特許第5846452号(P5846452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846452
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】液晶組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/30 20060101AFI20151224BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/24 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20151224BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20151224BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   C09K19/30
   C09K19/12
   C09K19/14
   C09K19/16
   C09K19/18
   C09K19/20
   C09K19/24
   C09K19/32
   C09K19/34
   G02F1/13 500
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-155595(P2013-155595)
(22)【出願日】2013年7月26日
(62)【分割の表示】特願2008-168638(P2008-168638)の分割
【原出願日】2008年3月17日
(65)【公開番号】特開2013-249476(P2013-249476A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2013年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2007-76676(P2007-76676)
(32)【優先日】2007年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-76677(P2007-76677)
(32)【優先日】2007年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】栗沢 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小谷 邦彦
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−238958(JP,A)
【文献】 特開2002−194356(JP,A)
【文献】 特開平05−045655(JP,A)
【文献】 特開2006−136868(JP,A)
【文献】 特開昭61−276884(JP,A)
【文献】 特開平04−166912(JP,A)
【文献】 特開2000−136384(JP,A)
【文献】 特開平05−105876(JP,A)
【文献】 特開2006−265453(JP,A)
【文献】 特開2009−061451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤に溶解することなく、0.95気圧から1.05気圧で、2種以上の一般式(I)
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基又は炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基を表し、A、B及びCは、それぞれ独立的に1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2又は3-クロロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジクロロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジクロロ-1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表し、これらの基は更に1〜3のフッ素原子により置換されていてもよく、mは0、1又は2を表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-を表す。但し、mが2の場合、2個のZ2及びCは、それぞれ独立に同じであっても良く、異なっていても良い。)
で表される液晶化合物を撹拌することにより行い、前記液晶化合物のうち、少なくとも1種の融点が40℃より大きく、また、一般式(I)で表される化合物として、一般式(I)中、Zが単結合を表し、A及びBはいずれもトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、mは0である液晶化合物を少なくとも1種含有し、攪拌開始時以後の製造中の温度を15℃以上50℃以下で行う、液晶状態の液晶組成物の製造方法。
【請求項2】
液晶化合物の内、少なくとも2種の融点が40℃より大きい請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
融点が40℃より大きい化合物の含有量が60%以上である請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
撹拌開始時の温度が15℃以上、40℃以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
撹拌時間が5時間以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
撹拌を不活性ガス雰囲気下で行う請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
