特許第5836488号(P5836488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5836488有機発光素子材料およびこれを利用した有機発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5836488
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】有機発光素子材料およびこれを利用した有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 333/76 20060101AFI20151203BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20151203BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   C07D333/76CSP
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   H05B33/22 B
   C09K11/06 690
【請求項の数】22
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-528304(P2014-528304)
(86)(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公表番号】特表2014-531421(P2014-531421A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】KR2012007185
(87)【国際公開番号】WO2013036045
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0091943
(32)【優先日】2011年9月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュンゴ・フー
(72)【発明者】
【氏名】テ・ユン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジュンギ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スン・キル・ホン
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−527021(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/021520(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/059099(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表示されるジベンゾチオフェン系化合
【化1】
(化学式(1)において、
は炭素数6〜40のアリーレン基であるか、アルキル基置換されたフルオレニレン基であり、
は水素であるか、炭素数1〜20のアルキル基であるか、炭素数1〜20のアルコキシ基であるか、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルコキシ基置換または非置換された炭素数6〜12のアリール基であり、
およびRは互いに相違しており、
は炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、およびニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基置換または非置換されたフェニル基であるか、炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、およびニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基置換または非置換されたビフェニル基であり、
は炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、ニトリル基、およびニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基置換または非置換されたp-ターフェニル基であるか、炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、ニトリル基、およびニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基置換または非置換されたp-テトラフェニル基であるか、炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、ニトリル基、およびニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基置換または非置換されたナフチル基であり、
は水素であるか、炭素数1〜20のアルキル基であるか、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、またはヘテロの縮合環を形成することができ、
nは置換基の個数を意味し、1〜6の整数である)
【請求項2】
前記Rは水素であるか、炭素数1〜20のアルキル基置換または非置換されたフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項3】
前記Rはフェニル基、またはビフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項4】
前記Rp-ターフェニル基、またはp-テトラフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項5】
前記Lはフェニレン基であるか、ビフェニレン基であるか、アルキル基置換されたフルオレニレン基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項6】
前記RおよびRは互いに相違しており、
はフェニル基であり、
p-ターフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項7】
前記RおよびRは互いに相違しており、
はビフェニル基であり、
p-ターフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項8】
前記RおよびRは互いに相違しており、
はフェニル基であり、
p-テトラフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項9】
前記RおよびRは互いに相違しており、
はビフェニル基であり、
p-テトラフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項10】
前記Lはフェニレン基であるか、ビフェニレン基であるか、アルキル基置換されたフルオレニレン基であり、
前記Rは水素であるか、炭素数1〜20のアルキル基置換または非置換されたフェニル基であり、
前記RおよびRは互いに相違しており、それぞれ独立的に
はフェニル基またはビフェニル基であり、
