特許第5847203号(P5847203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5847203Co−Cr−Pt系スパッタリングターゲット及びその製造方法
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  • 特許5847203-Co−Cr−Pt系スパッタリングターゲット及びその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847203
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】Co−Cr−Pt系スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20151224BHJP
   G11B 5/851 20060101ALI20151224BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20151224BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20151224BHJP
   C22C 32/00 20060101ALI20151224BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   G11B5/851
   B22F1/00 M
   B22F1/00 J
   B22F3/00 E
   C22C32/00 P
   C22C19/07 C
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-554209(P2013-554209)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2012082131
(87)【国際公開番号】WO2013108520
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-7950(P2012-7950)
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX日鉱日石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐希
(72)【発明者】
【氏名】荒川 篤俊
(72)【発明者】
【氏名】高見 英生
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐一郎
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−272177(JP,A)
【文献】 特開2011−208169(JP,A)
【文献】 特開2011−175725(JP,A)
【文献】 特開2001−073128(JP,A)
【文献】 特開2012−026452(JP,A)
【文献】 特開2011−216135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
B22F 1/00
B22F 3/00
C22C 19/07
C22C 32/00
G11B 5/851
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成分として、Cr0.5〜45mol%、残余Coを含有し、非金属成分として、Ti酸化物を含む2種以上の酸化物を含有するスパッタリングターゲットにおいて、その組織が、Co中に少なくともTi酸化物を含む酸化物が分散した領域(非Cr系領域:なお、この「非Cr系領域」は、「金属Crを含まない領域」を意味する。以下、同様である。)と、Cr又はCo−Cr中に、Ti酸化物を含まず、Ti酸化物以外の酸化物が分散した領域(Cr系領域)とからなり、前記Cr系領域に前記非Cr系領域が点在していることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
金属成分として、Cr0.5〜30mol%、Pt0.5〜30mol%、残余Coを含有し、非金属成分として、Ti酸化物を含む2種以上の酸化物を含有するスパッタリングターゲットにおいて、その組織が、Co又はCo−Pt中に少なくともTi酸化物を含む酸化物が分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr、Cr−Pt、Co−Cr−Ptのいずれか1種以上の相の中に、Ti酸化物を含まず、Ti酸化物以外の酸化物が分散した領域(Cr系領域)とからなり、前記Cr系領域に前記非Cr系領域が点在していることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記2種以上の酸化物(Ti酸化物を除く)が、B、Mg、Al、Si、Cr、Zr、Nb、Taから選択した1種以上の元素からなる酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
スパッタリングターゲット中における酸化物が、体積比率で20%以上50%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
さらに、金属成分として、B、Cu、Mo、Ru、Ta、Wから選択した1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
金属粉とTi酸化物を含む酸化物粉とを混合した混合粉Aを真空中又は不活性ガス雰囲気中で加圧焼結して焼結体Aを製造し、この焼結体Aを粉砕、篩分して、非Cr系領域に対応する焼結体粉Aを製造する工程と、金属粉とTi酸化物以外の酸化物粉とを混合したCr系領域に対応する混合粉Bを製造する工程と、前記焼結体粉Aと前記混合粉Bとを混合した後、これを真空中又は不活性ガス雰囲気中で加圧焼結してターゲット材となる二次焼結体を製造する工程とからなることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項7】
焼結体粉Aの粒径が20〜200μmであることを特徴とする請求項6記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式HDD(ハードディスクドライブ)における磁気記録媒体のグラニュラー膜を形成するためのスパッタリングターゲットに関し、特に、酸化物が微細分散したCo−Cr−Pt系スパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブに代表される磁気記録の分野では、磁気記録媒体中の磁性薄膜の材料として、強磁性金属であるCo、Fe、あるいはNiをベースとした材料が用いられている。
【0003】
近年実用化された垂直磁気記録方式を採用するハードディスクドライブの磁性薄膜には、Coを主成分とするCo−Cr−Pt系の強磁性合金と非磁性の無機物粒子からなる複合材料が多く用いられている。そして、上記の磁性薄膜は、生産性の高さから、上記材料を成分とする焼結体スパッタリングターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置でスパッタして作製されることが多い。
【0004】
一方、スパッタ装置を用いてスパッタする際、パーティクルが発生するという問題がある。グラニュラー膜を成膜する際に生じるパーティクルの多くは、ターゲット組織中の酸化物に起因することが知られている。近年、ハードディスクドライブは記録密度の向上に伴い、磁気ヘッドの浮上量が小さくなっているため、磁気記録媒体で許容されるパーティクルのサイズや個数は、ますます厳しく制限されるようになった。
【0005】
グラニュラー膜形成用スパッタリングターゲットその製造方法に関して種々の技術が知られている(特許文献1〜4など)。例えば、特許文献1には、ボールミル等で原料粉末を混合、粉砕する際に、予め原料粉末の一部を混合、焼結、粉砕して得た一次焼結体粉末を混合することで、酸化物粒子の凝集を抑制し、ターゲット組織を微細化すると共に、パーティクルの発生を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−208169号公報
