(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
低倍画像取得時に発生するコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入らないように、高倍画像を取得する機能を備えたSEM式欠陥観察システムの構成例を説明する。以下に説明する欠陥観察システムは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明において欠陥観察システムとは荷電粒子線を用いて試料の画像を撮像する装置であって、異なる複数の倍率で画像を撮像する装置を広く含むものとする。
【0016】
欠陥観察システムの一構成例として、SEM式欠陥観察装置で、ADRにより欠陥画像を取得する例を説明するが、システム構成はこれに限らず、欠陥観察システムを構成する装置の一部、または全部が異なる装置で構成されていてもよい。例えば、本実施例のADR処理を、SEM式欠陥観察装置とネットワーク接続されたレシピ管理装置、あるいは画像管理装置で行ってもよいし、システム内の汎用コンピュータに搭載されたCPU(Central Processing Unit)により、所望の演算処理を実行するプログラムで実行してもよい。また、このプログラムが記録された記憶媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。
【0017】
また、本明細書において、「欠陥」とはパターンの欠陥に限らず、異物やパターン寸法異常、構造不良等、観察対象物を広く含むものとする。
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0019】
SEM式観察装置とは、光学式またはSEM式検査装置などの欠陥検査装置で検出した欠陥座標を入力情報として、欠陥座標または観察座標の高画質なSEM画像を、観察や解析に適した条件で取得する装置である。SEM式観察装置への入力情報として、設計レイアウトデータに基づくシミュレーションなどにより抽出した観察点の座標情報を用いることもできる。
【0020】
図1は、本実施例における、SEM式観察システムの全体構成を示す模式図である。
図1のSEM式欠陥観察装置118は、電子銃101、レンズ102、走査偏向器103、対物レンズ104、試料105、二次粒子検出器109などの光学要素により構成される電子光学系、観察対象となる試料を保持する試料台を、XY面内に移動させるステージ106、当該電子光学系に含まれる各種の光学要素を制御する電子光学系制御部110、二次粒子検出器109の出力信号を量子化するA/D変換部111、ステージ106を制御するステージ制御部112、全体制御・解析部113、画像処理部114、ディスプレイ、キーボード、マウスなどを備えた操作部115、取得した画像などを保持する記憶装置116、光学式顕微鏡117などにより構成されている。また、電子光学系、電子光学系制御部110、A/D変換部111、ステージ106、ステージ制御部112は、SEM画像の撮像手段である走査電子顕微鏡を構成する。
【0021】
電子銃101から発射された一次電子線107は、レンズ102で収束され、走査偏向器102で偏向された後、対物レンズ104で収束されて、試料105に照射される。一次電子線107が照射された試料105から、試料の形状や材質に応じて、二次電子や反射電子などの二次粒子108が発生する。発生した二次粒子108は、二次粒子検出器109で検出された後、A/D変換部111でデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された二次粒子検出器の出力信号を、画像信号と称する場合もある。A/D変換部111の出力信号は、画像処理部114に出力されて、SEM画像を形成する。画像処理部114は、生成したSEM画像を使用して、欠陥検出などの画像処理を実行するADR処理や、欠陥を種類別に自動分類するADC処理など、各種の画像解析処理を実行する。
【0022】
なお、本実施例のSEM式観察装置では異なる複数の倍率で、観察対象の領域の画像を取得することができる。例えば走査偏向器103の走査範囲を変えることによって倍率を変更して観察することが可能である。
【0023】
