(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動分析装置では、一般的に、試薬保冷庫内に設置された試薬容器内から試薬を吸引するために、試薬保冷庫には試薬吸引用の貫通孔が設けられている。この貫通孔から保冷庫内に高温多湿の外気が侵入すると、試薬保冷庫内の温度上昇や、流入した外気が露点以下に冷やされることにより保冷庫内に結露が生じる、といった問題が発生する。保冷庫内の温度上昇は試薬の劣化を早める恐れがあり、さらに試薬保冷庫内に生じた結露は、結露水が試薬容器内に侵入することにより試薬の状態を変化させる恐れがある。
【0008】
また、試薬容器には試薬判別用のタグが取り付けられることがあり、タグに結露水が付着することによるタグの損傷などの問題も生じる。
【0009】
これらの問題に対して、前述のように、試薬取り出し口を有する試薬保冷庫内に、温度調節器によって設定温度に調節された冷気を送り込む冷気送風手段を備えることを特徴とした自動分析装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0010】
前記特許文献1の自動分析装置の構成においては、試薬取り出し口から冷気が噴き出すことで試薬保冷庫内に外気が侵入するのを防いでいるが、しかしながら、温度調節器から冷気送風孔までの経路で、冷気の温度上昇を考慮する必要がある。その際、冷気の温度上昇を抑制するためには温度調節器と冷気通風孔の距離を短くし、かつ送風管に断熱構造を設ける必要があるが、この場合、装置構成に対して大きな制約を受けることが課題である。
【0011】
つまり、保冷庫内を満たし続ける量の空気を冷却する温度調節器は試薬保冷庫の大きさに比例して大きくなる傾向がある。
【0012】
また、特許文献2においても、特許文献1と同様に試薬取り出し口から冷気が噴き出す方式を取っているが、試薬保冷庫の直下に大型の冷気循環器を配置する必要があり、同様に装置構成に対して大きな制約を受けることが課題である。
【0013】
本発明の目的は、自動分析装置の装置構成に対する制約を受けにくくし、かつ試薬保冷庫内の結露を抑制することができる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
本発明に係る自動分析装置は、検体と試薬を反応させて前記検体中の成分を分析するものであり、前記試薬を収容する試薬容器が配置される試薬設置部と、前記試薬設置部を内包する保冷庫と、を有している。また、前記保冷庫には、前記試薬容器から前記試薬を吸引するノズルが通過可能な貫通孔が形成され、前記保冷庫は、三重壁構造によって囲まれた内部を備えるとともに、前記三重壁構造はそれぞれの壁によって仕切られた第1空間及び第2空間を備えている。さらに、前記第1空間は、前記保冷庫内に導入する冷却空気を形成する経路として用いられる第1空気導入経路を備え、前記第2空間は、前記保冷庫の内壁及び前記第1空気導入経路を形成する壁を冷却する流体が通過する経路として用いられる冷却流体経路を備え、前記第1空気導入経路は、前記保冷庫内に繋がる第1冷気導入経路と連通しており、前記第1空気導入経路内の空気を前記冷却流体経路の壁面によって冷却し、前記第1冷気導入経路を介して前記保冷庫内に送り込むものである。
【0017】
また、前記第1空間と前記第2空間を仕切る部材は熱伝導の良い材料(例えば金属材)を用いることが望ましい。
【0018】
また、本発明の自動分析装置の前記保冷庫は前記第1空気導入経路の任意の位置に、冷却空気を保冷庫内に導入する冷気導入経路を有している。前記冷気導入経路は十分に冷却された冷気を導入するために、前記第1空気導入経路の空気導入器口から一定距離以上離れた位置に配置されることが望ましい。
【0019】
また、前記第1空気導入経路は前記第1空間に仕切りを設けることにより、空気が流れる経路長を長くすることが容易である。
【0020】
また、前記保冷庫の形状は任意であるが、試薬容器を放射状に円を描くように配置し、試薬保冷庫を円筒状にすることにより、保冷庫の壁面からの距離を均等にすることにより、試薬容器全てを均一に冷却することが望ましい。
【0021】
また、前記保冷庫は、試薬容器を設置、取り出しを行うため蓋部材を有しているが、蓋部材の内部に冷却空気の経路を有しており、保冷庫の上方から冷気が噴き出す構造を有していてもよい。