【特許文献2】特開2011−174174号公報
【特許文献3】特開2011−175725号公報
【特許文献4】特願2011−5363231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、グラニュラー膜を形成するためのスパッタリングターゲットを製造する際、非磁性酸化物が凝集することがあり、この凝集した酸化物を起点として、スパッタ時にパーティクルが発生することがあった。上記の従来技術では、このようなパーティクル発生を抑制するために、スパッタリングターゲット中の酸化物を母相合金に分散させることが行われていた。
【0008】
しかし、非磁性酸化物として、Ti(チタン)酸化物を使用した場合には、酸化物の凝集の他、Ti酸化物と金属Cr(クロム)とが焼結中に反応して、粗大な複合酸化物粒を形成し、これがパーティクル発生の原因となることがあった。
本発明は、このような問題に鑑み、このような粗大な複合酸化物粒の形成を抑制し、スパッタリングの際、パーティクル発生が少ないグラニュラー膜形成用スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、金属CrとTi酸化物との接触を制限することで、粗大な複合酸化物粒の形成を抑制できることを見出した。そして、このようにして製造されたスパッタリングターゲットは、酸化物が母相合金中に微細分散するためパーティクル発生を低減することが可能になり、成膜時の歩留まりを向上できることを見出した。
【0010】
このような知見に基づき、本発明は、
1)金属成分として、Cr0.5〜45mol%、残余Coを含有し、非金属成分として、Ti酸化物を含む2種以上の酸化物を含有するスパッタリングターゲットにおいて、その組織が、Co中に少なくともTi酸化物を含む酸化物が分散した領域(非Cr系領域:なお、この「非Cr系領域」は、「金属Crを含まない領域」を意味する。以下、同様である。)と、Cr又はCo−Cr中にTi酸化物以外の酸化物が分散した領域(Cr系領域)とからなり、前記Cr系領域に前記非Cr系領域が点在していることを特徴とするスパッタリングターゲット、
2)金属成分として、Cr0.5〜30mol%、Pt0.5〜30mol%、残余Coを含有し、非金属成分として、Ti酸化物を含む2種以上の酸化物を含有するスパッタリングターゲットにおいて、その組織が、Co又はCo−Pt中に少なくともTi酸化物を含む酸化物が分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr、Cr−Pt、Co−Cr−Ptのいずれか1種以上の相の中にTi酸化物以外の酸化物が分散した領域(Cr系領域)とからなり、前記Cr系領域に前記非Cr系領域が点在していることを特徴とするスパッタリングターゲット、
3)前記2種以上の酸化物(Ti酸化物を除く)が、B、Mg、Al、Si、Cr、Zr、Nb、Taから選択した1種以上の元素からなる酸化物であることを特徴とする上記1又は2に記載のスパッタリングターゲット、
4)スパッタリングターゲット中における酸化物が、体積比率で20%以上50%未満であることを特徴とする上記1〜3のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、
5)さらに、金属成分として、B、Cu、Mo、Ru、Ta、Wから選択した1種以上の元素を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、
【0011】
6)金属粉とTi酸化物を含む酸化物粉とを混合した混合粉Aを真空中又は不活性ガス雰囲気中で加圧焼結して焼結体Aを製造し、この焼結体Aを粉砕、篩分して、非Cr系領域に対応する焼結体粉Aを製造する工程と、金属粉とTi酸化物以外の酸化物粉とを混合したCr系領域に対応する混合粉Bを製造する工程と、前記焼結体粉Aと前記混合粉Bとを混合した後、これを真空中又は不活性ガス雰囲気中で加圧焼結してターゲット材となる二次焼結体を製造する工程とからなることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法、
7)焼結体粉Aの粒径が20〜200μmであることを特徴とする上記6記載のスパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のCo−Cr−Pt系スパッタリングターゲットによれば、Ti酸化物と金属Crとの反応を制限することにより、粗大な複合酸化物粒の形成を抑制することができ、酸化物の分散性を向上できるので、スパッタリング時に発生するパーティクル量を低減することができ、成膜時における歩留まりを向上することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例3のターゲットを光学顕微鏡で観察したときの組織画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のスパッタリングターゲットは、金属成分として、Cr0.5〜45mol%、残余Coを含有し、非金属成分として、Ti酸化物を含む2種以上の酸化物を含有し、その組織が、Co中に少なくともTi酸化物を含む酸化物が分散した領域(非Cr系領域)と、Cr又はCo−Cr中にTi酸化物以外の酸化物が分散した領域(Cr系領域)とからなり、前記Cr系領域に前記非Cr系領域が点在していることを特徴とする。
本発明のスパッタリングターゲットは、このように、Ti酸化物と金属Cr(またはCr合金)とが焼結中に反応することがないため、粗大な複合酸化物の形成を制限することができ、その結果これを起点としたパーティクルの発生を抑制することができる。
また、これらの個々の酸化物粒子の面積はパーティクルの発生に影響を与えるので、個々の酸化物粒子の平均面積は2.0μm未満であることが望ましい。
【0015】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、金属成分として、Cr0.5〜30mol%、Pt0.5〜30mol%、残余Coを含有し、非金属成分として、Ti酸化物を含む2種以上の酸化物を含有し、その組織が、Co又はCo−Pt中に少なくともTi酸化物を含む酸化物が分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr、Cr−Pt、Co−Cr−Ptのいずれか1種以上の相の中にTi酸化物以外の酸化物が分散した領域(Cr系領域)とからなり、前記Cr系領域に前記非Cr系領域が点在していることを特徴とする。
Cr系領域は、前記の通りCo−Cr、Cr−Pt、Co−Cr−Ptの3種類が存在するが、これらの1種以上に、Ti酸化物以外の酸化物が分散した状態(組織)を含むものである。本発明のスパッタリングターゲットは、このように、Ti酸化物とCr合金とが焼結中に反応することがないため、粗大な複合酸化物の形成を制限することができる。その結果これを起点としたパーティクルの発生を抑制することができる。
上記と同様に、個々の酸化物粒子の面積はパーティクルの発生に影響を与えるので、個々の酸化物粒子の平均面積は2.0μm未満であることが望ましい。
【0016】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、非金属成分として含有する、2種以上の酸化物(Ti酸化物を除く)がB、Mg、Al、Si、Cr、Zr、Nb、Taから選択した1種以上の元素からなる酸化物であることを特徴とする。これら非磁性酸化物は、Ti酸化物と比べて、金属Cr又はCr合金と反応し難いため、これらの酸化物が金属Cr又はCr合金中に分散していても構わない。
また、本発明のスパッタリングターゲットは、非磁性成分の酸化物がスパッタリングターゲット中、体積比率で20%以上50%未満であることを特徴とする。非磁性酸化物の体積比率が20%以上50%未満であれば、良好な磁気特性が得られる。
