(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の総形研削によれば、希土類焼結磁石のガイドによる位置合わせにおいて、当該磁石の一対の側面を研削するための位置合わせと、当該磁石の上面を研削するための位置合わせとを別々に行わなければならない。ワークの対称度の加工精度は、研削時における砥石に対するワークの位置精度に依存するが、従来では、上述のように、希土類焼結磁石の一対の側面を研削した後に、当該磁石の上面を研削するために当該磁石の位置合わせを人手によってやり直さなければならない。したがって、位置合わせを高精度に行うことができず、上面が研削された希土類焼結磁石の芯ずれを十分に抑制できない。その結果、高品質の希土類焼結磁石を得ることができず、このような希土類焼結磁石を電動モータに組み込むと、コギングトルクが大きくなり易くなる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ワークの芯ずれを抑制できる総形研削が可能となり、高品質のワークを得ることができる、研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の研削装置は、凸曲面状の上面と上面の両端から下方に延びる一対の側面とを有するワークを総形研削する研削装置であって、ワークを研削するための砥石と、砥石によって研削されるワークを支持するテーブルと、砥石に向けてワークを搬送する搬送部と、ワークをワーク搬送方向に案内するためにテーブル上に設けられる第1ガイドおよび第2ガイドとを備え、砥石は、ワークの上面を研削する上面研削部と、ワークの一対の側面を研削する一対の側面研削部とを含み、一対の側面研削部は、上面研削部の両端から上面研削部よりも砥石の径外方向に突出するように形成され、第1ガイドは、砥石からみてワーク搬送方向の上流側に設けられる一対の第1ガイド部を含み、第2ガイドは、砥石からみてワーク搬送方向の下流側に設けられる一対の第2ガイド部を含み、一対の第2ガイド部の間隔は、一対の第1ガイド部の間隔より小さいことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の研削装置は、請求項1に記載の研削装置において、テーブルは、一対の側面研削部に対応する位置に形成される一対の溝部を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の研削装置は、請求項1または2に記載の研削装置において、一対の側面研削部の内面先端部はそれぞれ面取りされていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の研削装置は、請求項1から3のいずれかに記載の研削装置において、砥石は、一対の側面研削部の外面に露出する砥粒部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の研削装置では、ワークの凸曲面状の上面を上面研削部によって研削する処理と、ワークの一対の側面を一対の側面研削部によって研削する処理とを同時に行うことができる。したがって、従来とは異なり、ワークの一対の側面を研削した後に、ワークの位置合わせをやり直してワークの上面を研削する必要はない。言い換えれば、ワークの一対の側面を研削した後に、ワークの位置精度が十分でない状態でワークの上面が研削されることはない。また、一対の第2ガイド部の間隔を、研削後のワークの寸法に応じて一対の第1ガイド部の間隔より小さくする。これによって、総形研削により加工されたワークの側面が速やかに一対の第2ガイド部によって案内されるので、ワークは曲がることなくワーク搬送方向の下流側に円滑に搬送される。したがって、長さ(ワーク搬送方向の寸法)の大きいワークであっても、長さ方向が曲がることなく精度よく総形研削できる。その結果、ワークの芯ずれを抑制できる総形研削が可能となり、対称度の加工精度が高く高品質のワークを得ることができる。このようなワークが希土類焼結磁石である場合には、この磁石をモータに組み込むと、コギングトルクを低減できる。