撹拌を遊星式撹拌装置、振とう機、ラボミキサー、撹拌プロペラ、シェーカー又はロータリーエバポレーターで行う請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
撹拌を遊星式撹拌装置で行う請求項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の構成部材として有用な液晶組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型あるいは高速応答が可能なFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としても従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、さらに単純マトリックス方式、最近ではアクティブマトリックス方式が実用化されている。
【0003】
これらに用いられる液晶組成物は、通常2種類以上の化合物を混合して作られており、液晶組成物の物性(ネマチック相温度範囲、屈折率異方性(Δn)、誘電率異方性(Δε)、粘度、弾性定数等)や電気光学的特性(応答時間、閾値電圧、V-T曲線の急峻性等)を目的とする液晶素子の表示方式や駆動方式に応じて、種々の値に合わせるため混合比が決められているが、ほとんどの場合について熱、光、水分等に対する信頼性が高いことが必要である。また、特にアクティブマトリックス駆動方式の場合にはそれに加えて、電圧保持率(VHR)が充分に高いことが重要である。液晶組成物の信頼性、比抵抗及び電圧保持率(VHR)を高めるためには、組成物を構成する個々の液晶化合物のそれぞれについて高い信頼性と電圧保持率(VHR)が達成されている必要がある。しかしながら、信頼性、比抵抗および電圧保持率(VHR)の高い液晶化合物を使用しても、それらの混合物である液晶組成物を製造するときに品質を劣化させてしまうことがある。
【0004】
液晶組成物の製造方法としては、加熱による溶解混合や、有機溶剤に液晶化合物を溶解させ混合後、有機溶剤を除去させる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、これらに提案されている方法では、品質を劣化させてしまうことが多い。例えば加熱による溶解混合では、加熱時に酸素により液晶化合物が酸化分解してしまい液晶組成物の比抵抗や電圧保持率(VHR)を著しく低下させてしまう。更には液晶上限転移温度を低下させ、液晶組成物の物性や電気光学特性を変化させてしまうことがある。また有機溶剤に溶解させる方法では、有機溶剤の不純物やドーパントにより液晶組成物の比抵抗や電圧保持率(VHR)が著しく低下することがある。さらに有機溶剤が除去しきれず残留してしまうと同様に液晶組成物の比抵抗を低下させたり、電圧保持率を著しく低下させる原因になる。一方、減圧状態で比較的低温で加熱することによる製造方法も提案されており、低い抵抗値を有する液晶組成物の製造について開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、当該引用文献記載の方法は比較的低い温度で製造が可能ではあるが加熱が必要であり、加熱による悪影響を完全に排除することはできず、加熱に伴う設備も必要である。更に、当該引用文献記載の方法は減圧に伴う大がかりな装置が必要となる問題点を有している。すなわち、減圧しながら液晶化合物を溶解するためには減圧に耐える容器が必要となり、製造装置は必然的に減圧に耐えるよう大がかりなものとなる。又、減圧は一般に真空ポンプを用いることが一般的であるが、真空ポンプに用いられるオイルミストの逆流を防ぐためのトラップ、トラップを冷却するための冷却装置も付随する設備として必要である。このように、減圧下に液晶組成物を製造することは設備の肥大化を招き、増大する液晶組成物の需要に対応するために過大な投資を余儀なくされている。
【0005】
一方、液晶組成物の特性として近年高速応答が強く求められるようになっている。高速応答を実現するためには比較的分子量の小さい液晶化合物を添加することが必要である。減圧下で液晶組成物を調整した場合、比較的分子量の小さい化合物が揮発して製品の組成が変わってしまう。よって、比較的分子量の小さい液晶化合物を含有する液晶組成物の製造には当該引用文献記載の方法は不向きであった。 液体を攪拌するための装置としては、遊星式撹拌装置(特許文献3参照)、振とう機、ラボミキサー、撹拌プロペラ、シェーカー及びロータリーエバポレーター等が知られている。しかしながら、これらの攪拌装置は液体の液晶化合物の攪拌は想定されているが、粉体の液晶化合物の攪拌は想定されていなかった。
【0006】
以上のように、高品位な液晶組成物をより簡素な設備で、効率的に製造する方法の開発が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平5−105876号公報(5頁右欄)
【特許文献2】特開2002−194356号公報(4頁実施例)