【0022】
また、前記第1空気導入経路に取り込まれた外気が冷却されることより経路内に結露が生じ得るため、前記第1空気導入経路には結露排出経路(排水管)を有しても良い。
【0023】
また、前記結露排出経路からも冷気が噴き出すため、必要に応じて弁を設けてもよい。
【0024】
また、本発明に係る自動分析装置は、検体と試薬を反応させて前記検体中の成分を分析するものであり、前記試薬を収容する試薬容器が配置される試薬設置部と、前記試薬設置部を内包する保冷庫と、を有している。また、前記保冷庫には、前記試薬容器から前記試薬を吸引するノズルが通過可能な貫通孔が形成され、前記保冷庫は、多重壁構造によって囲まれた内部を備えるとともに、前記多重壁構造のうちの何れかの壁によって仕切られた第1空間及び第2空間を備えている。さらに、前記第1空間は、前記保冷庫内に導入する冷却空気を形成する経路として用いられる第1空気導入経路を備え、前記第2空間は、前記保冷庫の内壁及び前記第1空気導入経路を形成する壁を冷却する流体が通過する経路として用いられる冷却流体経路を備え、前記第1空気導入経路は、前記保冷庫内に繋がる第1冷気導入経路と連通しており、前記第1空気導入経路内の空気を前記冷却流体経路の壁面によって冷却し、前記第1冷気導入経路を介して前記保冷庫内に送り込むものである。
【発明の効果】
【0025】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0026】
自動分析装置の試薬保冷庫の貫通孔から外気が流入することを防いで、試薬保冷庫内での結露発生を抑制することができる。また、冷気導入経路から試薬保冷庫内に導入する冷却空気は、試薬保冷庫の内部の空気とほぼ同じ温度まで冷却されるため、導入された空気によって結露が生じることはなく、試薬保冷庫内の温度を均一にすることができる。
【0027】
また、試薬保冷庫内に導入する冷却空気の経路が試薬保冷庫と一体となっており、装置構成上、試薬保冷庫に関する機構をコンパクトに纏めることが可能である。
【0028】
また、自動分析装置の試薬保冷庫を大容量化する際、試薬保冷庫の大型化に伴う空気導入経路と冷却流体経路の長尺化を容易に行うことができ、装置寸法によらない保冷方式を実現することができる。すなわち、装置構成に対する制約を受けにくくし、かつ試薬保冷庫内の結露を抑制することができる自動分析装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0031】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0032】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0033】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0034】
また、以下の実施の形態において、構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲等についても同様である。
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0036】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の自動分析装置の全体構成の一例を一部破断して示す平面図、
図2は
図1に示す自動分析装置の試薬保冷庫を模式的に示す断面図である。
【0037】
図1に示す本実施の形態1の自動分析装置100は、検体(以降、サンプルともいう)と試薬を反応させて検体中の特定成分を分析するものであり、その概略構成について説明すると、試薬を収容する試薬容器118が配置される試薬容器設置部(試薬設置部)111と、試薬容器設置部111を内包する試薬保冷庫(保冷庫)119と、サンプル(検体)を保持するサンプル容器102が架設されたラック101の搬送ラインであるラック搬送ライン117とを有している。
【0038】
さらに、自動分析装置100には、複数の反応容器105を設置可能な円盤状のインキュベータディスク104と、サンプルを分け注ぐノズルであるサンプル分注ノズル103と、試薬を分け注ぐノズルである試薬分注ノズル114と、反応容器105を搬送する機構である反応容器搬送機構115等が設けられている。
