【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、受信装置1は、受信アンテナ11(11−1及び11−2)と、入力処理部12(12−1及び12−2)と、伝送路応答算出部13と、MIMO検出部14と、第1周波数デインターリーブ部15と、シンボル平均区間決定部16と、雑音分散算出部17と、第2周波数デインターリーブ部18と、尤度比算出部19と、ビットデインターリーブ部20と、誤り訂正復号部21と、を備える。なお、受信装置1に対応する送信装置が周波数方向にインターリーブ処理しない場合には、受信装置1は第1周波数デインターリーブ部15、及び第2周波数デインターリーブ部18を備える必要はなく、受信装置1に対応する送信装置がビット方向にインターリーブ処理しない場合には、受信装置1はビットデインターリーブ部20を備える必要はない。
【0019】
入力処理部12は、受信装置1に対応する送信装置から送信されるOFDM信号を、受信アンテナ11を介して受信し、受信したOFDM信号を直交復調処理及びフーリエ変換処理して、複素ベースバンド信号を生成する。
図1に示すように、入力処理部12は、GI除去部121(121−1及び121−2)と、フーリエ変換部122(122−1及び122−2)と、パイロット信号抽出部123(123−1及び123−2)と、を備える。
【0020】
GI除去部121は、受信したOFDM信号を直交復調処理してベースバンド信号を生成し、A/D変換によりデジタル信号を生成する。続いて、GI除去部121は、ガードインターバルを除去して有効シンボル信号を抽出する。そして、有効シンボル信号をフーリエ変換部122に出力する。
【0021】
フーリエ変換部122は、GI除去部121により抽出された有効シンボル信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を施して周波数領域の複素ベースバンド信号y
i1,y
i2生成する。そして、複素ベースバンド信号y
i1,y
i2をパイロット信号抽出部123、及びMIMO検出部14に出力する。つまり、フーリエ変換部122−1は、受信アンテナ11−1から受信したOFDM信号をFFT処理して複素ベースバンド信号y
i1を生成し、パイロット信号抽出部123−1、及びMIMO検出部14に出力する。フーリエ変換部122−2は、受信アンテナ11−2から受信したOFDM信号をFFT処理して複素ベースバンド信号y
i2を生成し、パイロット信号抽出部123−2、及びMIMO検出部14に出力する。
【0022】
パイロット信号抽出部123は、FFT部122により生成された複素ベースバンド信号y
i1,y
i2に含まれる既知のパイロット信号を抽出する。そして、パイロット信号を伝送路応答算出部13に出力する。
【0023】
伝送路応答算出部13は、パイロット信号抽出部123により抽出されたパイロット信号を用いて伝送路応答H
iを算出する。そして、伝送路応答H
iをMIMO検出部14、シンボル区間決定部16、及び雑音分散算出部17に出力する。伝送路応答算出部13は、パイロット信号の振幅応答を時間方向に1次補間することにより、復号対象となるシンボルの伝送路応答H
iを算出する。
【0024】
2×2MIMO伝送の伝送路応答H
iは
と表すことができる。伝送路応答Hの各要素h
i11,h
i12,h
i21,h
i22は複素数であり、h
i11は送信アンテナ#1から受信アンテナ#1への伝送路の状態を表し、h
i12は送信アンテナ#2から受信アンテナ#1への伝送路の状態を表し、h
i21は送信アンテナ#1から受信アンテナ#2への伝送路の状態を表し、h
i22は送信アンテナ#2から受信アンテナ#2への伝送路の状態を表す。ここで、h
i11,h
i22が並列伝送路成分であり、h
i12,h
i21が干渉成分となる。
【0025】
MIMO検出部14は、フーリエ変換部122により生成された複素ベースバンド信号y
i1,y
i2、及び伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iを用いて、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Squared Error)などの既知の手法により、複数の受信アンテナ11により受信したデータストリームを分離して送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を生成する。そして、送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を第1周波数デインターリーブ部15及び雑音分散算出部17に出力する。
【0026】
第1周波数デインターリーブ部15は、MIMO検出部14により生成された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2に対し、周波数方向にデインターリーブ処理を行う。そして、デインターリーブ処理された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を尤度比算出部19に出力する。周波数方向のデインターリーブ処理とは、受信装置1に対応する送信装置の周波数インターリーブ部により周波数方向に並べ替えられたデータを、元の順序に戻す処理である。
