特許第5843204号(P5843204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843204
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】蛍光プローブ
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20151217BHJP
   C07F 7/30 20060101ALI20151217BHJP
   C07C 211/52 20060101ALI20151217BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20151217BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20151217BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   C07F7/08 BCSP
   C07F7/30
   C07C211/52
   C07F7/10
   C09K11/06
   G01N31/22 122
【請求項の数】20
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2012-553771(P2012-553771)
(86)(22)【出願日】2012年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2012051122
(87)【国際公開番号】WO2012099218
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-9577(P2011-9577)
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-33395(P2011-33395)
(32)【優先日】2011年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度 独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】長野 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】花岡 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】小出 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】江川 尭寛
(72)【発明者】
【氏名】平林 和久
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/083064(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/126077(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/055912(WO,A1)
【文献】 特許第5526124(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第1810812(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/08
C07C 211/52
C09K 11/06
G01N 31/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし5個の同一又は異なる一価の置換基を示し;R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示し;R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R8は水酸基又はジアルコキシボラニル基を示し;Xは珪素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示す)で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
Xが珪素原子又はゲルマニウム原子であり、R6及びR7が共に水素原子であるか、共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子である請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
R1が水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の一価の置換基(該置換基は炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルケニル基、炭素数1〜6個のアルキニル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれる)であり、R2及びR3がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子であり;R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基であり、R8が水酸基である請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
蛍光プローブの製造に用いるための請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
下記の一般式(II):
【化2】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは請求項1における定義と同義であり、YはOR11(R11は水素原子、糖加水分解酵素により切断される糖化合物の残基、又は活性酸素種により切断されるp-アミノフェニル基若しくはp-ヒドロキシフェニル基を示す)又はジアルコキシボラニル基を示す〕で表される化合物又はその塩。
【請求項6】
Xが珪素原子又はゲルマニウム原子であり、R6及びR7が共に水素原子であるか、共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子である請求項5に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
R1が水素原子であるか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の一価の置換基(該置換基は炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれる)であり、R2及びR3がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子であり;R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基であり;YがOR11(R11糖加水分解酵素により切断される糖化合物の残基である)である請求項5又は6に記載の化合物又はその塩。
【請求項8】
YがOR11(R11糖加水分解酵素により切断される糖化合物の残基である)である請求項5ないし7のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【請求項9】
R11β-ガラクトシダーゼにより切断されるβ−ガラクトシル基である請求項8に記載の化合物又はその塩。
【請求項10】
請求項5に記載の一般式(II)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは請求項5における定義と同義であり、Yが水酸基を示す)で表される化合物又はその塩を含むpH測定用の蛍光プローブ。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の化合物又はその塩を含む酵素測定用の蛍光プローブ。
【請求項12】
請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、
(a)3-ハロゲン化アニリンとアリルハライドから製造される3-ハロゲン化-N,N-ジアリルアニリンとホルムアルデヒドから下記の一般式(III):
【化3】
(式中、R12はハロゲン原子を示し、R2、R3、R6、及びR7請求項1における定義と同義である)で表される化合物を製造する工程、
(b)上記の一般式(III)で表される化合物とX(Halo)2(R4)(R5)(Haloは塩素原子又は臭素原子を示し、X、R4、及びR5請求項1における定義と同義である)とを反応させた後、酸化反応によって下記のN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-X-キサントンを製造する工程、
【化4】
(c)N,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-X-キサントンから脱アリル化を行い下記のジアミノ-X-キサントンを製造する工程、
【化5】
(d)ジアミノ-X-キサントンのアミノ基を水酸基に変換して下記のジヒドロキシ-X-キサントンを製造する工程、
【化6】
(e)ジヒドロキシ-X-キサントンの水酸基に保護基を導入し、下記の一般式(IV):
【化7】
(式中、R13はフェノール性水酸基の保護基又はジアルコキシボラニル基を示す)で表される化合物を製造する工程、及び
(f)上記の一般式(IV)で表される化合物とハロゲン化ベンゼン誘導体から上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を製造する工程、
を含む製造方法。
【請求項13】
工程(a)においてR6及びR7が共に水素原子である化合物を出発原料として用い、工程(d)の後に塩素化剤又はフッ素化剤と反応させることによりR6及びR7が共に塩素原子であるか、又はR6及びR7が共にフッ素原子である化合物を製造し、この化合物を原料化合物として工程(e)及び(f)を行うことにより一般式(I)においてR6及びR7が共に塩素原子であるか、又はR6及びR7が共にフッ素原子である化合物を製造する工程を含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項12の工程(d)に記載されたジヒドロキシ-X-キサントン化合物(ただしR6及びR7が共に水素原子である)を塩素化剤又はフッ素化剤と反応させることによりR6及びR7が共に塩素原子であるか、又はR6及びR7が共にフッ素原子であるジヒドロキシ-X-キサントン化合物を製造する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物(ただし、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基である)又はその塩の製造方法であって、下記の工程:
(a)3-ハロゲン化アニリンとアリルハライドから製造される3-ハロゲン化-N,N-ジアリルアニリンとホルムアルデヒドから下記の一般式(IIIa):
【化8】
(式中、R12はハロゲン原子を示す)で表される化合物を製造する工程、
(b)上記の一般式(IIIa)で表される化合物とジクロロジメチルシランとを反応させ後、酸化反応によって下記のN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントンを製造する工程、
【化9】
(c)N,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントンから脱アリル化を行い下記のジアミノ-Si-キサントンを製造する工程、
【化10】
(d)ジアミノ-Si-キサントンのアミノ基を水酸基に変換して下記のジヒドロキシ-Si-キサントンを製造する工程、
【化11】
(e)ジヒドロキシ-Si-キサントンの水酸基に保護基を導入し、下記の一般式(IVa):
【化12】
(式中、R13はtert-ブチルジメチルシリル基を示す)で表される化合物を製造する工程、及び
(f)上記の一般式(IVa)で表される化合物とハロゲン化ベンゼン誘導体から上記の一般式(I)で表されるR2及びR3が水素原子である化合物又はその塩を製造する工程
を含む方法。
【請求項16】
下記の一般式(III):
【化13】
(式中、R2、R3、R6及びR7は請求項1における定義と同義であり、R12はハロゲン原子を示す)
で表される化合物又はその塩。
【請求項17】
下記の式:
【化14】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは請求項1における定義と同義である)
で表されるN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-X-キサントン化合物又はその塩。
【請求項18】
下記の式:
【化15】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは請求項1における定義と同義である)
で表されるジアミノ-X-キサントン化合物又はその塩。
【請求項19】
下記の式:
【化16】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは請求項1における定義と同義である)
ジヒドロキシ-X-キサントン化合物又はその塩。
【請求項20】
下記の一般式(IV):
【化17】
(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びXは請求項1における定義と同義であり、R13はtert-ブチルジメチルシリル基を示す)
で表される化合物又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な蛍光団を有する蛍光プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルオレセインは1871年に報告された分子であり、高い水溶性、高い蛍光量子収率を有することからpH指示薬やラベル化色素として広く用いられてきた。また、フルオレセインを母核としたカルシウムプローブが開発されて以来、分子内光誘起電子移動(photoinduced electron transfer: PET)、スピロ環の開環や閉環などを利用した高感度な蛍光off/on型プローブが数多く提供されてきた。しかしながら、分子イメージングにおいてフルオレセインを母核とした色素同士は波長が重なるために同時に使用することができず、さらに分子内光誘起電子移動を利用したプローブではベンゼン環の酸化電位を精密に設計することが求められることから化学構造修飾に大きな制約を受けるという問題がある。
【0003】
一方、フルオレセインのキサンテン環の10位の酸素原子の構造修飾に関しては報告がほとんどなく、10位の酸素原子を他の原子に置換した化合物についての光学特性は従来知られていない。ローダミンの基本骨格であるパイロニンY(PY)の酸素原子を珪素原子に置換した化合物(TMDHS)及びこの化合物の蛍光プローブへの応用については既に報告があるが(Best, Qら、Pacifichem 2010, 演題番号2335、2010年12月19日;小出裕一郎ら、第4回日本分子イメージング学会, 演題番号P8-9, 2009年5月14日)、このTMDHSを基本骨格として有する蛍光プローブは基本的に分子内光誘起電子移動およびスピロ環の開環や閉環を利用するプローブである。なお、フルオレセインのキサンテン環の10位の酸素原子を珪素原子に置き換えた化合物については未だ報告がなく、そのような化合物の蛍光特性も従来全く知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Best, Qら、Pacifichem 2010, 演題番号2335、2010年12月19日
【非特許文献2】小出裕一郎ら、第4回日本分子イメージング学会, 演題番号P8-9, 2009年5月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は新規な蛍光団を有する蛍光プローブを提供することにある。
