【文献】
植村亮太、濱口裕介、足立馨、塚原安久,リチオ化によるp−メチルスチレンオリゴマーのマクロイニシエーター化と多分岐ポリマーの合成,高分子学会予稿集,日本,社団法人高分子学会,2008年 9月 9日,57巻2号,2428-2429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ金属原子への配位能を有する化合物が、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物である請求項3に記載の放射状共役ジエン重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法は、アルカリ金属原子および芳香環に、直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するアルカリ金属化芳香族化合物を重合開始剤として、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体混合物を重合するものである。
【0018】
本発明において用いられる重合開始剤は、アルカリ金属原子と芳香環とのそれぞれに直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するアルカリ金属化芳香族化合物である。本発明で重合開始剤として用いられるアルカリ金属化芳香族化合物が有するアルカリ金属原子は、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであることが好ましく、なかでも、リチウムが特に好ましい。また、アルカリ金属化芳香族化合物が有する芳香環も、芳香族性を有する共役環であれば特に限定されず、具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの電気的に中性な芳香族炭化水素環;シクロペンタジエニルアニオン環、インデニルアニオン環、フルオレニルアニオン環などの負電荷を有する芳香族炭化水素環;フラン環、チオフェン環などのヘテロ原子を含有する芳香環など挙げることができる。これらのなかでも、電気的に中性な芳香族炭化水素環を有するアルカリ金属化芳香族化合物が、その安定性や重合活性の観点から好ましく用いられる。
【0019】
また、本発明において重合開始剤として用いられるアルカリ金属化芳香族化合物は、アルカリ金属原子と芳香環とのそれぞれに直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するものであれば、その構造は特に限定されず、例えば、1つの芳香環に対して、アルカリ金属原子と直接結合した炭素原子が3個以上直接結合したものであっても、アルカリ金属原子と直接結合した炭素原子が1個以上直接結合した芳香環が、結合基を介して、3個以上結合したものであってもよい。
【0020】
1つの芳香環に対して、アルカリ金属原子と直接結合した炭素原子が3個以上直接結合してなるアルカリ金属化芳香族化合物としては、下記の一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0022】
一般式(1)中、R
1〜R
8は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、およびアルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基から選択される基を表し、R
1〜R
8の3個以上が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基である。また、mは0〜5の整数である。但し、mが2以上であるとき、一般式(1)で表される構造に関わらず、3個以上存在するベンゼン環は互いに任意の位置で縮合したものであってよい。
【0023】
アルカリ金属原子と直接結合した炭素原子が1個以上直接結合した芳香環が、結合基を介して、3個以上結合してなるアルカリ金属化芳香族化合物としては、下記の一般式(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0025】
一般式(2)中、R
9〜R
13は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、およびアルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基から選択される基を表し、R
9〜R
13の1個以上が、アルカリ金属原子がα位に結合した炭素数1〜10のアルカリ金属化アルキル基である。また、Xは任意の結合基を表し、nは3〜100の整数である。
【0026】
本発明において重合開始剤として用いられるアルカリ金属化芳香族化合物の合成方法は特に限定されないが、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させて得られたものが好適に用いられる。
【0027】
アルカリ金属化芳香族化合物を合成するために用いられる有機アルカリ金属化合物は、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するアルカリ金属化合物が好適に用いられ、その具体例としては、メチルリチウム、メチルナトリウム、メチルカリウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、エチルカリウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルカリウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ブチルナトリウム、n−ブチルカリウム、ペンチルリチウム、n−アミルリチウム、オクチルリチウム、フェニルリチウム、ナフチルリチウム、フェニルナトリウム、ナフチルナトリウムが挙げられる。
【0028】
アルカリ金属化芳香族化合物を合成するために、アルキル(またはアリール)カリウムやアルキル(またはアリール)ナトリウムを用いる場合は、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物と、アルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物とを混合することにより、目的とするカリウムまたはナトリウム化合物を得ても良い。このとき用いられるアルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物としては、t−ブトキシカリウムやt−ブトキシナトリウムが例示される。アルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物の使用量は、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物に対して、通常0.1〜5.0モル、好ましくは0.2〜3.0モル、より好ましくは0.3〜2.0モルである。
【0029】
アルカリ金属化芳香族化合物の合成に用いられ得る芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物としては、前述の一般式(1)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を得るために用いられ得る、下記の一般式(3)で表される芳香族化合物や、前述の一般式(2)で表されるアルカリ金属化芳香族化合物を得るために用いられ得る、下記の一般式(4)で表される芳香族化合物を例示することができる。
【0031】
一般式(3)中、R
14〜R
21は、それぞれ、水素原子、および炭素数1〜10のアルキル基から選択される基を表し、R
14〜R
21の3個以上が炭素数1〜10のアルキル基である。また、mは、0〜5の整数である。但し、mが2以上であるとき、一般式(3)で表される構造に関わらず、3個以上存在するベンゼン環は互いに任意の位置で縮合したものであってよい。
【0033】
一般式(4)中、R
22〜R
26は、それぞれ、水素原子、および炭素数1〜10のアルキル基から選択される基を表し、R
22〜R
26の1個以上が炭素数1〜10のアルキル基である。また、Xは任意の結合基を表し、nは、3〜100の整数である。
【0034】
一般式(3)で表される芳香族化合物の具体例としては、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼンなどの3個以上のアルキル基を有するベンゼン類;2,3,5−トリメチルナフタレン、1,4,5−トリメチルナフタレンなどの3個以上のアルキル基を有するナフタレン類などを挙げることができる。
【0035】
また、一般式(4)で表される芳香族化合物の具体例としては、o−メチルスチレンオリゴマー、m−メチルスチレンオリゴマー、p−メチルスチレンオリゴマー、p−エチルスチレンオリゴマーなどのベンゼン環上にアルキル基を有するスチレンの重合体などを挙げることができる。
【0036】
芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させる方法は特に限定されるものではないが、不活性雰囲気下、不活性溶媒中で反応させる方法が好ましく用いられる。用いられる不活性溶媒は、反応させる化合物を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などが挙げられる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に対する、有機アルカリ金属化合物の使用量も特に限定されるものではないが、芳香族化合物中の芳香環に直接結合した炭素原子1モルに対して、通常0.1〜100モル、好ましくは0.2〜50モル、より好ましくは0.3〜10モル、最も好ましくは0.3〜1.1モルである。この反応の反応時間、反応温度も特に限定されないが、反応時間は、通常1分〜10日、好ましくは1分〜5日の範囲であり、反応温度は、通常−50℃〜100℃の範囲である。
