特許第5843499号(P5843499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843499
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】薬剤揮散器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20151217BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20151217BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D85/00 A
   B65D83/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-147050(P2011-147050)
(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公開番号】特開2013-13482(P2013-13482A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 大彌
(72)【発明者】
【氏名】東野 剛
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−102825(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3020459(JP,U)
【文献】 特開2011−055937(JP,A)
【文献】 特開2008−296936(JP,A)
【文献】 実公昭42−021280(JP,Y1)
【文献】 欧州特許出願公開第01839684(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01611904(EP,A1)
【文献】 米国特許第02452424(US,A)
【文献】 米国特許第02573672(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02683149(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 13/
A61L 9/
B65D 83/00−85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する首部、および、前記首部よりも大径の肩部を有する液状の薬剤を収容可能な胴部を備える容器と、
少なくとも一部が薬剤に浸漬するように前記容器内に収納される芯材と、
前記芯材を保持する芯材保持枠と、を備え、
前記芯材保持枠により前記芯材を前記容器外部に引き上げることで、前記芯材の一部で吸い上げた薬剤が前記容器外部に揮散するように構成された薬剤揮散器において、
前記芯材保持枠は、可撓性を有する一対の側枠部材を備え、
前記各側枠部材には、前記芯材保持枠を引き上げた時に、前記容器の肩部に係合可能な一対の係合突起が前記芯材保持枠の幅方向外向きに設けられているとともに、前記各係合突起の反対側に、互いに当接することで前記各係合突起の内方への移動を規制する一対の規制突起が前記芯材保持枠の幅方向内向きに設けられており、
前記各側枠部材は、前記各規制突起が互いに反対方向へ変位して位置ずれするように、前記芯材保持枠の厚み方向へ撓むことが可能である薬剤揮散器。
【請求項2】
前記容器の首部の内周面には、前記芯材保持枠の厚み方向に突き出る一対の突出部が設けられており、前記芯材保持枠をひねることにより、前記各側枠部材は前記芯材保持枠の厚み方向へ撓むことを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散器。
【請求項3】
前記各係合突起および前記各規制突起は、前記各側枠部材の下端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤揮散器。
【請求項4】
前記各係合突起の下縁を、外側から内側へ低く傾斜させて挿入ガイド部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
前記各側枠部材の外側面には、前記容器の首部の内周面に接触する突部が縦方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項6】
