【文献】
吉田 英治,DOI拡張エネルギーウィンドウ法による高感度PET装置の検討,平成19年度次世代PET開発研究報告書,日本,放射線医学総合研究所,2008年 1月21日,第10−14頁
【文献】
核医学アーテファクト 散乱線の影響と光電ピーク領域計数比法による対策,安田 正一 他,核医学画像診断,日本,金沢大学,1990年 3月,05巻2号,第66−69頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放射線検出器集合体を校正用仲介標準器として作業現場に搬入し、作業現場にある放射線源に放射能絶対値を与え、この放射線源を、作業現場で使用している放射線測定装置で測定して、該放射線測定装置の出力と放射能絶対値を関連付けることを特徴とする請求項8に記載の放射線測定装置の校正方法。
放射線源を分注して、放射線検出器集合体用放射線源と放射線測定装置用放射線源に分け、各放射線源の重さを測定し、放射線検出器集合体用放射線源を放射線検出器集合体で測定して、その放射能絶対値を付与し、この放射能絶対値と放射線源の重さから、放射線測定装置用放射線源に放射能絶対値を付与し、該放射線測定装置用放射線源を作業現場の放射線測定装置で測定して、該放射線測定装置の出力値と前記放射線測定装置用放射線源の放射能絶対値を関係付けることを特徴とする請求項8に記載の放射線測定装置の校正方法。
【背景技術】
【0002】
PET装置は、陽電子放出核種を利用した核医学イメージング装置であり、癌の診断や分子イメージング等に広く応用されている。また、放射線治療装置と併用した開放型PET装置により、患部の放射線量分布が可視化され、あるいは、薬効を本格投与前に推定できるPET装置によるマイクロドージング試験が進展するなど、今後PET装置の更なる普及が見込まれている。
【0003】
陽電子放出核種とは、
18Fのように原子核中の陽子数が中性子数に比べて過多であることによる不安定な同位元素であり、β
+崩壊に伴って陽電子とニュートリノを放出する性質がある。放出された陽電子は電子の反物質であるため、電子と出会うと対消滅して、両者の質量が全てエネルギに転換される。このエネルギは、消滅放射線という高エネルギ電磁波の形で放射される。対消滅の前後で運動量保存則が維持されるため、消滅放射線は主に2本が同時刻にほぼ正反対の方向に放出される。厳密には1本のみの放出や、3本以上が放出される場合も存在するが、その割合は合わせて全体の1%未満であるため、イメージングでは無視できる。2本を放出する場合、それぞれのエネルギは(陽)電子1個の質量分に相当し、約511keVである。
【0004】
イメージングの原理は、以下のようである。消滅放射線の同時計数がおこった場合、即ち、511keVの放射線が対向する2つの放射線検出器でほぼ同時刻に測定された場合、この2つの放射線検出器を結ぶ直線上で陽電子が対消滅した可能性が最も高い。この情報を、
図1に示す如く、被検体10の周囲にリング状に配置した多くの放射線検出器16を用いて収集し、X線CTと同様な数学的手法によって再構成することにより、被検体10中の陽電子放出核種12の分布を近似する断層画像映像が得られる。図において、14は消滅放射線、18はベッドである。
【0005】
従って、放射線検出器16に求められる性能は、消滅放射線14の入射位置、エネルギ、入射時刻を、なるべく正確に測定できることである。ここで、ほぼ同時刻とは概ね15ナノ秒(ナノは10
-9)以内の時間であり、放射線検出器の時刻決定の精度が高い場合には10ナノ秒以下、あるいは5ナノ秒以下とすることができる。
【0006】
このPET装置用検出器として、特許文献1に、
図2に示すような多数の放射線検出器要素から構成される、深さ方向相互作用位置(DOI)情報を得ることが可能な放射線検出器集合体(DOI検出器とも称する)20が提案されている。図において、21〜24は各層のシンチレータアレイ、26は受光素子である。
【0007】
PET装置等の内部に装荷されている放射線検出器集合体は測定対象物の放射能を相対測定する装置であり、その検出効率(感度)は、予め放射能値が付与された標準線源で求めるか、あるいは、凡その放射能値が付与された放射線源により、放射線検出器集合体の相対的な検出効率(感度)の経時的変化が求められていた。放射線源には半減期があり、定期的に交換しなければならないが、線源を交換すると、線源の放射能値の精度が悪いことから、PET装置等の内部に装荷されている放射線検出器集合体の検出効率(感度)の測定値も、
図3に例示するように変わってしまっていた。従って、PET装置等の内部に装荷されている放射線検出器集合体の検出効率(感度)について精度の向上が求められてきた。
【0008】
一方、
57Co、
54Mn、
134Cs等、β線やX線、オージェ電子とγ線を放出する放射線源の放射能は、4πβ−γ同時測定装置などの放射線検出器により絶対測定されてきた。あるエネルギの放射線(放射線1)と、あるエネルギの放射線(放射線2)が、ある確率で、一回の崩壊において連続的に線源から放出される場合、放射線1を検出する計数率、放射線2を検出する計数率、及び、放射線1と放射線2を同時に検出する計数率を用いることにより、線源の放射能を絶対測定できることが一般に知られている(同時計数法と称する)(非特許文献1参照)。
【0009】
従って、放射能を絶対測定する場合、
図4に例示する如く、放射線1を検出する放射線検出器(検出器1)と、放射線2を検出する放射線検出器(検出器2)が用いられてきた。ここで、100は線源、110は放射線1としてのβ線やX線、オージェ電子、112は放射線2としてのγ線、120は検出器1としての例えば比例計数管、130と132は検出器2としての例えばNaI(T1)シンチレータ、140は同時計数回路である。
【0010】
この方法では、比例計数管120でβ線110を計数し、シンチレータ130、132でγ線112を計数し、同時計数回路140でβ線とγ線が同時に検出した事象も計数するが、例えば、検出器1によって、放射線2を検出してしまう場合等があり、それらを補正するため、効率外挿法が用いられている(非特許文献1参照)。
【0011】
この方法は、放射線1を検出する計数率、放射線2を検出する計数率、及び、放射線1と放射線2を同時に検出する計数率から得られる、検出非効率値(=(1−検出効率)/検出効率)と見かけの放射能値を用い、
図5に示す如く、この検出非効率値と見かけの放射能値の関係式を得て、検出非効率値が0即ち検出効率100%のときの放射能を絶対値とするものである。
【0012】
前者の4πβ−γ同時測定装置で絶対測定を行うには、2種類の検出器が必要であった。また、計数率が高いと、検出器において、放射線が複数本同時に検出器に入射して、