p-ターフェニル基またはp-テトラフェニル基である、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【請求項11】
前記化学式(1)は、下記化学式(1−1)〜(1−8)のうちの1つである、請求項1に記載のジベンゾチオフェン系化合物。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項12】
第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された発光層を含む1層以上からなる有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む、有機発光素子。
【請求項13】
前記有機物層は正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層が前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記有機物層は2層の正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層のうちの少なくとも1層以上は、前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記有機物層は第1正孔輸送層および第2正孔輸送層を含み、
前記第1正孔輸送層は、前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含み、
前記第2正孔輸送層は芳香族アミン化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記第1正孔輸送層は発光層と前記第2正孔輸送層の間に備えられる、請求項15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記第1正孔輸送層は発光層に接する、請求項15に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記有機物層は正孔注入層を含み、前記正孔注入層が前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入されたジベンゾチオフェン系化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記有機物層は正孔注入と正孔輸送を同時に行う層を含み、この層が前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記有機物層は電子注入および電子輸送層を含み、この電子注入または電子輸送層が前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記有機物層は発光層を含み、この発光層が前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項22】
前記熱硬化性または光硬化性作用基はビニル基またはアクリル基である、請求項12に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年9月9日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2011−0091943号の出願日の利益を主張し、その内容はすべて本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、有機発光素子の寿命、効率、電気化学的安全性、および熱的安全性を大きく向上させることができるジベンゾチオフェン系化合物、および前記ジベンゾチオフェン系化合物が有機化合物層に含有されている有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象は、特定有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に転換する例の1つである。有機発光現状の原理は次のとおりである。正極と負極の間に有機物層を位置させたときに2つの電極の間に電圧をかければ、負極と正極からそれぞれ電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入した電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び底状態に落ちながら光が出るようになる。このような原理を利用する有機発光素子は、一般的に負極と正極およびその間に位置した有機物層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を含む有機物層で構成されることができる。
【0004】
有機発光素子で使用される物質としては、純粋有機物質または有機物質と金属が錯物をなす錯化合物が大部分を占めており、用途に応じて正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分することができる。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としてはp−タイプの性質を有する有機物質、すなわち容易に酸化し、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としてはn−タイプ性質を有する有機物質、すなわち容易に還元し、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。発光層物質としてはp−タイプ性質とn−タイプ性質を同時に有する物質、すなわち酸化と還元状態すべてにおいて安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成されたときにこれを光に転換する発光効率が高い物質が好ましい。
【0005】
上述した他にも、有機発光素子で使用される物質は、次のような性質を追加で有することが好ましい。
【0006】
第一に、有機発光素子で使用される物質は、熱的安全性が優れているものが好ましい。有機発光素子内では電荷の移動によるジュール熱(joule heating)が発生するためである。現在、正孔輸送層物質として主に使用されているNPBは、ガラス転移温度が100℃以下の値を有するため、高い電流を必要とする有機発光素子では使用し難いという問題がある。
【0007】
第二に、低電圧駆動が可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔と電子が発光層の外に漏出しないようにしなければならない。このために、有機発光素子に使用される物質は、適切なバンドギャップ(band gap)とHOMOまたはLUMOエネルギー準位を有さなければならない。現在、溶液塗布法によって製造される有機発光素子で正孔輸送物質として使用されているPEDOT:PSSの場合、発光層物質として使用される有機物のLUMOエネルギー準位に比べてLUMOエネルギー準位が低いため、高効率/長寿命の有機発光素子の製造に困難がある。
【0008】
この他にも、有機発光素子で使用される物質は、化学的安全性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などが優れていなければならない。すなわち、有機発光素子で使用される物質は、水分や酸素による物質の変形が少なくなければならない。
