(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、液体窒素温度(77K)以上で超電導を示す高温超電導体の一種として、RE系超電導体(REは、Y,Sc,La,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luなどから選択される1以上の希土類元素をいう)が知られている。RE系超電導体としては、特に、化学式YBa
2Cu
3O
7-Yで表されるイットリウム系酸化物超電導体(以下YBCO)が代表的である。このYBCO薄膜の形成には、例えば、基材(被成膜基材)の表面に原料ガスを供給して化学反応させることにより超電導層を成膜する化学気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition method)が利用される。具体的には、Y(RE),Ba,Cuそれぞれのβジケトン金属錯体をテトラヒドロフラン(THF)などに溶解させ、これらの原料溶液を所定量ずつ混合して気化した原料ガスを基材の表面に吹き付けることにより行われる。また、Y(RE),Ba,Cuそれぞれのβジケトン金属錯体を所定量ずつ混合し、これらをTHFなどに溶解させた、いわゆるカクテル原料溶液を使用する方法も行われている。
【0003】
この種のCVD法を利用するCVD装置(気相成長装置)として、従来、原料溶液を気化させる気化器と、気化された原料ガスを反応室内に噴出する原料ガス噴出部と、反応室内で基材を支持するサセプタと、このサセプタを加熱するヒータとを備え、当該サセプタからの伝熱により基材を加熱しつつ、この基材の表面に原料ガスを供給して当該基材の表面に超電導薄膜を形成するCVD装置が知られている。
この種のCVD装置では、気化器には原料供給ノズルを通じて原料溶液が供給されており、成膜時間が長時間に及んだ場合、原料供給ノズルの先端が時間経過とともに原料溶液によって汚れ、この汚れによって気化器への原料溶液の供給量が変動する。このため、気化された原料ガスの供給量が変動することにより、成膜組成や結晶性、膜厚等に影響を及ぼし、長時間の安定した超電導層の成膜が困難となっていた。
【0004】
この問題を解消するために、従来、1つの気化器に接続される複数の原料供給ノズルと、原料供給ノズルごとに原料溶液をそれぞれ供給する複数の供給手段とを備え、かつ、複数の供給手段から供給される原料溶液の総流量を一定に保つように制御することで、1つの供給手段が不安定になった場合であっても、その他の供給手段が供給量を補正することで、気化器への原料溶液の長時間の安定供給を図ったCVD用液体原料供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、複数の気化器と、これら気化器が接続されるガス混合部とを備え、各気化器にそれぞれ異なる1種類の原料溶液を供給し、各気化器で気化された原料ガスをガス混合部により混合するとともに、各原料配管、および気化器とガス混合部までの配管長を全て等長とすることで成膜層の切り替えをスムーズに行うことができるCVD装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、CVD装置10の概略構成を示す図である。
図1に示すように、CVD装置10は、長尺のテープ状に形成された被成膜基材としての超電導用基材(以下、テープ状基材Tという)を巻き取り走行させる基材搬送部11と、超電導薄膜の原料を供給する原料溶液供給部15と、原料溶液を気化させる気化器17と、気化された原料ガス、及び、テープ状基材Tがそれぞれ供給され、テープ状基材Tの表面に薄膜を形成する成長チャンバ(反応室)19とを備えて構成されている。この成長チャンバ19にはリールチャンバ21,21が連結され、これら成長チャンバ19及びリールチャンバ21,21内に上記のテープ状基材Tが走行する閉空間が形成される。
【0015】
