(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
その内部において被処理基板にプラズマ処理を行う処理容器と、前記処理容器内にプラズマ処理用のガスを供給するガス供給部と、前記処理容器内に配置され、その上に前記被処理基板を支持する支持台と、前記支持台に交流バイアス電力を供給するバイアス電力供給手段と、プラズマ励起用のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器と、前記マイクロ波発生器により発生させたマイクロ波を用いて、前記処理容器内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整手段とを備えるプラズマエッチング処理装置を用いて、発生させたプラズマにより被処理基板にエッチング処理を行うプラズマエッチング処理方法であって、
前記バイアス電力供給手段における交流のバイアス電力を、停止および供給を交互に繰り返しながら行うよう制御して、前記支持台に交流のバイアス電力を供給して前記被処理基板にエッチング処理を行い、
前記被処理基板の上にゲート絶縁膜層、前記ゲート絶縁膜層の上にゲート電極層、および、前記ゲート電極層の側面にゲート側壁部を形成するステップと、
これらを覆うように、ほぼ等しい厚さを有する絶縁層のスペーサを形成するステップと、含み、
前記絶縁層のスペーサは、前記ゲート電極層の上に形成される上方領域スペーサと、前記ゲート側壁部の側部に形成されるサイド領域スペーサと、前記被処理基板の表面であって、前記サイド領域スペーサの横に連続して形成された端部領域スペーサとを含み、
前記上方領域スペーサの厚みは前記端部領域スペーサの厚みよりも厚く、
前記上方領域スペーサおよび前記端部領域スペーサに対して垂直方向にエッチングを行い、前記端部領域スペーサが完全に除去されない程度まで異方性エッチングを行う第1エッチングステップと、
前記第1エッチングステップの後に、前記上方領域スペーサおよび前記端部領域スペーサに対して、さらに垂直方向にエッチングを行い、前記端部領域スペーサが完全に除去されるまで等方性エッチングを行う、第2エッチングステップと、を含む、プラズマエッチング処理方法。
前記第2エッチングにおいては、前記バイアス電力供給手段における交流のバイアス電力の供給時間(a)および停止時間を足し合わせた時間(b)に対する前記供給時間(a)の比であるデューティー比(a/b)を、0.18よりも高く0.75よりも低くなるようにして、前記バイアス電力供給手段によるバイアス電力の供給を制御する、請求項1に記載のプラズマエッチング処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るプラズマエッチング処理装置の構成について説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るプラズマエッチング処理装置の構成を概略的に示す概略断面図である。
図2は、
図1に示すプラズマエッチング処理装置に備えられるスロットアンテナ板を、板厚方向から見た図である。
【0017】
図1および
図2を参照して、プラズマエッチング処理装置11は、マイクロ波をプラズマ源とするマイクロ波プラズマエッチング処理装置である。プラズマエッチング処理装置11は、その内部で被処理基板Wにプラズマ処理を行う処理空間を有する処理容器12と、処理容器12内にプラズマ処理用のガス等を供給するガス供給部13と、処理容器12内に設けられ、その上に被処理基板Wを支持する支持台14と、処理容器12の外部に設けられ、プラズマ励起用のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生器15と、マイクロ波発生器15により発生させたマイクロ波を処理容器12内に導入する導波管16および同軸導波管17と、同軸導波管17の下方端部に連結されており、同軸導波管17によって導入されたマイクロ波を径方向に伝播する誘電体板18と、誘電体板18の下方側に配置されており、誘電体板18によって伝播されたマイクロ波を放射するスロット(長孔)19を複数有するスロットアンテナ板20と、スロットアンテナ板20の下方側に配置されており、スロット19から放射されたマイクロ波を径方向に伝播すると共に処理容器12内に透過させる誘電体窓21と、プラズマエッチング処理装置11全体を制御する制御部(図示せず)とを備える。制御部は、ガス供給部13におけるガス流量、処理容器12内の温度等、被処理基板Wをプラズマ処理するためのプロセス条件を制御する。また、制御部は、エッチング処理時において、後述するバイアス電力供給手段における交流のバイアス電力について、停止および供給を交互に繰り返しながら行うよう制御する制御手段として作動する。また、プラズマエッチング処理装置11は、処理容器12内の減圧を行うTMP(Turbo Molecular Pump:ターボ分子ポンプ)(図示せず)等を含み、制御部は、TMPの作動状態等を制御して処理容器12内の圧力を、真空を含め所定の圧力に調整する圧力調整手段としても作動する。なお、理解の容易の観点から、
図1において、スロット19の開口形状を概略的に示している。
【0018】
処理容器12は、支持台14の下方側に位置する底部22と、底部22の外周から上方向に延びる側壁23と、側壁23の上方側に載置するようにして配置され、その上に誘電体窓21を載置可能な環状部材24とを含む。側壁23は、円筒状である。処理容器12の底部22には、排気用の排気孔25が設けられている。処理容器12の上部側は開口しており、処理容器12の上部側に配置される誘電体窓21、および誘電体窓21と処理容器12、具体的には、処理容器12を構成する環状部材24との間に介在するシール部材としてのOリング26によって、処理容器12は密封可能に構成されている。
【0019】
支持台14には、RF(radio frequency)バイアス用の高周波電源27がマッチングユニット28を介して支持台14の電極に電気的に接続されている。このバイアス電力供給手段としての高周波電源27は、被処理基板Wに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.56MHzの高周波を所定のパワーで出力し、支持台14側に供給する。マッチングユニット28は、高周波電源27側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容しており、この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。支持台14側に供給されるバイアスに関する詳細な内容については、後述する。なお、支持台14は、底部22から絶縁されている。また、図示はしないが、被処理基板Wを支持する支持機構や温度調節を行う温度調節機構を備えていてもよい。
【0020】