【0009】
また、適切な正孔または電子移動度を有することによって有機発光素子の発光層で正孔と電子の密度が均衡をなすようにし、エキシトン形成を極大化できなければならない。さらに、素子の安全性のために、金属または金属酸化物を含んだ電極との界面を良好にしなければならない。
【0010】
したがって、当技術分野では、上述したような要件を備えた有機物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開2003−0044518号
【特許文献2】欧州特許公開1146574 A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これにより、本発明者は、有機発光素子で使用可能な物質に求められる条件、例えば、適切なエネルギー準位、電気化学的安全性、および熱的安全性などを満たすことができ、置換基に応じて有機発光素子で求められる多様な役割を行うことができる化学構造を有するヘテロ化合物誘導体およびこれを含む有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書は、下記化学式(1)で表示されるジベンゾチオフェン系化合物を提供する。
【化1】
【0014】
前記化学式(1)において、
は炭素数6〜40のアリーレン基、またはアルキル基に置換されたフルオレニレン基であり、
は水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、
または炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルコキシ基に置換または非置換された炭素数6〜12のアリール基であり、
およびRは互いに相違しており、
は炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたフェニル基、
または炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたビフェニル基であり、
は炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたターフェニル基、炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたテトラフェニル基、または炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたナフチル基であり、
は水素、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルコキシ基であり、互いに隣接する基と脂肪族、芳香族、またはヘテロの縮合環を形成することができ、
nは置換基の個数を意味し、1〜6の整数である。
【0015】
また、本明細書は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された発光層を含む1層以上からなる有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式(1)のジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本明細書の化合物は、有機発光素子で有機物層物質、特に正孔注入物質および/または正孔輸送物質として使用されることができ、この化合物を有機発光素子に使用する場合、素子の駆動電圧を低め、光効率を向上させ、化合物の熱的安全性によって素子の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
図3】基板1、正極2、正孔注入層5、化学式(1)で表示される化合物を含まない正孔輸送層6−1、化学式(1)で表示される化合物を含む正孔輸送層6−2、発光層7、電子輸送層8、および負極4が順に積層された有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書は、下記化学式(1)で表示されるジベンゾチオフェン系化合物を提供する。
【0019】
また、本明細書は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された発光層を含む1層以上からなる有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式(1)のジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0020】
前記置換基の例示は下記で説明するが、これに限定されることはない。
【0021】
本明細書において、前記アルキル基は直鎖または分枝鎖であることができ、炭素数は1〜20である。具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、およびヘプチル基などがあるが、これに限定されることはない。
【0022】
本明細書において、前記アルケニル基は直鎖または分枝鎖であることができ、炭素数は2〜20である。具体的な例としては、スチルベニル基(stylbenyl)、スチレニル基(styrenyl)などのアリール基が置換されたアルケニル基が好ましいが、これに限定されることはない。
【0023】
本明細書において、前記アルコキシ基は直鎖または分枝鎖であることができ、炭素数は1〜20である。
【0024】
本明細書において、化学式(1)のうち、Rのアリール基は単環式または多環式であることができ、炭素数は6〜12である。アリール基の具体的な例としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基などの単環式芳香族、およびナフチル基などの多環式芳香族などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0025】
本明細書において、化学式(1)のうち、Lのアリーレン基、フルオレニレン基はそれぞれアリール基、フルオレニル基の2価基である。
【0026】
本明細書において、Lのアリーレン基のアリール基は単環式または多環式であることができ、炭素数は特に限定されることはないが、6〜60であることが好ましい。アリール基の具体的な例としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、スチルベン基などの単環式芳香族、およびナフチル基、ビナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、フルオレニル基、アセナフテニル基、トリフェニレン基、フルオランテン基などの多環式芳香族などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0027】
本明細書において、フルオレニル基は、2つの環有機化合物が1つの原子を通じて連結した構造であって、例としては
【化2】
などがある。
【0028】
本明細書において、フルオレニル基は開いたフルオレニル基の構造を含んで、ここで、開いたフルオレニル基は2つの環化合物が1つの原子を通じて連結した構造から一側の環化合物の連結が切れた状態の構造であって、例としては
【化3】
などがある。
【0029】