【0039】
また、円盤状のインキュベータディスク104には、前述のように複数の反応容器105が設置可能であり、円周方向に設置された反応容器105をそれぞれ所定位置まで移動させるための回転移動が可能なようにインキュベータディスク104は取り付けられている。
【0040】
なお、自動分析装置100では、そのラック101には前述のようにサンプルを保持するサンプル容器102が架設されており、ラック搬送ライン117によってサンプル分注ノズル103の近傍のサンプル分注位置120までサンプル容器102を移動させる。
【0041】
また、インキュベータディスク104の近傍には、サンプル分注チップ/反応容器搬送機構106が、X軸、Y軸、Z軸の3方向に移動可能に設置されている。このサンプル分注チップ/反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ/反応容器保持部材107、反応容器攪拌機構108、サンプル分注チップ/反応容器廃棄孔109、サンプル分注チップ装着位置110、インキュベータディスク104の所定箇所、の範囲を移動可能なように取り付けられており、これにより、サンプル分注チップおよび反応容器105の搬送を行う。
【0042】
なお、サンプル分注チップ/反応容器保持部材107には、未使用の反応容器105とサンプル分注チップが複数設置されている。したがって、サンプル分注チップ/反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ/反応容器保持部材107の上方に移動し、その後、下降して未使用の反応容器105を把持し、把持後、上昇する。その後、インキュベータディスク104の所定位置の上方に移動し、下降してインキュベータディスク104に未使用の反応容器105を設置する。
【0043】
また、サンプル分注チップ/反応容器搬送機構106は、サンプル分注チップ/反応容器保持部材107の上方に移動し、その後、下降して未使用のサンプル分注チップを把持し、把持後に上昇する。さらに、サンプル分注チップ装着位置110の上方に移動し、そこで下降してサンプル分注チップをサンプル分注チップ装着位置110に設置する。
【0044】
また、サンプル分注ノズル103は、回動および上下動可能に設置されており、サンプル分注チップ装着位置110の上方に回動移動した後、下降して、サンプル分注ノズル103の先端にサンプル分注チップを圧入して装着する。その後、前記サンプル分注チップを装着したサンプル分注ノズル103は、ラック101に載置されたサンプル容器102の上方に移動した後に下降して、サンプル容器102に保持されたサンプルを所定量吸引する。
【0045】
さらに、前記サンプルを吸引したサンプル分注ノズル103は、インキュベータディスク104の上方に移動した後に下降して、インキュベータディスク104に保持された未使用の反応容器105に、サンプルを吐出する。前記サンプルの吐出が終了すると、サンプル分注ノズル103は、サンプル分注チップ/反応容器廃棄孔109の上方に移動し、使用済みのサンプル分注チップをサンプル分注チップ/反応容器廃棄孔109から廃棄する。
【0046】
また、試薬保冷庫119の内部に配置された試薬容器設置部111には、複数の試薬容器118が設置されている。さらに、試薬容器設置部111の上部には試薬保冷庫119の蓋(蓋部材)112が設けられ、試薬保冷庫119によってその内部は所定の温度に保温することが可能である。
【0047】
また、蓋112の一部には、試薬吸引用の貫通孔である試薬吸引用孔113が設けられている。なお、試薬分注ノズル114は回転と上下移動が可能なように取り付けられており、試薬保冷庫119の蓋112に設けられた試薬吸引用孔113の上方に回転移動した後に下降し、試薬吸引用孔113を通過する。その後、試薬吸引用孔113を通った試薬分注ノズル114の先端を所定の試薬容器118内の試薬に挿入して、所定量の試薬を吸引する。その後、試薬分注ノズル114は上昇した後に、インキュベータディスク104の所定位置の上方に回転移動して、インキュベータディスク104に設置された反応容器105内に試薬を吐出する。
