(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記貫通孔の内部に、前記傾斜板の上端と同じか又は前記上端より低い場所、かつ前記センサの上方に位置するように配置された蓋をさらに備えたことを特徴とする排水処理装置。
請求項2において、前記貫通孔の横断面のうち前記蓋によって閉塞されていない領域の面積が、前記傾斜板により形成される1つの流路の面積より小さいことを特徴とする排水処理装置。
請求項4において、前記貫通管の内部に、前記貫通管の上端と同じか又は前記上端より低い場所、かつ前記センサの上方に位置するように配置された蓋をさらに備えており、
前記貫通管の上端は前記処理槽内の水面より低い位置にあることを特徴とする排水処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、固液分離を高速かつ効率良く行うとともに、汚泥と上澄水との界面の位置を精度良く検出することができる排水処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様による排水処理装置は、排水が供給される処理槽に設けられた複数の傾斜板と、前記傾斜板に設けられた貫通孔の内部に配置され、前記処理槽の底面に向けて超音波又は光を送出し、水中で反射した超音波又は光を受信するセンサと、前記センサによる受信信号に基づいて、前記処理槽内の懸濁物堆積層と上澄水との界面の位置を算出する算出部と、洗浄媒体を噴射して前記センサを洗浄する洗浄部と、を備え、前記センサは、底面が、前記傾斜板の下端と同じか又は前記下端より高い場所に位置するように配置されるものである。
【0008】
第1態様による排水処理装置においては、前記貫通孔の内部に、前記傾斜板の上端と同じか又は前記上端より低い場所、かつ前記センサの上方に位置するように配置された蓋をさらに備えることが好ましい。
【0009】
第1態様による排水処理装置においては、前記貫通孔の横断面のうち前記蓋によって閉塞されていない領域の面積が、前記傾斜板により形成される1つの流路の面積より小さいことが好ましい。
【0010】
本発明の第2態様による排水処理装置は、排水が供給される処理槽に設けられた複数の傾斜板と、前記傾斜板を貫通するように設けられ、下端が前記傾斜板の下端から突出した貫通管と、前記貫通管の内部に配置され、前記処理槽の底面に向けて超音波又は光を送出し、水中で反射した超音波又は光を受信するセンサと、前記センサによる受信信号に基づいて、前記処理槽内の懸濁物堆積層と上澄水との界面の位置を算出する算出部と、洗浄媒体を噴射して前記センサを洗浄する洗浄部と、を備え、前記センサは、底面が、前記貫通管の下端と同じか又はこの下端より高い場所に位置するように配置されるものである。
【0011】
第2態様による排水処理装置においては、前記貫通管の内部に、前記貫通管の上端と同じか又は前記上端より低い場所、かつ前記センサの上方に位置するように配置された蓋をさらに備え、前記貫通管の上端は前記処理槽内の水面より低い位置にあることが好ましい。
【0012】
第2態様による排水処理装置においては、前記貫通管の上端は前記処理槽内の水面より高い位置にあることが好ましい。
【0013】
本発明の第3態様による排水処理装置は、第1又は第2態様において、前記傾斜板の下方へ排水を供給するフィードウェルと、前記処理槽から汚泥を引き抜いて排出する排出部と、前記算出部により算出された前記界面の位置を表示する表示部と、をさらに備える。
【0014】
本発明の第4態様による排水処理方法は、上記第3態様の排水処理装置を用いた排水処理方法であって、前記算出部により算出された前記界面の位置が前記フィードウェルの下端より高い場合に排水の供給を停止するステップと、前記排水の供給を停止した後に、前記排出部により汚泥の引き抜きを行うステップと、前記汚泥の引き抜き後に、前記算出部により算出された前記界面の位置が所定値以下になった場合に排水の供給を再開するステップと、を備えるものである。
【0015】
本発明の第5態様による排水処理方法は、上記第3態様の排水処理装置を用いた排水処理方法であって、前記処理槽内において濁りの巻き上がりが検出された場合に排水の供給を停止するステップと、前記排水の供給の停止後、前記濁りの巻き上がりが収まった場合に、供給量を調整して排水の供給を再開するステップと、を備えるものである。
【0016】
本発明の第6態様による排水処理方法は、上記第3態様の排水処理装置を用いた排水処理方法であって、前記フィードウェルの下端より高い領域において濁りの発生が検出された場合に排水の供給を停止するステップと、前記排水の供給の停止後、前記濁りが収まった場合に、供給量を減らして排水の供給を再開するステップと、を備えるものである。