【0027】
受信装置1は、復号に必要な尤度比を算出するために、受信したOFDM信号の雑音分散を算出する必要がある。第1周波数デインターリーブ部15によりデインターリーブ処理されたデータキャリアから帯域全体の雑音分散を算出してもよいが、より精度の高い雑音分散を算出するには、後述するように、データキャリアでないキャリアシンボルを用いて帯域全体の雑音分散を推定する必要がある。したがって、
図1に示す受信装置1では、雑音分散算出部17を、第1周波数デインターリーブ部15と尤度比算出部19との間ではなく、第1周波数デインターリーブ部15の前に配置している。
【0028】
シンボル区間決定部16は、伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iから、雑音分散の算出に用いるOFDMシンボルのシンボル区間Lを決定する。そして、シンボル区間Lを雑音分散算出部17に出力する。シンボル区間決定部16の詳細については後述する。
【0029】
雑音分散算出部17は、シンボル区間決定部16により決定されたシンボル区間L内における、MIMO検出部14により生成された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を用いて、受信したOFDM信号の雑音分散σ
i12,σ
i22を算出する。そして、雑音分散σ
i12,σ
i22を第2周波数デインターリーブ部18に出力する。雑音分散算出部17の詳細については後述する。
【0030】
第2周波数デインターリーブ部18は、雑音分散算出部17により算出された雑音分散σ
i12,σ
i22に対し、デインターリーブ処理を行う。そして、デインターリーブ処理された雑音分散σ
i12,σ
i22を尤度比算出部19に出力する。
【0031】
尤度比算出部19は、第1周波数デインターリーブ部15によりデインターリーブ処理された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2と、第2周波数デインターリーブ部18から入力される雑音分散σ
i12,σ
i22とを用いて、受信信号の尤度比λを算出する。そして、尤度比λをビットデインターリーブ部20に出力する。尤度比λは誤り訂正符号の各ビットについて算出されるものであり、受信信号の確率的な信頼度情報を表す。なお、尤度比λとしては、一般的に対数尤度比(LLR)が用いられる。
【0032】
対数尤度比λは、b=0となる尤度関数とb=1となる尤度関数の比の対数で表される。つまり、対数尤度比λは、送信信号の推定値x^
i、及び雑音分散σ
i2を用いて、次式(1)により求められる。d
12,d
02は理想信号点と送信信号の推定値x
i^の信号点との間の2乗ユークリッド距離である。
【0033】
【数1】
【0034】
ビットデインターリーブ部20は、尤度比算出部19により算出された尤度比λに対し、ビット方向にデインターリーブ処理を行う。そして、デインターリーブ処理された尤度比λを、誤り訂正復号部21に出力する。ビット方向のデインターリーブ処理とは、受信装置1に対応する送信装置のビットインターリーブ部によりビット方向に並べ替えられたデータを、元の順序に戻す処理である。
【0035】
なお、受信装置1に対応する送信装置が時間インターリーブ部により時間方向にもインターリーブ処理を行う場合には、受信装置1は、更に時間デインターリーブ部(図示せず)を備える。この時間デインターリーブ部は、尤度比λを時間方向にデインターリーブ部処理し、送信装置の時間インターリーブ部により時間方向に並べ替えられたデータを元の順序に戻す。
【0036】
誤り訂正復号部21は、ビットデインターリーブ部20によりデインターリーブ処理された尤度比λを用いて、誤り訂正符号(LDPC符号やターボ符号)の復号を行い、送信装置から送信されたビットの推定値を出力する。
【0037】
[シンボル区間決定部]
次に、シンボル区間決定部16の詳細について説明する。シンボル区間決定部16は、送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iから、雑音分散の算出に用いるOFDMシンボルのシンボル区間Lを決定する。シンボル区間Lの具体的な決定方法として、以下に2つの態様を説明する。
【0038】
図2は、第1の態様のシンボル区間決定部16−1の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、第1の態様のシンボル区間決定部16−1は、DU比検出部161と、位相差検出部162と、シンボル区間設定部163−1と、を備える。
【0039】
DU比検出部161は、伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iを逆フーリエ変換して得られる遅延プロファイルから希望波と遅延波を検出し、DU比を算出する。そして、DU比をシンボル区間設定部163−1に出力する。
