【文献】
蔀 拓也 他,次世代地上放送に向けた伝送技術 − LDPC符号を用いた偏波MIMO-超多値OFDM伝送のマルチパス環境での特性と,映像情報メディア学会技術報告,2012年 3月 9日,Vol.36, No.15,pp.1-6,BCT2012-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、添え字のiはOFDM信号のキャリア番号を意味する。また、本実施形態では、送信アンテナ数2、受信アンテナ数2の2×2MIMOシステムにおける受信装置を例に説明する。
【0019】
水平、垂直両偏波を用いた偏波MIMO伝送において、受信装置側で偏波を分離するために、水平偏波、垂直偏波で送信するOFDM信号に挿入されるパイロット信号の挿入パターンを相違させる技術が提案されている。例えば、村山,”-次世代地上放送に向けた伝送技術-スーパーハイビジョンの地上放送を目指して-”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.34,No.36,pp37-40,2010にて提案されている技術では、OFDM信号に、従来のパイロット信号(SP信号)に加え、ヌルパイロット信号を挿入している。ヌルパイロット信号は、無変調の振幅0の信号である。
【0020】
図2は、ヌルパイロット信号が挿入されたOFDM信号を示す図である。
図2(a)は水平偏波用、
図2(b)は垂直偏波用のOFDM信号であり、図中の丸印はデータ信号、二重丸印はパイロット信号(SP信号)、丸の中に×が付された印はヌルパイロット信号を意味する。この例では、ISDB−Tが採用している、キャリア方向に12キャリア周期、シンボル方向に4シンボル周期の配置パターンは変更せずに、水平偏波と垂直偏波でヌルパイロット信号を交互に挿入している。本発明の受信装置は、ヌルパイロット信号が挿入されたOFDM信号を受信するが、ヌルパイロット信号の配置はこれに限られるものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、受信装置1は、受信アンテナ11(11−1及び11−2)と、入力処理部12(12−1及び12−2)と、伝送路応答算出部13と、MIMO検出部14と、第1周波数デインターリーブ部15と、雑音分散算出部16と、第2周波数デインターリーブ部17と、尤度比算出部18と、ビットデインターリーブ部19と、誤り訂正復号部20と、を備える。なお、受信装置1に対応する送信装置が周波数方向にインターリーブ処理しない場合には、受信装置1は第1周波数デインターリーブ部15、及び第2周波数デインターリーブ部17を備える必要はなく、受信装置1に対応する送信装置がビット方向にインターリーブ処理しない場合には、受信装置1はビットデインターリーブ部19を備える必要はない。
【0022】
入力処理部12は、受信装置1に対応する送信装置から送信されるOFDM信号を、受信アンテナ11を介して受信し、受信したOFDM信号を直交復調処理及びフーリエ変換処理して、複素ベースバンド信号を生成する。
図1に示すように、入力処理部12は、GI除去部121(121−1及び121−2)と、フーリエ変換部122(122−1及び122−2)と、パイロット信号抽出部123(123−1及び123−2)と、を備える。
【0023】
GI除去部121は、受信したOFDM信号を直交復調処理してベースバンド信号を生成し、A/D変換によりデジタル信号を生成する。続いて、GI除去部121は、ガードインターバルを除去して有効シンボル信号を抽出する。そして、有効シンボル信号をフーリエ変換部122に出力する。
【0024】
フーリエ変換部122は、GI除去部121により抽出された有効シンボル信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を施して周波数領域の複素ベースバンド信号y
i1,y
i2生成する。そして、複素ベースバンド信号y
i1,y
i2をパイロット信号抽出部123、及びMIMO検出部14に出力する。つまり、フーリエ変換部122−1は、受信アンテナ11−1から受信したOFDM信号をFFT処理して複素ベースバンド信号y
i1を生成し、パイロット信号抽出部123−1、及びMIMO検出部14に出力する。フーリエ変換部122−2は、受信アンテナ11−2から受信したOFDM信号をFFT処理して複素ベースバンド信号y
i2を生成し、パイロット信号抽出部123−2、及びMIMO検出部14に出力する。
