(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2封止膜形成工程は、前記第1封止膜が形成された複数の表示素子に略同時に前記第2の封止膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の表示デバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
本発明に係る表示デバイスは、減圧空間内で、基板上に形成された複数の表示素子の表面に、所定時間内の耐透湿性が確保された薄膜の第1封止膜を形成して仮封止体を作製し、これを大気圧空間へ取り出して一時保管した後、表示デバイスの用途に応じて各別に第1封止膜上に第2封止膜を形成してなる。第1封止膜及び第2封止膜の材質、層構造(単層及び複層のいずれか)は、表示デバイスの用途に基づき要求される耐透湿性等に応じて適宜に設定する。第2封止膜は成膜する場合には限定されず、第2封止膜として、ガスバリア基板を仮封止体の表面に接合することにしてもよい。さらに、本発明に係る表示デバイスは、仮封止体の第1封止膜上に第2封止膜を成膜した後、該第2封止膜の表面に接着層を介し、ガスバリア基板を接合することにしてもよい。
【0013】
第1封止膜の材料としては、例えばパラフィン等の炭化水素,アモルファスハイドロカーボン(以下、α−CH
x という)等の有機材料、例えば窒化珪素(SiN)、窒化酸化珪素(SiON)等の無機材料が挙げられる。上述したように、第1封止膜は複層からなるものであってもよいが、表示素子が有機材料からなる場合、表示素子と化学反応が生じないという観点から、表示素子の直上に形成する膜は無機材料からなるのが好ましい。第2封止膜の材料としては、例えば前記有機材料、例えばSiN、SiON、Al、酸化アルミニウム(Al
2 O
3 )等の無機材料が挙げられる。第2封止膜は複層からなるものであってもよいが、より耐透湿性が良好であるという観点から、第2封止膜の最上層は無機材料からなるのが好ましい。SiN膜、SiON膜、及びα−CH
x 膜はプラズマCVDにより成膜され、炭化水素膜は物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)により成膜され、Al膜、Al
2 O
3 膜はスパッタリングにより成膜される。
【0014】
第1封止膜の厚さは、第1封止膜を成膜した減圧空間から仮封止体を大気圧空間へ取り出して一時保管する場合に、耐透湿性を確保できる厚さであればよい。すなわち大気による吸湿劣化が生じない厚さであればよい。膜の材質、大気圧空間内で一時保管する時間等に応じて適宜の厚さを設定することができる。第2封止膜の厚さは、表示デバイスの用途に基づき要求される耐透湿性等に応じて適宜に設定できる。
第1封止膜の直上に、第2封止膜をCVDにより成膜する場合、アルゴン等の不活性ガスのプラズマ処理により第1封止膜の表面に付着した水分等を除去することにしてもよい。この場合、第1封止膜と第2封止膜との密着性が向上し、封止性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る表示デバイス製造装置は、減圧下で表示素子の表面に第1封止膜を形成して仮封止体を得る仮封止体形成部と、該仮封止体形成部の第1封止膜形成装置から仮封止体を取り出す手段と、一時保管するための手段(仮封止体保管部)と、保管された仮封止体を搬入する手段と、該手段により仮封止体を搬入され、該仮封止体の表面に第2封止膜を形成して表示デバイスを得る第2封止膜形成部とを備えている。仮封止体形成部と第2封止膜形成部とは分離している。表示デバイス製造装置は同種の第2封止膜形成部を複数備えていてもよく、この場合、仮封止体保管部から並列に配置された複数の第2封止膜形成装部へ仮封止体を搬送するように構成してもよく、仮封止体保管部から直列に接続された複数の第2封止膜形成部へ仮封止体を搬送するように構成してもよい。
【0016】
以下、本発明の表示デバイスとして有機ELデバイスを適用した場合の該有機ELデバイスの具体的な構造及び製造方法について詳述する。
【0017】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る表示デバイスとしての有機ELデバイス101を示す側断面図、
図2は有機ELデバイス101の製造方法を概念的に示した説明図である。
有機ELデバイス101においては、ガラス基板11上に例えばITO(Indium Tin Oxide)膜等からなる陽極層11a、発光層及び陰極層12gを積層してなる、表示素子としての有機EL素子12の各層全体が、第1封止膜13によって封止され、さらに第2封止膜14によって第1封止膜13が封止されている。ここでは、第1封止膜13及び第2封止膜14が単層構造を有する場合につき説明する。
第1封止膜13は、有機EL素子12と化学反応が生じないという観点から、無機材料からなるのが好ましい。無機材料としては、SiN、SiON等が挙げられる。第2封止膜14の材料としては、SiN,SiON等の無機材料、及び炭化水素,α−CH
x 等の有機材料が挙げられる。より耐透湿性が良好であるという観点から無機材料を用いるのが好ましい。以下、第1封止膜13及び第2封止膜14がSiNからなる場合につき説明する。SiN膜はプラズマCVD法により形成される。
【0018】
前記陽極層11aは、発光層において発生した光を透過させることが可能な透明電極、例えばITO膜である。
有機EL素子12の有機層は、例えば、真空蒸着によって第1層から第6層まで積層してなる6層構造である。第1層はホール注入層12a、第2層はホール輸送層12b、第3層は青発光層12c、第4層は赤発光層12d、第5層は緑発光層12e、第6層は電子輸送層12fである。なお、ここで説明した第1乃至第6層の構成は一例である。
陰極層12gは、蒸着にて形成された銀、アルミニウム、アルミニウム合金、リチウムアルミニウム合金、又はマグネシウム及び銀合金等で形成された膜である。
【0019】
有機ELデバイス101を製造する場合、まず、
図2Aに示すように陽極層11aが形成されたガラス基板11に有機EL素子12を形成した後、
図2Bに示すように、陽極層11aが形成されたガラス基板11及び有機EL素子12の表面に、第1封止膜13を形成する。これにより仮封止体102が得られる。
【0020】
第1封止膜13の厚さは、第1封止膜13を成膜した減圧空間から仮封止体102を大気圧空間へ取り出して一時保管する場合に、耐透湿性を確保できる厚さであればよい。すなわち大気により吸湿劣化されない厚さであればよい。膜の材質、大気圧空間内で一時保管する時間等に応じて適宜の厚さを設定することができる。本実施の形態のように第1封止膜13を無機材料であるSiNとする場合、24時間程度、一時保管するときには厚さを略50〜500nmに設定すればよい。
【0021】
そして、
