特許第5843364号(P5843364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843364
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20151217BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20151217BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K3/08
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-179637(P2012-179637)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-37460(P2014-37460A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 謙一
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 展明
(72)【発明者】
【氏名】木崎 弘明
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209165(JP,A)
【文献】 特開2009−274929(JP,A)
【文献】 特開2007−277406(JP,A)
【文献】 特開2009−138036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08L 83/05
C08K 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルミニウム粉末 750〜1350質量部、及び
下記(B)、(C)、及び(D)成分を含有するシリコーン組成物 100質量部
(B)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(C)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分が有するアルケニル基の個数に対する(C)成分が有するSi−H基の個数が0.5〜2.5となる量、及び
(D)白金族金属系触媒 白金族金属原子として(B)成分の質量に対し0.1〜500ppmとなる量
を含有し、シリコーンレジンを含まない熱伝導性組成物であって、
上記(A)アルミニウム粉末が、
(A−1)平均粒径0.4μm以上6μm未満を有するアルミニウム粉末 (A)成分中に21〜53質量%となる量、
(A−2)平均粒径6μm以上13μm未満を有するアルミニウム粉末 (A)成分中に3〜35質量%となる量、及び
(A−3)平均粒径13μm以上30μm以下を有するアルミニウム粉末 (A)成分中に28〜65質量%となる量
からなる事を特徴とする、熱伝導性組成物。
【請求項2】
シリコーン組成物が、更に(E)制御剤を(B)成分100質量部に対して0.1〜5質量部となる量で含有する、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
シリコーン組成物が、更に(F)下記一般式(1)で表される加水分解性メチルポリシロキサン
【化1】
(aは5〜100の整数であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜6のアルキル基である)
を(B)成分100質量部に対して20〜90質量部となる量で含有する、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
(E)制御剤が、アセチレン化合物、窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物、及び有機クロロ化合物より選択される1以上である、請求項2または3に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
(B)オルガノポリシロキサンが、25℃の動粘度10〜100,000mm/sを有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
シリコーン組成物が、更に(G)下記一般式(2)で表されるオルガノシラン
Si(OR4−f−g (2)
(式中、Rは、互いに独立に、炭素数9〜15のアルキル基であり、Rは、互いに独立に、置換又は非置換の、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜6の1価アルキル基であり、fは1〜3の整数であり、gは0〜2の整数であり、但しf+gは1〜3である)
を(B)成分100質量部に対して0.1〜10質量部となる量で含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の熱伝導性組成物を硬化して得られるシリコーンゴム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の熱伝導性組成物からなる放熱性グリース。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項記載の熱伝導性組成物を硬化して得られる放熱性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導率を有し、同時に低粘度である熱伝導性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は動作時に発熱することが広く知られている。また、半導体素子の温度上昇は性能の低下を招くため素子の冷却が必要である。一般的な方法としては発熱部材の近くに冷却部材(ヒートシンクなど)を設置することで冷却を行っている。この際に発熱部材と冷却部材の接触が悪いと空気が介在し、冷却効率が低下するために発熱部材と冷却部材の密着を向上させる目的で放熱グリースや放熱シートなどが用いられている。