【0048】
サンプルおよび試薬が吐出された反応容器105は、インキュベータディスク104の回転によって所定位置に移動し、さらにサンプル分注チップ/反応容器搬送機構106によって、反応容器攪拌機構108に搬送される。反応容器攪拌機構108は、反応容器105に対して回転運動を加えることで反応容器105内のサンプルと試薬を攪拌して混和する。なお、攪拌の終了した反応容器105は、サンプル分注チップ/反応容器搬送機構106によって、インキュベータディスク104の所定位置に戻される。
【0049】
また、反応容器搬送機構115は回転と上下移動が可能なように取り付けられており、サンプルと試薬の分注と攪拌が終了し、かつインキュベータディスク104で所定の反応時間が経過した反応容器105の上方に移動して下降し、反応容器105を把持する。その後、反応容器105は、反応容器搬送機構115の回転移動によって検出ユニット116に搬送され、検出ユニット116においてサンプル中の特定成分の分析結果が示される。
【0050】
なお、以上の各構成部材の駆動および駆動タイミングについては、図示されていない自動分析装置100の制御装置(例えばコンピュータ)によって制御されている。
【0051】
次に、
図2に示す試薬保冷庫119について詳細に説明する。
【0052】
図1の自動分析装置100の試薬保冷庫119には、その内部に試薬容器設置部111が配置されており、試薬容器設置部111には試薬容器118が複数個設置される。試薬保冷庫119は、その形状は任意であるが、同一円上の試薬容器118の内壁(壁面122c)からの距離が均等になるように円筒状に形成されている。また、試薬容器設置部111は、平面視が円形になるように形成されており、円筒状の試薬保冷庫119の内部において試薬容器118が放射状に円を描くように配置されている。したがって、
図2に示すように、試薬保冷庫119の外部に設けられたモータ126が回転することにより、試薬保冷庫119の内部で試薬容器設置部111が回転する。
【0053】
これにより、試薬容器設置部111上に配置された所定の試薬容器118は試薬吸引用孔113の直下まで運ばれ、この状態で
図1に示す試薬分注ノズル114が試薬吸引用孔113を介して試薬容器118から試薬を吸引する。なお、
図2に示すように、試薬吸引用孔113は蓋112に形成されており、外気と試薬保冷庫119の内部は試薬吸引用孔113を介して連通している。すなわち、蓋112には、試薬容器118から試薬を吸引する試薬分注ノズル114が通過可能な試薬吸引用孔113が形成されており、試薬保冷庫119の内部と外部とがこの試薬吸引用孔113を介して連通している。
【0054】
また、試薬保冷庫119の内部の保冷は、基本的に冷却流体経路122aの内部を流れる冷却水122dによって試薬保冷庫119の内部の壁面122cが冷却され、これにより、試薬保冷庫119の内部の空気が冷やされることで行われる。
【0055】
ここで、本実施の形態1の試薬保冷庫119は、三重壁構造によって囲まれた内部を備えている。つまり、試薬保冷庫119は、三重壁構造によって囲まれた内部と、この内部の上部を覆い、かつこの三重壁構造と接合する蓋112を有している。したがって、試薬保冷庫119の内部は、三重壁構造と上部の蓋112とによって囲まれた空間である。さらに、この蓋112に試薬吸引用孔113が形成されている。
【0056】
また、試薬保冷庫119の前記三重壁構造は、それぞれの壁122bによって仕切られた第1空間121及び第2空間122を備えている。つまり、この三重壁構造が3枚の壁122bによって仕切られた2つの空間を形成している。前記三重壁構造内の2つの空間のうち、外側の空間が第1空間121であり、この第1空間121は、試薬保冷庫119内に導入する冷却空気121bを形成する経路として用いられる空気導入経路(第1空気導入経路)121aを備えている。
【0057】
一方、前記三重壁構造内の2つの空間のうち、内側の空間が第2空間122であり、この第2空間122は、試薬保冷庫119の内壁(内側の壁122b)及び空気導入経路121aを形成する壁122bを冷却する冷却水(流体)122dが通過する経路として用いられる冷却流体経路122aを備えている。
【0058】