図6に示す如く、あたかも1本の別の放射線であるが如く検出されてしまう(パイルアップ)ことがある。このため、従来法では、数kBq程度の放射能値を持つ放射線源を測定しており、PET装置に使用されているような高い強度の放射能を絶対測定するのが難しかった。これを解決するため、放射線検出器集合体を用いて、1種類の検出器で高強度の放射線源の放射能を絶対測定する方法が提案されている(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
図7は、外挿を用いない放射線検出器集合体を用いた放射能絶対測定方法及び放射線検出器集合体の検出効率(感度)測定方法を示す参考形態である。図中、200は放射線源、210、212は、例えばDOI検出器である放射線検出器集合体、220は計数装置、240は計算機、250は入力装置、260は表示装置である。
【0034】
放射線源200からは、複数の光子が放出される。放射線検出器集合体210、212に光子が入射し、計数装置220によって、光子の入射時刻と、光子のエネルギと、光子を検出した検出素子の識別番号が組となって計数され、計算機240の記憶装置に記憶される。また、計数装置220で放射能値が計算される場合は、放射能値が計算機240に出力される。入力装置250によって計算機240を操作し、表示装置260により、入力内容や結果が表示される。
【0035】
光子を計数しながら放射能値を計算できるシステムの場合には、計数装置220に、
図8あるいは
図9のような、アルゴリズムをもつ回路が実装される。
図8の場合は以下のとおりである。光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の識別番号の組が、着目しているエネルギを含む組のみを通すエネルギフィルタ221及び222に送られる。ここで、221は電子陽電子対消滅光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウA)を持つものを通し、222は他光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウG)を持つものを通す。
【0036】
223はエネルギウィンドウAに於ける光子の検出個数を判別する回路である。
【0037】
224、225はエネルギウィンドウAとエネルギウィンドウGに於いてある時間幅での光子の同時検出を判別する回路であり、224はエネルギウィンドウAに於いて光子が単数または複数検出される場合に用いられ、225はエネルギウィンドウAに於いて単数光子が検出される場合に用いられる。
【0038】
226、227、228、229、230はカウンタであり、測定時間中、226はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数又は複数検出事象の計数、227はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象の計数、228はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象のある時間幅での同時計数、229はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象のある時間幅での同時計数、230はエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数を行う。
【0039】
231は放射能絶対値算出回路であり、226から230までのカウンタの値、および測定時間から、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象の計数率ρ
a、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象の計数率ρ
as、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率ρ
γ、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
c、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
csが求められ、これらより放射能絶対値Aが算出される。
【0040】
放射能絶対値Aの算出式は、例えば
22Naの場合は、以下のとおりである。
【0042】
ここで、α
β, α
ecは、
22Naがβ
+崩壊により
22Neの1245keVのエネルギ準位に崩壊する分岐比とEC崩壊により同エネルギ準位に崩壊する分岐比である。同様に、核種ごとに原子核崩壊様式に則した計算式を立式することにより、放射能が求められる。
【0043】
この得られた放射能絶対値は、
図7に示した計算機240に送出される。
【0044】
また、
図9の場合は以下のとおりである。光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の識別番号の組が、着目しているエネルギを含む組のみを通すエネルギフィルタ271及び272に送られ、更にスペクトルアナライザ273に送られる。ここで、エネルギフィルタ271は電子陽電子対消滅光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウA)を持つものを通し、エネルギフィルタ272は他光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウG)を持つものを通す。またスペクトルアナライザ273はすべてのデータの組を受け取り、光子スペクトルを作成する。
【0045】
同時事象検知回路274は、エネルギウィンドウAに於ける光子とエネルギウィンドウGに於ける光子のある時間幅での同時検出を検知するものである。
【0046】
カウンタ275、276、277は、それぞれ、エネルギウィンドウAに於ける光子の検出事象の計数、エネルギウィンドウAに於ける光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象のある時間幅での同時計数、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数を行う。
【0047】
計数率比計算回路278はスペクトルアナライザ273により得られた光子スペクトルから、エネルギウィンドウAについて、ピーク部分と連続部分を分離し、ピーク部分の計数と連続部分の計数を求め、これと測定時間により電子陽電子対消滅光子の光電吸収による計数率に対する他光子の非光電吸収による計数率の比を得る。ピーク部分のカウントと連続部分のカウントの分離は、文部科学省放射能測定シリーズ7、ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリーに記載の方法等を用いることができる。ピーク部分の計数率ρ
peakと連続部分の計数率ρ
contから、計数率比はρ
cont/ρ
peakと求められる。
【0048】
放射能絶対値算出回路279では、測定時間とカウンタ275、276、277から得られる計数からエネルギウィンドウAに於ける光子の検出事象の計数率ρ