ガス供給部13は、被処理基板Wの中央に向かってガスを供給するガス供給口31を有するセンターガス供給部32と、円環状の中空状部材33から構成されており、径方向内側に向かってガスを供給するガス供給口34を有するアウターガス供給部35とを含む。センターガス供給部32およびアウターガス供給部35はそれぞれ、処理容器12外から処理容器12内にプラズマ処理用のガス等を供給する。ガス供給口31、34から供給されるガスのそれぞれの流れ方向については、
図1中の矢印F
1およびF
2で図示している。なお、センターガス供給部32およびアウターガス供給部35から供給されるガスの流量比等については、任意に選択が可能であり、例えば、センターガス供給部32からのガスの供給を全く無しにして、アウターガス供給部35からのみ処理容器12内にガスを供給するということも、もちろん可能である。
【0021】
マイクロ波整合器36を有するマイクロ波発生器15は、中心導体37および外周導体38から構成される同軸導波管17およびモード変換器39を介して、マイクロ波を導入する導波管16の上流側に接続されている。同軸導波管17を構成し、いずれも円筒状である中心導体37および外周導体38は、径方向の中心を一致させ、中心導体37の外径面と、外周導体38の内径面との間隔を開けるようにして、
図1中の紙面上下方向に延びるようにして配置される。例えば、マイクロ波発生器15で発生させたTEモードのマイクロ波は、導波管16を通り、モード変換器39によりTEMモードへ変換され、同軸導波管17を伝播する。マイクロ波発生器15において発生させるマイクロ波の周波数としては、例えば、2.45GHzが選択される。
【0022】
スロットアンテナ板20は、薄板状であって、円板状である。スロットアンテナ板20の板厚方向の両面は、それぞれ平らである。スロットアンテナ板20には、板厚方向に貫通する複数のスロット19が複数設けられている。スロット19は、一方方向に長い第一のスロット41と、第一のスロット41と直交する方向に長い第二のスロット42とが、隣り合って一対となるように形成されている。具体的には、隣り合う2つのスロット41、42が一対となって、略ハ字状となるように配置されて構成されている。すなわち、スロットアンテナ板20は、一方方向に延びる第一のスロット41および一方方向に対して垂直な方向に延びる第二のスロット42から構成されるスロット対43を有する構成である。なお、スロット対43の一例については、
図2中の点線で示す領域で図示している。
【0023】
設けられたスロット対43は、内周側に配置される内周側スロット対群44と、外周側に配置される外周側スロット対群45とに大別される。内周側スロット対群44において、7対のスロット対43はそれぞれ、周方向に等間隔に配置されている。外周側スロット対群45において、28対のスロット対43はそれぞれ、周方向に等間隔に配置されている。スロットアンテナ板20の径方向の中央にも、貫通孔46が設けられている。スロットアンテナ板20は、径方向の中心47を中心とした回転対称性を有する。
【0024】
誘電体窓21は、略円板状であって、所定の板厚を有する。誘電体窓21は、誘電体で構成されており、誘電体窓21の具体的な材質としては、石英やアルミナ等が挙げられる。誘電体窓21は、
図1における下側を環状部材24の上に載せるようにしてプラズマエッチング処理装置11に気密に取り付けられ、備えられる。誘電体窓21のうち、プラズマエッチング処理装置11に備えられた際にプラズマを生成する側となる下面48の径方向外側領域には、環状に連なり、誘電体窓21の板厚方向内方側、ここでは、
図1における紙面上方向に向かってテーパ状に凹む誘電体窓凹部49が設けられている。この誘電体窓凹部49により、誘電体窓21の径方向外側領域において、誘電体窓21の厚みを連続的に変化させる領域を形成して、プラズマを生成する種々のプロセス条件に適した誘電体窓21の厚みを有する共振領域を形成することができる。そうすると、種々のプロセス条件に応じて、誘電体窓21の下部領域におけるプラズマの高い安定性を確保することができる。
【0025】
マイクロ波発生器15により発生させたマイクロ波は、同軸導波管17を通って、誘電体板18に伝播され、スロットアンテナ板20に設けられた複数のスロット19から誘電体窓21に放射される。誘電体窓21を透過したマイクロ波は、誘電体窓21の直下に電界を生じさせ、処理容器12内にプラズマを生成させる。誘電体窓21の直下で生成されたプラズマは、誘電体窓21から離れる方向、すなわち、支持台14に向かう方向に拡散していく。そして、拡散したプラズマで形成され、支持台14に載置された被処理基板Wを含むプラズマ拡散領域で、被処理基板Wに対するプラズマエッチング処理等のプラズマ処理を行う。プラズマエッチング処理装置11において処理に供されるマイクロ波プラズマは、上記したスロットアンテナ板20を用いたプラズマエッチング処理装置を、RLSA(Radial Line Slot Antenna:ラジアルラインスロットアンテナ)方式のプラズマエッチング処理装置と呼称している。このようなプラズマエッチング処理装置11によれば、比較的低い電子温度および比較的高い電子密度でプラズマ処理を行うことができるので、処理時における被処理基板Wに対するプラズマダメージを抑制し、高速な処理を行うことができる。
【0026】
なお、エッチングに用いるガスに含まれるものとしては、例えば、Ar(アルゴン)ガスのような不活性ガス、O(酸素)原子を含むO
2ガスの他に、HBrガス、BCl
3ガス、CF
3Iガス、CH
2F
2ガス、CH
3Fガス等がある。なお、ガスの分子構造中にH(水素)原子を多く含むガスを用いると、反応副生成物として、蒸気圧が低い化合物が生成される傾向がある。また、エッチング対象物としては、具体的には、例えば、シリコン(Si)が挙げられる。そして、エッチングに用いるガスに応じて種々異なる場合があるが、シリコンを対象物としてエッチングを行った場合の反応副生成物としては、例えば、SiBrO、SiBr、SiI、SiClO等が挙げられる。
【0027】
次に、このようなプラズマエッチング処理装置11を用いて、被処理基板に対し、プラズマによるエッチング処理を行う場合について、説明する。昨今においては、素子の微細化の観点から、素子分離領域としてSTIを形成する場合がある。まず、STI形成工程において、所望の形状、すなわち、いわゆる理想的な形状にエッチングを行った場合について、簡単に説明する。
【0028】
図3、
図4、および
図5は、この場合における被処理基板の一部を示す概略断面図である。まず、
図3を参照して、被処理基板であるシリコン基板51の上に、断面矩形状のハードマスクとしてのマスク層52a、52bを形成する。その後、エッチング処理を行う。この場合、マスク層52aが形成された個所は、
図4に示すように、角部53a、53bにおいても角部53a、53b間に位置する平坦部54においても、局所的に削れないことが理想である。すなわち、エッチングにおいて、マスク層52a、52bはほとんど削られないか、または、マスク層52a、52bの上側の各部において、
図4における下方向に均等に削られていくことが好ましい。そして、マスク層52a、52b間において形成しようとする溝55が垂直方向に削られ、形成されていく。最終的には、