レンズ102、走査偏向器103、対物レンズ104など、電子光学系内部の光学要素の制御は、電子光学系制御部110で実行される。試料の位置制御は、ステージ制御部112で制御されたステージ106で実行される。全体制御・解析部113は、SEM式観察装置全体を統括的に制御する制御部であり、ディスプレイ、キーボード、マウスなどを備えた操作部115、記憶装置116からの入力情報を解釈して、電子光学系制御部110、ステージ制御部112、画像処理部114などを制御して、必要に応じて操作部115に含まれる表示部206、記憶装置116に処理結果を出力する。
【0024】
画像処理部114で実行される処理は、ハードウェア、ソフトウェアいずれの方式でも実現可能である。ハードウェアにより実行する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板、半導体チップ、またはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、画像処理部114に高速なCPUを搭載して、所望の演算処理をプログラムで実行することで実現できる。
【0025】
また、
図1では欠陥観察システムの一例として、SEM式欠陥観察装置118と、レシピ管理装置120と、欠陥情報データベース121を、LAN(Local Area Network)119を介して接続した例を示している。SEM式欠陥観察装置118で取得した画像は、欠陥情報データベース121に保存する。その他、欠陥に関する情報、例えば、欠陥画像の取得条件や、検出した欠陥座標なども、欠陥情報データベース121に保存する。レシピ管理装置120は、レシピ作成に必要な欠陥情報を欠陥情報データベース121から取得し、画像処理を含む演算処理を行い、レシピを作成する。演算処理に用いたパラメータや、作成したレシピなどは、レシピ管理装置に内蔵した記憶装置に保存してもよいし、欠陥情報データベースに保存してもよい。
【0026】
図2は、
図1の全体制御部、および解析部113の詳細図を示している。
図2に示す操作・解析部201は、
図1の全体制御・解析部113と操作部115を統合して表現したもので、操作部115からの操作指示に応じて、全体制御・解析部113に組み込まれたCPUが、所定のプログラムを実行することにより実現される、複数の機能ブロックにより実現されている。このように、
図1に示したような全体制御・解析部を、SEM式観察装置に組み込んだ構成に限らず、
図1に示したSEM式観察装置とは独立して、
図2に示す操作・解析部201を構成して、ネットワーク接続により、
図1と
図2の構成要素が連結されてもよい。
【0027】
図1に示すSEM式観察装置に組み込まれる場合には、欠陥データ記憶部202、画像データ記憶部203、解析パラメータ記憶部204、解析結果データ記憶部205は、
図1の記憶装置116に統合されてもよい。欠陥データ記憶部201には、欠陥座標などの欠陥情報が格納されている。画像データ記憶部202には、SEM式観察装置で撮像した欠陥画像が格納されている。解析パラメータ記憶部204には、画像取得や画像解析時に実行するADR条件、ADC条件などの条件が格納されており、複数の条件を再現することが可能である。処理結果は、解析結果データ記憶部205に格納される。
【0028】
また他の実施例として、操作・解析部201の機能は、
図1で示したSEM式欠陥観察システムにおけるレシピ管理装置120で実現することも可能である。さらに、欠陥データ記憶部202、画像データ記憶部203、解析パラメータ記憶部204、解析結果データ記憶部205は、
図1に示したSEM式欠陥観察システムにおける欠陥情報データベース121で実現することもできる。
【0029】
図3は、低倍画像取得時に発生するコンタミネーションや局所帯電の影響が無視できる場合に、高倍画像を取得する様子を表した模式図であり、従来技術を採用した例である。まず、観察対象である試料301に対して、低倍視野302の領域に一次電子線を照射して、低倍画像を取得する。SEM式観察装置は、上位の検査装置から出力された欠陥位置の座標、またはシミュレーションにより求められた観察対象となる位置の座標を視野中心として、低倍画像を取得する。
【0030】
