基であることが好ましい。アルキレン鎖中に酸素原子を含有していてもよい。更に好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基であり、最も好ましくはテトラフロロエチレン基、ヘキサフロロプロピレン基、オクタフロロブチレン基である。
【0293】
Rc
1及びRc
2が互いに結合して環を形成する化合物としては、特開2005−221721号公報に記載されている具体例などを挙げることができる。
カチオンM2
+としては、前記一般式(ZI)、(ZII)、(AI)におけるカチオン部分等が挙げられる。
【0294】
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0304】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
また、光酸発生剤の含量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜45質量%であり、更に好ましくは1〜40質量%である。
【0305】
[4]酸の作用により分解して酸を発生する化合物
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、更に、酸の作用により分解して酸を発生する化合物を1種又は2種以上含んでいてもよい。上記酸の作用により分解して酸を発生する化合物が発生する酸は、スルホン酸、メチド酸又はイミド酸であることが好ましい。
【0306】
以下に本発明に用いることができる酸の作用により分解して酸を発生する化合物の例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0308】
前記酸の作用により分解して酸を発生する化合物は、1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
酸の作用により分解して酸を発生する化合物の含有量は、前記感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の全固形分を基準として、0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜20質量%であることが更に好ましい。
【0309】
[5](C)溶剤(塗布溶媒)
本発明における組成物は溶剤(C)を含有することが好ましい。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA;別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)など)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1−メトキシ−2−プロパノール)など)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、アルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0310】
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0311】
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。
水酸基を有する溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、水酸基を有しない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。
【0312】
[6]塩基性化合物
本発明に係る感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物は、好ましくは、フェノールと比較して塩基性がより強い化合物である。また、この塩基性化合物は、有機塩基性化合物であることが好ましく、含窒素塩基性化合物であることが更に好ましい。
【0313】
使用可能な含窒素塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(7)に分類される化合物を用いることができる。
【0314】
(1)一般式(BS−1)により表される化合物
【0316】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0317】
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0318】
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0319】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0320】
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
【0321】
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
【0322】
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0323】
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CH
2CH
2O−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
【0324】
一般式(BS−1)で表される塩基性化合物のうち、そのようなヒドロキシル基や酸素原子等を有するものの例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0327】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
【0328】
好ましい含窒素複素環構造を有する化合物の例としては、例えば、グアニジン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルフォリン及びアミノアルキルモルフォリンが挙げられる。これらは、置換基を更に有していてもよい。
【0329】
好ましい置換基としては、例えば、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基及びシアノ基が挙げられる。
【0330】
特に好ましい塩基性化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン及びN−(2−アミノエチル)モルフォリンが挙げられる。
【0331】
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
【0332】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0333】
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH
2CH
2O−が特に好ましい。
【0334】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられる。
【0335】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、例えば、フェノキシ基を有する1級又は2級アミンとハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得られる。また、フェノキシ基を有するアミン化合物は、1級又は2級アミンと、末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルとを加熱して反応させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びテトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル及びクロロホルム等の有機溶剤で抽出することによって得ることもできる。