原料溶液供給部15は、テープ状基材Tの表面に形成される薄膜の原料溶液(例えば、YBCOの原料であるY、Ba、Cuのジケトンによるそれぞれの金属錯体を適宜な分量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた溶液)を各々所定の分量ずつ混合して気化器17へ供給する。また、Y,Ba,Cuそれぞれのβジケトン金属錯体を各々所定の分量ずつ混合し、これらをTHFなどに溶解させた、いわゆるカクテル原料溶液を気化器17に供給する構成としても良い。また、本実施形態では、原料溶液に含まれるRE(希土類元素)としてYを例示しているが、これに限るものではなく、例えば、Sc,La,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luなどから選択される1以上の希土類元素を用いることができる。
【0016】
気化器17は、原料溶液供給部15から供給された原料溶液を、キャリアガス供給部29から供給されるキャリアガス(例えばアルゴンAr)とともに噴霧して加熱することにより気化させる。気化器17は、それぞれ内部に単一の原料供給ノズル17Aを備え、この原料供給ノズル17Aを通じて原料溶液及びキャリアガスが気化器17内に噴霧される。気化した原料ガスは、酸素供給部31から供給される酸素(O
2)と混合された後に成長チャンバ19へと供給される。
本実施形態では、CVD装置10は、これら原料溶液供給部15、気化器17、キャリアガス供給部29及び酸素供給部31を複数組(3組)備えており、各組の原料溶液供給部15には、それぞれ同一の元素(本実施形態では、Y,Ba,Cu)を含有した原料溶液が収容されている。また、3つの気化器17は、テープ状基材Tの走行方向に並設されており、各原料溶液供給部15から供給された原料溶液は、それぞれ各気化器17にて気化されて混合された後に成長チャンバ19内に供給される。
なお、本実施形態では、すべての気化器17に同一の元素を含有した原料溶液が供給される構成としているが、少なくとも2つの気化器17にそれぞれ同一の元素を1種以上含有した原料溶液を導入するものであればよい。
【0017】
基材搬送部11は、テープ状基材Tが巻き掛けられる一対の基材用リール23,23を備え、成長チャンバ19内においてテープ状基材Tを所定速度(1〜300m/h)で搬送する。基材用リール23,23は、それぞれリールチャンバ21,21内に配置されており、正転及び逆転駆動可能である。本実施形態では、原料ガスが供給された成長チャンバ19内にテープ状基材Tを往復搬送させることにより、当該テープ状基材Tの表面に所定の膜厚(例えば0.5μm〜3μm)の超電導層を効率よく成膜することができる。なお、超電導層が成膜されたテープ状基材Tは、その後、スパッタ装置により超電導層の上に安定化層(例えば、Ag又はAg合金)が形成されて超電導線材が製造される。
テープ状基材Tは、幅10mm程度のテープ形状を有し、例えば、100μmの厚さの金属基板上に中間層を形成したものが用いられる。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Mo,Ta,Ag,Cu,Fe,Nb,Ni,W、Mnなどの金属又はこれらの合金を用いることができる。また、中間層は、超電導体の結晶粒を2軸配向して成膜させるためのものである。
【0018】
テープ状基材Tは、例えば、低磁性の無配向金属基板を用いて、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法と呼ばれるイオンビームアシストを用いたスパッタ装置により、無配向金属基板上に単層あるいは多層の2軸配向した中間層を形成したものを用いることができ、2軸配向した中間層上に、更にスパッタ装置またはPLD(Pulse Laser Deposition)装置により、複数の中間層を形成したものでもよい。
また、テープ状基材Tとして、ニッケル(Ni)合金からなり、還元雰囲気で配向熱処理により、表面酸化膜の除去と同時に少なくとも表面部分において2軸配向を行った配向金属基板を用いて、中間層を配向金属基板上に形成したものを用いてもよい。
【0019】
成長チャンバ19は、各気化器17からそれぞれ供給された原料ガスを、内部を走行するテープ状基材Tに向けて噴出して化学反応させることにより、テープ状基材Tの表面に超電導層を成膜する。成長チャンバ19は、
図1に示すように、テープ状基材Tを支持するとともに伝熱により加熱するサセプタ33と、このサセプタ33を加熱するヒータ35と、を備えている。すなわち、CVD装置10は、コールドウォール型のCVD装置である。
【0020】
次に、成長チャンバ19の内部構造について説明する。
