(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、
第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、
前記第1の期間中に、前記第1高周波給電部からの高周波電力は前記処理ガスからプラズマを生成する第1の振幅で前記第1電極に印加され、前記第2の期間中に、前記高周波電力はプラズマを生成しない第2の振幅で前記第1電極に印加され、
前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである、
半導体基板上のポリシリコン膜のプラズマエッチング方法。
真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部と、前記第1電極にイオンの引き込みに適した周波数を有する第2の高周波を印加する第2高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、
第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、
前記第1の期間中に、前記第1高周波給電部からの高周波電力は前記処理ガスからプラズマを生成する第1の振幅で前記第1電極に印加され、前記第2の期間中に、前記高周波電力はプラズマを生成しない第2の振幅で前記第1電極に印加され、
前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである、
半導体基板上のポリシリコン膜のプラズマエッチング方法。
真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、
第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、
前記第1の期間に、前記処理容器内で前記処理ガスからプラズマが持続的に生成され、前記第2の期間に、プラズマが生成されず、
前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである、
半導体基板上のポリシリコン膜のプラズマエッチング方法。
真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部と、前記第1電極にイオンの引き込みに適した周波数を有する第2の高周波を印加する第2高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、
第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、
前記第1の期間に、前記処理容器内で前記処理ガスからプラズマが持続的に生成され、前記第2の期間に、プラズマが生成されず、
前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである、
半導体基板上のポリシリコン膜のプラズマエッチング方法。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやFPD(Flat Panel Display)の製造プロセスにおけるエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の処理では、処理ガスに比較的低温で良好な反応を行わせるためにプラズマが多く利用されている。従来より、枚葉式のプラズマ処理装置、特にプラズマエッチング装置の中では、容量結合型のプラズマ処理装置が主流となっている。
【0003】
一般に、容量結合型プラズマ処理装置は、真空チャンバとして構成される処理容器内に上部電極と下部電極とを平行に配置し、下部電極の上に被処理基板(半導体ウエハ、ガラス基板等)を載置し、両電極間に高周波電圧を印加する。この高周波電圧によって両電極間に形成される電界により電子が加速され、電子と処理ガスとの衝突電離によってプラズマが発生し、プラズマ中のラジカルやイオンによって基板表面に所望の微細加工たとえばエッチング加工が施される。
【0004】
ところで、近年、半導体デバイス等の製造プロセスにおけるデザインルールが益々微細化し、特にプラズマエッチングでは、より高い寸法精度が求められており、エッチングにおけるマスクや下地に対する選択比や面内均一性をより高くすることが求められている。そのため、チャンバ内のプロセス領域の低圧力化、低イオンエネルギー化が指向され、そのために40MHz以上といった従来よりも格段に高い周波数の高周波が用いられつつある。
【0005】
しかしながら、このように低圧力化および低イオンエネルギー化が進んだことにより、従来は問題とならなかったチャージングダメージの影響を無視することができなくなりつつある。つまり、イオンエネルギーの高い従来の装置ではプラズマ電位が面内でばらついたとしても大きな問題は生じないが、より低圧でイオンエネルギーが低くなると、プラズマ電位の面内不均一がゲート酸化膜のチャージングダメージを引き起こしやすくなるといった問題が生じる。
【0006】