前記容器の開口部を開閉可能に閉塞するキャップに、前記芯材保持枠の上端部が回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤、消臭剤などの種々の揮散性を有する液状の薬剤を容器内部に収容するとともに、薬剤中に薬剤の吸上・揮散可能な芯材を浸漬した薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や自動車などの空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、芳香剤を自然に揮散させる薬剤揮散器が広く使用されている。この薬剤揮散器には、ゲル状、固形状、液状など、種々の薬剤が用いられており、その中で液状の薬剤を用いる薬剤揮散器は、一般に薬剤を収容する容器と、容器内に収容された薬剤を吸上・揮散可能な芯材とにより構成されている。芯材は、一部(吸上部)が薬剤中に浸漬されるとともに、他部(揮散部)が容器上部の開口部から外部に露出可能になっており、毛細管現象により、吸上部で吸い上げた薬剤を揮散部にて空気中に揮散させている。
【0003】
上記した液状の薬剤を用いる薬剤揮散器としては、特許文献1にその一例が開示されている。特許文献1に記載の薬剤揮散器は、図9および図10に示すように、液状の薬剤を収容する容器100と、容器100内に収納される帯状の芯材102と、芯材102を保持する芯材保持枠101とによって構成されている。芯材102は、芯材保持枠101を構成する一対の側枠部材103,103に設けられた一対の垂直板104,104と、各側枠部材103の下端部に各側枠部材103を連結するように設けられた横桟105との間に巻き付けられており、芯材102の一端部を、横桟105と各側枠部材103の下端部に設けられた一対の受棒106,106との間に通して下方に垂らすことで、容器100の底部まで到達している。芯材保持枠101は、容器100の開口部100Aを閉塞可能なキャップ108に連結されている。そして、キャップ108を容器100から外し、キャップ108を介して芯材保持枠101を引き上げることにより、芯材上部の揮散部102Aが容器100の外部に露出する。従って、揮散部102Aの露出の程度によって、芯材下部の吸上部102Bによって吸い上げた薬剤の揮散状態を調整可能になっている。また、各側枠部材103の下端部には、外側に向けて突き出る突起107が設けられている。芯材保持枠101を引き上げる際、各突起107が容器100の肩部100Bに引っ掛かって係合することで、芯材保持枠101が容器100から抜け出るのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3020459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この液状の薬剤を用いた薬剤揮散器は、容器100内の薬剤が少量になった場合には、薬剤を詰め替えたり、また、薬剤の揮散に伴い、芯材102に界面活性剤などの不揮発成分が目詰まりすることで薬剤の揮散性能が低下した場合には、芯材102を取り替えたりすることにより、再利用が可能である。ただし、薬剤の詰め替えや芯材102の取り替え作業を行う場合には、芯材保持枠101を容器100の開口部100Aから引き抜いて、一旦、容器100から取り外す必要がある。
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の薬剤揮散器では、芯材保持枠101の各側枠部材103の下端部近傍が前記横桟105により連結されているために、各側枠部材103が内側に撓んで各突起107が内方に移動するのが防止されている。これにより、各突起107が容器100の肩部100Bとの係合が外れることなく強固に肩部100Bに引っ掛かるので、芯材保持枠101の容器100からの抜けが確実に防止されている。その反面、芯材保持枠101を容器100から取り外す際には、各突起107と容器100の肩部106との係合が容易には外れないために、芯材保持枠101を容器100から容易に引き抜くことができない。