【0025】
パイロット信号抽出部123は、フーリエ変換部122により生成された複素ベースバンド信号y
i1,y
i2に含まれる既知のパイロット信号を抽出する。そして、パイロット信号を伝送路応答算出部13に出力する。
【0026】
伝送路応答算出部13は、パイロット信号抽出部123により抽出されたパイロット信号を用いて伝送路応答H
iを算出する。そして、伝送路応答H
iをMIMO検出部14、及び雑音分散算出部16に出力する。伝送路応答算出部13は、復号対象となるOFDMシンボルの前後7シンボル内のパイロット信号の振幅応答を算出して記憶し、パイロット信号の振幅応答を時間方向に1次補間することにより、復号対象シンボルの伝送路応答H
iを算出する。
【0027】
2×2MIMO伝送の伝送路応答H
iは
と表すことができる。伝送路応答Hの各要素h
i11,h
i12,h
i21,h
i22は複素数であり、h
i11は送信アンテナ#1から受信アンテナ#1への伝送路の状態を表し、h
i12は送信アンテナ#2から受信アンテナ#1への伝送路の状態を表し、h
i21は送信アンテナ#1から受信アンテナ#2への伝送路の状態を表し、h
i22は送信アンテナ#2から受信アンテナ#2への伝送路の状態を表す。
【0028】
MIMO検出部14は、フーリエ変換部122により生成された複素ベースバンド信号y
i1,y
i2、及び伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iを用いて、ZF(Zero Forcing)、MMSE(Minimum Mean Squared Error)などの既知の手法により、複数の受信アンテナ11により受信したデータストリームを分離して送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を生成する。そして、送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を第1周波数デインターリーブ部15及び雑音分散算出部16に出力する。
【0029】
第1周波数デインターリーブ部15は、MIMO検出部14により生成された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2に対し、周波数方向にデインターリーブ処理を行う。そして、デインターリーブ処理された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2を尤度比算出部18に出力する。周波数方向のデインターリーブ処理とは、受信装置1に対応する送信装置の周波数インターリーブ部により周波数方向に並べ替えられたデータを、元の順序に戻す処理である。
【0030】
受信装置1は、復号に必要な尤度比を算出するために、受信したOFDM信号の雑音分散を算出する必要がある。第1周波数デインターリーブ部15によりデインターリーブ処理されたデータキャリアから帯域全体の雑音分散を算出してもよいが、より精度の高い雑音分散を算出するには、後述するように、データキャリアでないキャリアシンボルを用いて帯域全体の雑音分散を推定する必要がある。したがって、
図1に示す受信装置1では、雑音分散算出部16を、第1周波数デインターリーブ部15と尤度比算出部18との間ではなく、第1周波数デインターリーブ部15の前に配置している。
【0031】
雑音分散算出部16は、MIMO検出部14から入力される送信信号の推定値x^
i1,x^
i2のうち、ヌルパイロット信号の推定値を用いて、受信したOFDM信号の雑音分散である雑音分散σ
i12,σ
i22を算出する。本明細書では、この雑音分散σ
i12,σ
i22をOFDM雑音分散と称する。そして、OFDM雑音分散σ
i12,σ
i22を第2周波数デインターリーブ部17に出力する。雑音分散算出部16の詳細については後述する。
【0032】
第2周波数デインターリーブ部17は、雑音分散算出部16により算出されたOFDM雑音分散σ
i12,σ
i22に対し、周波数方向にデインターリーブ処理を行う。そして、デインターリーブ処理されたOFDM雑音分散σ
i12,σ
i22を尤度比算出部18に出力する。
【0033】
尤度比算出部18は、第1周波数デインターリーブ部15によりデインターリーブ処理された送信信号の推定値x^
i1,x^
i2と、第2周波数デインターリーブ部17から入力されるOFDM雑音分散σ
i12,σ