【0017】
第6態様による排水処理方法においては、前記表示部は前記受信信号に基づいて求められた前記処理層内のフロックの位置及び大きさを表示することができ、前記排水の供給の再開後、前記フィードウェルの下端より高い領域において濁りの発生が検出された場合に、前記表示部に表示された前記フロックの大きさに基づいて、凝集剤の添加量を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、傾斜板に貫通開口部を設け、この貫通開口部に内在するように超音波センサを設置しているので、超音波センサの洗浄に伴い傾斜板に付着した粒子が巻き上げられることを防止し、固液分離を高速かつ効率良く行うことができる。また、超音波センサを洗浄することにより、振動子面の汚れを除去し、汚泥と上澄水との界面の位置を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に本発明の実施形態に係る排水処理装置の概略構成を示す。排水処理装置は、排水(汚水)を沈降処理して汚泥とその上澄水とを固液分離する処理槽100と、処理槽100内での汚泥と上澄水との界面を検出する界面レベル計200を備えている。界面レベル計200は、信号生成回路201、超音波センサ202、増幅回路203、アナログデジタル変換器(以下、A/D変換器と称する)204、表示部205、及び界面レベル算出部206を備えている。
【0022】
超音波センサ202は超音波の送受信を行う振動子を有し、処理槽100内に設置されている。超音波センサ202の設置箇所については後述する。超音波センサ202は、信号生成回路201により生成されたパルス信号等の電気信号を振動子に与え、処理槽100の底面に向かって超音波を送信する。
【0023】
超音波センサ202から送信された超音波は、汚泥(懸濁物堆積層)とその上澄水との界面や、界面下の懸濁物、処理槽100の底面等によって反射される。超音波センサ202は反射波を受信し、受信信号を増幅回路203へ出力する。
【0024】
超音波センサ202による受信信号は増幅回路203によって増幅され、A/D変換器204によりデジタル信号に変換された後、表示部205及び界面レベル算出部206へ出力される。
【0025】
表示部205は、A/D変換器204から受け取ったデジタル信号に基づいて、超音波送信からの時間経過に伴う反射強度(受信強度)の変化を示すグラフを表示領域251に表示する。表示領域251は、例えば
図2に示すように、縦軸に経過時間、横軸に反射強度をとるグラフを表示する。なお、超音波送信から受信までの時間は、超音波の反射位置の深さに対応するため、縦軸を深さとして表示することもできる。このように、表示部205の表示領域251は、処理槽100内の最新の超音波反射強度分布を表示することができる。
【0026】
また、表示部205の表示領域252は、後述する方法により界面レベル算出部206が算出した懸濁物堆積層と上澄水との界面の位置を表示する。表示領域252は、界面の位置を数値表示してもよいし、トレンドグラフとして表示してもよい。
【0027】
界面レベル算出部206は、A/D変換器204から受け取ったデジタル信号に基づいて、懸濁物堆積層と上澄水との界面の位置(深さ)を算出する。超音波の反射強度は、超音波送信からの時間経過に伴って例えば
図3に示すように変化する。界面レベル算出部206は、反射波の受信時間の早い方から順に、すなわち処理槽100の浅い箇所から深い箇所に向かって順に、反射強度と所定の閾値Thとを比較し、反射強度が閾値Th以上となる反射波の受信時間(t1)に基づいて、界面までの距離(界面の位置)を算出する。
【0028】
また、界面レベル算出部206は、時間t1以後に反射強度が急激に大きくなったタイミングまでの経過時間(t2)から、処理槽200の底面までの距離を算出することができる。界面レベル算出部206は、超音波センサ202の取り付け位置と、処理槽100の底面までの距離との対応関係を示すテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して底面までの距離を求めてもよい。
【0029】
なお、閾値Thは予め設定されていてもよいし、ユーザが、図示しない入力手段を介して入力・設定できるようにしてもよい。入力手段は、例えばマウスやキーボードである。また、表示部205をタッチパネルで構成し、ユーザがタッチパネルを介して入力した閾値Thが界面レベル算出部206に通知されるようにしてもよい。
【0030】