より具体的には、フルオレセイン骨格を化学修飾することにより、分子内光誘起電子移動を利用せずに蛍光off/on型プローブの母核として使用可能な新規な蛍光団である化合物、及び該化合物を利用した蛍光プローブを提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、フルオレセイン骨格におけるキサンテン環の10位の酸素原子を珪素原子に置き換えた化合物では非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)の最大吸収波長が大きく乖離し、フルオレセイン誘導体(キサンテン環の10位の酸素原子が保存されている)における非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)での波長変化に比べて約2倍以上の波長変化を与えることを見出した。また、この性質を利用することにより、分子内光誘起電子移動に依存せずpHや各種酵素などを高感度に測定可能な蛍光プローブを提供できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし5個の同一又は異なる一価の置換基を示し;R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示し;R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し;R8は水酸基又はジアルコキシボラントリイル基を示し;Xは珪素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示す)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0008】
上記発明の好ましい態様によれば、R1が水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の一価の置換基(該置換基は炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルケニル基、炭素数1〜6個のアルキニル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれる)を示し、R2及びR3がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基を示し、R6及びR7がそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を示し、R8が水酸基又はピナコラートボラントリイル基を示し、Xは珪素原子を示す化合物又はその塩が提供される。さらに好ましい態様によれば、R1が水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の一価の置換基(該置換基は炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれる)を示し、R2及びR3がそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を示し、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数1〜3個のアルキル基を示し、R6及びR7が共に水素原子であるか、共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子を示し、R8が水酸基を示し、Xが珪素原子である化合物又はその塩が提供される。
【0009】
別の観点からは、蛍光プローブの製造に用いるための上記一般式(I)で表される化合物又はその塩、及び蛍光プローブの製造のための上記一般式(I)で表される化合物又はその塩の使用が本発明により提供される。
【0010】
また、本発明により、下記の一般式(II):
【化2】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは上記と同義であり、YはOR11(R11は水素原子又は測定対象物質との接触により切断される一価の基を示す)又はジアルコキシボラントリイル基を示す〕で表される化合物又はその塩が提供される。
【0011】
好ましい態様では、R1が水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし3個の一価の置換基(該置換基は炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれる)を示し、R2及びR3がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6個のアルキル基を示すか、あるいは共に塩素原子であるか又は共にフッ素原子を示し、Xが珪素原子であり、YがOR11(R11は酵素により切断される一価の基である)又はピナコラートボラントリイル基である上記の化合物又はその塩;及びR11が水素原子であるか、あるいは還元酵素、酸化酵素、又は加水分解酵素により切断される一価の基である上記の化合物又はその塩;及びR11が水素原子であるか、又はβ-ラクタマーゼ、チトクロームP450酸化酵素、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼ、ラクターゼ、アルカリホスファターゼ、マトリクスメタロプロテアーゼ、及びグルタミルトランスフェラーゼからなる群から選ばれる酵素により切断される一価の基である上記の化合物又はその塩が提供される。
【0012】
別の観点からは、本発明により、上記の一般式(II)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びXは上記と同義であり、Yは水酸基を示す)で表される化合物又はその塩を含むpH蛍光プローブが提供される。
【0013】
また、pHの測定方法であって、上記の一般式(II)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びXは上記と同義であり、Yは水酸基を示す)で表される化合物又はその塩を蛍光プローブとして用いてpHを測定する工程を含む方法、及びpHの測定方法であって、細胞、組織、又は体液と上記の一般式(II)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びXは上記と同義であり、Yは水酸基を示す)で表される化合物又はその塩とを接触させた後に蛍光を測定する工程を含む方法が本発明により提供される。
【0014】
さらに別の観点からは、本発明により、上記の一般式(II)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びXは上記と同義であり、YはOR11(R11は測定対象物質との接触により切断される一価の基を示す)又はジアルコキシボラントリイル基を示す)で表される化合物又はその塩を含む蛍光プローブが提供される。
【0015】
また、測定対象物質の測定方法であって、上記の一般式(II)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びXは上記と同義であり、YはOR11(R11は測定対象物質との接触により切断される一価の基を示す)又はジアルコキシボラントリイル基を示す)で表される化合物又はその塩を測定対象物質と接触させた後に蛍光を測定する工程を含む方法が提供される。
【0016】
さらに別の観点からは、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって;(a)3-ハロゲン化アニリンとアリルハライドから製造される3-ハロゲン化-N,N-ジアリルアニリンとホルムアルデヒドから下記の一般式(III):
【化3】
(式中、R12はハロゲン原子を示し、R2、R3、R6、及びR7は上記と同義である)で表される化合物を製造する工程、
(b)上記の一般式(III)で表される化合物とX(Halo)2(R4)(R5)(Haloは塩素原子又は臭素原子を示し、X、R4、及びR5は上記と同義である)とを反応させ後、酸化反応によって下記のN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-X-キサントンを製造する工程、
【化4】
(c)N,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-X-キサントンから脱アリル化を行い下記のジアミノ-X-キサントンを製造する工程、
【化5】
(d)ジアミノ-X-キサントンのアミノ基を水酸基に変換して下記のジヒドロキシ-X-キサントンを製造する工程、
【化6】
(e)ジヒドロキシ-X-キサントンの水酸基に保護基を導入し、下記の一般式(IV):
【化7】
(式中、R13はフェノール性水酸基の保護基又はジアルコキシボラントリイル基を示す)で表される化合物を製造する工程、及び
(f)上記の一般式(IV)で表される化合物とハロゲン化ベンゼン誘導体から上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩を製造する工程、
を含む製造方法が提供される。
R2、R3、R6、及びR7は水素原子であることが好ましく、Haloは塩素原子であることが好ましく、R4及びR5はメチル基であることが好ましい。
【0017】
また、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(f)を含む方法;上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(e)及び(f)を含む方法;上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(d)、(e)、及び(f)を含む方法;上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(c)、(d)、(e)、及び(f)を含む方法;並びに上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって上記工程(b)、(c)、(d)、(e)、及び(f)を含む方法が提供される。
【0018】
また、上記の一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、工程(a)においてR6及びR7が共に水素原子である化合物を出発原料として用い、工程(d)の後に塩素化剤又はフッ素化剤と反応させることによりR6及びR7が共に塩素原子であるか、又はR6及びR7が共にフッ素原子である化合物を製造し、この化合物を原料化合物として工程(e)及び(f)を行うことにより一般式(I)においてR6及びR7が共に塩素原子であるか、又はR6及びR7が共にフッ素原子である化合物を製造する方法も本発明により提供される。また、上記工程(d)に記載されたジヒドロキシ-X-キサントン化合物(ただしR6及びR7が共に水素原子である)を塩素化剤又はフッ素化剤と反応させることによりR6及びR7が共に塩素原子であるか、又はR6及びR7が共にフッ素原子であるジヒドロキシ-X-キサントン化合物を製造する方法も本発明により提供される。
【0019】
さらに、2,7-置換又は2,7-無置換3,6-ジヒドロキシキサントンを塩素化剤又はフッ素化剤と反応させることにより2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン又は2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサントンを製造することができる。また、2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン又は2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサントンの3,6位の水酸基に保護基を導入し、次いでハロゲン化ベンゼン誘導体と反応させてから水酸基の脱保護を行えば、9-位に置換フェニル基が結合した2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサンテン-9-イル又は2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサンテン-9-イルを製造することができる。
【0020】
上記方法の特に好ましい態様として、上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩の製造方法であって;
(a)3-ハロゲン化アニリンとアリルハライドから製造される3-ハロゲン化-N,N-ジアリルアニリンとホルムアルデヒドから下記の一般式(IIIa):
【化8】
(式中、R12はハロゲン原子を示す)で表される化合物を製造する工程、
(b)上記の一般式(IIIa)で表される化合物とジクロロジメチルシランとを反応させ後、酸化反応によって下記のN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントンを製造する工程、
【化9】
(c)N,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントンから脱アリル化を行い下記のジアミノ-Si-キサントンを製造する工程、
【化10】
(d)ジアミノ-Si-キサントンのアミノ基を水酸基に変換して下記のジヒドロキシ-Si-キサントンを製造する工程、
【化11】
(e)ジヒドロキシ-Si-キサントンの水酸基に保護基を導入し、下記の一般式(IVa):
【化12】
(式中、R13はフェノール性水酸基の保護基を示す)で表される化合物を製造する工程、及び
(f)上記の一般式(IVa)で表される化合物とハロゲン化ベンゼン誘導体から上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩を製造する工程、
を含む製造方法が提供される。
【0021】
また、上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(f)を含む方法;上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(e)及び(f)を含む方法;上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(d)、(e)、及び(f)を含む方法;上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、上記工程(c)、(d)、(e)、及び(f)を含む方法;並びに上記の一般式(I)(式中、R2、R3、R6、及びR7が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R8が水酸基を示す)で表される化合物又はその塩の製造方法であって上記工程(b)、(c)、(d)、(e)、及び(f)を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩は、非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)との最大吸収波長が大きく乖離しており、フルオレセイン誘導体の場合に比べて約2倍以上の波長変化を与えることから、この性質を利用することにより、分子内光誘起電子移動及びスピロ環化の制御に依存せずにpH、活性酸素種、又は各種酵素などを高感度に測定可能な蛍光プローブを製造するための母核化合物として有用である。また、上記一般式(II)で表される化合物又はその塩は分子内光誘起電子移動に依存せずにpH、活性酸素種、又は各種酵素などを高感度に測定可能な蛍光プローブとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の化合物の代表例である2-Me TokyoMagenta(本明細書中、「TokyoMagenta」は一般式(I)においてR1が水素原子であり、R2及びR3が水素原子であり、R4及びR5がメチル基であり、R6及びR7が水素原子であり、R8が水酸基であり、Xが珪素原子である化合物を意味しており、この化合物を「TM」と略す場合がある)についてpHを変化させながら吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した結果を示した図である(本明細書においてMeはメチル基を意味する)。上段は吸収スペクトルを示し、下段は蛍光スペクトル(励起波長550 nm)を示す。測定は1%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む0.1M リン酸緩衝液中に1μMの2-Me TokyoMagentaを溶解した溶液を用いて行なった。
図2】本発明の化合物の代表例である2-Me TokyoMagentaについて吸収波長をキサンテン環10位に酸素原子を有する2-Me TokyoGreen (9-(2'-メチルフェニル)-キサンテン-3-オン)と比較した結果を示した図である。
図3】β-ガラクトシダーゼ測定用の蛍光プローブとして設計した2-Me TokyoMagenta βgalについて酵素処理前後における吸収スペクトル(左上)、蛍光スペクトル(右上:励起波長582 nm、及び左下:励起波長448 nm)を示した図である。
図4】2-Me TokyoMagenta βgalのβ-ガラクトシダーゼによる加水分解反応の進行を経時的に蛍光強度を測定した結果を示した図である。対照としてβ-ガラクトシダーゼ測定用の蛍光プローブとして既に広く使用されている2-Me-4-OMe TokyoGreen βgalを用いた。
図5】2-Me TokyoMagenta βgalを蛍光プローブとして細胞内のβ-ガラクトシダーゼを測定した結果を示した図である。図中のバーは30μmを示す。
