(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた配線用の微細なトレンチやビア等の内部に金属(配線材料)を埋めるための手法として、銅めっき法等の金属めっき法が採用されている。また、配線が形成された半導体チップの表面の所定箇所(電極)に金、銅、はんだ、或いはニッケル、更にはこれらを多層に積層した突起状接続電極(バンプ)を形成する手法としても、金属めっき法が多く用いられるようになってきている。
【0003】
ここに、基板の表面に設けた配線用の微細なトレンチやビア等の内部に、金属めっき法によって金属(めっき膜)を埋込む時には、基板の表面に沿って流れるめっき液の流れの強さが重要となる。つまり、基板の表面に沿って流れるめっき液の流れの強弱によって、めっき液に含まれる添加剤の基板表面(被めっき面)への吸着状態が変わったり、添加剤によるめっき膜成長の抑制効果や促進効果が変わったりする。このため、基板の表面に沿って流れるめっき液の流れが不均一であると、めっき性能の均一性に悪影響を与える。基板の表面に沿った均一なめっき液の流れ分布を得るために、めっき液を基板に平行に均一に流す技術が開発されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
また、めっき液中の添加剤や金属イオンの消耗を考慮すると、めっき液の流れが基板面内で均一であったとしても、そのめっき液の流れの上流側と下流側ではめっき性能に差が生じてしまう。この点を改善するために、めっき液の流れの向きを反転させることを繰返しながらめっきを行うことも提案されている(特許文献3〜5参照)。
【0005】
このように、基板面内におけるめっき液の流れの均一化について改善が進められているが、一方で、配線用の微細なトレンチやビア等の内部に埋込まれる金属(めっき膜)や半導体チップ表面の所定の位置に形成されるバンプ等の表面形状を均一化(平坦化)することも重要である。例えば、
図1(a)に示すように、シード層10の表面にレジスト12で包囲された開口部14を形成した基板Wを用意し、この基板Wの表面を、
図1(b)に示すように、一方向のみに流れるめっき液に接触させて、開口部14内にバンプ(めっき膜)16を電気めっきで形成する場合、バンプ(めっき膜)16は、めっき液の流れ方向に沿った下流側で上流側より速く成長する(この傾向は、使用するめっき液の特性による影響が強く、めっき液の種類によっては逆の傾向になる場合もある)。このため、形成されたバンプ(めっき膜)16の表面16aの形状は、
図1(c)に示すように、めっき液の流れ方向に沿って、一方向に大きく傾いた形状になる。
【0006】
これを防ぐために、
図1(a)に示す基板Wを用意し、この基板Wの表面を、
図2(a)に示すように、流れ方向が反転を繰返すめっき液に接触させて、開口部14内にバンプ(めっき膜)16を電気めっきで形成すると、
図2(b)に示すように、形成されたバンプ(めっき膜)16の表面16bの形状は、ある程度の改善されるものの蒲鉾形状となる。このような弊害を防止して、めっき膜表面の平坦化を図るためには、流れ方向を3方向以上に切替えられるめっき液に基板表面を接触させてめっきを行う必要がある。
【0007】
流れ方向を反転させられるめっき液、或いは流れ方向を3方向以上に切替えられるめっき液に基板表面を接触させてめっきを行う場合に、例えばめっき槽内のめっき液の流れ方向の反転(切替え)を、開閉バルブのON−OFF制御で行うと、開閉バルブの開閉タイミングの微妙なズレによって、めっき液の流れが静止してしまう場合が生じたり、逆にめっき槽内に流入するめっき液の流量(流速)が瞬間的に増大したりする場合が生じる。このように、めっき液の流れが静止したり、めっき液の流速が瞬間的に速まったりすると、めっき液の流れの強さに性能が依存するめっき液を使用してめっきを行う場合にめっき性能が劣化してしまう。この現象は、めっき槽内のめっき液の流れ方向の反転(切替え)を、開閉バルブのON/OFF制御で行う限り、現実的には回避不能である。
【0008】
ここに、
図3に示すように、共にON/OFF制御される開閉バルブを有する第1めっき液供給系Aと第2めっき液供給系Bを使用し、互いに直交する方向からめっき槽P内にめっき液を交互に供給してめっきを行う場合を考える。つまり、第1めっき液供給系Aを通してめっき槽P内にめっき液を供給する時には、第1めっき液供給系の開閉バルブをONにし、第2めっき液供給系Bの開閉バルブをOFFにする。第2めっき液供給系Bを通してめっき槽P内にめっき液を供給する時には、第2めっき液供給系Bの開閉バルブをONにし、第1めっき液供給系Aの開閉バルブをOFFにする。
【0009】
この場合、第1めっき液供給系Aから第2めっき液供給系Bに切替えるには、第1めっき液供給系Aの開閉バルブを閉じる動作と第2めっき液供給系Bの開閉バルブを開く動作を同時に行う必要がある。しかしながら、第1めっき液供給系Aの開閉バルブを閉じるタイミングが遅れたり、第2めっき液供給系供給Bの開閉バルブを開くタイミングが速まったりすると、