【0040】
位相差検出部162は、伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iの並列伝送路成分(h
i11,h
i22)の位相差を算出する。そして、位相差をシンボル区間設定部163−1に出力する。なお、4×2MIMOシステムの場合についても同様に並列伝送路成分位相差を算出する。例えば送信アンテナTx1,3が水平偏波のOFDM信号を送信し、送信アンテナTx2,4が垂直偏波のOFDM信号を送信し、送信アンテナTx1,2で第1の送信所を構成し、送信アンテナTx3,4で第2の送信所を構成し、受信アンテナRx1が水平偏波のOFDM信号を受信し、受信アンテナRx2が垂直偏波のOFDM信号を受信する4×2MIMOシステムの場合、位相差検出部162は、並列伝送路成分(h
i11,h
i22)の位相差、及び並列伝送路成分(h
i13,h
i24)の位相差を算出する。
【0041】
マルチパス波が存在する場合、特定のキャリアの受信電力の落ち込み(ディップ)が生じる。受信電力が所定値以下のキャリアは伝送特性が極端に劣化するため、そのようなキャリアは両アンテナ成分とも消失させ、消失キャリアとする(復調データをヌルとする)必要がある。ディップは、DU比検出部161により検出されたDU比が0dBに近づくほど大きくなるため、消失キャリアの本数が増加する。また、
図10に示すように、位相差検出部162により算出された位相差が180度に近づくほど(位相差が所定の値よりも大きくなると)、両アンテナ間でディップが生じる周波数がずれるため、消失キャリアの本数が増加する。
図10は、受信電力が所定値以下となるディップが生じる場合の消失キャリアを示す図である。
図10(a)は並列伝送路成分の位相差が0度の場合の消失キャリアを示しており、
図10(b)は並列伝送路成分の位相差が180度の場合の消失キャリアを示している。
図10に示すように、並列伝送路成分の位相差が180度の場合には、並列伝送路成分の位相差が0度の場合と比べて、消失キャリアの本数は2倍となる。すなわち、DU比が0dBに近づき、位相差が180度に近づくほど、消失させるキャリアの本数が増加することとなる。
【0042】
そのため、シンボル区間設定部163−1は、消失させるキャリアの本数が多くなった場合に雑音分散の算出に用いるキャリアシンボルのサンプル数を確保するために、DU比検出部161により算出されたDU比が0dBに近づくほど、かつ、位相差検出部162により算出された位相差が180度に近づくほど、シンボル区間Lが長くなるように決定する。
【0043】
また、OFDM信号のキャリア総本数Iが少ないほど、雑音分散の算出に用いるキャリアシンボルのサンプル数が少なくなる。そのため、シンボル区間設定部163−1は、OFDM信号のキャリア総本数Iが少ないほど、シンボル区間Lが長くなるように決定する。
【0044】
シンボル区間設定部163−1は、予めDU比及び位相差とシンボル区間Lとを対応付けたシンボル区間テーブルを記憶し、シンボル区間テーブルを参照してシンボル区間Lを決定するようにしてもよい。シンボル区間テーブルの例を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
また、表1に示すシンボル区間テーブルでは、受信装置1がテレビ受信装置のような固定受信の場合と、携帯電話のような移動受信装置の場合とでシンボル区間を区別しており、移動受信装置の場合のシンボル区間を固定受信装置の場合のシンボル区間よりも短くしている。これは、移動受信装置の場合には、受信信号の時間変動が大きく、シンボル区間を長くするとかえって雑音分散の推定精度が低くなるためである。
【0047】
なお、シンボル区間Lは任意の帯域ごとに決定することができる。例えば、シンボル区間LをOFDM信号の帯域全体で一律に決定してもよいし、セグメントごとに決定してもよいし、パイロット信号の周波数方向の周期で決定してもよい。
【0048】
次に、第2の態様のシンボル区間決定部16について説明する。
図3は、第2の態様のシンボル区間決定部16−2の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、第2の態様のシンボル区間決定部16−2は、伝送路応答変動検出部164と、シンボル区間設定部163−2と、を備える。
【0049】
ここで、水平、垂直両偏波を用いた偏波MIMO伝送において、受信装置側で偏波を分離するために、水平偏波、垂直偏波で送信するOFDM信号に挿入されるパイロット信号の挿入パターンを相違させる技術が提案されている。例えば、村山,”-次世代地上放送に向けた伝送技術-スーパーハイビジョンの地上放送を目指して-”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.34,No.36,pp37-40,2010にて提案されている技術では、OFDM信号に、従来のパイロット信号(SP信号)に加え、ヌルパイロット信号を挿入している。ヌルパイロット信号は、無変調の振幅0の信号である。本実施形態では、OFDM信号にヌルパイロット信号が挿入されている場合を例に、第2の態様のシンボル区間決定部16−2の処理について説明する。
