(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コア及び前記コアを被覆するクラッドを有する複数の光ファイバと複数の光素子を列状に配置してなる複数の光素子アレイとを光結合する複数のレンズを有するレンズブロックであって、前記レンズブロックは、前記複数のレンズが形成されたレンズ部と、前記複数の光ファイバを保持する保持部とからなり、前記レンズ部は前記複数のレンズが直線状に1列に配置されてレンズアレイが構成されると共に、複数の前記レンズアレイが多角形状に面状配置され、多角形状に面状配置された複数の前記光素子アレイに対し多角形状に面状配置された複数の前記レンズアレイが対向して配置された、レンズブロック。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る光モジュール1の全体図である。
【0020】
この光モジュール1は、コア及びクラッドを有する複数(本実施の形態では32本)の光ファイバ8と、光ファイバ8の一部を収容するレンズブロック3と、四角形状の基板6とを備える。複数の光ファイバ8は、基板6に対して垂直な方向に延びている。
【0021】
レンズブロック3は、光ファイバ8を保持する保持部30と、円盤状のレンズ部31とを一体に有している。保持部30には、円筒状の円筒部30aと直方体形状をした胴部30bとが一体に形成されている。円筒部30aは、光ファイバ8の軸方向に複数(本実施の形態では32個)の挿通孔300を有し、光ファイバ8を胴部30bに案内している。複数の光ファイバ8は、それぞれが胴部30bの外側四方から押さえ板10で押さえられ、樹脂系(例えば、エポキシ樹脂系等)の接着剤で固定されている。
【0022】
光ファイバ8の一部とレンズブロック3と基板6とは、直方体形状のケース2に収納されている。ケース2は、筒状の筒部20と、収納部位としての箱部22と、筒部20を箱部22に取り付ける取付部21とから形成されている。箱部22は、筒部20の反対側の開口端が基板6で覆われている。基板6の実装面6aには、半導体回路素子としての複数(本実施の形態では4個)のドライバIC5が実装されている。実装面6aと反対側に位置する底面6bは、光モジュール1が実装されるマザーボード7の実装面7aに対向している。光ファイバ8は、筒部20からケース2の外に延びている。
【0023】
図2は、光モジュール1を底面側から見た斜視図である。
【0024】
基板6の底面6bには、複数の端子9が格子状に配列されている。端子9は、ドライバIC5の電極50と電気的に接続されると共に、マザーボード7の実装面7aに実装された端子(図示せず)とも電気的に接続され、マザーボード7とドライバIC5との電気信号の授受に介在している。
【0025】
図3は、基板6の実装面6aを示し、(a)は斜視図、(b)は拡大図、(c)は接続図である。
【0026】
基板6は、その中央部に四角形状の凹部61が形成されている。凹部61の内部には、複数(本実施の形態では8個)の光素子40をアレイ状に並べた複数(本実施の形態では4個)の光素子アレイ4がレンズ部31に対向するように実装されている。本実施の形態では、光素子40は発光素子であり、例えばレーザダイオード、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emmitting LASER)等が適用される。4個の光素子アレイ4は、凹部61における四面からなる内周面61aの各面に対向する位置に配置されている。つまり、光素子アレイ4は四角形状に配置されている。換言すれば、4個の光素子アレイ4は、それぞれの光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線が四角形を形成するように配置されている。
【0027】
ドライバIC5は、四角形状の薄板からなる。4個のドライバIC5は、凹部61の外側で、凹部61の外縁に沿って、それぞれの光素子アレイ4に対向する位置に配置されている。つまり、ドライバIC5は光素子アレイ4を取り囲むように配置されている。従って、4個の光素子アレイ4は、基板6の実装面6aにおける4個のドライバIC5の間に配置されている。
【0028】