図4(a)に示すように、めっき槽P内に流入するめっき液の液量(流速)が瞬間的に増大する。逆に、第1めっき液供給系Aの開閉バルブを閉じるタイミングが速まったり、第2めっき液供給系供給Bの開閉バルブを開くタイミングが遅れたりすると、
図4(b)に示すように、めっき槽P内に流入するめっき液の液量(流速)が瞬間的に減少するか、若しくはゼロとなる。
【0010】
出願人は、めっき槽に接続された複数の入口配管及び出口配管を備え、任意の入口配管及び出口配管を切替え使用することで、めっき槽内の処理液の流れ方向を自在に切替えることができるようにしためっき装置及びめっき方法を提案している(特許文献6,7参照)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を
図5乃至
図15を参照して説明する。以下の各例において、同一または相当する部材には、同一符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下の例では電気めっき装置に適用した例を示しているが、本発明の基板処理装置は、電気めっき装置の他に、無電解めっき装置、めっき前処理装置、電解エッチング装置等の液体(処理液)を使用した装置に全般に適用される。
【0022】
図5は、半導体ウェーハ等の基板の表面に電気めっきを行う電気めっき装置に適用した本発明の実施形態の基板処理装置の構成例を示す概略平断面図で、
図6は、
図5に示す電気めっき装置(基板処理装置)のめっき槽及び第1めっき液供給系を模式的に示す概略側断面図である。
【0023】
図5及び
図6に示すように、電気めっき装置は、内部にめっき液(処理液)を保持するめっき槽(処理槽)20と、めっき槽20に向けて移動自在で、基板Wを鉛直方向に吸着保持する基板ホルダ22を備えている。めっき槽20の内部には、めっき槽20の内部を、基板側の流路形成空間23aとアノード側のアノード収容空間23bに区画する平板状の隔膜24が設置されている。基板ホルダ22は、略平板状のプレートで構成され、一方の面に図示しない吸着孔を有しており、この吸着孔を真空引きすることで、その表面に載置した基板Wを吸着保持する。そして、めっき槽20の開口端部に、基板ホルダ22で吸着保持した基板Wを密着させてめっき槽20の開口端部を閉じることで、基板Wと隔膜24との間に密閉された流路形成空間23aが形成される。
【0024】
めっき槽20の周壁100には、めっき槽20内の流路形成空間23aにめっき液を供給する2つの入口配管26a,26bと、めっき槽20の流路形成空間23aからめっき液を排出する2つの出口配管28a,28bが接続されている。入口配管26a,26bは、ポンプ30の吐出口から延びる吐出管32に接続され、出口配管28a,28bは、ポンプ30の吸込口から延びる吸込管34に接続されている。
【0025】
一方の入口配管26aと出口配管28aは、めっき槽20の直径方向に沿って互いに対向するように配置され、これにより、めっき槽20の流路形成空間23aの内部に、矢印F
1に沿っためっき液の流れを形成する第1めっき液供給系40が構成されている。他方の入口配管26bと出口配管28bは、めっき槽20の直径方向に沿って互いに対向するように配置され、これにより、めっき槽20の流路形成空間23aの内部に、前記矢印F
1と互いに直交する矢印F
2に沿っためっき液の流れを形成する第2めっき液供給系42が構成されている。この第1めっき液供給系40と第2めっき液供給系42は、択一的に選択して使用される。
【0026】
各入口配管26a,26bには、ON−OFF制御を行うことなく、内部を流れるめっき液の流量が時間とともに変化するように該流量を制御する、この例では、流量計と流量制御バルブとを一体化したマスフローコントローラからなる流量制御装置44a,44bが設けられている。各出口配管28a,28bにも、ON−OFF制御を行うことなく、内部を流れるめっき液の流量が時間とともに変化するように該流量を制御する、この例では、流量計と流量制御バルブとを一体化したマスフローコントローラからなる流量制御装置46a,46bが設けられている。この各流量制御装置(マスフローコントローラ)44a、44b、46a,46bは、制御部48からの信号で制御される。
【0027】
めっき槽20は、基板ホルダ22と略同一外形寸法の筒状の周壁100と、隔膜24との間でアノード収容空間23bを形成する底板102とを有しており、アノード収容空間23b内にアノード104が設置されている。アノード104は、その中央部分で支持軸106によって底板102に固定され、支持軸106を通して給電される。
【0028】
アノード104として、めっきする金属と同じ元素(銅)からなる溶解アノードを用いても良いが、溶解アノードは、使用に伴って
減耗するため、定期的な交換が必要である。この電気めっき装置では、めっき液を隔膜24で基板W側とアノード104側に分離しており、アノード104で発生する気泡が基板Wに付着する恐れがないので、アノード104として、メンテナンスが容易な不溶解アノードを使用している。