界面レベル算出部206は、このようにして算出した界面の位置を表示部205に出力して、表示領域252に表示させる。これにより、表示領域252は、処理槽100内での懸濁物堆積層と上澄水との界面の位置の最新情報を表示することができる。なお、界面の位置は、上澄水の水面からの距離、超音波センサ202からの距離、処理槽100の底面からの距離のいずれでもよく、またその他の基準点からの距離でもよい。
【0031】
また、界面レベル算出部206は、算出した界面の位置情報を、外部ディスプレイ、外部メモリ、外部コンピュータ等の外部装置210へ出力してもよい。
【0032】
図4に処理槽100の概略構成を示す。処理槽100は、フィードウェル104を介して供給された排水を汚泥(懸濁物堆積層)134と上澄水132とに分離する固液分離を行う。フィードウェル104は、後述する掻き寄せレーキ120の回転軸と同心円上の位置に垂直に設けられ、円筒形状を有している。
【0033】
処理槽100の上部には複数枚の傾斜板110が設けられており、処理槽100は、沈降分離面積を大きく、沈降距離を短くして、清澄液の生長速度を速めた傾斜沈降分離装置となっている。傾斜板110は、処理槽100上部のフィードウェル104以外の領域に設けられており、言い換えればフィードウェル104を取り囲むように処理槽100全体(全面)に設けられている。フィードウェル104を介して供給された排水は、上昇水流により
図5に示すように傾斜板110の間を通過する。排水に含まれている粒子は沈降すると傾斜板110の上に落ち、この傾斜板110の上を滑り落ちる。水の流れは斜め(傾斜板110に平行)になっており、粒子の分離ゾーンを長く、かつ粒子の移動距離を短くすることができるため、固液分離を効率良く行うことが出来る。また、水流と粒子の沈降ゾーンとを分けることができるため、微細粒子を効率良く分離出来る。
【0034】
処理槽100底部に沈殿した汚泥134は、掻き寄せレーキ120によって中央のくぼみに集められ、図示しない排出部により引き抜かれて排出される。
【0035】
図4に示すように、傾斜板110には、上下方向(垂直方向)に貫通する貫通孔112が設けられており、この貫通孔112の内部に、汚泥134と上澄水132との界面136を検出するための超音波センサ202が取付機構(図示せず)により取り付けられている。また、貫通孔112の内部には、超音波センサ202の振動子面に対して高圧水、圧縮空気、二酸化炭素ガス、窒素ガス等の洗浄媒体を噴射して振動子面を洗浄する洗浄部(図示せず)が設けられている。貫通孔112の横断面形状は特に限定されず、三角形、四角形、円形、その他自由な形状とすることができる。
【0036】
超音波センサ202は、
図6に示すように、超音波センサ202の下面(振動子面)が、傾斜板110の最下部(下端)より下方に突出しないように、貫通孔112内に設置される。超音波センサ202の振動子面を、傾斜板110の最下部の位置と同じか又はそれより高い位置に配置することで、振動子面に洗浄媒体を噴射した際に、傾斜板110の流路に入り込む上昇水流が乱されることを防止し、傾斜板110に付着している(傾斜板110を滑り落ちている)粒子が巻き上げられることを防止できる。
【0037】
図4に示すように、貫通孔112内の超音波センサ202上方には蓋114が設けられている。蓋114は、傾斜板110の最上部(上端)の位置と同じか又はそれより低い位置に配置される。蓋114には、信号生成回路201により生成された電気信号を超音波センサ202へ伝送するためのケーブル、超音波センサ202による受信信号を増幅回路203へ伝送するためのケーブル、洗浄部に洗浄媒体を供給するチューブ等が挿通される穴や切欠き(図示せず)が設けられている。また、洗浄媒体に圧縮空気等の気体を使用する場合、蓋114には噴射された気体を通過させるための穴も設けられる。
図7に示すように、蓋114と、貫通孔112の内壁面との間に隙間を設け、この隙間にケーブルやチューブを通したり、この隙間を気体が通過するようにしてもよい。
【0038】
このような蓋114を設けることで、貫通孔112が流路となることを防止し、排水が傾斜板110の流路を通過せずに傾斜板110の上方へ抜けることを防止することができる。また、貫通孔112を流路としないことで、超音波センサ202に粒子が付着することを抑制することができる。また、洗浄によって超音波センサ202から除去された粒子が系外へ流出することを防止できる。また、遮光性を有する材料(例えば、不透明な合成樹脂、アルミニウム等の金属)で蓋114を形成した場合は、太陽光の侵入を抑制し、貫通孔112内での藻の繁殖を防止できる。
【0039】