図3の事例は、上位の検査装置が検出した欠陥を観察する例であるが、上位の検査装置の欠陥検出精度がよく、かつSEM式観察装置のステージ精度もよい理想的な状態では、欠陥は低倍視野の中心に位置する。ところが、現実的には、上位の検査装置の欠陥検出精度は、ミクロンオーダーであることが多いため、低倍視野を数ミクロンに設定して、低倍視野に欠陥が入るように、低倍画像の倍率を下げて設定することが多い。
【0031】
次に、低倍画像から欠陥座標を検出して、検出した欠陥座標を高倍視野の中心として、所望の高倍視野303で、高倍画像304を取得する。この手順を自動化したのがADRであり、欠陥が視野内に位置した低倍欠陥画像と、欠陥が視野内に存在しない低倍参照画像とを比較して、欠陥座標を検出する手法が一般的に用いられている。高倍視野303は、取得した高倍画像304を使った解析内容に応じて、適切なサイズが設定される。高倍視野のサイズはユーザによって入力され、または解析内容に応じて自動的に設定され、検査条件を表すレシピに登録される。
【0032】
図4は、低倍画像取得時に発生するコンタミネーションや局所帯電の影響が無視できない場合に、
図3と同じ条件で高倍画像を取得した際に発生する、従来技術の課題を表している。以下では一例として、電子線照射で生じるコンタミネーションや局所帯電の影響によって画質が変化する場合を説明するが、画質変化の原因はこれに限られずこのほかの原因であっても良い。
図3と同様に、観察対象である試料401に対して、低倍視野402の領域に、一次電子線を照射して、低倍画像を取得する。観察環境、観察条件、試料の材質などの組合せによっては、コンタミネーションや局所帯電が目立つ場合がある。特に、製造パターンの微細化、および製造工程の複雑化に伴い、微小な欠陥を解析する重要性が増すにつれて、低倍画像のノイズを減らして、高画質な欠陥画像を取得するために、フレーム積算枚数を増やす事例が多くなり、コンタミネーションや局所帯電の影響を受けやすい条件下で、画像取得する機会が増えている。
【0033】
図4の事例のように、低倍視野のコンタミネーションや局所帯電が目立つ条件下で、高倍視野403の中心に欠陥が位置するように高倍画像404を取得すると、コンタミネーションや局所帯電の影響405を受けた部分と受けていない部分の境界、すなわち低倍画像の外縁が高倍視野に入り、コンタミネーションや局所帯電の影響がある部分とない部分とで、見た目の違いが顕著に表れてしまう。このように、従来技術では、欠陥が高倍画像の中心に位置するように、高倍画像を取得するため、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入る場合がある。特に、低倍画像の外縁から高倍画像の視野の一辺の長さの半分より内側の領域(
図4の406より外側かつ低倍視野402の外縁より内側)に欠陥が検出された場合に、高倍視野の一部は低倍視野範囲内に含まれない領域となるため、このような問題が生じる。
【0034】
さらに、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ると、見た目の問題だけでなく、例えば、ADRやADC処理などで、高倍画像を用いて欠陥の特徴量を求める際に、コンタミネーションや局所帯電の有無が、特徴量の算出に悪影響を及ぼすことがあり、問題となりうる。ADCでは欠陥画像を解析して、欠陥の特徴を定量化して、定量化した特徴量に基づき欠陥種を特定するため、欠陥の特徴が安定して定量化できる条件で、欠陥画像を取得することが重要である。欠陥画像がコンタミネーション、または局所帯電の影響を受けるような状況では、欠陥特徴量の算出が不安定になり、分類結果も安定しないため、コンタミネーションの影響を受けないように、欠陥画像を取得することが望まれている。
【0035】
なお、本明細書で「視野」および「視野範囲」は出力される画像に含まれている領域を意味し、「視野サイズ」はその大きさを意味する。また、視野の内外の境界を「視野の外縁」と称し、「視野内」とは視野の外縁より内側であることを意味する。また、「視野中心」とは視野の中心位置を意味する。なお視野の形状は特別な言及がない限り正方形であることを仮定して説明するが、本発明はこれに限られず、例えば視野が長方形となってもよい。
【0036】
図5は、本実施例の高倍画像を取得する方法を説明する模式図である。
図3や
