(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる垂直型発光素子の断面を示す。以下、垂直型発光素子を面発光レーザ素子として説明するが、垂直型発光素子は面発光レーザ素子に限定されない。垂直型発光素子は、上側多層反射膜の直下に中間層を有することで、上側多層反射膜を積層する面に段差が生じるものであればよい。なお、各図は各層の形状の概略を示すものであり、中間層70、p型電極部90および上側多層反射膜80の形状は、各図に示される形状に限定されない。
【0010】
面発光レーザ素子100は、基板10、下側多層反射膜20、n型クラッド層30、メサポスト部62、中間層70、上側多層反射膜80、p型電極部90およびn型電極部92を備える。基板10は、アンドープのGaAs基板であってよい。
【0011】
下側多層反射膜20は、基板10上に半導体の多層膜をエピタキシャル成長して形成される。ここで、「上」とは、基板10の表面に垂直で、且つ、基板10の表面から離れる方向を指す。また。「下」とは、「上」と逆方向を指す。つまり、「上」及び「下」は、面発光レーザ素子100を実装した場合における上下方向を指すものではない。下側多層反射膜20は、例えばGaAs/AlGaAsを含む複合半導体層が複数積層された半導体多層膜ミラーである。
【0012】
n型クラッド層30は、下側多層反射膜20上に形成される。n型クラッド層30は、例えばシリコン(Si)などのn型ドーパントをドープしたn型GaAsを含む。n型クラッド層30の上面の一部は、メサポスト部62に含まれてよい。つまり、n型クラッド層30の上面には、メサポスト部62と接する領域に、メサの基部が形成されてよい。
【0013】
n型電極部92は、n型クラッド層30上においてメサポスト部62を取り囲むように形成される。n型電極部92は、AuGeNi/Auの多層構造により形成されてよい。n型電極部92はn型引出電極によって外部回路に接続される。n型電極部92は、n型クラッド層30に接して形成されなくともよい。n型電極部92とn型クラッド層30との間にn型コンタクト層が介在してもよい。
【0014】
メサポスト部62は、n型クラッド層30上に形成される。メサポスト部62には、活性層40、電流狭窄層50及びp型クラッド層60が含まれる。メサポスト部62は円柱状に成形されてよい。
【0015】
活性層40は、後述する中間層70および下側多層反射膜20の間に形成され、光を生成する。本例の活性層40は、n型クラッド層30上に形成される。活性層40は、例えば、GaInNAs量子井戸層と、GaAs障壁層とを交互に積層した多重量子井戸構造を有する。活性層40は、p型電極部90から注入される電流によって光を発する。
【0016】
電流狭窄層50は、活性層40上に形成される。電流狭窄層50は、開口部54及び選択酸化層52を有する。電流狭窄層50は、p型電極部90から注入される電流を狭窄して開口部54内に集中させることにより、活性層40に注入される電流密度を高める。電流狭窄層50は、例えばAlAs等のAl含有層を含む。
【0017】
選択酸化層52は、メサポスト部62の周縁側から酸化されて形成されたAl
2O
3を含む円環状の絶縁層であってよい。開口部54は、選択酸化層52と同心円状に形成される。開口部54は導電性を有するAlAsを含んでよい。p型クラッド層60は、電流狭窄層50上に形成される。p型クラッド層60は、例えば炭素(C)などのp型ドーパントをドープしたp型GaAsを含む。
【0018】
中間層70は、上側多層反射膜80の下に形成される。本例の中間層70は、p型クラッド層60および上側多層反射膜80の間に形成される。中間層70は、メサポスト部62の上面のうち周縁部分以外に形成される。周縁部分とは、メサポスト部62の端部に沿った所定の幅の領域であってよい。つまり、中間層70は、メサポスト部62の上面において、端部から中心に向かう途中に、メサポスト部62の上面から上方に延伸する段差を生じさせる。
【0019】
中間層70は、上側多層反射膜80と異なる組成の層72を含む。層72は、例えば、位相調整層、保護層、非線形層または吸収層である。位相調整層は、例えばメサポスト部62とは屈折率の異なる誘電体材料で形成され、誘電体で形成され、面発光レーザ素子100が出力するレーザ光の位相を調整する。保護層は、例えば誘電体で形成され、メサポスト部62の上面を保護する。非線形層は、例えば窒化シリコンで形成され、面発光レーザ素子100が出力するレーザ光に対して非線形光学効果を生じさせ、高次高調波を生じさせる。吸収層は、例えば高次高調波を吸収する。