i22とを用いて、受信信号の尤度比λを算出する。そして、尤度比λをビットデインターリーブ部19に出力する。尤度比λは誤り訂正符号の各ビットについて算出されるものであり、受信信号の確率的な信頼度情報を表す。なお、尤度比λとしては、一般的に対数尤度比(LLR)が用いられる。
【0034】
対数尤度比λは、b=0となる尤度関数とb=1となる尤度関数の比の対数で表される。つまり、対数尤度比λは、送信信号の推定値x^
i、及びOFDM雑音分散σ
i2を用いて、次式(1)により求められる。d
12,d
02は理想信号点と送信信号の推定値x
i^の信号点との間の2乗ユークリッド距離である。
【0036】
ビットデインターリーブ部19は、尤度比算出部18により算出された尤度比λに対し、ビット方向にデインターリーブ処理を行う。そして、デインターリーブ処理された尤度比λを、誤り訂正復号部20に出力する。ビット方向のデインターリーブ処理とは、受信装置1に対応する送信装置のビットインターリーブ部によりビット方向に並べ替えられたデータを、元の順序に戻す処理である。
【0037】
なお、受信装置1に対応する送信装置が時間インターリーブ部により時間方向にもインターリーブ処理を行う場合には、受信装置1は、更に時間デインターリーブ部(図示せず)を備える。この時間デインターリーブ部は、尤度比λを時間方向にデインターリーブ部処理し、送信装置の時間インターリーブ部により時間方向に並べ替えられたデータを元の順序に戻す。
【0038】
誤り訂正復号部20は、ビットデインターリーブ部19によりデインターリーブ処理された尤度比λを用いて、誤り訂正符号(LDPC符号やターボ符号)の復号を行い、送信装置から送信されたビットの推定値を出力する。
【0039】
次に、雑音分散算出部16の詳細について説明する。
図3は、雑音分散算出部16の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、雑音分散算出部16は、帯域雑音分散算出部161と、キャリア雑音分散算出部162と、を備える。キャリア雑音分散算出部162は必須の構成部ではないが、キャリア雑音分散算出部162を備えることにより、より雑音分散の推定精度を向上させることができる。帯域雑音分散算出部161については、以下に2つの態様を示す。
【0040】
[第1の態様の帯域雑音分散算出部]
図4は、第1の態様の帯域雑音分散算出部161−1の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、第1の態様の帯域雑音分散算出部161−1は、信号判定部1611−1と、ヌルパイロット雑音分散算出部1612と、雑音分散決定部1613−1と、を備える。帯域雑音分散算出部161−1は、MIMO検出部14から入力される送信信号の推定値x^
i1,x^
i2に対してそれぞれ同じ処理を施すため、両者を区別することなく説明する。
【0041】
信号判定部1611−1は、MIMO検出部14から入力される送信信号の推定値x^
i(x^
i1,x^
i2)がヌルパイロット信号の推定値であるか否を判定する。信号判定部1611−1は、推定値x^
iがヌルパイロット信号の推定値であると判定した場合にのみ、該推定値x^
iをヌルパイロット雑音分散算出部1612に出力する。
【0042】
ヌルパイロット雑音分散算出部1612は、信号判定部1611−1から入力されるヌルパイロット信号の推定値から、ヌルパイロット信号の雑音分散σ
iN2を算出する。そして、雑音分散σ
iN2を雑音分散決定部1613−1に出力する。本明細書では、この雑音分散σ
iN2をヌルパイロット雑音分散と称する。
【0043】
図7は、ヌルパイロット信号の雑音分散を説明する図であり、変調方式が16QAMのデータ信号の信号点、変調方式がBPSKのAC信号又はTMCC信号の信号点、ヌルパイロット信号の信号点、及びヌルパイロット信号の推定値の信号点を図示している。ヌルパイロット信号の推定値の信号点が(I
i,Q
i)であるとき、ヌルパイロット雑音分散σ
iN2は次式(2)により算出される。
【0045】
雑音分散決定部1613−1は、ヌルパイロット雑音分散算出部1612により算出されたヌルパイロット雑音分散σ
iN2の平均値を、受信信号の帯域雑音分散σ
−2として算出する。帯域雑音分散σ
−2は式(3)により算出される。ここで、NはOFDMシンボル内のキャリア本数であり、N
NはOFDMシンボル内のヌルパイロット信号の数である。なお、平均値は、1 OFDMシンボル単位で算出してもよいし、複数のOFDMシンボル単位で算出してもよい。