【0037】
また、芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、反応を促進させる目的で、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させてもよい。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物としては、ヘテロ原子を含有するルイス塩基化合物が好適に用いられ、なかでも、窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物が特に好適に用いられる。窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジメトキシベンゼン、ジメトキシエタン、ジグライム、エチレングリコールジブチルエーテルなどの鎖状エーテル化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物;ピリジン、ルチジン、1−メチルイミダゾールなどの含窒素複素環化合物;ビステトラヒドロフリルプロパンなどの分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、(−)−スパルテイン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンなどの分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物;ヘキサメチルホスホアミドなどの分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物;などが挙げられる。
【0038】
アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、特に限定されず、その配位能の強さに応じて決定すれば良い。例えば、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が弱い化合物である、鎖状エーテル化合物や分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは5〜50モル、より好ましくは10〜25モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、配位能が中程度である化合物である、分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物や含窒素複素環化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは1〜20モル、より好ましくは2〜10モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が強い化合物である、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物や分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物や分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.01〜2モル、より好ましくは0.01〜1.5モルの範囲である。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、反応が進行しなくなるおそれがある。
【0039】
芳香環に直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有する芳香族化合物の生成効率を特に良好とし、共役ジエン重合体中における放射状共役ジエン重合体の割合を高める観点からは、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を用い、その使用量を、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜0.4モルの範囲とすることが特に好ましい。
【0040】
芳香族化合物に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させる場合において、それぞれの添加順序は特に限定されない。但し、アルカリ金属化芳香族化合物の生成効率を特に良好とする観点からは、芳香族化合物および有機アルカリ金属化合物を共存させた後、その系にアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加する順序、または芳香族化合物およびアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させた後、その系に有機アルカリ金属化合物を添加する順序が好適である。このような順序で添加を行うことにより、有機アルカリ金属化合物とアルカリ金属原子への配位能を有する化合物との錯体形成による不溶化が防止され、アルカリ金属化芳香族化合物の生成効率が特に良好となる。
【0041】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法では、例えば以上のようにして得られる、アルカリ金属原子および芳香環に、直接結合した炭素原子を1分子中に3個以上有するアルカリ金属化芳香族化合物を重合開始剤として用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体混合物を重合する。なお、用語「単量体混合物」は、1種の共役ジエン化合物のみからなるものを含む概念である。本発明で単量体として用いられる共役ジエン化合物は、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法では、これらの共役ジエン化合物のなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンまたは1,3−ペンタジエンが特に好ましく用いられる。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0042】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法では、共役ジエン化合物に加えて、他の単量体を含む単量体混合物を用いて、共重合体を得ても良い。本発明で単量体として使用し得る、共役ジエン化合物以外の化合物としては、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどの芳香族ビニル化合物;メチルメタクリレート、メチルアクリレートなどのアクリル酸エステル化合物などを挙げることができる。用いる単量体混合物における、共役ジエン化合物以外の単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、通常50モル%以下であり、好ましくは45モル%以下である。単量体混合物中における共役ジエン化合物以外の単量体の含有量が多すぎると、得られる共役ジエン重合体が、共役ジエン重合体としての特性に劣るものとなるおそれがある。
【0043】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法において、2種以上の単量体を含む単量体混合物を用いて共重合体を得る場合の、共重合の様式は特に限定されず、ランダム状、ブロック状、テーパー状などのいずれであっても良い。
【0044】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法では、通常、重合反応がリビング性を伴って進行するので、重合開始剤として用いるアルカリ金属化芳香族化合物と単量体混合物との使用割合は、目的とする重合体の分子量に応じて決定すれば良いが、単量体混合物1モルに対して、アルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属の量が、通常0.000001〜0.1モル、好ましくは0.00001〜0.05モルとなる範囲で選択される。アルカリ金属化芳香族化合物の使用量が少なすぎると、得られる放射状共役ジエン重合体の分子量が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、重合反応が十分に進行しなかったりするおそれがある。一方、アルカリ金属化芳香族化合物の使用量が多すぎると、得られる放射状共役ジエン重合体の分子量が低くなりすぎて、ゴム材料として特性に劣るものとなるおそれがある。
【0045】
また、重合反応を行うに当っては、重合速度や得られる放射状共役ジエン重合体のミクロ構造を制御する目的で、重合反応系に、前述したようなアルカリ金属原子への配位能を有する化合物を添加してもよい。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、重合開始剤として用いるアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常0〜5モル、好ましくは0〜4モル、より好ましくは0〜2モルの範囲である。これらのアルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、重合反応を阻害するおそれがある。なお、重合開始剤として用いるアルカリ金属化芳香族化合物を調製する際に、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を用いた場合は、その化合物を含有する溶液をそのまま使用することもできる。
【0046】