また、40MHz以上といった高い周波数の高周波を用いるプラズマプロセスにおいては、一般的に、ウエハ中心部のエッチングレートが高く、ウエハ周縁部のエッチングレートが低くなる傾向があり、この点も問題となっている。
【0007】
この問題に関して、特許文献1では、ウエハに印加される高周波バイアスによる高周波電流経路のうち、ウエハの外周付近における電流経路部分を対向電極のウエハ対向面に向かうように矯正する電流経路矯正手段を設けること、または高周波バイアスから見たアースまでのインピーダンスがウエハ面内で略均一となるようにするインピーダンス調整手段を設けることを開示している。それにより、高周波バイアスを印加した際に発生する自己バイアスのウエハ面内での均一性が高まり、マクロダメージを抑制できるとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、電流経路矯正手段やインピーダンス調整手段を設ける必要があり装置構成が複雑化することや、プラズマ処理の面内均一性に対しては必ずしも十分とはいえない等の問題がある。
【0010】
また、プラズマプロセスにおいては、ウエハ面内でイオンと電子のバランスがくずれることに起因する局所的な電場によってゲート酸化膜のチャージアップが誘起されて絶縁破壊に至るような形態のチャージングダメージもやっかいである。たとえば、プラズマエッチングにおいては、ウエハの主面に対してイオンは垂直に入射するが電子は斜め方向からも入射するので、局所的に電荷のバランスがくずれてチャージアップを誘発する箇所がランダムに発生しやすい。このようなチャージングダメージは、自己バイアスの面内不均一性だけでなくエッチングパターンのプロファイル等にも依存し、発生する箇所が不定であり、特許文献1に記載の技術では有効に解消することはできない。
【0011】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、チャージングダメージの発生を効果的に防止して、プラズマ処理の安定性および信頼性の向上を実現するとともに、プラズマ処理の面内均一性の向上を実現する
半導体基板上のポリシリコン膜のプラズマエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点におけるプラズマエッチング方法は、真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO
2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して
、前記
半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、
前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、前記第1の期間中に、前記第1高周波給電部からの高周波電力は前記処理ガスからプラズマを生成する第1の振幅で前記第1電極に印加され、前記第2の期間中に、前記高周波電力はプラズマを生成しない第2の振幅で前記第1電極に印加され、前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである。
本発明の第2の観点におけるプラズマエッチング方法は、真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO
2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部と、前記第1電極にイオンの引き込みに適した周波数を有する第2の高周波を印加する第2高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して
、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、
前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、前記第1の期間中に、前記第1高周波給電部からの高周波電力は前記処理ガスからプラズマを生成する第1の振幅で前記第1電極に印加され、前記第2の期間中に、前記高周波電力はプラズマを生成しない第2の振幅で前記第1電極に印加され、前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである。
【0013】
一般に、
半導体基板上のポリシリコン膜を被エッチング材とするプラズマプロセスにおけるチャージングダメージ(絶縁破壊)は、プラズマから半導体基板(特に被エッチング材であるポリシリコン膜つまりゲート電極)に流入または蓄積する電荷の量によって左右され、流入電荷量または蓄積電荷量がある閾値を越えると、指数関数的に
ゲート酸化膜の劣化ないし破壊が進んでしまう。また、
ゲート酸化膜のチャージアップは、半導体基板(ゲート電極)に入射または流入するイオンと電子のバランスがくずれることによって発生し、局所的な電場を作る。プラズマ生成中は時間に比例してチャージアップの電荷量および局所電場の強度が増大し、それがある閾値を超えると