【0047】
ヌルパイロット信号は無変調であるため、これが観測された受信シンボルは雑音そのものであり、シンボルの判定誤りが発生することは無い。また、ヌルパイロット信号はパイロット信号を用いた等化処理に使用されないため、ヌルパイロット信号の雑音成分情報はパイロット信号を用いた等化処理後もそのまま残ることとなる。また、ヌルパイロット信号の多重位置は既知であるため、これをOFDMシンボル全体で統計的に分散を算出する事で、AC信号及びTMCC信号を使用した場合よりも雑音分散を精度良く算出することができる。
【0048】
[第2の態様の帯域雑音分散算出部]
次に、第2の態様の雑音分散算出部について説明する。
図5は、第2の態様の帯域雑音分散算出部161−2の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、帯域雑音分散算出部161−2は、信号判定部1611−2と、ヌルパイロット雑音分散算出部1612と、雑音分散決定部1613−2と、BPSK雑音分散算出部1614と、を備える。
図6は、帯域雑音分散算出部161−2の動作を示すフローチャートである。
図5及び
図6を参照して、第2の態様の帯域雑音分散算出部161−2について説明する。
【0049】
信号判定部1611−2は、MIMO検出部14から入力される送信信号の推定値x^
iが非データ信号の推定値であるか否を判定する(ステップS101)。推定値x^が非データ信号の推定値であると判定した場合には(ステップS101−Yes)、さらに非データ信号がAC信号又はTMCC信号であるか否かを判定する(ステップS102)。信号判定部1611−2は、送信信号がAC信号又はTMCC信号であると判定した場合には(ステップS102−Yes)、送信信号(AC信号及びTMCC信号)の推定値x^
iをBPSK雑音分散算出部1613に出力する。
【0050】
信号判定部1611−2は、推定値x^
iがAC信号又はTMCC信号の推定値でないと判定した場合には(ステップS102−No)、推定値x^
iがヌルパイロット信号の推定値であるか否を判定する(ステップS104)。ヌルパイロット信号の推定値であると判定した場合には(ステップS104−Yes)、送信信号(ヌルパイロット信号)の推定値x^
iをヌルパイロット雑音分散算出部1612に出力する。推定値x^
iがAC信号、TMCC信号、又はヌルパイロット信号の推定値でない場合には、その推定値x^
iは雑音分散の算出には使用されない。
【0051】
ヌルパイロット雑音分散算出部1612は、信号判定部1611−2から入力されるヌルパイロット信号の推定値から、ヌルパイロット雑音分散σ
iN2を算出する(ステップS105)。そして、ヌルパイロット雑音分散σ
iN2を雑音分散決定部1613−2に出力する。ヌルパイロット雑音分散σ
iN2は上記の式(2)により算出される。
【0052】
BPSK雑音分散算出部1614は、信号判定部1611−2から入力されるAC信号及びTMCC信号の推定値から、AC信号及びTMCC信号の雑音分散σ
iB2を算出する(ステップS103)。そして、AC信号及びTMCC信号の雑音分散σ
iB2を雑音分散決定部1613−2に出力する。本明細書では、この雑音分散σ
iB2をBPSK雑音分散と称する。
【0053】
図8は、AC信号及びTMCC信号の雑音分散を説明する図であり、変調方式が16QAMのデータ信号の信号点、変調方式がBPSKのAC,TMCC信号の信号点、ヌルパイロット信号の信号点、及びAC,TMCC信号の推定値の信号点を図示している。AC,TMCC信号の推定値の信号点が(I
i,Q
i)であり、BPSK変調されているAC,TMCC信号の信号点が(B,0)及び(−B,0)であるとき、BPSK雑音分散σ
iB2は次式(4)により算出される。ここで、BはAC,TMCC信号のブースト比であり、ISDB−Tの場合は4/3となる。min( )は小さいほうの値を選択することを意味する。
【0055】
雑音分散決定部1613−2は、ヌルパイロット雑音分散算出部1612により算出されたヌルパイロット雑音分散σ
iN2、及びBPSK雑音分散算出部1614により算出されたBPSK雑音分散σ
iB2を全てのキャリアについて取得すると(ステップS106−Yes)、加重平均を次式(5)により算出し、この値を受信信号の帯域雑音分散σ
−2とする。ここで、N
BはOFDMシンボル内のAC信号及びTMCC信号の数である。
【0057】