ドライバIC5の上面5aには、複数(本実施の形態では9個)の第1の電極51と複数(本実施の形態では9個)の第2の電極52とが実装されている。第1の電極51は光素子アレイ4側に配列され、第2の電極52は第1の電極51の反対側に配列している。9個の第1の電極51は、光素子アレイ4の9個のボンディングパッド41とボンディングワイヤ11で電気的に接続され、第1の電極51から光素子40に電気信号が送られる。
【0029】
図3(c)に示すように、各光素子40のアノードは、各ボンディングパッド41に接続され、各光素子40のカソードは1個の共通のボンディングパッド41に接続されている。基板6の実装面6aには、9個の第2の電極52と電気的に接続される複数(本実施の形態では9個)の電極62が実装されている。9個の電極62は、基板6の底面6bの端子9に電気的に接続されている。
【0030】
また、基板6の実装面6aには、レンズブロック3を基板6に取り付ける際の位置決めをするための被嵌合部60が複数(本実施の形態では4個)形成されている。4個の被嵌合部60は、基板6の凹部61における4つの角部付近にそれぞれ配置されている。なお、本実施の形態では、被嵌合部60は凹部である。
【0031】
図4は、レンズブロック3を底面側から見た斜視図である。
【0032】
レンズブロック3の底面31bには、光素子アレイ4の光素子40と光結合する複数(本実施の形態では32個)のレンズ12と、レンズブロック3を基板6に取り付ける際の位置決めをするための複数(本実施の形態では4個)の嵌合部310とが設けられている。レンズ12は、光素子40に対向する位置に配置されている。本実施の形態では、32個のレンズ12が4つのレンズアレイ120を構成している。各レンズアレイ120はそれぞれ、8個のレンズ12が直線状に一列に配置されて構成されている。レンズアレイ120は、光素子アレイ4に対向するように四角形状に配置されている。
【0033】
光素子40から出射された光はレンズ12によって集光され、各光素子40に対応する光ファイバ8のコア内に入射する。嵌合部310は、隣り合うレンズアレイ120の間に形成されている。本実施の形態では、嵌合部310が被嵌合部60に嵌合される凸部である。
【0034】
図5は、レンズブロック3の上面側から見た斜視図である。
【0035】
保持部30の円筒部30aには、複数(レンズ12と同数)の挿通孔300が基板6の実装面6aの法線方向に沿って形成されている。本実施の形態では、各挿通孔300の中心軸の延長線が対応するレンズ12の光軸Lと一致するように、8個の挿通孔300が1組となって1つの辺をなす四角形状に配列されている。
【0036】
胴部30bの四つの平面からなる外面30cは、光ファイバ8の一部を収容する溝部としての第1の溝部301と、第1の溝部301のレンズ部31側の端面301aとレンズ部31の上面との間の隙間として形成された第2の溝部302とが設けられている。本実施の形態では、外面30cの各平面に、8本の第1の溝部301及び8本の第2の溝部302が配列されている。つまり、外面30cには、32本の第1の溝部301及び32本の第2の溝部302が挿通孔300の中心軸の延長線に沿って形成されている。第2の溝部302は、第1の溝部301の端面301aからレンズ部31の上面に向かって延びている。すなわち、第2の溝部302の幅は第1の溝部301の幅よりも狭く形成されている。また、第2の溝部302の挿通孔300の中心軸方向の深さは、第1の溝部301のその深さよりも浅く形成されている。第1の溝部301及び第2の溝部302は、各レンズ12に対向した位置に配置されている。
【0037】
図6は、レンズブロック3の保持部30の胴部30b及びレンズ部31を示し、(a)は拡大図、(b)は第1の溝部301の端面301aの拡大図、(c)は(a)におけるA−A断面図である。
【0038】
第1の溝部301は、その延伸方向に直交する断面における形状が台形状に形成されている。なお、この断面の形状はV字形状でもよい。つまり、光ファイバ8の外周面が第1の溝部301の内面に複数箇所で接することによって位置決めされる形状であればよい。第1の溝部301には、光ファイバ8の被覆部83を剥がした素線80が収容されている。光ファイバ8は、素線80に樹脂系(例えば、エポキシ樹脂系等)の接着剤が塗布され、押さえ板10で第1の溝部301の内方に押さえられて固定されている。これにより、光ファイバ8は第1の溝部301の内部で保持されている。
【0039】