ゲート酸化膜のダメージ(損傷ないし破壊)に至る。
【0014】
上記の方法においては、第1の高周波がプラズマを生成させるための第1の振幅を有している第1の期間(フェーズ)中に被処理体の任意の箇所で流入電荷量または蓄積電荷量が過分になっても、プラズマ生成を中断する第2の期間(フェーズ)中に過分の電荷が分散してチャージバランスが回復するので、
ゲート酸化膜のダメージが効果的に防止される。これによって、プラズマプロセスの信頼性が大幅に改善される。
【0015】
本発明の
上記第1の観点におけるプラズマエッチング方法の好適な一態様によれば、前記第1の期間中に、前記プラズマから前記
ポリシリコン膜(ゲート電極)に流入
する電荷量はしきい値を超えず、前記しきい値は前記ゲート酸化膜を損傷させない最大電荷蓄積量である。また、前記第2の振幅はゼロよりも大きくてもよい。これにより、第2の期間においてチャージバランスを回復させる時間を可及的に短くし、ひいてはプラズマ処理時間を短くすることができる。
【0016】
本発明の第3の観点におけるプラズマエッチング方法は、真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO
2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して
、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、
前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、前記第1の期間に、前記処理容器内で前記処理ガスからプラズマが持続的に生成され、前記第2の期間に、プラズマが生成されず、前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである。
本発明の第4の観点におけるプラズマエッチング方法は、真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で半導体基板を載置する第1電極と、前記処理容器内で前記第1電極と平行に向かい合い、接地されている第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間の処理空間にO
2ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記第1電極に30MHz以上の周波数を有する第1の高周波を印加する第1高周波給電部と、前記第1電極にイオンの引き込みに適した周波数を有する第2の高周波を印加する第2高周波給電部とを有するプラズマエッチング装置を用い、前記処理空間に前記処理ガスのプラズマを生成して
、前記半導体基板上に形成されたゲート酸化膜上のポリシリコン膜をエッチングするプラズマエッチング方法であって、第1の期間と第2の期間とが周期的に繰り返されることにより、
前記第1電極上の前記半導体基板に前記O2ガスを含む処理ガスのプラズマによるエッチング処理が施され、前記第1の期間に、前記処理容器内で前記処理ガスからプラズマが持続的に生成され、前記第2の期間に、プラズマが生成されず、前記第1の期間の長さは2μsec〜50μsecであり、前記第2の期間の長さは2μsec以上であり、前記周期の長さは4μsec〜200μsecである。
【0017】
上記の方法においては、
半導体基板上のポリシリコン膜を被エッチング材とするプラズマプロセスの
実行中に、処理ガスのプラズマ生成状態と、プラズマ非生成状態(プラズマを生成していない状態)とが所定周期で交互に繰り返されるので、プラズマ処理の開始から終了までプラズマを生成し続ける通常のプラズマ処理に比べて、プラズマが連続して生成している時間がまさに短くなる。このため、プラズマから半導体基板(ゲート電極)に一度に流入する電荷の量あるいは半導体基板の表面部(ゲート酸化膜)に電荷が累積的に蓄積する量が減ることになるので、チャージングダメージは生じ難くなり、安定したプラズマ処理の実現およびプラズマプロセスの信頼性向上が可能となる。
【0018】
本発明の
上記第3の観点におけるプラズマエッチング方法の好適な一態様によれば、前記第1の期間中に、前記プラズマから前記
ポリシリコン膜(ゲート電極)に流入
する電荷量はしきい値を超えず、前記しきい値は前記ゲート酸化膜を損傷させない最大電荷蓄積量である。また、前記第2の振幅はゼロよりも大きくてもよい。これにより、第2の期間においてチャージバランスを回復させる時間を可及的に短くし、ひいてはプラズマ処理時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプラズマエッチング方法によれば、上記のような構成および作用により、チャージングダメージの発生を効果的に防止して、プラズマプロセスの安定性および信頼性の向上を実現するとともに、プラズマ処理の面内均一性の向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0022】