【0003】
特許文献1は、液状シリコーンと、熱伝導率が100W/mK以上であり硬度の高い熱伝導性充填剤、及び、熱伝導率が20W/mK以上であり硬度の低い熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性材料を記載している。特許文献2は、液状炭化水素油及び/又はフッ化炭化水素油と、硬度が高く熱伝導率が100W/mK以上、及び、硬度が低く熱伝導率が20W/mK以上の熱伝導性充填剤を含有する熱伝導性材料を記載している。特許文献1及び2は、上記組合せとすることにより熱伝導性に優れると共にディスペンス性にも優れた熱伝導性材料を提供できることを記載している。特許文献3は、オルガノポリシロキサンと平均粒径50μm以下の酸化アルミニウム粉からなる未硬化の熱伝導性シリコーン組成物と熱伝導性シリコーンゴムシートとを積層した熱伝導性シートを記載している。
【0004】
近年、サーバー向けなど高品位機種の半導体に関して、ますます動作時の発熱量が増大している。発熱量の増大に伴って放熱グリースや放熱シートに要求される放熱性能も向上している。放熱性能の向上とは、即ち、放熱グリースや放熱シートなどの熱抵抗を下げる、または熱伝導率を高めることである。従来技術では熱伝導率を高めるために熱伝導性フィラーの充填率を向上させることが試みられているが、フィラーの含有量を上げると組成物の粘度が上昇してしまい、吐出することが困難となるという課題があった。
【0005】
上記課題を解決するために、これまで熱伝導性フィラーの組み合わせについて種々検討がなされてきた。特許文献4は、室温に於ける動粘度が10〜500mm/sのシリコーンオイル10〜30質量%と、平均粒径1μm以上3μm未満の球状アルミナ微粉40〜60質量%、平均粒径1μm以上3μm未満の窒化アルミニウム微粉4〜10質量%、平均粒径0.1μm以上1μm未満の球状アルミナ超微粉10〜30質量%を含有してなることを特徴とする熱伝導性グリースを記載している。特許文献5は、オルガノポリシロキサン15〜35質量%、平均粒径0.2μm以上1.0μm未満の球状アルミナ粉35〜55質量%、平均粒径1〜3μm、最大粒径2〜10μmの窒化アルミニウム粉30〜50質量%よりなることを特徴とする熱伝導性グリースを記載している。特許文献6は、液状オルガノポリシロキサンと、平均粒径0.5μm〜5μmの細粉と平均粒径10μm〜40μmの粗粉が9/1〜1/9の比率で混合してなる、平均粒径が0.5μm〜50μmの金属アルミニウム粉末とを組み合わせた熱伝導性グリース組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2938428号公報
【特許文献2】特許第2938429号公報
【特許文献3】特許第3952184号公報
【特許文献4】特許第3891969号公報
【特許文献5】特許第3957596号公報
【特許文献6】特許第3948642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記熱伝導性グリース組成物はいずれも、熱伝導率が十分でないという問題や、熱伝導率は高いが粘度が高すぎるという問題を有する。そこで、本発明は、従来の熱伝導性グリース組成物に比べ、熱伝導率が高く、かつ低粘度である熱伝導性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、細かい平均粒径を有するアルミニウム粉末と、中程度の平均粒径を有するアルミニウム粉末と、粗い平均粒径を有するアルミニウム粉末とを特定の比率で配合したアルミニウム粉末を、(B)オルガノポリシロキサン、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(D)白金族金属系触媒を含むシリコーン組成物に配合することにより、熱伝導率が高く、かつ低粘度である熱伝導性組成物を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(A)アルミニウム粉末 750〜1350質量部、及び
下記(B)、(C)、及び(D)成分を含有するシリコーン組成物 100質量部
(B)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(C)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分が有するアルケニル基の個数に対する(C)成分が有するSi−H基の個数が0.5〜2.5となる量、及び
(D)白金族金属系触媒 白金族金属原子として(B)成分の質量に対し0.1〜500ppmとなる量
を含有し、シリコーンレジンを含まない熱伝導性組成物であって、
上記(A)アルミニウム粉末が、
(A−1)平均粒径0.4μm以上6μm未満を有するアルミニウム粉末 (A)成分中に21〜53質量%となる量、
(A−2)平均粒径6μm以上13μm未満を有するアルミニウム粉末 (A)成分中に3〜35質量%となる量、及び
(A−3)平均粒径13μm以上30μm以下を有するアルミニウム粉末 (A)成分中に28〜65質量%となる量
からなる事を特徴とする、熱伝導性組成物を提供する。また、本発明は、該熱伝導性組成物からなる放熱性グリース、及び熱伝導性組成物を硬化して得られるシリコーンゴム及び放熱性シートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、細かい平均粒径を有するアルミニウム粉末と、中程度の平均粒径を有するアルミニウム粉末と、粗い平均粒径を有するアルミニウム粉末とを特定の比率で配合したアルミニウム粉末を配合することにより、熱伝導率が高く、かつ低粘度である熱伝導性組成物を提供することを可能にした。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)アルミニウム粉末