図4と同様に、観察対象である試料501に対して、低倍視野502の領域に一次電子線を照射して、低倍画像を取得する。その後、取得した低倍画像(すなわち被検査画像)と、低倍画像のパターンに対応するパターンを有し欠陥が存在しない領域の画像とを比較することで欠陥検出を行う。欠陥検出は、その他の方法、例えば、取得した欠陥画像における背景パターンの周期性を利用して、欠陥が存在しない画像を合成して、合成した画像と欠陥画像とを比較して、欠陥を検出する方法や、設計データから生成された基準データと欠陥画像とを比較する方法などを用いてもよい。以下、欠陥検出において被検査画像の比較対象となる画像やデータを総称して参照画像という。
【0037】
従来技術では、検出した欠陥座標を高倍視野505の中心として高倍画像506を取得するために、
図4の事例のように、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像506に入ってしまう。これに対して、
図5の事例では、高倍視野が低倍視野の内側に収まるように、高倍視野503の中心位置を制御する。言い換えれば、高倍画像に低倍画像の外縁が含まれないように、高倍画像の視野を設定することで、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ることを防止している。具体的には、低倍視野502に対する、従来方式における高倍視野505のはみ出し量のx方向成分をΔx(507)、y方向成分をΔy(508)として、検出した欠陥座標(x、y)から、はみ出し量分(Δx、Δy)を、低倍視野の中心方向にずらした座標を、高倍視野503の中心として、高倍画像を取得する。
【0038】
Δx、Δyは、低倍視野中心を原点(0、0)、低倍画像から検出した欠陥座標を(x、y)、低倍視野サイズを(FOV
Low_x、FOV
Low_y)、高倍視野サイズ(FOV
High_x、FOV
High_y)として、数式(1)と(2)から算出できる。
【0041】
Δx、Δyは、欠陥の位置を中心として高倍倍率の画像を取得する場合の高倍画像の外縁の一辺であって、かつ、低倍画像の視野範囲に含まれない一辺と、低倍画像の外縁の最も近い一辺と、のx、y方向のそれぞれの距離を表す。なお、Δx、Δy以上、高倍画像の視野を低倍視野の中心方向に動かしてもよいが、あくまでも欠陥が高倍画像の中に含まれることが必要である。
【0042】
また、
図5ではΔx、Δyがともに0でない例を示したが、当然ながらどちらか一方が0となる場合にも上記の方法を同様に適用可能である。
【0043】
以上の方法により、高倍画像の視野内には低倍画像の外縁が含まれないこととなるので、画像の視野内にコンタミネーションや局所帯電の境界が含まれていない高倍画像504が得られる。
【0044】
図6は、
図5を用いて説明した方法をADRに適用した場合のフローチャートである。まず、上位の検査装置が検出した欠陥座標を入力情報として、欠陥座標を視野中心として、低倍画像を取得する(601)。取得した低倍画像から、欠陥座標を検出する(602)。欠陥座標の検出は、既述のように、どのような方法などを用いてもよい。
【0045】
次に、
図5で定義したはみ出し量(Δx、Δy)を算出して(603)、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界、すなわち低倍画像の外縁が、高倍画像に入らないように、はみ出し量分、低倍視野の内側に高倍視野の中心を移動させて設定する(604)。設定した高倍視野に基づき、高倍画像を取得する(605)。これら一連の処理を、観察対象である全ての試料に対して実行する(606)。
【0046】
この方法に従えば、ADRで欠陥の高倍画像を自動取得する場合に、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ることを防止することができる。
【0047】
しかし、一方で、
図5、6のように高倍画像の視野を設定した場合には、欠陥が高倍画像の中心に位置しないという課題が生じる。高倍画像を用いて、例えば、ADC処理などを実行する場合には、欠陥が画像中心に位置しないことは問題にならないが、自動処理ではなく、目視確認など人手により画像を解析する場合には、見た目の印象も無視できない場合がある。
【0048】
図7に、この課題を解決するための手段を示す。
図7は、本実施例の第二の高倍画像の取得方法を示す模式図である。まず、観察対象である試料701に対して、低倍視野702の領域に一次電子線を照射して、低倍画像を取得する。