図2は、成長チャンバ19の内部構造を示す側断面図である。成長チャンバ19は横長の直方体形状を有しているものとし、成長チャンバ19の短手方向(テープ状基材Tの走行方向に直交する方向)を幅方向という。
図2及び
図3に示すように、成長チャンバ19の底壁19Aには開口部37が形成されており、この開口部37にサセプタ33が配設されている。サセプタ33は、走行するテープ状基材Tを支持するとともに、伝熱によりテープ状基材Tを加熱する熱伝導プレートである。サセプタ33の幅方向中央の領域がテープ状基材Tの走行領域となる。
サセプタ33は、
図3に示すように、周縁部が成長チャンバ19の底壁19Aから所定の間隙をもって離間した状態で配設される。テープ状基材Tに超電導層を成膜する際、サセプタ33を700〜800℃程度で保持する必要があるが、成長チャンバ19の底壁19Aとサセプタ33が密接していると、サセプタ33から底壁19Aへの伝熱によりサセプタ33の高温保持が困難となるためである。
【0021】
サセプタ33の直下には、サセプタ33より一回り小さいヒータ(例えばSiC製のセラミックヒータ)35が配設されている。このヒータ35でサセプタ33が所定の温度に加熱されることにより、テープ状基材Tの表面が適切な温度(超電導層の成膜温度)に保持される。
【0022】
成長チャンバ19の上部には、上記した気化器17(
図1)からそれぞれ連結管18を介して接続される原料ガス噴出部41が配設されている。原料ガス噴出部41は、横長の直方体形状をなしており、その下面には、多数の細孔(例えばφ1.5mm)が形成された原料ガス噴出口41aが配設されている。この原料ガス噴出口41aの細孔から原料ガス及びキャリアガスが所定の噴出速度で噴出され、テープ状基材Tに超電導層を成膜する場合、原料ガスの噴出速度は、例えば10m/s以上に設定される。
これら気化器17、連結管18及び原料ガス噴出部41には、不図示のヒータが配置されて230〜290℃程度の温度に維持されている。
【0023】
また、原料ガス噴出部41には、原料ガス噴出口41aから噴出された原料ガスをテープ状基材Tの表面に案内する延長ノズル(原料ガス輸送路)43が設けられている。この延長ノズル43は、テープ状基材Tの幅方向に沿って対向配置される第1遮蔽板43a,43aと、当該テープ状基材Tの走行方向に沿って対向配置される第2遮蔽板43b,43bとを備えて角筒形状に形成されている。これら第1遮蔽板43a及び第2遮蔽板43bは、超電導層を成膜するための成膜温度に対して耐熱性を有するとともに、原料ガスと反応しない材料(例えばSUS)で構成される。
このように、本構成では、原料ガス噴出口41aから噴出された原料ガスをテープ状基材Tの表面に案内する延長ノズル43を設けることにより、テープ状基材Tの成膜に寄与する原料ガスの量を増加させることができ、原料収率の向上を図ることができる。さらに、本構成では、
図2に示すように、延長ノズル43の2枚の第1遮蔽板43a,43aで挟まれた成長領域Lにおいて、テープ状基材Tに超電導層が成膜される。つまり、第1遮蔽板43a,43aで原料ガスの長手方向の拡散を抑制することにより、成長領域Lにおいて良質な超電導層が成膜することができる。
【0024】
また、成長チャンバ19の底壁19Aにおいて、サセプタ33の幅方向両側には、
図3に示すように、成長領域Lに対応する長さの排気口45aを有する排気部45が配設されている。排気部45は、排気ポンプ(図示略)を備え、未反応の原料ガスやキャリアガス等を成長チャンバ19の外部に排気する。
【0025】
次に、原料ガス噴出部41について説明する。
原料ガス噴出部41は、上述のように、各気化器17からそれぞれ導入された原料ガスを、原料ガス噴出口41aを通じてテープ状基材Tの表面に噴出する。このため、例えば、一の気化器17内で原料供給ノズル17Aに詰まり等が生じて、この気化器17からの原料ガスの供給量が変動した場合には、テープ状基材Tに形成される薄膜(例えば超電導層)の組成や結晶性、膜厚等に影響を及ぼし、長時間の安定した超電導層の成膜が困難となる。
このため、本構成では、すべての原料溶液供給部15に同一の元素を1以上含有する原料溶液が収容されているとともに、原料ガス噴出部41は、