【0029】
底板102の周囲の対向する2個所(上下の位置)には、めっき槽20のアノード収容空間23b内にめっき液を供給するめっき液供給管108とアノード収容空間23b内のめっき液を排出するめっき液排出管110が取り付けられている。ポンプの駆動に伴って、図示しないめっき液供給タンクから、めっき液供給管108を通して、アノード収容空間23b内にめっき液が供給され、アノード収容空間23bから排出されるめっき液は、めっき液排出管110を通して、図示しないめっき液供給タンクに戻される。これによってめっき液供給機構が構成されている。なお、めっき液供給管108及びめっき液排出管110の数は、複数であっても良い。
【0030】
めっき槽20の周壁100の基板W側の端面には、基板Wの外周部に当接することで該外周部をシールするリング状のシール部112が設けられている。またシール部112の外側(めっき液に触れない側)を囲む位置には、基板Wの上面外周部に当接することで基板Wに給電を行う複数の接点114が取り付けられている。基板ホルダ22で保持した基板Wの外周部を各接点114に当接させた状態で、各接点114とアノード104を電源116に接続して基板Wとアノード104との間に電流を供給することで、基板Wの外周からその表面全体に給電が行なわれてめっきが行われる。電源116とアノード104を繋ぐ導
線118には、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をオープン回路となすスイッチ120が介装されている。
【0031】
前記隔膜24は、めっき液の流れを規制する役割を果たすが、アノード104と基板Wとの間に電流を流すため、イオン伝導を妨げない材料または構造である必要である。隔膜24自体に導電性があると、隔膜24が基板Wに対してアノード104として働くため、電流分布を乱すばかりでなく、隔膜24が溶解したりガスを発生したりする恐れがある。そのため隔膜24は、絶縁体である必要がある。つまり隔膜24の材料は、絶縁体であり、且つイオンによる電流を通す材料であればどのような材料でも良い。
【0032】
具体的に隔膜24の材質としては、多孔質プラスチック、多孔質セラミック、多孔質ガラス、イオン交換樹脂、表裏に貫通孔を設けたガラス、プラスチック、セラミック等の緻密絶縁体板等が挙げられる。多孔体材料以外に、めっき液を僅かに通す貫通孔を設けた絶縁材料(細孔を多数開けたプラスチック板、ガラス板など)を用いても良い。ただし、隔膜24に機械的剛性がないとめっき液を流したときに変形してしまうため、流量に対して十分な強度が必要である。特に、多孔質プラスチックを使用する場合には、剛性のある材料を選択するか、塩ビ製のパンチングボードなどを支持体として用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えば旭化成ケミカルズ(株)製のポリオレフィン系樹脂サンファインAQがある。またポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂などでもよい。セラミック材料としては、SiCセラミック、アルミナセラミック、シリカセラミック等が挙げられる。ガラスとしてはコーニング社製バイコールガラス等が挙げられる。
【0033】
次に、電気めっき装置の動作を説明する。先ず、基板Wを基板ホルダ22で鉛直方向に吸着保持した後、基板Wを保持した基板ホルダ22をめっき槽20に向けて移動させて、基板Wの外周部にめっき槽20に設けたシール部112及び接点114を当接させる。
【0034】
この状態で、めっき液供給管108を通して、めっき槽20のアノード収容空間23b内にめっき液を供給し、アノード収容空間23b内をめっき液で満たした後、アノード収容空間23b内のめっき液をめっき液排出管110を通して排出し循環させる。同時に、ポンプ30を駆動し、例えば先ず第1めっき液供給系40を択一的に使用して、入口配管26aからめっき槽20の流路形成空間23a内にめっき液を供給し、流路形成空間23a内を満たした後、矢印F
1に沿って流路形成空間23a内を一方向に流れるめっき液を出口配管28aから外部に排出し循環させる。
【0035】
ここに、ホットエントリ方式を採用する場合には、めっき液の供給を開始する前に、アノード104とカソードとなる基板Wとの間に電圧を印加しておく。これにより、めっき液の供給に伴って、各接点114を通して給電される基板とアノード104との間にめっき電流が流れて、基板Wの表面に電気めっきが行われる。一方、コールドエントリ方式を採用する場合には、めっき液の供給を開始した後、所定時間(待ち時間)経過後に、アノード104とカソードとなる基板Wとの間に電圧を印加する。これにより、アノード104とカソードとなる基板Wとの間に電圧を印加すると同時に、基板Wの表面に電気めっきが行われる。
【0036】