【特許文献3】特開平6−71110号公報(請求項3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明が解決しようとする課題は、2種以上の液晶化合物を混合してなる液晶組成物の製造において、製造される液晶組成物の信頼性が高く、効率的に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決について本願発明者らは鋭意検討した結果本願発明の完成に至った。本願発明は、少なくとも1種の融点が40℃より大きい2種以上の液晶化合物を、撹拌又は超音波照射開始時の温度が40℃以下で撹拌又は超音波照射し、外部より加熱することなく行う液晶組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法は、減圧装置、加熱装置等の大がかりな設備を要することなく、信頼性の高い高品位の液晶組成物を製造することが可能である。よって、高い信頼性が求められている液晶組成物の製造に非常に実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明の製造方法は、外部からの加熱手段を使用せずに、撹拌又は超音波照射開始時に40℃以下の温度で行うものであるが、35℃以下の温度で行うことが好ましく、30℃以下で行うことがより好ましい。撹拌又は超音波照射開始時の下限温度には制限はないが、実用上は、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましい。以上より、撹拌又は超音波照射開始時の温度は15℃以上40℃以下で行うことが好ましく、20℃以上40℃以下の温度で行うことがより好ましく、20℃以上35℃以下で行うことが更に好ましく、20℃以上30℃以下で行うことが特に好ましい。
【0012】
本願発明の製造方法は、加熱手段を用いないことに特徴を有する。しかし、製造する液晶組成物の品質を特に重視するため室温より低い温度で製造を行う場合、又は、混合により発熱する場合、撹拌又は超音波の照射により昇温した場合等においては冷却手段を用いて、温度範囲に温度制御を行うことが好ましい。
【0013】
撹拌又は超音波照射開始時以後の製造中の温度は、前述のように上昇することもある。この場合において15℃以上50℃以下で行うことが好ましく、20℃以上45℃以下で行うことがより好ましく、25℃以上40℃以下で行うことが特に好ましい。
【0014】
製造時間に関して特に制限はないが、実用上は5時間以下であることが好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間以下が特に好ましい。又、製造時間が短いと液晶化合物の微粒子が残留するおそれがあるため、製造を攪拌装置による場合には15分以上が好ましく、30以上がより好ましく、超音波の照射によって行う場合には15分以上照射することが好ましく、30分以上照射することがより好ましい。
【0015】
本願発明の製造方法は、低い温度で液晶組成物の製造が可能であるため、通常の大気雰囲気下でも高品位の液晶組成物を製造することが可能である。しかしながら、より高品位の液晶組成物を製造するために、密閉条件下で行うことが好ましく、不活性ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素ガス等が好適に使用できる。
【0016】
製造時における液晶組成物に接する気体は、大気雰囲気下では空気であり、不活性ガス雰囲気下では当該不活性ガスとなる。この場合の気体の圧力は通常の大気圧と同等か又は、弱い加圧下であることが好ましく、具体的には0.95気圧から1.05気圧の範囲が好ましい。
【0017】
本願発明の製造方法に用いる攪拌方法として具体的には、遊星式撹拌装置、振とう機、ラボミキサー、撹拌プロペラ、シェーカー又はロータリーエバポレーター等が使用できる。中でも、遊星式攪拌装置が好ましい。尚、本願発明において遊星式撹拌装置とは、材料の入った容器を自転させながら公転させる方式の撹拌装置を指し、自転・公転式撹拌装置とも呼ばれる。又、遊星式撹拌装置は脱泡機能が付加されることから遊星式撹拌脱泡装置とも呼ばれる。その他には、超音波照射装置が使用できる。
【0018】
本願発明の製造方法で製造する液晶組成物に特に制限はないが、構成する液晶化合物の内、少なくとも1種は融点が40℃より大きいことを要し、液晶化合物の内、少なくとも2種の融点が40℃より大きい液晶組成物の製造により有効であり、少なくとも3種の融点が40℃より大きい液晶組成物に特に有効である。
【0019】
本願発明の製造方法は、融点が40℃より大きい化合物の含有量が多い組成物の製造に効果的である。融点が40℃より大きい化合物の含有量は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0020】
構成される液晶化合物の融点は、40℃以上の化合物が必須であるが、45℃以上の化合物を1種以上含有する液晶組成物の製造に有効であり、50℃以上の化合物1種以上含有する液晶組成物の製造により有効であり、60℃以上の化合物1種以上含有する液晶組成物の製造に特に有効である。
【0021】
本願発明は、製造時に減圧手段を用いないため、減圧下で製造した場合に揮発する比較的分子量の小さい液晶化合物を大量に含有する液晶組成物の製造に有効である。
【0022】
構成される液晶化合物の液晶化合物の分子量としては、300以下の化合物を含有する液晶組成物の製造に有効であり、250以下の化合物を含有する液晶組成物の製造により有効である。
【0023】
本願発明の製造方法において製造される液晶組成物に含有する液晶化合物として、具体的には、一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基又は炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基を表し、A、B及びCは、それぞれ独立的に1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、2又は3-クロロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジクロロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジクロロ-1,4-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、3-メチル-1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、フルオレン-2,7-ジイル基、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基またはピリダジン-2,5-ジイル基を表し、これらの基は更に1〜3のフッ素原子により置換されていてもよく、mは0、1又は2を表し、Z1及びZ2はそれぞれ独立的に単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-を表す。但し、mが2の場合、2個のZ2及びCは、それぞれ独立に同じであっても良く、異なっていても良い。)