さらに、空気導入経路121aは、試薬保冷庫119内に繋がる冷気導入経路(第1冷気導入経路)125と連通しており、これにより、本実施の形態1の自動分析装置100の試薬保冷庫119では、空気導入経路121a内の空気を冷却流体経路122aの壁面122cによって冷却し、冷気導入経路125を介して冷却空気121bを試薬保冷庫119内に送り込んでいる。
【0059】
すなわち、本実施の形態1の自動分析装置100では、試薬保冷庫119の内部を囲む壁が三重壁構造となっており、この三重壁構造内に形成した第1空間121と第2空間122とで熱交換を行って冷却した冷却空気121bを、冷気導入経路125を介して試薬保冷庫119内に送り込んでいる。つまり、三重壁構造内で冷却された流体(冷却水122d)を循環する方式と、前記流体によって冷却されたた空気(冷却空気121b)を直接試薬保冷庫119の内部に導入する方式とを用いている。
【0060】
なお、三重壁構造の内側の第2空間122において、冷却流体経路122aは冷水循環器123と接続され、閉流路となり第2空間122で冷却水122dを循環させている。また、三重壁構造の外側の第1空間121においては、空気導入経路121aに空気導入器124が接続されており、この空気導入器124から空気導入経路121a内に絶えず空気が送り込まれ続けている。
【0061】
ここで、冷却流体経路122a(第2空間122)と空気導入経路121a(第1空間121)を仕切る壁面122cは、冷却流体経路122aの内部に流れる冷却水122dと空気導入経路121aの内部の空気が十分に熱交換できる材料(例えばアルミニウム合金等の金属材)を使用することが望ましい。したがって、三重壁構造の3枚の壁122bは、熱伝導率の高い金属材によって形成されることが望ましい。
【0062】
この熱交換によって十分に冷却された空気(冷却空気121b)が冷気導入経路125から試薬保冷庫119の内部に導入される。本実施の形態1の試薬保冷庫119では、この十分に冷却された冷却空気121bが、冷却されたまま確実に試薬保冷庫119の内部に導入され、かつ試薬吸引用孔113から空気が噴き出すことにより、試薬保冷庫119内への外気の侵入を防ぐことができる。
【0063】
なお、冷気導入経路125の配置に関しては、試薬吸引用孔113から空気が噴き出すことが達成可能であれば特に制約はないが、試薬保冷庫119内に温度勾配が生じるような構造であれば、冷却空気121bによって温度勾配を解消できるような配置にしても良い。
【0064】
また、空気導入経路121aの外側は、断熱材129によって覆われていることが望ましい。これにより、空気導入経路121aの外気温度による温度変化を抑制している。
【0065】
また、空気導入経路121aには高温多湿の空気が導入されるケースも想定され、この経路内での結露も想定される。したがって、この結露の排水口を設けておくことが望ましい。つまり、空気導入経路121aに、この空気導入経路121aで発生した結露を排水する排水管(結露排出経路)130、および排水管130に設けられた弁131が取り付けられていることが望ましい。その際、排水管130の排水口(結露排出経路)からも冷気が噴き出すことになるので、前記排水口の径を大きくすることは望ましくない。そこで、冷気を効率よく使用するために、この排水口に連通する排水管130に弁131を設け、かつ制御部(図示していない)によって所定の間隔(例えば1時間毎に10秒開放等)で弁131を開放することで、結露水を排水してもよい。
【0066】
また、本実施の形態1の試薬保冷庫119では、空気導入経路121aの任意の位置に、冷却空気121bを試薬保冷庫119内に導入する冷気導入経路125が形成されている。
図2に示す構造では、試薬保冷庫119の内部の内壁(内側の壁面122c)の側面に冷気導入経路125が繋がっている。この冷気導入経路125は、十分に冷却された冷気(冷却空気121b)を試薬保冷庫119内に導入可能なように、空気導入経路121aにおいてその空気導入器口124aから一定距離以上離れた位置に配置されることが望ましい(このことは以下の空気導入経路121aの構造の説明内で述べる)。
【0067】
次に、試薬保冷庫119の三重壁構造内の2つの空間のうちの外側の第1空間121における空気導入経路121aの構造について説明する。
【0068】
図3は