特に低発熱性に優れる共役ジエン重合体組成物を得る観点からは、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物、分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物、および分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物を、重合開始剤として用いるアルカリ金属化合物(ここでいうアルカリ金属化合物は、アルカリ金属化芳香族化合物に限られず、反応系中に存在し、重合開始剤として働くアルカリ金属化合物全てを含むものである)中のアルカリ金属原子1モルに対して、0.02〜0.4モルの範囲で存在させることが好ましい。このようにすることで、適度なビニル結合含有量を有する放射状共役ジエン重合体が得られ、その結果として、特に低発熱性に優れる共役ジエン重合体組成物を得ることができる。
【0047】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法における重合様式は特に限定されず、例えば気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などを採用することができ、これらのなかでも溶液重合法を用いることが好ましい。
【0048】
溶液重合法を用いる場合、用いる溶媒は、重合反応において不活性であり、単量体混合物や重合触媒を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒を用いることが好ましい。具体的には、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を溶媒として用いると重合活性が高くなるので好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0049】
溶液重合法を用いる場合、重合溶液中の単量体混合物の濃度は、特に限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で選択される。溶液中の単量体混合物の濃度が低すぎると、放射状共役ジエン重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分間〜100時間の範囲である。
【0050】
本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法では、通常、重合反応がリビング性を伴って進行するので、重合反応系には、活性末端を有する重合体が存在することとなる。この活性末端を有する重合体には、アルコールや水などの反応停止剤を反応させても良いが、この活性末端と反応しうる任意の変性剤を反応させて、末端変性放射状共役ジエン重合体とすることが好ましい。このように末端変性放射状共役ジエン重合体を得ることにより、得られる放射状共役ジエン重合体を変性剤により改質することができ、例えば、シリカやカーボンブラックなどの充填剤に対する親和性を改良することができる。
【0051】
末端変性放射状共役ジエン重合体を得るために用いる変性剤は、重合体の活性末端と反応しうる変性剤であれば、特に限定されない。また、1分子中に、重合体の活性末端と反応しうる反応点を複数有する変性剤(カップリング剤)を用いて、カップリング反応を行うこともできる。
【0052】
本発明で用いられ得る変性剤としては、例えば、(a)イソシアナート化合物やイソチオシアナート化合物(以下「(a)成分」という)、(b)イソシアヌル酸誘導体や該誘導体対応のチオカルボニル含有化合物(以下「(b)成分」という)、(c)尿素化合物(以下「(c)成分」という)、(d)アミド化合物やおよび/またはイミド化合物(以下「(d)成分」という)、(e)N−アルキル置換オキサゾリジノン化合物(以下「(e)成分」という)、(f)ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物(以下「(f)成分」という)、(g)ラクタム化合物(以下「(g)成分」という)、(h)ケイ素化合物(以下「(h)成分」という)、(i)エステル化合物(以下「(i)成分」という)、(j)ケトン化合物(以下「(j)成分」という)、(k)スズ化合物(以下「(k)成分」という)などを挙げることができる。
【0053】
これらの変性剤のうち、(a)成分であるイソシアナート化合物またはイソチオシアナート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C−MDI)、フェニルイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ブチルイソシアナート、1,3,5−ベンゼントリイソシアナート、フェニルイソチオシアナート、フェニル−1,4−ジイソチオシアナートなどを挙げることができる。(b)成分であるイソシアヌル酸誘導体、該誘導体対応のチオカルボニル含有化合物の具体例としては、カルバミン酸メチル、N,N−ジエチルカルバミン酸メチルなどのカルバミン酸誘導体、イソシアヌル酸、N,N’,N’−トリメチルイソシアヌル酸などのイソシアヌル酸誘導体およびこれら誘導体に対応するチオカルボニル含有化合物などを挙げることができる。(c)成分である尿素化合物の具体例としては、N,N’−ジメチル尿素、N,N’−ジエチル尿素、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N−ジメチル−N’,N’−ジフェニル尿素などを挙げることができる。(d)成分であるアミド化合物あるいはイミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、アミノアセトアミド、N,N−ジメチル−N’,N’−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−エチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチル−N’−エチルアミノアセトアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、ピコリン酸アミド、N,N−ジメチルイソニコチンアミド、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’−テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N’,N’−テトラメチルオキサミド、2−フランカルボン酸アミド、N,N−ジメチル−2−フランカルボン酸アミド、キノリン−2−カルボン酸アミド、N−エチル−N−メチル−キノリンカルボン酸アミドなどのアミド化合物、コハク酸イミド、N−メチルコハクイミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミドなどのイミド化合物などを挙げることができる。(e)成分であるN−アルキル置換オキサゾリジノン化合物の具体例としては、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,1−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−ブチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノンなどを挙げることができる。(f)成分であるピリジル置換ケトン化合物あるいはピリジル置換ビニル化合物の具体例としては、メチル−2−ピリジルケトン、メチル−4−ピリジルケトン、プロピル−2−ピリジルケトン、ジ−4−ピリジルケトン、プロピル−3−ピリジルケトン、2−ベンゾイルピリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどを挙げることができる。(g)成分であるラクタム化合物の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、2−キノロン、N−メチル−キノロンなどを挙げることができる。
【0054】
これらの変性剤を使用する場合の使用量は、特に限定されないが、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、変性剤中の、イソシアナート基、イソチオシアナート基、カルボニル基、ビニル基、アルデヒド基などの官能基の量が、通常0.2〜10モル、好ましくは0.5〜5.0モルとなる範囲である。変性剤の使用量が少なすぎると、末端変性の効果が十分に得られないおそれがあり、一方、変性剤の使用量が多すぎると、得られる重合体中に未反応の変性剤が多く残留する結果、重合体に、臭気や物性低下などの悪影響を及ぼすおそれがある。
【0055】
また、変性剤として用いられ得る(h)成分であるケイ素化合物の具体例としては、ジブチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、トリフェノキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、下記一般式(5)で表されるポリオルガノシロキサンなどを挙げることができる。このケイ素化合物の使用量は、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、ケイ素化合物中の、重合体の活性末端と反応しうる基(ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、またはエポキシ基)の量が、通常0.05〜5モル、好ましくは0.1〜1.5モルとなる範囲である。
【0057】
一般式(5)中、R
27〜R
34は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選択される基を表す。Y
1およびY
4は、それぞれ、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選択される基を表す。Y