図2Cに示すように、一時保管された仮封止体102の第1封止膜13上に、第2封止膜14を形成する。これにより有機ELデバイス101が得られる。第2封止膜14の厚さは、有機ELデバイスの用途に基づき要求される耐透湿性等に応じて適宜に設定する。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態1に係る有機ELデバイス製造装置2の構成例を模式的に示したブロック図である。本実施の形態に係る有機ELデバイス製造装置2は、ガラス基板11の搬送方向に沿って直列に接続されたローダ21、ロードロック室(以下、LLという)22、成膜装置23、トランスファーモジュール(以下、TMという)24、電極形成装置25、TM26、第1封止膜形成装置27、LL28、及び仮封止体保管部29と、3つの第2封止膜形成部6とを備える。ローダ21、LL22、成膜装置23、TM24、電極形成装置25、TM26、及び第1封止膜形成装置27により仮封止体形成部が構成される。第2封止膜形成部6は、ローダ61、LL62、及び第2封止膜形成装置の一例としての、プラズマCVD法によりSiN膜を形成するSiN膜形成装置30を備える。
以下、作図の便宜上、図中においてSiN膜形成装置をSiNと表記する。なお、有機ELデバイス製造装置2に備えられる第2封止膜形成部6(SiN膜形成装置30)の個数は3個には限定されず、複数個であればよい。
なお、ローダ21、LL22、成膜装置23、TM24、電極形成装置25、TM26、第1封止膜形成装置27、及びLL28は搬送方向に沿って直列に接続されている場合に限定されるものではなく、インライン(真空一貫)で接続されていればよい。例えば共通搬送室の周囲に、成膜装置23、電極形成装置25、及び第1封止膜形成装置27が配置されているものであってもよい。
【0023】
ローダ21は、ガラス基板11、例えば予め表面に陽極層11aが形成されたガラス基板11を有機ELデバイス製造装置2内に搬入するための装置である。LL22,TM24,TM26,LL28は、各処理装置間でガラス基板11を受け渡しするための装置である。
成膜装置23は、真空蒸着法にて、ガラス基板11上にホール注入層12a、ホール輸送層12b、青発光層12c、赤発光層12d、緑発光層12e、電子輸送層12fを形成するための装置である。
電極形成装置25は、パターンマスクを用いて、例えば銀、アルミニウム、アルミニウム合金、リチウムアルミ合金、又はマグネシウム及び銀の合金等を蒸着又はスパッタリングすることによって、電子輸送層12f上に陰極層12gを形成する装置である。
第1封止膜形成装置27は、例えば無機膜等の第1封止膜13をCVD又は蒸着等によって形成し、ガラス基板11上に形成された各種の膜を封止するための装置である。
ローダ21から一方のゲートバルブを介しLL22へガラス基板11が搬入され、次いでLL22内が減圧状態にされて、他方のゲートバルブを介しガラス基板11が成膜装置23へ搬出される。そして、成膜装置23、TM24、電極形成装置25、TM26、及び第1封止膜形成装置27内が減圧状態に保持された状態でガラス基板11が順次搬送され、上述のように有機EL素子12の表面に第1封止膜13が形成されて仮封止体102が得られる。
【0024】
第1封止膜形成装置27、LL28、及び仮封止体保管部29は2つのゲートバルブを介し連結されている。仮封止体保管部29は、ロボットアーム等の搬送装置を含む搬送部と、カセットを載置して連結するカセット載置部とから構成される。カセットは一体の仮封止体102(すなわち、ガラス基板11として1枚)を複数体、水平状態で収容する運搬容器である。
LL28内を減圧状態にし、第1封止膜形成装置27との間のゲートバルブを開いて、仮封止体102が第1封止膜形成装置27からLL28へ搬出される。次に、LL28を大気圧状態に開放し、仮封止体保管部29との間のゲートバルブを開いて、前記搬送装置により仮封止体102がLL28から仮封止体保管部29内へ搬送され、カセット載置部のカセットへ収容される。
なお、仮封止体保管部29はカセット載置部を備えず、仮封止体120を1体ずつ載置する仮封止体載置部を備えることにしてもよい。
また、仮封止体保管部29は密閉され、減圧状態、又は窒素封入等により加圧状態に保持されており、LL28を大気に開放することなく、第1封止膜形成装置27から仮封止体102を仮封止体保管部29へ搬出することにしてもよい。さらに、仮封止体保管部29内を窒素封入するのではなく、前記カセット内を窒素封入することにしてもよい。
【0025】
有機ELデバイス製造装置2は仮封止体保管部29以外の仮封止体保管部を備え、仮封止体102は1体毎又はカセット毎に、仮封止体保管部29からAGV(Auto Guided Vehicle)、ロボット、ベルトコンベア、仮封止体102を浮上させて移動させるガス噴出手段を備えるガス浮上搬送装置等の搬送装置により前記仮封止体保管部へ搬送されることにしてもよい。
仮封止体保管部29又は前記仮封止体保管部で一時保管された仮封止体102は、1体毎又はカセット毎に、AGV、ロボット、ベルトコンベア、ガス浮上搬送装置等の搬送装置により第2封止膜形成部6の設置場所へ搬送され、ローダ61へ搬入され、LL62を介し、減圧状態を保持されたSiN膜形成装置30へ搬入される。
【0026】
図4は、第1封止膜形成装置27が第1封止膜としてのSiN膜を形成するSiN膜形成装置(プラズマCVD装置)3(以下、CVD装置という)である場合の一構成例を模式的に示した側断面図である。CVD装置3は、例えばRLSA(Radial Line Slot Antenna)型であり、気密に構成され、かつ接地された略円筒状の処理室301を備える。処理室301は、例えば、アルミニウム製であり、略中央部に円形の開口部310が形成された平板円環状の底壁301aと、底壁301aに周設された側壁とを有し、上部が開口している。なお、処理室301の内周には、石英、Al
2 O
3 等のセラミックスからなる円筒状のライナを設けてもよい。
【0027】
処理室301の側壁には環状をなすガス導入部材315が設けられており、このガス導入部材315には処理ガス供給系316が接続されている。ガス導入部材315は、例えばシャワー状に配置されている。処理ガス供給系316から所定の処理ガスがガス導入部材315を介して処理室301内に導入される。処理ガスとしては、プラズマ処理の種類及び内容に応じて適宜のものが用いられる。例えば、プラズマCVDにてSiN膜を形成する場合、モノシラン(SiH
4 )ガス、アンモニア(NH
3 )ガス、窒素(N
2 )ガス等が用いられる。
また、処理室301の側壁には、CVD装置3に隣接するトランファーモジュール26,28との間でガラス基板11の搬入出を行うための搬入口325,搬出口355と、この搬入口325,搬出口355を開閉するゲートバルブ326,356とが設けられている。
【0028】