図2に示す試薬保冷庫のA−A線で切断した構造の一例を模式的に示す断面図、
図4は
図2のA−A線で切断した構造の変形例を模式的に示す断面図である。なお、
図3および
図4は試薬保冷庫119のA−A断面を上面側から眺めた図である。
【0069】
図3に示すように、第1空間121に、空気導入経路121aを形成する仕切り板(仕切り部材)132が設けられていることが望ましく、第1空間121に複数の仕切り板132を設けて空気導入経路121aを形成することにより、空気導入経路121aの空気が流れる経路長を長くすることができる。
【0070】
すなわち、第1空間121において、十分に冷却された空気を作るために空気導入経路121aは冷却流体経路122aの壁面122cと接した状態で十分に長く用意する必要がある。複数の仕切り板132によって仕切られて空気導入経路121aが形成されていることにより、空気導入器口124aから導入された空気は複数の仕切り板132によって進行方向(経路)が決定付けられる。なお、点線で描いた経路は空気が通る道R1となる。
【0071】
このように第1空間121において空気導入経路121aを形成する仕切り板132の数を増やすことにより、空気が通る道R1を形成する上で十分に長い経路を作製することが可能になり、空気を確実に冷却することが可能になる。例えば、空気導入経路121aにおいて
図2の冷気導入経路125を、空気導入器口124aから一定距離(一例として円筒状の試薬保冷庫119の円形の底部の直径L)以上離れた位置に配置することにより、空気導入経路121aにおける空気が流れる経路長を十分に長くすることができ、その結果、空気の熱交換を十分に行って、冷気導入経路125を介して試薬保冷庫119内に取り込む空気を十分に冷却することができる。
【0072】
なお、
図4は第1空間121において、仕切り板132の数をさらに増やして設けた変形例であり、空気が通る道R2をさらに長く形成したものである。
図4に示す空気導入経路121aであれば、空気が通る道R2が前記R1よりさらに長くなることで、さらに空気を確実に冷却することが可能になる。
【0073】
本実施の形態1によれば、三重壁構造の内部で冷却された流体(冷却水122d)を循環する方式と、前記冷却水122dによって冷却された空気(冷却空気121b)を直接試薬保冷庫119内に導入する方式とを用いることが可能な自動分析装置100であることにより、両方式の双方の利点を有しており、効率的な冷却を行うことができる。
【0074】
したがって、試薬保冷庫119を、冷却された空気(冷却空気121b)によって大気圧以上にすることにより、試薬吸引用の貫通孔である試薬吸引用孔113から冷気が噴き出すため、この試薬吸引用孔113からの外気の流入を低減または防止することができる。
【0075】
その結果、試薬保冷庫119内での結露発生を抑制することができる。
【0076】
また、試薬保冷庫119においては、三重壁構造内の2つの空間のうちの内側の第2空間122における冷却流体経路122aを循環する冷却水122dによって、試薬保冷庫119の内部と、第1空間121における空気導入経路121aの空気との両者が冷却される。
【0077】
したがって、冷気導入経路125から試薬保冷庫119内に導入する冷却される空気は、試薬保冷庫119の内部の空気とほぼ同じ温度まで冷却されるため、導入された空気によって結露が生じることはなく、試薬保冷庫119の内部の温度を均一にすることができる。
【0078】
また、試薬保冷庫119が円筒状に形成され、かつ試薬保冷庫119の内部で試薬容器118を放射状に円を描くように配置することにより、各試薬容器118と、試薬保冷庫119の内壁(内側の壁面122c)との距離を均等にすることができ、全ての試薬容器118を均一に冷却することができる。
【0079】
また、試薬保冷庫119の内部に導入する冷却空気121bの経路(空気導入経路121a)が、試薬保冷庫119の外周壁である三重壁構造内に形成されて試薬保冷庫119と一体となっており、その結果、自動分析装置100の装置構成上、試薬保冷庫119に関する機構をコンパクトに纏めることができる。
【0080】