図5に示す形状となり、この形状が理想的である。すなわち、溝55を構成する左右両側の側壁56a、56bが、
図5における上下方向に真直ぐに延びる形状であり、側壁56a、56bの最下端に位置し、側壁56a、56bと共に溝55を構成する底壁57についても、左右方向に真直ぐに延びる形状であることが望ましい。
【0029】
しかし、例えば、異方性の高いエッチングガスを用いた場合、
図6に示すように、エッチングによりマスク層52a、52bも徐々に削れていくが、この場合において、マスク層の角部53a、53bが平坦部54よりも多く削れていくことになる。
【0030】
そうすると、最終的には、
図7に示すように、マスク層52a、52b間に形成されるエッチングにより形成した溝55において、その側壁56a、56bの形状がテーパ形状となってしまう。すなわち、上下方向に真直ぐに延びる形状とはならず、シリコン基板51の上端58と側壁56aとのなす角度θが、この場合、鈍角となってしまう。このような形状は、エッチング処理における所望の形状ではなく、好ましくない。なお、
図6は、前述の
図4に対応する断面図であり、
図7は、前述の
図5に対応する断面図である。
【0031】
特に、昨今は微細化の要求が高いため、形成されるレジストマスク層の薄膜化が進み、これに応じて、ハードマスクの厚みも薄くなる傾向がある。このような状況下において、溝55のテーパ形状を回避するためには、できるだけマスク層52a、52bを削らないようハードマスクに対するシリコン基板51の高選択比のエッチングを行う必要がある。このようなエッチングは、エッチング処理条件が限定されるため、できるだけ避けることが好ましい。
【0032】
ここで、
図8を参照して、この発明の一実施形態に係るプラズマエッチング処理を説明する。
図8は、この発明の一実施形態に係るSTI形成工程におけるプラズマエッチング処理方法の代表的な工程を示すフローチャートである。まず、
図3に示すように、被処理基板Wとなるシリコン基板51上にマスク層52a、52bを形成する(
図8(A))。そして、上記した
図1に示すプラズマエッチング処理装置11を用いてプラズマによるエッチングを行う(
図8(B))。ここでは、STI形成工程として、アルゴン(Ar)ガス、臭化水素(HBr)ガス、および酸素(O
2)ガスを混合したガスを供給してエッチングを行う。
【0033】
この場合、制御部による制御により、支持台14を介して被処理基板Wに供給するバイアスの電力を、停止および供給を交互に繰り返しながら、間欠的に供給するようにする。すなわち、エッチング処理時において、バイアス電力供給手段としての高周波電源27における交流のバイアス電力のバイアスオン(
図8(C))およびバイアスオフ(
図8(D))を交互に繰り返して、間欠的にバイアス電力を供給する。
【0034】
このようにして、バイアスのオンおよびオフを交互に繰り返し、エッチングを進行させる。そして、
図5に示すように、底壁57の上下方向の位置が狙いの位置となったとき、すなわち、所定の溝深さに到達したときに、エッチングを終了する(
図8(E))。エッチングの終了時は、例えば、エッチング開始後所定の時間が経過すれば、底壁57の上下方向の位置が狙いの位置となったとみなしてもよいし、シリコン基板51の上端58と底壁57との上下方向の長さを測定して確認しながら、エッチングを終了させることとしてもよい。
【0035】
次に、この場合において、間欠的に供給されるバイアス電力の詳細について説明する。
図9は、上記したSTI形成工程における交流バイアスのオンオフ状態を示すグラフである。
図9において、縦軸は、バイアスのオンオフ状態を示し、横軸は、時間を示す。縦軸において、線61で示す矩形状の波形のうち、上の位置にある状態がオン状態を示し、下の位置にある状態がオフ状態を示す。また、線62で示す波形において、上下方向に波形が変動している状態がオン状態を示し、上下方向に波形が変動していない状態がオフ状態を示す。
図9を参照して、上記したバイアス電力の供給時間(a)は、
図9中の「a」で表されるものである。また、上記した交流のバイアス電力の供給時間(a)および停止時間を足し合わせた時間(b)は、
図9中の「b」で表されるものである。なお、停止時間については、bからaを差し引いたものであり、
図9中の「c」で表されるものである。
【0036】
ここで、STI形成工程において、交流のバイアス電力の供給時間(a)および停止時間を足し合わせた時間(b)に対する供給時間(a)の比であるデューティー比(a/b)を、0.5よりも高く1.0よりも低くなるようにして、バイアス電力の供給を制御するようにすることが好ましい。すなわち、エッチング処理時において、デューティー比(a/b)を、0.5よりも高く1.0よりも低くなるようにして、間欠的にバイアス電力を供給することが好ましい。
【0037】
このように構成することにより、エッチング処理時において、後述するように、改質された保護膜を利用して、エッチング処理を進行させることができる。したがって、より正確に所望の形状にエッチングすることができる。
【0038】
このようなエッチングの原理について説明すると、以下のことが考えられる。すなわち、間欠的にバイアスの供給を行った場合、プラズマによるエッチング処理時において、バイアスがオフされる状態、すなわち、バイアス電力が供給されない状態と、オンされる状態、すなわち、バイアス電力が供給される状態とが、交互に現れることになる。
【0039】
図10は、この場合における被処理基板の一部を示す概略断面図であり、
図4、
図6に対応する。バイアスがオフの状態のときには、シリコン基板51全体の表面に、バイアスがオンの状態のときに生成されたデポ(反応副生成物)による極薄い保護膜59が、堆積するようにして形成される。この場合、マスク層52a、52bは、上下方向の上側の領域、すなわち、底壁57付近よりもプラズマに近い位置にあるため、マスク層52a、52bの上に形成される保護膜59の方が、溝55の底壁57の領域に形成される保護膜59よりも厚くなる。
【0040】
そして、シリコン基板51付近に存在するラジカルにより、形成された保護膜59の改質が行われる。ここでいう改質は、用いるガス等に応じて異なるが、例えば、窒化、酸化、Br化、CBr化、Cl化等であり、膜を硬化させるものである。ここで、上側に位置するマスク層52a、52bの近傍の方が、下側に位置する底壁57の近傍よりもラジカルの存在確率が高いので、形成される保護膜59の改質における効果が顕著となる。すなわち、マスク層52a、52bの上に形成された保護膜59の改質の度合いが、溝55の底壁57の領域に形成される保護膜59に対する改質の度合いよりも、高いものとなる。そうすると、マスク層52a、52bの上に形成された保護膜59の方が、底壁57の領域に形成される保護膜59よりも硬くなる。
【0041】
その後、バイアスがオンされる。
図11は、この場合における被処理基板の一部を示す断面図であり、
図4、