処理室301の底壁301aには、開口部310と連通するように、下方へ突出した有底円筒状の排気室311が設けられている。排気室311の側壁には排気管323が設けられており、排気管323には高速真空ポンプを含む排気装置324が接続されている。排気装置324を作動させることにより処理室301内のガスが、排気室311の空間311a内へ均一に排出され、排気管323を介して排気される。従って、処理室301内を所定の真空度、例えば0.133Paまで高速に減圧することが可能である。
【0029】
排気室311の底部中央には、AlN等のセラミックからなる柱状部材303が略垂直に突設され、柱状部材の先端部に、プラズマ処理が施されるべきガラス基板11を支持する試料台302が設けられている。試料台302の外縁部にはガラス基板11を保持するためのガイド304が設けられている。試料台302には、ガラス基板11加熱用のヒータ電源306と、静電吸着用のDC電源308が接続されている。
【0030】
処理室301の上部に形成された開口部には、その周縁部に沿ってリング状の支持部327が設けられている。支持部327には、誘電体、例えば石英、Al2 O3 等のセラミックからなり、マイクロ波を透過する円盤状の誘電体窓328がシール部材329を介して気密に設けられている。
【0031】
誘電体窓328の上方には、試料台302と対向するように、円板状のスロット板331が設けられている。スロット板331は、誘電体窓328に面接触した状態で、処理室301の側壁上端に係止されている。スロット板331は、導体、例えば表面が金メッキされた銅板又はアルミニウム板からなり、複数のマイクロ波放射スロット332が所定のパターンで貫通して形成された構成となっている。即ち、スロット板331はRLSAアンテナを構成している。マイクロ波放射スロット332は、例えば長溝状をなし、隣接する一対のマイクロ波放射スロット332同士が略L字状をなすように近接して配されている。対をなす複数のマイクロ波放射スロット332は、同心円状に配置されていてもよい。マイクロ波放射スロット332の長さや配列間隔は、マイクロ波の波長に応じて決定される。
【0032】
スロット板331の上面には、真空よりも大きい誘電率を有する誘電体板333が互いに面接触するように設けられている。誘電体板333は、平板状の誘電体円板部を有する。誘電体円板部の略中央部には孔部が形成されている。また孔部の周縁から、誘電体円板部に対して略垂直に、円筒状のマイクロ波入射部が突出している。
【0033】
処理室301の上面には、スロット板331及び誘電体板333を覆うように、円盤状のシールド蓋体334が設けられている。シールド蓋体334は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属製である。処理室301の上面とシールド蓋体334との間は、シール部材335によりシールされている。
【0034】
シールド蓋体334の内部には、蓋体側冷却水流路334aが形成されており、蓋体側冷却水流路334aに冷却水を通流させることにより、スロット板331、誘電体窓328、誘電体板333、シールド蓋体334を冷却するように構成されている。なお、シールド蓋体334は接地されている。
【0035】
シールド蓋体334の上壁の中央には開口部336が形成されており、該開口部には導波管337が接続されている。導波管337は、シールド蓋体334の開口部336から上方へ延出する断面円形状の同軸導波管337aと、同軸導波管337aの上端部に接続された水平方向に延びる断面矩形状の矩形導波管337bとを有しており、矩形導波管337bの端部には、マッチング回路338を介してマイクロ波発生装置339が接続されている。マイクロ波発生装置339で発生したマイクロ波、例えば周波数2.45GHzのマイクロ波が導波管337を介して上記スロット板331へ伝搬されるようになっている。なお、マイクロ波の周波数としては、8.35GHz、1.98GHz、915MHz等を用いることもできる。矩形導波管337bの同軸導波管337aとの接続部側の端部にはモード変換器340が設けられている。同軸導波管337aは、筒状の同軸外導体342と、該同軸外導体342の中心線に沿って配された同軸内導体341とを有し、同軸内導体341の下端部はスロット板331の中心に接続固定されている。また、誘電体板333のマイクロ波入射部は、同軸導波管337aに内嵌している。
【0036】
また、CVD装置3は、CVD装置3の各構成部を制御するプロセスコントローラ350を備える。プロセスコントローラ350には、工程管理者がCVD装置3を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボード、CVD装置3の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザインターフェース351が接続されている。また、プロセスコントローラ350には、CVD装置3で実行される各種処理をプロセスコントローラ350の制御にて実現するための制御プログラム、処理条件データ等が記録されたプロセス制御プログラムが格納された記憶部352が接続されている。プロセスコントローラ350は、ユーザインターフェース351からの指示に応じた任意のプロセス制御プログラムを記憶部352から呼び出して実行し、プロセスコントローラ350の制御下で、CVD装置3での所望の処理が行われる。
SiN膜形成装置30もSiN膜形成装置3と同様の構造を有する。
【0037】
以上のように構成された有機ELデバイス製造装置2の動作について簡単に説明する。まず、予め表面に陽極層11aが形成されたガラス基板11がローダ21及びLL22を介して成膜装置23内に搬入される。成膜装置23では、ガラス基板11に有機EL素子12が形成される。次に、TM24によって、電極形成装置25へ搬入され、陰極層12gが形成される。次いで、TM26によって、ガラス基板11は第1封止膜形成装置27へ搬送され、第1封止膜形成装置27により、有機EL素子12の表面に第1封止膜13が形成され、仮封止体102が得られる。該仮封止体102は、LL28により減圧空間から大気圧空間内にある仮封止体保管部29へ取り出される。仮封止体102は、第1封止膜13により耐透湿性が確保された状態で仮封止体保管部29に一時保管された後、例えば仮封止体102が所定数蓄積されるのを待つ等、タイミングを図って上述の搬送装置により各SiN膜形成装置30の設置場所へ搬送される。仮封止体102は、ローダ61及びLL62を介しSiN膜形成装置30へ搬入され、仮封止体102に第2封止膜14が形成される。
【0038】
第1封止膜13の膜厚は500nm以下であり、成膜時間は短い。第2封止膜14として例えばSiN膜を1000nm成膜する場合、1つの有機EL素子につき40分程度の時間を要するが、本実施の形態においては、複数個のSiN膜形成装置30を用いて略同時にSiN膜を成膜するので、単位時間当たりの成膜量が増加し、従来のように封止膜の成膜工程で滞ることがなく、スループットを全体として向上させることができる。