中でも、分子量の比較的小さいか又は揮発性の高い化合物を含有する液晶組成物の製造に好適である。具体的には、mが0である化合物を含有する液晶組成物の製造が好ましく、R1及びR2がそれぞれ独立的に炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、A及びBがそれぞれ独立的に1,4-フェニレン基、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、mが0である化合物を含有する液晶組成物の製造がより好ましく、R1及びR2がそれぞれ独立的に炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基であり、A及びBがトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、mが0である化合物を含有する液晶組成物の製造が特に好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではい。
【0027】
実施例において使用したシェーカーはアズワン株式会社 社製 TUBE MIXER MODEL TMSを使用し、遊星式攪拌装置は倉敷紡績株式会社 社製 MAZERUSTAR KK-100を使用した。また、超音波照射装置は東京理化器械株式会社製(EYELA)のMUS-10を用いて行った。
作製した液晶組成物の分析には以下の装置を用いた。
ガスクロマトグラフィー:
HEWLETT PACKARD 社製 HP6890
(実施例1) シェーカーによる液晶組成物の製造
以下の化合物により構成される、液晶組成物(STN1、液晶上限温度135.5℃)の製造を行った。尚、各化合物の使用量と共に融点を示す。
【0028】
【化2】
【0029】
撹拌容器に上記の各液晶化合物を計量した。容器を密閉する際に、チッソガスを封入し容器を密閉する。この容器を室温(25℃)でシェーカーを使用して撹拌した。撹拌を始めてから2時間で液晶化合物が液晶状態に変化した時点で撹拌を終了しネマチック状態のSTN1を100g得た。このときの組成物の温度は40℃以下であった。
【0030】
作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.4×1012Ωcmであった。またガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質は混入・生成しておらず、配合した化合物の分解も見られなかった。液晶組成物の物性を測定したところ所望の特性が得られた。この液晶をSTNパネルに注入し電気光学的特性を測定したところ所望の特性が得られた。本願発明の製造方法は、大がかりな設備を必要とする減圧装置や加熱装置を用いることなく高品質の液晶組成物の製造が可能である。
(比較例1) 加熱による液晶組成物の製造1
実施例1と同じ液晶上限温度135.5℃の液晶組成物(STN1)を特開平5−105876号公報に記載されている方法に従い、大気圧下で加熱することにより製造を行った。フラスコに所定の液晶化合物を計量した。フラスコの中に磁石式回転子を入れ、これを50℃のホットプレートに置き、ホットプレートの温度を5℃/minで145℃に昇温し、回転子を回転させることにより撹拌した。液晶が等方性液体状態に変化し透明になってから30分後ホットプレートの加熱を止め徐々に室温に戻した。フラスコをホットプレートから取り外し、ネマチック液晶状態のSTN1を100g得た。
【0031】
作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.5×10Ωcmと著しく比抵抗が低下していた。比較例1の製造方法は、製造装置は簡便であるが作製した液晶組成物の比抵抗が著しく低下する問題がある。更に、製造した液晶組成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質が数多く出現してしまった。分解生成物を質量分析装置により分析した結果液晶組成物を構成する液晶化合物が酸化分解していることが分かった。液晶上限温度を測定すると134.5℃と低下しており、品質の劣化が大きかった。
(比較例2) 減圧下における液晶組成物の製造1
実施例1と同じ液晶組成物(STN1)を特開2002−194356号公報に記載されている方法に従い製造を行った。
【0032】
なす型フラスコに所定の液晶化合物を計量した。このなす型フラスコをロータリーエバポレータに取り付けた。なす型フラスコを50℃のオイルバスに浸し、回転させた。ロータリーエバポレーターを真空ポンプにより5分かけてゆっくりと20KPaに減圧した。オイルバスの温度を145℃に設定し5℃/minにより昇温した。液晶が液体状態に変化し透明になってから30分後、オイルバスを水浴に変え冷却した。室温まで下がった後、回転を止め、減圧を停止した。フラスコ内をチッソガスに置換することにより大気圧に戻した後、なす型フラスコをロータリーエバポレーターから取り外し、ネマチック液晶状態のSTN1を100g得た。
【0033】