a、エネルギウィンドウGに於ける光子の検出事象の計数率ρ
γ、エネルギウィンドウAに於ける光子の検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子の検出事象の同時計数率ρ
cを得て、計数率比計算回路278より計数率比ρ
cont/ρ
peakを得て、放射能絶対値Aを算出する。
【0049】
放射能絶対値Aの算出方法は、例えば
22Naの場合は以下の式のとおりである。
【0051】
ここでα
β, α
ecは
22Naがβ
+崩壊により
22Neの1245keVのエネルギ準位に崩壊する分岐比とEC崩壊により同エネルギ準位に崩壊する分岐比である。同様に、核種ごとに原子核崩壊様式に則した計算式を立式することにより、放射能が求められる。
【0052】
図7に示した計算機240が省略され、入力装置250及び表示装置260が、直接、計数装置220に接続されていても良い。
【0053】
一方、計数装置220ではなく計算機240で、放射能計算を行う場合は、計数装置220から、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータが組になって出力され、計算機240に
図8または
図9のアルゴリズムが実装されるか、又は、計数装置220から、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータが組になって出力され、計算機240内の記憶装置に一旦記憶した後、計算機240に実装された
図10〜11、
図12のようなアルゴリズムにより放射能を計算することもできる。
【0054】
具体的には、まず、
図10のステップ301で、電子陽電子対消滅光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウA)および他光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウG)を決定する。
【0055】
次いで、ステップ302で、エネルギウィンドウA内にある、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列1と、エネルギウィンドウG内にある、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列2を作る。
【0056】
次いで、ステップ303で、まだ読み込んでいないデータの組の中で最も入射時刻の古いデータの組を、データ列1又はデータ列2から読み込む。
【0057】
次いで、ステップ304で、データ列1から読み込んだのか判別する。ステップ304の判定結果が「はい」の場合は、ステップ305に進む。
【0058】
ステップ305では、データ列1にある時間幅で同時刻入射のデータの組があるか判別する。ステップ305の判定結果が「はい」の場合は、ステップ306に進む。ステップ306では、同時刻入射のデータの組をデータ列1から読み込み、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させる。なお、同時刻入射のデータの組が2つ以上の複数存在しても計数値は1つ増加させる。
【0059】
次いで、ステップ307で、データ列2にある時間幅での同時刻入射の組があるか判別する。ステップ307の判定結果が「はい」の場合は、ステップ308に進む。
【0060】
ステップ308では、データ列2よりデータを読み込み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させる。更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0061】
一方、ステップ305の判定結果が「いいえ」の場合は、ステップ309に進む。
【0062】
ステップ309では、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0063】
次いで、ステップ310で、データ列2にある時間幅で同時刻入射の組があるかどうか判定する。ステップ310の判定結果が「はい」の場合は、ステップ311に進む。
【0064】
ステップ311では、データ列2よりデータを読み込み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0065】
一方、ステップ304の判定結果が「いいえ」の場合は、
図11のステップ312に進み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0066】
次いで、ステップ313で、ある時間幅で同時刻入射のデータの組がデータ列1にあるか判別する。ステップ313の判定結果が「はい」の場合は、ステップ314に進む。
【0067】
ステップ314では、データ列1から同時刻入射のデータの組を読み込む。
【0068】
次いで、ステップ315で、データ列1にある時間幅で同時刻入射の組があるか判別する。ステップ315の判別結果が「はい」の場合はステップ316に進む。
【0069】
ステップ316では、データ列1よりデータを読み込む。エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0070】
一方、ステップ315の判定結果が「いいえ」の場合は、ステップ317に進み、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0071】
図10のステップ308、311、
図11の316、317終了後、又は、
図10のステップ307、310、
図11の313の判定結果が「いいえ」の場合は、
図11のステップ318に進み、データの組を全て読み込んだか判別する。ステップ318の判定結果が「はい」の場合は、ステップ319に進み、測定時間と各計数値から得られる、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率と、例えば式(1)〜(2)を用いて、放射能絶対値を算出する。一方、ステップ318の判定結果が「いいえ」の場合、
図10のステップ303に進む。
【0072】
図12においては、ステップ331で、全データを用いて光子エネルギスペクトルを作成する。
【0073】
次いで、ステップ332で、得られた光子エネルギスペクトルからエネルギウィンドウA内について、ピーク部分と連続部分を分離し、ピーク部分の計数と連続部分の計数を求め、これと測定時間により電子陽電子対消滅光子の光電吸収による計数率ρ
peakで他光子の非光電吸収による電子陽電子対消滅光子エネルギウィンドウに於ける計数率ρ
contを除した計数率比ρ
cont/ρ
peakを得る。ピーク部分のカウントと連続部分のカウントの分離は、文部科学省放射能測定シリーズ7、ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリーに記載の方法等を用いることができる。