【0336】
(4)アンモニウム塩
塩基性化合物として、アンモニウム塩も適宜用いることができる。
アンモニウム塩のカチオンとしては、炭素数1〜18のアルキル基が置換したテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、テトラ(n−ヘプチル)アンモニウムカチオン、テトラ(n−オクチル)アンモニウムカチオン、ジメチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルカチオン等がより好ましく、テトラ(n−ブチル)アンモニウムカチオンが最も好ましい。
アンモニウム塩のアニオンとしては、例えば、ヒドロキシド、カルボキシレート、ハライド、スルホネート、ボレート及びフォスフェートが挙げられる。これらのうち、ヒドロキシド又はカルボキシレートが特に好ましい。
【0337】
ハライドとしては、クロライド、ブロマイド及びアイオダイドが特に好ましい。
スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキルスルホネート及びアリールスルホネートが挙げられる。
【0338】
アルキルスルホネートに含まれるアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アルコキシ基、アシル基及びアリール基が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的には、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート及びノナフルオロブタンスルホネートが挙げられる。
【0339】
アリールスルホネートに含まれるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。これらアリール基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基及び炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル及びシクロヘキシル基が好ましい。他の置換基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基及びアシロキシ基が挙げられる。
【0340】
カルボキシレートとしては、脂肪族カルボキシレートでも芳香族カルボキシレートでも良く、アセテート、ラクテート、ビルベート、トリフルオロアセテート、アダマンタンカルボキシレート、ヒドロキシアダマンタンカルボキシレート、ベンゾエート、ナフトエート、サリチレート、フタレート、フェノレート等が挙げられ、特にベンゾエート、ナフトエート、フェノレート等が好ましく、ベンゾエートが最も好ましい。
この場合、アンモニウム塩としては、テトラ(n−ブチル)アンモニウムベンゾエート、テトラ(n−ブチル)アンモニウムフェノレート等が好ましい。
ヒドロキシドの場合、このアンモニウム塩は、炭素数1〜8のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドであることが特に好ましい。
【0341】
(5)プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、電子線又は極紫外線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物(PA)
本発明に係る組成物は、塩基性化合物として、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、電子線又は極紫外線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する化合物〔以下、化合物(PA)ともいう〕を更に含んでいてもよい。
【0342】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基或いは電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記一般式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0344】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1〜3級アミン、ピリジン、イミダゾール、ピラジン構造などを挙げることができる。
【0345】
化合物(PA)は、電子線又は極紫外線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここで、プロトンアクセプター性の低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
【0346】
以下、化合物(PA)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0355】
また、本発明においては、一般式(PA−1)で表される化合物を発生する化合物以外の化合物(PA)も適宜選択可能である。例えば、イオン性化合物であって、カチオン部にプロトンアクセプター部位を有する化合物を用いてもよい。より具体的には、下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。
【0357】
式中、Aは硫黄原子又はヨウ素原子を表す。
mは1又は2を表し、nは1又は2を表す。但し、Aが硫黄原子の時、m+n=3、Aがヨウ素原子の時、m+n=2である。
Rは、アリール基を表す。
R
Nは、プロトンアクセプター性官能基で置換されたアリール基を表す。
X
−は、対アニオンを表す。
【0358】
X
−の具体例としては、上述した一般式(ZI)におけるZ−と同様のものが挙げられる。
R及びR
Nのアリール基の具体例としては、フェニル基が好ましく挙げられる。
【0359】
RNが有するプロトンアクセプター性官能基の具体例としては、前述の式(PA−1)で説明したプロトンアクセプター性官能基と同様である。
【0360】
本発明の組成物において、化合物(PA)の組成物全体中の配合率は、全固形分中0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜8質量%である。
【0361】
(6)グアニジン化合物
本発明の組成物は、下式で表される構造を有するグアニジン化合物を更に含有していてもよい。
【0363】
グアニジン化合物は3つの窒素によって共役酸のプラスの電荷が分散安定化されるため、強い塩基性を示す。
本発明のグアニジン化合物(A)の塩基性としては、共役酸のpKaが6.0以上であることが好ましく、7.0〜20.0であることが酸との中和反応性が高く、ラフネス特性に優れるため好ましく、8.0〜16.0であることがより好ましい。
【0364】
このような強い塩基性のため、酸の拡散性を抑制し、優れたパターン形状の形成に寄与することができる。
【0365】
なお、ここで「pKa」とは、水溶液中でのpKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中でのpKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
【0366】
ソフトウェアパッケージ1:AdvancedChemistryDevelopment(ACD/Labs)SoftwareV8.14forSolaris(1994−2007ACD/Labs)。
