【実施例】
【0029】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術的思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0030】
(実施例1)
平均粒径5μmの酸化亜鉛、酸化ガリウム(Ga
2O
3)及び添加金属MとしてCu(平均粒径10μm)の各原料粉末を、94.9:5.0:0.1(wt%)となるように秤量し、更に平均粒径1μmのカーボン粉末を、全量に対して150wtppmとなるように追加して乾式のボールミルで約10時間混合した。
【0031】
次に、直径170φmmのダイスに混合した原料分を1000g充填し、アルゴン(Ar)ガスをフローさせながら、室温から5°C/minで温度を上昇させ、1000°Cになった後、30分間そのまま保持してから、圧力を300kgf/cm
2まで30分間かけて加圧した。
その後、1000°C、圧力300kgf/cm
2の状態を2時間保持した後、炉の加熱を止め、圧力を300kgf/cm
2〜0kgf/cm
2まで30分間かけて下げていった。炉から取り出したターゲットは直径152mm、厚み5mmの円盤状の形状に加工し、スパッタリングターゲットとした。
【0032】
出来たターゲットは割れなどの問題も無く、その成分を分析したところ、カーボンは一部が焼結中に還元され50wtppmとなり、全金属原子に対する金属M(Cu)の濃度が0.1原子%、亜鉛とGaと酸素の原子数の合計に対するGa濃度が2.2原子%であった。又、焼結体中の金属M(Cu)の粒子の中心付近で95質量%以上の金属M(Cu)が存在し、酸素は3質量%以下となったので、添加金属M(Cu)の残留を確認した。
ターゲットの一部、10mmΦ×1mmtのサンプルを加工してレーザーフラッシュ法で熱伝導率を測定したところ、42W/mKであった。また、ターゲット表面の抵抗率を4端子法で測定したところ、500μΩ・cmであった。
【0033】
得られたターゲットを直径4インチ厚み0.7mmのコーニング#1737ガラスを基板として、Ar雰囲気0.5Pa、Ar流量50sccm、スパッタパワー500Wとして、膜厚が約1000nmとなるように成膜時間を調整してスパッタ成膜を行った。さらにそのサンプル上に、Moを同条件で100nm成膜した。得られた膜を10mm角程度に調整し、熱物性顕微鏡で熱浸透率を測定したところ、1700(J/s
0.5m
2K)であった。以上の結果を、表1に示す。
【0034】
(実施例2)
平均粒径5μmの酸化亜鉛、酸化アルミニウム(Al
2O
3)及び添加金属MとしてCo(平均粒径10μm)の各原料粉末を、94:1:5(wt%)となるように秤量し、更に平均粒径1μmのカーボン粉末を、全量に対して500wtppmとなるように追加して乾式のボールミルで約10時間混合した。
【0035】
次に、直径170φmmのダイスに混合した原料分を1000g充填し、アルゴン(Ar)ガスをフローさせながら、室温から5°C/minで温度を上昇させ、1000°Cになった後、30分間そのまま保持してから、圧力を300kgf/cm
2まで30分間かけて加圧した。
その後、1000°C、圧力300kgf/cm
2の状態を2時間保持した後、炉の加熱を止め、圧力を300kgf/cm
2〜0kgf/cm
2まで30分間かけて下げていった。炉から取り出したターゲットは直径152mm、厚み5mmの円盤状の形状に加工し、スパッタリングターゲットとした。
【0036】
出来たターゲットは割れなどの問題も無く、その成分を分析したところ、カーボンは一部が焼結中に還元され280wtppmとなり、全金属原子に対する金属M(Co)の濃度が6.7原子%、亜鉛とAlと酸素の原子数の合計に対するAl濃度が0.8原子%であった。実施例1同様に、添加金属M(Co)の残留を確認した。
ターゲットの一部、10mmΦ×1mmtのサンプルを加工してレーザーフラッシュ法で熱伝導率を測定したところ、45W/mKであった。また、ターゲット表面の抵抗率を4端子法で測定したところ、400μΩ・cmであった。
【0037】
得られたターゲットを直径4インチ厚み0.7mmのコーニング#1737ガラスを基板として、Ar雰囲気0.5Pa、Ar流量50sccm、スパッタパワー500Wとして、膜厚が約1000nmとなるように成膜時間を調整してスパッタ成膜を行った。さらにそのサンプル上に、Moを同条件で100nm成膜した。得られた膜を10mm角程度に調整し、熱物性顕微鏡で熱浸透率を測定したところ、2000(J/s
0.5m
2K)であった。以上の結果を、表1に示す。
【0038】
(実施例3)
平均粒径5μmの酸化亜鉛、酸化ガリウム(Ga
2O
3)及び添加金属MとしてNi(平均粒径10μm)の各原料粉末を、77:4:19(wt%)となるように秤量し、更に平均粒径1μmのカーボン粉末を、全量に対して100wtppmとなるように追加して乾式のボールミルで約10時間混合した。
【0039】
次に、直径170φmmのダイスに混合した原料分を1000g充填し、アルゴン(Ar)ガスをフローさせながら、室温から5°C/minで温度を上昇させ、1000°Cになった後、30分間そのまま保持してから、圧力を300kgf/cm
2まで30分間かけて加圧した。
その後、1000°C、圧力300kgf/cm
2の状態を2時間保持した後、炉の加熱を止め、圧力を300kgf/cm
2〜0kgf/cm