本発明は、熱伝導性組成物が、(A−1)平均粒径0.4μm以上6μm未満を有するアルミニウム粉末と、(A−2)平均粒径6μm以上13μm未満を有するアルミニウム粉末と、(A−3)平均粒径13μm以上30μm以下を有するアルミニウム粉末とからなるアルミニウム粉末を含有し、上記(A−1)〜(A−3)成分が特定の比率で配合されていることを特徴とする。
【0012】
尚、本発明において「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。レーザー回折・散乱法によるアルミニウム粉末の平均粒径及び粒度分布の測定は、例えば、マイクロトラック粒度分析計MT3300EX(日機装(株)社製)により測定できる。また、アルミニウム粉末の形状は不定形でも球状でも如何なる形状でもよく、事前に表面を処理した粉末であってもよい。アルミニウム粉末の形状には例えば、鱗片状、涙滴状、球状、針状、不規則形状等がある。
【0013】
本発明の熱伝導性組成物は、(A)アルミニウム粉末をシリコーン組成物100質量部に対して750〜1350質量部、好ましくは750〜1300質量部、より好ましくは800〜1300質量部で含有する。(A)アルミニウム粉末の含有量が上記下限値未満では組成物の熱伝導率が低くなり、上記上限値超では組成物の粘度が上昇するため好ましくない。
【0014】
(A−1)は平均粒径0.4μm以上6μm未満、より好ましくは0.4μm以上3μm以下を有するアルミニウム粉末である。(A−1)の平均粒径が上記下限値より小さいと、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまうため好ましくない。また、(A−1)の平均粒径が上記上限値より大きいと(A−2)成分との間で最密充填構造をとることができず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。(A−1)の配合量は、(A)アルミニウム粉末の合計質量に対し、21〜53質量%、好ましくは23〜53質量%、更に好ましくは25〜50質量%がよい。(A−1)の配合量が上記下限値より少ないと最密充填構造をとることができないため、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。また(A−1)の配合量が上記上限値より多くても(A−2)成分との間で最密充填構造が得られず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。
【0015】
(A−2)成分は、平均粒径6μm以上13μm未満、好ましくは6μm以上12μm以下を有するアルミニウム粉末である。(A−2)成分の粒子径が上記下限値より小さいと(A−1)成分との間で最密充填構造をとることができず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。また、(A−2)成分の粒子径が上記上限値より大きいと(A−3)成分との間で最密充填構造をとることができず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。(A−2)の配合量は、(A)アルミニウム粉末の合計質量に対し、3〜35質量%、好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは7〜26質量%がよい。(A−2)成分の配合量が上記下限値より少ないと(A−1)成分との間で最密充填構造が得られず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。また、(A−2)成分の配合量が上記上限値より多くても(A−3)成分との間で最密充填構造が得られず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。
【0016】
(A−3)成分は、平均粒径13μm以上30μm以下、好ましくは15μm以上30μm以下を有するアルミニウム粉末である。(A−3)成分の平均粒径が上記下限値より小さいと熱伝導性組成物の熱伝導率が低下してしまう。また、(A−3)成分の平均粒径が上記上限値より大きいと、熱伝導性組成物の滑らかさがなくなってしまい、実際に使用した際に基材との接触が悪くなり、熱抵抗が上昇してしまう。(A−3)の配合量は、(A)アルミニウム粉末の合計質量に対し、28〜65質量%、好ましくは28〜60質量%、更に好ましくは30〜60質量%がよい。(A−3)成分の配合量が上記下限値より少ないと、熱伝導性組成物の熱伝導率が低くなってしまう。また、(A−3)成分の配合量が上記上限値より多いと、(A−1)成分及び(A−2)成分との間で最密充填構造をとることができず、熱伝導性組成物の粘度が上昇してしまう。
【0017】
本発明において、上記(A−1)、(A−2)、及び(A−3)からなるアルミニウム粉末のレーザー回折法による体積積算分布曲線の形は特に制限されるものでなく、該曲線が極大ピークを3つ有するものであっても、2つ有するものであっても、1つ有するものであってもよい。また、上記(A)アルミニウム粉末は、予め3種類の平均粒径を有するアルミニウム粉末が混合された状態のアルミニウム粉末であってもよい。その場合、混合後のアルミニウム粉末の質量基準での粒度頻度分布において、6μm未満である細かい粒径を有するアルミニウム粉末の含有量が21〜53質量%、好ましくは23〜53質量%、更に好ましくは25〜50質量%となる量であり、該細かい粒径を有するアルミニウム粉末の平均粒径が0.4μm以上6μm未満であり、6μm以上13μm未満である中程度の粒径を有するアルミニウム粉末の含有量が3〜35質量%、好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは7〜26質量%となる量であり、及び13μm以上である粗い粒径を有するアルミニウム粉末の含有量が28〜65質量%、好ましくは28〜60質量%、更に好ましくは30〜60質量%であり、該粗い粒径を有するアルミニウム粉末の平均粒径が13μm以上30μm以下であるのがよい。上記質量基準での粒度頻度分布は遠心沈降法またはレーザー回折法により測定されればよい。