2は、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基から選択される基を表す。Y
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基である。pは2〜200の整数、qは0〜200の整数、rは0〜200の整数である。
【0058】
変性剤として用いられ得る(i)成分であるエステル化合物の具体例としては、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチルなどが挙げられる。これらのエステル化合物の使用量は、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、通常0.05〜1.5モルの範囲である。変性剤として用いられ得る(j)成分であるケトン化合物の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ニコチンアミド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられ、これらの使用量は、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、通常0.05〜5モルの範囲である。変性剤として用いられ得る(k)成分であるスズ化合物の具体例としては、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロメチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、ジクロロジオクチルスズ、1,2−ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロスタニルエタン)、1,4−ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリスオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリスラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート、ジブチルスズビスステアレート、ジブチルスズビスラウレートなどを挙げることができる。これらの使用量は、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、通常0.05〜5モルの範囲である。
【0059】
末端変性放射状共役ジエン重合体を得るために用いる変性剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。また、重合体の活性末端と、変性剤との反応効率を高める目的で、重合反応終了後、重合反応系にさらに、共役ジエン化合物を、重合開始剤として使用したアルカリ金属化芳香族化合物中のアルカリ金属原子1モル当たり、0.5〜500モル、好ましくは1〜200モル添加してから末端変性反応を行なってもよい。また、変性反応の温度は特に限定されないが、通常0〜120℃の範囲である。
【0060】
以上のようにして得られる放射状共役ジエン重合体の溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合反応後または変性反応後の重合体は、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することができる。
【0061】
以上のような本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法によれば、重合開始剤として用いるアルカリ金属化芳香族化合物が、3個以上有するアルカリ金属原子のそれぞれを重合開始点として、共役ジエン重合体鎖がリビング重合性を伴って成長するので、制御良く放射状の構造を有する共役ジエン重合体を得ることが可能となり、ほぼ完全に全ての重合体を分岐状の構造とすることも可能である。但し、本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法では、芳香族化合物のアルカリ金属化の度合いを制御することにより、放射状共役ジエン重合体と直鎖状共役ジエン重合体とが混在する重合体混合物を得ることも可能である。この重合体混合物における、放射状共役ジエン重合体(すなわち、3分岐以上の共役ジエン重合体)の割合は、特に限定されないが、放射状共役ジエン重合体と直鎖状共役ジエン重合体との合計量に対する、放射状共役ジエン重合体量の割合として、通常、20〜100重量%であり、好ましくは、30〜100重量%である。このような割合で放射状共役ジエン重合体が存在することにより、共役ジエン重合体の加工性や充填剤などとの親和性が特に良好となる。また、この重合体混合物の分子量も特に限定されず、用途に応じて決定すれば良いが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによりポリスチレン換算値として求められる数平均分子量(Mn)として、通常、500〜1,000,000の範囲で選択される。また、放射状共役ジエン重合体のミクロ構造も特に限定されず、放射状共役ジエン重合体の共役ジエン単位部分におけるビニル結合含有量は、通常1.0〜80モル%であり、好ましくは3.0〜75モル%である。但し、特に低発熱性に優れる共役ジエン重合体組成物を得る観点からは、放射状共役ジエン重合体の共役ジエン単位部分におけるビニル結合含有量は、5.0〜30モル%であることが特に好ましい。
【0062】
本発明によって得られる放射状共役ジエン重合体は、多分岐構造を有し、場合によっては末端変性重合体を含むので、シリカやカーボンブラックなどの充填剤や、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)などのその他のゴムと混合しやすく、共役ジエン重合体組成物を容易に製造できる。さらには、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合することも容易にできる。
【0063】
本発明によって得られる放射状共役ジエン重合体は、広範な用途に使用することができる。例えば、シール剤、封止材、接着剤、粘着剤などの粘接着剤用途への利用;熱可塑性エラストマー用途への利用;トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用;ホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品などのゴム製品への利用;耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの樹脂強化ゴムとして利用などが可能になる。
【0064】
本発明によって得られる放射状共役ジエン重合体は、充填剤を配合した組成物として用いることにより、特に耐摩耗性や低発熱性に優れた重合体組成物とすることができる。すなわち、本発明の重合体組成物は、本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法によって得られる放射状共役ジエン重合体と、充填剤とを含んでなるものである。用いる充填剤は、特に限定されないが、シリカおよびカーボンブラックから選択される少なくとも1種の充填剤が好適である。
【0065】
シリカとしては、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましく用いられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m
2/g、より好ましくは80〜220m
2/g、特に好ましくは100〜170m
2/gである。また、シリカのpHは、pH7未満であることが好ましく、pH5〜6.9であることがより好ましい。
【0066】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。カーボンブラックを用いる場合、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、T−HS、T−NS、MAF、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
本発明の重合体組成物における充填剤の配合量は、特に限定されないが、重合体組成物中の重合体成分100重量部に対して、通常5〜200重量部であり、好ましくは、20〜150重量部である。
【0068】
本発明の重合体組成物には、本発明によって得られる放射状共役ジエン重合体以外のその他の重合体を配合してもよい。その他の重合体としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのゴム質重合体が挙げられる。なかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましく用いられる。これらの重合体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
重合体に充填剤を添加する方法は特に限定されず、固形の重合体に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や重合体の溶液に添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0070】
本発明の重合体組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、水酸化アルミニウムなどの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0071】
架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、重合体組成物の重合体成分100重量部に対して、好ましくは1.6〜5.0重量部、より好ましくは1.7〜4.0重量部、特に好ましくは1.9〜3.0重量部である。