図6】本発明の化合物の代表例である2-Me TokyoMagentaについてpHを変化させながら蛍光スペクトルを測定した結果を示した図である (励起波長471 nm)。測定は1%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む0.1M リン酸緩衝液中に1μMの2-Me TokyoMagentaを溶解した溶液を用いて行なった。
図7】2-Me TM(a)、2-Me Ge-TM(b)、及び2-Me DiEtTM(c)の吸収及び蛍光スペクトルを示した図である。測定は(pH 9)で行った。
図8】2-Me Ge-TM(1% DMSOを含む0.1 M リン酸バッファー中で濃度1 μM)のpH依存的な吸収スペクトル変化を示した図である。
図9】2-Me DiEtTM(1% DMSOを含む0.1 M リン酸バッファー中で濃度1 μM)のpH依存的な吸収スペクトル変化を示した図である。
図10】1% DMSOを含むリン酸バッファー(pH 7.4)中で2-Me Ge-TM (青)、2-Me TM (緑)、及び2-Me DCTM (赤)と GSHとの反応性を示した図である。
図11】上図は2-COOH TM(1% DMSOを含む0.1 M リン酸バッファー中で濃度1 μM)のpH依存的な吸収スペクトル変化を示した図であり、下図は580 nmにおける2-COOH TMのpH依存的な吸収スペクトル変化を示した図である。単相性(赤)又は二相性(青)標準化で曲線をフィットさせ、χ2値はそれぞれ0.041及び4.4*10-4であった。
図12】2-MeDCTM、2-COOH DCTM、2-Me DFTM、及び2-COOH DFTMの光学特性を示した図である。1% DMSOを含む0.1 M リン酸バッファー中で濃度1 μM)のpH依存的な吸収スペクトル変化(左)及び蛍光変化(右)を示した。
図13】Hela細胞に37℃で3μMの各プローブをロードし、プローブを洗い落した後、37℃で60分にわたり顕微鏡下て蛍光強度変化を測定した結果を示した図である。2-Me TMAM(2000-4000)、2-Me TMCOOAM (1100-5000)、2-Me TMIDAAM (1000-5000)、及び2-Me TMIDAIDAAM(550-800)。露出時間30 ms、NDは6%を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、「アルキル基」又はアルキル部分を含む置換基(例えばアルコキシ基など)のアルキル部分は、特に言及しない場合には例えば炭素数1〜6個、好ましくは炭素数1〜4個、さらに好ましくは炭素数1〜3個程度の直鎖、分枝鎖、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基を意味している。より具体的には、アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピルメチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。本明細書において「ハロゲン原子」という場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでもよく、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子である。
【0025】
一般式(I)で表される化合物において、R1は水素原子を示すか、又はベンゼン環上に存在する1ないし5個の同一又は異なる一価の置換基を示す。R1がベンゼン環上に存在する一価の置換基を示す場合には、ベンゼン環上に同一又は異なる置換基が1ないし3個程度存在していることが好ましい。R1が1個又は2個以上の一価の置換基を示す場合には、該置換基はベンゼン環上の任意の位置に置換することができるが、例えば、ベンゼン環上において1個の置換基がXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在することが好ましい。2個以上の置換基がベンゼン環上に存在する場合には、それらのうちの1個の置換基がXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在することが好ましい。好ましくはR1は水素原子を示すか、1個の置換基がXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在する場合である。また、例えばR1が2個の一価の置換基を示す場合も好ましい。
【0026】
R1が示す一価の置換基の種類は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルケニル基、炭素数1〜6個のアルキニル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、又はアミノ基からなる群から選ばれることが好ましい。これらの一価の置換基はさらに任意の置換基を1個又は2個以上有していてもよい。例えば、R1が示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR1が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、又はアミノアルキル基などであってもよい。また、例えばR1が示すアミノ基には1個又は2個のアルキル基が存在していてもよく、R1が示すアミノ基はモノアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基であってもよい。さらに、R1が示すアルコキシ基が置換基を有する場合としては、例えば、カルボキシ置換アルコキシ基又はアルコキシカルボニル置換アルコキシ基などが挙げられ、より具体的には4-カルボキシブトキシ基又は4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基などを挙げることができる。
【0027】
R1が2個の一価の置換基を示す場合には、該置換基は例えば炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基、及びカルボキシ基からなる群から選択されることが好ましく、炭素数1〜6個のアルキル基及び炭素数1〜6個のアルコキシ基からなる群から選ばれることがさらに好ましい。この場合において、1個の炭素数1〜6個のアルキル基がXを含む縮合環の結合位置に対してオルト位に存在することが好ましく、アルコキシ基(例えば無置換アルコキシ基、モノカルボキシ基置換アルコキシ基、モノアルコキシカルボニル置換アルコキシ基、又は4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基など)がベンゼン環上の他の位置に存在することが好ましい。
【0028】
R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。R2又はR3がアルキル基を示す場合には、該アルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR2又はR3が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子であることが好ましく、R2及びR3がともに水素原子である場合、又はR2及びR3がともに塩素原子又はフッ素原子である場合がより好ましい。
【0029】
R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキル基又はアリール基を示すが、R4及びR5はそれぞれ独立に炭素数1〜3個のアルキル基であることが好ましく、R4及びR5がともにメチル基であることがより好ましい。R4及びR5が示すアルキル基にはハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよく、例えばR4又はR5が示すアルキル基はハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基などであってもよい。R4又はR5がアリール基を示す場合には、アリール基は単環の芳香族基又は縮合芳香族基のいずれであってもよく、アリール環は1個又は2個以上の環構成ヘテロ原子(例えば窒素原子、イオウ原子、又は酸素原子など)を含んでいてもよい。アリール基としてはフェニル基が好ましい。アリール環上には1個又は2個以上の置換基が存在していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、カルボキシ基、スルホニル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基などが1個又は2個以上存在していてもよい。
【0030】
R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、又はハロゲン原子を示すが、R2及びR3について説明したものと同様である。R6及びR7が共に水素原子であるか、共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子であることが好ましい。
Xは珪素原子、ゲルマニウム原子、又はスズ原子を示すが、珪素原子又はゲルマニウム原子であることが好ましく、珪素原子であることが特に好ましい。
【0031】
R8は水酸基又はジアルコキシボラントリイル基を示す。ジアルコキシボラントリイル基に存在する2個のアルコキシ基の炭素数は例えば1〜6個程度であり、これらのアルコキシ基は互いに結合して例えば5員環又は6員環を形成していてもよい。該5員環又は6員環上には1ないし4個程度の置換基、例えば炭素数1〜6個程度のアルキル基が置換していてもよい。ジアルコキシ基はジオール化合物をホウ素原子と反応させることにより導入することもできるが、そのような場合としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ピナコール、ネオペンチルグリコール、カテコールなどのジオール化合物がホウ素原子と結合する場合を挙げることができる。ジアルコキシボラントリイル基としては、例えば、ジメトキシボラントリイル基、テトラメチルエチレンジオキシボラントリイル基(ピナコラートボロン)、o-フェニレンジオキシボラントリイル基などを挙げることができるがこれらに限定されることはない。これらのうち、ピナコラートボロンが好ましい。
【0032】
一般式(II)で表される化合物におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びXは上記と同様である。YはOR11(R11は水素原子又は測定対象物質との接触により切断される一価の基を示す)又はジアルコキシボラントリイル基を示す。YにおけるR11としては水素原子のほか、測定対象物質との接触により切断される性質を有する基を用いることができる。Yにおけるジアルコキシボラントリイル基も上記と同様である。
【0033】
測定対象物質の種類は特に限定されず、例えば、酵素、金属イオン(例えば、ナトリウムイオンやリチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなど)、非金属イオン(炭酸イオンなど)、活性酸素種(例えば、ヒドロキシルラジカル、パーオキシナイトライト、次亜塩素酸、過酸化水素など)などのいずれであってもよいが、好ましくは酵素である。
【0034】
酵素としては、例えば、還元酵素、酸化酵素、加水分解酵素などを挙げることができる。例えば、β-ラクタマーゼ、チトクロームP450酸化酵素、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-ヘキソサミニダーゼ、ラクターゼ、アルカリホスファターゼ、マトリクスメタロプロテアーゼ、及びグルタミルトランスフェラーゼなど、感染症やがんなどの診断対象として有用な酵素を挙げることができるが、これらに限定されることはない。酵素のうち、特に加水分解酵素が好ましい。加水分解酵素の典型例として、例えばβ−カラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ、アルカリフォスファターゼ、マトリクスメタロプロテアーゼ、及びグルタミルトランスフェラーゼなどを挙げることができるが、加水分解酵素は上記のものに限定されるわけではない。
【0035】
測定対象物質として加水分解酵素を用いる場合には、該酵素の特異的基質となる化合物や官能基を選択して、該酵素による加水分解を受けてR11が水素原子である化合物を与えるように一般式(II)の化合物を設計することができる。例えば、糖加水分解酵素を測定対象物質として用いる場合にはR11としてその酵素の基質となる糖化合物の残基を用いることができる。糖化合物が有する水酸基やアミノ基などの官能基は必要に応じて適宜の保護基で保護されていてもよい。このような保護基を有する化合物もすべて本発明の範囲に包含される。
【0036】
また、R11がp-アミノフェニル基、又はp-ヒドロキシフェニル基である場合には活性酸素種との接触により分解を受けてR11が水素原子である化合物が生成することから、活性酸素種を測定対象物質として用いることができる。p-アミノフェニル基、又はp-ヒドロキシフェニル基を有する活性酸素蛍光プローブは、例えば、国際公開 (WO2001/064664)、国際公開(WO2004/040296)、US7378282などに記載されているので、本発明の蛍光プローブはこれらの文献に開示された蛍光プローブと同様に用いることができる。
【0037】
さらに、Yがジアルコキシボラントリイル基である場合には、過酸化水素との接触により分解を受けてYが水酸基である化合物が生成することから、この場合には過酸化水素を測定対象物質として用いることができる。ジアルコキシボラントリイル基を有する過酸化水素蛍光プローブは、例えば、Nature Chemical Biology, 3, pp.263-267, 2007; J. Am. Chem. Soc., 132, pp.4455-4465, 2010; J. Am. Chem. Soc., 132, pp.5906-5915, 2010などに記載されているので、本発明の蛍光プローブはこれらの文献に開示された蛍光プローブと同様に用いることができる。
【0038】
また、一般式(II)においてYが示すOR11のR11が水素原子である化合物は、グルクロン酸転移酵素と反応して0-グリコシド体に変化するのでグルクロン酸転移酵素活性を測定することができる。すなわち、グルクロン酸転移酵素と反応前のR11が水素原子である化合物は、生理的な中性付近のpH領域では解離型(アニオン型)であるのに対し、グルクロン酸転移酵素と反応後の0-グリコシド体となった化合物は非解離型(ニュートラル型)となり、吸収波長が短波長側に大きくシフトすると共に、蛍光プロファイルも変化する。例えば、グルクロン酸転移酵素との反応前後のR11が水素原子である化合物の蛍光強度を励起波長582nmで測定した場合には、グルクロン酸転移酵素反応前には600nm付近に強い蛍光が観察されるが、反応後には0-グリコシド体となった化合物が582nmに吸収を持たないため蛍光はほとんど観察されない。また、例えば、グルクロン酸転移酵素との反応前後のR11が水素原子である化合物の蛍光強度を励起波長471nmで測定した場合には、560nm付近の蛍光強度がグルクロン酸転移酵素との反応の進行にともなって増加する。グルクロン酸転移酵素活性測定のための蛍光プローブとしては国際公開WO2008105376にフルオレセイン誘導体を用いた具体例が記載されているので、本発明の一般式(II)においてR11が水素原子である化合物は、本文献に開示されたプローブと同様に用いることができる。
【0039】
上記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される化合物は塩として存在する場合がある。塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができ、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを例示することができる。もっとも、本発明の化合物の塩はこれらに限定されることはない。
【0040】
一般式(I)又は(II)で表される本発明の化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。また、一般式(I)又は(II)で表される本発明の化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を例示することができる。
【0041】