本明細書の一実施状態において、前記Lはアリーレン基またはアルキル基に置換されたフルオレニレン基である。
【0030】
1つの実施状態において、Lはフェニレン基、ビフェニレン基、またはアルキル基に置換されたフルオレニレン基である。
【0031】
さらに1つの例において、Lはフェニレン基である。
さらに1つの例において、Lはビフェニレン基である。
さらに1つの例において、Lはメチル基に置換されたフルオレニレン基である。
【0032】
さらに1つの実施状態において、前記Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、または炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルコキシ基に置換または非置換されたアリール基である。
【0033】
1つの実施状態において、Rは水素、または炭素数1〜20のアルキル基に置換または非置換されたフェニル基である。
【0034】
さらに1つの実施状態において、Rは水素である。
1つの実施状態において、Rはフェニル基またはビフェニル基である。
【0035】
さらに1つの例において、Rはアルキル基に置換されたフェニル基またはアルキル基に置換されたビフェニル基である。
【0036】
さらに1つの例において、Rはメチル基に置換されたフェニル基またはメチル基に置換されたビフェニル基である。
【0037】
さらに1つの例において、Rはフェニル基である。
【0038】
本明細書の1つの実施状態において、Rは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルコキシ基に置換または非置換されたアリール基である。Rがアリルアミン基に置換されたアリール基である場合、化合物全体の平面性が過度に低くなって結晶化が容易になり、これによって安定的な非結晶質(amorphous)の膜が形成され難いだけでなく、追加されたアミン基によってジベンゾチオフェンの連結したアミン基への電子ドナー効果が半減し、発光層に効率的な正孔注入および/または伝達を期待し難い。
【0039】
さらに1つの実施状態において、Rは水素である。
【0040】
さらに1つの実施状態において、RおよびRは互いに相違している。
【0041】
さらに1つの実施状態において、前記Rは炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたフェニル基、または炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたビフェニル基である。
【0042】
1つの実施状態において、Rはビフェニル基である。
【0043】
さらに1つの実施状態において、Rはフェニル基である。
【0044】
さらに1つの実施状態において、前記Rは炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたターフェニル基、炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたテトラフェニル基、または炭素数1〜20であるアルキル基、炭素数2〜20であるアルケニル基、炭素数1〜20であるアルコキシ基、フルオレニル基、ニトリル基、ニトロ基からなる群から選択された1つ以上の置換基に置換または非置換されたナフチル基である。
【0045】
さらに1つの実施状態において、前記Rはターフェニル基である。
【0046】
さらに1つの実施状態において、前記Rはテトラフェニル基である。
【0047】
さらに1つの実施状態において、前記RおよびRは互いに相違しており、Rはフェニル基であり、Rはターフェニル基である。
【0048】
さらに1つの実施状態において、前記RおよびRは互いに相違しており、Rはビフェニル基であり、Rはターフェニル基である。
【0049】
さらに1つの実施状態において、前記RおよびRは互いに相違しており、Rはフェニル基であり、Rはテトラフェニル基である。
【0050】
さらに1つの実施状態において、前記RおよびRは互いに相違しており、Rはビフェニル基であり、Rはテトラフェニル基である。
【0051】
さらに1つの実施状態において、前記Lはフェニレン基、ビフェニレン基、またはアルキル基に置換されたフルオレニレン基であり、前記Rは水素、または炭素数1〜20のアルキル基に置換または非置換されたフェニル基であり、前記RおよびRは互いに相違しており、それぞれ独立的にRはフェニル基またはビフェニル基であり、Rはターフェニル基またはテトラフェニル基である。
【0052】
前記化学式(1)は、下記化学式(1−1)〜(1−8)のうちのいずれか1つであるジベンゾチオフェン系化合物。
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
【化7】
【0057】
【化8】
【0058】
【化9】
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
以下、本明細書について詳しく説明する。
【0062】
前記化学式(1)のジベンゾチオフェン系化合物は、置換または非置換されたジベンゾチオフェンにLを置換して中間体を生成する。その後、前記中間体に−NRを置換する方法によって製造される。
【0063】
化合物のコンジュゲーションの長さとエネルギーバンドギャップは密接な関係がある。
【0064】
具体的に、化合物のコンジュゲーションの長さが長いほどエネルギーバンドギャップが小さくなる。上述したように、前記化学式(1)の化合物のコアは制限されたコンジュゲーションを含んでいるため、これはエネルギーバンドギャップが大きい性質を有する。
【0065】
本明細書では、上述したようにエネルギーバンドギャップが大きいコア構造のR〜Rの位置に多様な置換基を導入することにより、多様なエネルギーバンドギャップを有する化合物を合成することができる。通常、エネルギーバンドギャップが大きいコア構造に置換基を導入してエネルギーバンドギャップを調節することは容易であるが、コア構造がエネルギーバンドギャップが小さな場合には置換基を導入してエネルギーバンドギャップを大きく調節し難い。さらに、本明細書では、上述したような構造のコア構造のR〜Rの位置に多様な置換基を導入することにより、化合物のHOMOおよびLUMOエネルギー準位を調節することもできる。
【0066】
また、上述したような構造のコア構造に多様な置換基を導入することにより、導入された置換基の固有特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造時に使用される正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質、および電子輸送層物質に使用される置換基を前記コア構造に導入することにより、各有機物層で求める条件を満たす物質を合成することができる。
【0067】
前記化学式(1)の化合物は、コア構造にアリーレン基によって連結したアミン構造を含んでいるため、有機発光素子で正孔注入および/または正孔輸送物質としての適切なエネルギー準位を有することができる。本明細書では、前記化学式(1)の化合物のうちから置換基によって適切なエネルギー準位を有する化合物を選択して有機発光素子に使用することにより、駆動電圧が低くて光効率が高い素子を実現することができる。
【0068】