作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.4×1012Ωcmであった。またガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質は混入・生成しておらず、配合した化合物の分解も見られなかった。作製した液晶組成物の物性を測定したところ所望の特性が得られた。この液晶をSTNパネルに注入し電気光学的特性を測定したところ所望の特性が得られた。しかし、比較的分子量の低い化合物の若干の揮発が確認され、組成が変わってしまった。特に、前述の一般式(I)において、R1が炭素原子数5のアルキル基であり、R2が炭素原子数2のアルケニル基であり、A及びBがトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z1が単結合であり、mが0である化合物(STN1における上から4番目の化合物)の組成変化が確認された。
又、製造に大がかりな設備を必要とする減圧装置や加熱装置を用いる必要がある。
(実施例2) 遊星式撹拌装置による液晶組成物の製造
以下の化合物により構成される、液晶組成物(STN2、液晶上限温度101.2℃)の製造を行った。尚、各化合物の使用量と共に融点を示す。
【0034】
【化3】
【0035】
撹拌容器に液晶化合物を計量した。容器を密閉する際に、チッソガスを封入し容器を密閉する。この容器を室温(25℃)で遊星式撹拌装置を使用して撹拌した。撹拌を始めてから60分で液晶化合物が液晶状態に変化した時点で撹拌を終了し、ネマチック状態のSTN2を100g得た。このときの組成物の温度は40℃以下であった。
【0036】
作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.6×1011Ωcmであった。また作製した液晶組成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質は混入・生成しておらず、配合した化合物の分解も見られなかった。液晶組成物の物性を測定したところ所望の特性が得られた。この液晶をSTNパネルに注入し電気光学的特性を測定したところ所望の特性が得られた。
(比較例3) 加熱による液晶組成物の製造2
比較例1と同様の方法により液晶組成物(STN2、液晶上限温度101.2℃)を100g製造した。作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.1×10Ωcmと著しく比抵抗が低下していた。製造した液晶組成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質が数多く出現してしまった。分解生成物を質量分析装置により分析した結果液晶組成物を構成する液晶化合物が酸化分解していることが分かった。又、液晶上限温度を測定すると100.1℃と低下しており、品質の劣化が大きかった。
(比較例4) 減圧下における液晶組成物の製造2
比較例2と同様の方法により液晶組成物(STN2)を100g製造した。作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.6×1011Ωcmであった。またガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質は混入・生成しておらず、配合した化合物の分解も見られなかった。液晶組成物の物性を測定したところ所望の特性が得られた。この液晶をSTNパネルに注入し電気光学的特性を測定したところ所望の特性が得られた。しかし、比較的分子量の低い化合物の若干の揮発が確認され、組成が変わってしまった。比較例2と同様に、前述の一般式(I)において、R1が炭素原子数5のアルキル基であり、R2が炭素原子数2のアルケニル基であり、A及びBがトランス-1,4-シクロヘキシレン基であり、Z1が単結合であり、mが0である化合物(STN2における上から4番目の化合物)の組成変化が確認された。
又、製造に大がかりな設備を必要とする減圧装置や加熱装置を用いる必要である。
(参考例1) 超音波照射装置による液晶組成物の製造1
前述の液晶組成物(STN1、液晶上限温度135.5℃)の製造を行った。
容量200ミリリットルのなす型フラスコに、前記各化合物を記載した量計量した。このなす型フラスコを超音波照射装置にセットし、外部より加熱することなく室温(25℃)で超音波を照射した。60分照射後、超音波の照射を停止した、このときの組成物の温度は40℃以下であった。なす型フラスコを超音波照射装置より取り出し、ネマチック液晶状態のSTN1を100g得た。
【0037】
作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.4×1012Ωcmであった。また作製した液晶組成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質は混入・生成しておらず、配合した化合物の分解も見られなかった。作製した液晶組成物の物性を測定したところ所望の特性が得られた。この液晶をSTNパネルに注入し電気光学的特性を測定したところ所望の特性が得られた。
【0038】
本願発明の製造方法は、大がかりな設備を必要とする減圧装置や加熱装置を用いることなく高品質の液晶組成物の製造が可能である。
(参考例2) 超音波照射装置による液晶組成物の製造2
前述の液晶組成物(STN2、液晶上限温度101.2℃)の製造を行った。
容量200ミリリットルのなす型フラスコに、前記各化合物を記載した量計量した。このなす型フラスコを超音波照射装置にセットし、外部より加熱することなく室温(25℃)で超音波を照射した。60分照射後、超音波の照射を停止した、このときの組成物の温度は40℃以下であった。なす型フラスコを超音波照射装置より取り出し、ネマチック液晶状態のSTN2を100g得た。作製した液晶組成物の比抵抗を測定すると、1.6×1011Ωcmであった。またガスクロマトグラフィーで分析したところ、配合した化合物以外の物質は混入・生成しておらず、配合した化合物の分解も見られなかった。液晶組成物の物性を測定したところ所望の特性が得られた。この液晶をSTNパネルに注入し電気光学的特性を測定したところ所望の特性が得られた。