【0074】
次いで、ステップ333で、電子陽電子対消滅光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウA)および他光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウG)を決定する。
【0075】
次いで、ステップ334で、エネルギウィンドウAに於ける光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列1と、エネルギウィンドウGに於ける光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列2を作る。
【0076】
次いで、ステップ335で、まだ読み込んでいないデータの組の中で最も入射時刻の古いデータの組を、データ列1又はデータ列2から読み込む。
【0077】
次いで、ステップ336で、データ列1から読み込んだのか判別する。ステップ336の判別結果が「はい」の場合は、ステップ337に進む。
【0078】
ステップ337では、エネルギウィンドウAに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0079】
次いで、ステップ338で、データ列2に、ある時間幅で同時刻入射の組があるか判別する。ステップ338の判別結果が「はい」の場合は、ステップ339に進む。
【0080】
ステップ339では、データ列2よりデータを読み込み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させ、更にエネルギウィンドウAに於ける光子とエネルギウィンドウGに於ける光子の同時検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0081】
一方、ステップ336の判別結果が「いいえ」の場合は、ステップ340に進む。
【0082】
ステップ340では、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0083】
次いで、ステップ341で、データ列1にある時間幅で同時刻入射の組があるか判別する。ステップ341の判別結果が「はい」の場合は、ステップ342に進む。
【0084】
ステップ342では、データ列1からデータを読み込み、エネルギウィンドウAに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させ、更にエネルギウィンドウAに於ける光子とエネルギウィンドウGに於ける光子の同時検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0085】
ステップ339、342終了後、または、ステップ338、341の判別結果が「いいえ」の場合、ステップ343へ進む。
【0086】
ステップ343では、データの組を全て読み込んだか判別する。ステップ343の判定結果が「はい」の場合は、ステップ344に進む。
【0087】
ステップ344では、エネルギウィンドウAに於ける光子検出事象の計数率ρ
a、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率ρ
γ、エネルギウィンドウAに於ける光子検出事象とエネルギウィンドウAに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
c、エネルギウィンドウAに於ける電子陽電子対消滅光子の光電吸収によるピーク部分の計数率ρ
peakで他光子による連続部分の計数率ρ
contを除した計数率比ρ
cont/ρ
peakを用いて、例えば、前出(3)式により放射能絶対値Aを算出する。
【0088】
一方、ステップ343の判別結果が「いいえ」の場合、ステップ335に戻る。
【0089】
以上のように、放射線検出器集合体によって、放射線源の放射能絶対値が計算できるので、これを基に単位時間当たりの放射線検出器集合体に入射する光子の数が計算できる。放射線源から放出される放射線の原子核1崩壊当たりの放出率は、Table of Isotopes,eighth edition,volume I,II,R.B.Firestone and V.S.Shirley,Wiley Interscience、 Table of radionuclides, Volume 1, 2, 3, Monoguraphie BIPM-5, Bureau International Des Poids et Mesures、Recommended data, the Laboratoire National Henri Becquerelなどの核データから参照でき、又、線源の位置と放射線検
出器集合体の幾何学的関係による係数、及び、これらの数値と求められた線源の放射能から、放射線検出器集合体に入射する放射線の単位時間当たりの数を計算することができる。放射線検出器集合体の光子の計数率を単位時間当たりの放射線検出器集合体に入射する光子で除することで、放射線検出器集合体の検出効率(感度)が求められる。また、放射線検出器集合体の光子の計数率を単位時間当たりの線源からの光子の発生数あるいは線源の放射能で除して検出効率(感度)とすることもあり、こちらも計算可能である。
【0090】
なお、参考形態では、例えば核種が
22Naの場合、
図13(A)に例示する如く、他光子が511keVのエネルギウィンドウに入るのは1回だけと仮定していたが、検出素子が増えると、
図13(B)に例示する如く、他光子が511keVのエネルギウィンドウに2個同時に計数されたりする放射線の多重散乱の影響を受けてしまうことが、避けられなかった。さらに、多数の検出素子を用いることでパイルアップを起こりにくくしていたが、パイルアップが起こってしまう場合に対処していなかった。以下、このような問題を解決した本発明の第1実施形態について説明する。
【0091】
本実施形態の全体構成は、
図7に示した参考形態と同じであるので説明は省略する。
【0092】
参考形態の
図8に対して、本実施形態においては、計数装置220に、
図14のような、アルゴリズムをもつ回路が実装される。光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の識別番号の組が、着目しているエネルギを含む組のみを通すエネルギフィルタ281、282及び283に送られる。ここで、281は電子陽電子対消滅光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウA)を持つものを通し、282は他光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウG)を持つものを通し、283は電子陽電子対消滅光子の光電吸収と他光子の光電吸収によるパイルアップのエネルギ範囲(エネルギウィンドウP)を持つものを通す。