よって、薬剤の詰め替えや芯材102の取り替え作業を簡単に行うことができないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたもので、薬剤の詰め替えや芯材の取り替え作業時に、芯材保持枠を容器から容易に引き抜くことができる薬剤揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、上面に開口部を有する首部、および、前記首部よりも大径の肩部を有する液状の薬剤を収容可能な胴部を備える容器と、 少なくとも一部が薬剤に浸漬するように前記容器内に収納される芯材と、 前記芯材を保持する芯材保持枠と、を備え、 前記芯材保持枠により前記芯材を前記容器外部に引き上げることで、前記芯材の一部で吸い上げた薬剤が前記容器外部に揮散するように構成された薬剤揮散器において、 前記芯材保持枠は、可撓性を有する一対の側枠部材を備え、前記各側枠部材には、前記芯材保持枠を引き上げた時に、前記容器の肩部に係合可能な一対の係合突起が前記芯材保持枠の幅方向外向きに設けられているとともに、前記各係合突起の反対側に、互いに当接することで前記各係合突起の内方への移動を規制する一対の規制突起が前記芯材保持枠の幅方向内向きに設けられており、前記各側枠部材は、前記各規制突起が互いに反対方向へ変位して位置ずれするように、前記芯材保持枠の厚み方向へ撓むことが可能である薬剤揮散器により達成される。
【0009】
本発明の好ましい実施態様においては、前記容器の首部の内周面には、前記芯材保持枠の厚み方向に突き出る一対の突出部が設けられており、前記芯材保持枠をひねることにより、前記各側枠部材は前記芯材保持枠の厚み方向へ撓むことを特徴としている。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各係合突起および前記各規制突起は、前記各側枠部材の下端部に設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各係合突起の下縁を、外側から内側へ低く傾斜させて挿入ガイド部を形成したことを特徴としている。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各側枠部材の外側面には、前記容器の首部の内周面に接触する突部が縦方向に複数設けられていることを特徴としている。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記容器の開口部を開閉可能に閉塞するキャップに、前記芯材保持枠の上端部が回転可能に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の薬剤揮散器によると、薬剤の詰め替えや芯材の取り替え作業時に、芯材保持枠をひねるなどの簡易な操作で、容器から芯材保持枠を容易に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散器の正面図であり、芯材は省略して容器およびキャップを断面にして示している。
図2】薬剤揮散器の側面図であり、芯材は省略して容器およびキャップを断面にして示している。
図3】薬剤揮散器の容器からキャップを外した状態の平面図である。
図4】芯材保持枠に芯材を取り付けた状態における縦断面図である。
図5】芯材保持枠の斜視図である。
図6】芯材保持枠の下端部を拡大した正面図である。
図7】芯材の斜視図である。
図8】(a)は図1の薬剤揮散器の使用前の状態を示す斜視図であり、(b)は使用時の状態を示す斜視図である。
図9】従来例の薬剤揮散器の正面図であり、芯材は省略して容器およびキャップを断面にして示している。
図10図9の薬剤揮散器の側面図であり、容器およびキャップは省略して芯材および芯材保持枠を断面にして示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1図3は、本発明の一実施形態である薬剤揮散器1の芯材を除いた全体の構成を示している。また、図4は、図1図3に示した芯材保持枠4に芯材3を取り付けた状態を示している。
【0017】
本実施形態の薬剤揮散器1は、上部に開口部21を有するとともに内部に液状の薬剤を収容可能な容器2と、容器2内に収納される芯材3と、芯材3を保持する芯材保持枠4とを備えている。容器2の開口部21は、キャップ5により開閉可能に塞がれている。キャップ5には、芯材保持枠4が回転可能に連結されており、使用者はキャップ5を持つことで芯材保持枠4を容器2から引き上げることができる。芯材保持枠4の引き上げに伴い、芯材3の揮散部31が、容器2の開口部21から引き上げられて容器2の外部に露出する。このとき、芯材3の吸上部30が薬剤中に浸漬されているため、芯材3の吸上部30で吸い上げた薬剤が芯材3の揮散部31を介して容器2の外部に揮散する(図8(b)参照)。
【0018】
容器2は、図1図3に示すように、上面に前記開口部21を有する円筒状の首部20と、首部20に連続する中空の胴部22とにより構成されている。胴部22は、首部20よりも大径に形成された肩部23を備えている。この容器2としては、例えば、透明のプラスチック製ブロー成形品が挙げられるが、ガラス製品の他、インジェクション成型品などであっても構わない。