次に、所定時間経過後、第2めっき液供給系42を択一的に使用し、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1と直交する矢印F
2に沿って流れるようにめっき液の流れの向きを切替えて電気めっきを継続する。そして、この流路形成空間23a内のめっき液の流れ方向の切替えを所定回数、例えば2回繰返して電気めっきを終了する。
【0037】
電気めっき中に各入口配管26a,26b及び各出口配管28a,28bの内部を流れるめっき液の流量について、
図7を参照して説明する。初期状態において、入口配管26a,26b及び各出口配管28a,28bは、内部をめっき液が流れないように閉じられている。
【0038】
先ず、ポンプ30を駆動し、先ず第1めっき液供給系40を択一的に使用して、入口配管26aからの流路形成空間23a内へのめっき液の供給、及び流路形成空間23a内のめっき液の出口配管28aからの排出を開始する。この時、第1めっき液供給系40を構成する入口配管26a及び出口配管28aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管26a及び出口配管28aに設けた流量制御装置44a,46aを制御部48からの信号で制御する(時間:t
0〜t
1)。
【0039】
そして、流路形成空間23a内をめっき液が基板Wの表面に沿って一方向(矢印F
1方向)に安定して流れるようになった時点(時間:t
2)で、安定した電気めっきが開始される。
【0040】
所定時間経過した後、第1めっき液供給系40を構成する入口配管26a及び出口配管28aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロとなるように、入口配管26a及び出口配管28aに設けた流量制御装置44a,46aを制御部48からの信号で制御し、同時に、第2めっき液供給系42を構成する入口配管26b及び出口配管28bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管26b及び出口配管28bに設けた流量制御装置44b,46bを制御部48からの信号で制御する(時間:t
3〜t
4)。これにより、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1と直交する矢印F
2に沿って一方向に流れるようにめっき液の流れの向きを切替える。この切替えに要する時間t
3〜t
4は、一般的には1〜10秒程度、例えば2秒である。このことは、以下同様である。
【0041】
そして、流路形成空間23a内をめっき液が矢印F
2に沿って一方向に流れる状態を所定時間保持する(時間:t
4〜t
5)。この流路形成空間23a内をめっき液が一方向に流れる時間t
4〜t
5は、一般的には3〜60秒程度、例えば30秒である。このことは、以下同様である。
【0042】
この例では、入口流路26a,26bの内部を通過して、流路形成空間23a内に供給されるめっき液の全流量、及び出口流路28a,28bの内部を通過して、流路形成空間23aから排出されるめっき液の全流量が、電気めっき中に常に一定となるように、流量制御装置44a,44b、46a,46bを制御するようにしている。
【0043】
次に、第1めっき液供給系40を構成する入口配管26a及び出口配管28aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管26a及び出口配管28aに設けた流量制御装置44a,46aを制御部48からの信号で制御し、同時に、第2めっき液供給系42を構成する入口配管26b及び出口配管28bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロになるように、入口配管26b及び出口配管28bに設けた流量制御装置44b,46bを制御部48からの信号で制御する(時間:t
5〜t
6)。これにより、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1に沿って一方向に流れるようにめっき液の流れの向きを切替え、この状態を所定時間保持する(時間:t
6〜t
7)。このように、流路形成空間23a内を基板Wの表面に沿って流れるめっき液の流れの向きの矢印F
1から矢印F
2への切替えを所定回数繰返す。
【0044】
そして、電気めっきを終了する時点(時間:t
8)で、電気めっきを停止し、同時に、この例では、第
2めっき液供給系
42を構成する入口配管26
b及び出口配管28
bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロになるように、入口配管26
b及び出口配管28
bに設けた流量制御装置44
b,46
bを制御部48からの信号で制御する。これにより、流路形成空間23a内へのめっき液の供給及び流路形成空間23a内のめっき液の排出を停止する(時間:t
9)。
【0045】