第2の溝部302は、第1の溝部301と同様に、その延伸方向に直交する断面における形状が台形状に形成されている。第2の溝部302は、その延伸方向に直交する方向における幅が第1の溝部301におけるその幅より小さく形成され、延伸方向における長さも第1の溝部301より短い。第1の溝部301と第2の溝部302との間には端面301aが形成され、この端面301aに光ファイバ8のクラッド82の先端面82aが当接している。なお、光ファイバ8のレンズ部31側の先端面8aは、クラッド82の先端面82aが端面301aと接触している。コア81の先端面81aは、端面301aから露出し、第2の溝部302を介してレンズ部31に対向している。
【0040】
図6(c)に示すように、第2の溝部302の内部には、空気の屈折率(1.0003)より大きな屈折率を有する光透過部材としての屈折率調整剤13が充填されている。屈折率調整剤13は、光ファイバ8のコア81の先端面81aと第2の溝部302の端面302aとの間の光路を充填するように満たされている。本実施の形態では、屈折率調整剤13の屈折率がコア81の屈折率と同等である。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0042】
(1)複数の光素子40を列状に配置させ、光素子アレイ4を構成する。多チャンネル化する場合、光素子アレイ4を基板6の実装面6aに実装されたドライバIC5の間に配置することにより、実装面6aにおける複数の光素子40に囲まれた面積が小さくなり、レンズブロック3及び光モジュール1の小型化につながる。また、光素子アレイ4のボンディングパッド41とドライバIC5の第1の電極51との間をボンディングワイヤ11で接続する際、その接続距離が短くなるので、容易に接続することができる。また、ボンディングワイヤ11の接続距離が短くなるため、ボンディングパッド41と第1の電極51との間における信号の伝送損失を少なくすることができる。
【0043】
(2)レンズ12は、その光軸Lが基板6の実装面6aに交差し、コア81の先端面81aに対向している。光ファイバ8のレンズ部31側の先端部が基板6の実装面6aに対して平行でないため、光ファイバ8がマザーボード7等に実装された部品と干渉するおそれがない。
【0044】
(3)光素子アレイ4を多角形状に配置することにより、実装面6aにおける光素子40の実装密度が高くなり、より光モジュール1の小型化につながる。また、光素子アレイ4を一列に並べた場合と比較して、光素子アレイ4とレンズブロック3との線膨張による光軸Lのずれに対する影響を抑えることができ、光結合効率の低下を抑制することが可能になる。
【0045】
(4)レンズブロック3は、円筒部30aと胴部30bとからなる保持部30と、レンズ12を有するレンズ部31とが一体に形成されている。レンズブロック3の製造時において、金型で一体成形することが可能となり、各部品の組み立て工程の削減につながる。
【0046】
(5)レンズブロック3の保持部30に形成された第2の溝部302におけるその延伸方向の幅は、第1の溝部301のその幅よりも小さく形成されている。これにより、第1の溝部301の端面301aで光ファイバ8のクラッド82を支持している。コア81は第2の溝部302を介してレンズ部31と対向し、レンズ12から入射する光をコア81で捉えることができる。
【0047】
(6)
図6(c)の二点鎖線に示すように、第2の溝部302に空気の屈折率より大きな屈折率を有する屈折率調整剤13を充填させることにより、レンズ12から入射した光の反射若しくは拡散を抑制して光ファイバ8のコア81に入射させることができる。また、コア81の先端面81aが荒れている場合においても、この先端面81aにおける反射を抑制することができる。また、第2の溝部302の端面302aとコア81の先端面81aとの間に隙間が設けられているため、屈折率調整剤13の剥離や気泡の発生を抑制することができる。従って、コア81の先端面81aとレンズ12との間における光の結合効率の低下抑制につながる。
【0048】
(7)レンズブロック3の保持部30の円筒部30aに形成された挿通孔300によって、光ファイバ8は第1の溝部301に滑らかに挿入される。また、保持部30が円筒部30aを有することにより、光ファイバ8を保持部30に保持する強度を高めている。
【0049】
(8)押さえ板10が光ファイバ8を第1の溝部301の内方に押さえることにより、光ファイバ8がレンズブロック3から外方へ倒れることを防ぐことができる。
【0050】