【0017】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、金属成分として、B、Cu、Mo、Ru、Ta、Wから選択した1種以上の元素を含有することを特徴とする。これらの金属成分は、所望する磁気特性に合わせて、適宜添加することができる。
なお、金属成分としてBを添加した場合、ターゲット組成によっては、Bが、焼結中に他の酸化物を還元して、Bを形成する場合があるが、そのような場合は量的に無視できる程度である。したがって、ターゲット中に存在するBは、金属成分として添加したBに由来し、ターゲット中に存在するBは、酸化物として添加したBに由来すると考えても差し支えない。
【0018】
本発明のスパッタリングターゲットは、以下の方法によって製造することができる。
例えば、金属粉として、Co粉末、Cr粉末、Pt粉末、を用意し、酸化物粉として、TiO粉末、SiO粉末、を用意し、これらの原料粉のうち、Cr粉末以外の金属粉(Co粉末、Pt粉末)と、少なくともTiO粉末を含む酸化物粉とを混合することにより、混合粉(混合粉A)を得る。このように、本発明は、金属Cr又はCr合金と反応しやすいTi酸化物とCr以外の金属とを事前に混合し、反応させておくことが重要である。ここで、混合粉Aとは、金属成分として、Cr以外(Co、Pt)の粉末と、非金属成分として、少なくともTi酸化物を含む酸化物粉末とを、混合した粉末をいう。
【0019】
次に、得られた混合粉(混合粉A)を真空中又は不活性ガス雰囲気中で、加圧焼結して焼結体(焼結体A)を製造し、この焼結体を粉砕、篩分して、非Cr系領域に対応する焼結体粉(焼結体粉A)を製造する。ここで、焼結体粉Aとは、金属成分として、Cr以外(Co、Pt)の粉末と、非金属成分として、少なくともTi酸化物を含む酸化物粉末とを、混合、焼結した後、その焼結体を粉砕、篩分けした粉末をいう。
このとき、焼結体粉Aの粒径は20〜200μmであることが好ましい。粒径が20μm未満であると、非Cr領域とCr領域の接触面積が大きくなるため、焼結中に金属Cr又はCr合金とTi酸化物の反応が抑制されにくい。一方、200μmを超えると、スパッタした際、均一な組成を有するスパッタ膜が得られない恐れがあるためである。
【0020】
次に、Cr粉末とTiO粉末以外の酸化物粉(SiO粉末)とを混合することにより、Cr系領域に対応する混合粉(混合粉B)を得る。ここで、混合粉Bとは、金属成分として、少なくともCrを含む粉末と、非金属成分として、Ti酸化物以外の酸化物粉末とを、混合した粉末をいう。
【0021】
次に、焼結体粉Aと混合粉Bとを混合した後、この混合粉を真空中又は不活性ガス雰囲気中で加圧焼結して、ターゲット素材となる二次焼結体を製造することができる。このようにして得られた二次焼結体を、所望の形状に加工することにより、本発明のスパッタリングターゲットを製造することができる。
【0022】
以上により、Ti酸化物と金属Cr又はCr合金との反応による粗大な複合酸化物粒の形成がなく、酸化物が均一に微細分散したCo−Cr−Pt系スパッタリングターゲットを作製することができる、このようにして製造した本発明のスパッタリングターゲットは、グラニュラー構造の磁性薄膜の成膜に使用するスパッタリングターゲットとして有用である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0024】
(実施例1)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各1600g秤量した。
(混合粉A):90.5Co−9.5TiO(mol%)
(混合粉B):72.36Co−20.73Cr−6.91SiO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが50μmと150μmの篩を用いて篩分し、粒径が50〜150μmの焼結体粉Aを得た。
【0025】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを726.7g、混合粉Bを944.1gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):80Co−12Cr−4TiO−4SiO(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1050℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.2%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0026】
実施例1のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co中にTiOが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr合金中にSiOが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.1μmであった。
【0027】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は5個であった。
【0028】
(比較例1)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末を用意した。次に、これらの粉末をスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、合計で1670.7g秤量した。
(ターゲット組成):80Co−12Cr−4TiO−4SiO(mol%)
そして秤量した粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。このようにして得た混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1050℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.5%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0029】
比較例1のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Cr合金中にTiOとSiOが分散していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.1μmと、実施例1に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0030】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は13個と実施例1に比べて、パーティクル数が多かった。
【0031】
(実施例2)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):68.15Co−22.29Pt−4.78TiO−4.78Cr(mol%)
(混合粉B):59.68Co−32.26Cr−8.06SiO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0032】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを1550.6g、混合粉Bを550.6gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−14Pt−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度97.9%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0033】