図5と同様に、低倍視野702に対する、従来方式における高倍視野705、706のはみ出し量のx方向成分をΔx(707)、y方向成分をΔy(708)として定義する。次に、高倍画像の中心に欠陥が位置するように、(2×Δx、2×Δy)分だけ高倍視野のサイズを703のように小さくして、検出した欠陥座標を中心として高倍画像704を取得する。ここで、上記の「(2×Δx、2×Δy)分」のサイズとは、欠陥の位置を中心とし予め指定された高倍画像の視野サイズによって定められる高倍画像の視野内であって、かつ、低倍画像の視野内に含まれない領域のことである。言い換えれば、仮に予め指定された高倍画像の視野で欠陥を中心に撮像した場合に低倍画像の視野からはみ出す領域のことである。なお、予め指定された高倍画像の視野とは、オペレータが設定した入力情報でもよいし、低倍画像から算出した欠陥サイズから、例えば、高倍画像に占める欠陥占有率が一定以上になるように設定された視野でもよい。
【0049】
この方法によれば、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ることを防止しつつ、さらに、高倍画像の中心に欠陥が位置するように高倍画像を取得することができる。
【0050】
図8は、
図7を用いて説明した方法を、ADRに適用した場合のフローチャートである。まず、上位の検査装置が検出した欠陥座標を入力情報として、欠陥座標を視野の中心として、低倍画像を取得する(801)。取得した低倍画像から、欠陥座標を検出する(802)。欠陥座標の検出は、既述のように、どのような方法などを用いてもよい。
【0051】
次に、
図5で定義したはみ出し量(Δx、Δy)を算出して(803)、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界、すなわち低倍画像の外縁が入らないように、はみ出し量の2倍分視野サイズを小さくして、検出した欠陥座標を視野の中心として、高倍視野を設定する(804)。設定した高倍視野に基づき、高倍画像を取得する(805)。これら一連の処理を、観察対象である全ての試料に対して実行する(806)。
【0052】
この方法に従えば、ADRで欠陥の高倍画像を自動取得する場合に、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ることを防止し、さらに、高倍画像の中心に欠陥が位置するように、高倍画像を取得することができる。
【0053】
ところが、
図7、8のように高倍画像の視野を設定した場合には、高倍画像サイズが変動するという問題が生じる。高倍画像を用いて、例えば、ADC処理などを実行する場合には、ADC処理を実行するアプリケーションが、多様な画像サイズに対応していれば問題にならないが、アプリケーションが対応していない場合には問題となる。また、目視確認する場合には、目視確認するために用いる画像ビューアーの仕様によっては、画像サイズが変化することで、目視作業者の負担が増加する可能性がある。
【0054】
図9、10、11を用いて、この課題を解決するための手段を説明する。
【0055】
図9は、上位の検査装置の欠陥座標精度から求めた低倍視野と、高倍画像の視野サイズから求めた低倍視野の関係を示す模式図である。まず、上位の検査装置が出力した欠陥座標と、SEM式観察装置で再検出した欠陥座標との差を求めて、x軸を欠陥座標ずれのx成分(901)、y軸を欠陥座標ずれのy成分(902)としてプロットする。ここで上位の検査装置が出力した欠陥座標は低倍画像の視野中心と同じ座標であるので、
図9のプロットは低倍画像の視野中心と、当該低倍画像を用いて検出された欠陥座標との差ということもできる。
【0056】
上位の検査装置の欠陥座標とSEM式観察装置で再検出した欠陥座標とのずれ量から上位の検査装置の欠陥座標精度を求め、この欠陥座標精度から低倍視野のサイズを設定することができる。具体的には、例えば、低倍画像の視野サイズの一辺がこのずれ量の最大値の少なくとも2倍以上の長さとなるようにすれば、最大のずれ量の場合でも低倍画像の視野に入るので、全ての欠陥が低倍視野に入るように低倍視野を設定することができる。ただし、低倍視野の設定方法は、この方法に限定するものではない。例えば、検査装置の欠陥座標精度のばらつきが大きい場合や、極端に大きなずれが発生している特異点などが発生している場合には、ずれ量の分散値σを求め、分散値σに基づいて低倍視野を設定してもよい。