【0012】
請求項2に記載の研削装置では、テーブルが、一対の側面研削部に対応する位置に形成される一対の溝部を含むことによって、一対の側面研削部とテーブルとの無用な接触を抑制できる。
【0013】
請求項3に記載の研削装置では、一対の側面研削部の内面先端部がそれぞれ面取りされているので、研削されたワークの側面端部のチッピングを抑制できる。
【0014】
請求項4に記載の研削装置では、砥石は、一対の側面研削部の外面に露出する砥粒部を有するので、側面研削部の外面がテーブル(特に、溝部)に接触してもテーブルを削ることで、砥石によるワークの研削を妨げずかつ砥石やテーブルの破損を抑制できる。
砥石の磨耗や破損を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ワークの芯ずれを抑制できる総形研削が可能となり、高品質のワークを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の研削装置10は、ベース12を含む。
ベース12上には、矢印Aで示すワーク搬送方向の上流側から順にテーブル14および16が設けられている。
図8を参照して、テーブル14は、一対のテーブル部14aと14bとを含み、テーブル部14aと14bとの間には、矢印Aで示すワーク搬送方向に延びる溝14cが形成されている。溝14cは、研削すべきワークWよりやや大きい幅を有することが好ましく、テーブル14を上下に貫通する。テーブル16は、溝部16b(後述)を有し、砥石44(後述)が接触する可能性があるので、セラミックスや超硬材料を含むことが好ましい。
【0018】
図9に示すように、ワークWは、凸曲面状の上面w1と、上面w1の両端から下方に延びる平面状の一対の側面w2と、一対の側面w2の下端を連結する平面状の底面w3とを有する。一対の側面w2は、相互に平行に形成される。ワークWは、
図4に示すように上に凸の状態で搬送される。ワークWとしてはたとえばNd−Fe−B系希土類焼結磁石が用いられる。
【0019】
図1および
図2を参照して、テーブル14上には、上流側から順にガイド18および20が配置され、テーブル16上には、上流側から順にガイド22,24および26が配置されている。ガイド18は一対のガイド部18a,18bを含む。同様に、ガイド20は一対のガイド部20a,20bを含み、ガイド22は一対のガイド部22a,22bを含み、ガイド24は一対のガイド部24a,24bを含み、ガイド26は一対のガイド部26a,26bを含む。ガイド部18a,18bは、ワーク搬送方向と直交する方向に相互に間隔を空けて配置される。同様に、ガイド部20a,20b、ガイド部22a,22b、ガイド部24a,24b、およびガイド部26a,26bはそれぞれ、ワーク搬送方向と直交する方向に相互に間隔を空けて配置される。ガイド部18a,18bの間隔、ガイド部20a,20bの間隔、およびガイド部22a,22bの間隔は、略等しく設定される。ガイド部24a,24bの間隔、およびガイド部26a,26bの間隔は、略等しく設定され、かつ、ガイド部18a,18bの間隔、ガイド部20a,20bの間隔、およびガイド部22a,22bの間隔よりも狭い。このようにガイド18〜26を設けることによって、ワークWの幅方向の位置が揃えられ、ワークWがワーク搬送方向に案内される。なお、この実施形態では、ガイド22は第1ガイドに相当し、ガイド24は第2ガイドに相当し、一対のガイド部22a,22bは一対の第1ガイド部に相当し、一対のガイド部24a,24bは一対の第2ガイド部に相当する。
【0020】
図1に示すように、テーブル14側には搬送部28が設けられている。搬送部28は、テール14の上側に設けられる搬送ユニット30aと、搬送ユニット30aの下側に設けられる搬送ユニット30bとを含む。なお、ベース12には、搬送ユニット30bを配置するための空間(図示せず)が設けられている。
【0021】