なお、貫通孔112が流路になることを防止するために、蓋114に設けられた穴や、蓋114と貫通孔112の内壁面との間の隙間の面積の合計値から、ケーブルやチューブの断面積の合計値を減じた値(貫通孔112の開口(閉塞されていない)面積)が、傾斜板110により構成される1つの流路の面積未満となるようにすることに留意すべきである。例えば、蓋114と貫通孔112の内壁面との間隔を1mm以上5cm以下にすることが好ましい。間隔を1mm未満にすると、超音波センサ202の洗浄により除去された粒子が隙間を塞ぐおそれがあり、間隔を5cmより大きくすると、貫通孔112が流路になるおそれがある。
【0040】
なお、蓋114は
図7に示すように水平に設置してもよいし、
図8に示すように斜めに設置してもよい。蓋114を斜めに設置することで、洗浄部から噴射された気体から受ける浮力を低減できる。この場合、気体を通過させるための穴は、斜めにした蓋114の上方に設けることが好ましい。蓋114は、貫通孔112を十分に塞げるものであれば、形状、寸法、材質は特に制限されない。
【0041】
このように、本実施形態によれば、傾斜板110の貫通孔112に内在するように超音波センサ202を設置する。そのため、超音波センサ202の洗浄時に、傾斜板110に付着した粒子が巻き上げられることを防止し、固液分離を高速かつ効率良く行うことができる。また、超音波センサ202を洗浄することで、振動子面の汚れを除去し、汚泥と上澄水との界面の位置を精度良く検出することができる。また、貫通孔112内の超音波センサ202上方に蓋114を設けて貫通孔112が流路になることを防止することで、排水が傾斜板110の流路を通過せずに傾斜板110の上方へ抜けることを防止することができ、固液分離性能の劣化を防止できる。
【0042】
図9に示すように、貫通孔112に貫通管116を設けてもよい。貫通管116は、貫通孔112に嵌め込まれ、傾斜板110の垂直方向の高さより大きく、上端及び下端はそれぞれ傾斜板110の最上部(上端)及び最下部(下端)より突出している。貫通管116は耐水性と適度な強度があれば材質は特に限定されない。
【0043】
このとき、超音波センサ202は、
図10に示すように、超音波センサ202の下面(振動子面)が、貫通管116の下端より下方に突出しないように、貫通管116内に設置される。超音波センサ202の振動子面を、貫通管116の下端の位置と同じか又はそれより高い位置に配置することで、振動子面に洗浄媒体を噴射した際に、傾斜板110の流路に入り込む上昇水流が乱されることを防止し、傾斜板110に付着している(傾斜板110を滑り落ちている)粒子が巻き上げられることを防止できる。
【0044】
また、蓋114は、
図11及び
図12に示すように、貫通管116内の超音波センサ202上方に水平又は斜めに設けられる。蓋114は、貫通管116の上端の位置と同じか又はそれより低い位置に配置される。蓋114を設置することで、貫通管116が流路となることを防止できる。
【0045】
また、
図13に示すように、貫通管116の上端が水面より高い位置にある場合は、蓋114を省略してもよい。蓋114が無くても、貫通管116は流路とならないためである。
【0046】
[別の実施形態]
超音波反射強度をグレースケール又はカラーで表示するために、
図14に示すように、上記実施形態に係る界面レベル計200にグラフィック変換部207を設けてもよい。グラフィック変換部207は、A/D変換器204から受け取ったデジタル信号の値を、ディスプレイの階調に対応した値(画素データ)に変換する。例えば、カラー画像では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色それぞれがkビット(=2
k階調、kは2以上の整数)で表現され、
図15に示すような対比により、256色を表現することができる。
【0047】
グラフィック変換部207は、生成した画素データを外部装置210へ出力する。外部装置210がディスプレイである場合は、超音波反射強度がグレースケール又はカラーで表示される。
【0048】
また、
図16に示すように、界面レベル計200に、グラフィック変換部207により生成された画素データを記憶するメモリ208を設けてもよい。メモリ208は、
図17に示すように、1つの反射信号に対応するm個(mは2以上の整数)の画素データ60を1列に並べて1画素列とし、n個(nは2以上の整数)の反射信号の画素列を取得時間順に並べて画像データを作成する。メモリ208は、この画像データを表示部205に出力し、表示領域253に表示させる。これにより、ユーザは、処理槽100内の状態変化を、
図18に示すようなカラー画像で監視することができる。深さ表示(目盛)は、水面を基準としてもよいし、センサ下面や水槽の底面を基準としてもよい。メモリ208は、このような画像データを外部装置210へ出力してもよい。