【0020】
中間層70は、層72上に誘電体からなる層74を含んでよい。層74は、上述した位相調整層、保護層、非線形層または吸収層等であってよく、上側多層反射膜80の一部であってもよい。つまり、中間層70は、上側多層反射膜80との境界において、上側多層反射膜80と同じ組成の層を有してもよい。この場合、層74は、上側多層反射膜80の最下層を兼ねる。
【0021】
また、層74が上側多層反射膜80の一部である場合、中間層70を形成して、p型電極部90を形成した後に、上側多層反射膜80を積層する。中間層70と、上側多層反射膜80との境界は、再積層の境界であってよい。
【0022】
p型クラッド層60上には光の共振方向と平行な断面において中間層70を挟むように、p型電極部90が形成されている。ここで、中間層70を挟むとは、中間層70の外周部がp型電極部90によって包囲されることを指してよい。また中間層70を挟むとは、p型電極部90により中間層70の端部が終端されることを指してよい。また中間層70は、端部が上側多層反射膜80の端部よりも内側に形成された領域を指してよい。
【0023】
例えば、p型電極部90は、p型クラッド層60上において、中間層70を取り囲むように円環状に形成される。中間層70とp型電極部90は接していても、接していなくてもよい。p型電極部90は、メサポスト部62の外周と略一致する外周を有してよい。
【0024】
p型電極部90は、上端が中間層70の上面よりも上側となるように形成される。つまり、p型電極部90は、上側多層反射膜80の積層面の中央部分に窪みを形成する。p型電極部90の中間層70側の端部は、中間層70少なくとも一部を覆うように延伸してよい。p型電極部90は、Pt/Tiの多層構造により形成されてよい。p型電極部90はp型引出電極によって外部回路に接続される。p型電極部90及び中間層70は、p型クラッド層60に接して形成されなくともよい。p型電極部90及び中間層70と、p型クラッド層60との間にp型コンタクト層が介在してもよい。
【0025】
上側多層反射膜80は、中間層70及びp型電極部90上に形成される。また、中間層70およびp型電極部90が離間している場合、上側多層反射膜80は、中間層70およびp型電極部90の間のメサポスト部62の上面にも形成されてよい。下側多層反射膜20および上側多層反射膜80は、互いに対向して形成され、活性層40において生じた光を共振させる。上側多層反射膜80は、最上層の射出面86からレーザ光を射出する。上側多層反射膜80は、SiN/SiO2を含む複合誘電体層が複数積層された誘電体多層膜ミラーであってよい。
【0026】
本例の上側多層反射膜80は、中間層70を挟んでp型電極部90を形成した後に、中間層70上およびp型電極部90上に積層して形成される。p型電極部90および中間層70により形成された窪みに起因して、上側多層反射膜80の各層は、上側に突出した同心円状の突出部82を有する。本例の上側多層反射膜80は、窪み上に順次積層するので、上側多層反射膜80の下層から上層に向かって、突出部82の位置が内側に移動する。
【0027】
図1における線分Lは、上側多層反射膜80の各層の突出部82の頂点を結んだ線を示す。
図1に示すように、2本の線分Lは上側多層反射膜80の下層から上層に向かって互いに近づくように傾斜している。ここで、2本の線分Lが下から上に向かって互いに近づく方向を内向きといい、それとは逆に互いに遠ざかる方向を外向きと定義する。
【0028】
なお
図1においては、線分Lを直線として示したが、線分Lが曲線となるように上側多層反射膜80が形成されていてもよい。上側多層反射膜80における各層は中間層70の上面と対向する位置に略平坦な平坦部84を有する。平坦部84は、突出部82により囲まれた領域を指す。上側多層反射膜80の各層の平坦部84は、互いに略平行で、かつ、同心円状に形成されている。つまり、各層の平坦部84は、直下の層の平坦部84よりも内側に形成される。上側多層反射膜80の各層における平坦部84の面積は、中間層70からの距離に応じて減少する。つまり、平坦部84の直径は、上側多層反射膜80の下層から上層に向かって徐々に減少する。このため、面発光レーザ素子100が出力するレーザ光における高次横モードを抑制することができる。
【0029】
なお、n型クラッド層30の上面の一部、活性層40、電流狭窄層50、p型クラッド層60、中間層70、p型電極部90及び上側多層反射膜80が円柱状に成形されメサポスト部62を形成してもよい。