また、前記コア構造に多様な置換基を導入することによってエネルギーバンドギャップを微細に調節可能にする一方、有機物間での界面における特性を向上するようにして物質の用途を多様にすることができる。
【0069】
また、HOMO、LUMOエネルギー準位、およびエネルギーバンドギャップを微細に調節可能にする一方、有機物間での界面における特性を向上するようにして物質の用途を多様にすることができる。
【0070】
一方、前記化学式(1)の化合物は、ガラス転移温度(Tg)が高くて熱的安全性に優れている。このような熱的安全性の増加は、素子に駆動安全性および寿命が長い素子を提供する重要な要因となる。
【0071】
また、前記化学式(1)において、下記のようなジベンゾチオフェンの構造上、Lがジベンゾチオフェンの11番の位置に連結する場合は、Lがジベンゾチオフェンの黄元素と隣接する場所である13番の位置に連結する場合よりも連結したアミン基によって電子ダミーの効果がさらに大きくなって発光層に正孔注入および伝達効率を高めることができ、これによって電圧および効率面においてさらに優れた特性を有することができる。
【0072】
【化12】
【0073】
また、前記化学式(1)でRおよびRが相違すれば、RおよびRが互いに同じである場合と比べたときよりも分子の非対称性が極大化し、極性度が大きくなる。分子の極性度の上昇は、適切なHOMO準位とは別途で発光層に正孔注入効率を高める効果を招来することができるため、低電圧素子の製作が可能となる。極性度の上昇は分子の電気陰性度の計算から確認される。
【0074】
また、本明細書の一実施状態において、第1電極、第2電極、および前記第1電極と第2電極の間に配置された発光層を含む1層以上からなる有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式(1)の化合物、または前記化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0075】
本明細書に係る有機発光素子において、本明細書に係る化合物は、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などとして使用されることができ、正孔輸送物質として使用されることがさらに好ましい。
【0076】
本明細書の有機発光素子の有機物層は単層構造で構成されることもできるが、2層以上の有機物層が積層された多層構造で構成されることもできる。例えば、本明細書の有機発光素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されることはなく、さらに少ない数の有機物層を含むことができる。
【0077】
本明細書の有機発光素子の実施状態において、図1および図2に示すような構造を有することができるが、これにのみ限定されることはない。
【0078】
図1には、基板1、正極2、発光層3、負極4が順に積層された有機発光素子の構造が例示されている。このような構造において、前記化合物は前記発光層3に含まれることができる。
【0079】
図2には、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、および負極4が順に積層された有機発光素子の構造が例示されている。このような構造において、前記化合物は、前記正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、および電子輸送層8のうちの1層以上に含まれることができる。
【0080】
本明細書の一実施状態において、前記有機物層は正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層が前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0081】
本明細書の一実施状態において、前記有機物層は2層の正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層のうちの少なくとも1層以上は、前記化学式(1)で表示される化合物、または前記化学式(1)で表示される化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0082】
さらに1つの実施状態において、前記有機物層は第1正孔輸送層および第2正孔輸送層を含み、前記第1正孔輸送層は前記ジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含み、前記第2正孔輸送層は芳香族アミン化合物が使用される。芳香族アミン化合物としては、モノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラミンを使用する。芳香族アミン化合物としては、具体的に4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(α−NPD)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(MTDATA)などがあるが、これに限定されることはない。
【0083】
本明細書において、2層以上の正孔輸送層を含む有機発光素子は、エネルギーギャップが広いホスト材料を使用して発光層を形成した場合、ホスト材料のイオン化ポテンシャル(IP)と正孔注入および正孔輸送層のイオン化ポテンシャル(IP)との差が大きくなって発光層に対する正孔の注入および輸送が困難になり、十分な輝度を得るための駆動電圧が上昇する恐れがある。このような場合にも前記化学式(1)の化合物を利用し、発光層に隣接した正孔輸送性の補助層、すなわち第1正孔輸送層を導入することにより、発光層に対する正孔輸送を容易にして駆動電圧を低下させることができる。また、前記化学式(1)の化合物を含む第1正孔輸送層は、ホスト材料よりも高いLUMOおよび三重項エネルギー値を有するように設計されることができるため、発光層からくる電子およびエキシトンを防ぎ、素子効率および寿命特性を向上させる効果がある。
【0084】
さらに1つの実施状態において、前記第2正孔輸送層は、正極と第1正孔輸送層の間に備えられる有機発光素子を提供する。
【0085】
さらに1つの実施状態において、前記第1正孔輸送層は、発光層と前記第2正孔輸送層の間に備えられる有機発光素子を提供する。
【0086】
さらに1つの実施状態において、前記第1正孔輸送層は、発光層に隣接する有機発光素子を提供する。
【0087】
前記化学式(1)で表示されるジベンゾチオフェン系化合物、または前記ジベンゾチオフェン系化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む第1正孔輸送層と発光層が接する場合、第1電極から流入した正孔が効果的に発光層まで移動し、前記ジベンゾチオフェン系化合物の正孔輸送層内の割合を調節すれば発光層内のエキシトン生成確率を高め、生成されたエキシトンが発光層全体に均一に広がって生成されるように調節することができる。このようにする場合、エキシトンが発光に寄与することができずに隣接した電子輸送層に流入し、非発光消滅する確率を減らして発光効率を良くし、エキシトンが一側に集中して発光層内の特定部分の老化が加速する効果を防ぎ、寿命が改善された有機発光素子を実現することができる。
【0088】