この例では、流路形成空間23a内のめっき液の2方向に沿った流れの切替えを2回繰返しているが、この切替えの繰返し回数は任意に設定できる。また、各めっき液の流れ方向の切替えに要する時間や、めっき液が流路形成空間23a内を基板Wの表面に沿って一方向に沿って流れる時間等も任意に設定できる。
【0046】
この例によれば、流路形成空間23aの基板Wの表面に沿っためっき液の流れ方向を切替える時に使用される入口配管26a,26b及び出口配管28a,28bの内部を流れるめっき液の流量を時間ととも変化するように流量制御装置44a,44b、46a,46bで制御することで、めっき液の流量(流速)を瞬間的に増減させることなく、流路形成空間23a内のめっき液の流れ方向を切替えることができる。特に、入口配管26a,26b及び出口配管28a,28bを切替えて使用する時を含め、流路形成空間23a内に常に一定量のめっき液が供給されるように、流量制御装置44a,44b、46a,46bを制御することで、常に一定量のめっき液を流路形成空間23a内に供給しながら、流路形成空間23a内のめっき液の流れ方向を切替えることができる。
【0047】
図8は、電気めっき装置に適用した本発明の他の実施形態の基板処理装置の構成例を示す概略平面図である。この例の電気めっき装置(基板処理装置)の
図5及び
図6に示す例と異なる点は、以下の通りである。
【0048】
すなわち、出口配管28a,28bに近接した位置に他の入口配管50a,50bを、入口配管26a,26bに近接した位置に他の出口配管52a,52bをそれぞれ設けている。入口配管50a,50bは、ポンプ30の吐出口から延びる吐出管32に接続され、出口配管52a,52bは、ポンプ30の吸込口から延びる吸込管34に接続されている。
【0049】
これにより、入口配管50aと出口配管52aで、前述の第1めっき液供給系40によって流路形成空間23aの内部に形成される矢印F
1に沿っためっき液の流れと反対方向の矢印F
3に沿っためっき液の流れを流路形成空間23aの内部に形成する第3めっき液供給系54が構成されている。また、入口配管50bと出口配管52bで、前述の第2めっき液供給系42によってめっき槽20の流路形成空間23aの内部に形成される矢印F
2に沿っためっき液の流れと反対方向の矢印F
4に沿っためっき液の流れを流路形成空間23aの内部に形成する第4めっき液供給系56が構成されている。これらの第1めっき液供給系40、第2めっき液供給系42、第3めっき液供給系54及び第4めっき液供給系56は、択一的に選択して使用される。これにより、めっき槽20の流路形成空間23a内を基板Wの表面に沿って流れるめっき液4の流れを、矢印F
1,F
2,F
3,F
4の4方向に切替えることができる。
【0050】
前述と同様に、各入口配管50a,50bには、例えばマスフローコントローラからなる流量制御装置58a,58bが設けられ、各出口配管52a,52bにも、例えばマスフローコントローラからなる流量制御装置60a,60bが設けられている。これらの流量制御装置(マスフローコントローラ)58a,58b、60a,60bも制御部48からの信号により制御される。
【0051】
この例の電気めっき装置では、前述のように、基板ホルダ22で吸着保持した基板Wの外周部をめっき槽20に設けたシール部112及び接点114に当接させた後、アノード収容空間23b内へのめっき液の供給を開始する。同時に、ポンプ30を駆動し、例えば先ず第1めっき液供給系40を択一的に使用し、入口配管26aからめっき槽20の流路形成空間23a内にめっき液を供給し、流路形成空間23a内を満たした後、矢印F
1に沿って流路形成空間23a内を一方向に沿って流れるめっき液を出口配管28aから外部に排出し循環させる。これにより、前述のホットエントリ方式またはコールドエントリ方式を採用した電気めっきを行う。
【0052】
次に、所定時間経過後、第2めっき液供給系42を択一的に使用し、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1と直交する矢印F
2に沿って流れるようにめっき液の流れの向きを切替えて電気めっきを継続する。そして、所定時間経過後、第3めっき液供給系54を択一的に使用し、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1と反対の矢印F
3に沿って流れるようにめっき液の流れの向きを切替えて電気めっきを継続する。更に、所定時間経過後、第4めっき液供給系56を択一的に使用し、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
2と反対の矢印F
4に沿って流れるようにめっき液の流れの向きを切替えて電気めっきを継続する。そして、上記めっき液の流れの切替えを1サークルとして、このサークルを1若しくは複数回繰返す。
【0053】
電気めっき中に各入口配管26a,26b、50a,50b及び各出口配管28a,28b、52a,52bの内部を流れるめっき液の流量について、