図6に対応する。バイアスがオンの状態のときには、シリコン基板51の全面において、エッチングにより削られる。この場合、マスク層52a、52bについては、底壁57よりも上側に位置するため、エッチング作用の比較的強い領域で、改質された保護膜59を削ることになる。しかし、マスク層52a、52bの上に形成された保護膜59は比較的厚く、改質により比較的硬くなっているため、結果として、マスク層52a、52b自体がほとんど削られることはない。これに対し、底壁57の領域については、形成される保護膜59は比較的薄く、ほとんど改質が行われておらず、あまり硬くない状態であるため、エッチング作用の比較的弱い領域であるにも係らず、底壁57の領域に形成された保護膜59は、早期に除去されることになる。そして、シリコン基板51における底壁57の領域が積極的に垂直方向の下側に削られていくことになる。
【0042】
このようにして、バイアスのオフとオンを交互に繰り返し、エッチングを進行させる。そうすると、マスク層52a、52bのエッチングによる除去を抑制しながら、マスク層52a、52bの間を垂直方向の下側に削っていき、エッチングによる溝を削り続けて、所望の形状を得るようなエッチングを行うことができる。すなわち、このようにバイアスのオンとオフを上記したタイミングで繰り返すことにより、より正確に所望の形状にエッチングすることができる。このような原理で、エッチングが行われていると考えられる。なお、理解の容易の観点から、
図10および
図11における保護膜59は、誇張して厚く図示している。なお、以下の図面に示す保護膜についても、同様に誇張して厚く図示している。
【0043】
図12に、RIEラグについてのコンター図、すなわち、等値線図を示す。
図13は、エッチングの選択比についてのコンター図である。
図12および
図13において、縦軸は、バイアスのオンオフの周波数を示し、横軸は、オン時間の割合、すなわち、上記したデューティー比を示す。なお、この場合のエッチング処理時における反応ガスにおける酸素ガスの添加量は、0.2%としている。すなわち、反応ガス全体に占める酸素原子を含むガスの割合は、0.2%となる。
【0044】
ここで、RIEラグについて説明すると、以下の通りである。
図14および
図15は、エッチング処理終了後のシリコン基板の一部を横方向から見た電子顕微鏡写真である。
図14に示すシリコン基板については、エッチングにより削る間隔の狭い場合であり、
図15に示すシリコン基板については、エッチングにより削る間隔の広い場合である。
図14および
図15を参照して、間隔が狭い場合におけるシリコン基板の上端58から底壁57までの上下方向の長さをd
1とし、間隔が広い場合におけるシリコン基板の上端58から底壁57までの上下方向の長さをd
2とすると、RIEラグについては、d
1/d
2で表されるものである。エッチング処理においては、間隔の広狭に係わらず、上端58から底壁57までの上下方向の長さは等しいことが望まれるので、このRIEラグの値については、1に近い方が好ましい。一方、選択比については、その値が高い方が好ましい。すなわち、マスク層に対する下地層、いわゆるシリコン基板の層の削れる割合が高い方が好ましい。なお、
図14および
図15は、デューティー比が0.25の場合である。
【0045】
図12を参照すると、バイアスのオン時間の割合が小さいと、具体的には、デューティー比が0.5よりも小さいと、周波数に係わらず、RIEラグの値が少なくとも0.9を下回ることになる。一方、デューティー比が0.75付近においては、RIEラグの値がより1に近くなる。特に、周波数が10Hz(ヘルツ)〜30Hzまでにおいては、
図12中のハッチングで示す領域63において、RIEラグの値が0.95よりも高くなり、よりよいものとなる。したがって、バイアス電力供給手段としての高周波電源により供給されるバイアス電力の周波数は、10Hz以上30Hz以下であることが好ましい。
【0046】
図13を参照すると、グラフの右下に向かうに従って、選択比の値が低くなっていく。これは、周波数が低く、かつデューティー比が高くなれば選択比が低くなる傾向を示すが、デューティー比が0.75を越え、かつ周波数が10Hzよりも高ければ、ほぼ同等の値、100程度となる。ここで、選択比については、上記した
図12に示すRIEラグにおける良好な領域63と重なるように、ハッチングで示す領域64内の値を選択することが好ましい。
【0047】
図16および
図17は、バイアスを連続してかけた場合、すなわち、いわゆるデューティー比が1の場合において、エッチング処理終了後のシリコン基板の一部を横方向から見た電子顕微鏡写真である。
図16に示すシリコン基板については、エッチングにより削る間隔の狭い場合であり、
図17に示すシリコン基板については、エッチングにより削る間隔の広い場合である。
図18および
図19は、デューティー比が0.75の場合において、エッチング処理終了後のシリコン基板の一部を横方向から見た電子顕微鏡写真である。
図18に示すシリコン基板については、エッチングにより削る間隔の狭い場合であり、
図19に示すシリコン基板については、エッチングにより削る間隔の広い場合である。
【0048】
図14〜
図19を参照して、連続してバイアスをオンにした場合、すなわち、デューティー比が1の場合は、削る幅の狭い場合に、底溝の形状が下方向に尖った形状となってしまう。尖った形状は、特異点となり電界の集中による異常放電の原因となり易い。また、デューティー比が0.25の場合、側壁の形状がテーパ状となる傾向が強くなる。さらに、RIEラグの値が低くなり、0.5よりも小さくなってしまう。すなわち、幅が狭い場合の底壁から上端部までの上下方向の長さと幅が広い場合の底壁から上端部までの上下方向の長さとが大きく異なることになってしまう。この場合、幅が狭い方が、浅い溝となってしまう。
【0049】
これに対し、デューティー比を0.5以上とした場合、側壁の形状がテーパ状となる傾向を大きく緩和することができる。すなわち、側壁が上下方向に真直ぐに近い形状で延びることになる。また、RIEラグについても0.8以上に緩和される。特に、デューティー比を0.75程度とした場合、幅が狭い場合でも幅が広い場合でも、底壁から上端部までの上下方向の長さはほとんど変わらないことになる。
【0050】
なお、上記した場合においては、処理の安定性等の観点から、処理容器内の圧力を10mTorr以上200mTorr以下とすることが好ましい。
【0051】
また、上記の場合において、バイアス電力供給手段としての高周波電源により供給されるバイアスのエネルギーは、被処理基板に対するプラズマダメージ軽減の観点等から、200eV以下であることが好ましい。
【0052】
なお、上記の場合において、バイアスのオフ時において形成される保護膜の厚みは、100Å(オングストローム)以下とするよう制御することが好ましい。こうすることにより、保護膜が過剰に厚くなることを抑制し、より確実に、所望の形状にエッチングすることができる。
【0053】
なお、上記の場合において、プラズマエッチング装置11は、マイクロ波を用いてプラズマを生成するため、ラジカルの豊富なプラズマを生成することができる。そのため、バイアスオン時に生成されたデポ(反応副生成物)を効率的に改質でき、十分なエッチング耐性を持つ保護膜59を形成することができる。保護膜59は、酸素ラジカルによって改質されたSiBrOが主体の膜であると考えられる。ここで、反応ガス全体に占める酸素ガスの割合は、0.2%としたが、これに囚われない。例えば、酸素ガスの添加量を0.2%以上とした場合には、