【0072】
架橋促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、重合体組成物の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1.0〜4.0重量部である。
【0073】
架橋活性化剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、重合体組成物の重合体成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0074】
本発明の重合体組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、例えば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と重合体成分を混練後、その混練物に架橋剤および架橋促進剤を混合して目的の組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と重合体成分の混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。混練物と架橋剤および架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0075】
本発明の重合体組成物は、例えばタイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料や、ホース、ベルト、マット、防振ゴムその他の各種工業用品の材料、また、接着剤、樹脂の耐衝撃性改良剤、樹脂フィルム緩衝剤、靴底、ゴム靴、ゴルフボール、玩具として用いることができる。なかでも、本発明の重合体組成物は耐摩耗性と低発熱性に優れることから、低燃費タイヤの材料として特に好適に用いることができる。
【0076】
本発明の重合体組成物を用いてタイヤなどのゴム製品(架橋物)を構成する場合の架橋および成形方法は、特に限定されず、架橋物の形状、大きさなどに応じて選択すればよい。金型中に架橋剤を配合した重合体組成物を充填して加熱することにより成形と同時に架橋してもよく、架橋剤を配合した重合体組成物を予め成形した後、それを加熱して架橋してもよい。架橋温度は、好ましくは120〜200℃、より好ましくは140〜180℃であり、架橋時間は、通常、1〜120分程度である。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0078】
各種の測定については、以下の方法で行った。
〔重合体の分子量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的には、以下の条件で測定した。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8220」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計(東ソー社製、商品名「RI−8220」)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔重合体のミクロ構造〕
1H−NMRにより測定した。
〔低発熱性〕
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、商品名「ARES」)を用い、2.5%ねじれ、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性については、基準サンプルを100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
〔耐摩耗性〕
上島製作所社製FPS摩耗試験機を用い、荷重1kgf、スリップ率15%で測定した。この特性については、基準サンプルを100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、耐摩耗性に優れる。
【0079】
〔参考例1(p−メチルスチレンオリゴマーの合成)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、シクロヘキサン48.0部とp−メチルスチレン1.13部を加えた。次に攪拌しながら、sec−ブチルリチウム0.0615部を加え、重合温度40℃にて攪拌しながら1時間重合した。少量のメタノールにて重合反応を停止し、純水にて触媒残渣を抽出洗浄した後に溶媒を留去することで、目的のp−メチルスチレンのオリゴマー1.12部を得た。得られたp−メチルスチレンのオリゴマーのMnは1,280、Mwは1,440、分子量分布(Mw/Mn)は1.13、Mnの値から求めた平均重合度は10.8であった。
【0080】
〔実施例1(p−メチルスチレンオリゴマーのリチオ化、およびリチオ化されたp−メチルスチレンオリゴマーによるイソプレンの重合)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、シクロヘキサン2.81部、参考例1で得たp−メチルスチレンのオリゴマー0.284部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.279部を加えた。次に攪拌しながら、sec−ブチルリチウム0.154部(sec−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モル)を加え、反応温度20℃にて40分間攪拌しながら反応した。次に、ベンゼン18.7部とイソプレン3.00部とを加え、重合温度40℃にて攪拌しながら2時間重合した。少量のメタノールにて重合反応を停止し、純水にて触媒残渣を抽出洗浄した後に溶媒を留去することで、目的のポリイソプレン3.26部を得た。得られたポリイソプレンのMnは14,800、Mwは18,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.26、ビニル結合含有量は77モル%であった。用いたsec−ブチルリチウムの量と実測したMnに基づいて計算される、p−メチルスチレンのオリゴマー1分子からのポリイソプレンの平均の分岐数は10.8(分枝1本当りのMn=1,300)であることから、得られたポリイソプレンのほぼ100%が3分岐体以上の放射状重合体であると推定される。
【0081】
〔参考例2(1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化とリチオ化率の測定1)〕
窒素雰囲気下、ガラス反応容器に、シクロヘキサン12部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.144部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.460部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.230部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて3日間放置させ反応した。次に、反応により得られたリチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化率を測定する目的で、得られた反応液をトリメチルシリルクロライドを過剰量加えたガラス容器に数滴加え、30分間反応させた。水道水にて触媒残渣を抽出洗浄した後に溶媒を留去することで、黄色いオイル状の液体を得た。この黄色いオイル状の液体につき、ガスクロマトグラフ質量分析測定(GC−MS)を行った。結果は以下の通りであった。EI−MS,m/z=120(M+)(2%),m/z=192(M+)(13%),m/z=264(M+)(57%),m/z=336(M+)(28%)。Mw=120(2%)、Mw=192(13%)、Mw=264(57%)、Mw=336(28%)。次に、この黄色いオイル状の液体につき
1H−NMR測定を行った。結果は以下の通りであった。
1H-NMR(CDCl
3) 6.83(s,3H,Ph−H),6.73(s,1H,Ph−H),6.64(s,2H,Ph−H),6.55(s,2H,Ph−H),6.47(s,1H,Ph−H),6.39(s,3H,Ph−H),2.30(s,9H,Ph−CH
3),2.28(s,6H,Ph−CH
3),2.02(s,2H,Ph−CH
2−SiMe
3),2.26(s,3H,Ph−CH
3),2.00(s,4H,Ph−CH
2−SiMe
3),1.98(s,6H,Ph−CH
2−SiMe
3)。さらに、
1H−detected multi−bond heteronuclear multiple quantum coherence spectrum−NMR(HMBC−NMR)測定により、
1H-NMRにおけるそれぞれのシグナルについて帰属を行った。結果は以下の通りであった。無置換体(1,3,5−トリメチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3) 6.83(s,3H,Ph−H),2.30(s,9H,Ph−CH
3)、1置換体(1−トリメチルシリルメチル−3,5−ジメチルベンゼン)(
1H-NMR(CDCl
3) 6.73(s,1H,Ph−H),6.64(s,2H,Ph−H),2.28(s,6H,Ph−CH
3),2.02(s,2H,Ph−CH
2−SiMe
3)、2置換体(1,3−ビス(トリメチルシリルメチル)−5−メチルベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3) 6.55(s,2H,Ph−H),6.47(s,1H,Ph−H),2.26(s,3H,Ph−CH
3),2.00(s,4H,Ph−CH
2−SiMe