図1に、本発明の一実施形態によるプラズマ処理装置の構成を示す。このプラズマ処理装置は、RF下部2周波印加方式の容量結合型(平行平板型)プラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0023】
チャンバ10内には、被処理体(被処理基板)としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状の下部電極またはサセプタ12が設けられている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部14を介してチャンバ10の底から垂直上方に延びる筒状支持部16に支持されている。筒状保持部14の上面には、サセプタ12の上面を環状に囲むたとえば石英やシリコンからなるフォーカスリング18が配置されている。
【0024】
チャンバ10の側壁と筒状支持部16との間には排気路20が形成され、この排気路20の入口または途中に環状のバッフル板22が取り付けられるとともに底部に排気口24が設けられている。この排気口24に排気管26を介して排気装置28が接続されている。排気装置28は、真空ポンプを有しており、チャンバ10内の処理空間を所定の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0025】
サセプタ12には、プラズマ生成用の第1高周波電源32が第1整合器34および給電棒36を介して電気的に接続されている。この第1高周波電源32は、所定の周波数たとえば100MHzの第1の高周波を下部電極つまりサセプタ12に印加する。なお、チャンバ10の天井部には、後述するシャワーヘッド38が接地電位の上部電極として設けられている。したがって、第1高周波電源32からの第1の高周波はサセプタ12とシャワーヘッド38との間に容量的に印加される。
【0026】
また、サセプタ12には、イオン引き込み用の第2高周波電源70が第2整合器72および給電棒36を介して電気的に接続されている。この第2高周波電源70は、所定の周波数たとえば3.2MHzの第2の高周波をサセプタ12に印加する。
【0027】
サセプタ12の上面には半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック40が設けられている。この静電チャック40は導電膜からなる電極40aを一対の絶縁膜40b,40cの間に挟み込んだものであり、電極40aには直流電源42がスイッチ43を介して電気的に接続されている。直流電源42からの直流電圧により、クーロン力で半導体ウエハWをチャック上に吸着保持することができる。
【0028】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延在する冷媒室44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット46より配管48、50を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック40上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給部52からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン54を介して静電チャック40の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0029】
天井部のシャワーヘッド38は、多数のガス通気孔56aを有する下面の電極板56と、この電極板56を着脱可能に支持する電極支持体58とを有する。電極支持体58の内部にバッファ室60が設けられ、このバッファ室60のガス導入口60aには処理ガス供給部62からのガス供給配管64が接続されている。
【0030】
チャンバ10の周囲には、環状または同心状に延在する磁石66が配置されている。チャンバ10内において、シャワーヘッド38とサセプタ12との間の空間には、第1高周波電源32により鉛直方向のRF電界が形成される。第1の高周波の放電により、サセプタ12の表面近傍に高密度のプラズマを生成することができる。
【0031】
制御部68は、このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置28、第1高周波電源32、第1整合器34、静電チャック用のスイッチ43、チラーユニット46、伝熱ガス供給部52、処理ガス供給部62、第2高周波電源70および第2整合器72等の動作を制御するもので、ホストコンピュータ(図示せず)等とも接続されている。
【0032】