【0093】
ここで、光電吸収エネルギ範囲については、必ずしも光電吸収エネルギピーク全範囲とする必要は無い。例えば、
図15に示す如く、光電吸収エネルギピークの高エネルギ側半分を光電吸収エネルギ範囲とするなどして、コンプトン効果による低エネルギ散乱光子の影響を低減させ、光電効果による部分のみを用いることによって放射能測定不確かさを抑制することも可能である。光電吸収エネルギ範囲は、高エネルギ側半分に限定されず、低エネルギ側でカットすれば良い。なお、光電吸収エネルギ範囲を狭く設定すると、低エネルギ散乱光子の影響をより低減することも可能であるが、計数率が低下し、放射能測定不確かさを小さくするために測定時間を長くする必要が出てくるため、光電吸収エネルギ範囲は測定時間との兼ね合いで、設定する。
図15のエネルギウィンドウPの部分が、参考形態で無視していたパイルアップの部分である。
【0094】
エネルギフィルタ283を通ったデータは、以降の回路において、エネルギフィルタ281(即ちエネルギウィンドウA)とエネルギフィルタ282(即ちエネルギウィンドウG)を同時に各々1つずつデータが通ったことになるように扱う。即ちエネルギウィンドウAで1つ光子が検出され、エネルギウィンドウGで1つ光子が検出されたと見なす。また、これは、同時に他のデータがエネルギウィンドウAやGを通ることを妨げず、同時に他のデータがエネルギウィンドウAやGを通った場合、同時検出光子数はそれぞれ加算される。
【0095】
284はエネルギウィンドウAに於ける光子検出数を判別する回路である。
【0096】
285、290、294はエネルギウィンドウAに於ける光子とエネルギウィンドウGに於ける光子のある時間幅での同時検出を判別する回路であり、285はエネルギウィンドウAに於いて光子が単数または複数検出した場合に用いられ、290はエネルギウィンドウAに於いて光子が単数検出した場合に用いられ、294はエネルギウィンドウAに於いて二光子検出した場合に用いられる。
【0097】
286、287、288、291、292、295、296はカウンタであり、測定時間中、286はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象の計数、287はエネルギウィンドウGに於ける光子の検出事象の計数、288はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子の検出事象のある時間幅での同時計数、291はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象の計数、292はエネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子の検出事象のある時間幅での同時計数、295はエネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数、296はエネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子の検出事象のある時間幅での同時計数を行う。
【0098】
293と297は、エネルギウィンドウAに於ける光子検出と、エネルギウィンドウAとエネルギウィンドウGに於ける光子同時検出を行う回路ユニットであり、必要に応じて、エネルギウィンドウAでの三光子検出、エネルギウィンドウAでの四光子検出、というように、回路ユニットを増やすこともできる。
【0099】
289は放射能絶対値算出回路であり、296、297等のカウンタの値、および測定時間から、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数率ρ
a、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率ρ
g、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
ag、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率ρ
as、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
asg、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率ρ
ad、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
adg等が求められ、これらより放射能絶対値Aが算出される。
【0100】
放射能絶対値Aの算出式は、例えば核種が
22Naであり、エネルギウィンドウAの光子検出数の場合分けが、光子単数または複数、光子単数、二光子の場合は、以下のとおりである。
【0102】
ここで、α
β,α
ecは、
22Naがβ
+崩壊により
22Neの1245keVのエネルギ準位に崩壊する分岐比とEC崩壊により同エネルギ準位に崩壊する分岐比である。同様に、核種ごとに原子核崩壊様式に則した計算式を立式し、必要に応じた数の計数率のデータを用いることにより、放射能が求められる。
【0103】
この得られた放射能絶対値は、
図7に示した計算機240に送出される。
【0104】
一方、計数装置220ではなく計算機240で、放射能計算を行う場合は、計数装置220から、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータが組になって出力され、計算機240に
図14のアルゴリズムが実装されるか、又は、計数装置220から、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータが組になって出力され、計算機240内の記憶装置に一旦記憶した後、計算機240に実装された
図16〜17のようなアルゴリズムにより放射能を計算することもできる。
【0105】
具体的には、まず、
図16のステップ351で、電子陽電子対消滅光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウA)、他光子の光電吸収エネルギ範囲(エネルギウィンドウG)および電子陽電子対消滅光子の光電吸収と他光子の光電吸収のパイルアップのエネルギ範囲(エネルギウィンドウP)を決定する。ここで、光電吸収エネルギ範囲については、必ずしも光電吸収エネルギピーク全範囲とする必要は無い。例えば、
図15に示したごとく、光電吸収エネルギピークの高エネルギ側半分を光電吸収エネルギ範囲とするなどして、低エネルギ散乱光子の影響を低減させ、放射能測定不確かさを抑制することも可能である。光電吸収エネルギ範囲を狭く設定すると、低エネルギ散乱光子の影響をより低減することも可能であるが、計数率が低下し、放射能測定不確かさを小さくするために測定時間を長くする必要が出てくるため、光電吸収エネルギ範囲は測定時間との兼ね合いで、設定する。