3)、3置換体(1,3,5−トリス(トリメチルシリルメチル)ベンゼン)
1H-NMR(CDCl
3) 6.39(s,3H,Ph−H),1.98(s,6H,Ph−CH
2−SiMe
3)。以上の
1H−,HMBC−NMR測定による帰属に基づいて、GC−MSで得られた分子イオンピークを以下のように帰属した。EI−MS,m/z=120(M+)は無置換体(1,3,5−トリメチルベンゼン)),m/z=192(M+)は1置換体(1−トリメチルシリルメチル−3,5−ジメチルベンゼン),m/z=264(M+)は2置換体(1,3−ビス(トリメチルシリルメチル)−5−メチルベンゼン),m/z=336(M+)は3置換体(1,3,5−トリス(トリメチルシリルメチル)ベンゼン)。以上より、無置換体:1置換体:2置換体:3置換体の割合(モル比)は、2:13:57:28と求められ、1,3,5−トリメチルベンゼンのメチル基のリチオ化率は70%であり、1,3,5−トリメチルベンゼン1分子に導入された平均リチウム原子数は2.11である。
【0082】
〔実施例2(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるイソプレンの重合、および末端変性反応1)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、シクロヘキサン12部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.144部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.460部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.230部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて3時間撹拌した後、3日間放置させ反応した。次に、イソプレン3.68部を加え、重合温度40℃にて攪拌しながら4時間重合した。次に、n−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリイソプレン4.00部を得た。得られた末端変性されたポリイソプレンは、GPC測定において、Mnが2,100、Mwが2,500、分子量分布(Mw/Mn)が1.19、の溶出成分(ピーク面積比35.2%)、およびMnが5,900、Mwが6,300、分子量分布(Mw/Mn)が1.07の溶出成分(ピーク面積比64.8%)からなるものであり、全体としてMnが3,600、Mwが5,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.39のものであった。また、この末端変性されたポリイソプレンのビニル結合含有量は70モル%であった。さらに、この末端変性されたポリイソプレンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認され、1,3,5−トリメチルベンゼン由来のピークと導入されたトリメチルシリル基由来のピークから計算されるポリイソプレンの末端官能化数(すなわち分岐数)は1,3,5−トリメチルベンゼン1分子あたり2.03個であった。この値は、参考例2の1,3,5−トリメチルベンゼン1分子に導入された平均リチウム原子数2.11とよく一致していることから、得られた末端変性されたポリイソプレンにおける3分岐体の割合は28モル%であると推定される。
【0083】
〔実施例3(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるイソプレンの重合、および末端変性反応2)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、ノルマルヘキサン0.138部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.014部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.460部を加えた。次に、n−ブチルリチウム0.230部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて4日間放置させ反応した。次に、シクロヘキサン12部とイソプレン3.68部を加え、重合温度40℃にて攪拌しながら4時間重合した。次に、n−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリイソプレン3.46部を得た。得られた末端変性されたポリイソプレンは、GPC測定において、Mnが17,500、Mwが20,200、分子量分布(Mw/Mn)が1.16の溶出成分(ピーク面積比57.4%)、およびMnが39,000、Mwが40,500、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比42.6%)からなるものであり、全体としてMnが22,900、Mwが29,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.26のものであった。また、この末端変性されたポリイソプレンのビニル結合含有量は68モル%であった。さらに、この末端変性されたポリイソプレンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認された。
【0084】
〔実施例4(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるイソプレンの重合、および末端変性反応3)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、ノルマルヘキサン0.028部、1,3,5−トリメチルベンゼン2.88×10
−3部、およびテトラメチルエチレンジアミン9.20×10
−3部を加えた。次に、n−ブチルリチウム4.60×10
−3部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて4日間放置させ反応した。次に、シクロヘキサン12部とイソプレン3.68部を加え、重合温度40℃にて攪拌しながら4時間重合した。次に、n−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリイソプレン3.52部を得た。得られた末端変性されたポリイソプレンは、GPC測定において、Mnが89,500、Mwが97,800、分子量分布(Mw/Mn)が1.09の溶出成分(ピーク面積比70.8%)、およびMnが188,400、Mwが195,100、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比29.2%)からなるものであり、全体としてMnが105,800、Mwが126,200、分子量分布(Mw/Mn)が1.19のものであった。また、この末端変性されたポリイソプレンのビニル結合含有量は70モル%であった。さらに、この末端変性されたポリイソプレンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認された。
【0085】
〔実施例5(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるイソプレンの重合、および末端変性反応4)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、ノルマルヘキサン0.014部、1,3,5−トリメチルベンゼン1.44×10
−3部、およびテトラメチルエチレンジアミン9.20×10
−3部を加えた。次に、n−ブチルリチウム2.30×10
−3部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて4日間放置させ反応した。次に、シクロヘキサン12部とイソプレン3.68部を加え、重合温度40℃にて攪拌しながら4時間重合した。次に、n−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリイソプレン3.56部を得た。得られた末端変性されたポリイソプレンは、GPC測定において、Mnが156,800、Mwが177,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.13の溶出成分(ピーク面積比77.7%)、およびMnが359,800、Mwが371,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.03の溶出成分(ピーク面積比22.3%)からなるものであり、全体としてMnが179,400、Mwが220,500、分子量分布(Mw/Mn)が1.23のものであった。また、この末端変性されたポリイソプレンのビニル結合含有量は72モル%であった。さらに、この末端変性されたポリイソプレンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認された。
【0086】
〔参考例3〜16(1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化とリチオ化率の測定)〕
テトラメチルエチレンジアミンの使用量、およびn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンとの反応時間を表1に示すように変更したこと以外は、参考例2と同様にして、1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化を行い、無置換体〜3置換体の割合を測定した。但し、参考例10および11については、テトラメチルエチレンジアミンに代えてビステトラヒドロフリルプロパンを表1に示す割合で用いた。また、参考例12〜16については、n−ブチルリチウムに代えてsec−ブチルリチウムを表1に示す割合で用いた。それぞれの例において測定した無置換体〜3置換体の割合は、表1に示した。表1から分かるように、有機アルカリ金属化合物(n−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウム)中のアルカリ金属原子1モルに対して、テトラメチルエチレンジアミンまたはビステトラヒドロフリルプロパン0.33モルを用いた場合に、3置換体の割合が最も高くなることが分かる。