このプラズマエッチング装置において、エッチングを行うには、先ずゲートバルブ30を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック40の上に載置する。そして、処理ガス供給部62よりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置28によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、第1高周波電源32より所定のパワーで第1の高周波をサセプタ12に供給すると同時に、第2高周波電源70からも所定のパワーで第2の高周波をサセプタ12に供給する。また、直流電源42より直流電圧を静電チャック40の電極40aに印加して、半導体ウエハWを静電チャック40上に固定する。シャワーヘッド38より吐出されたエッチングガスは両電極12,38間で第1の高周波の放電によってプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの主面がエッチングされる。
【0033】
このプラズマエッチング装置では、第1高周波電源32からサセプタ(下部電極)12に対して従来よりも高い周波数領域(30MHz以上)の第1の高周波を印加することにより、プラズマを好ましい解離状態で高密度化し、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
【0034】
プラズマ密度を高くすると、低イオンエネルギー化すなわち半導体ウエハW上のシース電位が小さくなる(低バイアス化)が、このように低バイアス化が従来と比べて進んだことにより、チャージングダメージ(絶縁破壊)の影響を無視することができなくなりつつある。チャージングダメージは、プラズマから半導体ウエハW(ゲート電極)に流入する電荷量がある閾値を越えたときに生ずる。この流入電荷量は、ウエハW面内におけるシース電位の相対的な差異と相関がある。
【0035】
従来の低い周波数を用いたプラズマエッチング装置では、シース電位が数百ボルトと大きいため、プラズマ中の電位(プラズマ電位)に面内不均一が生じたとしても、シース電位の変化はウエハ面内において相対的に小さく、半導体ウエハWのゲート電極へ流入する電荷量は閾値を超えることはない。
【0036】
しかし、本実施形態のような高密度プラズマでは、シース電位が数十ボルト程度と小さいため、プラズマ電位に面内不均一が生じた場合のシース電位の変化は相対的に大きく、ゲート電極への多量の電子流入が起こりやすく、基板表面がプラズマに連続的に曝される時間の長さに依存したチャージングダメージが生じやすい。
【0037】
また、プラズマプロセスにおいては、プラズマ電位の面内不均一性あるいは回路パターンのプロファイル等が関係して局所的にイオンと電子のバランスがくずれることに起因して基板上の絶縁膜(たとえばゲート酸化膜)にチャージアップが発生することがある。チャージアップの発生した絶縁膜には、蓄積電荷の量に比例した電位勾配または電場がかかる。このようなチャージアップの状態が累積増大してある閾値を越えれば、当該箇所で絶縁膜が損傷し、あるいは破壊してしまう。
【0038】
本実施形態では、ゲート電極への流入電荷量が閾値を超えないように、あるいはチャージアップによって絶縁膜に蓄積する電荷の量が閾値を越えないように、プラズマ生成状態とプラズマ非生成状態(プラズマを生成していない状態)とが所定周期で交互に繰り返されるようにする。すなわち、連続したプラズマ生成の時間を流入電荷量あるいはチャージアップ電荷量が閾値を超えない程度の短い時間として、その後プラズマが生成しない状態を作り出し、それを断続的に繰り返すのである。プラズマ生成状態の期間中にウエハW上の任意の箇所で過分な流入電荷あるいはチャージアップが発生してもプラズマ非生成状態の期間中に余分な電荷または蓄積電荷を周囲に分散させて中和性を回復させるので、流入電荷あるいは蓄積電荷の累積増大を阻止し、絶縁膜のダメージを効果的に防止することができる。これによって、プラズマプロセスの信頼性を大きく改善することができる。
【0039】
プラズマエッチング中にプラズマ生成状態とプラズマ非生成状態とを交互に繰り返すために、本実施形態では、第1の高周波がプラズマを生成させる第1の振幅または波高値を有する(つまり実効的なパワー)を有する第1の期間と、第1の高周波がプラズマを生成させない第2の振幅または波高値を有する(つまり実効的なパワーを有していない)第2の期間とが所定の周期で交互に繰り返されるように、制御部68が第1の高周波電源32および第1の整合器34を制御する。なお本発明では、第2の振幅がゼロ(すなわち第1の高周波を印加しないこと)を含む。
【0040】
より具体的には、第1高周波電源32より出力する第1の高周波のパワーを変調させて、サセプタ12に印加する。パワー変調の典型的な例としては、
図2に示すようなパルス状の変調を挙げることができる。
【0041】
図2においては、プラズマ生成状態が期間Aであり、プラズマ非生成状態が期間Bである。プラズマ生成期間Aでは第1の高周波を電力換算で500Wの第1の振幅で高周波電極12に印加し、プラズマ非生成期間Bでは第1の高周波を電力換算で0W(第2の振幅)にする。すなわち第1の高周波のパワーのON、OFFを繰り返して、チャンバ10内でいわゆるパルスプラズマを生成させる。この場合の第1の高周波の波形は、
図3のようになる。
【0042】