【0030】
図2は、比較例にかかる面発光レーザ素子500の断面を示す。面発光レーザ素子500は、p型電極部91および上側多層反射膜80が、第1実施形態の面発光レーザ素子100のp型電極部90および上側多層反射膜80と異なる。他の構造は、面発光レーザ素子100と同一である。
【0031】
p型電極部91は、上端が中間層70の上面よりも下側に位置している。つまり、p型電極部91および中間層70によって、上側多層反射膜80の直下には、中央部が上側に突出した段差が形成される。中間層70上に積層される上側多層反射膜80の各層は、この段差に起因して形成される同心円状の突出部82を有する。本例では、各層の突出部82の頂点を結ぶ2本の線分Lは外向きに延びている。つまり、各層の平坦部84の面積は、下層から上層に向かって徐々に増加している。係る場合には、面発光レーザ素子500が出力するレーザ光における高次横モードを制御することが難しい。
【0032】
図3は、
図1に示す面発光レーザ素子100の断面の一部を拡大して示す。p型電極部90は、メサポスト部62の周縁側の端部93及び中間層70側の端部94を有する。端部94の上端95は、中間層70の上面75よりも上側に位置する。そのため、p型電極部90および中間層70により、上側多層反射膜80が形成される面の中央部分に窪みが形成されている。
【0033】
なお、p型電極部90の中間層70側の端部94は、メサポスト部62の周縁側の端部93よりも上方に延伸していてよい。また、端部93はp型クラッド層60(
図1参照)に接して形成され、端部94はp型クラッド層60から離間して形成されてよい。この場合、端部94および端部93におけるp型電極部90の厚さは略同一であってよい。
【0034】
p型電極部90とp型クラッド層60との界面において、p型電極部90を構成するTiなどの物質が反応することにより局所的な歪みが発生しやすい。この歪みが半導体積層構造内に転位を生じさせる。この転位が活性層40の開口部54直下の発光部付近に生じるとレーザ特性が劣化する。そのため、p型電極部90の中間層70側の端部94と活性層40との距離が、メサポスト部62の周縁側の端部93と活性層40との距離より大きくなるようにp型電極部90を形成する。こうすることにより、歪みの発生を抑制して、活性層40での転位の発生を防止することができる。
【0035】
中間層70は傾斜した側面76を有してよい。ここで、傾斜した側面76とは、直線状に傾斜した側面及び曲線状に傾斜した側面のいずれか又は両方を含む。p型電極部90は、中間層70の側面76に沿って形成される。ここで、側面76に沿って形成されるとは、端部94の底面96が傾斜した側面76に接して形成されることを指す。つまり、p型電極部90の端部94は、中間層70の傾斜した側面76を覆っている。
【0036】
図4は、
図3の領域110における面発光レーザ素子100の断面SEM写真である。
図4において水平方向に伸びる点線は、p型電極部90の上端95の位置を示す。また、
図4における矢印は、突出部82の頂点を結ぶ直線の方向を示す。
【0037】
図4に示すように、p型電極部90の上端95が中間層70の上面より上側に位置している。それによって、上側多層反射膜80の各層の突出部82が、内向きに形成されている。その結果、各層の平坦部84の面積が下層から上層に向かって徐々に減少している。
【0038】
図5は、
図2に示す面発光レーザ素子500の断面の一部を拡大して示す。p型電極部91の中間層70側の端部94の上端95は、中間層70の上面75よりも下側に位置している。
【0039】
図6は、
図5の領域510における面発光レーザ素子500の断面SEM写真である。
図5において水平方向に伸びる点線は、中間層70の上面の位置を示す。また、
図5における矢印は、突出部82の頂点を結ぶ直線の方向を示す。
【0040】
p型電極部91の上端95が中間層70の上面より下側に位置している。それによって、上側多層反射膜80の各層の突出部82が、外向きに形成されている。その結果、各層の平坦部84の面積が下層から上層に向かって徐々に増加している。
【0041】
図7は、実施例および比較例にかかる面発光レーザ素子が出力するレーザ光におけるランダムジッタ成分を測定した測定結果を示す。実施例の面発光レーザ素子100として、
図4に示した構造と同様の構造を有する3つのサンプル(A、B、C)を使用した。また、比較例の面発光レーザ素子500として、