【0039】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る表示デバイスとしての有機ELデバイス104の製造方法を概念的に示した説明図である。図中、
図2と同一部分は同一符号を付して詳細な説明は省略する。
有機ELデバイス104の仮封止体103は、有機ELデバイス101の仮封止体102と異なり、第1封止膜が2層からなる。ここでは、第1封止膜が無機材料からなる第1無機膜13と、有機材料からなる第1有機膜15とから構成される場合につき説明する。前記無機材料としてはSiN,SiON等が挙げられる。前記有機材料としては炭化水素,α−CH
x 等が挙げられる。以下に、第1無機膜13がSiN膜からなり、第1有機膜15が炭化水素としての分子式C
x H
y (xは20以上)で表されるパラフィンである場合につき説明する。第1有機膜15が炭化水素膜である場合、後述するように(真空物理)蒸着により形成される。第1有機膜15がα−CH
x 膜である場合、炭化水素ガスとしてのC
4 H
6 、CH
4 、C
2 H
2 等を用いたプラズマCVD法により形成され得る。
【0040】
有機ELデバイス104を製造する場合、まず、
図5Aに示すように陽極層11aが形成されたガラス基板11に有機EL素子12を形成した後、
図5Bに示すように、陽極層11aが形成されたガラス基板11及び有機EL素子12の表面に、第1無機膜13を形成する。さらに、
図5Cに示すように、第1無機膜13上に第1有機膜15を形成することにより仮封止体103が得られる。
【0041】
第1封止膜の厚さは、第1封止膜を成膜した減圧空間から仮封止体103を大気圧空間へ取り出して一時保管する場合に、耐透湿性を確保できる厚さに設定される。すなわち吸湿劣化しない厚さであればよい。膜の材質、大気圧空間内で一時保管する時間等に応じて適宜の厚さを設定することができる。一例として、第1無機膜13がSiNからなる場合の厚さとして略50nm〜500nm、第1有機膜15がパラフィンからなる場合の厚さとして略100nm〜1000nmが挙げられる。
【0042】
そして、
図5Dに示すように、一時保管された仮封止体103の第1有機膜(炭化水素膜)15上に、第2封止膜としての例えばSiN膜からなる第2無機膜16を形成することにより、有機ELデバイス104が得られる。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態2に係る有機ELデバイス製造装置201の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。なお、
図6において、第2封止膜形成部のローダ61及びLL62は省略している(以下、同様)。
有機ELデバイス製造装置201において、第1封止膜形成装置27は、プラズマCVD装置からなるSiN膜形成装置3、TM4、蒸着装置からなる炭化水素膜形成装置5を直列に配置して構成される。有機ELデバイス製造装置2と同様に、第1封止膜形成装置27により得られた仮封止体103は、大気圧空間内にある仮封止体保管部29へ取り出され、1体毎に、又はカセット等に収容されて複数体毎に一時保管された後、3つのSiN膜形成装置30へそれぞれ搬送される。
【0044】
図7は、炭化水素膜形成装置(蒸着装置)5の一構成例を模式的に示した側断面図である。蒸着装置5は、ガラス基板11を収容し、内部でガラス基板11に対して第1有機膜(炭化水素膜)15の蒸着、リフロー処理及び硬化処理を行うための処理室501を備える。処理室501は、搬送方向を長手方向とする中空略直方体形状をなし、アルミニウム、ステンレス等で構成されている。処理室501の長手方向両端側の面には、ガラス基板11を処理室501の内外へ搬送するための搬入口511,搬出口515が形成され、ゲートバルブ512,516によって搬入口511,搬出口515が開閉するように構成されている。処理室501の適宜箇所には、排気管513が設けられており、排気管513には高速真空ポンプを含む排気装置514が接続されている。排気装置514を作動させることによって、処理室501内を所定の圧力、例えば10
-2Paに減圧することができる。
【0045】
処理室501の底部には、処理室501に搬入されたガラス基板11を搬送する搬送装置502が設置されている。搬送装置502は、処理室501の底部に長手方向に沿って設けられた案内レールと、該案内レールに案内されて搬送方向、即ち前記長手方向へ移動可能に設けられた移動部材とを備え、移動部材の上端部には、ガラス基板11を略水平に支持する支持台503が設けられている。支持台503の内部には、ガラス基板11を保持する静電チャック、ガラス基板11の温度を保温又は加熱するヒータ、冷媒管等が設けられている。なお、支持台503は、リニアモータによって移動するように構成されている。
【0046】
処理室501の上部、搬送方向略中央部には、基板処理ヘッド504が設けられている。基板処理ヘッド504は、真空蒸着法にて第1有機膜15をガラス基板11に形成する蒸着ヘッド541と、ガラス基板11に対して赤外線を照射することによって、成膜された第1有機膜15を軟化又は融解させる赤外線照射ヘッド542と、ガラス基板11に対して電子線又は紫外線を照射することによって、炭化水素を硬化させる硬化処理ヘッド543とを備える。
なお、本実施の形態では、第1有機膜15の蒸着、リフロー処理及び硬化処理の全てを行う装置を例示したが、第1有機膜15の蒸着を行う蒸着装置と、リフロー処理を行うリフロー処理装置と、硬化処理を行う硬化処理装置とをそれぞれ単独の装置として構成してもよい。
そして、第1有機膜15の蒸着後、リフロー処理を施す場合に限定されない。但し、第1有機膜15にリフロー処理を施した場合、表面が平坦化されるので、欠陥部が生じていたときに埋没させることができ、該第1有機膜15上に欠陥なく第2無機膜16を形成することができるので好ましい。
【0047】
蒸着ヘッド541は、搬送管を通じて搬送されたパラフィンからなる炭化水素材料の蒸気を、処理室501に収容されたガラス基板11へ向けて吹き出す機構部である。蒸着ヘッド541には、処理室501の外部に配された蒸気発生部545が搬送管を介して接続されている。蒸気発生部545は、例えばステンレス製の容器と、容器の内部に配された加熱機構とを備える。加熱機構は、炭化水素材料を収容可能な容器を有し、電源から供給された電力によって炭化水素材料を加熱するように構成されている。炭化水素材料の加熱は、例えば容器に埋設した電気抵抗体によって加熱することによって行う。こうして、加熱機構内に収納した炭化水素材料を加熱して、炭化水素材料の蒸気を発生させる。また、容器には、ガラス基板11に対して不活性ガス、アルゴン(Ar)等の希ガス等からなる搬送ガスを供給する搬送ガス供給管が接続されており、搬送ガス供給管から容器に供給された搬送ガスと共に、炭化水素材料の蒸気を蒸気発生部545から搬送管を介して蒸着ヘッド541へ供給するように構成されている。搬送ガス供給管及び搬送管の途中には、搬送ガスの供給量を調整するための流量調整弁544,546が設けられている。流量調整弁544,546は、例えば電磁弁であり、流量調整弁544,546の開閉動作は、後述のプロセスコントローラ550によって制御されるように構成されている。