【0019】
首部20の上部外周面には、雄ネジ部24が設けられている。雄ネジ部24がキャップ5の内周面に設けられた雌ネジ部50と螺合することにより、キャップ5が容器2の首部20に固定される。
【0020】
首部20の下部内周面には、肩部23と隣接する部分に、内方に向けてわずかにくびれた括れ面20Aが全周にわたって設けられている。また、括れ面20Aの一部分には、内方に向けて大きく突き出る一対の突出部20B,20Bが一体に設けられている。各突出部20Bは対向する位置に設けられ、それぞれが芯材保持枠4の厚み方向、つまり、芯材3の厚み方向に突き出ている。これにより、2つの突出部20Bにより、首部20内に平面視が略長方形状の開口が形成されている。該開口は、芯材3を保持した芯材保持枠4を引き上げる時、あるいは、容器2内に挿入する時の入口となる。
【0021】
各突出部20Bは、芯材保持枠4を引き上げた時に、芯材保持枠4を起立状態に保持する。つまり、芯材保持枠4を引き上げた時、各突出部25の先端面が、芯材保持枠4により保持された芯材3の揮散部31の表面と面接触して揮散部31を挟持することにより、芯材保持枠4が起立状態で保持される。
【0022】
なお、本実施形態では、各突出部20Bは、容器2の首部20に一体に設けられているが、必ずしもこの構成に限られるものではない。例えば、各突出部20Bを容器2の首部20の内周面に対して中栓のような形で取り外し可能に設けるようにしてもよい。
【0023】
キャップ5の内底面には、円筒状のボス51が内底面から突き出るように設けられている。ボス51の先端部は均等に分割されて、複数(例えば、3つ)の係合爪52が設けられており、各係合爪52の外面には段部53が設けられている。このボス51は、後述する芯材保持枠4の連結部材41に設けられた嵌合孔42に嵌合可能であり、各係合爪52を内側に弾性変形させてボス51を嵌合孔42に嵌合させた後、各係合爪52の段部53を連結部材41の下面に引っ掛けることで、芯材保持枠4が軸方向に抜けることなくキャップ5に対して回転可能に連結されている。
【0024】
芯材保持枠4は、図1図6に示すように、例えば、プラスチックなどの可撓性を有する材料により成形されており、左右一対の側枠部材40,40と、各側枠部材40の上端部同士を連結する連結部材41とを備えている。連結部材41の中央部には、嵌合孔42が設けられている。連結部材41の両側部には、それぞれ補強板43,43が一体に設けられており、各補強板43に、容器3の内部下方まで延びる側枠部材40がそれぞれ一体に設けられている。
【0025】
各側枠部材40の略中央部には、各側枠部材40を連結する上下2本の横桟44,45が一体に設けられている。また、各側枠部材40の内側面には、上方の横桟44よりも上部位置に、それぞれ内向きの垂直板46,46が一体に設けられており、各垂直板46は互いに連結されることなく、所定の間隔をあけて対向するように設けられている。また、下方の横桟45よりも下部位置にも、それぞれ内向きの垂直板47,47が一体に設けられており、各垂直板47も互いに連結されることなく、所定の間隔をあけて対向するように設けられている。
【0026】
各側枠部材40の下端部には、その外側面に、それぞれ枠外に突き出る外向きの係合突起48,48が一体に設けられている。薬剤揮散器1の使用時において、芯材保持枠4を引き上げる際、各係合突起48が容器2の肩部23に引っ掛かって係合することで、芯材保持枠4は抜け止め状態となり、容器2から芯材保持枠4が抜け出るのが防止されている(図8(b)参照)。
【0027】
各係合突起48の下縁には、外側から内側へ向けて低く傾斜するように挿入ガイド部48Aが設けられている。薬剤の詰め替えや芯材3の取り替えのために芯材保持枠4を容器2から一旦引き抜いた後、再び、芯材保持枠4を容器2内に挿入する際に、挿入ガイド部48Aの存在により各係合突起48が内側にスムーズに撓むことで、各係合突起48は容易に各突出部25を乗り越える。その結果、芯材保持枠4を容器2内に容易に挿入することができるようになっている。
【0028】
また、各側枠部材40の下端部の内側面には、前記係合突起48と反対側の位置に、それぞれ内向きの規制突起49,49が一体に設けられている。各規制突起49は、互いに連結されることなく、対向するように設けられている。各規制突起49には、互いに対向する端面に、それぞれ凸部49aが段違いに設けられており、各凸部49aは、その先端が対向する他方の規制突起49の端面と互いに当接する高さを有している。