なお、プラズマ非生成状態の第2の振幅を0Wとしなくてもよい。プラズマが実質的に生成しないパワー値であれば、これに限られない。また、プラズマ生成時の第1の振幅を電力換算で500Wとしたが、これに限られない。プロセス条件にもよるが、電力換算で100W〜2000Wの範囲に設定することができる。
【0043】
第1の振幅、第2の振幅を規定することは重要であるが、ゲート電極への流入電荷量あるいはゲート酸化膜上の蓄積電荷量が閾値を越えないように、プラズマ生成期間Aおよびプラズマ非生成期間Bの持続時間を規定することもより重要である。
図4は、
図2のように第1の高周波をパルス印加した(第1の振幅を電力換算で500W、第2の振幅を電力換算で0W)場合の、プラズマ生成期間A、プラズマ非生成期間Bの好適な範囲を、図示化したものである。
【0044】
図4によると、プラズマ生成期間Aは2μsec以上100μsec以下であり、プラズマ非生成期間Bは2μsec以上であればよい。なお、
図4のプラズマ生成期間Aは、2μsec以上50μsec以下の方がより好ましい。プラズマ生成期間Aが100μsecより長いと、流入電荷量あるいは蓄積電荷量が閾値を超えて、チャージングダメージが生じてしまう。また、プラズマ生成期間Aが2μsecより短いと、プラズマが生成しても安定した状態にならず、プラズマ処理の効率が低下する。一方、プラズマ非生成期間Bが2μsecより短いと、プラズマを消火しきれないので、プラズマ生成期間Aのみが連続的に続く場合、つまりプラズマを長時間に亘り連続的に生成する通常のプラズマ処理と同様な状況になり、チャージングダメージが生じやすくなる。なお、プラズマ非生成期間Bを長くしたとしても、エッチング結果には影響を及ぼさない。
【0045】
第1の高周波をパルス状に印加したパルスプラズマは、プラズマ生成期間Aとプラズマ非生成期間Bが所定周期で繰り返されるため、プラズマ生成状態を維持し続けてエッチングを行う場合に比べて、エッチング処理の開始から終了までのトータルなエッチング時間が長くなってしまう。エッチング効率またはスループットを上げるためには、パルスプラズマのデューティー比(プラズマ生成期間A/(プラズマ生成期間A+プラズマ非生成期間B))を大きくすることが必要である。よって、上記のようにプラズマ非生成期間Bの上限は、エッチング結果からは特に規定されないのであるが、エッチング効率を上げるためには、短い方が好ましい。
【0046】
図2からプラズマ生成期間Aの最大は100μsec、プラズマ非生成期間Bの最小は2μsecであるから、最もエッチング効率がよい最大デューティー比は約98%となる。一方、最小デューティー比は、エッチング効率を考慮して50%程度、すなわちプラズマ生成期間Aとプラズマ非生成期間Bを同じ時間とすることが好ましい。
【0047】
なお、最大デューティー比98%に設定するということは、言い換えれば、プロセスの開始から終了までプラズマ生成状態を維持し続けてエッチングを行う場合に比して、エッチング時間はわずか2%の違いでしかないことになる。このように、通常のプラズマ処理とほとんど変わらないエッチング効率(スループット)で、チャージングダメージを確実に防止することができる。
【0048】
また、パワー変調の周波数、すなわちパルスプラズマの周波数を考慮すると、5〜250kHzが好ましい。これは、
図4の例によると、プラズマ生成期間Aとプラズマ非生成期間Bの最小時間は2μsecであるから、最も短い周期は4μsecとなり、これにより250kHzが規定される。また、プラズマ生成期間Aとプラズマ非生成期間Bの最大時間は100μsecであるから、最も長い周期は200μsecとなり、これにより5kHzが規定される。
【0049】
次に、テストウエハを用いて、パルスプラズマのチャージングダメージ耐性を試験した結果を説明する。試験には、
図5に示す構造の素子を用いた。すなわち、Si基板74上に、厚さ4nmのゲート酸化膜相当部分76aおよび厚さ500nmの素子分離領域76bを有するSiO
2 膜76を形成し、さらにその上にポリシリコン膜78を形成し、このような素子をウエハ上にマトリクスのセル状に多数形成した。素子分離領域76bの面積Cをゲート酸化膜相当部分76aの面積Dの1万倍または10万倍と通常の素子よりも大きく設定して、通常のストレス試験と同様にチャージングダメージが発生しやすい構造とした。
【0050】
ウエハとしては300mmウエハを用いた。プラズマ処理は
図1に示す装置を用いて行い、チャンバ内圧力:20mTorr、処理ガス:O
2 ガス、流量:200sccm、第1の高周波の周波数:100MHz、高周波電力:500W、処理時間:10秒の条件でプラズマにウエハを晒した。なお、第2高周波電源70より出力される第2の高周波は使用(印加)していない。この際の各素子のリーク電流を測定し、リーク電流が1×10
-9 A/μm
2 以上の場合を絶縁破壊が生じたものとし、それよりも小さい値の場合には絶縁破壊なしとした。
【0051】
この試験結果を
図6、
図7に示す。
図6は、ウエハの素子分離領域76bの面積Cがゲート酸化膜相当部分76aの面積Dの10万倍の場合であり、
図7は1万倍の場合である。
図6(a)、
図7(a)は通常の連続プラズマ、