【0367】
本発明において、logPとは、n−オクタノール/水分配係数(P)の対数値であり、広範囲の化合物に対し、その親水性/疎水性を特徴づけることのできる有効なパラメータである。一般的には実験によらず計算によって分配係数は求められ、本発明においては、CSChemDrawUltraVer.8.0softwarepackage(Crippen’sfragmentationmethod)により計算された値を示す。
【0368】
また、グアニジン化合物(A)のlogPが10以下であることが好ましい。上記値以下であることによりレジスト膜中に均一に含有させることができる。
【0369】
本発明におけるグアニジン化合物(A)のlogPは2〜10の範囲であることが好ましく、3〜8の範囲であることがより好ましく、4〜8の範囲であることが更に好ましい。
【0370】
また、本発明におけるグアニジン化合物(A)はグアニジン構造以外に窒素原子を有さないことが好ましい。
【0371】
以下、グアニジン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0373】
(7) 窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物
本発明の組成物は、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(以下において、「低分子化合物(D)」又は「化合物(D)」ともいう)を含有することができる。低分子化合物(D)は、酸の作用により脱離する基が脱離した後は、塩基性を有することが好ましい。
【0374】
酸の作用により脱離する基としては特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
【0375】
酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(D)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
【0376】
化合物(D)としては、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
【0377】
化合物(D)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有しても良い。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d−1)で表すことができる。
【0379】
一般式(d−1)において、
R’は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はアルコキシアルキル基を表す。R’は相互に結合して環を形成していても良い。
【0380】
R’として好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
このような基の具体的な構造を以下に示す。
【0382】
化合物(D)は、塩基性化合物と一般式(d−1)で表される構造を任意に組み合わせることで構成することも出来る。
【0383】
化合物(D)は、下記一般式(A)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
【0384】
なお、化合物(D)は、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物であるかぎり、前記の塩基性化合物に相当するものであってもよい。
【0386】
一般式(A)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。また、n=2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に結合して、2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数20以下)若しくはその誘導体を形成していてもよい。
【0387】
Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基を示す。但し、−C(Rb)(Rb)(Rb)において、1つ以上のRbが水素原子のとき、残りのRbの少なくとも1つはシクロプロピル基、1−アルコキシアルキル基又はアリール基である。
【0388】
少なくとも2つのRbが結合して脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成していてもよい。
【0389】
nは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、n+m=3である。
【0390】
一般式(A)において、Ra及びRbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0391】
前記Ra及び/又はRbのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい)としては、
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、これらのアルカンに由来する基を、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン、ノラダマンタン等のシクロアルカンに由来する基、これらのシクロアルカンに由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族化合物に由来する基、これらの芳香族化合物に由来する基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の直鎖状、分岐状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基、
ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、インドール、インドリン、キノリン、パーヒドロキノリン、インダゾール、ベンズイミダゾール等の複素環化合物に由来する基、これらの複素環化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルキル基或いは芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基、直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基・シクロアルカンに由来する基をフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族化合物に由来する基の1種以上或いは1個以上で置換した基等或いは前記の置換基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基で置換された基等が挙げられる。
【0392】
また、前記Raが相互に結合して、形成する2価の複素環式炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20)若しくはその誘導体としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0393】
本発明における特に好ましい化合物(D)を具体的に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0397】
一般式(A)で表される化合物は、特開2007−298569号公報、特開2009−199021号公報などに基づき合成することができる。