図9を参照して説明する。初期状態において、入口配管26a,26b、50a,50b及び各出口配管28a,28b、52a,52bは、内部をめっき液が流れないように閉じられている。
【0054】
先ず、ポンプ30を駆動し、例えば第1めっき液供給系40を択一的に使用して、入口配管26aから流路形成空間23a内へのめっき液の供給、及び流路形成空間23a内のめっき液の出口配管28aからの排出を開始する。この時、第1めっき液供給系40を構成する入口配管26a及び出口配管28aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管26a及び出口配管28aに設けた流量制御装置44a,46aを制御部48からの信号で制御する(時間:t
10〜t
11)。
【0055】
そして、流路形成空間23a内をめっき液が基板Wの表面に沿って一方向(矢印F
1方向)に安定して流れるようになった時点(時間:t
12)で、安定した電気めっきが開始される。
【0056】
所定時間経過した後、第1めっき液供給系40を構成する入口配管26a及び出口配管28aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロとなるように、入口配管26a及び出口配管28aに設けた流量制御装置44a,46aを制御部48からの信号で制御し、同時に、第2めっき液供給系42を構成する入口配管26b及び出口配管28bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管26b及び出口配管28bに設けた流量制御装置44b,46bを制御部48からの信号で制御する(時間:t
13〜t
14)。
【0057】
これにより、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1と直交する矢印F
2に沿って一方向に流れるようにめっき液の流れの向きを切替え、この状態を所定時間保持する(時間:t
14〜t
15)。
【0058】
次に、第3めっき液供給系54を構成する入口配管50a及び出口配管52aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管50a及び出口配管52aに設けた流量制御装置56a,60aを制御部48からの信号で制御し、同時に、第2めっき液供給系42を構成する入口配管26b及び出口配管28bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロになるように、入口配管26b及び出口配管28bに設けた流量制御装置44b,46bを制御部48からの信号で制御する(時間:t
15〜t
16)。
【0059】
これにより、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
1と反対の矢印F
3に沿って一方向に流れるようにめっき液の流れの向きを切替え、この状態を所定時間保持する(時間:t
16〜t
17)。
【0060】
次に、第4めっき液供給系56を構成する入口配管50b及び出口配管52bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に増加して一定となるように、入口配管50b及び出口配管52bに設けた流量制御装置58b,60bを制御部48からの信号で制御し、同時に、第3めっき液供給系54を構成する入口配管50a及び出口配管52aの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロになるように、入口配管50a及び出口配管52aに設けた流量制御装置58a,60aを制御部48からの信号で制御する(時間:t
17〜t
18)。
【0061】
これにより、流路形成空間23a内をめっき液が前記矢印F
2と反対の矢印F
4に沿って一方向に流れるようにめっき液の流れの向きを切替え、この状態を所定時間保持する(時間:t
18〜t
19)。
【0062】
そして、電気めっきを終了する時点(時間:t
19)で、電気めっきを停止し、同時に第4めっき液供給系56を構成する入口配管50b及び出口配管52bの内部を流れるめっき液の流量が徐々に減少してゼロになるように、入口配管50b及び出口配管52bに設けた流量制御装置58b,60bを制御部48からの信号で制御する。これにより、流路形成空間23a内へのめっき液の供給及び流路形成空間23a内からのめっき液の排出を停止する(時間:t
20)。
【0063】
この例では、流路形成空間23a内のめっき液の4方向に沿った流れの切替えを1回のみ行っているが、この切替えの繰返し回数は任意に設定できる。また、各めっき液の流れ方向の切替えに要する時間や、めっき液が流路形成空間23a内を基板Wの表面に沿って一方向に流れる時間等も任意に設定できることは前述と同様である。
【0064】