【0087】
【表1】
【0088】
〔実施例6(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるブタジエンの重合、および末端変性反応1)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、ノルマルヘキサン0.55部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.056部およびテトラメチルエチレンジアミン0.184部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.092部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて3時間撹拌した後、4日間放置させ反応した。次に、シクロヘキサン900部とブタジエン100部を加え、重合温度60℃にて攪拌しながら3時間重合した。次に、n−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリブタジエン100部を得た。得られた末端変性されたポリブタジエンは、GPC測定において、Mnが1,300,000、Mwが1,350,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比51.3%)、およびMnが627,000、Mwが681,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.07の溶出成分(ピーク面積比48.7%)からなるものであり、全体としてMnが855,000、Mwが1,020,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.20のものであった。また、この末端変性されたポリブタジエンのビニル結合含有量は53モル%であった。さらに、この末端変性されたポリブタジエンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認された。
【0089】
〔実施例7(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるブタジエンの重合、および末端変性反応2)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、ノルマルヘキサン0.55部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.056部およびテトラメチルエチレンジアミン0.055部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.092部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン0.33モル)を加え、反応温度20℃にて3時間撹拌した後、4日間放置させ反応した。次に、シクロヘキサン900部とブタジエン100部を加え、重合温度60℃にて攪拌しながら3時間重合した。次に、n−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリブタジエン100部を得た。得られた末端変性されたポリブタジエンは、GPC測定において、Mnが1,760,000、Mwが1,840,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比63.9%)、およびMnが918,000、Mwが986,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.07の溶出成分(ピーク面積比36.1%)からなるものであり、全体としてMnが1,321,000、Mwが1,530,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.16のものであった。また、この末端変性されたポリブタジエンのビニル結合含有量は25モル%であった。さらに、この末端変性されたポリブタジエンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認された。
【0090】
〔実施例8(リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンによるブタジエンの重合、および末端変性反応3))〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、ノルマルヘキサン0.138部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.014部およびテトラメチルエチレンジアミン0.0021部を加えた。次に攪拌しながら、sec−ブチルリチウム0.023部(sec−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン0.05モル)を加え、反応温度20℃にて3時間撹拌した後、1日間放置させ反応した。次に、シクロヘキサン12部を加え、その後、ブタジエン0.1部を3時間かけて添加しながら、重合温度60℃にて攪拌しながら重合を行った。そして、さらに、ブタジエン3.58部を添加して、重合温度60℃にて攪拌しながら1時間重合した。次に、sec−ブチルリチウムに対して過剰量のトリメチルクロロシランを添加することにより、末端変性反応を行った。溶媒を留去することで、目的の末端変性されたポリブタジエン3.58部を得た。得られた末端変性されたポリブタジエンは、GPC測定において、Mnが16,200、Mwが19,400、分子量分布(Mw/Mn)が1.19の溶出成分(ピーク面積比55.3%)、およびMnが43,600、Mwが45,800、分子量分布(Mw/Mn)が1.05の溶出成分(ピーク面積比44.7%)からなるものであり、全体としてMnが22,500、Mwが31,200、分子量分布(Mw/Mn)が1.39のものであった。また、この末端変性されたポリブタジエンのビニル結合含有量は10モル%であった。さらに、この末端変性されたポリブタジエンについて、
1H-NMRを測定したところ、トリメチルシリル基が導入されていることが確認された。
【0091】
〔実施例9(p−メチルスチレンオリゴマーのポタジエーション、およびポタジエーションされたp−メチルスチレンオリゴマーによるイソプレンの重合)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、シクロヘキサン2.81部と参考例1で得たp−メチルスチレンのオリゴマー0.284部とカリウムターシャリブトキシド0.402部を加えた。次に攪拌しながら、sec−ブチルリチウム0.230部を加え、反応温度20℃にて30分間攪拌しながら反応した。次に、ポタジエーションされて難溶化したp−メチルスチレンオリゴマーを、濾過により回収し、溶存している未反応成分と分離した。回収したポタジエーションされたp−メチルスチレンオリゴマーは、窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器中で、ベンゼン18.7部に溶解して、さらにイソプレン3.354部を加え、重合温度20℃にて攪拌しながら12時間重合した。少量のメタノールにて重合反応を停止し、純水にて触媒残渣を抽出洗浄した後に溶媒を留去することで、目的のポリイソプレン3.62部を得た。得られたポリイソプレンのMnは25,500、Mwは44,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.76、ビニル結合含有量は32モル%であった。用いたsec−ブチルリチウムの量と実測したMnに基づいて計算される、ポリイソプレンの平均の分岐数は27.3(分枝1本当りのMn=935)であることから、得られたポリイソプレンのほぼ100%が3分岐体以上の放射状重合体であると推定される。
【0092】
〔実施例10(末端変性放射状ポリブタジエンの合成、および重合体組成物の製造1)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、シクロヘキサン48部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.722部およびテトラメチルエチレンジアミン2.302部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム1.152部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.1モル)を加え、反応温度20℃にて3時間攪拌した後、4日間放置して反応させることにより、リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンの溶液52.176部を得た。次いで、窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン200部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.835部とを仕込んだ後、前記リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンの溶液52.176部を添加し(反応系中に存在するテトラメチルエチレンジアミンの量は、1,3,5−トリメチルベンゼンのリチオ化に用いたn−ブチルリチウム1モル当たり1.5モルである)、60℃で重合を開始した。