【0029】
なお、本実施形態では、各規制突起49に凸部49aを設け、凸部49aの先端が対向する他方の規制突起49の端面に突き当たることで、各規制突起49が互いに当接するように構成されているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、各規制突起49に凸部49aを設けることなく、各規制突起49の端面同士が突き当たることで、各規制突起49が互いに当接するようにしても構わない
【0030】
各側枠部材40の外側面には、縦方向に等間隔で複数(図示例では、3つ)の突部54が一体に設けられている。この各突部54は、芯材保持枠4を引き上げた時に、容器2の首部20の内周面に設けられた括れ面20Aの上縁と係合するため、芯材保持枠4が容器20内に不用意に落ち込まないようになっている。これにより、芯材保持枠4を所定の高さ位置にて保持することができる。
【0031】
上記した構成の芯材保持枠4では、各側枠部材40の下方の横桟45よりも下側部分が、外部からの押圧力が作用することにより容易に弾性変形して、芯材保持枠4の幅方向や厚み方向に湾曲状態に撓むことが可能である。また、撓んだ後は、弾性変形による復元力によって、元の下方に垂下する状態に復帰動作する。ただし、薬剤揮散器1の使用時においては、各規制突起49の凸部49aが、それぞれ対向する他方の規制突起49の端面に突き当たって当接していることにより、各側枠部材40の下側部分が弾性変形により内側に撓むことが規制されている。ここで、芯材保持枠4を引き上げた際に、各係合突起48が容器2の肩部23に引っ掛かった後、使用者により、誤ってさらに芯材保持枠4が引き上げられると、各係合突起48には、容器2の肩部23から反作用の力を受けて内向きの押圧力が作用する。これにより、各側枠部材40の下側部分が弾性変形により内側に撓むことで、各係合突起48が内側に変位して、各係合突起48と容器2の肩部23との係合が外れるおそれがある。しかしながら、上記した構成の芯材保持枠4では、各規制突起49により、各側枠部材40が内側に撓むことが規制されているので、各係合突起48が容器2の肩部23と係合した後、さらに使用者により芯材保持枠4が引き上げられた場合でも、各係合突起48と容器2の肩部23との係合が外れない。そのため、容器2から芯材保持枠4が抜け出るのが確実に防止されている。
【0032】
一方で、薬剤の詰め替えや芯材3の取り替えのために、芯材保持枠4を容器2から取り外したい場合には、芯材保持枠4を各係合突起48が容器2の肩部23と係合するまで引き上げた後、芯材保持枠4を、図8(b)に示す矢印Tの方向にひねる。これにより、各側枠部材40には、容器2の各突出20Bから芯材3の揮散部31を介して反作用の力を受けて、それぞれ逆向き(図5に示す矢印X,X´方向)の押圧力が作用する。そのため、各側枠部材40の下側部分が、それぞれ弾性変形により芯材保持枠4の厚み方向に撓むので、各規制突起49が互いに反対方向に変位して位置ずれする。この状態で、芯材保持枠4を引き上げると、各係合突起48が容器2の肩部23からの反作用の力により内向き(図5に示す矢印Y,Y´方向)の押圧力を受け、これにより、各側枠部材40の下側部分が弾性変形によって撓むことで、各係合突起48は内側に変位し、容器2の肩部23との係合が外れる。その結果、各係合突起48が容器2の肩部23を容易に乗り越えることで、芯材保持枠4を容器2から容易に引き抜くことが可能になっている。
【0033】
芯材3は、図4および図7に示すように、吸上部30と揮散部31とを備え、吸上部30および揮散部31が連続して一体化された帯状の形態を有している。この芯材3は、主に液状の薬剤の吸上・揮散効果に優れた繊維層(図示せず)で全体が構成されている。前記繊維層としては、植物繊維やパルプなどの天然繊維、レーヨン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの合成繊維、またはそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。特に、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、スパンレース法などによって製造される不織布が好適であるが、その他、織物、編物などの層であってもよい。なお、前記繊維層の表面に、例えば、薄いレーヨンで構成された被覆層を設けるように構成してもよい。