さらに、試薬保冷庫119の三重壁構造内に空気導入経路121aと冷却流体経路122aが形成されて一体化された構造となっているため、自動分析装置100の試薬保冷庫119を大容量化する際、試薬保冷庫119の大型化に伴う空気導入経路121aと冷却流体経路122aの長尺化を容易に行うことができ、装置寸法によらない保冷方式を実現することができる。すなわち、装置構成に対する制約を受けにくくし、かつ試薬保冷庫119内の結露を抑制することができる自動分析装置100を実現することができる。
【0081】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2の自動分析装置における試薬保冷庫を模式的に示す断面図である。
【0082】
本実施の形態2では、試薬保冷庫119において、その蓋112の内部に空気導入経路(第2空気導入経路)127と、冷気導入経路(第2冷気導入経路)128とが設けられている場合を説明する。したがって、ここでは実施の形態1の試薬保冷庫119と異なっている部分のみについて説明し、重複している部分についての説明は省略する。
【0083】
本実施の形態2の試薬保冷庫119は、その上部の蓋112の内部にも空気導入経路127及び冷気導入経路128を有している。つまり、
図5に示すように、試薬保冷庫119の蓋112の内部に、空気導入経路127と、この空気導入経路127に連通し、かつ試薬保冷庫119内に繋がる冷気導入経路128とが設けられ、空気導入経路127の冷却空気(冷気)121bは、冷気導入経路128を介して試薬保冷庫119内に送り込まれる。
【0084】
なお、蓋112側の空気導入経路127は、連結部133を介して三重壁構造側の空気導入経路121aと連通している。したがって、空気導入器124によって送られた空気は、内側の冷却流体経路122aによって冷やされながら空気導入経路121aを通ることで冷却空気121bとなり、さらに連結部133を介して蓋112側の空気導入経路127へと流れた後、蓋112側の冷気導入経路128を介して試薬保冷庫119内に送り込まれる。
【0085】
また、本実施の形態2の試薬保冷庫119では、三重壁構造側の冷気導入経路(第1冷気導入経路)125は、試薬容器設置部111の下部と側部の位置に形成されている。すなわち、本実施の形態2の試薬保冷庫119では、第1冷気導入経路である冷気導入経路125は、試薬保冷庫119の内壁(内側の壁122b)の底面と側面の位置に形成されており、また、第2冷気導入経路である冷気導入経路128は、試薬保冷庫119の上面(蓋112)に形成されている。
【0086】
これにより、実施の形態1の試薬保冷庫119に比較して試薬保冷庫119内の冷却空気(冷気)121bの噴き出し口の数を増やすことができる。
【0087】
本実施の形態2の自動分析装置100によれば、試薬保冷庫119内の上面、側面および底面に冷却空気121bの噴き出し口が形成され、これにより、試薬保冷庫119の内壁の壁面122cを素早く十分に冷却することができる。その結果、試薬保冷庫119の内部の温度を所定の温度に到達させるのに掛かる時間の短縮化を図ることができる。すなわち、試薬保冷庫119内の初期冷却速度を向上させることができる。
【0088】
これは、自動分析装置100の立ち上げ時や試薬容器118の交換時には、大量の外気が試薬保冷庫119内に存在するため、試薬保冷庫119内の初期冷却速度を向上させることには大きな利点があり、したがって、本実施の形態2の試薬保冷庫119の構造は、非常に有効である。
【0089】
なお、本実施の形態2の自動分析装置100におけるその他の構造と前記その他の構造によって得られるその他の効果については、実施の形態1の自動分析装置100のものと同様であるため、その重複説明については省略する。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0091】
例えば、前記実施の形態1,2では、試薬保冷庫119の内部を囲む外周の壁が三重壁構造の場合を取り上げて説明したが、自動分析装置100の試薬保冷庫119における外周の壁の構造は、三重構造に限らず、熱交換を行うことが可能であれば、三重以上の多重壁構造であってもよい。例えば、四重壁構造として、四枚の壁によって仕切られた3つの空間を備え、内側の空間から順に第1冷気導入経路、第1空気導入経路が形成され、最も外側の空間に断熱材が配置された構造であってもよい。