【0048】
赤外線照射ヘッド542は、例えば、支持台503によるガラス基板11の搬送によって、ガラス基板11に形成された第1有機膜15の略全面(つまり、封止膜13が形成されるべき領域)に赤外線が照射されるように配置された赤外線ランプを備える。赤外線ランプから照射される赤外線の強度は、ガラス基板11に形成された第1有機膜15を軟化又は融解させることができれば十分である。より好ましくは、赤外線が連続的に照射されても有機EL素子12が劣化しない温度範囲に留まるような強度の赤外線を照射するように構成するとよい。該赤外線ランプには、電力を供給する電源が接続されており、電力の供給は、プロセスコントローラ550によって制御されるように構成されている。プロセスコントローラ550は、赤外線ランプへの電力の供給を制御することによって、第1有機膜15が軟化又は融解し、かつ有機EL素子12が劣化しない温度まで加熱する。
なお、赤外線照射ヘッド542は、第1有機膜15を加熱する手段の一例である。例えば、赤外線照射ヘッド542に代えて、第1有機膜15を加熱するホットプレート等を支持台503に備えてもよい。
【0049】
硬化処理ヘッド543は、例えば、支持台503によるガラス基板11の搬送によって、ガラス基板11に形成された第1有機膜15の略全面(つまり、封止膜13が形成されるべき領域)に電子線が照射されるように配置された電子銃を備え、電子銃の動作はプロセスコントローラ550によって制御される。なお、UV硬化性の炭化水素材料を用いて第1有機膜15を形成する場合、ガラス基板11に対して紫外線を照射する紫外線ランプを硬化処理ヘッド543に備えてもよい。
【0050】
また、蒸着装置5は、蒸着装置5の各構成部を制御するプロセスコントローラ550を備える。プロセスコントローラ550には、工程管理者が蒸着装置5を管理するためにコマンドの入力操作等を行うユーザインターフェースが接続されている。また、プロセスコントローラ550には、蒸着装置5で実行される各種処理をプロセスコントローラ550の制御にて実現するための制御プログラム、処理条件データ等が記録されたプロセス制御プログラムが格納された記憶部552が接続されている。プロセスコントローラ550は、ユーザインターフェースからの指示に応じた任意のプロセス制御プログラムを記憶部552から呼び出して実行し、プロセスコントローラ550の制御下で、蒸着装置5での所望の処理が行われる。
【0051】
なお、ここでは、ガラス基板11を搬送する例を説明したが、支持台503を固定し、ガラス基板11に対して基板処理ヘッド504を走査するように構成してもよい。
【0052】
また、電子線にて硬化する炭化水素材料を用いて第1有機膜15を形成する場合、硬化処理ヘッド543を備えずに、蒸着装置5を構成してもよい。後段のアモルファスカーボン13dをプラズマCVDにて形成する工程で、プラズマ中の電子が照射されるため、アモルファスカーボン13dの形成と並行して第1有機膜15の硬化も行うことができるためである。
そして、本実施の形態においては、形成した炭化水素膜を硬化する場合につき説明しているがこれに限定されない。但し、硬化した方が、炭化水素膜の軟化又は融解による欠陥部の発生及び水分の浸入をより抑制できるので好ましい。
【0053】
以上のように構成された有機ELデバイス製造装置201においては、第1封止膜形成装置27により、有機EL素子12が第1無機膜13及び第1有機膜15によって封止された仮封止体103が得られる。該仮封止体103は、LL28により減圧空間から大気圧空間内にある仮封止体保管部29へ取り出される。仮封止体103は、第1無機膜13及び第1有機膜15により耐透湿性が確保された状態で仮封止体保管部29に一時保管された後、タイミングを図って上述の搬送装置により各SiN膜形成装置30へ搬送され、各仮封止体103に第2無機膜16が形成され、有機ELデバイス104が得られる。
【0054】
上述したように第1無機膜13の膜厚は100nm以下であり、薄い。また、第1有機膜15の成膜速度は炭化水素材料の種類にもよるが、例えば500nmの厚さに成膜する場合であっても、短時間で成膜できる。第1有機膜15がα−CH
x 膜である場合、成膜は
図4のSiN膜形成装置と同様のCVD装置を用い、C
4 H
6 、CH
4 、C
2 H
2 等の炭化水素ガスを処理ガスとして用いて行われるが、成膜速度はSiN膜を成膜する場合の10倍近くであり、炭化水素膜と同様に短時間で成膜できる。そして、所定時間内の耐透湿性が確保されているので、一時保管した後、有機ELデバイス104の用途に応じて各別に種々の第2封止膜を形成することができる。有機ELデバイス104の要求性能にもよるが、第1封止膜が2層構造であるので、第1封止膜が単層である実施の形態1の第2無機膜14より第2無機膜16の厚さを薄くすることができる。従って、全体としてスループットを向上させることができる。
【0055】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3に係る有機ELデバイス製造装置202の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
有機ELデバイス製造装置202は、第2封止膜形成装置の一例としての3つの直列に配置されたSiN膜形成装置31,33,35を備えている。この有機ELデバイス製造装置202を用いて前記有機ELデバイス101を製造する場合、仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102が、搬送装置により取り出されてSiN膜形成装置31へ搬送され、TM32,34を用いて順次、SiN膜形成装置33,35へ搬送される。
この有機ELデバイス製造装置202においては、第2封止膜として単層のSiN膜を形成することができる。従って、上述の1体の仮封止体102が搬送された場合、厚さ方向に順次1/3量ずつ第2無機膜14が成膜される。例えばSiN膜からなる第1無機膜13に、SiN膜からなる第2無機膜14を厚さ1000nmで成膜する場合、各SiN膜形成装置で略330nm成膜することになり、連続して複数の仮封止体102を搬送させることで、スループットを向上させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、有機ELデバイス製造装置202を用いて仮封止体102の表面に、第2無機膜14を形成する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、第1封止膜が2層構造からなる仮封止体103の表面に、第2無機膜16を形成することにしてもよい。