【0106】
次いで、ステップ352で、エネルギウィンドウA内のエネルギである、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列1と、エネルギウィンドウG内のエネルギである、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組のみの光子の入射時刻順に並んだデータ列2を作る。このとき、エネルギウィンドウP内のエネルギである、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組については、エネルギウィンドウA内のエネルギである、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組及び、エネルギウィンドウG内のエネルギである、光子の入射時刻と光子のエネルギと光子を検出した検出素子の番号のデータの組が各々一つずつあるとして扱う。
【0107】
次いで、ステップ353で、まだ読み込んでいないデータの組の中で最も入射時刻の古いデータの組を、データ列1又はデータ列2から読み込む。
【0108】
次いで、ステップ354で、データ列1から読み込んだのか判別する。ステップ354の判定結果が「はい」の場合は、ステップ355に進む。
【0109】
ステップ355では、データ列1にある時間幅で同時刻入射のデータの組がいくつあるか判別する。ステップ355の判定結果が「他の分岐に該当しない」場合は、ステップ356に進む。
【0110】
ステップ356では、ある時間幅で同時刻入射のデータの組をデータ列1から読み込み、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させる。なお、同時刻入射のデータの組が2つ以上(複数)存在しても計数値は1つのみ増加させる。
【0111】
次いで、ステップ357で、データ列2にある時間幅での同時刻入射の組があるか判別する。ステップ357の判定結果が「はい」の場合は、ステップ358に進む。
【0112】
ステップ358では、データ列2よりデータを読み込み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させる。更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0113】
一方、ステップ355の判定結果が「1」の場合は、コンポーネント362のステップ359に進む。
【0114】
ステップ359では、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0115】
次いで、ステップ360で、データ列2にある時間幅で同時刻入射の組があるかどうか判定する。ステップ360の判定結果が「はい」の場合は、ステップ361に進む。
【0116】
ステップ361では、データ列2よりデータを読み込み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0117】
一方、ステップ355の判定結果が「2」の場合は、コンポーネント366のステップ363に進み、ある時間幅で同時入射のデータの組をデータ列1から読み込み、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0118】
次いで、ステップ364で、データ列2にある時間幅で同時刻入射の組があるかどうか判定する。ステップ364の判定結果が「はい」の場合は、ステップ365に進む。
【0119】
ステップ365では、データ列2よりデータを読み込み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させ、更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0120】
コンポーネント362とコンポーネント366はエネルギウィンドウAに於いての検出光子数に基づく計数を行う部分であり、コンポーネント362は光子数が1の場合、コンポーネント366は光子数が2の場合である。必要に応じて、同様のアルゴリズムを光子数が3の場合、光子数が4の場合、というように増やしていくことができる。
【0121】
一方、ステップ354の判定結果が「いいえ」の場合は、
図17のステップ367に進み、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数値を1つ増加させる。
【0122】
次いで、ステップ368で、ある時間幅で同時刻入射のデータの組がデータ列1にあるか判別する。ステップ368の判定結果が「はい」の場合は、ステップ369に進む。
【0123】
ステップ369では、データ列1からある時間幅の同時刻入射のデータの組を読み込む。
【0124】
次いで、ステップ370で、データ列1にある時間幅で同時刻入射の組がいくつあるか判別する。ステップ370の判別結果が「他の分岐に該当しない」の場合はステップ371に進む。
【0125】
ステップ371では、データ列1よりデータを読み込む。エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0126】
一方、ステップ370の判定結果が「1」の場合は、ステップ372に進み、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0127】
ステップ370の判定結果が「2」の場合は、ステップ373に進み、ある時間幅で同時入射のデータの組をデータ列1から読み込み、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。更に、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数値を1つ増加させ、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出とエネルギウィンドウGに於ける光子検出の同時事象の計数値を1つ増加させる。
【0128】
ステップ372、ステップ373は、エネルギウィンドウAに於ける光子の検出数が1の場合と2の場合の処理を表しており、必要に応じて、エネルギウィンドウAに於ける光子の検出数が3の場合、4の場合、というように、ステップを増やすことができる。
【0129】
図16のステップ358、361、365、
図17のステップ371、372、373終了後、又は、
図16のステップ357、360、364、
図17のステップ368の判定結果が「いいえ」の場合は、
図17のステップ374に進み、データの組を全て読み込んだか判別する。
【0130】
ステップ374の判定結果が「はい」の場合は、ステップ375に進み、測定時間と各計数値から得られる、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象の計数率ρ