【0018】
また、本発明の組成物は、上記アルミニウム粉末以外に、さらに、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、ダイヤモンド粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、カーボン粉末、ニッケル粉末、インジウム粉末、ガリウム粉末、金属ケイ素粉末、シリカ粉末をシリコーン組成物100質量部に対して200質量部まで、好ましくは150質量部まで含有していてもよい。特には、(A)アルミニウム粉末との合計質量が、シリコーン組成物100質量部に対して750〜1350質量部、好ましくは750〜1300質量部、より好ましくは800〜1300質量部であるのが良い。充填剤の形状は不定形でも球状でも如何なる形状でもよく、事前に表面を処理した粉末であってもよい。充填剤の平均粒径は1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜30μmである。該平均粒径が上記上限値超では、組成物中での分散性が悪くなりやすく、得られる組成物を放置しておくと充填剤が沈降する場合がある。
【0019】
本発明は、上記(A)アルミニウム粉末を、(B)オルガノポリシロキサン、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(D)白金族金属系触媒を含有するシリコーン組成物に配合して得られる熱伝導性組成物である。該シリコーン組成物は、シリコーングリースまたはシリコーンゴムを与える組成物であればよく、従来公知のシリコーングリース組成物またはシリコーンゴム組成物を使用することができるが、特には、下記(B)、(C)、及び(D)成分を含有するシリコーン組成物である。
(B)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン
(C)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分が有するアルケニル基の個数に対する(C)成分が有するSi−H基の個数が0.5〜2.5となる量、及び
(D)白金族金属系触媒 白金族金属原子として(B)成分の質量に対し0.1〜500ppmとなる量。
【0020】
また、本発明のシリコーン組成物は更に、(E)制御剤及び/又は(F)下記一般式(1)で表される加水分解性メチルポリシロキサン
【化1】
(aは5〜100の整数であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜6のアルキル基である)
を含有することができる。各成分を以下に説明する。
【0021】
(B)オルガノポリシロキサン
(B)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状等が挙げられ、2種以上の異なる粘度の混合物でも良い。特には、直鎖状であることが好ましい。
【0022】
アルケニル基は、炭素原子数2〜8、好ましくは炭素原子数2〜3のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。中でも、合成のしやすさ、コストの面からビニル基が好ましい。アルケニル基はオルガノポリシロキサンの分子鎖の末端、途中の何れに存在してもよいが、少なくとも1のアルケニル基は末端に存在することが好ましい。
【0023】
ケイ素原子に結合するアルケニル基以外の基は、非置換又は置換の、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。中でも、合成のしやすさ、コストの面からメチル基が好ましい。ケイ素原子に結合するアルケニル基以外の基は、全てが同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
該オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は10〜100,000mm/sの範囲、好ましくは100〜50,000mm/sが良い。粘度が上記下限値より低いと、熱伝導性組成物の保存安定性が悪くなる。また、粘度が上記上限値より大きいと、得られる組成物の進展性が悪くなるため好ましくない。該粘度はオストワルド粘度計を使用して測定すればよい。
【0025】
該オルガノポリシロキサンは例えば下記平均組成式で表すことができる。
SiO(4−b―c)/2
上記式中、bおよびcは、0.7≦b≦2.1、0.001≦c≦1.0、且つ0.8≦b+c≦3.0、好ましくは1.0≦b≦2.0、0.001≦c≦0.8、且つ1.5≦b+c≦2.5を満たす正の数である。Rは、互いに独立に、上述したケイ素原子に結合するアルケニル基以外の基である。Rは、互いに独立に、炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜3のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基などが挙げられる。合成のしやすさ、コストの面からビニル基が好ましい。
【0026】
上記オルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端がメチルジビニルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。該オルガノポリシロキサンは、1種のオルガノポリシロキサンを単独で使用しても、異なる2種のオルガノポリシロキサンを組み合わせて使用しても良い。
【0027】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)成分は架橋剤であり、上記(B)成分と付加反応して架橋結合を形成し組成物を網状化する。(C)成分は、ケイ素原子に結合する水素原子(即ち、SiH基)を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。特には、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものがよく、特には、2〜300個、好ましくは3〜100個有するものがよい。また(C)成分は、分子中のケイ素原子数が4〜300個、好ましくは4〜150個程度のものであるのが良い。