図3は、基板1、正極2、正孔注入層5、化学式(1)で表示される化合物を含まない正孔輸送層6−1、化学式(1)で表示される化合物を含む正孔輸送層6−2、発光層7、電子輸送層8、および負極4が順に積層された有機発光素子の構造が例示されている。
【0089】
さらに1つの実施状態において、前記有機物層は正孔注入層を含み、前記正孔注入層が前記化合物、または前記化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0090】
さらに1つの実施状態において、前記有機物層は正孔注入と正孔輸送を同時にする層を含み、この層が前記化合物、または前記化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0091】
さらに1つの実施状態において、前記有機物層は電子注入および電子輸送層を含み、この電子注入または電子輸送層が前記化合物、またはこの化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0092】
さらに1つの実施状態において、前記有機物層は発光層を含み、この発光層が前記化合物、またはこの化合物に熱硬化性または光硬化性作用基が導入された化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0093】
また、前記化学式(1)の化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法だけではなく溶液塗布法によって有機物層として形成されることができる。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これにのみ限定されることはない。
【0094】
本明細書の有機発光素子では、前記化学式(1)の化合物の代りに、前記化学式(1)の化合物に熱硬化性または光硬化性作用基を導入した化合物を使用することもできる。このような化合物は上述した化学式(1)の化合物の基本物性を維持すると同時に、素子の製作時に溶液塗布法によって薄膜として形成した後に硬化させる方法によって有機物層として形成されることができる。
【0095】
上述したように、有機発光素子の製作時に有機物に硬化性作用基を導入し、溶液塗布法によって前記有機物の薄膜を形成した後に硬化する方法によって有機物層を形成する方法は、米国特許公開2003−0044518号および欧州特許公開1146574 A2号などに記載されている。
【0096】
前記文献には、熱硬化または光硬化が可能なビニル基あるいはアクリル基を有する物質を利用し、上述したような方法によって有機物層を形成して有機発光素子を製作する場合、溶液塗布法によって多層構造を有する有機発光素子を生成することができるだけでなく、低電圧高輝度の有機発光素子を生成することができると記載されている。このような作用原理は、本明細書の化合物にも適用されることができる。
【0097】
本明細書において、前記熱硬化性または光硬化性作用基は、ビニル基またはアクリル基などであることができる。
【0098】
本明細書の有機発光素子は、有機物層のうちの1層以上が本明細書の化合物、すなわち前記化学式(1)の化合物を含むことを除いては、当技術分野に知られている材料と方法によって製造されることができる。
【0099】
例えば、本明細書の有機発光素子は、基板上に第1電極、有機物層、および第2電極を順に積層させることによって製造することができる。このとき、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e−beam evaporation)のようなPVD(physical Vapor Deposition)方法を利用し、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として使用することができる物質を蒸着させることによって製造されることができる。このような方法の他にも、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を生成することができる。
【0100】
また、前記化学式(1)の化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法だけではなく溶液塗布法によって有機物層として形成されることができる。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これにのみ限定されることはない。
【0101】
本明細書の1つの実施状態において、前記第1電極は正極になることができ、第2電極は負極になることができる。
【0102】
さらに1つの実施状態において、前記第1電極は負極になることができ、第2電極は正極になることができる。
【0103】
前記正極物質としては、通常、有機物層に正孔注入が円滑に行われるように仕事関数が大きい物質が好ましい。本明細書で使用されることができる正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれの合金、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物、ZnO、Al、またはSNO、Sbのような金属と酸化物の組み合わせ、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0104】
前記負極物質としては、通常、有機物層に電子注入が容易なように仕事関数が小さい物質であることが好ましい。負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれの合金、LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0105】
前記正孔注入物質としては、低い電圧で正極から正孔を適切に注入させることができる物質として、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリルアミン系列の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系列の有機物、キナクリドン(quinacridone)系列の有機物、ペリレン(perylene)系列の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系列の導電性高分子などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0106】
前記正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔を輸送されて発光層に移すことができる物質であって、正孔に対する移動性の大きい物質が適切である。具体的な例としては、アリルアミン系列の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0107】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子をそれぞれ輸送されて結合させることによって可視光線領域の光を出すことができる物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては、8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯物(Alq)、カバゾール系列化合物、二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物、BAlq、10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、およびベンゾイミダゾール系列の化合物、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系列の高分子、スピロ(spiro)化合物、ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これにのみ限定されることはない。