a、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率ρ
g、エネルギウィンドウAに於ける光子単数または複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける検出事象の同時計数率ρ
ag、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率ρ
as、エネルギウィンドウAに於ける単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
asg、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率ρ
ad、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率ρ
adg等を用いて、例えば
22Naの場合は、例えば式(4)を用いて、放射能絶対値を算出する。
【0131】
一方、ステップ374の判定結果が「いいえ」の場合、
図16のステップ353に戻る。
【0132】
以上のように、放射線検出器集合体によって、放射線源の放射能絶対値が計算できるので、これを基に単位時間当たりの放射線検出器集合体に入射する光子の数が計算できる。放射線源から放出される放射線の原子核1崩壊当たりの放出率は、Table of Isotopes,eighth edition,volume I,II,R.B.Firestone and V.S.Shirley,Wiley Interscience、 Table of radionuclides, Volume 1, 2, 3, Monoguraphie BIPM-5, Bureau International Des Poids et Mesures、Recommended data, the Laboratoire National Henri Becquerelなどの核データから参照でき、又、線源の位置と放射線検出器集合体の幾何学的関係による係数、及び、これらの数値と求められた線源の放射能から、放射線検出器集合体に入射する放射線の単位時間当たりの数を計算することができる。放射線検出器集合体の光子の計数率を単位時間当たりの放射線検出器集合体に入射する光子で除することで、放射線検出器集合体の検出効率(感度)が求められる。また、放射線検出器集合体の光子の計数率を単位時間当たりの線源からの光子の発生数あるいは線源の放射能で除して検出効率(感度)とすることもあり、こちらも計算可能である。
【0133】
次に、本発明に係る放射線検出器集合体による、放射線測定装置の校正方法を示す第2実施形態を
図18に示す。図中、400は放射線源、410は、例えば、多数のDOI検出器でなる放射線検出器集合体412を備えたPET装置、220は、参考形態と同様の計数装置、240は、同じく計算機、250は、同じく入力装置、260は、同じく表示装置である。
【0134】
本実施形態においては、第1実施形態と同様な方法で放射線源400の放射能絶対値を測定した後、該放射能絶対値を用いて、PET装置410の検出効率(感度)を決定し、校正する。
【0135】
具体的には、例えば
図8又は
図9のアルゴリズムを用いて、計数装置220及び計算機240によりエネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象の計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率から、放射能絶対値を決定する。
【0136】
又は、例えば、
図14のアルゴリズムを用いて、計数装置220及び計算機240により、エネルギウィンドウPも考慮しながら、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率を用いて、放射能絶対値を決定する。
【0137】
そして、放射能から単位時間当たりPET装置410に入射する放射線の数を、幾何学的条件、及び、例えば、核データRecommended data, the Laboratoire National Henri Becquerelによる放射線の放出率から算出する。
【0138】
そして、PET装置410の計数率を、単位時間当たりPET装置410に入射する放射線の数で除することにより、検出効率(感度)を決定する。また、PET装置410の計数率を、単位時間当たり放射線源400から放出される光子数で除することにより、検出効率(感度)とすることも可能である。
【0139】
本実施形態によれば、PET装置410に元々備えられている放射線検出器集合体412を利用して、放射線源400を校正することが可能になる。
【0140】
次に、本発明に係る放射線検出器集合体による、放射線測定装置の校正方法を示す第3実施形態を
図19に示す。図において、500は作業現場の放射線源、510は、校正事業者から送られた、例えばDOI検出器である放射線検出器集合体、520は、作業現場で使用される放射線測定装置である。
【0141】
作業現場で製造された、あるいは、作業現場で使用されている放射線源500は、放射線検出器集合体510で測定され、放射能絶対値が放射線源500に付与される。この放射能絶対値が付与された放射線源500は、作業現場の放射線測定装置520で測定され、放射線測定装置520の出力値と放射線源500の放射能絶対値が関係付けられる。これにより、放射線測定装置520の校正が行なえる。
【0142】
次に、本発明に係る放射線検出器集合体による、放射線測定装置の校正方法を示す第4実施形態を
図20に示す。図において、600は液状の線源、602、604は分注された線源、610は、例えばDOI検出器でなる放射線検出器集合体、620は、作業現場で使用される放射線測定装置である。
【0143】
作業現場で製造された、あるいは作業現場で使用されている液体状の放射線源600が分注され、放射線検出器集合体610用の放射線源602と、放射線測定装置620用の放射線源604となる。各放射線源602、604の重さが測定される。
【0144】
放射線源602は、放射線検出器集合体610で測定され、放射能絶対値が放射線源602に付与される。この放射能絶対値と放射線源の重さから、放射線源604に放射能絶対値が付与され、放射線源604は、作業現場の放射線測定装置620で測定され、放射線測定装置620の出力値と放射線源604の放射能絶対値が関係付けられ、放射線測定装置620が校正される。
【0145】
[参考例1]
図7の構成で、放射線源200として