【0028】
(C)成分のケイ素原子に結合した水素原子の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖側鎖であってもよい。該(C)成分の分子構造は特に制限されず、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。(C)成分の25℃における粘度は、0.1〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、5〜500mPa・sの範囲内であることが好ましい。該粘度はオストワルド粘度計を使用して測定した値である。
【0029】
(C)成分中のケイ素原子に結合する有機基は、非置換又は置換の、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜6の一価の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。また、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基などのエポキシ環含有有機基であってもよい。中でも、合成のしやすさ、コストの面からメチル基が好ましい。ケイ素原子に結合する有機基は、全てが同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式で表すことができる。
SiO(4−e−d)/2
上記式中、dおよびeは、0.7≦d≦2.1、0.001≦e≦1.0、且つ0.8≦d+e≦3.0、好ましくは1.0≦d≦2.0、0.01≦e≦1.0、且つ1.5≦d+e≦2.5を満たす正の数である。Rは、互いに独立に、上述したケイ素原子に結合する有機基である。
【0031】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:RSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなる共重合体、式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなる共重合体、式:RHSiOで示されるシロキサン単位と少量の、式:RSiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位とからなる共重合体、および、これらのオルガノポリシロキサンの二種以上からなる混合物が挙げられる。式中Rは上記の通りである。
【0032】
(C)成分の量は、上記(B)成分が有するアルケニル基の個数に対する(C)成分が有するSi−H基の個数が0.5〜2.5となる量、好ましくは0.5〜2.3となる量である。(C)成分の量が上記下限値より小さいと十分な網状構造をとれず硬化が不充分となるため、材料の信頼性の観点から好ましくない。また、(C)成分の量が上記上限値より大きいと、硬化後の材料が硬くなってしまい、柔軟性がなくなるため好ましくない。
【0033】
(D)白金族金属系触媒
(D)成分は、(B)成分と(C)成分の付加反応を促進させるための触媒である。該白金族金属系触媒は、通常の付加反応に用いられる公知の触媒の中から適宜選択して使用することができる。例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、HPtCl・nHO、HPtCl・nHO、NaHPtCl・nHO、KHPtCl・nHO、NaPtCl・nHO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中のnは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス、白金黒、パラジウム等の白金族金属を、アルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム−オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。これらの白金族金属系触媒は、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0034】
(D)成分の量は触媒としての有効量であり、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよく特に制限されるものではないが、(B)成分の質量に対し白金族金属原子に換算した質量基準で0.1〜500ppm、好ましくは1〜100ppmの範囲となる量であるのがよい。(D)成分の量が上記下限値より小さいと触媒としての効果がなく、また上記上限値より多すぎても付加反応の促進作用は向上しないので、経済的に好ましくない。
【0035】
(E)制御剤
(E)制御剤は、室温での付加反応の進行を抑え、シェルフライフ、ポットライフを延長させる付加反応抑制剤である。本発明において制御剤は公知のものを使用することができる。例えば、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3−ブチン−1−オール等のアセチレン化合物、各種窒素化合物、有機りん化合物、硫黄化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。これらの制御剤は、単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0036】
(E)成分の量は(B)成分の量に応じて適宜調整すればよく、付加反応の進行を所望の反応速度に調整できる有効量であれば足りる。通常、(B)成分100質量部に対して0.1〜5質量部とするのがよい。(E)成分の量が上記下限値より小さいと充分なシェルフライフ、ポットライフが得られず、また、上記上限値より大きいと硬化性が低下するため好ましくない。また、制御剤は組成物への分散性を良くするためにトルエン等で希釈して使用しても良い。