【0050】
図4は、ヌルパイロット信号が挿入されたOFDM信号を示す図である。
図4(a)は水平偏波用、
図4(b)は垂直偏波用のOFDM信号であり、図中の丸印はデータ信号、二重丸印はパイロット信号(SP信号)、丸の中に×が付された印はヌルパイロット信号を意味する。この例では、ISDB−Tが採用している、キャリア方向に12キャリア周期、シンボル方向に4シンボル周期の配置パターンは変更せずに、水平偏波と垂直偏波でヌルパイロット信号を交互に挿入している。
【0051】
図5は、伝送路応答算出部13によるヌルパイロット信号が挿入されたOFDM信号の伝送路応答H
iの算出について説明する図である。伝送路応答算出部13は、復号対象となるシンボルに対して、時間方向に前後7シンボル内のパイロット信号の伝送路応答を算出して記憶し、パイロット信号の振幅応答を時間方向に1次補間することにより、復号対象シンボルの伝送路応答H
iを算出する。
【0052】
伝送路応答変動検出部164は、伝送路応答算出部13から、復号対象となるシンボルに対して時間方向に前後に所定のシンボル内の伝送路応答H
iを検出し、伝送路応答H
iの時間方向の変動量を検出する。そして、伝送路応答H
iの変動量をシンボル区間設定部163−2に出力する。変動量は復号対象となるシンボルの伝送路応答H
iを基準として他のシンボルの伝送路応答H
iとの差分量とする。伝送路応答算出部13が、復号対象シンボルに対して前後7シンボル内のパイロット信号の伝送路応答H
iを常時記憶している場合には、この記憶されている伝送路応答H
iを用いることができる。
【0053】
シンボル区間設定部163−2は、復号対象シンボルの伝送路応答H
iに対する変動量が閾値以下となる範囲のシンボル区間を、雑音分散を算出する際に用いるシンボル区間Lと決定する。
図6は、伝送路応答H
iの変動例を示す図である。
図6では、復号対象シンボルを含む前後7シンボルの伝送路応答H
iの変動を示している。
図6(a)の場合、復号対象シンボルを含む前後7シンボル全てにおいて、変動量が閾値の範囲内であるため、復号対象シンボルの7シンボル前のシンボルから復号対象シンボルの7シンボル後のシンボルまでを雑音分散を算出する際に用い、シンボル区間Lを−7〜+7とする。
図6(b)の場合、変動量が閾値の範囲内となる、復号対象シンボルの3シンボル前のシンボルから復号対象シンボルの3シンボル後のシンボルまでを雑音分散を算出する際に用い、シンボル区間Lを−3〜+3とする。
図6(c)の場合、変動量が閾値の範囲内となる、復号対象シンボルの4シンボル前のシンボルから復号対象シンボルの1シンボル後のシンボルまでを雑音分散を算出する際に用い、シンボル区間Lを−4〜+1とする。
【0054】
なお、シンボル区間Lは任意の帯域ごとに決定することができる。例えば、シンボル区間LをOFDM信号の帯域全体で一律に決定してもよいし、セグメントごとに決定してもよいし、パイロット信号の周波数方向の周期(
図4に示す例では24キャリア)で決定してもよい。
【0055】
[雑音分散算出部]
次に、雑音分散算出部17の詳細について説明する。雑音分散算出部17は、シンボル区間決定部16により決定されたシンボル区間L内における、MIMO検出部14により生成された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を用いて、受信したOFDM信号の雑音分散σ
i12,σ
i22を算出する。
図7は、雑音分散算出部17の構成例を示すブロック図である。雑音分散算出部17は雑音分散推定部171と、帯域雑音分散算出部172と、キャリア雑音分散算出部173と、を備える。キャリア雑音分散算出部173は必須の構成部ではないが、キャリア雑音分散算出部173を備えることにより、より雑音分散の推定精度を向上させることができる。
【0056】
雑音分散推定部171は、MIMO検出部14により生成された各系統信号からキャリアシンボルの雑音分散を求める。そして、キャリアシンボルの雑音分散を帯域雑音分散算出部172に出力する。キャリアシンボルの雑音分散は、キャリアシンボルが本来あるべきIQ座標上の信号点と実際に観測したキャリアシンボルの信号点とのずれを意味し、変調誤差比を求めて逆数を取ることで得られる。これは、帯域内平均電力を1とする正規化係数を乗じているためである。ただし、データキャリアの変調誤差比(MER:Modulation Error Ratio)は、キャリアシンボルの雑音が大きい場合に本来あるべき信号点を誤って定めてしまう可能性がある。その点、BPSK変調されたAC信号及びTMCC信号は誤る可能性が低く、高精度で雑音分散の推定が期待できる。よって、雑音分散推定部171は、AC信号及びTMCC信号の雑音分散を算出するのが好適である。AC,TMCC信号の推定値の信号点が(I
i,Q
i)であり、BPSK変調されているAC,TMCC信号の信号点が(B,0)及び(−B,0)であるとき、AC,TMCC信号の雑音分散σ