この例によれば、流路形成空間23a内のめっき液の流れ方向を切替える時に使用される入口配管26a,26b、50a,50b及び出口配管28a,28b、52a,52bの内部を流れるめっき液の流量を時間ととも変化するように流量制御装置44a,44b、46a,46b、58a,58b、60a,60bで制御することで、めっき液の流量(流速)を瞬間的に増減させることなく、流路形成空間23a内の基板Wの表面に沿っためっき液の流れ方向を4方向に切替えることができる。特に、入口配管26a,26b、50a,50b及び出口配管28a,28b、52a,52bを切替えて使用する時を含め、流路形成空間23a内に常に一定量のめっき液が供給されるように、流量制御装置44a,44b、46a,46b、58a,58b、60a,60bを制御することで、常に一定量のめっき液を流路形成空間23a内に供給しながら、流路形成空間23a内の基板Wの表面に沿っためっき液の流れ方向を切替えることができる。
【0065】
図10は、電気めっき装置に適用した本発明の他の実施形態の基板処理装置の構成例を示す概略平面図である。この例の
図8に示す例と異なる点は、互いに近接した位置に配置される入口配管と出口配管を共通化して構造の簡素化を図った点にある。つまり、入口配管26aと出口配管52aを共通配管62aで、入口配管26bと出口配管52bを共通配管62bで、入口配管50aと出口配管28aを共通配管62cで、入口配管50bと出口配管28bを共通配管62dでそれぞれ構成している。
【0066】
図8に示す電気めっき装置を使用し、めっき液の基板の表面に沿った流れ方向の切替え時を含め、流路形成空間23a内に流入するめっき液の流量を常に10L/minの一定に設定して、
図11に示すように、シード層10の表面にレジスト12で包囲された開口部14を形成した基板(直径300mmのウェ−ハ)の表面に電気めっきを行った結果、表面16cが平坦で異常析出のないバンプ(めっき膜)16が形成されることが確かめられている。この時のめっき時間は、例えば数10分〜数時間程度である。
【0067】
また、同様に、
図12に示すように、絶縁体70の内部に形成され、表面をシード層72で覆われたビア74を有する基板(直径300mmのウェ−ハ)の表面に電気めっきを行って、ビア74の内部に配線金属(めっき膜)76を埋め込んだ時、内部にボイドのない配線金属(めっき膜)76が得られることが確かめられている。この時のめっき時間は、例えば1〜2分程度である。
【0068】
めっき液の流れ方向切替え時を含め、流路形成空間23a内に流入するめっき液の流量は、一般的には0〜20L/minで、4〜12L/minであることが好ましく、8〜12L/minであることが更に好ましい。
【0069】
次に、前述のホットエントリ方式またはコールドエントリ方式を採用した電気めっきについて、詳細に説明する。
【0070】
図13(a)に示すように、アノード200とカソード(基板)202との間に、めっき液(電解液)204を通して、電源206から電圧を印加する回路にスイッチ208を設け、このスイッチ208を閉じた回路をクローズ回路と呼ぶ。クローズ回路の場合、アノード200とカソード(基板)202との間にめっき液(電解液)204が存在すると、電源206をOFFにしても、電極電位により自然電流が流れて、基板のシード層やめっき膜等がエッチングされる(クローズ回路でも、アノード200とカソード202の間にめっき液204がなければエッチングは起こらない)。
【0071】
一方、
図13(b)に示すように、アノード200とカソード(基板)202との間に、めっき液(電解液)204を通して、電源206から電圧を印加する回路にスイッチ208を設け、このスイッチ208を開いた回路をオープン回路と呼ぶ。オープン回路の場合、アノード200とカソード202の間にめっき液204があっても、自然電流は流れないので、自然電流が流れることによるエッチングは起こらない。
【0072】
ホットエントリ方式は、アノードとカソード(基板)の間にめっき液を流す前に電圧を印加しておく方式であり、主に、半導体ウェーハ等の基板の表面に設けた配線用の微細なトレンチやビア等の内部に金属(配線材料)を埋める微細配線めっきに用いられる。微細配線めっきでコールドエントリ方式を用いないのは、(a)オープン回路にしても化学的なエッチングは生じるため、極めて薄い銅シード(ビア側壁で<5nm)がエッチングで溶解してしまう、(b)ボトムアップのメカニズムが、添加剤の吸着速度がビア底部とビア入口で異なることを利用しているため、コールドエントリを採用すると時間の経過により添加剤の吸着量が均一化してしまい、ボトムアップしない、等の理由による。
【0073】
ホットエントリ方式を採用した電気めっきは、通常定電圧制御で行われる。つまり、目的の電流値Iでめっきを行うとして、この時の電圧Vをアノードとカソード(基板)の間予め印加しておく。これにより、アノードとカソード(基板)の間にめっき液が徐々に満たされると、電流値が徐々に増大し、基板全面にめっき液が行き渡る電流値がIになる。
【0074】