実施例2のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Pt中にTiOとCrが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr合金中にSiOが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.4μmであった。
【0034】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は3個であった。
【0035】
(実施例3)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):81.76Co−9.12Pt−4.56TiO−4.56Cr(mol%)
(混合粉B):32.75Co−35.09Cr−23.39Pt−8.77SiO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0036】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを1312.0g、混合粉Bを788.0gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−14Pt−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度97.6%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0037】
実施例3のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Pt中にTiOとCrが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr−Pt合金中にSiOが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。実施例3のターゲットの組織写真を、図1に示す。図1において、太枠内がCo−Pt−TiO−Cr(非Cr系領域)であり、太枠外がCo−Cr−Pt−SiO(Cr系領域)である。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.5μmであった。
【0038】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は2個であった。
【0039】
(比較例2)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。次に、これらの粉末をスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、合計で2100.0g秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−14Pt−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。このようにして得た混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.6%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0040】
比較例2のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Cr−Pt合金中にTiOとSiOとCrが分散していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.3μmと、実施例2、3に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0041】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は15個と実施例2、3に比べて、パーティクル数が多かった。
【0042】
(比較例3)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):81.76Co−9.12Pt−4.56TiO−4.56Cr(mol%)
(混合粉B):32.75Co−35.09Cr−23.39Pt−8.77SiO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、気流分級機を用いて分級し、平均粒径が18μmの焼結体粉Aを得た。
【0043】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを1312.0g、混合粉Bを788.0gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−14Pt−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度97.6%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0044】
比較例3のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Pt中にTiOとCrが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr−Pt合金中にSiOが分散した領域(Cr系領域)とが、明確に分離して確認できない組織になっていた。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.1μmであった。実施例2、3に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0045】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は10個と実施例2、3に比べて、パーティクル数が多かった。
【0046】
(比較例4)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):75.34Co−16.44Pt−4.11SiO−4.11Cr(mol%)
(混合粉B):37.04Co−44.44Cr−7.41Pt−11.11TiO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0047】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを1619.9g、混合粉Bを480.1gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−14Pt−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.1%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0048】
比較例4のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Pt中にSiOとCrが分散した領域と、Co−Cr−Pt合金中にTiOが分散した領域とを有し、Co−Pt中にSiOとCrが分散した領域がCo−Cr−Pt合金中にTiOが分散した領域中に点在していることを確認した。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.6μmであった。実施例2、3に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0049】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は18個と実施例2、3に比べて、パーティクル数が多かった。
【0050】
(実施例4)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末、平均粒径10μmのB粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):80.96Co−9.52Pt−9.52TiO(mol%)