図4に示すように、各気化器17から導入される原料ガスを混合して混合原料ガスを生成する原料ガス混合部50と、この混合原料ガスを原料ガス噴出口41aに導く原料ガス導入部55とを一体に備える。原料ガス混合部50は、各連結管18の下方であってテープ状基材Tの走行方向に沿って延在する凹部51と、この凹部51の略中央に設けられ原料ガス導入部55に連通する連通孔52と、上記凹部51の上記連結管18の下方にそれぞれに配置される邪魔板53とを備える。各連結管18を通じて気化器17から導入された原料ガスは、それぞれ邪魔板53に吹き付けられることで凹部51内に拡散して混合される。
【0026】
また、原料ガス導入部55は、上記した連通孔52から原料ガス噴出口41aに向けて拡径した傾斜面を備え、この傾斜面に沿って原料ガスが流れることにより、原料ガス噴出口41aから略均一に原料ガスを噴出させることができる。
【0027】
この構成によれば、各連結管18を通じて、原料ガス噴出部41の凹部51内には、同一の元素を1以上含有する原料ガスが導入されるとともに、これら原料ガスが邪魔板53に吹き付けられることで混合される。このため、仮に、一の気化器17内で原料供給ノズル17Aに詰まり等が生じたり、気化器17内に残留した原料残滓や再析出した未分解の原料が落下して再蒸発して当該気化器17からの原料ガスの供給量(濃度)が変動したりする場合であっても、その他の気化器17から供給された原料ガスが原料ガス混合部50によって混合され、この混合された原料ガスが原料ガス導入部55を通じて原料ガス噴出口41aに導かれるため、テープ状基材Tに噴出される混合原料ガスの供給量(濃度)の変動を抑制することができ、薄膜の組成や膜厚等への影響を抑え、長時間に亘り安定して薄膜の形成を行うことができる。
【0028】
図5は、従来の構成にかかる原料ガス噴出部141を示す側断面図である。本実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。原料ガス噴出部141は、各連結管18から導入された原料ガスが別個に原料ガス噴出口141aに導かれる構成であるため、一の気化器17内で原料供給ノズル17Aに詰まり等が生じたり、気化器17内に残留した原料残滓や再析出した未分解の原料が落下して再蒸発して当該気化器17からの原料ガスの供給量(濃度)が変動したりする場合には、その影響を大きく受けることとなる。
【0029】
図6は、超電導薄膜を形成する成膜時間(t)と、製造された超電導線材の臨界電流(Ic)の最小値/最大値との関係を、本実施形態と従来技術とのそれぞれに関して表したグラフである。
この
図6に示すように、成膜時間が短い(1時間以内)では、本実施形態でも従来例(従来技術)でも臨界電流(Ic)の最小値/最大値は、10%以下となっているため、超電導特性のばらつきが小さく、安定した品質の超電導線材を製造することができる。
しかし、成膜時間が長く(15〜20時間)となると、従来例の構成では、臨界電流(Ic)の最小値/最大値の値が60〜70%となり、超電導特性に大きなばらつきを生じ、安定した品質の超電導線材を製造することが困難となっていることがわかる。
これに対して、本実施形態では、成膜時間が長くなった場合であっても、臨界電流(Ic)の最小値/最大値の値が15%以下と、成膜時間が短いときとの変動を小さく抑えることができ、超電導特性のばらつきが小さく、安定した品質の超電導線材を製造することができる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、複数の気化器17にそれぞれ同一の元素を1以上含有した原料溶液を導入し、これら気化器17において原料溶液を気化させて原料ガスを生成し、生成された原料ガスを混合して混合原料ガスを生成し、この混合原料ガスをテープ状基材Tに噴出するため、テープ状基材Tに噴出される混合原料ガスの供給量(濃度)の変動を抑制することができ、薄膜の組成や膜厚等への影響を抑え、長時間に亘り安定して薄膜の形成を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、同一の元素は、RE(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLaから選択される1以上の希土類元素)、Ba、Cu、W、Sn、Hf、Zr、Nb、Ta、Ti、及び、Irから選択される1以上の元素であって、混合原料ガスが、少なくともRE、Ba、Cuを含有する構成としているため、簡単な構成でテープ状基材の表面に超電導薄膜を形成することができる。なお、混合原料ガスのうち、W、Sn、Hf、Zr、Nb、Ta、Ti、及び、Irは、磁場中において高い超電導特性を実現するピンニングセンターとして導入されるものである。