搬送ユニット30aは、ローラ32a,34a,36a,38aと、ローラ32a,34a,36a,38aに装着されるベルト40aとを含む。ローラ32aおよび34aはテーブル14の上側においてそれぞれ溝14cの前端近傍および後端近傍に配置され、これによってベルト40aが溝14cに沿うように設けられ、搬送時にベルト40aの下面をワークWの上面に接触させることができる。また、搬送ユニット30bは、ローラ32b,34b,36bと、ローラ32b,34b,36bに装着されるベルト40bとを含む。ローラ32bおよび34bは、テーブル部14a,14b間においてそれぞれ溝14cの前端近傍および後端近傍に配置され、これによってベルト40bが溝14cに沿うように設けられ、搬送時にベルト40bの上面をワークWの底面w3に接触させることができる。したがって、ワークWは、テーブル14を通過するときにはベルト40aと40bとによって上下両側から挟持されかつ砥石44方向に直線的に送り出される。この実施形態では、ローラ38aおよび36bは駆動ローラであり、図示しないモータ等の駆動部によって駆動され、それぞれ矢印B1およびB2に示す方向に回転する。ローラ32a,32b,34a,34bおよび36aは従動ローラである。
【0022】
また、テーブル14の上側にはワークWの上下方向の位置を揃えるための位置調整装置42が設けられている。位置調整装置42によってワークWを下方に押圧し、ワークWの上下方向の位置が揃えられる。
【0023】
テーブル16上には、ワークWを研削するための砥石44が回転自在に設けられている。砥石44は、その軸方向がワーク搬送方向と直交するように、かつその中心がガイド22と24との境界部分に略位置するように、設けられている。砥石44は、図示しないモータ等の駆動部によって駆動され、矢印Cで示すように、ワークWとの接触部における砥石44の回転方向はワーク搬送方向と逆方向となる。また、砥石44の上下方向の位置は、図示しない調整部によって調整可能である。
【0024】
砥石44と搬送部28との間には、クーラント供給装置46が配置され、砥石44によって研削されるワークWに対してクーラント供給装置46のノズル46aからクーラントが供給される。
【0025】
また、テーブル16上の砥石44の上流側および下流側にはそれぞれ、ワークWの上方に位置するように板状部材48,50が配置されている。板状部材48,50によって、ワークWのブリッジや乗り上げ等を防止できる。なお、砥石44からみてワーク搬送方向の下流側に、ワークWを排出するための図示しない搬送部や、ワークWを上方から押圧する図示しない押圧部が設けられてもよい。
【0026】
ついで、
図3、
図4、
図6および
図8を参照して、ガイド22および24について詳細に説明する。
ガイド22のガイド部22a,22bはそれぞれ、角板状のガイド部本体52a,52bを有する。ガイド部本体52a,52bの外側部にはそれぞれ、下方に突出する突部54a,54bが形成されている。ガイド部本体52a,52bの内側角部にはそれぞれ、傾斜面56a,56bが形成されている。傾斜面56a,56bはそれぞれ、ガイド部本体52a,52bの内側角部を、その上面からワーク搬送方向に向けて円弧状に切り欠いたような形状を有する。ガイド部22aおよび22bは、間隔aをあけて(
図4(a)参照)、かつ傾斜部56aと56bとが対応するように配置されている。また、ガイド部本体52aには、幅方向に延びる長孔として2つの貫通孔58a,60aが、ワーク搬送方向に間隔をあけて形成されている。同様に、ガイド部本体52bには、幅方向に延びる長孔として2つの貫通孔58b,60bが、ワーク搬送方向に間隔をあけて形成されている。ガイド部22aをテーブル16に固定するときには、ガイド部22aの位置合わせをした後、たとえばボルトなどの締結部材64が、各貫通孔58a,60aに挿通され、さらにテーブル16の孔16aに螺入される。同様に、ガイド部22bをテーブル16に固定するときには、ガイド部22bの位置合わせをした後、たとえばボルトなどの締結部材64が、各貫通孔58b,60bに挿通され、さらにテーブル16の孔16aに螺入される。なお、
