特許第5841738号(P5841738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5841738
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20151217BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   H01L21/304 622J
   B24B1/00 A
   H01L21/304 631
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-83532(P2011-83532)
(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公開番号】特開2012-222026(P2012-222026A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】山口 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将昭
(72)【発明者】
【氏名】國重 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小山 真史
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 優介
(72)【発明者】
【氏名】田中 和馬
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131942(JP,A)
【文献】 特開2010−050324(JP,A)
【文献】 特開平10−172925(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0219351(US,A1)
【文献】 特開2010−062269(JP,A)
【文献】 特開2004−349649(JP,A)
【文献】 特開平11−067701(JP,A)
【文献】 特開2005−317634(JP,A)
【文献】 特開平11−240008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304、21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板の表面に発光層が積層され少なくとも表面側の外周に面取り部が形成されたウェーハの裏面を研削するウェーハの研削方法であって、
ウェーハを支持する硬質基板の表面にウェーハの表面を対面させ、少なくとも該硬質基板と該ウェーハの面取り部との間の隙間に樹脂を充填する樹脂充填工程と、
該樹脂が固化した後、回転可能なチャックテーブルに該硬質基板側を保持して該ウェーハの裏面を露出させ、環状に研削砥石を備えた研削ホイールを回転させ該ウェーハの回転中心を該研削砥石が通るように該裏面に接触させて該裏面を研削する裏面研削工程と
から少なくとも構成され
該樹脂には砥粒が混入しており、該裏面研削工程において該研削砥石の目詰まりを防止するウェーハの研削方法。
【請求項2】
前記裏面研削工程において、前記面取り部に至るまでウェーハの裏面を研削する
請求項1に記載のウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア基板の表面に発光層が積層され少なくとも表面側の外周に面取り部が形成されたウェーハの裏面を研削する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板の表面にn型半導体層、p型半導体層がエピタキシャル成長により積層され、分割予定ラインによって区画された領域に複数の発光デバイスが形成されて構成されるウェーハは、レーザー加工装置によって分割予定ラインにレーザー光が照射されることにより個々の光デバイスに分割され、照明機器、液晶のバックライト、各種電子機器等に利用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このように構成されるウェーハについては、光デバイスの輝度の向上を図るために、ウェーハの裏面が研削され、当初700μmほどの厚みが100μmほどになるまで薄化される。
【0004】
ウェーハの裏面研削時は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等で形成された硬質基板にアクリル系等の粘着剤を介してウェーハの表面を貼着することにより、ウェーハの表面が保護される(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2010−46744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、サファイア基板は硬度が高いうえにウェーハの表面側の外周には面取り加工が施されているため、ウェーハの裏面を研削していき、その厚みが例えば150μmほどになると、ウェーハの外周の面取り部がばたつくため、ウェーハ内部に割れが生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、サファイア基板の表面に半導体層が形成され外周が面取りされたウェーハの裏面を研削する場合において、内部に割れを生じさせないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、サファイア基板の表面に発光層が積層され少なくとも表面側の外周に面取り部が形成されたウェーハの裏面を研削するウェーハの研削方法に関するもので、ウェーハを支持する硬質基板の表面にウェーハの表面を対面させ、少なくとも硬質基板とウェーハの面取り部との間の隙間に樹脂を充填する樹脂充填工程と、樹脂が固化した後、回転可能なチャックテーブルに硬質基板側を保持してウェーハの裏面を露出させ、環状に研削砥石を備えた研削ホイールを回転させウェーハの回転中心を研削砥石が通るように裏面に接触させて裏面を研削する裏面研削工程とから少なくとも構成され、樹脂には砥粒が混入しており、裏面研削工程において研削砥石の目詰まりを防止する
【0009】
裏面研削工程においては、面取り部に至るまでウェーハの裏面を研削する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、硬質基板とウェーハの面取り部との間の隙間に樹脂を充填し、その状態でウェーハの裏面を研削するため、面取り部がばたつくことがなくなり、ウェーハ内部に割れが生じるのを防止することができる。
【0011】
また、硬質基板とウェーハの面取り部との間の隙間に充填する樹脂に砥粒を混入させることにより、研削砥石に樹脂が入り込むのを砥粒が阻止するため、研削砥石に目詰まりが生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ウェーハの一例の一部を示す正面図である。
図2】ウェーハの一例を示す斜視図である。