一般式(I)で表される本発明の化合物は、非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)の最大吸収波長が大きく乖離しており、フルオレセイン誘導体(キサンテン環の10位の酸素原子が保存されている)における非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)での波長変化の場合に比べて約2倍以上の波長変化を与えるという特徴がある。従って、一般式(II)においてR11が水素原子である化合物(一般式(I)で表される化合物に相当する)は、pH変化により最大吸収波長が大きく変化するという特性を有しており、pH検出用の蛍光プローブとして利用することができる。また、一般式(II)においてYにおけるR11が水素原子以外の化合物は、実質的に非解離型の化合物として存在しているが、R11が測定対象物質との接触により切断されることによって解離型の化合物を与えることから、測定対象物質との接触前及び接触後において最大吸収波長が大きく変化するという特徴を有しており、測定対象物質を高感度に測定するための蛍光プローブとして利用することができる。また、Yがジアルコキシボラントリイル基である場合には、過酸化水素との接触により分解を受けてYが水酸基(解離型)である化合物が生成するので、Yがジアルコキシボラントリイル基である化合物は測定対象物質である過酸化水素との接触前及び接触後において最大吸収波長が大きく変化するという特徴を有しており、同様に過酸化水素を高感度に測定するための蛍光プローブとして利用することができる。一般式(I)で表される化合物は上記のとおり非解離型と解離型の最大吸収波長の差を利用したプローブの製造のために有用であり、分子内光誘起電子移動を利用しないことからベンゼン環の電子密度(酸化電位)を厳密に調整する必要がなく、ベンゼン環上に多様な置換基が存在していてもプローブとして機能するという特徴を有している。
【0042】
例えば、R1として4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基などを有する一般式(II)の化合物は、高い脂溶性により細胞内に効率良く取り込まれ、かつ、細胞内に取り込まれると細胞内に存在するエステラーゼにより4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基が加水分解を受けて水溶性の高い一般式(II)の化合物に変換された後に細胞内に長時間滞留するので、細胞内の測定対象物質をイメージングするために極めて適している。このような化合物においても分子内光誘起電子移動を利用しないことからベンゼン環上において任意の位置に4-アセトキシメチルオキシカルボニルブトキシ基を導入することができるので、蛍光プローブの設計における自由度が高い。蛍光プローブとしては、測定対象物質によるR11の切断前と切断後において蛍光最大吸収波長になるべく大きな差ができるように設計することが好ましい。また、上記の性質に加えて、R11の切断前には実質的に無蛍光で、R11の切断後において強蛍光となるように設計することがさらに好ましい。
【0043】
本明細書において用いられる「測定」という用語は、定量、定性、又は診断などの目的で行われる測定、検査、検出などを含めて、最も広義に解釈しなければならない。本発明の蛍光プローブのうちYにおけるR11が水素原子以外の蛍光プローブを用いた測定対象物の測定方法は、一般的には、(a)上記式(II)で表される化合物と測定対象物質とを接触させてR11を切断させる工程、及び(b)上記工程(a)で生成した化合物(R11が切断されて解離型になった化合物に相当する)の蛍光を測定する工程を含んでいる。また、本発明の蛍光プローブのうちYがジアルコキシボラントリイル基である化合物を蛍光プローブを用いた測定対象物の測定方法は、一般的には、(a)上記式(II)で表される化合物と一般的には測定対象物質である過酸化水素とを接触させてYが水酸基である化合物を生成させる工程、及び(b)上記工程(a)で生成した化合物の蛍光を測定する工程を含んでいる。例えば、生理食塩水や緩衝液などの水性媒体、又はエタノール、アセトン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの水混合性の有機溶媒と水性媒体との混合物などに本発明の蛍光プローブ又はその塩を溶解し、細胞や組織を含む適切な緩衝液中にこの溶液を添加して、測定対象物との接触の前後における蛍光スペクトルを測定すればよい。
【0044】
測定対象物質によりR11が切断された後の化合物の蛍光の測定は通常の方法で行うことができ、インビトロで蛍光スペクトルを測定する方法や、バイオイメージングの手法を用いてインビボで蛍光スペクトルを測定する方法などを採用することができる。例えば、定量を行う場合には、常法に従って予め検量線を作成しておくことが望ましい。
【0045】
本発明の蛍光プローブは、必要に応じて試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。
【0046】
工程(a)ないし(e)を含む上記の一般式(I)で表される本発明の化合物又はその塩の製造方法において、上記の製造工程(a)から(e)によって製造される化合物は新規化合物であり、上記の一般式(I)で表される本発明の化合物又はその塩を製造する合成中間体として有用である。上記製造方法において、R2及びR3は水素原子であることが好ましく、R6及びR7は共に水素原子であるか、共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子であることが好ましく、Haloは塩素原子であることが好ましく、R4及びR5はメチル基などのC1-6アルキル基であることが好ましい。また、R2、R3、R6及びR7が水素原子であり、R4及びRがメチル基であり、かつR8が水酸基を示すことが特に好ましい。
【0047】
R6及びR7が共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子である化合物は、例えば上記工程(d)においてR6及びR7が共に水素原子であるジアミノ-X-キサントンから合成されるジヒドロキシ-X-キサントンを原料化合物として用い、NaOClなどの塩素化剤又はSelectfluor(登録商標)などのフッ素化剤を作用させることによりR6及びR7が共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子である化合物を製造し、この化合物を原料化合物としてハロゲン化ベンゼン誘導体と反応させることにより一般式(I)においてR6及びR7が共に塩素原子であるか、又は共にフッ素原子である化合物に誘導することができる。NaOClのほか塩素化剤としては塩素、次亜塩素酸tert-ブチル、N-クロロスクシンイミド、N-クロロジメチルアミン、クロラミンTなどを用いることができ、フッ素化剤としてはN-フルオロベンゼンスルホンイミド、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1,1’-ジフルオロ-2,2’-ビピリジニウムビス(テトラフルオロボラート)などを用いることができる。
【0048】
2,7-置換又は2,7-無置換3,6-ジヒドロキシキサントンを上記の塩素化剤又はフッ素化剤と反応させることにより製造される2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン又は2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサントンは化合物は新規化合物であり、9-位に置換フェニル基が結合した2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサンテン-9-イル又はその塩、2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサンテン-9-イル又はその塩を製造する合成中間体として有用である。2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン又は2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサントンは、3,6位の水酸基に保護基を導入し、次いでハロゲン化ベンゼン誘導体と反応させてから水酸基の脱保護を行えば、9-位に置換フェニル基が結合した2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサンテン-9-イル又は2,7-置換又は2,7-無置換-4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシキサンテン-9-イルに誘導することができる。
【0049】
一般式(IV)で表される化合物は、種々のハロゲン化ベンゼン誘導体と反応させることでR1が置換するベンゼン環に種々の置換基を導入した一般式(I)で表される本発明の化合物を製造することができることから合成中間体として特に有用である。上記の製造工程(a)から(f)の各工程は実施例に具体的に記載されているが、当業者が通常の知識に基づいて製造方法を適宜変更し、改良等を加えた方法も本発明の範囲に含まれることを理解すべきである。工程(a)ないし(e)のいずれか1つの工程又は連続した2以上の工程を含む方法も本発明の範囲に包含される。
【0050】
一般式(IV)で表される化合物において、R13が示すフェノール性水酸基の保護基の種類は特に限定されないが、例えば、t-ブチルジメチルシリル基、メチル基、メトキシメチル基、t-ブチル基などを適宜選択できる。フェノール性水酸基の保護基については、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W.Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons,Inc.)(1981)などを参照することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
以下のスキームに従って本発明の化合物を合成した。
【0052】
【化13】
【0053】
(a)3-ブロモ-N,N-ジアリルアニリン
K2CO3 (22.0 g, 159 mmol)をアセトニトリルに懸濁し、3-ブロモアニリン (8.71 mL, 80.0 mmol)、アリルブロミド (23.7 mL, 280 mmol) を加えて80℃で14時間攪拌した。室温まで冷却した後にセライトろ過を行い、酢酸エチルでよく洗った。溶媒を除去した後にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/40 酢酸エチル/ヘキサン) で精製し、3-ブロモ-N,N-ジアリルアニリン (17.1 g, 67.9 mmol, 収率85%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 3.87-3.90 (m, 4H), 5.11-5.15 (m, 2H), 5.17-5.18 (m, 2H), 5.75-5.88 (m, 2H), 6.58 (dd, 1H, J = 2.2, 8.1 Hz), 6.77-6.81 (m. 2H), 7.01 (t, 1H, J = 8.1Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ 52.7, 110.8, 115.0, 116.3, 119.0, 123.3, 130.2, 133.2, 150.0
HRMS (ESI+): Found: 252.0429, calculated 252.0388 for [M+H]+ (+4.1 mmu)
【0054】
(b)ビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン
3-ブロモ-N,N-ジアリルアニリン (17.1 g, 67.9 mmol) を酢酸 (200 mL) に溶解し、37% ホルムアルデヒド液 (10.2 g, 340 mmol)を加えて80℃で75分間加熱した。室温まで冷却した後、飽和NaHCO3水溶液とNaOHで中和した。この混合物をジクロルメタンで抽出し、食塩水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥して溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/30 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、ビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン (15.2 g, 29.5 mmol, 収率87%)を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 3.85-3.87 (m, 8H), 3.96 (s, 2H), 5.13-5.19 (m, 8H), 5.76-5.88 (m, 4H), 6.54 (dd, 2H, J = 2.9, 8.8 Hz), 6.81 (d, 2H, J =8.1 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 2.9 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ 39.7, 52.7, 111.7, 116.0, 116.2, 125.5, 126.9, 130.8, 133.5, 148.1
HRMS (ESI+): Found: 517.0654, calculated 517.0677 for [M+H]+ (-2.3 mmu)
【0055】
(c)N,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコにビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン (8.16 g, 15.8 mmol) と脱水テトラヒドロフラン(THF, 50 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (45 mL, 45mmol) を加え、20分間攪拌した。そのままの温度でジクロロジメチルシラン (2.9 mL, 30 mmol) を脱水THF 10 mLに溶解してゆっくりと加え、室温に戻して1時間攪拌した。2N 塩酸で反応を停止してNaHCO3で中和した。この混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥させた後に溶媒を除去した。残渣をアセトン (150 mL)に溶解し、0℃に冷却してKMnO4 (6.88 g, 43.5 mmol)を少量ずつ2時間かけて加え、さらに同じ温度で1時間攪拌した。ジクロルメタン (200 mL)を加えてろ紙を用いて吸引ろ過した。溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロルメタン) で精製してN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントン (2.23 g, 5.20 mmol, 収率33%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 0.41 (s, 6H), 4.02 (d, 8H, J = 5.1 Hz), 5.17-5.23 (m, 8H), 5.82-5.94 (m, 4H), 6.80-6.83 (m, 4H), 8.34 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ -1.1, 52.8, 113.5, 114.8, 116.7, 130.0, 131.7, 133.1, 140.5, 150.2, 185.1
HRMS (ESI+): Found:429.2347, calculated 429.2362 for [M+H]+ (-1.5 mmu)
【0056】
(d)ジアミノ-Si-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコにPd(PPh3)4(35.0 mg, 0.0303 mmol) と1,3-ジメチルバルビツール酸 (196 mg, 1.08 mmol) を加えた。この混合物にN,N,N',N'-テトラアリル-ジアミノ-Si-キサントン(99.2 mg, 0.231 mmol) をジクロルメタン 10 mL に溶解して加え、64℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して飽和Na2CO3水溶液に懸濁し、ジクロルメタンで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 4/3 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、ジアミノ-Si-キサントン(48.8 mg, 0.182 mmol, 収率79%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CD3OD): δ0.40 (s, 6H), 6.76 (dd, 2H, J = 2.6, 8.4 Hz), 6.88 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 8.13 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CD3OD): δ -1.3, 116.6, 118.4, 131.0, 132.8, 142.6, 153.0, 187.5