図8に示すように、テーブル16には、ガイド部22a,22b,24a,24bの取り付け用の複数(この実施形態では、8個)の孔16aが形成されている。
【0027】
また、ガイド24のガイド部24a,24bはそれぞれ、角板状のガイド部本体66a,66bを有する。ガイド部本体66a,66bの外側部にはそれぞれ、下方に突出する突部68a,68bが形成されている。ガイド部本体66a,66bの内側角部にはそれぞれ、傾斜面70a,70bが形成されている。傾斜面70a,70bはそれぞれ、ガイド部本体66a,66bの内側角部を、その上面からワーク搬送方向の反対方向に向けて円弧状に切り欠いたような形状を有する。ガイド部24aと24bとは、間隔bをあけて(
図4(c)参照)、かつ傾斜面70aと70bとが対応するように配置されている。また、ガイド部本体66aには、幅方向に延びる長孔として2つの貫通孔72a,74aが、ワーク搬送方向に間隔をあけて形成されている。同様に、ガイド部本体66bには、幅方向に延びる長孔として2つの貫通孔72b,74bが、ワーク搬送方向に間隔をあけて形成されている。ガイド部24aをテーブル16に固定するときには、ガイド部24aの位置合わせをした後、たとえばボルトなどの締結部材64が、2つの貫通孔72a,74aに挿通され、さらにテーブル16の孔16aに螺入される。同様に、ガイド部24bをテーブル16に固定するときには、ガイド部24bの位置合わせをした後、たとえばボルトなどの締結部材64が、2つの貫通孔72b,74bに挿通され、さらにテーブル16の孔16aに螺入される。
【0028】
図6(b)に示すように、傾斜面56aと70aとは、同一円弧上に位置することが好ましい。傾斜面56bと70bとについても同様である。
【0029】
ここで、
図3および
図4を参照して、砥石44からみてワーク搬送方向の上流側に設けられるガイド部22aと22bとの間隔aは、砥石44で研削される前のワークWの幅に応じて設定される。砥石44からみてワーク搬送方向の下流側に設けられるガイド部24aと24bとの間隔bは、砥石44で研削された後のワークWの幅に応じて設定される。すなわち、ガイド部24aと24bとの間隔bは、ワークWの一対の側面w2の削り量に応じて、ガイド部22aと22bとの間隔aより小さく設定される。間隔a,bは、たとえば(a−b)>0.2mmに設定される。また、ガイド部22a,22bとワークWとの隙間G1、およびガイド部24a,24bとワークWとの隙間G2は、略等しくかつワークWの寸法に応じて設定され、たとえば0.05mmに設定される。このように間隔a,b、隙間G1,G2を設定することによって、ワークWが搬送方向に流れ易くなる。なお、
図4(b)では、研削前のワークWの輪郭を一点鎖線で示す。
【0030】
なお、図示しないが、他のガイド18,20,26についても、ガイド22,24と同様に、幅方向の位置調整が可能なように幅方向に延びる長孔としての貫通孔が形成され、テーブル14,16にこれらの貫通孔に対応する孔が形成されてもよい。この場合、締結部材が貫通孔に挿通されかつテーブルの孔に螺入される。
【0031】
また、ガイド18と20との間、ガイド20と22との間、ガイド22と24との間、ガイド24と26との間には、僅かに隙間が設けられることが好ましい。
【0032】
ついで、
図1、
図3、
図5および
図7を参照して、砥石44について説明する。
砥石44は、略円板状に形成されている。砥石44は、中心部78とテーパ部80と外周部82とを含む。砥石44の厚みは、中心部78、テーパ部80、外周部82の順で小さくなる。
【0033】
中心部78は、電動モータの回転軸が挿通される中空部78aを有し円筒状に形成されている。テーパ部80は、中心部78から径外方向に向かって徐々に厚みが小さくなるように形成されている。外周部82は、テーパ部80から径外方向に向かって同一の厚みで先端まで延びている。たとえ外周部82の厚みが研削すべきワークWの寸法に応じて小さく設定されていても、中心部78の厚みを大きくすることによって、電動モータの回転軸に砥石44を強固に固定できる。また、たとえ中心部78の厚みと外周部82の厚みとの差が大きくても、中心部78と外周部82との間にテーパ部80を設けることによって、研削時における外周部82の撓りを抑制でき、ワークWの研削精度を向上できる。