そして、第2封止膜形成装置として、SiN膜形成装置を直列に配置する場合に限定されるものではなく、他の成膜装置(α−CH
x 膜形成装置、炭化水素膜形成装置)を直列に配置することにしてもよい。
【0057】
[実施の形態4]
図9は本発明の実施の形態4に係る有機ELデバイス105を示す側断面図、
図10は本発明の実施の形態4に係る有機ELデバイス製造装置203の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図1,3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態に係る有機ELデバイス105は、実施の形態1に係る有機ELデバイス101と異なり、第2封止膜が3層からなる。
有機EL素子12の表面に第1封止膜としての第1無機膜13が形成されて仮封止体102が得られ、該仮封止体102の表面に、順次、第2無機膜17、第2有機膜18、第3無機膜19が形成されて有機ELデバイス105が得られる。ここでは、第1無機膜13、第2無機膜17、及び第3無機膜19がSiN膜からなり、第2有機膜15がα−CH
x からなる場合について説明する。
【0058】
有機ELデバイス製造装置203は、第2封止膜形成装置の一例として、直列に配置されたSiN膜形成装置36、プラズマCVD装置であるα−CH
x 膜形成装置38、SiN膜形成装置40を備えている。仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102は、搬送装置により取り出されてSiN膜形成装置36へ搬送され、TM37,39を用いて順次、α−CH
x 膜形成装置38、及びSiN膜形成装置40へ搬送される。以下、作図の便宜上、図中においてα−CH
x 膜形成装置をα−CH
x と表記する。
本実施の形態においては、第2封止膜を3層構造にしているので、有機ELデバイス105の耐透湿性はより向上している。
【0059】
図11は、有機ELデバイス105を製造する他の有機ELデバイス製造装置204の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図10と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
有機ELデバイス製造装置204は、第2封止膜形成装置の一例として、直列に配置されたSiN膜形成装置41、及びα−CH
x 膜形成装置43を備えている。仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102は、搬送装置により取り出されてSiN膜形成装置41へ搬送され、第2無機膜17が形成された後、TM42を用いてα−CH
x 膜形成装置43へ搬送され、第2有機膜18が形成される。そして、再度TM42によりSiN膜形成装置41へ搬送され、第3無機膜19が形成される。
この有機ELデバイス製造装置204においては、第2封止膜形成装置の数を有機ELデバイス製造装置203より減じることができる。
【0060】
図12は、有機ELデバイス105を製造する他の有機ELデバイス製造装置205の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図10と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
有機ELデバイス製造装置205は、第2封止膜の最上層の第3無機膜19を形成するためにα−CH
x 膜形成装置38から仮封止体が各別に搬送されるSiN膜形成装置40を3つ備える。なお、このSiN膜形成装置40の個数は3個には限定されない。
従って、有機ELデバイス製造装置205は有機ELデバイス製造装置2と同様に、複数個のSiN膜形成装置40を用いて略同時にSiN膜を成膜することができる。例えば、第1無機膜13,第2無機膜17,第2炭化水素膜18,第3無機膜19をそれぞれ100〜300nm,100nm,800nm,1000nmの厚さで成膜する場合等においても、第3無機膜19の単位時間当たりの成膜量が増加し、スループットを全体として向上させることができる。
【0061】
図13は、有機ELデバイス105を製造する他の有機ELデバイス製造装置206の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図10と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
有機ELデバイス製造装置206は、第2封止膜の最上層の第3無機膜19を形成するために直列に配置された、3つのSiN膜形成装置47,49,51を備える。なお、このSiN膜形成装置の個数は3個には限定されない。
有機ELデバイス製造装置206においては、α−CH
x 膜形成装置43により第2炭化水素膜18が形成された仮封止体102は、TM39によりSiN膜形成装置47へ搬送され、TM48,50を用いて順次、SiN膜形成装置49,51へ搬送される。従って、厚さ方向に順次1/3量ずつ第3無機膜19が成膜される。例えば第3無機膜19を厚さ1000nmで成膜する場合、各SiN膜形成装置で略330nm成膜することになり、連続して複数の仮封止体102を搬送させることで第3無機膜19の単位時間当たりの成膜量が増加し、スループットを向上させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、有機ELデバイス製造装置203〜206を用いて仮封止体102の表面に、3層からなる第2封止膜を形成する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、第1封止膜が2層からなる仮封止体103の表面に、3層からなる第2封止膜を形成することにしてもよい。すなわち、第1封止膜形成装置27及び第2封止膜形成装置の構成は本実施の形態において説明した場合に限定されるものではない。
【0063】
[実施の形態5]
図14は本発明の実施の形態5に係る有機ELデバイス106を示す側断面図、
図15は本発明の実施の形態5に係る有機ELデバイス製造装置207の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図1,3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態に係る有機ELデバイス106は、実施の形態1,4に係る有機ELデバイス101,105と異なり、第2封止膜が2層からなる。
有機ELデバイス106は、有機EL素子12の表面に第1封止膜としての第1無機膜13が形成されて仮封止体102が得られ、該仮封止体102の表面に、順次、第2有機膜70、第2無機膜71が形成されて有機ELデバイス106が得られる。ここでは、第1無機膜13、及び第2無機膜71がSiN膜からなり、第2有機膜70がα−CH