(混合粉B):53.45Co−20.69Cr−13.79Pt−5.17B−6.9SiO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0051】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを1217.8g、混合粉Bを882.2gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−12Pt−3B−4TiO−4SiO(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度96.5%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0052】
実施例4のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Pt中にTiOが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr−Pt−B合金中にSiOが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.8μmであった。
【0053】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は6個であった。
【0054】
(比較例5)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末、平均粒径10μmのB粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末を用意した。次に、これらの粉末をスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、合計で2100.0g秤量した。
(ターゲット組成):65Co−12Cr−12Pt−3B−4TiO−4SiO(mol%)
そして秤量した粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。このようにして得た混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度96.2%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0055】
比較例5のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Cr−Pt−B合金中にTiOとSiOが分散していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.5μmと、実施例4に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0056】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は19個と実施例4に比べて、パーティクル数が多かった。
【0057】
(実施例5)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末、平均粒径10μmのRu粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):89.29Co−10.71TiO(mol%)
(混合粉B):54.16Co−16.67Cr−13.89Pt−6.94Ru−4.17SiO−4.17Cr(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0058】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを465.5g、混合粉Bを1634.5gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):64Co−12Cr−10Pt−5Ru−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.8%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0059】
実施例5のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co中にTiOが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr−Pt−Ru合金中にSiOとCrが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.1μmであった。
【0060】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は2個であった。
【0061】
(比較例6)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末、平均粒径10μmのRu粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのCr粉末を用意した。次に、これらの粉末をスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、合計で2100.0g秤量した。
(ターゲット組成):64Co−12Cr−10Pt−5Ru−3TiO−3SiO−3Cr(mol%)
そして秤量した粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。このようにして得た混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1100℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.9%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0062】
比較例6のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Cr−Pt−Ru合金中にTiOとSiOとCrが分散していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.0μmと、実施例5に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0063】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は12個と実施例5に比べて、パーティクル数が多かった。
【0064】
(実施例6)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径10μmのB粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):89.29Co−10.71TiO(mol%)
(混合粉B):61.11Co−16.67Cr−13.89Pt−4.17SiO−4.17B(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0065】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを471.4g、混合粉Bを1528.6gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):69Co−12Cr−10Pt−3TiO−3SiO−3B(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度850℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.3%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0066】