【0034】
外周部82は、その先端部において、ワークWの上面w1を研削するために環状に形成される上面研削部84と、ワークWの一対の側面w2を研削するためにそれぞれ環状に形成される一対の側面研削部86,88とを有する。上面研削部84の形状は、研削後のワークWの上面w1の形状に応じて設定され、砥石44の径内方向に向かって円弧状に凹んでいる(湾曲している)。一対の側面研削部86,88は、上面研削部84の両端から上面研削部84よりも砥石44の径外方向に突出するように形成されている。一対の側面研削部86,88の間隔は、研削後のワークWの寸法に応じて設定される。また、
図5を参照して、一対の側面研削部86,88の内面先端部90,92はそれぞれ、R=0.3〜1.0mm、好ましくはR=0.5mmで面取りされている。上面研削部84と一対の側面研削部86,88とは、砥粒部94を有する。
図5からわかるように、砥粒部94は、上面研削部84の表面、一対の側面研削部86,88の内側面および外側面において露出するように形成されている。
【0035】
砥石44の製造においては、まず、たとえば鉄55cを含む材料をNC旋盤で高精度に形状加工して略円板状の砥石本体を形成する。その後、砥石本体の先端部の外表面に、電着法によって砥粒部94を露出するように固定する。砥粒部94は、たとえばダイヤモンド砥粒(またはCBN砥粒)を含み、その表面粗さRaは0.1〜0.5μmに設定される。
【0036】
図5に示すように、砥石44の上面研削部84の表面から一対の側面研削部86,88の先端までの長さHは、ワークWの高さhよりも大きくなるように設定され、たとえば、H=h+(0.1〜3.0)mmに設定される。一対の側面研削部86,88のそれぞれの幅Xは、たとえば、1.0〜5.0mmに設定される。
【0037】
また、
図4(b)、
図5および
図8に示すように、テーブル16は、砥石44の一対の側面研削部86,88に対応する位置に形成される一対の溝部16bを含む。溝部16bは、テーブル16と砥石44とが接触しないような形状および深さで形成され、この実施形態では、断面円弧状に形成されている。
【0038】
このような研削装置10の動作について説明する。
図1および
図2を参照して、複数のワークWを上に凸の状態で、テーブル14上に配置された一対のガイド部18a,18b間に連続的に供給していく。すると、ワークWは、ベルト40aおよび40bによって上下から挟まれて、砥石44に向けて搬送される。搬送時において、各ワークWの上下方向の位置は位置調整装置42によって揃えられ、各ワークWの幅方向の位置は対向するガイド部によって揃えられる。
【0039】
ガイド部18a,18b間、ガイド部20a,20b間、ガイド部22a,22b間を通って砥石44に送り込まれたワークWは、テーブル16によって支持された状態でクーラント供給装置46のノズル46aからクーラントを供給されながら、砥石44によって総形研削される。このとき、砥石44は、ワークWとの接触部においてワーク搬送方向と逆方向に回転し、ワークWの上面w1と一対の側面w2とを同時に研削する。
【0040】
図9(a)を参照して、芯ずれは以下のようにして求められる。
まず、図示しない投影機によってワークWの投影
図Vを得る。そして、投影
図Vの底辺v3に平行な仮想的な直線Lを投影
図Vの上辺v1と交わるように引き、交点K1,K2を求める。ついで、投影
図Vの一対の側辺v2間の中心位置Pを直線L上に求める。そして、交点K1,K2のそれぞれについて、中心位置Pからの距離を求め、それらの距離の差の半分を芯ずれ値とする。ここで、投影
図Vの上辺v1、側辺v2、底辺v3はそれぞれ、ワークWの上面w1、側面w2、底面w3に対応する。
【0041】