(9)レンズブロック3のレンズ部31の底面31bには嵌合部310が形成され、基板6の実装面6aには被嵌合部60が形成されている。嵌合部310と被嵌合部60とが嵌合することにより、レンズブロック3を基板6の実装面6aに取り付ける際、取り付け位置を一意に決めることができる。
【0051】
なお、実施の形態に係る光モジュール1は、例えば以下のように変形して実施することも可能である。
【0052】
(変形例1)
図7は、変形例1に係る基板6の実装面6aを示し、(a)は光素子アレイ4が2個の場合、(b)及び(c)は光素子アレイ4が3個の場合、(d)は光素子アレイ4が6個の場合である。
【0053】
図7(a)に示すように、2個の光素子アレイ4は、それぞれの光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線が平行になるように配置されている。各光素子アレイ4に対応する2個のドライバIC5は、これらの2個の光素子アレイ4を挟むように配置される。
【0054】
図7(b)に示すように、3個の光素子アレイ4は、それぞれの光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線が三角形を形成するように配置されている。各光素子アレイ4に対応する3個のドライバIC5は、光素子アレイ4を取り囲むように配置されている。従って、実施の形態と同様に、3個の光素子アレイ4は、基板6の実装面6aにおける3個のドライバIC5の間に配置される。
【0055】
図7(c)に示すように、3個の光素子アレイ4のうち2個の光素子アレイ4は、それぞれの光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線が平行になるように配置されている。残りの1個の光素子アレイ4は、2個の光素子アレイ4の端部側でこれらに挟まれるように配置されている。残りの1個の光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線は、2個の光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線にそれぞれ直交している。各光素子アレイ4に対応する3個のドライバIC5は、光素子アレイ4を取り囲むように配置されている。
【0056】
図7(d)に示すように、6個の光素子アレイ4は、それぞれの光素子アレイ4の長手方向に沿った中心線が六角形を形成するように配置されている。各光素子アレイ4に対応する6個のドライバIC5は、光素子アレイ4を取り囲むように配置されている。従って、実施の形態と同様に、6個の光素子アレイ4は、基板6の実装面6aにおける6個のドライバIC5の間に配置される。
【0057】
レンズブロック3及び光ファイバ8は、
図7(a)〜(d)のそれぞれの場合における光素子アレイ4の配置に対応するように形成及び配置される。
【0058】
(変形例2)
図8は、
図6(c)の変形例2に係る断面図である。
【0059】
第1の溝部301Aの端面301Aaは、レンズ部31の上面に向かって傾斜して形成されている。第1の溝部301Aは、その端面301Aaと光ファイバ8の先端面8aとの間に隙間を有し、屈折率調整剤13がこの隙間に充填されている。屈折率調整剤13は、光ファイバ8のコア81の先端面81aと第1の溝部301Aの端面301Aaとの間の光路を充填するように満たされている。
【0060】
これらの変形例によっても、実施の形態について述べた(1)〜(9)の作用及び効果と同様の作用及び効果がある。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0062】
光素子アレイ4に実装する光素子40の数に制限はない。
【0063】
また、レンズブロック3は直方体である必要はなく、その形状に制限はない。
【0064】
また、複数の光素子40の全部又は一部は受光素子でもよい。この場合、ドライバICに替えて、例えばプリアンプIC等の信号を増幅させる半導体回路素子を用いることができる。
【0065】
また、嵌合部310は凸部ではなく凹部でもよいし、被嵌合部60は凹部ではなく凸部でもよい。
【0066】
また、レンズ部31は円盤状である必要はなく、多角形状でもよい。
【0067】
また、屈折率調整剤13は第2の溝部302(隙間)に必ずしも充填する必要はない。
【0068】
また、基板6は四角形状である必要はない。