前記電子輸送物質としては、負極から電子を適切に注入させて発光層に移すことができる物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が適切である。具体的な例としては、8−ヒドロキシキノリンのAl錯物、Alqを含んだ錯物、有機ラジカル化合物、ヒドロキシフラボン−金属錯物などがあるが、これにのみ限定されることはない。
【0108】
本明細書に係る有機発光素子は、使用される材料に応じて前面発光型、後面発光型、または両面発光型であることができる。
【0109】
本明細書に係る化合物は、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどを含む有機電子素子でも、有機発光素子に適用されるものと類似した原理によって作用することができる。
【0110】
前記化学式(1)で代表される有機化合物の合成方法とこれを利用した有機発光素子の製造は、以下の実施例および比較例によってさらに具体的に説明される。しかし、このような実施例は本明細書を例示するためのものに過ぎず、本明細書の範囲がこれにのみ限定されることはない。
【実施例】
【0111】
<合成例1>化学式(1−1)で表示される化合物の製造
【化13】
【0112】
(1)化学式(1A)の製造
2−ブロモジベンゾチオフェン(30g、114mmol)と4−クロロフェニルボロン酸(19.6g、125mmol)と炭酸カリウム(KCO)(39.4g、285mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(300mL)、HO(100ml)に溶かして50℃で加熱した。テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(Pd(PPh)(1.3g、1.14mmol)を添加した後、12時間に渡って還流した。常温で冷却した後、水層を除去した。有機層に硫酸マグネシウム(MgSO)を入れた後、ろ過した。濃縮後、カラムクロマトグラフィで精製して化学式(1A)(20g、収率60%)を得た。
MS:[M+H]=294
【0113】
(2)化学式(1−1)の製造
化学式(1A)(10g、33.9mmol)、フェニル−ターフェニル基アミン(N−phenyl−[1,1’:4’,1’’−Terphenyl]−4−amine)(11.4g、35.6mmmol)、NaOtBu(4.2g、44.1mmol)、キシレン(100ml)を混合した後、100℃で加熱した。ビス[(トリ−ターシャリ−ブチル)ホスフィン]パラジウム(Pd(p−t−Bu)(170mg、0.34mmol)を添加した後、48時間に渡って還流した。常温で冷却した後、カラムクロマトグラフィで精製した。乾燥後、化学式(1−1)(6g、31%)を得た。
MS:[M+H]=580
【0114】
<合成例2>化学式(1−2)で表示される化合物の製造
【化14】
【0115】
(1)化学式(1B)の製造
前記合成例1の化合物1Aの製造において、化合物4−クロロフェニルボロン酸の代わりに、化合物4−クロロビフェニルボロン酸(25g、125mmol)を使用したことを除いては、同じ方法によって製造して化学式(1B)(25g、収率59%)を得た。
MS:[M+H]=371
【0116】
(2)化学式(1−2)の製造
化学式(1B)(10g、27mmol)、フェニル−ターフェニル基アミン(N−phenyl−[1,1’:4’,1’’−Terphenyl]−4−amine)(9.1g、28.4mmol)、NaOtBu(3.4g、35.1mmol)、キシレン(100ml)を混合した後、100℃で加熱した。ビス[(トリ−ターシャリ−ブチル)ホスフィン]パラジウム(Pd[P(t−Bu](138mg、0.27mmol)を添加した後、48時間に渡って還流した。常温で冷却した後、カラムクロマトグラフィで精製した。乾燥後、化学式(1−2)(7.3g、41%)を得た。
MS:[M+H]=656
【0117】
<合成例3>化学式(1−3)で表示される化合物の製造
【化15】
【0118】
(1)化学式(1C)の製造
2−ジベンゾチオフェンボロン酸(10g、43.9mmol)と2−ブロモ−7−ヨード−9,9−ジメチル−9H−フルオレン(17.5g、43.9mmol)と炭酸カリウム(KCO)(18.2g、132mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(300ml)、水100mlに溶かして50℃で加熱した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)(1.0g、0.88mmol)を添加した後、12時間に渡って還流した。常温で冷却した後、水層を除去した。有機層に硫酸マグネシウム(MgSO)を入れた後、ろ過した。濃縮後、カラムクロマトグラフィで精製して化学式(1C)(15g、収率75%)を得た。
MS:[M+H]=455
【0119】
(2)化学式(1−3)の製造
前記合成例1の化合物1−1の製造において、化合物1Aの代わりに化合物1C(10g、22mmol)を使用したことを除いては、同じ方法によって製造して化合物1−3(7g、46%)を得た。
MS:[M+H]=695
【0120】
<合成例4>化学式(1−4)で表示される化合物の製造
【化16】
【0121】
(1)化学式(1D)の製造
ジクロロメタン1Lが入っているフラスコに化合物1A(30g、102mmol)を投入して溶かした後、前記フラスコにブロム(5.26ml、102mmol)をジクロロメタン400mlで薄めた溶液をゆっくり滴下して12時間に渡って撹拌した。反応が終わった後、前記フラスコに入っている反応液を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄した後、フラスコで有機層を分離して無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過した。ろ過液を濃縮させた後、ジクロロメタンとエチルアルコールによって再結晶化して白色固体の化合物(15.2g、40%)を得た。
【0122】
この化合物を再びフェニルボロン酸(5.5g、44.8mmol)、炭酸カリウム(KCO)(16.9g、122mmol)と共にテトラヒドロフラン(THF)(400ml)、水150mlに溶かし、90℃で加熱した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)(0.94g、0.81mmol)を添加した後、12時間に渡って還流した。常温で冷却した後、水層を除去した。有機層に硫酸マグネシウム(MgSO)を入れた後、ろ過した。濃縮後、カラムクロマトグラフィで精製して化学式(1D)(8g、収率51%)を得た。