図6に示した構造と同様の構造を有する3つのサンプル(D、E、F)を使用した。なお、
図7におけるジッタ値は相対値を示す。
【0042】
グラフより、いずれのサンプルにおいても、突出部82が外向きに形成された面発光レーザ素子500に比べ、突出部82が内向きに形成された面発光レーザ素子100の方がランダムジッタを小さくすることができることがわかる。これは、上側多層反射膜80の各層の突出部82により光のロスが生じるためであると考えられる。突出部82を内向きに形成することにより開口部54の外側に染み出した高次横モードの光のロスを大きくすることができる。その結果、高次横モードの発振は抑制されランダムジッタを低減できる。
【0043】
図8は、実施例の面発光レーザ素子100と比較例の面発光レーザ素子500について、サイドモード抑制比(SMSR)の測定結果を示す。
図8の縦軸は、SMSRをデシベル単位であらわした場合の相対値を示す。また
図8は、複数の面発光レーザ素子500について測定したSMSRの累積度数分布において正規分布を仮定して、度数を(平均値からのずれ)/(標準偏差)に変換した値を横軸(Sigma)とする。当該変換により、測定値の度数分布が正規分布に近ければ
図8のグラフは直線的になる。
【0044】
図8に示すように、すべてのシグマ値にわたって、突出部82が外向きに形成された面発光レーザ素子500に比べ、突出部82が内向きに形成された面発光レーザ素子100の方がSMSR値が高いことがわかる。この実験結果からも、面発光レーザ素子100は、高次横モードの光が抑制されていることがわかる。
【0045】
図9は、面発光レーザ素子500について、相対強度ノイズ(RIN)と周波数との関係を測定した実験結果を示す。
図10は、面発光レーザ素子100について、相対強度ノイズ(RIN)と周波数との関係を測定した実験結果示す。
図9および
図10の縦軸は、RINをdB/Hzであらわした場合の相対値を示す。0GHzから16GHz付近までの周波数帯域において、面発光レーザ素子500に比べ面発光レーザ素子100の方がRINが小さいことがわかる。この実験結果からも、面発光レーザ素子100は、高次横モードの光が抑制されていることがわかる。
【0046】
以上の実験結果より、上側多層反射膜80の各層の突出部82を内向きに形成し、平坦部84の面積が下層側から上層側に向かって徐々に減少するように上側多層反射膜80を構成することにより、面発光レーザ素子の高次横モードの発生が抑制されることがわかる。
【0047】
次に、面発光レーザ素子100の製造方法を説明する。面発光レーザ素子100の製造方法は、例えば、MOCVD法によりGaAs基板10上に、下側多層反射膜20、n型クラッド層30、活性層40、電流狭窄層50、p型クラッド層60を順次エピタキシャル成長する半導体層形成段階と、中間層70を堆積する中間層形成段階と、p型電極部90を形成するp型電極形成段階と、メサポスト部62を形成するメサポスト形成段階と、n型電極部92を形成するn型電極形成段階と、上側多層反射膜80を堆積させる上側多層反射膜形成段階とを備える。
【0048】
半導体層形成段階は、GaAs基板10の表面に下側多層反射膜20を成長させる段階を有する。下側多層反射膜20は、例えばGaAs/AlGaAsを含む複合半導体層を34ペア積層することによって形成される。複合半導体層の各層はλ/4n(λは発振波長。nは屈折率)の厚さを有する。次に、下側多層反射膜20の最上層の表面に例えばシリコンなどのn型ドーパントをドープしたn型GaAsを含むn型クラッド層30を成長させる。続いて、n型クラッド層30の表面に、例えば、層数が3のGaInNAs量子井戸層と、層数が4のGaAs障壁層とを交互に積層した多重量子井戸構造の活性層40を成長させる。次に、活性層40の表面に、例えばAlAsのようなAl含有層を含む電流狭窄層50を成長させる。次に、電流狭窄層50の表面に、例えば炭素のようなp型ドーパントをドープしたp型GaAsを含むp型クラッド層60を成長させる。
【0049】
中間層形成段階は、p型クラッド層60の表面に例えば位相調整層などの上側多層反射膜80と組成の異なる層72を堆積する。中間層形成段階は、層72の表面に上側多層反射膜80と同じ組成の誘電体を含む層74を更に堆積してもよい。層72および層74を堆積した後、フォトリソグラフィー技術によりレジストをパターニングしてマスクを形成する。次に、ドライエッチングによりエッチングして中間層70を形成する。
【0050】