x からなる場合について説明する。
【0064】
有機ELデバイス製造装置207は、第2封止膜形成装置の一例として、直列に配置されたα−CH
x 膜形成装置44、SiN膜形成装置46を備えている。仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102は、搬送装置により取り出されてα−CH
x 膜形成装置44へ搬送され、TM45を用いてSiN膜形成装置46へ搬送される。
【0065】
本実施の形態においては、第2封止膜の層数が2層であるので、実施の形態4に係る有機ELデバイス105より製造時間が短い。
なお、本実施の形態においては、有機ELデバイス製造装置207を用いて仮封止体102の表面に、2層からなる第2封止膜を形成する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、第1封止膜が2層からなる仮封止体103の表面に、2層からなる第2封止膜を形成することにしてもよい。すなわち、第1封止膜形成装置27及び第2封止膜形成装置の構成は、本実施の形態において説明した場合に限定されるものではない。
【0066】
[実施の形態6]
図16は本発明の実施の形態6に係る、ボトムエミッション型の有機ELデバイス107を示す側断面図、
図17は本発明の実施の形態6に係る有機ELデバイス製造装置208の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図1,3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態に係る有機ELデバイス107は、実施の形態1に係る有機ELデバイス101と異なり、第2封止膜としての第2無機膜72がAlからなる。
【0067】
有機ELデバイス製造装置208は、第2封止膜形成装置として、スパッタリング装置等からなるAl膜形成装置52を備えている。仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102は、搬送装置により取り出されてAl膜形成装置52へ搬送され、第2無機膜72が成膜される。以下、作図の便宜上、図中においてAl膜形成装置をAlと表記する。
【0068】
本実施の形態においては、スパッタリングによりAlからなる第2無機膜72が成膜されるので、成膜時間が速く、例えば500nm程度の膜厚の場合、仮封止体102に対し1分程度で成膜することができ、製造時間を短縮化することができる。
【0069】
第2封止膜にAlからなる無機膜を含む場合においても、最上層にSiNからなる無機膜を含む場合と同様に、第2封止膜を2層構造及び3層構造にし、最上層をAl膜とすることができる。
図18は2層構造の第2封止膜を有する有機ELデバイス108を示す側断面図、
図19は該有機ELデバイス108を製造する有機ELデバイス製造装置209の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図1,3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
有機ELデバイス製造装置209は、第2封止膜形成装置として、直列に配置されたα−CH
x 膜形成装置53、及びAl膜形成装置55を備えている。仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102は、搬送装置により取り出されてα−CH
x 膜形成装置53へ搬送され、第2有機膜73が成膜される。そして、TM54を用いてAl膜形成装置55へ搬送され、第2無機膜74が成膜される。
膜厚の一例として、第1無機膜13が100nm、第2有機膜73が500nm、第2無機膜74が500nmの例が挙げられる。
【0070】
図20は3層構造の第2封止膜を有する有機ELデバイス109を示す側断面図、
図21は該有機ELデバイス109を製造する有機ELデバイス製造装置210の構成例を模式的に示したブロック図である。図中、
図1,3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
有機ELデバイス製造装置210は、第2封止膜形成装置として、直列に配置されたSiN膜形成装置56、α−CH
x 膜形成装置58、及びAl膜形成装置60を備えている。仮封止体保管部29に一時保管された仮封止体102は、搬送装置により取り出されてSiN膜形成装置56へ搬送され、SiNからなる第2無機膜75が成膜される。そして、TM57によりα−CH
x 膜形成装置58へ搬送され、第2有機膜76が成膜される。さらに、TM59を用いてAl膜形成装置60へ搬送され、第3無機膜77が成膜される。
上述したように、α−CH
x 膜からなる第2有機膜76、及びAlからなる第3無機膜77の成膜速度は速いので、製造時間を短縮化することができ、必要に応じて厚い膜にすることができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、第2封止膜の最上層として、Alからなる無機膜を形成する場合につき説明しているがこれに限定されるものではない。Al合金、Ag、Ag合金、Cu、及びCu合金等を用いて無機膜を形成することにしてもよい。また、Al
2 O
3 を用いて無機膜を形成することにしてもよい。なお、Al
2 O
3 を用いて無機膜を形成する場合、得られる有機ELデバイスはボトムエミッション型とはならない。
そして、有機ELデバイス製造装置208〜210を用いて仮封止体102の表面に、Alからなる無機膜を上層として含む第2封止膜を形成する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、第1封止膜が2層からなる仮封止体103の表面に、Alからなる無機膜を含む第2封止膜を形成することにしてもよい。すなわち、第1封止膜形成装置27及び第2封止膜形成装置の構成は本実施の形態において説明した場合に限定されるものではない。
【0072】
[実施の形態7]
図22は、本発明の実施の形態7に係る有機ELデバイス110を示す側断面図である。
有機ELデバイス110は、例えばアクリル樹脂等を用いて、仮封止体102にガスバリア基板81を貼り合わせてなる。ガスバリア基板81は、例えばポリエステル、ポリエチレン、又はポリオレフィン等の透明プラスチックフィルムからなる基板79に、SiN又はSiONからなる無機膜80を形成してなる。無機膜80は単層であっても複層であってもよい。
図22に示すように、仮封止体102の表面に、アクリル樹脂からなる接着層78により、ガスバリア基板81の基板79の裏面が接合されている。
【0073】
本実施の形態においては、成膜することなく、容易に仮封止体102を封止して有機ELデバイス110を製造することができる。