22Na線源、放射線検出器集合体210、212としてDOI検出器を用いた。DOI検出器(210、212)に対して所定の位置に放射線源200を設置した。DOI検出器(210、212)から出力されるスペクトルのうち、511keVの電子陽電子対消滅光子の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウAと、1275keVのγ線(他光子)の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウGにより、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象の計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率を測定して、
図8、
図9に示した同時計数法により、
22Na線源(200)の放射能絶対値を決定することができた。
【0146】
[参考例2]
放射線検出器集合体の検出効率(感度)の校正法の参考例として、
図18の構成で、PET装置410により、
22Na線源(400)から放出される光子を検出した。511keVの電子陽電子対消滅光子の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウAと、1275keVのγ線(他光子)の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウGにより、
図8又は
図9のアルゴリズムを用いて、計数装置220及び計算機240によりエネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象の計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数または複数光子検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子の単数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率を測定して、放射能絶対値を決定した。放射線源から放出される電子陽電子対消滅光子の数を、放射能および核データRecommended data, the Laboratoire National Henri Becquerelによる放射線の放出率から算出した。PET装置410の計数率を、単位時間当たり放出される電子陽電子対消滅光子数で除することにより、検出効率(感度)を決定できた。
【実施例1】
【0147】
図7の構成で、放射線源200として
22Na線源、放射線検出器集合体210、212としてDOI検出器を用いた。DOI検出器(210、212)に対して所定の位置に放射線源200を設置した。DOI検出器(210、212)から出力されるスペクトルのうち、511keVの電子陽電子対消滅光子の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウAと、1275keVのγ線(他光子)の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウG、511keVの電子陽電子対消滅光子の光電吸収と1275keVのγ線(他光子)の光電吸収のパイルアップピークの一部にかけられたエネルギウィンドウPにより、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率を測定して、
図14に示した同時計数法により、
22Na線源(200)の放射能絶対値を決定することができた。
【実施例2】
【0148】
放射線検出器集合体の検出効率(感度)の校正法の実施例として、
図18の構成で、PET装置410により、
22Na線源(400)から放出される光子を検出した。511keVの電子陽電子対消滅光子と、1275keVのγ線(他光子)により、
図14のアルゴリズムを用いて、計数装置220及び計算機240により、511keVの電子陽電子対消滅光子の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウAと、1275keVのγ線(他光子)の光電吸収ピークの一部にかけられたエネルギウィンドウG、511keVの電子陽電子対消滅光子と1275keVのγ線(他光子)の光電吸収のパイルアップピークの一部にかけられたエネルギウィンドウPを設定して、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象の計数率、エネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数及び複数検出事象とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける光子単数検出事象の計数率とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率、エネルギウィンドウAに於ける二光子検出事象の計数率とエネルギウィンドウGに於ける光子検出事象の同時計数率を測定して、放射能絶対値を決定した。放射線源から放出される電子陽電子対消滅光子の数を、放射能および核データRecommended data, the Laboratoire National Henri Becquerelによる放射線の放出率から算出した。PET装置410の計数率を、単位時間当たり放出される電子陽電子対消滅光子数で除することにより、検出効率(感度)を決定できた。
【実施例3】
【0149】
図19の構成で、放射線源500として
68Ge-
68Ga線源、放射線検出器集合体510としてDOI検出器、放射線測定装置520としてRIキャリブレータを用いた。
68Ge-
68Ga線源(500)をDOI検出器(510)によって測定し、放射能の絶対値を付与した。RIキャリブレータ(520)でも、
68Ge-
68Ga線源(500)を測定し、RIキャリブレータ(520)の出力値と
68Ge-
68Ga線源(500)の放射能値の関係を求めた。これにより、RIキャリブレータ(520)を校正できた。
【実施例4】
【0150】
図20の構成で、放射線源600として
22Na線源、放射線検出器集合体610としてDOI検出器、放射線測定装置620としてRIキャリブレータを用いた。
22Na線源(600)を分注して、DOI検出器用放射線源(602)とRIキャリブレータ用放射線源(604)を製作し、それぞれの放射線源の重さを測定した後、それぞれで測定を行なった。
【0151】
DOI検出器(610)によって放射線源(602)の放射能の絶対値が決定され、分注時の重さから、
22Na線源(600)の放射能濃度を決定した。又、この放射能濃度から、RIキャリブレータ用放射線源(604)の放射能値を求め、RIキャリブレータ(620)の出力値とRIキャリブレータ用放射線源(604)の放射能値の関係を求め、これをもって、RIキャリブレータ(620)を校正できた。
【0152】
なお、前記実施形態においては、2個又は多数の放射線検出器集合体が用いられていたが、放射線検出器集合体の数は1個でも構わない。又、放射線検出器集合体も、DOI検出器に限定されず、その素子数も限定されない。放射線源や放射線の種類も、前記実施形態に限定されない。