MS:[M+H]=371
【0123】
(2)化学式(1−4)の製造
前記合成例1の化合物1−1の製造において、化合物1Aの代わりに化合物1D(10g、27mmol)を使用したことを除いては、同じ方法で製造して化合物1−4(9.75g、55%)を得た。
MS:[M+H]=656
【0124】
<合成例5>化学式(1−7)で表示される化合物の製造
【化17】
(1)化学式(1−7)の製造
前記合成例1の化合物1−1の製造において、化合物フェニル−ターフェニル基アミン(N−phenyl−[1,1’:4’,1’’−Terphenyl]−4−amine)の代わりに化合物ビフェニル−ターフェニル基アミン(N−biphenyl−[1,1’:4’,1’’−Terphenyl]−4−amine)(14.1g、35.6mmol)を使用したことを除いては、同じ方法で製造して化合物1−7(8.9g、40%)を得た。
MS:[M+H]=656
【0125】
<合成例6>化学式(1−8)で表示される化合物の製造
【化18】
【0126】
(1)化学式(1−8)の製造
前記合成例1の化合物1−1の製造において、化合物フェニル−ターフェニル基アミン(N−phenyl−[1,1’:4’,1’’−Terphenyl]−4−amine)の代わりに化合物フェニル−テトラフェニル基アミン(N−phenyl−[1,1’:4’,1’’−Tetraphenyl]−4−amine)(14.1g、35.6mmol)を使用したことを除いては、同じ方法で製造して化合物1−8(10g、45%)を得た。
MS:[M+H]=656
【0127】
<実施例1>
ITO(インジウムスズ酸化物)が1000Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板(corning 7059 glass)を、分散剤を溶かした蒸溜水に入れて超音波で洗浄した。洗剤はFischer Co.の製品を使用し、蒸溜水はMillipore Co.製品のフィルタ(Filter)で2次ろ過した蒸溜水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸溜水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間行った。蒸溜水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤の順に超音波洗浄して乾燥させた。
【0128】
このように準備されたITO透明電極上に、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene)を500Åの厚さで熱真空蒸着して正孔注入層を形成した。その上に正孔を輸送する物質である上述した合成例1で合成した化学式(1−1)(400Å)を真空蒸着した後、発光層としてホストH1とドーパントD1化合物を300Åの厚さで真空蒸着した。その次に、E1化合物(300Å)を電子注入および輸送層に順に熱真空蒸着した。前記電子輸送層上に順に12Åの厚さのリチウムフルオライド(LiF)と2000Åの厚さのアルミニウムを蒸着して負極を形成して有機発光素子を製造した。
【0129】
上述した過程で、有機物の蒸着速度は1Å/secを維持し、リチウムフルライドは0.2Å/sec、アルミニウムは3〜7Å/secの蒸着速度を維持した。
【化19】
【0130】
<実施例2>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例1で合成した化学式(1−1)の代わりに化学式(1−2)を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0131】
<実施例3>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例1で合成した化学式(1−1)の代わりに化学式(1−3)を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0132】
<実施例4>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例1で合成した化学式(1−1)の代わりに化学式(1−5)を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0133】
<実施例5>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例1で合成した化学式(1−1)の代わりに化学式(1−7)を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0134】
<実施例6>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例1で合成した化学式(1−1)の代わりに化学式(1−8)を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0135】
<比較例1>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例で合成した化学式(1−1)の代わりにHT1を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0136】
<比較例2>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例で合成した化学式(1−1)の代わりにNPBを使用したことを除いては、同じように実験した。
【0137】
<比較例3>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例で合成した化学式(1−1)の代わりにHT2を使用したことを除いては、同じように実験した。
【0138】
<比較例4>
前記実施例1において正孔輸送層として合成例で合成した化学式(1−1)の代わりにHT3を使用したことを除いては、同じように実験した。
前記実施例1〜6および比較例1〜比較例4のように、それぞれの化合物を正孔輸送層物質として使用して製造した有機発光素子を実験した結果を表1に示した。
【0139】
【表1】
【0140】
前記表1で分かるように、本願明細書の化合物を正孔輸送層物質として使用して製造された有機発光素子の場合には、従来の物質を使用した場合と比べたとき、効率、駆動電圧、安全性面において優れた特性を示す。
【0141】
また、表1で分かるように、本願明細書の化合物を正孔輸送層物質として使用して製造された有機発光素子の場合には、RおよびRがすべて同じである場合と比べたとき、発光層に正孔注入効率を高めることができ、低電圧が可能であり、効率面において優れた特性を示す。
【0142】
さらに、表1で分かるように、本願明細書の化合物を正孔輸送層物質として使用して製造された有機発光素子の場合には、ジベンゾチオフェンの13番の位置にアミンが置換された比較例4の場合と比べたとき、連結したアミン基によってSの電子ダミー効果を有するようになり、発光層に正孔注入および伝達効率を高めることができ、これによって電圧および効率面において優れた特性を示す。
図1
図2
図3