【0049】
図19に示すように、メモリ208に複数の記憶領域S1〜Syを設けてもよい。記憶領域S1〜Syは、グラフィック変換部207からm+w個(wは0以上の整数)の画素データを受け取ると、表示領域253の1画素列分の表示データ(画素列データ)dとして格納する。記憶領域S1〜Syは、新しいデータd1の格納に伴い、今まで記憶していたデータのうち一番古いデータd2を廃棄(消去)する。
【0050】
記憶領域S1〜Syはそれぞれ表示データdをn+x個分(xは0以上の整数)格納することができる。また、
図19に示すように、表示データdにはグラフィック変換部207から受け取ったカラー表示用のm+w個の画素データだけでなく、界面レベル算出部206から受け取った界面レベルLV、図示しない水温センサから受け取った水温T、時刻Cを含めてもよく、これらを表示部205に出力してもよい。
【0051】
記憶領域S1〜Syは、設定されたインターバル(時間間隔)を空けて、次の新しい表示データdをグラフィック変換部207から受け取り、格納する。記憶領域S1〜Syに格納されているn+x個の表示データ(画素列データ)dのうち、新しい方からn個を用いることで、表示領域253に超音波受信強度分布の変遷をカラー表示することができる。また、表示データに界面レベルLVや水温Tが含まれている場合、表示領域253は、カラー画像と併せてあるいは単独で(画像データは消す)、界面レベルや水温の変遷を表示することができる。
【0052】
記憶領域S1〜Syはそれぞれ異なるインターバルが設定されている。例えば、記憶領域S1は1秒、記憶領域S2は3秒、記憶領域Sy−1は50分、記憶領域Syは100分のインターバルが設定され、表示領域253の画素列が200列ある(n=200)場合を考える。
【0053】
この時、記憶領域S1のデータを用いると、表示領域253には表示幅200秒(=1秒×200)の変遷を表示できる。同様に、記憶領域S2のデータを用いると表示幅10分(=3秒×200)、記憶領域Sy−1のデータを用いると表示幅約7日(≒50分×200)、記憶領域Syのデータを用いると表示幅約14日(≒100分×200)の変遷を表示できる。
【0054】
従って、どの記憶領域に格納されている表示データを用いるかによって、表示部205の表示領域253にカラー表示する超音波受信強度分布の変遷(
図18参照)の時間幅を変更することができる。制御部209は、表示する時間幅の切り替え指示に基づいて、指示された時間幅に対応する記憶領域に格納されている表示データが表示部205に出力されるように制御する。
【0055】
長い時間幅の強度分布の変遷を表示部205に表示する場合も、データサンプリングのインターバルを長くとって表示データdをn個もしくはn+x個保持していれば良く、すべての時間に渡るデータを保持する必要がないため、メモリ208の記憶容量を削減できる。
【0056】
また、表示画面の時間幅を切り替える際は、メモリ208内の複数の記憶領域S1〜Syのうちの表示データ取り出し先を切り替えるだけでよく、データの間引き抽出等が不要となるため、切り替えに要する時間を短縮し、表示エラーの発生を防止することができる。
【0057】
記憶領域S1〜Syのデータサンプリングのインターバルを、表示領域253に表示される時間幅に対応させるようにしてもよい。例えば、n=200で時間幅3分の表示データを記憶領域S1に格納させたい場合、データサンプリングのインターバルは0.9秒(=180秒÷200)となる。同様に、時間幅30分の表示データを記憶領域S3に格納させたい場合、データサンプリングのインターバルは9秒(=1800秒÷200)となる。記憶領域S1〜Syの各々のデータサンプリングのインターバルを制御部209が制御するようにしてもよい。
【0058】
上記実施形態及び変形例において、界面レベル計は、超音波センサでなく、反射型の光学式濁質濃度測定器を用いてもよい。
【0059】
[排水処理方法]
上述した界面レベル計200により算出した界面の位置を利用した排水処理方法について説明する。
【0060】
図20に示すように、界面136がフィードウェル104の下端より高い位置にある場合、フィードウェル104の下端より上に位置する懸濁物は上昇流速の影響を直接受け、舞い上がりやすい。舞い上がった懸濁物は、傾斜板110の中で分離し、傾斜板110に沿って沈降するが、この一部は傾斜板110に付着したり、他の粒子と凝集して傾斜板110上に残留したりして、傾斜板110の流路を狭める。流路が狭められると、流速が上がり、固液分離能が劣化し、処理水質が低下する。
【0061】