研削装置10によれば、ワークWの凸曲面状の上面w1を上面研削部84によって研削する処理と、ワークWの一対の側面w2を一対の側面研削部86,88によって研削する処理とを同時に行うことができる。したがって、従来とは異なり、ワークWの一対の側面w2を研削した後に、ワークWの位置合わせをやり直してワークWの上面w1を研削する必要はない。言い換えれば、ワークWの一対の側面w2を研削した後に、ワークWの位置精度が十分でない状態でワークWの上面w1が研削されることはない。
【0042】
また、たとえば、砥石44からみてワーク搬送方向の上流側と下流側とにガイド22と24とが別々に設けられていないとき、すなわち砥石44の前後において間隔の一定のガイドが設けられている場合には、砥石44の下流側においてワークWとガイドとの間隔が大きくなる。したがって、ワークWの位置がクーラントの供給圧によってずれてしまい、その結果、ワークの連続加工が停止することがある。しかし、研削装置10によれば、一対のガイド部24a,24bの間隔を、研削後のワークWの寸法に応じて一対のガイド部22a,22bの間隔より小さくする。これによって、総形研削により加工されたワークWの側面w2が速やかに一対のガイド部24a,24bによって案内されるので、ワークWは曲がることなくワーク搬送方向の下流側に円滑に搬送される。したがって、長さ(ワーク搬送方向の寸法)の大きいワークWであっても、長さ方向が曲がることなく精度よく総形研削できる。その結果、ワークWの芯ずれを抑制できる総形研削が可能となり、対称度の加工精度が高く高品質のワークWを得ることができる。このようなワークWが希土類焼結磁石である場合には、この磁石を電動モータに組み込むと、コギングトルクを低減できる。
【0043】
テーブル16が、一対の側面研削部86,88に対応する位置に形成される一対の溝部16bを含むことによって、一対の側面研削部86,88とテーブル16との無用な接触を抑制できる。
【0044】
従来、一対の平面状の側面w2と一対の側面w2を連結する平面状の底面w3とを有するワークWについて、一対の側面w2を総形研削によって加工すると、側面w2と底面w3との接続部に無数のチッピングが発生しやすかった。これは、ワークWが砥石の直下に順次送り込まれて加工されるとき、ワークWの側面w2と底面w3との接続部が砥石の外周で削れてしまうためである。しかし、研削装置10では、砥石44の一対の側面研削部86,88の内面先端部90,92はそれぞれ面取りされているので、総形研削されたワークWの側面w2と底面w3との接続部におけるチッピングを抑制できる。
【0045】
砥石44は、一対の側面研削部86,88の外面に露出する砥粒部94を有するので、側面研削部86,88の外面がテーブル16(特に、溝部16b)に接触してもテーブル16を削ることで、砥石44によるワークWの研削を妨げずかつ砥石44やテーブル16の破損を抑制できる。
【0046】
このような研削装置10の実験例について説明する。
以下に、
図1に示す研削装置10による実験例と、特許文献1に開示されている外砥石を用いた比較例とを示す。
【0047】
(研削装置10による実験例)
まず、ワークWとして、組成比Nd=28.5、Dy=2.0、B=1.0、Co=0.9、Al=0.1、Cu=0.1、残部=Fe(質量%)の希土類焼結磁石が準備された。このワークWの上面w1および一対の側面w2が研削装置10で総形研削され、上面のR10mm×高さ3mm×幅10mm×長さ35mmの磁石が得られた。ワークWの加工数は150,000個であった。砥石44としては、上面研削部84の表面から一対の側面研削部86,88の先端までの長さH=研削後のワークWの高さh+1.0mm、砥粒部94の表面粗さRa=0.16μm、側面研削部86,88の内面先端部90,92のR=0.35mm、一対の側面研削部86,88のそれぞれの幅X=3.0mmであった。得られた希土類焼結磁石について、上述した要領で芯ずれを測定した結果、芯ずれの平均値は0.015mmであった。
【0048】
(比較例)
上述の実験例と同じワークWの一対の側面w2が一対の円板状の砥石で研削され、その後、そのワークWの上面w1が特許文献1に開示された外砥石を用いて研削された。それ以外については上述の実験例と同条件であった。得られた希土類焼結磁石について、上述した要領で芯ずれを測定した結果、芯ずれの平均値は0.044mmであった。