HRMS (ESI+Tof): m/z Found: 269.1108, calculated 269.1110 for [M+H]+ (-0.2 mmu)
【0057】
(e)ジヒドロキシ-Si-キサントン
ジアミノ-Si-キサントン (48.8 mg, 0.182 mmol) を混合溶媒 (メタノール、6 N H2SO4, 4/5) 45 mLに溶解した。0℃に冷却後、NaNO2 (84.6 mg, 1.22 mmol) を水 2mLに溶解してゆっくりと加え、そのままの温度で1時間攪拌した。この混合物を沸騰した1 N H2SO4 (50 mL) にゆっくりと加え、さらに10分間還流した後に氷冷した。反応液をジクロルメタンで抽出し、食塩水でよく洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/20メタノール/ジクロルメタン)で精製し、ジヒドロキシ-Si-キサントン (32.9mg, 0.122 mmol, 収率67%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CD3OD): δ0.45 (s, 6H), 6.95 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.07 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 8.26 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CD3OD): δ-1.5, 118.4, 120.0, 133.3, 133.8, 143.1, 162.2, 187.6
HRMS (ESI-Tof): Found 269.0674, calculated 269.0634 for [M-H]- (+4.0 mmu)
【0058】
(f)3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン
ジヒドロキシ-Si-キサントン (32.9 mg, 0.122 mmol), イミダゾール (85.5 mg, 1.26 mmol) をジクロルメタン 20 mLに溶解し、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(185mg, 1.23 mmol)をジクロルメタン 5 mLに溶解してゆっくりと加え、室温で14時間攪拌した。この混合物に水を加えてジクロルメタンで抽出し、食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/20 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン(52.8 mg, 0.106 mmol, 収率84%)を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CDCl3): δ 0.26 (s, 12H), 0.46 (s, 6H), 1.01 (s, 18H), 6.98 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.04 (d, 2H, J = 2.9 Hz), 8.37 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (75.45 MHz, CDCl3): δ -4.3, -1.6, 18.3, 25.6, 121.8, 123.7, 132.3, 134.5, 141.1, 158.7, 186.0
HRMS (ESI+): Found: 499.2480, calculated 499.2520 for [M+H]+ (-4.0 mmu)
【0059】
(g)2-Me TokyoMagentaの合成
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコに、2-ブロモトルエン (200 μL, 1.6 mmol) と脱水THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (1.0 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン (9.4 mg, 0.019 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを10 mL加えて20分間攪拌した。この混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me TokyoMagenta (4.5 mg, 0.013 mmol, 収率69%) を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, D2O): δ 0.46 (s 6H), 2.01 (s, 3H), 6.33 (dd, 2H, J = 2.9, 9.5 Hz), 7.01-7.09 (m, 5H), 7.27-7.46 (m, 3H)
HRMS (ESI-): Found:,343.1120 calculated 343.1154 for [M-H]- (-3.41mmu)
【0060】
(h)2-Me TokyoMagenta βgalの合成
【化14】
【0061】
アセトニトリル (3 mL)に2-Me TokyoMagenta (4.6 mg, 0.013 mmol)と2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-ガラクトピラノシルブロミド (80.8 mg, 0.197 mmol)とCs2CO3(29.6 mg, 0.0909 mmol)を入れ、アルゴン置換のもと室温で一晩攪拌した。その混合物をろ過し、ろ液の溶媒を除去した。残渣をメタノール (3 mL) に溶解し、その溶液を0℃まで冷却し、 15 μL の28 % ナトリウムメトキシドのメタノール溶液をゆっくりと加えた後、この溶液を1時間攪拌した。0.2 N HCl水溶液で反応を停止し、ジクロルメタンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して溶媒を除去した。残渣をHPLCで精製して2-Me TokyoMagenta βgal (2.4 mg, 0.0047 mmol, 収率36%)を得た。
1H-NMR (300.40 MHz, CD3 OD): δ0.51 (d, 3H, J= 1.8 Hz), 0.52(d, 3H J= 1.8 Hz), 2.04 (s, 3H), 3.59 (dd, 1H,J= 3.7, 9.5 Hz), 3.69-3.89 (m, 5H), 4.98 (dd, 1H, J= 3.3, 7.7 Hz), 6.23 (dd, 1H, J= 2.2, 10.3 Hz), 6.87-6.91 (m, 2H), 6.98-7.13 (m, 3H), 7.33-7.46 (m, 3H), 7.50 (d, 1H, J= 2.2 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 507.1826 calculated 507.1839 for [M+H]+ (-1.3 mmu)
【0062】
例2
上記工程(g)で得られた2-Me TokyoMagentaの吸光及び蛍光プロファイルをpH を変化させて測定した。結果を図1に示す。酸性側からアルカリ性側へのpHの変化に従って、最大吸収波長が471nm付近から582nm付近へと長波長側に変化すること(図1上)、及び550nmの励起光による発蛍光が大きく増加すること(図1下)が確認された。2-Me TokyoMagentaはpHに応じて下記の非解離型(ニュートラル型:neutral form)と解離型(アニオン型:anion form)の平衡状態として存在しているものと考えられるが、非解離型と比較し解離型では吸収スペクトルが長波長側へシフトし、吸光係数及び蛍光量子収率も変化するなど、吸光及び蛍光プロファイルが大きく相違することが判明した。
【0063】
【化15】
【0064】
2-Me TokyoMagentaの吸収波長をキサンテン環10位に酸素原子を有する2-Me TokyoGreen (9-(2'-メチルフェニル)-キサンテン-3-オン)と比較した結果を図2及び表1に示す。測定はpH3及びpH9においてリン酸ナトリウム緩衝液中で行なった。この結果、2-Me TokyoGreenに比べて2-Me TokyoMagentaではpHの変化に対応して大きな吸収波長変化が生じることが示された(表1中、pH3:neutral form及びpH9:anion form)。
【0065】
【表1】
【0066】
例3
β-ガラクトシダーゼ測定用の蛍光プローブとして設計した2-Me TokyoMagenta βgalについて酵素基質及び蛍光プローブとしての特性を評価した。0.1% ジメチルスルホキシドを含む0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)中で1μMの2-Me TokyoMagenta βgalをβ-ガラクトシダーゼ(6 unit)で処理した前後の吸収スペクトル(図3左上)並びに蛍光スペクトル(励起波長582 nm:図3右上及び448 nm:図3左下)を示す。反応の前後におけるλmaxはそれぞれ448 nm(反応前)及び582 nm(反応後)であった。
【0067】
2-Me TokyoMagenta βgalのβ-ガラクトシダーゼによる加水分解反応の進行を経時的に蛍光強度を測定することにより測定した。対照としてβ-ガラクトシダーゼ測定用の蛍光プローブとして既に広く使用されている2-Me-4-OMe TokyoGreen βgal (9-(4'-メトキシ-2'-メチルフェニル)-6-(β-D-ガラクトピラノシルオキシ)-キサンテン-3-オン)を用いた。反応は1μM 2-Me TokyoMagenta βgal又は2-Me-4-OMe TokyoGreen βgal及び0.1% ジメチルスルホキシドを含む0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中で37℃で行い、1 unit (1.3 μg)のβ-ガラクトシダーゼを40秒後に添加した。結果を図4に示す。下記スキームに示すように2-Me-4-OMe TokyoGreen βgalではPETの解消により蛍光が生じ、2-Me TokyoMagenta βgalではレッドシフトによる蛍光強度の増加が認められた。
【0068】
【化16】
【0069】
例4
2-Me TokyoMagenta βgalを細胞内に導入してβ-ガラクトシダーゼ測定用の蛍光プローブとして機能することを確認した。0.1%のジメチルスルホキシドを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中でHEK293細胞(lacZ(+)又はlacZ(-))を10μMの2-Me TokyoMagenta βgalとともに37℃で30分間インキュベートし、励起波長580 nm、検出波長600-620 nmで蛍光スペクトルを測定した。結果を図5に示す。lacZ(+)細胞ではβ-ガラクトシダーゼにより加水分解された蛍光プローブが発する蛍光が確認されたが、lacZ(-)細胞では蛍光は認められなかった。この結果から、2-Me TokyoMagenta βgalを細胞内に導入してβ-ガラクトシダーゼ測定用の蛍光プローブとして機能することが明らかである。
【0070】
例5
例1の工程(f)で得られた3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントンを用いて以下の方法により本発明の化合物(A)〜(E)を合成した。
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコに、ブロモベンゼン誘導体(1.0 mmol)と脱水テトラヒドロフラン(THF, 5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム (0.5 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-ジ-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-Si-キサントン(0.015-0.019 mmol)を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを5 mL加えて20分間攪拌した。反応混合物をジクロルメタンで抽出して食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を除去した後、残渣をHPLC にて精製して目的物を得た。
【0071】
(a)2,4-ジメチルTokyoMagenta(化合物(A))
【化17】
収率 : 93 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.37 (s, 6H), 1.83 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 6.21 (dd, 2H, J = 1.5, 9.5 Hz), 6.75 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 6.89-6.94 (m, 5H), 7.07 (s, 1H)
【0072】
(b)2,5-ジメチルTokyoMagenta(化合物(B))
【化18】
収率 : 96 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.38, (s, 3H), 0.40, (s, 3H), 1.82 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 6.19 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.73 (s, 1H), 6.89-7.11 (m, 6H)
【0073】
(c)2-メトキシ TokyoMagenta(化合物(C))
【化19】
収率 : 88 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.40, (s, 3H), 0.44, (s, 3H), 3. 65 (s, 3H), 6.29 (dd, 2H, J = 2.9, 9.5 Hz), 6.96-7.18 (m, 7H), 7.50 (dd, 1H, J = 7.0, 7.0 Hz)
【0074】
(d)2-メトキシ-5-メチル TokyoMagenta(化合物(D))
【化20】
収率 : 99 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.40, (s, 3H), 0.42, (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 3.58 (s, 3H), 6.23 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.75 (s, 1H), 6.95-7.03 (m, 5H), 7.21 (d, 1H, J = 8.1 Hz)
【0075】
(e)2,5-ジメトキシ TokyoMagenta(化合物(E))
【化21】
収率 : 90 %
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ0.39, (s, 3H), 0.41, (s, 3H), 3.53 (s, 3H), 3.58 (s, 3H), 6.22 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.54 (d, 1H, J = 2.9 Hz), 6.89-7.02 (m, 6H)
【0076】
例6
上記工程(g)で得られた2-Me TokyoMagentaの蛍光プロファイルをpH を変化させて測定した(励起波長471 nm)。結果を図6に示す。アルカリ側から酸性側へのpHの変化に従って、590 nm付近の蛍光強度が減少し、560 nm付近の蛍光が増加していることが確認された。2-Me TokyoMagentaはpH に応じて下記の非解離型(ニュートラル型:neutral form)と解離型(アニオン型:anion form)の平衡状態として存在しているものと考えられるが、471 nmの励起波長においては非解離型と解離型で蛍光スペクトルが大きく相違することが判明した。
【0077】
例7
以下の方法によりゲルマニウム含有化合物を合成した。
【化22】
【0078】