図6(b)、
図7(b)はパルスプラズマで、プラズマ生成期間Aが40μsec、デューティー比が20%、変調周波数(パルス周波数)が5kHzの場合、
図6(c)、
図7(c)は同じくパルスプラズマで、プラズマ生成期間Aが5μsec、デューティー比が50%、変調周波数が100kHzの場合である。白は絶縁破壊が生じなかった部分を示し、黒は絶縁破壊が生じた部分を示している。
【0052】
図6に示すように、面積比(C/D)が10万倍の場合には、通常の連続プラズマを用いた場合には、絶縁破壊が多数の素子で生じ絶縁破壊なしのものは11%にすぎなかったが、パルスプラズマを用いた場合には、プラズマ生成期間Aが40μsecで歩留まり99%、プラズマ生成期間Aが5μsecで歩留まり96%と、チャージングダメージが激減した。また、
図7に示すように、面積比(C/D)が1万倍の場合には、通常の連続プラズマを用いた場合には、絶縁破壊なしのものは歩留まり87%に対して、パルスプラズマを用いた場合には、プラズマ生成期間Aが40μsec、5μsecのいずれの場合においても歩留まり100%であり、ウエハ面内のいかなる箇所でもチャージングダメージが生じなかった。
【0053】
実施形態によれば、デューティー比50%でも、アンテナ比100kまでほぼ100%の歩留まりが得られている。
【0054】
上記実施形態において、チャージングダメージの発生を防止できるという効果について説明してきたが、プラズマ生成状態とプラズマ非生成状態とを所定周期で交互に繰り返すことで、さらにプラズマ処理速度(エッチングレート)の均一性を向上することができるという効果もある。
【0055】
40MHz以上という高い周波数の高周波を用い、かつプラズマ生成状態を常に維持しながらエッチングを行う従来のプラズマエッチング装置では、ウエハ中心部のエッチングレートが高く、ウエハ周縁部のエッチングレートが低くなるという傾向が一般的にあり、問題となっていた。すなわち、第1高周波電源32により出力される第1の高周波のパワーで生成されるプラズマ密度の分布が、ウエハ中心部で高く、ウエハ周縁部で低くなってしまっていた。
【0056】
しかし、プラズマ生成状態とプラズマ非生成状態とを所定周期で交互に繰り返すことで、ウエハ中心部でのエッチングレートの上昇を抑制することができ、その結果、ウエハ面内におけるエッチングレートを均一にすることができる。
【0057】
ここで、パルスプラズマによるエッチング(パルスエッチング)と、プラズマ生成状態を維持し続ける従来のエッチング(従来エッチング)とを行った際の、ウエハ各箇所におけるエッチングレートの比較測定結果を説明する。
【0058】
ウエハとしては300mm口径の半導体ウエハを用い、ウエハ表面の有機膜をエッチングした。詳細には、プラズマ処理は
図1に示す装置を用いて行い、チャンバ内圧力:10mTorr、処理ガス:N
2/O
2/CO、流量:120/60/100sccm、第1の高周波の周波数:100MHz、第2の高周波の周波数:3.2MHz、第2の高周波の電力:200W、処理時間:30秒の条件で、プラズマエッチングを行った。パルスエッチングでは、第1の高周波のプラズマ生成期間Aをここでは便宜的に500μsecとし、プラズマ生成期間Aにおける第1の高周波の高周波電力の値を1500W、プラズマ非生成期間Bにおける第1の高周波の高周波電力の値を0W、デューティー比を50%、変調周波数(パルスプラズマ)を便宜的に1kHzとした。一方、従来エッチングでは、第1の高周波の高周波電力の値を1500Wとした。
【0059】
その結果、従来エッチングでは面内均一性が13.8%であったものが、パルスエッチングでは面内均一性が9.5%と、大幅に向上した。このように、プラズマ生成状態とプラズマ非生成状態とを所定周期で交互に繰り返すことで、ウエハ面内におけるエッチングレートを均一にできることが、実験的に証明された。なお、この比較測定でのプラズマ生成期間A(500μsec)と変調周波数の周波数(1kHz)は、上記で説明したチャージングダメージの防止に最適なプラズマ生成期間A(2μsec以上100μsec以下、好ましくは2μsec以上50μsec以下)と変調周波数の周波数(5kHz〜250kHz)と異なる。ただ、チャージングダメージ防止に最適なプラズマ生成期間Aおよび変調周波数であれば、エッチングレートの面内均一性の向上も図れることが容易に予想される。
【0060】
なお、上記実施形態では、パルスプラズマについて説明したが、パルスプラズマでなくても、プラズマ生成状態と実質的にプラズマ非生成の状態が所定周期で交互に繰り返されるものであれば、本発明の一態様であることは言うまでもない。
【0061】
また、上記実施形態のプラズマ処理装置は、主としてプラズマ生成用の第1の高周波と主としてイオン引き込み用の第2の高周波とをサセプタ12に印加するRF下部二周波印加型であった。しかし、別の実施形態として、図示省略するが、下部電極にプラズマ生成用の高周波を1つ印加するタイプの装置であっても
よい。また、プラズマ生成用の高周波の周波数範囲は、30MHz〜300MHzが好ましい。