そのため、界面レベル計200により算出した界面の位置がフィードウェル104の下端より高い位置にある場合、通水(フィードウェル104からの排水の供給)を停止し、堆積物(汚泥)の引き抜きを行う。この状態では界面レベルを下げることが優先されるため、堆積物の引き抜き流量は大きい方が好ましい。
【0062】
そして、
図21に示すように、界面レベル計200により算出した界面の位置が所定値以下に下がった場合、通水を再開する。なお、界面位置の変化する速度から、処理槽100の内部状態が回復するまでの時間を推定し、通水再開の計画を立てることができる。
【0063】
このような通水及び堆積物引き抜きの制御を行うことにより、処理水質の低下を防止することができ、上述した排水処理装置を安全かつ計画的に運転管理することができる。
【0064】
処理槽100では、
図22に示すように、懸濁物堆積層134から濁り(懸濁物)が巻き上がることがある。これは、通水流速が速すぎて、フィードウェル104を介して供給された排水が懸濁物堆積層134を乱して処理不良を起こしている状態である。巻き上がった懸濁物が上昇して傾斜板110に達すると、傾斜板110の流路が狭まり、固液分離能が劣化し、処理水質が低下する。
【0065】
そのため、界面レベル計200により濁りの巻き上がりが検出された場合、通水を停止し、濁りを沈降させる。例えば、界面よりも高い位置からの反射波の受信強度が大きくなった場合、濁りの巻き上がりが発生したと判定することができる。このとき、界面レベルを下げるように堆積物(汚泥)の引き抜きを行ったり、引き抜き量を増加させたりしてもよい。
【0066】
そして、
図23に示すように濁りの巻き上がりが収まった後、通水を再開する。
【0067】
再度濁りの巻き上がりが観察された場合は、上述の操作を繰り返し、通水流量を調整しながら、最適な通水流量を探すことが好ましい。
【0068】
このような通水の制御を行うことにより、処理水質の低下を防止することができ、上述した排水処理装置を適切に運転管理することができる。
【0069】
図24に示すように、フィードウェル104の下端よりも上方の領域を含む、傾斜板110より下の領域のうち上層部分にのみ濁りが発生することがある。この要因としては、通水流速が速すぎること、又は凝集剤/凝結剤の添加量の過不足が考えられる。通水流速が速すぎると、フィードウェル104を介して供給された水が静水部にぶつかって乱流を起こし、懸濁物が沈降せずに舞い上がる。凝集剤/凝結剤の添加量が少ない場合、フロックが小さくなり、沈降速度が低下して舞い上がる。また、凝集剤/凝結剤の添加量が過剰な場合、フロックが大きくなる一方、圧密性(密度)が低下し、沈降速度が低下して舞い上がる。巻き上がった懸濁物が上昇して傾斜板110に達すると、傾斜板110の流路が狭まり、固液分離能が劣化し、処理水質が低下する。
【0070】
そのため、界面レベル計200により
図24のような濁りの発生が検出された場合、通水を停止し、濁りを沈降させる。例えば、超音波センサ202が受信した反射波の強度が、処理槽100の浅い箇所から深い箇所へ順にみて、傾斜板110直下の領域で大きく、一旦小さくなり、界面レベルで再度大きくなるといった変遷となった場合、
図24のような濁りが発生したと判定することができる。
【0071】
そして、通水停止後、
図23に示すように濁りの巻き上がりが収まった後、通水を再開する。通水再開時は、通水停止前よりも通水流量を下げて、再度濁りが発生しないようにする。通水流量を下げても濁りが発生した場合は、凝集剤/凝結剤の添加量を調整する。このとき、表示領域253による
図18に示すような画像では、フロックの大きさや沈降性が表示される。例えば、フロックの大きさがドットの大小で表現される。また、時間軸(横軸)に対して深さ(縦軸)が移動距離となるので、その傾きが沈降速度となり、沈降性を評価できる。この画像においてドットが小さい場合には、凝集剤/凝結剤の添加量が不足していることが分かるので、凝集剤/凝結剤の添加量を増やす。また、ドットが大きい場合には、凝集剤/凝結剤の添加量が過剰であることが分かるので、沈降速度が低下しないように、凝集剤/凝結剤の添加量を減らす。
【0072】
凝集剤/凝結剤の添加量の調整によっても濁りの発生を抑制できない場合は、通水流量を下げる。このような操作を繰り返すことで、通水流量及び凝集剤/凝結剤の添加量の最適点を探すことができる。
【0073】
このような通水及び凝集剤/凝結剤の添加の制御を行うことにより、処理水質の低下を防止することができ、上述した排水処理装置を適切に運転管理することができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。