図12および
図13に示す最適な領域63、64が図の右側にシフトする。一方、酸素ガスの添加量を0.2%以下とした場合には、
図12および
図13に示す最適な領域63、64が、図の左側にシフトする。なお、安定して酸素ガスを供給できる下限値は、0.05%である。また、RIEラグと選択比との兼ね合いを考慮すると、5%以下であればよい。酸素ガスの添加量が5%以上であると、最適な領域63、領域64は、デューティー比1に近くなるため、エッチングされた形状は先細りの尖った形状となるおそれがある。なお、プロセス(処理条件)の選択の幅を考慮すると、0.1%以上1%以下としてもよい。
【0054】
なお、プラズマ処理工程においては、処理容器内にガスを供給し、TMPによって処理容器内の排気を行いながら処理容器内の圧力を所望の圧力となるように調整して、プラズマ処理を行う。プラズマ処理中に反応副生成物が生成した場合、反応副生成物の多くは、TMPにより処理容器外へ排出される。ここで、プラズマエッチング処理工程において、例えば、シリコンをエッチングした場合、反応副生成物として、上記したSiBrO等が生成される。このSiBrO等のように、比較的蒸気圧が低い反応副生成物が生成した場合、TMPにより処理容器外へ排出される前に、エッチングにより形成したパターンにおける溝の側壁に反応副生成物が付着する現象が生じるおそれがある。
【0055】
ここで、
図12等を用いて説明したように、上記した実施の形態においては、RIEラグの値の向上の観点から、バイアス電力の周波数は、10Hz以上30Hz以下が好ましいとしたが、このように、側壁への反応副生成物への付着が問題となるおそれがある場合には、例えば、バイアス電力の周波数を、5Hz以上10Hz以下とすることも採用される。具体的には、処理容器内の圧力を100mTorr、デューティー比を0.5とし、バイアス電力の周波数が5Hzである場合を例にとって説明すると、交流のバイアス電力であるため、0.1秒、すなわち、100m(ミリ)秒連続でバイアス電力がかけられ、その後、100m秒連続でバイアス電力がかけられない状態が生ずることになる。比較的蒸気圧が低い反応副生成物であっても、このような連続100m秒のバイアス電力がかけられない状態を作ることにより、反応副生成物を側壁へ付着させずに、TMPによって処理容器外へ排出させることができる。このような観点から、生成される反応副生成物等によっては、バイアス電力の周波数を、5Hz以上10Hz以下とすることも採用される。
【0056】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。昨今では、SAC(Self Align Contact)を形成する際のエッチング工程においても、以下の問題が生ずるおそれがある。ここでまず、SAC形成工程において、所望の形状、すなわち、いわゆる理想的な形状にエッチングを行った場合について、簡単に説明する。
【0057】
図20、
図21、および
図22は、この場合における被処理基板の一部を示す概略断面図である。まず、
図20を参照して、被処理基板Wとなるシリコン基板66の上にゲート電極層67、ゲート側壁部68、シリコン窒化膜層69、そして、シリコン酸化膜層70を形成し、その上にエッチングのための断面矩形状のマスク層71を形成する。その後、シリコン酸化膜層70のうち、マスク層71の間の部分を、
図21に示すようにエッチングにより除去して、溝72を形成していく。そして、
図22に示すように、エッチングをシリコン基板66に達するまで行う。
【0058】
このようにして、SACにおけるプラズマエッチング処理を行う。この場合、形成される溝72は、上方側に位置するシリコン酸化膜層70の側壁73a、73b、下方側に位置するシリコン窒化膜層69の側壁73c、73d、および側壁73c、73d間に位置する底壁74から構成されることとなる。ここで、マスク層71の形成における厳密な位置制御を行い、シリコン酸化膜層70のみが削られ、シリコン窒化膜層69は削られない理想的な形状とすると、
図22に示すように、シリコン酸化膜層70の側壁73a、73bの間隔は、シリコン窒化膜層69の側壁73c、73dの間隔よりも広くなり、溝72において、シリコン窒化膜層69が一部露出した形状となる。
【0059】
ここで、このようなSAC形成におけるプラズマエッチング処理を行う際には、以下のような問題が発生する場合がある。すなわち、シリコン窒化膜層69に対するシリコン酸化膜層70のエッチングにおける選択比が小さければ、シリコン窒化膜層69がエッチング時に削られることとなる。そして、
図23に示すように、シリコン窒化膜層69において、マスク層71間の領域75a、75bが徐々に除去されることとなる。
【0060】
ここで、マスク層71の形成における厳密な位置制御を行わず、形成するマスク層71が左右方向にずれた場合において、エッチングを進行させると、シリコン酸化膜層70のエッチングが終了した時点、すなわち、マスク層71間において、シリコン酸化膜層70が完全に除去されて、溝72の底壁74がシリコン基板66に達した場合、
図24に示すように、シリコン窒化膜層69の領域75a、75bも下方向に削られ、領域75aで示すように、ゲート電極層67の一部が、溝72内において露出してしまうことになる。このような状況は、領域75aにおける絶縁ブレイクを生じさせることとなり、好ましくない。すなわち、所望の形状ではない。
【0061】
このような絶縁ブレイクを生じさせないようにするには、マスク層71の形成における厳密な位置制御や高選択比のエッチングを行えばよいが、このような対策は、労力や時間の観点から好ましくない場合もある。
【0062】
ここで、
図25を参照して、この発明の他の実施形態に係るプラズマエッチング処理について説明する。
図25は、この場合におけるプラズマエッチング処理の代表的な工程を示すフローチャートである。まず、
図20で示すように、被処理基板Wとなるシリコン基板66上に、ゲート電極層67、ゲート側壁部68、シリコン窒化膜層69、シリコン酸化膜層70を形成する(
図25(A))。そして、シリコン酸化膜層70の上に、マスク層71を形成する(
図25(B))。次に、上記した
図1に示すプラズマエッチング処理装置11を用いて、プラズマによるエッチングを行う(
図25(C))。ここでは、SAC形成工程として、多重解離性を有するガス、例えば、C
4F
8ガスやCH
2F
2ガスを用いてエッチングを行う。
【0063】
この場合、制御部による制御により、支持台14を介して被処理基板Wに供給するバイアスの電圧を、停止および供給を交互に繰り返しながら、間欠的に供給するようにする。すなわち、バイアス電力供給手段における交流のバイアス電力のバイアスオン(
図25(D))およびバイアスオフ(
図25(E))を交互に繰り返して、間欠的にバイアス電力を供給する。
【0064】