【0074】
なお、本実施の形態においては、仮封止体102に、ガスバリア基板81を貼り合わせる場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、仮封止体103にガスバリア基板80を貼り合わせることにしてもよい。
また、ガスバリア基板の構成も本実施の形態において説明した場合に限定されるものではない。
【0075】
[実施の形態8]
図23は、本発明の実施の形態8に係る有機ELデバイス111を示す側断面図である。
有機ELデバイス110は、仮封止体102の第1封止膜13上に第2封止膜14を形成した後、該第2封止膜14の表面側に接着層78を介し、上述のガスバリア基板81を接合してなる。すなわち、実施の形態1に係る有機ELデバイス101の第2封止膜14に、ガスバリア基板81を貼り合わせた構造を有する。
【0076】
本実施の形態においては、第2封止膜14を形成した上に、ガスバリア基板81を接合するので、耐透湿性がより向上する。
同様に、実施の形態2に係る有機ELデバイス104の第2無機膜16上、実施の形態4に係る有機ELデバイス105の第3無機膜19上、実施の形態5に係る有機ELデバイス106の第2無機膜71上、実施の形態6に係る有機ELデバイス107の第2無機膜72上、有機ELデバイス108の第2無機膜74上、及び有機ELデバイス109の第3無機膜77上に、接着層を介し、ガスバリア基板81を接合することにしてもよい。さらに、実施の形態4〜6に係る有機ELデバイスについては、仮封止体102の代わりに仮封止体103を用いたものについて、第2封止膜上に接着層を介し、ガスバリア基板81を接合することにしてもよい。
【0077】
以下、本発明に係る有機ELデバイス製造装置を用いて作製した仮封止体の耐透湿性を評価した結果について説明する。
[性能評価試験1]
本発明の実施の形態1に係る有機ELデバイス製造装置2を用い、第1封止膜形成装置27としてのSiN膜形成装置3を用いて、ガラス基板11上に形成された有機EL素子12の表面に、それぞれ厚さ300nm,1000nmの第1封止膜(SiN膜)13を成膜して仮封止体102を作製した。
【0078】
作製した各仮封止体102、及び第1封止膜13を形成していない有機EL素子12それぞれを大気圧空間に放置し、経過日数と発光面積との関係を調べて、耐透湿性を評価した。
その結果を
図24のグラフに示す。
図24のグラフにおいて、横軸は大気放置経過日数、縦軸は発光面積である。経過日数0の場合の発光面積は100%である。有機EL素子12が吸水するに従い、有機EL素子12の表面の外縁部に非発光領域が生じて発光面積が減少する。
【0079】
図24より、第1封止膜13を形成していない場合、3日経過したとき、発光面積が大きく減少するのに対し、第1封止膜13を形成した場合、3日経過しても発光面積がほとんど減少しないことが分かる。第1封止膜13の厚さが300nmの場合、厚さが1000nmの場合より発光面積の経時的な減少量が若干大きいが、通常は仮封止体保管部29で保管する時間は1日程度であるので、第1封止膜13の厚さが300nmであれば耐透湿性は十分に担保されていると考えられる。従って、短時間で成膜され得る薄膜の第1封止膜13を有機EL素子12の表面に形成することで良好な耐透湿性が得られることが確認された。
【0080】
[性能評価試験2]
本発明の実施の形態2に係る有機ELデバイス製造装置201を用いた。但し、第1封止膜形成装置27はSiN膜形成装置3に、炭化水素膜形成装置5ではなく、プラズマCVD装置であるα−CH
x 膜形成装置を直列に配置したものを用いた。ガラス基板11上に形成された有機EL素子12の表面に、SiN膜形成装置3により厚さ300nmの第1無機膜(SiN膜)13を形成し、該第1無機膜13の表面に、それぞれ厚さ500nm,2000nm,5000nmの第1有機膜(α−CH
x 膜)15を成膜して3種の仮封止体103を作製した。
作製した各仮封止体103を大気圧空間に放置し、経過日数と発光面積との関係を調べて、耐透湿性を評価した。
その結果を
図25のグラフに示す。
図25のグラフにおいて、横軸は大気放置経過日数、縦軸は発光面積である。経過日数0の場合の発光面積は100%である。
【0081】
図25より、3日経過した場合、第1有機膜15の厚さに関わらず、発光面積はほとんど減少していないことが分かる。また、
図24のグラフと比較することで、厚さ300nmの第1無機膜13上に厚さ500nmの第1有機膜15を形成することにより、さらに耐透湿性が向上することが分かる。以上より、第1無機膜13上に少なくとも厚さが500nmの第1有機膜15を形成することで、より良好な耐透湿性が得られることが確認された。
【0082】
以上の実施の形態1〜8で説明したように、本発明においては、減圧空間で有機EL素子の表面に、所定時間内の耐透湿性が確保された薄膜の第1封止膜を形成した後、これを大気圧空間へ取り出して仮封止体保管部に一時保管し、有機ELデバイスの用途及び要求性能に応じて各別に種々の膜種、膜の数、厚さを有する第2封止膜を形成することができる。そして、厚膜の第2封止膜を形成する場合においても、同時に複数の同種の成膜装置を用いたり、直列に接続された複数の同種の成膜装置を用い、仮封止体に対し厚さ方向に順次成膜することによって単位時間当たりの成膜量が増加し、全体としてスループットを向上させることができる。さらに、仮封止体にガスバリア基板を貼り合わせて有機ELデバイスを容易に製造することもできる。そして、仮封止体の第1封止膜上に第2封止膜を成膜した後、該第2封止膜の表面に接着層を介し、ガスバリア基板を接合して、より耐透湿性を向上させることもできる。
従って、全体としてスループットが向上するとともに、有機ELデバイスの設計の自由度が向上し、利便性が高い。
【0083】
なお、前記実施の形態1〜8においては、仮封止体保管部29に仮封止体102又は103を一時保管する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、ロードロック室で保管することにしてもよい。そして、仮封止体保管部29又はロードロック室は大気圧下にある場合に限定されず、ドライ雰囲気下にあってもよい。
【0084】
そして、第1封止膜及び第2封止膜の膜種、膜の数、厚さは実施の形態1〜8において説明した場合には限定されるものではない。
また、予め配置が設定されている、各有機ELデバイス製造装置2、201〜210を用いて製造する場合につき説明しているがこれに限定されるものではなく、有機ELデバイス製造装置に、複数のSiN膜形成装置、α−CH
x 膜形成装置、Al膜形成装置等を備え、第2封止膜の層構造に対応させて、使用する膜形成装置、及びその使用順序を決定して成膜することも可能である。
さらに、本発明の製造方法は、有機ELデバイス以外の表示デバイスの製造にも適用することが可能である。