図3】ウェーハの表面を硬質基板に対面させた状態を示す斜視図である。
図4】ウェーハを硬質基板に貼着した状態を示す斜視図である。
図5】硬質基板とウェーハの表面の面取り部との間の隙間に樹脂を充填した状態を略示的に示す断面図である。
図6】研削装置の一例を示す斜視図である。
図7】チャックテーブルに硬質基板を保持させる状態を示す斜視図である。
図8】ウェーハの裏面を研削する状態を示す斜視図である。
図9】裏面が研削された後のウェーハの一部を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すウェーハ1は、サファイア基板10の表面に発光層11が積層されて形成されており、少なくとも表面1a側の外周には、欠けが生じるのを防ぐために面取り部12が形成されている。なお、図1の例では、裏面1bの外周にも面取り部13が形成されている。ウェーハ1は、例えば全体として700μmの厚みを有し、面取り部12、13は、例えば厚み100μm分だけ面取りされている。
【0014】
図2に示すように、ウェーハ1の表面1aには、縦横に分割予定ラインLが形成されており、分割予定ラインLによって区画された領域には光デバイスDが形成されている。以下では、このように構成される1の裏面1bを研削して所望の厚さに形成する手順を説明する。
【0015】
(1)樹脂充填工程
図3に示すように、硬質基板2の表面2aとウェーハ1の表面1aとを対面させ、図4に示すように、硬質基板2の上にウェーハ1を貼着する。硬質基板2は、ウェーハ1の裏面1bの研削時にウェーハ1を支持できる程度の硬度を有し、かつ、屈曲性があって研削後の剥離が容易である材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を使用する。
【0016】
硬質基板2の表面2aには例えば5μm厚のアクリル系粘着剤が塗布されており、この粘着剤を介して硬質基板2にウェーハ1を固定する。硬質基板2は、ウェーハ1より大径に形成されており、硬質基板2の表面2aの周縁部が露出した状態となる。
【0017】
硬質基板2にウェーハ1を固定した状態で、図5に示すように、硬質基板2とウェーハ1の表面1aの面取り部12との間の隙間に樹脂3を充填する。樹脂3としては、例えばエポキシ樹脂またはポリブタジエンを使用する。樹脂3は、後のウェーハ1からの剥離を容易とするために、熱軟化性を有することが望ましい。また、研削砥石の目詰まりを防止するため、樹脂3に対して粒径1μmのアルミナ砥粒を体積比で30〜40%含ませる。アルミナに代えてグリーンカーボランダムを使用してもよい。
【0018】
(2)裏面研削工程
樹脂3が固化した後、硬質基板2に固定されたウェーハ1の裏面1bを研削する。裏面1bの研削には、例えば図6に示す研削装置4を使用することができる。この研削装置4は、被加工物を保持して回転可能なチャックテーブル5と、チャックテーブル5に保持された被加工物を研削加工する研削手段6と、研削手段6を鉛直方向に研削送りする研削送り手段7とを備えている。
【0019】
チャックテーブル5の周囲はカバー50によって覆われており、カバー50の前後方向の側部には、伸縮自在な蛇腹51が連結されている。チャックテーブル5は、蛇腹51の伸縮を伴って、前後方向に移動する構成となっている。
【0020】
研削手段6は、チャックテーブル5に保持されたウェーハ1に作用して研削加工を行う研削ホイール60と、研削ホイール60を支持するマウント61と、マウント61を先端部において支持し鉛直方向に延びる回転軸62と、回転軸62を回転可能に支持するハウジング63と、回転軸62を回転駆動する駆動部64とを備えている。
【0021】
研削ホイール60は、基台600の下面に環状に研削砥石601が固着されて構成されている。そして、基台600がマウント61に対してネジ止めによって固定されている。研削砥石601は、粒径20〜30μmのダイヤモンド砥粒をビトリファイドボンドで固めて構成される。
【0022】
研削送り手段7は、鉛直方向の軸心を有するボールスクリュー70と、ボールスクリュー70と平行に配設された一対のガイドレール71と、ボールスクリュー70を回動させるパルスモータ72と、ボールスクリュー70に螺合するナット(図示せず)を内部に有するとともに側部がガイドレール71に摺接する昇降部73とを備えており、パルスモータ72によって駆動されてボールスクリュー71が回動するのにともない昇降部73がガイドレール71に案内されて昇降する構成となっている。昇降部73に固定された支持部74は、研削手段6を支持しているため、昇降部73の昇降により研削手段6も昇降する構成となっている。
【0023】
このように構成される研削装置4においては、図7に示すように、チャックテーブル5において、硬質基板2側を保持し、ウェーハ1の裏面1bが露出した状態とする。そして、チャックテーブル5が装置後方側に移動し、ウェーハ1が研削手段6の下方に位置付けされる。
【0024】
次に、チャックテーブル5を例えば600RPMで回転させるとともに、研削ホイール60を例えば1000RPMでチャックテーブル5と同方向に回転させながら、研削送り手段7による制御によって研削手段6を例えば1.0μm/秒の送り速度で下降させ、回転する研削砥石601をウェーハ1の裏面1bに接触させることにより、裏面1bを研削する。このとき、図8に示すように、研削砥石601がウェーハ1の回転中心を通るように制御する。研削中は、研削砥石601とウェーハ1の裏面1bとの接触部分に4リットル/分の研削水が供給される。
【0025】
図9に示すように、裏面1bから600μm研削されて研削面1b’が形成され、研削砥石601が表面1aの面取り部12に至り、ウェーハ1の厚さが100μmとなると、研削送り手段7が研削手段6を上昇させることにより研削を終了する。
【0026】
面取り部12と硬質基板2との間の隙間に樹脂3が充填されているため、研削中も、面取り部12がばたつくことがない。したがって、面取り部12のばたつきに起因してウェーハ内部に割れが生じるのを防止することができる。
【0027】
また、面取り部12に至るまで研削を行うため、研削砥石601は樹脂3も研削する。通常は、樹脂を研削すると研削砥石601に目詰まりが生じやすいが、樹脂3に砥粒を混入させているため、その砥粒が研削砥石601に樹脂が入っていくのを抑制する。したがって、研削砥石601に目詰まりが生じにくい。
【符号の説明】
【0028】
1:ウェーハ
1a:表面 1b:裏面
L:分割予定ライン D:光デバイス
10:サファイア基板 11:発光層 12,13:面取り部
2:硬質基板
2a:表面
3:樹脂
4:研削装置
5:チャックテーブル 50:カバー 51:蛇腹
6:研削手段
60:研削ホイール 600:基台 601:研削砥石
61:マウント 62:回転軸 63:ハウジング 64:駆動部
7:研削送り手段
70:ボールスクリュー 71:ガイドレール 72:パルスモータ 73:昇降部
74:支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9