【0034】
本実施形態では、吸上部30は、揮散部31よりもその幅が狭くなるように形成されている。これにより、芯材保持枠4が容器2内に収納されている時(薬剤揮散器1の非使用時)には、吸上部30を折り畳まれた状態に、一方で、芯材保持枠4が引き上げられた時(薬剤揮散器1の使用時)には、吸上部30を伸びた状態に、それぞれ容易に変形させることができる(図8(a)(b)参照)。吸上部30は、芯材保持枠4が引き上げられた使用時に、容器2の内底面に達することができる長さに設定されており、薬剤を最後まで吸い上げさせることができるようになっている。また、芯材保持枠4が引き上げられた使用時に、薬剤が空気中に揮散しやすくするために、揮散部31は幅広に形成されている。なお、本実施形態では、吸上部30の幅を揮散部31の幅よりも狭くしているが、吸上部30と揮散部31との幅が同じ大きさであってもよい。また、芯材3の形状は必ずしも帯状である必要はなく、筒状、紐状など、液状の薬剤の吸上・揮散効果を有する形状であれば種々の形状を採用可能である。
【0035】
芯材3を芯材保持枠4に取り付けるためには、図4に示すように、まず、芯材3の一端部を、芯材保持枠4の上方の横桟44と各垂直板46との間に通して各垂直板46の側面に沿わせる。次に、芯材4の他端部を下方の各垂直板47の下縁で折り返して巻き上げた後、さらに、上方の各垂直板46の上縁で下方に折り返し、先に下方の各垂直板47に沿わせた芯材3の中間部と各規制突起49との間に通して下方に垂らす。これにより、揮散部31が芯材保持枠4に巻き付けられるとともに、吸上部30が芯材保持枠4から吊り下げられるようにして、芯材3が芯材保持枠4に取り付けられる。
【0036】
次に、本実施形態の薬剤揮散器1の使用方法について説明する。
【0037】
本実施形態の薬剤揮散器1においては、容器2の首部20にキャップ5が固定された非使用時には、図8(a)に示すように、芯材3は吸上部30および揮散部31が液状の薬剤中に浸漬している。一方、図8(b)に示すように、キャップ5と容器2の首部20との固定を外してキャップ5を容器2から引き上げると、これに伴い、芯材保持枠4が容器2の外部に引き上げられて、芯材の揮散部31が容器2の外部に露出する状態となる。これにより、揮散部31を介して吸上部30により吸い上げられた薬剤が空気中に揮散される。このとき、容器2の首部20の内周面には、一対の突出部20Bが設けられており、各突出部20Bの先端面が、芯材保持枠4を引き上げた際に、芯材3の揮散部31の表面と面接触する。これにより、芯材保持枠4を所定の引き上げ高さで保持することができる。従って、使用者は、芯材保持枠4の引き上げ高さを調節して、外部に露出させる揮散部31の表面積を変えることで、薬剤の揮散量を調節することが可能となる。
【0038】
また、芯材保持枠4の各側枠部材40の外側面には、複数の突部54が設けられており、各突部54が、芯材保持枠4を引き上げた際に、容器2の首部20の内周面に設けられた括れ面20Aの上縁と係合する。これにより、芯材保持枠4が不用意に容器2内に落ち込むことが防止される。
【0039】
一方、薬剤の揮散に伴い、容器2内の薬剤が少量になったり、芯材3に界面活性剤などの不揮発成分が目詰まりすることで薬剤の揮散性能が低下したりした場合には、芯材保持枠4を各係合突起48が容器2の肩部23と係合するまで引き上げた後、芯材保持枠4をひねることにより(図8(b)の矢印T)、芯材保持枠4を容器2から容易に引き抜くことができる。このように、本実施形態の薬剤揮散器1では、芯材保持枠4をひねるという簡易な操作で、芯材保持枠4を容器2から容易に引き抜くことができるので、薬剤の詰め替えや芯材3の取り替え作業を手軽に行うことができる。また、容器2内に新たな薬剤を補充したり、芯材保持枠4の芯材3を新たな芯材に取り替えたりすることにより、容器2および芯材保持枠4を再利用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 薬剤揮散器
2 容器
3 芯材
4 芯材保持枠
5 キャップ
20 首部
20B 括れ部
21 開口部
22 胴部
23 肩部
30 吸上部
31 揮散部
40 側枠部材
48 係合突起
48A 挿入ガイド部
49 規制突起
54 突部
図1
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図3
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