(a) N,N,N',N'-3,6-テトラアリルジアミノ-Ge-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、ビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン(6.16 g, 11.9 mmol) と脱水THF (40 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-ブチルリチウム(BuLi) (34 mL, 34 mmol) を加え、20分間攪拌した。そのままの温度でGeMe2Cl2 (2.62 mL, 22.7 mmol) を脱水THF 15 mLに溶解したものをゆっくりと加え、室温に戻し1時間攪拌した。2N HClで反応を止め、NaHCO3で中和した。これをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗い、有機層をNa2SO4で乾燥させた後に溶媒を除去した。これをアセトン (120 mL)に溶解し、0℃に冷却した。この混合物にKMnO4 (5.20 g, 32.9 mmol)を少量ずつ2時間かけて加え、さらに同じ温度で1時間攪拌した。この混合物にジクロルメタン (200 mL)を加えて、その溶液をろ紙を用いて吸引ろ過した。そして溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル、ジクロルメタン) で精製することにより目的物(1.29 g, 2.72 mmol, 23% yield)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.54 (s, 6H), 4.00-4.02 (m, 8H) 5.17-5.23 (m, 8H), 5.81-5.94 (m, 4H), 6.72 (d, 2H, J = 2.9 Hz), 6.78 (dd, 2H, J = 2.6, 9.2 Hz), 8.36 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ-1.8, 52.3, 112.6, 114.4, 116.2, 129.6, 131.7, 132.7, 142.8, 149.8, 184.5
LRMS (ESI+): m/z Found 475, calculated 475 for [M+H]+
【0079】
(b) 3,6-ジヒドロキシ-Ge-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、Pd(PPh3)4(330 mg, 0.285 mmol) と 1,3-ジメチルバルビツール酸(1.41 g, 9.04 mmol) を加えた。この混合物に、N,N,N',N'-テトラアリルジアミノ-Ge-キサントン (1.00 g, 2.11 mmol) をジクロルメタン 50 mL に溶解して加え、35℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して飽和Na2CO3水溶液に懸濁し、ジクロルメタンで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 4/3 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジアミノ-Ge-キサントン混合物(760 mg, quantum yield) を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.55 (s, 6H), 6.73-6.76 (m, 4H), 8.33 (d, 2H, J = 9.5 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ-1.9, 116.1, 118.3, 130.9, 133.2, 145.2, 152.9, 187.3
LRMS (ESI+): m/z Found: 315, calculated 315 for [M+H]+
【0080】
(c)3,6-ジヒドロキシ-Ge-キサントン
3,6-ジアミノ-Ge-キサントン混合物 (760 mg) を3/4, メタノール / 6 N H2SO4 (45 mL)に溶解した。0℃に冷却後、NaNO2 (838 mg, 12.1 mmol) をH2O 5mLに溶解してゆっくりと加え、そのままの温度で1時間攪拌した。それを沸騰した1 N H2SO4 (70 mL) にゆっくりと加え、さらに10分間還流した後氷冷した。反応液をジクロルメタンで抽出し食塩水でよく洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジヒドロキシ-Ge-キサントン(478 mg, 1.52 mmol, 56% yield in 2 steps) を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.58 (s, 6H), 6.90 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.0 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 8.25 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ-2.0, 117.7, 120.0, 133.7, 133.8, 145.6, 162.0, 187.7
LRMS (ESI+): Found 317, calculated 317 for [M+H]+
【0081】
(d)3,6-diTBDMSO-Ge-キサントン
ジヒドロキシ-Ge-キサントン(478 mg, 1.52 mmol)、イミダゾール(1.77 g, 26.0 mmol) をジクロルメタン 150 mLに溶解し、TBDMSCl (3.70 g, 24.5 mmol)をジクロルメタン 50mLに溶解してゆっくりと加えて室温で14時間攪拌した。この混合物にH2Oを加えてジクロルメタンで抽出し食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル, 1/30 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-diTBDMSO-Ge-キサントン (702 mg, 1.29 mmol, 85% yield)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.25 (s, 12H), 0.59 (s, 6H), 1.01 (s, 18H), 6.92-6.98 (d, 4H, m), 8.36 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ-4.4, -1.6, 18.2, 25.8, 121.1, 123.7, 132.5, 134.6, 143.6, 158.6, 185.9
LRMS (ESI+): m/z Found 145, calculated 145 for [M+H]+
【0082】
(e)一般式(I)で表される化合物の合成(一般的手法)
よく乾燥させアルゴン置換したフラスコにブロモベンゼン誘導体 (1.0 mmol) と脱水THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-BuLi (0.5 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-diOTBDMS-X-キサントン (0.015-0.020 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して一般式(I)で表される化合物を得た。
【0083】
(e)2-Me Ge-TM
上記(e)の方法に従って目的物を得た(99% yield)
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ 0.42 (s, 6H), 1.80 (s, 3H), 6.11 (dd, 2H, J = 2.2, 9.5 Hz), 6.79-6.86 (m, 5H), 7.06-7.26 (m, 4H)
HRMS (ESI+): m/z Found 391.0755, calculated 391.0753 for [M+H]+ (0.2 mmu)
【0084】
例8
【化23】
【0085】
(a)N,N,N',N'-3,6-テトラアリルジアミノ-ジエチルSi-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコにビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン(1.65 g, 3.20 mmol) と脱水THF (20 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-BuLi (10 mL, 10 mmol) を加え、20分間攪拌した。そのままの温度でSiEt2Cl2(1.04 mL, 7.02 mmol、Etはエチル基を示す) を脱水THF 5 mLに溶解してゆっくり加え、室温に戻し1時間攪拌した。2N HClで反応を止め、NaHCO3で中和した。これをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗い、有機層をNa2SO4で乾燥させた後に溶媒を除去した。これをアセトン(50 mL)に溶解し、0℃に冷却した。この混合物にKMnO4 (1.49 g, 9.43 mmol)を少量ずつ2時間かけて加え、さらに同じ温度で1時間攪拌した。この混合物にジクロルメタン(50 mL)を加えて、その溶液をセライトろ過した。そして溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル, 10/1 ヘキサン/酢酸エチル) で精製することによりN,N,N',N'-3,6-テトラアリルジアミノ-ジエチルSi-キサントン (419 g, 0.917 mmol, 29% yield)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.91 (s, 10H), 4.01-4.02 (m, 8H) 5.17-5.22 (m, 8H), 5.82-5.94 (m, 4H), 6.79-6.84 (m, 4H), 8.35 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ5.56, 7.48, 52.7, 113.3, 115.0, 116.5, 130.9, 131.6, 133.1, 138.3, 149.9, 185.3
HRMS (ESI+): m/z Found 457.2661, calculated 457.2675 for [M+H]+ (-1.5 mmu)
【0086】
(b)3,6-ジアミノ-ジエチルSi-キサントン
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、Pd(PPh3)4(204 mg, 0.176 mmol) と1,3-ジメチルバルビツール酸(1.04 g, 6.67 mmol) を加えた。この混合物に、N,N,N',N'-テトラアリルジアミノ-ジエチルSi-キサントン (419 mg, 0.917 mmo) をジクロルメタン 30 mL に溶解して加え、35℃で16時間攪拌した。溶媒を除去して飽和Na2CO3水溶液に懸濁し、ジクロルメタンで抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 4/5 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジアミノ-ジエチルSi-キサントン (236 mg, 0.796 mmol, 87% yield) を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ0.83-0.95 (m, 10H), 4.10 (s, 4H), 6.76-6.81 (m, 4H), 8.33 (d, 2H, J = 7.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ5.37, 7.38, 116.2, 117.5, 132.0, 132.9, 138.8, 148.9, 185.5
HRMS (ESI+): m/z Found 297.1462, calculated 297.1423 for [M+H]+ (3.9 mmu)
【0087】
(c)3,6-ジヒドロキシ-ジエチルSi-キサントン
3,6-ジアミノ-ジエチルSi-キサントン混合物(236 mg, 0.796 mmol) を3/4 メタノール/6N H2SO4(35 mL)に溶解した。0℃に冷却後、NaNO2 (315 mg, 4.56 mmol) をH2O 3 mLに溶解したてゆっくりと加え、そのままの温度で1時間攪拌した。それを沸騰した1 N H2SO4 (50 mL) にゆっくりと加え、さらに10分間還流した後に氷冷した。反応液をジクロルメタンで抽出し、食塩水でよく洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-ジヒドロキシ-ジエチルSi-キサントン(74.3 mg, 0.249 mmol, 31% yield)を得た。
1H NMR (300 MHz, CD3OD): δ0.83-1.04 (m, 10H), 6.99 (dd, 2H, J = 2.2, 8.8 Hz), 7.09 (d, 2H, J = 2.9 Hz), 8.31 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C NMR (75 MHz, CD3OD): δ6.07, 7.56, 118.4, 120.0, 133.4, 135.0, 140.9, 162.0, 187.9
HRMS (ESI+): m/z Found 321.0964, calculated 321.0923 for [M+Na]+ (4.1 mmu)
【0088】
(d)3,6-diTBDMSO-ジエチルSi-キサントン
ジヒドロキシ-ジエチルSi-キサントン(74.3 mg, 0.249 mmol)、イミダゾール(326 mg, 4.79 mmol)をジクロルメタン 20 mLに溶解し、TBDMSCl (715 mg, 4.74 mmol)をジクロルメタン 5 mLに溶解してゆっくり加えて室温で14時間攪拌した。この混合物にH2Oを加えてジクロルメタンで抽出し、食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー (シリカゲル、1/30 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、3,6-diTBDMSO-ジエチルSi-キサントン (93.2 mg, 0.177 mmol, 71% yield)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.26 (s, 12H), 0.85-1.02 (m, 28H), 6.98-7.05 (m, 4H), 8.39 (d, 2H, J = 8. Hz)
13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ-4.14, 5.46, 7.45, 18.5, 25.8, 122.1, 123.9, 132.5, 135.8, 139.2, 158.7, 186.3
HRMS (ESI+): m/z Found 527.2869, calculated 527.2833 for [M+H]+ (3.6 mmu)
【0089】
(e)2-Me DiEtTM
例8の工程(e)の方法に従って目的物を得た(94% yield)。
1H NMR (300 MHz, D2O, CD3OD): δ0.78-1.00 (m, 10H), 1.94 (s, 3H), 8.26 (dd, 2H, J = 2.6, 9.2 Hz) 6.88-6.98 (m, 5H), 7.24-7.39 (m, 3H)
HRMS (ESI+): m/z Found 373.1621, calculated 373.1624 for [M+H]+ (-0.3 mmu)
【0090】
例1、例7、及び例8で得られた2-Me TM、2-Me Ge-TM、及び2−Me DiEtTMの光学特性を下記の表2に示す。表中、aはリン酸バッファー(pH 9)で測定し、bについては1% DMSOを含む0.1M リン酸バッファー中で測定した。
【表2】
【0091】
例9:2-COOH TMの合成
【化24】
【0092】