【0057】
次に、上位の検査装置の欠陥座標精度から設定した低倍視野903に対して、ユーザが設定した所望の高倍視野サイズ904を考慮して、検出した欠陥座標を高倍視野の中心とした場合にとり得る高倍視野の範囲905を求める。具体的には、低倍視野の4辺に対して、ユーザが設定した高倍視野サイズの1/2のサイズを加算した範囲が、欠陥座標を高倍視野の中心とした場合にとり得る高倍視野の範囲となる。別の表現をすれば、欠陥座標を高倍視野の中心とした場合にとり得る高倍視野の範囲は、欠陥検査装置の座標精度に基づいて定められた視野の一辺の長さにさらに高倍画像の視野の一辺の長さ以上の長さを加え、この長さを一辺とする範囲であるといえる。この範囲を905に示している。
【0058】
なお、ここでは、ユーザが設定した高倍視野サイズを用いて説明したが、検出した欠陥サイズに基づき、ADRが高倍視野サイズを自動設定する場合には、自動設定される可能性がある最大の高倍視野サイズを用いて、高倍視野の範囲を求めればよいし、この方法に限定するものではない。
【0059】
次に、
図10を用いて実際の低倍画像の視野範囲の決め方を説明する。
図10は、低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ることを防止し、また、高倍画像の中心に欠陥が位置するように、さらには、高倍視野を所望のサイズに維持することができる、高倍画像の取得方法の模式図である。
図10では、欠陥座標を高倍視野の中心とした場合にとり得る高倍視野の範囲を、実際に一次電子線を照射する低倍画像の視野範囲としている。
【0060】
まず、観察対象である試料1001に対して、上位の検査装置の欠陥座標精度から求めた低倍視野サイズ1002に、高倍視野1003のサイズを考慮して、高倍視野がとり得る範囲から求めた低倍視野1005を設定する。この高倍視野がとり得る範囲から求めた低倍視野1005に対して、一次電子線を照射して、低倍画像を取得する。
【0061】
上位の検査装置の欠陥座標精度から求めた低倍視野1002の内側に欠陥がある場合には、低倍画像撮像時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍視野1003に入ることはなく、かつ、高倍画像の中心に欠陥が位置した状態で、さらには、所望の高倍視野サイズで高倍画像1004を取得することができる。
【0062】
ところが、上位の検査装置の欠陥座標精度から求めた低倍視野1002は、過去の実績に基づき求めたものであり、将来の欠陥座標精度を保証するものではないため、実際に欠陥観察を実行した場合、欠陥座標精度から求めた低倍視野1002の外側に、欠陥が位置する可能性がある。欠陥座標精度から求めた低倍視野1002の外側に欠陥が位置した場合には、
図9、10で説明した方法を用いても低倍画像取得時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が、高倍画像に入ることになる。
【0063】
これを回避するためには、
図5や
図6で説明した方法や、
図7や
図8で説明した方法を併用することが考えられる。具体的には、
図9,10で説明した方法において欠陥が欠陥座標精度から求めた低倍視野1002の外で検出された場合に、
図5〜
図8で説明した方法を用いる。これにより、
図5〜
図8で説明した方法を単独で採用した場合と比較しても、高倍画像の中心に欠陥が位置しない頻度や、高倍視野サイズが変動する頻度を抑制することができる。
【0064】
また、別の方法として、上位の検査装置の欠陥座標精度から求めた低倍視野1002の内側に欠陥検出処理の範囲を限定する方法でもよい。すなわち、高倍視野がとりうる範囲から求められる低倍での実際の電子線照射領域のうち、検査装置の座標精度から求められた低倍視野の範囲内のみを欠陥検出処理の対象領域とする。この方法によれば、低倍画像撮像時に発生したコンタミネーションや局所帯電の境界が高倍画像に入ることがなく、かつ、高倍画像の中心に欠陥が位置した状態で、さらには、所望の高倍視野サイズで高倍画像1004を安定して取得することができる。
【0065】
以上で説明したいずれの方法を選択するか、またはどの組み合わせを選択するかは、高倍画像の用途、つまり、高倍画像を用いてどのような解析を行うか、また、解析を行うアプリケーションの仕様に応じて、最適な方法を選択すればよい。