p型電極形成段階は、フォトリソグラフィーによりレジストをパターニングしてマスクを形成する段階と、例えばPt/Tiなどの多層金属膜をスパッタ蒸着する段階と、マスクをリフトオフして円環形状のp型電極部90を形成する段階とを有する。リフトオフ法により、中間層70の傾斜した側面に沿ってp型電極部90が形成される。
【0051】
メサポスト形成段階は、p型電極部90をマスクとして、異方性エッチングによりn型クラッド層30に至るまで半導体層をエッチングして、円柱状のメサポスト部62を形成する段階を含む。また、メサポスト形成段階は、水蒸気雰囲気中で所定時間加熱することにより、電流狭窄層50に選択酸化層52を形成する段階を含む。選択酸化層52は、メサポスト部62の周縁側からAlが酸化してAl
2O
3に変化することにより形成される。
【0052】
n型電極形成段階は、露出したn型クラッド層30の表面において、メサポスト部62を取り囲むようにC字形状のn型電極部92を形成する段階を含む。n型電極部92は、リフトオフ法により、例えば、AuGeNi/Auの多層金属構造で形成する。
【0053】
上側多層反射膜形成段階は、中間層70上及びp型電極部の表面の少なくとも一部にプラズマCVD法により、例えばSiN/SiO2を含む複合誘電体層を10から12ペア積層する段階を有する。複合誘電体層の各層の厚さはλ/4nであってよい。上側多層反射膜形成段階は、p型電極形成段階の後であってメサポスト形成段階の前であってもよい。この場合、上側多層反射膜80の最上部にマスクを形成し、異方性エッチングによりメサポスト部を形成してよい。
【0054】
図11は、変形例にかかる面発光レーザ素子200の断面の一部を示す。面発光レーザ素子200において、面発光レーザ素子100と同じ機能を有する部材には同一の符号を付し説明を省略する。面発光レーザ素子200は、中間層70が垂直な側面77を有し、p型電極部90は中間層70よりも厚く形成される点で第1実施形態と異なる。端部94の上端95は、中間層70の上面75よりも上側に位置している。p型電極部90は、中間層70と接して形成される。具体的には、中間層70の垂直な側面77は、端部94の端面と接している。
【0055】
p型電極部90のメサポスト部62の周縁側の端部93の厚さは、中間層70側の端部94の厚さと等しくてもよいし、異なってもよい。p型電極部90と中間層70をこのように構成しても、上側多層反射膜80が形成される面の中央部分に窪みが形成される。したがって、上側多層反射膜80の各層の突出部82を内向きに形成することができる。
【0056】
図12は、他の変形例にかかる面発光レーザ素子300の断面の一部を示す。面発光レーザ素子300は、p型電極部90が中間層70から離間して形成されている点で、面発光レーザ素子200と異なる。つまり、中間層70の側面77は、p型電極部90の中間層70側の端部94の端面と所定の距離だけ離隔されている。
【0057】
このように構成しても、上側多層反射膜80が形成される面の中央部分に窪みが形成される。なお、上側多層反射膜80の各層には、p型電極部90および中間層70の離隔部分に対応して、突出部82と平坦部84との間に溝部88を有してよい。p型電極部90の上端95は、中間層70の上面75よりも上側に位置している。メサポスト部62の周縁側におけるp型電極部90の端部93の厚さは、中間層70側の端部94の厚さと等しくてもよいし、異なってもよい。p型電極部90及び中間層70をこのように構成しても、上側多層反射膜80の各層の突出部82を内向きに形成することができる。
【0058】
図13は、他の変形例にかかる面発光レーザ素子400の断面の一部を示す。面発光レーザ素子400は、p型電極部90の一部が、中間層70の上面75に形成される点で、面発光レーザ素子100または面発光レーザ素子200と異なる。他の構造は、面発光レーザ素子100または面発光レーザ素子200と同一であってよい。
【0059】
p型電極部90の中間層70側の端部94は、中間層70の側面77から中間層70の上面75に沿って延伸して形成される。つまり、中間層70の外周部はp型電極部90によって覆われている。p型電極部90の上端95は、中間層70の上面75よりも上側に位置している。p型電極部90の上面97は、中間層70の上面75と平行でなくともよい。p型電極部90及び中間層70をこのように構成しても、上側多層反射膜80の各層の突出部82を内向きに形成することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。