【0049】
実験例と比較例とを比較してわかるように、研削装置10を用いた実験例の方が芯ずれを大幅に抑制できる。
【0050】
なお、砥石は
図7に示す形状に限定されず、
図10に示す砥石44aが用いられてもよい。砥石44aの外周部82aの一対の側面研削部86a,88aはそれぞれ、たとえば角度T=略30°でテーパ状に面取りされた内面先端部90a,92aを有する。
【0051】
また、砥石は、中心部から外周部にかけて略均一の厚みを有してもよく、中心部より外周部の方が厚くなるように構成されてもよい。さらに、砥石は、テーパ部を設けずに、外周部が中心部から径外方向に延びるような構成であってもよい。
【0052】
テーブル16に形成される溝部は、
図8に示す溝部16bに限定されず、砥石がテーブル16に接触しない任意の大きさ・形状に形成されることができる。
【0053】
図11を参照して、この発明の実施形態に係る研削装置10において、テーブル16に代えてテーブル96が用いられ、ガイド22,24に代えてガイド98,100が用いられてもよい。
【0054】
テーブル96は、短冊状のテーブル本体96aと、テーブル本体96aの上面中央部において上方に突出しかつワーク搬送方向に延びる支持台96bと、テーブル本体96aの上面に形成されるガイド取り付け用の複数(この実施形態では、8個)の孔96cと、支持台96b上に形成される一対の溝部16bとを含む。支持台96bはテーブル本体96aに着脱可能に設けられる。支持台96bは、ワークWを支持し、ワークWは支持台96b上を搬送されていく。一対の溝部16bの間隔は、上述の実施形態における一対の溝部16bと同様である。好ましくは、支持台96bの上面は、上述の実施形態におけるテーブル16の上面と略同一高さに設定され、支持台96bの高さは、溝部16bの最深部の深さ以上の寸法に設定される。
【0055】
ガイド98は、一対のガイド部98a,98bを含む。一対のガイド部98a,98bの突部102a,102bは、ガイド22の一対のガイド部22a,22bの突部54a,54bよりも、下方へ突出している。それ以外については、一対のガイド部98a,98bは、ガイド22の一対のガイド部22a,22bと同様に形成されるので、その重複する説明は省略する。また、ガイド100は、一対のガイド部100a,100bを含む。一対のガイド部100a,100bの突部104a,104bは、ガイド24の一対のガイド部24a,24bの突部68a,68bよりも、下方へ突出している。それ以外については、一対のガイド部100a,100bは、ガイド24の一対のガイド部24a,24bと同様に形成されるので、その重複する説明は省略する。
【0056】
図12および
図13を参照して、ガイド部98a,98bは、それぞれのガイド部本体52a,52bの内側部が支持台96b上に位置するように設けられる。同様に、ガイド部100a,100bは、それぞれのガイド部本体66a,66bの内側部が支持台96b上に位置するように設けられる。このとき、ガイド部本体52a,52b,66aおよび66bとテーブル本体96aとの間には、たとえば支持台106が配置される。好ましくは、支持台106は、略直方体状に形成され、支持台96bと略同一高さに形成される。これによって、ガイド部本体52a,52b,66aおよび66bは略水平にかつ安定して支持されることができる。ガイド部98aと98bとの間隔a、ガイド部100aと100bとの間隔b、ガイド部98a,98bとワークWとの隙間G1、およびガイド部100a,100bとワークWとの隙間G2は、先の実施形態と同様に設定される。また、好ましくは、締結部材64aの寸法は、先の実施形態で用いられた締結部材64よりも長い。
【0057】