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、2-ブロモ安息香酸tert-ブチル(800 mg, 3.11 mmol) と脱水 THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1 M sec-BuLi (2.0 mmol) を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-diOTBDMS-Si-キサントン (40.0 mg, 0.0802 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で30分間攪拌後、2N HClを10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣にトリフルオロ酢酸(TFA、3 mL)を加えて室温で1時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-COOH TM (13.6 mg, 0.0358 mmol, 45% yield)を得た。
【0093】
1H-NMR (300 MHz, CD3COCD3): δ 0.56 (s, 3H), 0.64 (s, 3H), 6.76 (dd, 2H J = 2.9, 8.8 Hz), 6.83 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.23 (d, 2H J = 2.9 Hz), 7.38 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.67 (td, 1H, J = 1.5, 7.3 Hz), 7.80 (td, 1H, J = 1.5, 7.3 Hz), 7.94 (dd, 1H, J = 1.5, 7.3 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3COCD3): δ -1.4, 0.2, 91.1, 117.6, 121.1, 125.5, 126.3, 127.0, 129.3, 130.1, 135.1, 136.7, 138.2, 155.3, 157.7, 170.4
HRMS (ESI+): m/z Found 375.1018 , calculated 375.1053 for [M+H]+ (-3.5 mmu)
【0094】
例10
【化25】
【0095】
(a)4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン
3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(81.1 mg, 0.300 mmol)をメタノール(5 mL) に溶解し、この混合物に NaOCl を100 mMになるように溶かした 0.1 N NaOH 4 mLをゆっくりと加え室温で1時間攪拌した。反応液に2 N HCl を加えてpH 2とした後に酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(83.8 mg, 0.247 mmol, 82 % yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.80 (s, 1H), 7.11 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.27 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD): δ -1.6, 119.0, 127.0, 132.0, 133.8, 141.4, 158.4, 186.0
HRMS (ESI+): m/z Found 339.0053, calculated 339.0011 for [M+H]+ (4.2 mmu)
【0096】
(b)4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン
4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(69.0 mg, 0.203 mmol)、イミダゾール(54.5 mg, 0.801 mmol)をジクロルメタン(10 mL)に溶解し、TBDMSCl(121 mg, 0.803 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロルメタン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(109 mg, 0.193 mmol, 95% yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.30 (s, 12H), 0.81 (s, 6H), 1.06 (s, 18H), 7.06 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.35 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ -4.3, -2.0, 18.4, 25.6, 121.5, 130.6, 131.0, 134.2, 140.5, 155.1, 184.9
HRMS (ESI+): m/z Found 567.1731, calculated 567.1740 for [M+H]+ (-0.9mmu)
【0097】
(c)2-Me DCTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに2-ブロモトルエン(17.1 mg, 0.100 mmol)と脱水THF (2 mL) を加えた。-78℃に冷却後、1M sec-BuLi (0.10 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(11.3 mg, 0.0200 mmol) を脱水THF 2 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを2 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me DCTM (8.2 mg, 0.020 mmol, 99% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD): δ 0.87 (s, 3H), 0.87 (s,3H), 2.04 (s, 3H), 6.57 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 7.10 (d, 2H, J = 6.6 Hz), 7.32-7.47 (m, 3H)
HRMS (ESI+): m/z Found 413.0526, calculated 413.0531 for [M+H]+ (-0.5mmu)
【0098】
(d)2-COOH DCTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに2-ブロモ安息香酸tert-ブチル(129 mg, 0.502 mmol)と脱水 THF (5 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1 M sec-BuLi (0.30 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(11.3 mg, 0.0200 mmol) を脱水THF 5 mL に溶解してゆっくりと加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣にTFA (5 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-COOH DCTM (5.7 mg, 0.013 mmol, 64% yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.83 (s, 3H), 0.98 (s, 3H), 6.85 (d, 2H J = 8.8 Hz), 6.89 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 6.98 (d, 1H J = 7.8 Hz), 7.51 (td, 1H, J = 1.0, 7.6 Hz), 7.60 (td, 1H, J = 1.0, 7.6 Hz), 7.90 (d, 1H, J = 7.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3COCD3): δ -0.2, 0.5, 90.0, 119.8, 123.6, 124.3, 126.4, 127.1, 127.8, 129.9, 135.1, 136.2, 136.7, 153.6, 158.3, 171.2
HRMS (ESI+): m/z Found 443.0241, calculated 443.0273 for [M+H]+ (-3.2 mmu)
【0099】
(e)4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン
3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン (13.5 mg, 0.050 mmol)をアセトニトリル(3 mL)に溶解し、この混合物に Selectfluor(登録商標, 35.4 mg, 0.1 mmol)を加え、80℃で一晩加熱還流を行った後、HPLC で精製して4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(4.1 mg, 0.013 mmol, 27 % yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.62-0.63 (m, 6H), 7.12 (m, 2H), 8.13 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
HRMS (ESI+): m/z, Found 329.0393, calculated 329.0422 for [M + Na]+ (-2.9 mmu)
【0100】
(f)4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン
4,5-ジフルオロ-3,6-ジヒドロキシ-Si-キサントン(3.1 mg, 0.010 mmol)、イミダゾール(6.8 mg, 0.10 mmol)をジクロルメタン(2 mL)に溶解し、TBDMSCl(15.1 mg, 0.10 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロルメタン)で精製することにより、4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(4.7 mg, 0.088 mmol, 88% yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.25 (s, 12H), 0.64 (s, 6H), 1.02 (s, 18H), 7.09 (t, 2H, J = 8.8 Hz), 8.20 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 535.2380, calculated 535.2332 for [M + H]+ (4.8 mmu)
【0101】
(g)2-Me DFTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに2-ブロモトルエン(85.5 mg, 0.500 mmol)と脱水THF (3 mL) を加えた。 -78℃に冷却後、1M sec-BuLi (0.050 mmol)を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(5.4 mg, 0.010 mmol)を脱水THF 3 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを2 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me DFTM (3.8 mg, 0.010 mmol, quant.)を得た。
1H-NMR (300 MHz, D2O): δ 0.60-0.64 (m, 6H), 1.94 (s, 3H), 6.42 (t, 2H, J = 9.5 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 6.95 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.22 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 7.32 (t, 1H, J = 7.3 Hz), 7.44 (d, 1H, J = 7.3 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 381.11145, calculated 381.1122 for [M + H]+ (2.3 mmu)
【0102】
(h)2-COOH DFTM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに、2-ブロモ安息香酸tert-ブチル(51 mg, 0.20 mmol)と脱水 THF (3 mL)を加えた。-78℃に冷却後、1 M sec-BuLi(0.30 mmol) を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で4,5-ジフルオロ-3,6-diOTBDMS-Si-キサントン(5.4 mg, 0.010 mmol) を脱水THF 3 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを10 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣にTFA (3 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-COOH DFTM (2.2 mg, 0.054 mmol, 54% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD): δ 0.68 (s, 3H), 0.79 (s, 3H), 6.66 (d, 2H J = 8.8 Hz), 6.87 (t, 2H, J = 9.2 Hz), 7.13 (d, 1H J = 7.3 Hz), 7.57-7.68 (m, 2H), 7.92 (d, 1H, J = 8.1 Hz)
HRMS (ESI+): m/z Found 411.0902 , calculated 411.0864 for [M+H]+ (3.8 mmu)
【0103】
例11
【化26】
【0104】
(a)4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン
3,6-ジヒドロキシキサントン (45.6 mg, 0.200 mmol) をメタノール (5 mL) に溶解し、そこに NaOCl を10 mMになるように溶かした 0.1 N NaOH 45 mLをゆっくりと加え室温で一晩攪拌した。反応液に2 N HCl を加えてpH 2とした後に酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させて溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 2/1 酢酸エチル/ヘキサン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン(57.3 mg, 0.193 mmol, 96 % yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD): δ 7.02 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.01 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CD3OD): δ 109.2, 114.7, 116.0, 126.4, 154.9, 161.2, 176.7
HRMS (ESI+): m/z Found 318.9527, calculated 318.9541 for [M+Na]+ (-1.4 mmu)
【0105】
(b)4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-キサントン