【0037】
(F)加水分解性メチルポリシロキサン
(F)成分は、下記一般式(1)で表される加水分解性メチルポリシロキサンである。
【化2】
【0038】
上記式において、aは5〜100の整数であり、好ましくは10〜60の整数である。aの値が上記下限値より小さいと、シリコーン組成物由来のオイルブリードがひどくなり信頼性が悪くなるおそれがある。また、aの値が上記上限値より大きいと、充填剤との濡れ性が充分でなくなるおそれがある。Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基である。
【0039】
(F)成分の量は、上記(B)成分100質量部に対して20〜90質量部となる量であり、好ましくは30〜90質量部となる量である。(F)成分の量が上記下限値より少ないと充分な濡れ性を発揮できないおそれがある。また、(F)成分の量が上記下限値より多いと熱伝導性組成物からのブリードが激しくなるおそれがある。
【0040】
(G)オルガノシラン
上記シリコーン組成物は、(B)〜(F)成分に加え、さらに下記一般式(2)で表されるオルガノシランを含有してもよい。
Si(OR4−f−g (2)
該オルガノシランは、熱伝導性組成物の調製時にアルミニウム粉末及びその他の充填剤の表面を疎水化処理してオルガノポリシロキサンとの濡れ性を向上させ、アルミニウム粉末及びその他の充填剤をマトリックス中に均一に分散させるために機能する。
【0041】
上記式においてRは、互いに独立に、炭素数9〜15のアルキル基である。該Rとしては、例えばノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。炭素数が上記下限値より小さいと充填剤との濡れ性が充分でなく、上記上限値より大きいとオルガノシランが常温で固化するので、取り扱いが不便な上、得られた組成物の低温特性が低下するおそれがある。上記式(2)において、fは1〜3の整数であり、gは0〜2の整数であり、但しf+gは1〜3である。好ましくはfが1であり、gが0または1である。
【0042】
上記式においてRは、、互いに独立に、置換又は非置換の、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基である。該Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロヘキシル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基、及びこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基、例えば、3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0043】
は、互いに独立に、炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0044】
該オルガノシランとしては、下記のものを挙げることができる。
1021Si(OCH
1225Si(OCH
1225Si(OC
1021Si(CH)(OCH
1021Si(C)(OCH
1021Si(CH)(OC
1021Si(CH=CH)(OCH
1021Si(CHCHCF)(OCH
【0045】
(G)成分の量は、(B)成分100質量部に対して0.1〜10質量部となる量であり、好ましくは0.1〜7質量部となる量である。(G)成分の量が上記下限値より少ないと濡れ性の乏しいものとなるおそれがある。また、上記上限値より多くてもウエッター効果が増大することがないため不経済であり好ましくない。
【0046】
本発明の熱伝導性組成物は、上記(A)成分〜(G)成分以外に、必要に応じて、CPUなどのICパッケージとヒートシンク等の放熱体とを化学的に接着、固定するために接着助剤等を含有することができる。また、劣化を防ぐために酸化防止剤等を含有しても良い。また、フッ素変性シリコーン界面活性剤;着色剤としてカーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ等;難燃性付与剤として白金化合物、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物、又は金属水酸化物等を含有してもよい。更に、アルミニウム粉末及び充填剤の沈降防止や補強を目的として、沈降性シリカ又は焼成シリカ等の微粉末シリカ、チクソ性向上剤等を適宜含有することができる。
【0047】
熱伝導性組成物の調製
熱伝導性組成物の調製は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、上記(A)〜(G)成分、及び任意でその他の成分を、トリミックス(登録商標)(井上製作所(株)製)、ツウィンミックス(登録商標)(井上製作所(株)製)、プラネタリーミキサー(井上製作所(株)製)、ウルトラミキサー(みづほ工業(株)製)、又はハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製)等の混合機を用いて混合することにより調製できる。
【0048】
本発明の熱伝導性組成物の性状は、常温でグリース状、スラリー状、またはペースト状である。本発明の熱伝導性組成物は450Pa・s以下、特には400Pa・s以下、さらには350Pa・s以下の粘度を有することができる。本発明の熱伝導性組成物は上記の通り低粘度を有するため、ディスペンス性及び作業性に優れる。粘度の下限値は特に制限されないが、通常10Pa・s以上、特に30Pa・s以上である。なお、粘度はマルコム粘度計(株式会社マルコム製)により測定した25℃の値である。本発明の組成物は、加熱硬化してゲル状の硬化物(即ち、熱伝導性シリコーンゲル)またはゴム状の硬化物(即ち、熱伝導性シリコーンゴム)を形成することができる。組成物の硬化条件は特に制限されるものでないが、通常80〜200℃、好ましくは100〜180℃で、30分〜4時間、好ましくは30分〜2時間である。