このようにして、バイアスのオンおよびオフを交互に繰り返し、エッチングを進行させる。そして、底壁74の上下方向の位置が狙いの位置となったとき、すなわち、所定の溝深さに到達したときに、エッチングを終了する(
図25(F))。エッチングの終了時は、例えば、エッチング開始後所定の時間が経過すれば、底壁74の上下方向の位置が狙いの位置となったとみなしてもよいし、マスク層71の下端に位置する上端77と底壁74との上下方向の長さを測定して確認しながら、エッチングを終了させることとしてもよい。
【0065】
ここで、交流のバイアス電力の供給時間(a)および停止時間を足し合わせた時間(b)に対する供給時間(a)の比であるデューティー比(a/b)を、0.5よりも高く1.0よりも低くなるようにして、バイアス電力の供給を制御することが好ましい。
【0066】
このようにして、SAC形成工程におけるエッチングを行う。こうすることにより、SAC形成工程において、より正確に所望の形状にエッチングすることができる。
【0067】
このようなエッチングの原理について説明すると、以下のことが考えられる。すなわち、間欠的にバイアスの供給を行った場合、プラズマによるエッチング処理時において、バイアスがオフされる状態、すなわち、バイアス電力が供給されない状態と、オンされる状態、すなわち、バイアス電力が供給される状態とが、交互に現れることになる。
【0068】
図26は、バイアスがオフされた場合の被処理基板の一部を示す概略断面図である。
図26を参照して、バイアスがオフされた場合には、マスク層71、およびやや露出したシリコン窒化膜層69の上に、デポにより構成される保護膜76が形成される。ここで形成される保護膜76としては、CHF
3やCH
2F
2等、CH(炭化水素)系のポリマーやCF(フッ化炭素)系のポリマー、SiCから構成されるものである。
【0069】
このデポにより構成される保護膜76は、プラズマ処理においてプラズマに近い部分、すなわち、
図26における上側の領域ほど厚いものとなる。具体的には、マスク層71の上方に形成される保護膜76の厚みt
1や、側壁73bの横に形成される保護膜76の厚みt
2、シリコン窒化膜層69の上側に形成される保護膜76の厚みt
3は、相対的に厚いものとなる。
【0070】
一方、底壁74側に形成される保護膜76は、上下方向の下側の領域であり、保護膜76はほとんど形成されないか、または非常に薄く形成されることになる。これは、形成する溝72の形状のアスペクト比にもよるが、下側領域において、保護膜76を構成する基となるデポが行き届かないことにも起因する。具体的には、底壁74の上に形成される保護膜76の厚みt
4は、相対的に薄いものとなる。
【0071】
図27は、バイアスがオンされた場合の被処理基板の一部を示す概略断面図である。
図27を参照して、バイアスがオンされた場合には、プラズマによるエッチングが進行する。この場合においては、マスク層71やシリコン窒化膜層69の上側に形成される保護膜76をまず削っていくことになる。ここで、上側の領域においては、形成される保護膜76の層は厚くなっているため、エッチングによりマスク層71の除去には及ばず、保護膜76の層を削り取る程度となる。シリコン窒化膜層69についても同様に、保護膜76の層が比較的厚いため、エッチング進行中、すなわち、バイアスがオンの状態においては、シリコン窒化膜層69の上に形成された保護膜76が削り取られ、下地層となるシリコン窒化膜層69はほとんど除去されない。すなわち、バイアスがオンの状態においても、マスク層71やシリコン窒化膜層69の上に形成された保護膜76は薄くなりながらも残存している状態である。一方、底壁74の領域においては、薄く形成された保護膜76は早期に除去され、下地層となるシリコン酸化膜層70が垂直方向の下側に削られていくこととなる。
【0072】
すなわち、マスク層71やシリコン窒化膜層69は、比較的上側の領域に位置するため、バイアスのオフの状態のときに形成されるデポによる保護膜76の層が比較的厚くなることになる。そして、バイアスのオンの状態のときに保護膜76の層が積極的に削られ、下地層となるマスク層71やシリコン窒化膜層69が削られることはほとんどない。これに対し、溝72の下側となるシリコン酸化膜層70については、比較的下側の領域に位置するため、バイアスのオフの状態のときに形成されるデポによる保護膜76の層が相対的に薄くなる。そして、バイアスのオンの状態のときに保護膜76の層は早期に削り取られ、保護膜76の下地層となるシリコン酸化膜層70が垂直方向の下側に削られていくこととなる。
【0073】
このようにして、SACを形成する際のプラズマエッチングを行うことにより、所望の形状に、効率的にエッチングを行うことができる。すなわち、マスク層71の形成における厳密な位置制御を行わず、マスク層71が多少左右方向にずれて形成されていても、エッチング時において、露出するシリコン窒化膜層69の除去を抑制し、ゲート電極層67が露出しないような所望の形状により正確にすることができる。
【0074】
なお、上記の場合においても、バイアスのオフ時において形成される保護膜の厚みは、100Å以下とするよう制御することが好ましい。こうすることにより、保護膜が過剰に厚くなることを抑制し、より確実に、所望の形状にエッチングすることができる。
【0075】
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。昨今では、スペーサエッチングを行う工程においても、以下の問題が生ずるおそれがある。ここでまず、スペーサエッチング工程において、所望の形状、すなわち、いわゆる理想的な形状にエッチングを行った場合について、簡単に説明する。
【0076】
図28、
図29、および
図30は、この場合における被処理基板の一部を示す概略断面図である。まず、
図28を参照して、被処理基板Wとなるシリコン基板81の上にゲート絶縁膜層82、ゲート電極層83、およびゲート側壁部84を形成し、これらを覆うように、絶縁層であるスペーサ層85を形成する。この場合において、
図28に示すように、ゲート電極層83の上方領域86aに形成されるスペーサ層85の厚みs
1と、ゲート側壁部84のサイド領域86bの横に形成されるスペーサ層85の厚みs
2とは、ほとんど等しく、サイド領域86bの横側においてシリコン基板81上となる端部領域86cに形成されるスペーサ層85の厚みs
3は、厚みs
1や厚みs
2と比較して若干薄いものとなる。
【0077】
その後、第一のエッチング工程として、イオンエネルギーによる垂直方向のエッチングを行う。このようにして、形成したスペーサ層85のうち、上下方向、すなわち、垂直方向に延びる部分を多く残し、左右方向、すなわち、水平方向に延びる部分を積極的に削るようにして、
図29に示す形状とする。具体的には、上下方向に延びるサイド領域86bにおけるスペーサ層85については、第一のエッチング前の厚みs
2と、第一のエッチング後の厚みs
5とは、ほとんど変わらず、左右方向に延びる上方領域86aにおけるスペーサ層85については、第一のエッチング前の厚みs
1に対して、第一のエッチング後の厚みs