コールドエントリ方式は、アノードとカソードの間にめっき液を流してから電圧を印加する方式である。アノードとカソード(基板)の間にめっき液が流れた状態でクローズ回路にしておくと、前述のように、自然電流が流れてエッチングが進行してしまう。このため、通電開始まではオープン回路にしておく。このコールドエントリ方式は、バンプめっき、再配線めっき、TSV(Through Silicon Via)めっき等に主に採用される。このようなめっきは、微細配線めっきより溝幅が大きく、シード層も厚いばかりでなく、ボトムアップのメカニズムも微細配線めっきと異なり、コールドエントリ方式の方が向いているからである。
【0075】
次に、
図14を参照して、
図5及び
図6に示す電気めっき装置でホットエントリ方式を採用した電気めっきを行うときの動作について説明する。
【0076】
めっきを開始する前は、スイッチ120を開き、これによって、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をオープン回路としておく。そして、基板ホルダ22で基板Wを保持し、基板ホルダ22をめっき槽20に向けて移動させることで、基板ホルダ22で保持した基板Wでめっき槽20の開口端部を塞ぐ(めっき槽閉)。
【0077】
次に、電源116をONにするとともに、シーケンサを介して、めっき電源116のONの信号と同時、若しくは多少の時間差をもってスイッチ120を閉じ、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をクローズ回路となす。この状態で、前述のように、めっき槽20の流路形成空間23a及びアノード収容空間23bにめっき液を供給して基板Wの表面の電気めっきを行う。
【0078】
そして、めっき終了時に、めっき槽20内のめっき液を排出し、電源116をOFFにするとともに、シーケンサを介して、めっき電源116のOFFの信号と同時、若しくは多少の時間差をもってスイッチ120を開き、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をオープン回路となす。このように、通電OFF後にオープン回路にすることにより、めっき槽内にめっき液残りがあった場合でも、めっき膜のエッチングを避けることができる。
【0079】
次に、めっき槽20の内部を、例えば3回水洗した後、基板ホルダ20をめっき槽20から離れる方向に移動させて、めっき槽20の開口端部を塞いでいた基板Wをめっき槽20から引き離す(めっき槽開)。しかる後、基板Wを基板ホルダ22から取り出す。
【0080】
図15を参照して、
図5及び
図6に示す電気めっき装置でコールドエントリ方式を採用した電気めっきを行うときの動作について説明する。
【0081】
めっきを開始する前は、スイッチ120を開き、これによって、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をオープン回路としておく。そして、基板ホルダ22で基板Wを保持し、基板ホルダ22をめっき槽20に向けて移動させることで、基板ホルダ22で保持した基板Wでめっき槽20の開口端部を塞ぐ(めっき槽閉)。
【0082】
次に、前述のように、めっき槽20の流路形成空間23a及びアノード収容空間23bにめっき液を供給する。この時、めっき槽の下流に設置したセンサでめっき液の通過を検知する。このめっき液の通過を検知するセンサとして、屈折率や透過率の違いを利用した光学式センサが好ましく用いられる。
【0083】
めっき槽の下流に設置したセンサでめっき液の通過を検知した後、待ち時間をカウントする。待ち時間とは、例えばビアなどの溝の底まで銅イオンを拡散させるのに要する時間であり、例えばビア深さが50umであれば30sec、ビア深さ120umであれば1minというように、ビア深さが深くなるほど、待ち時間を長く取る。待ち時間は、例えば0〜5min、好ましくは20sec〜3min、より好ましくは30sec〜1minである。
【0084】
待ち時間経過後、電源116をONにするとともに、シーケンサを介して、めっき電源116のONの信号と同時、若しくは多少の時間差をもってスイッチ120を閉じ、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をクローズ回路となす。これによって、アノード104と基板(カソード)Wとの間に電流を流して、基板Wの表面の電気めっきを開始する。
【0085】
そして、めっき終了時に、めっき槽20内のめっき液を排出し、電源116をOFFにするとともに、シーケンサを介して、めっき電源116のOFFの信号と同時、若しくは多少の時間差をもってスイッチ120を開き、電源116、アノード104及び基板Wを繋ぐ回路をオープン回路となす。
【0086】
次に、めっき槽20の内部を、例えば3回水洗した後、基板ホルダ20をめっき槽20から離れる方向に移動させて、めっき槽20の開口端部を塞いでいた基板Wをめっき槽20から引き離す(めっき槽開)。しかる後、基板Wを基板ホルダ22から取り出す。
【0087】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。