本発明において、低分子化合物(D)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
【0398】
本発明の組成物は、低分子化合物(D)を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、化合物(D)の含有量は、上述した塩基性化合物と合わせた組成物の全固形分を基準として、通常、0.001〜20質量%、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%である。
【0399】
また、本発明の組成物が酸発生剤を含有する場合、酸発生剤と化合物(D)の組成物中の使用割合は、酸発生剤/[化合物(D)+下記塩基性化合物](モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/[化合物(D)+上記塩基性化合物](モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0400】
その他、本発明に係る組成物に使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
【0401】
塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及び、J.Photopolym.Sci&Tech.Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化合物を用いることができる。
【0402】
塩基性化合物の分子量は、通常は100〜1500であり、好ましくは150〜1300であり、より好ましくは200〜1000である。
【0403】
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0404】
本発明に係る組成物が塩基性化合物を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.01〜8.0質量%であることが好ましく、0.1〜5.0質量%であることがより好ましく、0.2〜4.0質量%であることが特に好ましい。
【0405】
塩基性化合物の光酸発生剤に対するモル比は、好ましくは0.01〜10とし、より好ましくは0.05〜5とし、更に好ましくは0.1〜3とする。このモル比を過度に大きくすると、感度及び/又は解像度が低下する場合がある。このモル比を過度に小さくすると、露光と加熱(ポストベーク)との間において、パターンの細りを生ずる可能性がある。より好ましくは0.05〜5、更に好ましくは0.1〜3である。なお、上記モル比における光酸発生剤とは、上記樹脂の繰り返し単位(B)と上記樹脂が更に含んでいてもよい光酸発生剤との合計の量を基準とするものである。
【0406】
[7]疎水性樹脂(HR)
本発明の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、上記樹脂(P)とは別に疎水性樹脂(HR)を有していてもよい。
上記疎水性樹脂(HR)は、膜表面に偏在するために、フッ素原子を有する基、珪素原子を有する基、又は炭素数5以上の炭化水素基を含有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。以下に疎水性樹脂(HR)の具体例を示す。
【0410】
なお、疎水性樹脂としてはこの他にも特開2011−248019号公報、特開2010−175859号公報、特開2012−032544号公報記載のものも好ましく用いることができる。
【0411】
[8] 界面活性剤
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含んでいてもよい。界面活性剤を含有することにより、波長が250nm以下、特には220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥のより少ないパターンを形成することが可能となる。
界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤を用いることが特に好ましい。
【0412】
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301若しくはEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431若しくは4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120若しくはR08(DIC(株)製);サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105若しくは106(旭硝子(株)製);トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製);GF−300若しくはGF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802若しくはEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320若しくはPF6520(OMNOVA社製);又は、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D若しくは222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0413】
また、界面活性剤は、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することができる。
【0414】
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、例えば、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基及びポリ(オキシブチレン)基が挙げられる。また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)及びポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等の、同じ鎖内に異なる鎖長のアルキレンを有するユニットであってもよい。
【0415】
さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体は、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー及び異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレート等を同時に共重合してなる3元系以上の共重合体であってもよい。
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476及びF−472(DIC(株)製)が挙げられる。さらに、C
6F
13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C
6F
13基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、C
8F
17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体、及び、C
8F
17基を有するアクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシエチレン))アクリレート若しくはメタクリレートと(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート若しくはメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0416】