4が、大きく減少する。上方領域86aと同様に、左右方向に延びるスペーサ層85における端部領域86cについても、第一のエッチング前の厚みs
3に対して、第一のエッチング後の厚みs
6が、大きく減少する。このようにして、第一のエッチング工程を行う。第一のエッチング工程は、端部領域86cにおけるスペーサ層85が完全に除去されず、少し残る程度まで行う。
【0078】
その後、第二のエッチング工程として、スペーサ層85のうち、少し残した端部領域86cのスペーサ層85を完全に除去し、その領域におけるシリコン基板81の上面が露出するように、エッチングを行う。すなわち、
図29における端部領域86cの厚みs
6が0となるようにエッチングを行う。この場合、下地層となるシリコン基板81とエッチング層となるスペーサ層85との選択比を考慮して、ラジカルによるケミカルなエッチングを行う。このようにして、
図30に示すように、スペーサ層85がサイド領域86bにおいて垂直方向に延びる部分からなる形状とする。
【0079】
このようなエッチングは、いわゆる二段階エッチングと呼ばれるものである。すなわち、スペーサ層85のエッチングに際し、第一のエッチング工程の段階においては、垂直方向に延びる部分を残して左右方向に延びる部分を積極的に削るよう、バイアスパワーを比較的強くして異方性エッチングを行う。このようにして効率的に、すなわち、所要時間をできるだけ少なくして、
図29に示す形状を得る。そして、第二のエッチング工程の段階において、選択比を考慮して、余分な端部領域86cのスペーサ層85を除去し、スペーサ層85のサイド領域86bの横側において、シリコン基板81が露出するよう、バイアスパワーを弱くして等方性エッチングを行う。このようにしてスペーサエッチングを行う。このような二段階のエッチングによれば、端部領域86cにおけるシリコン基板81の過剰なエッチングを抑制して、理想的な
図30に示す形状のシリコン基板を効率的に得ることができる。
【0080】
しかし、このような工程においては、以下のような問題が生ずるおそれがある。第二のエッチング工程においては、等方性を重視するために、エッチング時におけるバイアスパワーを小さくすることとしている。しかし、このようにバイアスパワーを小さくすると、サイド領域86bにおけるスペーサ層85も、等方性を重視したエッチングにより削ってしまうことになる。すなわち、サイド領域86bにおけるスペーサ層85の厚みs
5が薄くなり、サイド領域86bにおけるスペーサ層85が細くなってしまうことになる。厚みs
5に関しては、できるだけ厚い方が望ましいので、このような状況は、好ましくない。
【0081】
このような場合、第一のエッチング工程において、できるだけ残す端部領域のスペーサ層を薄くすればよいが、このような厳密な制御は、労力や時間の観点から好ましくない場合もある。
【0082】
ここで、
図31を参照して、この発明のさらに他の実施形態に係るプラズマエッチング処理について説明する。
図31は、この発明のさらに他の実施形態に係るプラズマエッチング処理の代表的な工程を示すフローチャートである。まず、
図28で示すように、被処理基板Wとなるシリコン基板81上に、ゲート絶縁膜層82、ゲート電極層83、ゲート側壁部84を形成し、これらを覆うようにスペーサ層85を形成する(
図31(A))。
【0083】
次に、上記した
図1に示すプラズマエッチング処理装置11を用いて、まず、第一のエッチングを行う(
図31(B))。第一のエッチングにおいては、垂直方向に積極的にエッチングを行うように、バイアスパワーを比較的強くし、主にイオンエネルギーを利用してスペーサ層85のエッチングを行う。この第一のエッチングについては、端部領域86cのスペーサ層85が、完全に除去されないレベルで終了する。このようにして、
図29に示す形状の被処理基板Wを得る。
【0084】
第一のエッチング終了後、引き続いて、第二のエッチングを行う(
図31(C))。この場合、支持台14を介して被処理基板Wに供給するバイアスの電力を、停止および供給を交互に繰り返しながら、間欠的に供給するようにする。すなわち、バイアス電力供給手段における交流のバイアス電力のバイアスオン(
図31(D))およびバイアスオフ(
図31(E))を交互に繰り返して、間欠的にバイアス電力を供給する。
【0085】
ここで、交流のバイアス電力の供給時間(a)および停止時間を足し合わせた時間(b)に対する供給時間(a)の比であるデューティー比(a/b)を、0.18よりも高く0.75よりも低くなるようにして、バイアス電力の供給を制御する。
【0086】
このようにして、バイアスのオンおよびオフを交互に繰り返し、第二のエッチングを行う。そして、端部領域86cにおけるスペーサ層85が完全に除去されたときに、第二のエッチングを終了する(
図31(F))。
【0087】
その後、スペーサ層85の上に残存する後述する保護膜を除去し、二段階のエッチング工程を終了する。
【0088】
このようにして、スペーサエッチングを行うことにより、スペーサを形成する工程において、より正確に所望の形状にエッチングすることができる。
【0089】
このようなエッチングの原理について説明すると、以下のことが考えられる。すなわち、間欠的にバイアスの供給を行った場合、プラズマによるエッチング処理時において、バイアスがオフされる状態、すなわち、バイアス電力が供給されない状態と、オンされる状態、すなわち、バイアス電力が供給される状態とが、交互に現れることになる。
【0090】
図32は、バイアスがオフされた場合の被処理基板の一部を示す概略断面図である。
図32を参照して、バイアスがオフされた場合には、スペーサ層85が形成されている領域の全面に亘って、デポによる保護膜87が形成される。この保護膜87の層については、プラズマ処理においてプラズマに近い部分、すなわち、
図32における上側の領域ほど、形成される保護膜87の層は厚いものとなる。一方、シリコン基板81側に近い程、薄く形成されるものである。具体的には、スペーサ層85の上方領域86aの上側となる上方領域88aにおける保護膜87の層の厚みs
7や、スペーサ層85のサイド領域86bの横側となるサイド領域88bにおける保護膜の厚みs
8については、比較的厚いものとなるが、スペーサ層85の端部領域86cの上側となる端部領域88cにおける保護膜87の層の厚みs
9については、比較的薄いものとなる。
【0091】
図33は、バイアスがオンされた場合の被処理基板の一部を示す概略断面図である。
図33を参照して、バイアスがオンされた場合には、プラズマによるエッチングにより、まず保護膜87の除去が進行する。この場合、上方領域88aに形成される保護膜87の厚みs
7やサイド領域88bに形成される保護膜87の厚みs
8が比較的厚いものであるため、バイアスオンに切り替えられた状態において、上方領域88aやサイド領域88bにおける保護膜87の除去のみで終わるか、または保護膜87の除去後における上方領域86aやサイド領域86bにおけるスペーサ層85の微小な除去のみで終わるものである。一方、シリコン基板81側に近い領域となる端部領域88cにおける保護膜87の厚みs