4,5-ジクロロ-3,6-ジヒドロキシキサントン(44.6 mg, 0.150 mmol)、イミダゾール (40.8 mg, 0.600 mmol) をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、TBDMSCl (90.4 mg, 0.600 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, ジクロロメタン)で精製することにより、4,5-ジクロロ-3,6-diOTBDMS-キサントン (68.2 mg, 0.130 mmol, 87% yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.31 (s, 12H), 1.07 (s, 18H), 6.95 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 8.12 (d, 2H, J = 8.8 Hz)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ -4.2, 18.4, 25.6, 113.8, 116.7, 117.1, 125.2, 153.5, 157.6, 175.2
HRMS (ESI+): m/z Found 525.1495, calculated 525.1451 for [M+H]+ (4.4 mmu)
【0106】
例9及び例10で得られた2-COOH TM、2-Me DCTM、2-COOH DCTM、2-Me DFTM、及び2-COOH DFTMの光学特性を下記の表3に示す。測定は1% DMSOを含む0.1M リン酸バッファー(pH 9)中で行った。pKaはリン酸バッファー(pH 9)中での吸収から単相性又は二相性の曲線フィッチングにより求めた。量子収率は0.1M リン酸バッファー(pH 9)においける2-Me TokyoMagentaの量子収率(0.42)を標準として求めた。
【0107】
【表3】
【0108】
例12
【化27】
【0109】
2-Me TM (10.6 mg, 0.0308 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン (DIEA、17.4 μL, 0.0999 mmol)をアセトニトリル(5 mL)に溶解しブロモメチル酢酸エステル(9.8μL, 0.10 mmol)をゆっくり加え、室温で一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製して2-Me TMAM (8.9 mg, 0.021 mmol, 69% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.49 (s, 3H), 0.51 (s, 3H), 2.06 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 5.79 (s, 2H), 6.31 (dd, 1H, J = 9.5, 2.2 Hz), 6.89-6.99 (m, 3H), 7.00 (dd, 1H, J = 9.5, 2.2 Hz), 7.09 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.30-7.40 (m, 4H)
HRMS (ESI+): m/z Found 417.1536, calculated 417.1522 for [M + H]+ (1.4 mmu)
【0110】
例13
【化28】
【0111】
(a)2-Me-4-COOH TM
乾燥させアルゴン置換したフラスコに4-ブロモ-3-メチル安息香酸tert-ブチル(1.08 g, 3.98 mmol) と脱水 THF (20 mL)を加えた。 -78℃に冷却後、1 M sec-BuLi (4.0 mmol) を加えて20分間攪拌した。そのままの温度で3,6-diOTBDMS-Si-キサントン (200 mg, 0.403 mmol) を脱水THF 10 mL に溶解してゆっくり加え、室温に戻した。室温で1時間攪拌後、2N HClを20 mL加えて20分間攪拌した。それをジクロルメタンで抽出して食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、残渣に TFA (20 mL)を加えて室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/24 メタノール/ジクロルメタン) で精製することにより2-Me-4-COOH TM (148 mg, 0.381 mmol, 96 % yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3COCD3): δ 0.51 (s, 3H), 0.53 (s,3H), 2.14 (s, 3H), 6.50 (dd, 2H, J = 2.4, 9.8 Hz), 6.84 (d, 2H, J = 9.8 Hz), 7.11 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 7.31 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 8.03 (dd, 1H, J = 1.0, 7.8 Hz), 8.05 (s, 1H)
13C-NMR (100 MHz, CD3COCD3): δ -1.5, -1.3, 19.5, 123.0, 128.0, 130.1, 130.5, 131.4, 132.1, 137.5, 139.2, 145.0, 145.1, 145.3, 156.4, 167.4, 172.2
HRMS (ESI+): m/z Found 389.1209, calculated 389.1209 for [M+H]+ (0.0 mmu)
【0112】
(b)2-Me TMCOOAM
2-Me-4-COOH TM (1.9 mg, 0.0049 mmol)、DIEA (20 mg, 0.15 mmol)をアセトニトリル(1 mL)に溶解しブロモメチル酢酸エステル(25 mg, 0.16 mmol)をゆっくり加え、室温で一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製して2-Me TMCOOAM (1.3 mg, 0.0024 mmol, 50% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3CN): δ 0.49-0.52 (m, 6H), 2.04 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 5.78 (s, 2H), 5.97 (s, 2H), 6.12 (dd, 1H, J = 10.3, 2.2 Hz), 6.77 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 6.82 (d, 1H, J = 2.2 Hz), 6.85 (d, 1H, J = 10.3 Hz), 6.92 (dd, 1H, J = 8.8, 2.9 Hz), 7.28 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.41 (d, 1H, J = 2.9 Hz), 7.99 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.05 (s, 1H)
HRMS (ESI+): m/z Found 533.1596, calculated 533.1632 for [M + H]+ (-3.6 mmu)
【0113】
例14
ベンゼン環に親水性官能基を導入した化合物を以下のように合成した。
(a)2-Me TMIDA
【化29】
【0114】
2-Me-4-COOH TM(77.6 mg, 0.200 mmol)、HATU (114 mg, 0.300 mmol)、HOBt・H2O (45.9 mg, 0.300 mmol)、ジ-tert-ブチルイミノジアセテート (490 mg, 2.00 mmol)、DIEA (258 mg, 2.00 mmol) を DMF (20 mL) に溶解し室温で3時間攪拌した。酢酸エチル(50 mL)を加え、2N HCl で洗い、食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/24 メタノール/ジクロロメタン)で精製した。トリフルオロ酢酸(10 mL)を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me TMIDA (58.8 mg, 0.117 mmol, 59% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3COCD3): δ 0.50 (s, 3H), 0.51 (s, 3H), 2.09 (s, 3H), 4.32 (s, 2H), 4.37 (s, 2H), 6.48 (dd, 2H, J = 9.5, 2.2 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 7.09 (d, 2H, J = 2.2 Hz), 7.24 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.42 (dd, 1H, J = 7.3, 1.5 Hz), 7.45 (d, 1H, J = 1.5 Hz)
13C-NMR (75 MHz, CD3COCD3): δ -1.6, -1.3, 19.5, 48.5, 52.4, 123.0, 125.1, 129.5, 130.0, 130.3, 130.7, 136.4, 137.5, 139.4, 142.2, 145.2, 156.7, 170.7, 171.3, 172.1
HRMS (ESI+): m/z Found 504.1471, calculated 504.1479 for [M + H]+ (-0.8 mmu)
【0115】
(b)2-Me TMIDAAM
【化30】
【0116】
2-Me TMIDA (5.0 mg, 0.0099 mmol)、DIEA (3.5 μL, 0.020 mmol) をアセトニトリル(1 mL)に溶解し、ブロモメチルアセテート(3.0 μL, 0.31 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。DIEA (3.5 μL, 0.020 mmol) とブロモメチルアセテート(3.0μL, 0.31 mmol)をゆっくりと加え、室温でさらに一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製して2-Me TMIDAAM (1.1 mg, 0.0015 mmol, 15% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3CN): δ 0.49-0.52 (m, 6H), 2.01 (s, 3H), 2.04 (s, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.09 (s,3H), 4.28-4.31 (m, 4H), 5.73 (s, 2H), 5.77 (s, 2H), 5.79 (s, 2H), 6.14 (d, 1H, J = 10.3, 2.2 Hz), 6.81-6.98 (m, 4H), 7.19 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.33 (d, 1H, J = 8.1 Hz),7.38-7.43 (m, 2H); HRMS (ESI+): m/z Found 720.2120, calculated 720.2112 for [M+H]+ (0.8 mmu).
【0117】
(c)2-Me TMIDAIDA
【化31】
【0118】
2-Me TMIDA(25.2 mg, 0.0500 mmol)、HATU (190 mg, 0.500 mmol)、HOBt・H2O (77 mg, 0.50 mmol)、ジ-tert-ブチルイミノジアセテート(245 mg, 1.00 mmol)、DIEA (129 mg, 1.00 mmol) を DMF (5 mL) に溶解し室温で8時間攪拌した。ジクロロメタン(50 mL)を加え、2N HCl で洗い、食塩水で洗った。有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1/24 メタノール/ジクロロメタン) で精製した。トリフルオロ酢酸(10 mL)を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を除去した後、HPLC で精製して2-Me TMIDAIDA (5.2 mg, 0.0070 mmol, 14% yield)を得た。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD + NaOD): δ 0.45 (s, 3H), 0.46 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 3.80-4.00 (m, 8H), 4.49-4.55 (m, 4H), 6.29 (dd, 2H J = 9.5, 2.9 Hz), 6.86 (d, 2H, J = 9.5 Hz), 6.89 (d, 1H J = 2.9 Hz), 7.19 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.54 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.58 (s, 1H)
HRMS (ESI+): m/z Found 734.1985, calculated 734.2017 for [M+H]+ (-3.2 mmu)
【0119】
(d)2-Me TMIDAIDAAM
【化32】
【0120】
2-Me TMIDAIDA (2.7 mg, 0.0037 mmol)、DIEA (3.6 iL, 0.021 mmol) をアセトニトリル(3 mL)に溶解し、ブロモメチルアセテート(2.0μL, 0.020 mmol)をゆっくりと加え、室温で一晩攪拌した。DIEA (1.8 μL, 0.010 mmol) とブロモメチルアセテート(1.0 μL, 0.010 mmol)をさらに加え、室温で一晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLCで反応中間体であるテトラAMエステル体を精製した。得られた中間体(2.1 mg)、DIEA (3.6μL, 0.020 mmol) をアセトニトリル(2 mL)に溶解し、ブロモメチルアセテート(1.0μL, 0.010 mmol)をゆっくりと加え、室温で二晩攪拌した。酢酸を加えて中和した後、HPLC で精製し、2-Me TMIDAIDAAM (0.8 mg, 0.0007 mmol,20% yield)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ 0.38-0.43 (m, 6H), 1.96-2.04 (m, 18H), 3.98 (s, 2H), 4.12 (s, 2H), 4.17 (s, 2H), 4.26 (s, 2H), 4.29 (s, 2H), 4.34 (s, 2H), 5.59 (s, 2H), 5.64 (s, 2H), 5.67 (s, 2H), 5.69 (s, 2H), 5.73 (s, 2H), 6.09 (d, 1H, J = 9.8 Hz), 6.72 (d, 1H, J = 2.0 Hz)6.82-6.90 (m, 3H), 7.09 (dd, 1H, J = 7.8, 2.0 Hz), 7.22 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 7.30 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.36 (s, 1H)
HRMS (ESI+): m/z Found 1094.3043, calculated 1094.3074 for [M+H]+ (-3.1 mmu)
【0121】
例15
ベンゼン環に親水性のIDA構造を有する官能基を導入した化合物の細胞内滞留性を検討した。IDA構造の導入によって細胞内滞留性が向上し、長時間のイメージングが可能になることが示された(図13)。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物又はその塩は、非解離型(ニュートラル型)と解離型(アニオン型)との最大吸収波長が大きく乖離しており、フルオレセイン誘導体の場合に比べて約2倍以上の波長変化を与えることから、分子内光誘起電子移動及びスピロ環化の制御に依存せずにpH、活性酸素種、又は各種酵素などを高感度に測定可能な蛍光プローブを製造するための母核化合物として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13