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0.0001〜2質量%、更に好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0417】
[9] その他の添加剤
本発明の組成物は、上記に説明した成分以外にも、カルボン酸、カルボン酸オニウム塩、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)等に記載の分子量3000以下の溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、酸化防止剤などを適宜含有することができる。
特にカルボン酸は、性能向上のために好適に用いられる。カルボン酸としては、安息香酸、ナフトエ酸などの、芳香族カルボン酸が好ましい。
カルボン酸の含有量は、組成物の全固形分濃度中、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%である。
【0418】
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚10〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚20〜200nmで使用されることが好ましく、更に好ましくは30〜100nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を前記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一なレジスト膜が形成できたものと考えられる。
固形分濃度とは、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
【0419】
本発明における感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0420】
[用途]
本発明のパターン形成方法は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの半導体微細回路作成に好適に用いられる。なお、半導体微細回路作成時には、パターンを形成されたレジスト膜は回路形成やエッチングに供された後、残ったレジスト膜部は、最終的には溶剤等で除去されるため、プリント基板等に用いられるいわゆる永久レジストとは異なり、マイクロチップ等の最終製品には、本発明に記載の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物に由来するレジスト膜は残存しない。
【0421】
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0422】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0423】
〔合成例1(樹脂(P−5)の合成)〕
下記スキームに従って合成した。
【0424】
【化108】
【0425】
2.52gの化合物(3)のシクロヘキサノン溶液(50.00質量%)と、0.78gの化合物(2)と、5.33gの化合物(1)と、0.32gの重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)とを、27.01gのシクロヘキサノンに溶解させた。反応容器中に15.22gのシクロヘキサノンを入れ、窒素ガス雰囲気下、85℃の系中に4時間かけて滴下した。反応溶液を2時間に亘って加熱撹拌した後、これを室温まで放冷した。
上記反応溶液を、400gのヘプタン中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。200gのヘプタンを用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行なった。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、2.98gの樹脂(P−5)を得た。
【0426】
樹脂(P−5)と同様にして、樹脂(P−1)〜(P−4)、(P−6)〜(P−14)、(P−16)、(P−22)、(P−24)〜(P−26)、(P−28)〜(P−38)、(P−42)〜(P−44)、(P−47)、(P−51)、(P−53)、(P−57)、(P−61)〜(P−64)、(P−66)、(P−71)〜(P−73)、(P−77)、(P−78)〜(P−91)を合成した。合成したポリマー構造は具体例として前掲の通りである。
また、前述のように合成し、後述の実施例で使用する各樹脂の重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を下表に示す。
【0427】
【表1】
【0428】
【表2】
【0429】
比較例用として下記樹脂C−1についても前記方法に準じて合成し後述の実施例において用いた。以下、樹脂C−1のポリマー構造、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。また、下記ポリマー構造の各繰り返し単位の組成比をモル比で示した。
【0430】
【化109】
【0431】
〔疎水性樹脂〕
疎水性樹脂としては、先に挙げた疎水性樹脂HR−1〜HR−34から適宜選択して用いた。以下に疎水性樹脂の組成比(モル比)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を示す。
【0432】
【表3】
【0433】
〔光酸発生剤〕
光酸発生剤としては先に挙げた酸発生剤z1〜z141から適宜選択して用いた。
【0434】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物としては、下記化合物(N−1)〜(N−11)の何れかを用いた。
【0435】
【化110】
【0436】
【化111】
【0437】
【化112】
【0438】
なお、上記化合物(N−7)は、上述した化合物(PA)に該当するものであり、特開2006−330098号公報の[0354]の記載に基づいて合成した。
【0439】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、下記W−1〜W−4を用いた。
W−1: メガファックF176(DIC(株)製)(フッ素系)
W−2: メガファックR08(DIC(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−4: PF6320(OMNOVA(株)製)(フッ素系)
【0440】
<塗布溶剤>
塗布溶剤としては、以下のものを用いた。
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S3:乳酸エチル
S4:シクロヘキサノン
<現像液>
現像液としては、以下のものを用いた。
SG−1:2−ノナノン
SG−2:メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)
SG−3:酢酸ブチル
TMAH:2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液
【0441】
<リンス液>
リンス液として、以下のものを用いた。
SR−1:4−メチル−2−ペンタノール
SR−2:1−ヘキサノール
SR−3:メチルイソブチルカルビノール
【0442】
〔電子線(EB)露光、有機溶剤現像、孤立スペース評価〕