9は、比較的薄いものであるため、バイアスオンに切り替えられた状態において、端部領域88cにおける保護膜87は早期に完全に除去され、その後、露出したスペーサ層85の端部領域86cをエッチングすることになる。
【0092】
ここで、上方領域88aやサイド領域88bにおける保護膜87がほとんど除去されないうちに、バイアスのオフに切り替えることにより、上方領域86aやサイド領域86bのスペーサ層85のエッチングによる除去をほとんど進行させずに、端部領域88cのスペーサ層85のエッチングによる除去を進行させて、端部領域88cのスペーサ層85のみの除去を効率的に行うことができる。
【0093】
その後、
図34に示すように、端部領域88cにおけるスペーサ層85が除去された段階において、第二のエッチングを終了し、
図35に示すように上方領域88aやサイド領域88bにおける保護膜87を除去して、サイド領域86bのスペーサ層85の厚い所望の形状のスペーサ層85を形成する(
図31(G))。このようにして、スペーサエッチングを行う。
【0094】
こうすることにより、第二のエッチング工程において、サイド領域86bに形成したスペーサ層85がエッチングにより細くなることを抑制し、所望の形状のスペーサ層85を形成することができる。
【0095】
なお、バイアスの電力の周波数が小さいと、バイアスのオン時においてデポにより形成される保護膜87の厚みが厚くなる傾向がある。この場合、
図36に示すように、バイアスのオンオフの切り替えにより形成されるサイド領域88bの保護膜87の厚みs
8が大きくなると、端部領域86cにおけるスペーサ層85の除去が完全に行えないおそれがある。すなわち、
図37に示すように、端部領域86cにおけるスペーサ層85を除去して、シリコン基板81が露出した場合においても、端部領域86cにおけるスペーサ層85のうち、サイド領域88b側に形成される保護膜87の層の厚みs
8の分、スペーサ層89が残存することとなる。このような形状は、サイド領域におけるスペーサ層の段差となり、好ましくない。
【0096】
図38は、スペーサエッチングを行う工程において、底壁、すなわち、ここではシリコン基板81の上面となる端部領域におけるスペーサ層、および側壁、すなわち、ここではサイド領域におけるスペーサ層のエッチング速度とデューティー比との関係を示すグラフである。
図38においては、間欠周波数が5Hzの場合であり、縦軸はエッチング速度(nm/分)を示し、横軸はデューティー比(単位無し)を示す。
図39は、スペーサエッチングを行う工程において、底壁および側壁におけるエッチング速度と間欠周波数との関係を示すグラフである。
図39においては、デューティー比が0.75の場合であり、縦軸はエッチング速度(nm/分)を示し、横軸は間欠周波数(Hz)を示す。
【0097】
図38を参照して、端部領域のスペーサ層のエッチングを進行させて、サイド領域のスペーサ層のエッチングを進行させないのは、
図38中のハッチングで示す領域90である。また、
図39を参照して、端部領域のスペーサ層のエッチングを進行させ、サイド領域のスペーサ層のエッチングを進行させないのは、
図39中のハッチングで示す領域91である。
【0098】
図40は、
図38および
図39の結果を基に推測したサイド領域のスペーサ層のエッチング速度を示すコンター図である。
図40において、縦軸は間欠周波数、いわゆるON/OFF周波数(Hz)を示し、横軸はデューティー比(単位無し)を示す。
【0099】
図40を参照して、ハッチングで示す領域91が望ましい領域となる。領域91において、右端部93aにおけるデューティー比は、おおよそ0.75であり、左端部93bにおけるデューティー比は、おおよそ0.18である。また、上端部93cにおける周波数は100Hzであり、下端部93dにおける周波数は5Hzである。領域91よりも左側の領域94においては、保護膜が端部領域において厚く形成されすぎて端部領域のスペーサ層のエッチングがほとんど進行しない傾向にある。また、領域91よりも下側の領域95においては、サイド領域に形成される保護膜が厚くなりすぎて、
図36および
図37に示すように、端部領域のスペーサ層の一部が残存し、段差が生じてしまうことになる。領域91よりも右下側の領域96および右上側の領域97においては、サイド領域に形成される保護膜自体が薄くなり、サイド領域のスペーサ層が削れてしまって、細くなってしまう傾向がある。
【0100】
なお、右端部93aにおける周波数は、おおよそ10Hzであり、左端部93bにおける周波数はおおよそ6Hzであり、上端部93cにおけるデューティー比は、おおよそ0.18であり、下端部93dにおけるデューティー比は、おおよそ0.5である。
【0101】
したがって、サイド領域のスペーサ層のエッチングにおける間欠周波数およびデューティー比との関係においては、
図40に示す領域91内の値を選択することが好ましい。
【0102】
なお、上記の場合において、バイアスのオフ時において形成される保護膜の厚みは、10Å以下とするよう制御することが好ましい。こうすることにより、保護膜が過剰に厚くなることを抑制し、より確実に、所望の形状にエッチングすることができる。
【0103】
なお、上記の実施の形態において、プラズマエッチング処理の進行状況に応じ、その場(いわゆるin situ)にて、制御を行うようにしてもよい。この場合、例えば、発光モニタを用いてプラズマ状態を測定する測定装置や、膜厚モニタを用いて被処理基板の膜厚を測定する膜厚測定装置、スキャトロメトリーを用いて線幅(CD:Critical Dimension)や形状を測定する測定装置等を用いて、プラズマエッチング処理の進行状況を測定する。この測定されたデータを基に、間欠周波数および/またはデューティー比をプラズマエッチング処理中に適宜変更することにより、所望の形状を得ることができる。また、保護膜の改質に用いられるガスの導入量を変更することにより、プラズマエッチング形状の調整を行ってもよい。プラズマエッチング処理時において変更するパラメータについては、
図12、
図13、
図38、
図39、および
図40に示すコンター図やグラフ等から求めることができる。
【0104】
また、プラズマエッチング処理を行った後において、プラズマエッチング処理装置外に出した際に、測定装置により形状を測定し、次に処理される被処理基板が所望のエッチング形状となるように、間欠周波数および/またはデューティー比を変更することにしてもよい。すなわち、フィードバックを行うようにしてもよい。また、保護膜の改質に用いられるガスの導入量を変更することにより、エッチング形状の調整を行ってもよい。
【0105】
また、被処理基板上のエッチングマスクの形状を測定装置を用いて測定し、所望のエッチング形状が得られるよう間欠周波数および/またはデューティー比を変更することにしてもよい。すなわち、フィードフォワードを行うようにしてもよい。また、保護膜の改質に用いられるガスの導入量を変更することにより、エッチング形状の調整を行ってもよい。
【0106】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。