120分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、テトラメトキシシラン0.610部を添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.128部を添加して末端変性放射状ポリブタジエンを含有する溶液を得た。重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の末端変性放射状ポリブタジエン(A)を得た。得られた末端変性放射状ポリブタジエン(A)は、GPC測定において、Mnが190,000、Mwが210,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.10の溶出成分(ピーク面積比18.6%)、Mnが349,000、Mwが353,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.01の溶出成分(ピーク面積比25.4%)、およびMnが636,000、Mwが664,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.04の溶出成分(ピーク面積比56.0%)からなるものであり、全体としてMnが288,000、Mwが479,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.67のものであった。また、この末端変性放射状ポリブタジエン(A)のビニル結合含有量は72.4モル%であった。さらに、この末端変性放射状ポリブタジエン(A)について、
1H-NMRを測定したところ、トリメトキシシリル基が導入されていることが確認された。
【0093】
次に、容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、末端変性放射状ポリブタジエン(A)100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)40部とシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)4.3部を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練後、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「フッコール エラミック30」)10部、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1165MP」)14部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シースト6」)6部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアン(大内新興社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混錬終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.6部および架橋促進剤(N−ターシャリブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド1.4部とジフェニルグアニジン1.4部との混合物)とを混練した後、シート状の重合体組成物を取り出した。この重合体組成物を、160℃で30分間プレス架橋して試験片を作製し、この試験片について、耐摩耗性および低発熱性の評価を行なった。表2にその結果を示す。なお、これらの評価は、後述する比較例の重合体組成物を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0094】
〔実施例11(末端変性放射状ポリブタジエンの合成、および重合体組成物の製造2)〕
窒素雰囲気下、磁気攪拌子を入れたガラス反応容器に、シクロヘキサン48部、1,3,5−トリメチルベンゼン0.722部およびテトラメチルエチレンジアミン0.105部を加えた。次に攪拌しながら、sec−ブチルリチウム1.152部(sec−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン0.05モル)を加え、反応温度20℃にて3時間撹拌した後、1日間放置して反応させることにより、リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンの溶液49.979部を得た。次いで、窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部および前記リチオ化された1,3,5−トリメチルベンゼンの溶液5.56部を仕込み、系の温度を60℃とした後、1,3−ブタジエン5部を1時間かけて添加した。次いで、1,3−ブタジエン195部をさらに添加して、60℃で重合を開始した。120分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、テトラメトキシシラン0.610部を添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.128部を添加して末端変性放射状ポリブタジエンを含有する溶液を得た。重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の末端変性放射状ポリブタジエン(B)を得た。得られた末端変性放射状ポリブタジエン(B)は、GPC測定において、Mnが178,000、Mwが233,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.31の溶出成分(ピーク面積比20.6%)、Mnが338,000、Mwが359,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.06の溶出成分(ピーク面積比28.5%)、およびMnが624,000、Mwが676,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.08の溶出成分(ピーク面積比50.9%)からなるものであり、全体としてMnが345,000、Mwが494,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.43のものであった。また、この末端変性放射状ポリブタジエン(B)のビニル結合含有量は9.8モル%であった。さらに、この末端変性放射状ポリブタジエン(B)について、
1H-NMRを測定したところ、トリメトキシシリル基が導入されていることが確認された。
【0095】
次に、末端変性放射状ポリブタジエン(A)に代えて、末端変性放射状ポリブタジエン(B)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、重合体組成物の製造と試験片の作製・評価を行った。表2にその結果を示す。なお、これらの評価は、後述する比較例の重合体組成物を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0096】
〔比較例〕
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4,000部、1,3−ブタジエン500部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.968部とを仕込んだ後、n−ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3−ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を加え、次にn−ブチルリチウム0.355部を添加し、40℃で重合を開始した。重合を開始してから15分経過後、1,3−ブタジエン500部を60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、GPC測定および
1H-NMR測定を行った。その結果、得られた重合体(ポリブタジエン)のMnは286,000、Mwは306,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、ビニル結合含有量は77.3モル%であった。残りの重合溶液には、式(6)で表される(但し、式(6)における繰り返し数は全分子における平均値であり、共重合様式はランダムである)ポリオルガノシロキサン1.217部を濃度20%のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた後、重合停止剤としてメタノール0.356部を添加して、末端変性ポリブタジエン(C)を含有する溶液を得た。重合体成分100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1520」)0.15部を溶液に添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の末端変性ポリブタジエン(C)を得た。
【0097】
【化6】
【0098】
次に、末端変性放射状ポリブタジエン(A)に代えて、末端変性ポリブタジエン(C)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、重合体組成物の製造と試験片の作製・評価を行った。この重合体組成物についての耐摩耗性および低発熱性の評価結果は、表2に示す通り、指数評価の基準(指数100)とした。
【0099】
【表2】
【0100】
表2から分かるように、本発明の放射状共役ジエン重合体の製造方法によって得られる放射状共役ジエン重合体は、従来の手法により末端変性した共役ジエン重合体に比して、耐摩耗性と低発熱性に優れる。