(1)感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する固形分濃度3質量%の塗液組成物を0.1μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0443】
(2)EB露光及び現像(実施例1−1〜1−60、比較例1−1)
上記(1)で得られたレジスト膜が塗布されたウェハを、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。この際、ライン/スペース=100:1の孤立スペースが形成されるように描画を行った。電子線描画後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液をパドルして30秒間現像し、下表に記載のリンス液を用いてリンスをした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間加熱を行うことにより、ライン/スペース=100:1の孤立スペースのレジストパターンを得た。
(比較例1−2、1−3)
下表に示すように組成を変更し、描画領域を反転させて電子線照射し、有機系現像液に代えて、アルカリ水溶液(TMAH;2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)により現像を行い、リンス液を水とした以外は、実施例1−1〜1−60、比較例1−1と同様にして感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の調製、パターン形成を行った。
【0444】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、孤立スペースにおける解像力、スペースウィズスラフネスについて評価した。
【0445】
(3−1)感度
線幅100nmのライン/スペース=1:1のパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0446】
(3−2)孤立スペースにおける解像力
前記Eopにおける孤立スペース(ライン:スペース=100:1)の限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小のスペース幅)を求めた。そして、この値を「解像力(nm)」とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0447】
(3−3)スペースウィズスラフネス
スペースウィズスラフネスは、前記Eopに於いて、ライン/スペース=100:1の孤立スペースのレジストパターンの長手方向0.5μmの任意の50点について、スペース幅を計測し、その標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0448】
【表4】
【0449】
【表5】
【0450】
上記表に示した結果から明らかなように、アルカリ水溶液現像を行った比較例1−2、1−3は、感度及び孤立スペース解像力に劣り、スペースウィズスラフネスが大きいことが分かる。
一方、有機溶剤現像を行った本発明の実施例1−1〜1−60は感度及び孤立スペース解像力に優れ、スペースウィズスラフネスが小さいことが分かる。これは有機溶剤現像を用いることにより、樹脂(A)の膨潤が小さくかつ表面張力が小さくでき、孤立スペース解像力やスペースウィズスラフネスに有利となるためと考えられる。
また、樹脂C−1(特許文献2(特開2010−217884号公報)に記載の樹脂(A1−1)に相当)を使用した比較例1−1は、感度及び孤立スペース解像力に劣り、スペースウィズスラフネスが大きいことが分かる。
一方、有機溶剤現像の中でも、本発明に実施例1−1〜1−60は、感度及び孤立スペース解像力に優れ、スペースウィズスラフネスが小さいことが分かる。これは、樹脂C−1に対し、本発明における樹脂(A)は、酸分解反応の活性化エネルギー(Ea)が小さい前記一般式(1−0)で表される繰り返し単位を45モル%以上で含有することにより、高感度かつ高コントラストであるため、その結果、孤立スペース解像力に優れ、スペースウィズスラフネスを小さくすることができるものと考えられる。
特に、このような効果は、一般式(3−1)又は(3−2)で表される化合物を酸発生剤として用いた際により顕著な傾向になることがわかる。
【0451】
〔極紫外線(EUV)露光、有機溶剤現像、孤立スペース評価〕
(4)感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する固形分濃度2.5質量%の塗液組成物を0.05μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0452】
(5)EUV露光及び現像(実施例2−1〜2−64、比較例2−1)
上記(4)で得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、X−dipole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、露光マスク(ライン/スペース=5/1)を使用して、パターン露光を行った。照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液をパドルして30秒間現像し、下表に記載のリンス液を用いてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間ベークを行なうことにより、ライン/スペース=5:1の孤立スペースのレジストパターンを得た。
【0453】
(比較例2−2、2−3)
下表に示すように組成を変更し、露光マスクのパターンを反転させた露光マスクを使用して、パターン露光を行い、有機系現像液に代えて、アルカリ水溶液(TMAH;2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)により現像を行い、リンス液を水とした以外は、実施例2−1〜2−64、比較例2−1と同様にして感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の調製、パターン形成を行った。
【0454】
(6)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380II)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、解像力、LWRについて評価した。
【0455】
(6−1)感度
線幅50nmのライン/スペース=1:1のパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0456】
(6−2)孤立スペースにおける解像力
前記Eopにおける孤立スペース(ライン/スペース=5:1)の限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を求めた。そして、この値を「解像力(nm)」とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0457】
(6−3)スペースウィズスラフネス
スペースウィズスラフネスは、前記Eopに於いて、ライン/スペース=5:1の孤立スペースのレジストパターンの長手方向0.5μmの任意の50点について、線幅を計測し、その標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0458】
【表6】
【0459】
【表7】
【0460】
上記表に示した結果から明らかなように、アルカリ水溶液現像を行った比較例2−2、2−3は、感度及び孤立スペース解像力に劣り、スペースウィズスラフネスが大きいことが分かる。