【0066】
図11は、
図10で説明した方法を、ADRに適用した場合のフローチャートである。まず、上位の検査装置の欠陥座標精度から求められた低倍視野に、高倍視野のサイズを考慮して、高倍視野がとり得る範囲を求め、この高倍視野がとり得る範囲を、一次電子線を照射する低倍視野として設定する(1101)。設定した低倍視野に基づき、低倍画像を取得する(1102)。
【0067】
取得した低倍画像から、欠陥座標を検出する(1103)。欠陥座標の検出は、既述のように、どのような方法などを用いてもよい。また、
図10で説明したように、欠陥検出の範囲を、上位の検査装置の欠陥座標精度から求められた低倍視野の内側に限定してもよい。次に、検出した欠陥座標を高倍視野の中心として、高倍画像を取得する(1104)。この一連の処理を、全試料に対して実行する(1105)。
【0068】
この方法に従えば、高倍画像に低倍画像撮像時のコンタミネーションや局所帯電の境界が入ることがなく、かつ、高倍画像の中心に欠陥が位置した状態で、さらには、所望の高倍視野サイズで高倍画像を取得することができる。
【0069】
図12は、上位の検査装置の欠陥座標精度を求めるための実績データと、この実績データから求められる低倍視野サイズとを、レビュー時に更新するADRのフローチャートである。まず、上位の検査装置の欠陥座標精度の実績データから、低倍視野サイズを設定する(1201)。低倍視野サイズは、
図10、
図11で説明したように、高倍視野サイズを考慮して設定する方法を採用してもよい。
【0070】
設定した低倍視野サイズに基づき、低倍画像を取得する(1202)。取得した低倍画像から欠陥座標を検出する(1203)。欠陥座標の検出は、既述のように、どのような方法などを用いてもよい。
図10、
図11で説明した方法を採用する場合には、欠陥検出の範囲を、上位の検査装置の欠陥座標精度から求められた低倍視野の内側に限定してもよい。
【0071】
検出した欠陥座標から、上位の検査装置が検出した欠陥座標のずれ量を求め、新たに求められたずれ量をずれ量の実績データに加えて、ずれ量の実績データを更新する(1204)。次に、検出した欠陥座標を高倍視野の中心として、高倍画像を取得する(1205)。この一連の処理を、観察対象の全ての試料に対して実行する(1206)。
【0072】
この方法に従えば、上記の検査装置状態が変化して欠陥座標精度が変動した場合や、SEM式観察装置の装置状態が変化してステージ精度が変動した場合にも、変動に追従するように、低倍視野を設定することができるので、ユーザがレシピメンテナンスに要する手間を軽減することができる。
【0073】
図13は、これまでに説明した実施例における観察視野設定処理の機能ブロック図である。観察視野設定処理ブロック1301は、欠陥検出処理部1302、ずれ量算出処理部1303、観察視野設定部1304から構成される。観察視野処理ブロック1301は、
図1の全体制御部および解析部113、またはレシピ管理装置120、または
図2の操作・解析部201などに実装することができる。
【0074】
欠陥検出処理部1302は、欠陥画像1302を入力として、欠陥座標1306を算出する。次に、ずれ量算出処理部1303では、欠陥座標1306と検査座標1307を入力として、これらの差分をずれ量1308として出力する。さらに、観察視野設定部1304では、ずれ量1308と、存在する場合には設定済み視野サイズ1309を入力として、高倍画像の観察視野1309を算出して設定する。
【0075】
以上に説明したように、本発明によれば、高倍画像において、低倍画像取得時のコンタミネーションや局所帯電が発生している部分と、コンタミネーションや局所帯電が発生していない部分が混在することを防止することができ、精度の高い欠陥検出、欠陥分類処理を行うことができる欠陥観察システムを提供することができる。
【0076】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0077】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0078】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。