実施例6のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co中にTiOが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr−Pt合金中にSiOとBが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.9μmであった。
【0067】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は6個であった。
【0068】
(比較例7)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径10μmのB粉末を用意した。次に、これらの粉末をスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、合計で2000.0g秤量した。
(ターゲット組成):69Co−12Cr−10Pt−3TiO−3SiO−3B(mol%)
そして秤量した粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。このようにして得た混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度850℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.7%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0069】
比較例7のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Cr−Pt合金中にTiOとSiOとBが分散していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、3.1μmと、実施例6に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0070】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は18個と実施例6に比べて、パーティクル数が多かった。
【0071】
(実施例7)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのMnO粉末を用意した。そして、混合粉Aと混合粉Bを作製するために、それぞれ以下の組成比で各2000g秤量した。
(混合粉A):89.29Co−10.71TiO(mol%)
(混合粉B):61.10Co−16.67Cr−13.89Pt−2.78SiO−5.56MnO(mol%)
そして秤量した粉末をそれぞれ粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。その後、混合粉Aのみをカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度1000℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件で、ホットプレスして焼結体(焼結体A)を得た。その後、この焼結体をジョークラッシャーと石臼型粉砕機を用いて粉砕した後、目開きが38μmと106μmの篩を用いて篩分し、粒径が38〜106μmの焼結体粉Aを得た。
【0072】
次に焼結体粉Aと混合粉Bとをスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、焼結体粉Aを470.2g、混合粉Bを1529.8gそれぞれ秤量した。
(ターゲット組成):69Co−12Cr−10Pt−3TiO−2SiO−4MnO(mol%)
そして秤量した粉末をボール容量約7リットルの遊星運動型ミキサーに投入し、20分間混合して、二次焼結体作製用の混合粉を得た。このようにして得た二次焼結体作製用の混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度950℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.2%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0073】
実施例7のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co中にTiOが分散した領域(非Cr系領域)と、Co−Cr−Pt合金中にSiOとMnOが分散した領域(Cr系領域)とを有し、非Cr系領域がCr系領域中に点在していることを確認した。
さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、1.6μmであった。
【0074】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は6個であった。
【0075】
(比較例8)
金属原料粉末として、平均粒径3μmのCo粉末、平均粒径5μmのCr粉末、平均粒径2μmのPt粉末を用意し、酸化物原料粉末として、平均粒径1μmのTiO粉末、平均粒径1μmのSiO粉末、平均粒径3μmのMnO粉末を用意した。次に、これらの粉末をスパッタリングターゲット全体の組成が下記の組成比となるように、合計で2000.0g秤量した。
(ターゲット組成):69Co−12Cr−10Pt−3TiO−2SiO−4MnO(mol%)
そして秤量した粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。このようにして得た混合粉をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中、温度950℃、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件でホットプレスして、相対密度98.7%の焼結体を得た。さらに、この焼結体を旋盤で切削加工して、直径が180mm、厚さ5mmの円盤状のスパッタリングターゲットを得た。
【0076】
比較例8のスパッタリングターゲットの組織を観察したところ、Co−Cr−Pt合金中にTiOとSiOとMnOが分散していることを確認した。さらに、ターゲット組織面上の任意に選んだ8箇所において、100μm×75μmの視野サイズでターゲット研磨面の組織を撮影し、その撮影された組織写真を画像処理ソフトで二値化し、酸化物一粒子当たりの平均面積を求めたところ、2.9μmと、実施例6に比べて酸化物が粗大化するという結果になった。
【0077】
次に、このターゲットをDCマグネトロンスパッタ装置に取り付けてスパッタリングを行った。スパッタ条件は、スパッタパワー1kw、Arガス圧1.5Paとし、2kWhrのプレ・スパッタを実施した後、4インチ径のシリコン基板上へ目標膜厚1000nmでスパッタした。そして、基板上へ付着したパーティクルの個数をパーティクルカウンタで測定した。その結果、シリコン基板上のパーティクル数は13個と実施例6に比べて、パーティクル数が多かった。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1〜7のいずれにおいても、個々の酸化物粒子の平均面積は2.0μm未満であり、酸化物が微細に分散していることが確認された。こうした組織構造が、スパッタリング時に発生するパーティクル量を抑制し、成膜時の歩留まりを向上ために非常に重要な役割を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のスパッタリングターゲット及びその製造方法は、粗大な複合酸化物粒の形成を抑制し、酸化物の分散性を向上することができるので、スパッタリング時に発生するパーティクル量を低減することを可能にし、成膜時の歩留まりを向上することができるという優れた効果を有する。したがって、グラニュラー膜を形成するためのスパッタリングターゲットとして有用である。
図1