一方、有機溶剤現像を行った本発明の実施例2−1〜2−64は感度及び孤立スペース解像力に優れ、スペースウィズスラフネスが小さいことが分かる。これは有機溶剤現像を用いることにより、樹脂(A)の膨潤が小さくかつ表面張力が小さくでき、孤立スペース解像力やスペースウィズスラフネスに有利となるためと考えられる。
また、樹脂C−1(特許文献2に記載の樹脂(A1−1)に相当)を使用した比較例2−1は、感度及び孤立スペース解像力に劣り、スペースウィズスラフネスが大きいことが分かる。
一方、有機溶剤現像の中でも、本発明に実施例2−1〜2−64は、感度及び孤立スペース解像力に優れ、スペースウィズスラフネスが小さいことが分かる。これは、樹脂C−1に対し、本発明における樹脂(A)は、酸分解反応の活性化エネルギー(Ea)が小さい前記一般式(1−0)で表される繰り返し単位を45モル%以上で含有することにより、高感度かつ高コントラストであるため、その結果、孤立スペース解像力に優れ、スペースウィズスラフネスを小さくすることができるものと考えられる。
特に、このような効果は、一般式(3−1)又は(3−2)で表される化合物を酸発生剤として用いた際により顕著な傾向になることがわかる。
さらに、疎水性樹脂を含有する感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を使用した実施例2−61〜2−64は、疎水性樹脂を含有していない以外は同じ成分を用いた感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を使用した実施例2−5、2−13、2−39、2−58に対して、それぞれ孤立スペース解像力に特に優れ、スペースウィズスラフネスが特に小さいことがわかる。これは、レジスト膜の表面における、ポリマーの脱保護の過剰な進行に伴う余分なカルボン酸の発生が、形成されたパターンの逆テーパー形状化を引き起こすことを、疎水性樹脂がレジスト膜の表面に偏在し覆うことで抑止することによるものと考えられる。
特に芳香環を有する疎水性樹脂を用いてEUV露光によりパターン形成を行う場合において、アウトオブバンド光を疎水性樹脂が吸収することで、表面にカルボン酸が多く発生することに基づく逆テーパー形状や表面荒れを防ぐことにより、孤立スペース解像力の向上とスペースウィズスラフネスの低減をより高い水準で両立できるものと考えられる。
【0461】
〔極紫外線(EUV)露光、有機溶剤現像、コンタクトホール評価〕
(7)感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表に示した組成を有する固形分濃度2.5質量%の塗液組成物を0.05μm孔径のメンブレンフィルターで精密ろ過して、感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を得た。
この感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0462】
(8)EUV露光及び現像(実施例3−1〜3−60、比較例3−1)
上記(7)で得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、ホール部分が36nmであり且つホール間のピッチが72nmである正方配列のハーフトーンマスク(ここではネガ画像形成のため、ホールに対応する部分が遮光されている)を介して、パターン露光を行った。照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液をパドルして30秒間現像し、下表に記載のリンス液を用いてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間ベークを行なうことにより、孔径36nmのコンタクトホールパターンを得た。そのときに用いた露光量を最適露光量とした。
【0463】
(比較例3−2、3−3)
下表に示すように組成を変更し、ハーフトーンマスクのパターンを反転させたハーフトーンマスクを使用して、パターン露光を行い、有機系現像液に代えて、アルカリ水溶液(TMAH;2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)により現像を行い、リンス液を水とした以外は、実施例3−1〜3−60、比較例3−1と同様にして感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物の調製、パターン形成を行った。
【0464】
(8−1)露光ラチチュード(EL、%)
測長走査型電子顕微鏡(SEM(株)日立製作所S−9380II)によりホールサイズを観察し、ホール部分が平均36nmのコンタクトホールパターンを解像する時の最適露光量を感度(Eopt)(mJ/cm
2)とした。求めた最適露光量(Eopt)を基準とし、次いでホールサイズが目的の値である36nmの±10%(即ち、39.6nm及び32.4nm)となるときの露光量を求めた。そして、次式で定義される露光ラチチュード(EL、%)を算出した。ELの値が大きいほど、露光量変化による性能変化が小さく、良好である。
[EL(%)]=[(ホール部分が32.4nmとなる露光量)−(ホール部分が39.6nmとなる露光量)]/Eopt×100
【0465】
(8−2)局所的なパターン寸法の均一性(Local CDU、nm)
露光ラチチュード評価における最適露光量で露光された1ショット内において、互いの間隔が1μmの20箇所の領域において、各領域ごとに任意の25個(すなわち、計500個)のホールサイズを測定し、これらの標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど寸法のばらつきが小さく、良好な性能であることを示す。
【0466】
(8−3)最小寸法評価(コンタクトホールパターン解像性評価)(単位:nm)
実施例及び比較例の感電子線性又は感極紫外線性樹脂組成物を用いて得たレジスト膜を露光量を変動させて露光した。得られた孤立ホールパターンを走査型電子顕微鏡(日立社製S9380II)により孔径(ホール径)観察及び寸法測定し、孤立ホールパターンが解像する最小パターン寸法を求めた。
上記測定寸法が小さい方が、パターン解像力が良好であることを意味する。
【0467】
【表8】
【0468】
【表9】
【0469】
上記表に示した結果から明らかなように、アルカリ水溶液現像を行った比較例3−2、3−3は、コンタクトホールについての解像力、露光ラチチュード(EL)、局所的なパターンの均一性(Local−CDU)に劣ることが分かる。
一方、有機溶剤現像を行った本発明の実施例3−1〜3−60はコンタクトホールについての解像力、EL、Local−CDUに優れることが分かる。これは有機溶剤現像を用いることにより、樹脂(A)の膨潤が小さくかつ表面張力が小さくでき、コンタクトホールについての解像力、EL、Local−CDUに有利となるためと考えられる。
また、樹脂C−1(特許文献2に記載の樹脂(A1−1)に相当)を使用した比較例3−1は、コンタクトホールについての解像力、EL、Local−CDUに劣ることが分かる。
一方、有機溶剤現像の中でも、本発明の実施例3−1〜3−60は、コンタクトホールについての解像力、EL、Local−CDUに優れることが分かる。これは、樹脂C−1に対し、本発明における樹脂(A)は、酸分解反応の活性化エネルギー(Ea)が小さい前記一般式(1−0)で表される繰り返し単位を45モル%以上で含有することにより、発生酸の実効拡散長が短くかつ高コントラストであるため、その結果、コンタクトホールについての解像力、EL、Local−CDUを向上させることができるものと考えられる。
特に、このような効果は、一般式(3−1)又は(3−2)で表される化合物を酸発生剤として用いた際により顕著な傾向になることがわかる。