iB2は次式(2)により算出される。ここで、BはAC,TMCC信号のブースト比であり、ISDB−Tの場合は4/3となる。min( )は小さいほうの値を選択することを意味する。
【0057】
【数2】
【0058】
また、
図4に示すようにOFDM信号にヌルパイロット信号が挿入されている場合には、ヌルパイロット信号のみの雑音分散を算出するか、あるいはAC信号、TMCC信号、及びヌルパイロット信号の雑音分散を算出するのが好適である。ヌルパイロット信号の推定値の信号点が(I
i,Q
i)であるとき、ヌルパイロット信号の雑音分散σ
iN2は次式(3)により算出される。
【0059】
【数3】
【0060】
帯域雑音分散算出部172は、シンボル区間決定部16により決定されたシンボル区間L内のOFDM信号について、雑音分散推定部171により算出されたキャリアシンボルの雑音分散の平均値を帯域雑音分散σ
−2として算出する。
図8は、帯域雑音分散算出部172による処理を説明する図である。雑音分散推定部171がAC,TMCC信号の雑音分散σ
iB2を算出する場合には、帯域雑音分散算出部172は、
図8(a)に示すように、シンボル区間L(この例では、L=−4〜+4)内におけるAC,TMCC信号の雑音分散σ
iB2の平均値σ
−2を算出する。
【0061】
雑音分散推定部171がヌルパイロット信号の雑音分散σ
iN2を算出する場合には、帯域雑音分散算出部172は、
図8(b)に示すように、シンボル区間L(この例では、L=−4〜+4)内におけるヌルパイロット信号の雑音分散σ
iN2の平均値σ
−2を算出する。
【0062】
キャリア雑音分散算出部173は、伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iから求まる重み付け行列W
iを用いて、帯域雑音分散算出部172により算出された帯域雑音分散σ
−2に対してキャリアごとの重み付けを行い、キャリアごとの雑音分散σ
i2を算出する。各キャリアにおける重みW
iは、H
iHH
i−1と表せる。重みW
iの算出等の詳細は、例えば、大鐘・小川、「わかりやすいMIMOシステム技術」、オーム社、p.101を参照されたい。各キャリアの重み付け成分は、この対角成分で表せる。これを全キャリアで正規化し、帯域雑音分散σ
−2に乗算することで重み付けを行うことができる。なお、キャリア雑音分散算出部173を備えない場合には、第2周波数デインターリーブ部18は不要となる。
【0063】
図9は、2×2のMIMOシステムにおいて、従来の受信装置によるBER特性と本発明の受信装置1によるBER特性の比較結果を示すグラフである。ここでは、遅延量120μs、DU比0dB、位相差180度のマルチパス波が存在する状況を想定してシミュレーションを行っている。図中の四角印でプロットされた線はシンボル区間L=1(雑音分散の時間平均をとらない従来の受信装置)の場合、三角印でプロットされた線はシンボル区間L=2の場合、×印でプロットされた線はシンボル区間L=3の場合、*印でプロットされた線はシンボル区間L=5の場合、丸印でプロットされた線はシンボル区間L=10の場合、+印でプロットされた線はシンボル区間L=15の場合のBER特性である。
【0064】
シミュレーション条件は、変調方式を1024QAM、符号化率を3/4、ガードインターバル比を1/8、sum-product復号法による繰り返し回数を20回とし、その他のFFTサイズなどはISDB−Tのモード3に準拠している。
図9に示すシミュレーション結果から、本発明によればBER=1.00×10
−7となるCN比を所要CN比としたときに、雑音分散をシンボル区間L内の時間平均とすることにより、BER特性が向上していることが分かる。
【0065】
このように、受信装置1は、シンボル区間決定部16により、伝送路応答H
iから雑音分散の算出に用いるOFDMシンボルのシンボル区間Lを決定し、雑音分散算出部17により、シンボル区間L内の送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を用いてOFDMシンボルの雑音分散σ
12,σ
22を算出するため、受信状況に応じてシンボル区間Lの長さを可変とすることできる。かくして、受信装置1によれば、最適な値の雑音分散を算出することができ、BER特性を改善することができるようになる。
【0066】
なお、上述した受信装置1として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、受信装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0067】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、2×2MIMOシステムにおける受信装置を例に説明したが、アンテナ数はこれに限定されるものではなく、4×2MIMOシステムなど、あらゆるアンテナ数のMIMOシステムにおける受信装置において本発明を適用することができる。また、SISO伝送システムにおける受信装置においても本発明を適用することができ、その場合には位相差検出部162は不要となる。