このような構成によれば、砥石44に接触する可能性がある一対の溝部16bは支持台96bに形成され、支持台96bはテーブル本体96aに着脱可能である。したがって、支持台96bは、砥石44との接触によって磨耗しても容易に取り替えることができ、テーブル本体96aは、砥石44と接触しないので、砥石44との接触による磨耗を防止できる。
【0058】
また、
図14を参照して、この発明の実施形態に係る研削装置10において、テーブル16に代えてテーブル108が用いられ、ガイド22,24に代えてガイド110,112が用いられてもよい。
【0059】
テーブル108は、短冊状のテーブル本体108aと、テーブル本体108aの上面中央部において上方に突出しかつワーク搬送方向に延びる支持台108bと、テーブル本体108aの上面に形成されるガイド取り付け用の複数(この実施形態では、8個)の孔108cとを含む。支持台108bは、ワークWを支持し、ワークWは支持台108b上を搬送されていく。好ましくは、支持台108bの上面は、上述の実施形態におけるテーブル16の上面と略同一高さに設定され、支持台108bの高さは、テーブル16における溝部16bの最深部の深さ以上の寸法に設定される。
【0060】
ガイド110は、一対のガイド部110a,110bを含む。一対のガイド部110a,110bは、一対のガイド部98a,98bと同様の突部102a,102bを有する。また、一対のガイド部110a,110bのそれぞれのガイド部本体52a,52bの内側部には、下方に突出する突部114a,114bが形成されている。突部114a,114bの高さは、支持台108bの高さと略同一に設定される。それ以外については、一対のガイド部110a,110bは、ガイド22の一対のガイド部22a,22bと同様に形成されるので、その重複する説明は省略する。また、ガイド112は、一対のガイド部112a,112bを含む。一対のガイド部112a,112bは、一対のガイド部100a,100bと同様の突部104a,104bを有する。また、一対のガイド部112a,112bのそれぞれのガイド部本体66a,66bの内側部には、下方に突出する突部116a,116bが形成されている。突部116a,116bの高さは、支持台108bの高さと略同一に設定される。それ以外については、一対のガイド部112a,112bは、ガイド24の一対のガイド部24a,24bと同様に形成されるので、その重複する説明は省略する。
【0061】
図15および
図16を参照して、ガイド部110a,110bは、それぞれの突部114a,114bが支持台108bの側面に対向しかつテーブル本体108a上に位置するように設けられる。同様に、ガイド部112a,112bは、それぞれの突部116a,116bが支持台108bの側面に対向しかつテーブル本体108a上に位置するように設けられる。このとき、ガイド部本体52a,52b,66aおよび66bとテーブル本体108aとの間には、たとえば支持台118が配置される。好ましくは、支持台118は、略直方体状に形成され、支持台108bと略同一高さに形成される。これによって、ガイド部本体52a,52b,66aおよび66bは略水平にかつ安定して支持されることができる。ガイド部110aと110bとの間隔a、ガイド部112aと112bとの間隔b、ガイド部110a,110bとワークWとの隙間G1、およびガイド部112a,112bとワークWとの隙間G2は、先の実施形態と同様に設定される。また、好ましくは、締結部材64aの寸法は、先の実施形態で用いられた締結部材64よりも長い。
【0062】
このような構成によれば、一対の溝部16bを有するテーブル16を用いなくても、ワークWの芯ずれを抑制できる総形研削が可能となり、対称度の加工精度が高く高品質のワークWを得ることができる。
【0063】
この発明は、
図17に示すような断面弓形状のワークWaの総形研削にも好適に用いられる。この場合、ワークWaの上面wa1と一対の側面wa2とを同時に総形研削できる限りにおいて、研削時に、砥石の側面研削部がワークWaの最下部Mより下方に突出している必要はない。
【0064】
この発明は、凸曲面状の上面と当該上面の両端から下方に延びる一対の側面とを有する任意のワークを総形研削するために好適に用いられる。