このように、第1の態様の帯域雑音分散算出部161−1では、ヌルパイロット信号の推定値のみを用いて帯域雑音分散σ
−2を算出したが、第2の態様の帯域雑音分散算出部161−2では、ヌルパイロット信号、AC信号、及びTMCC信号の推定値を用いて帯域雑音分散σ
−2を算出する。AC信号、及びTMCC信号の推定値を用いるものの、雑音分散の算出に用いる信号数(サンプル数)を増やすことができるため、結果的に帯域雑音分散σ
−2の精度を向上させることができる。
【0058】
なお、雑音分散決定部1613−2は、式(3)により算出されるヌルパイロット雑音分散σ
iN2の平均値σ
−iN2と、式(5)により算出されるヌルパイロット雑音分散σ
iN2及びBPSK雑音分散σ
iB2の加重平均値のいずれか一方を、ユーザにより設定されるモードに従って出力するようにしてもよい。
【0059】
キャリア雑音分散算出部162は、伝送路応答算出部13により算出された伝送路応答H
iから求まる重み付け行列W
iを用いて、帯域雑音分散算出部161により算出された帯域雑音分散σ
−2に対してキャリアごとの重み付けを行い、キャリアごとの雑音分散をOFDM雑音分散σ
i2として算出する。各キャリアにおける重みW
iは、H
iHH
i−1と表せる。重みW
iの算出等の詳細は、例えば、大鐘・小川、「わかりやすいMIMOシステム技術」、オーム社、p.101を参照されたい。各キャリアの重み付け成分は、この対角成分で表せる。これを全キャリアで正規化し、帯域雑音分散σ
−2に乗算することで重み付けを行うことができる。なお、キャリア雑音分散算出部162を備えない場合には、第2周波数デインターリーブ部17は不要となる。
【0060】
図9は、2×2のMIMOシステムにおいて、従来の受信装置によるBER特性と本発明の受信装置1によるBER特性の比較結果を示すグラフである。ここでは、遅延量0.37μs、DU比0dB、位相差0度のマルチパス波が存在する状況を想定してシミュレーションを行っている。図中の菱形印でプロットされた線は、AC信号及びTMCC信号の推定値のみから雑音分散を算出する、従来の受信装置によるBER特性である。図中の四角印でプロットされた線は、ヌルパイロット信号の推定値のみから雑音分散を算出する、第1の態様の帯域雑音分散算出部161−1を備える受信装置1によるBER特性である。図中の三角印でプロットされた線は、ヌルパイロット信号、AC信号、及びTMCC信号の推定値から雑音分散を算出する、第2の態様の帯域雑音分散算出部161−2を備える受信装置1によるBER特性である。
【0061】
シミュレーション条件は、変調方式を1024QAM、符号化率を3/4、ガードインターバル比を1/8とし、その他のFFTサイズなどはISDB−Tのモード3に準拠している。
図9に示すシミュレーション結果から、本発明によれば、第1の態様の帯域雑音分散算出部161−1を備える場合、及び第2の態様の帯域雑音分散算出部161−2を備える場合のいずれにおいても、BER=1.00×10
−7となるCN比を所要CN比としたときに、BER特性が向上していることが分かる。
【0062】
このように、受信装置1は、帯域雑音分散算出部161により、ヌルパイロット信号の推定値を用いて、帯域雑音分散σ
−2を算出する。ヌルパイロット信号は無変調であるため、シンボルの判定誤りが発生することは無い。このため、受信装置1によれば、OFDM雑音分散σ
i2を精度良く算出することができるようになる。
【0063】
また、受信装置1は、帯域雑音分散算出部161により算出された帯域雑音分散σ
−2に対して、伝送路応答H
iから求まる重み付け行列W
iにより重み付け演算を行った値をOFDM雑音分散σ
i2として算出するキャリア雑音分散算出部162を更に備えることにより、OFDM雑音分散σ
i2をより一層精度良く算出することができるようになる。
【0064】
なお、上述した受信装置1として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、受信装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0065】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、2×2MIMOシステムにおける受信装置を例に説明したが、アンテナ数はこれに限定されるものではなく、4×2MIMOシステムなど、あらゆるアンテナ数のMIMOシステムにおける受信装置において本発明を適用することができる。