【0049】
本発明の熱伝導性組成物は、高い熱伝導率を有し、かつ低粘度であるため、半導体装置等、特には高品位機種の半導体装置等に対する放熱グリースや放熱シートとして好適に使用することができる。放熱グリースや放熱シートとしての使用態様は、従来の熱伝導性組成物の使用態様に従えばよい。例えば、LSI等の電子部品その他の発熱部材と冷却部材との間に介在させて、発熱部材からの熱を冷却部材に伝熱して放熱するための伝熱材として好適に用いることができる。本発明の熱伝導性組成物は、電子部品等の発熱部材からの発熱によって硬化することができる。また、本発明の熱伝導性組成物を塗布した後、積極的に加熱硬化させてもよい。これにより、本発明の熱伝導性組成物の硬化物を発熱部材と冷却部材との間に介在させた半導体装置を提供することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0051】
実施例及び比較例で使用した各成分を以下に記載する。
[(A)アルミニウム粉末]
A−1:平均粒径2μmのアルミニウム粉末
A−2:平均粒径10μmのアルミニウム粉末
A−3:平均粒径20μmのアルミニウム粉末
A−4:平均粒径0.2μmのアルミニウム粉末
A−5:平均粒径40μmのアルミニウム粉末
上記アルミニウム粉末の平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計MT3300EX(日機装(株)社製)により測定した値である。
【0052】
シリコーン組成物の成分
[(B)オルガノポリシロキサン]
B−1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、オストワルド粘度計で測定した25℃における粘度が600mm/sであるジメチルポリシロキサン
【0053】
[(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
C−1:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化3】
C−2:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化4】
【0054】
[(D)白金族金属系触媒]
D−1:白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を上記B−1と同じジメチルポリシロキサンに溶解した溶液(白金原子含有量:1質量%)
【0055】
[(E)制御剤]
E−1:1−エチニル−1−シクロヘキサノールの50%トルエン溶液
【0056】
[(F)加水分解性メチルポリシロキサン]
F−1:
【化5】
【0057】
[(G)オルガノシラン]
G−1:C1021Si(OCH
【0058】
[実施例1〜7および比較例1〜8]
熱伝導性組成物の調製
上記(A)〜(G)成分を、下記表1、表2に示す配合量に従い、下記に示す方法で配合して熱伝導性組成物を調製した。尚、表1において(D)成分の質量は、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体をジメチルポリシロキサンに溶解した溶液(白金原子含有量:1質量%)の質量である。
【0059】
5リットルのプラネタリーミキサー(井上製作所(株)製)に(A)成分及び(B)成分を仕込み、更に(F)成分及び(G)成分を加えた後、1時間混合した。次いで、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を加えて均一になるように混合し、熱伝導性組成物を得た。
【0060】
上記方法で得られた各組成物について、下記の方法に従い、粘度、熱伝導率、及び熱抵抗を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0061】
[粘度]
組成物の絶対粘度は、マルコム粘度計(タイプPC−1T、株式会社マルコム製)を用いて25℃で測定した(ローター回転数:10rpm、サンプル量200g)。
【0062】
[熱伝導率]
各組成物を3cm厚の型に流し込みキッチン用ラップをかぶせ、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業(株)社製)を使用して熱伝導率を測定した。
【0063】
[熱抵抗]
直径12.7mmの円形アルミニウム板2枚の間に各組成物を挟み、125℃のオーブン内に90分間置き、組成物を加熱硬化させて試験片を作製した。該試験片の熱抵抗を、ナノフラッシュ(LFA447、ニッチェ社製)を使用して測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び表2に示される通り、(A−1)、(A−2)及び(A−3)の配合量が本発明の範囲内にない比較例1〜4の組成物は、粘度が高すぎる、あるいは熱伝導率が低く、得られる硬化物は熱抵抗率が高い。平均粒径が小さすぎるアルミニウム粉末を含む比較例5の組成物は粘度が高くなり、平均粒径が大きすぎるアルミニウム粉末を含む比較例6の組成物は、得られる硬化物の熱抵抗率が高い。また、アルミニウム粉末の合計の質量が少なすぎる比較例7の組成物は熱伝導率が低く、得られる硬化物の熱抵抗率が高い。さらに、アルミニウム粉末の合計の質量が多すぎる比較例8の組成物はグリース状にならなかった。これに対し、本発明の熱伝導性組成物は熱伝導率が高くかつ低粘度なグリースを与えた。また、本発明の熱伝導性組成物は熱抵抗の低い硬化物を与えた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の熱伝導性組成物は、高い熱伝導率を有し、同時に低粘度であるため、高品位機種の半導体装置等に対する放熱グリースや放熱シートとして好適に使用することができる。