【0032】
また、本実施形態によれば、すべての気化器17には、同一の元素として、それぞれ少なくともRE、Ba、Cuを含有する原料溶液が導入されるため、各気化器17で気化された原料ガスがほぼ同一の組成となるため、仮に一の気化器17からの原料ガスの供給量(濃度)が変動した場合であっても、テープ状基材Tに噴出される混合原料ガスの供給量(濃度)の変動を抑制することができ、薄膜の組成や膜厚等への影響を抑え、長時間に亘り安定して薄膜の形成を行うことができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、原料溶液を気化させる気化器17と、気化器17で気化された原料ガスをテープ状基材Tに向けて噴出する原料ガス噴出部41とを備えたCVD装置10であって、気化器17を複数有し、少なくとも2つの気化器17には同一の元素を1以上含有する原料溶液が導入されており、複数の気化器17から噴出される原料ガスを混合する原料ガス混合部50と、原料ガス混合部50で混合された原料ガスを原料ガス噴出部41の原料ガス噴出口41aに導く原料ガス導入部55とを備えるため、仮に、一の気化器17内で原料供給ノズル17Aに詰まり等が生じたり、気化器17内に残留した原料残滓や再析出した未分解の原料が落下して再蒸発して当該気化器17からの原料ガスの供給量(濃度)が変動したりする場合であっても、その他の気化器17から供給された原料ガスが原料ガス混合部50によって混合され、この混合された原料ガスが原料ガス導入ノズル55を通じて原料ガス噴出口41aに導かれるため、テープ状基材Tに噴出される混合原料ガスの供給量(濃度)の変動を抑制することができ、薄膜の組成や膜厚等への影響を抑え、長時間に亘り安定して薄膜の形成を行うことができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、原料ガス噴出部41は、原料ガス混合部50、原料ガス導入部55、及び、原料ガス噴出口41aを一体に備えるため、原料ガス噴出部41全体を交換することにより、
図5に示すような、従前の構成においても簡単にテープ状基材Tに噴出される混合原料ガスの供給量(濃度)の変動を抑制することができ、薄膜の組成や膜厚等への影響を抑え、長時間に亘り安定して薄膜の形成を行うことができる。
【0035】
以上、本発明を一実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、原料ガス噴出部41は、原料ガス混合部50、原料ガス導入部55、及び、原料ガス噴出口41aを一体に備える構成について説明したが、
図7に示すように、各連結管18を1つにまとめて接続する集合管150を備え、この集合管150と原料ガス噴出部241とを接続管151を介して接続しても良い。この接続管151は、原料ガス噴出部241の略中央部に接続され、上記した連結管18からずらした位置に設けられている。
【0036】
これにより、各気化器17で気化された原料ガスは、集合管150内で混合されて混合原料ガスが生成され、この混合原料ガスが接続管151を通じて原料ガス噴出部241に導入される。このため、この実施形態では、集合管150は原料ガス混合部として機能する。
また、原料ガス噴出部241は、横長の直方体形状をなしており、その下面には、多数の細孔(例えばφ1.5mm)が形成された原料ガス噴出口241aが配設されている。また、原料ガス噴出部241は、集合管150にて混合された混合原料ガスを原料ガス噴出口241aに導く原料ガス導入部155と、原料ガス噴出部241の略中央に設けられて原料ガス導入部155及び接続管151を連通する連通孔152とを備える。
【0037】
原料ガス導入部155は、連通孔152から原料ガス噴出口241aに向けて拡径した傾斜面を備え、この傾斜面に沿って原料ガスが流れることにより、原料ガス噴出口241aから略均一に原料ガスを噴出させることができる。
【0038】
この別の実施形態によれば、各気化器17から延びる連結管18を1つにまとめて接続する集合管150を備え、この集合管150と原料ガス噴出部241とを接続管151を介して接続する構成としているため、原料ガス噴出部241の構成を簡素化することができ、例えば、新たにCVD装置を設計する場合等には好適である。