2まで30分間かけて下げていった。炉から取り出したターゲットは直径152mm、厚み5mmの円盤状の形状に加工し、スパッタリングターゲットとした。
【0040】
出来たターゲットは割れなどの問題も無く、その成分を分析したところ、カーボンは30wtppm、全金属原子に対する金属M(Ni)の濃度が24.7原子%、亜鉛とGaと酸素の原子数の合計に対するGa濃度が2.1原子%であった。実施例1同様に、添加金属M(Ni)の残留を確認した。
ターゲットの一部、10mmΦ×1mmtのサンプルを加工してレーザーフラッシュ法で熱伝導率を測定したところ、55W/mKであった。また、ターゲット表面の抵抗率を4端子法で測定したところ、200μΩ・cmであった。
【0041】
得られたターゲットを直径4インチ厚み0.7mmのコーニング#1737ガラスを基板として、Ar雰囲気0.5Pa、Ar流量50sccm、スパッタパワー500Wとして、膜厚が約1000nmとなるように成膜時間を調整してスパッタ成膜を行った。さらにそのサンプル上に、Moを同条件で100nm成膜した。得られた膜を10mm角程度に調整し、熱物性顕微鏡で熱浸透率を測定したところ、2500(J/s
0.5m
2K)であった。以上の結果を、表1に示す。
【0042】
(実施例4)
平均粒径5μmの酸化亜鉛、酸化ボロン(B
2O
3)及び添加金属MとしてCo(平均粒径10μm)の各原料粉末を、95:2:3(wt%)となるように秤量し、更に平均粒径1μmのカーボン粉末を、全量に対して150wtppmとなるように追加して乾式のボールミルで約10時間混合した。
【0043】
次に、直径170φmmのダイスに混合した原料分を1000g充填し、アルゴン(Ar)ガスをフローさせながら、室温から5°C/minで温度を上昇させ、1000°Cになった後、30分間そのまま保持してから、圧力を300kgf/cm
2まで30分間かけて加圧した。
その後、1000°C、圧力300kgf/cm
2の状態を2時間保持した後、炉の加熱を止め、圧力を300kgf/cm
2〜0kgf/cm
2まで30分間かけて下げていった。炉から取り出したターゲットは直径152mm、厚み5mmの円盤状の形状に加工し、スパッタリングターゲットとした。
【0044】
出来たターゲットは割れなどの問題も無く、その成分を分析したところ、カーボンは一部が焼結中に還元され50wtppmとなり、全金属原子に対する金属M(Co)の濃度が4.0原子%、亜鉛とBと酸素の原子数の合計に対するB濃度が2.3原子%であった。実施例1同様に、添加金属M(Co)の残留を確認した。
ターゲットの一部、10mmΦ×1mmtのサンプルを加工してレーザーフラッシュ法で熱伝導率を測定したところ、43W/mKであった。また、ターゲット表面の抵抗率を4端子法で測定したところ、600μΩ・cmであった。
【0045】
得られたターゲットを直径4インチ厚み0.7mmのコーニング#1737ガラスを基板として、Ar雰囲気0.5Pa、Ar流量50sccm、スパッタパワー500Wとして、膜厚が約1000nmとなるように成膜時間を調整してスパッタ成膜を行った。さらにそのサンプル上に、Moを同条件で100nm成膜した。得られた膜を10mm角程度に調整し、熱物性顕微鏡で熱浸透率を測定したところ、1900(J/s
0.5m
2K)であった。以上の結果を、表1に示す。
【0046】
(比較例1)
平均粒径5μmの酸化亜鉛と酸化アルミニウム(Al
2O
3)(平均粒径10μm)の各原料粉末を、99:1(wt%)となるように秤量し、乾式のボールミルで約10時間混合した。この場合、金属Mは添加しなかった。
【0047】
次に、直径170φmmのダイスに混合した原料分を1000g充填し、アルゴン(Ar)ガスをフローさせながら、室温から5°C/minで温度を上昇させ、1000°Cになった後、30分間そのまま保持してから、圧力を300kgf/cm
2まで30分間かけて加圧した。
その後、1000°C、圧力300kgf/cm
2の状態を2時間保持した後、炉の加熱を止め、圧力を300kgf/cm
2〜0kgf/cm
2まで30分間かけて下げていった。炉から取り出したターゲットは直径152mm、厚み5mmの円盤状の形状に加工し、スパッタリングターゲットとした。
【0048】
その成分を分析したところ、全金属原子に対する金属Mの濃度は0原子%、亜鉛とAlと酸素の原子数の合計に対するAl濃度が0.8原子%であった。
ターゲットの一部、10mmΦ×1mmtのサンプルを加工してレーザーフラッシュ法で熱伝導率を測定したところ、40W/mKであり、実施例に比べて低下した。また、ターゲット表面の抵抗率を4端子法で測定したところ、500μΩ・cmであった。
【0049】
得られたターゲットを直径4インチ厚み0.7mmのコーニング#1737ガラスを基板として、Ar雰囲気0.5Pa、Ar流量50sccm、スパッタパワー500Wとして、膜厚が約1000nmとなるように成膜時間を調整してスパッタ成膜を行った。さらにそのサンプル上に、Moを同条件で100nm成膜した。得られた膜を10mm角程度に調整し、熱物性顕微鏡で熱浸透率を測定したところ、1400(J/s
0.5m
2K)となり、実施例に比較して低下した。以上の結果を、表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
以上に示したように、n型ドーパントがGaであってもAlであってもBであっても、本願発明で規定した金属(M)を所定濃度範囲添加することで、酸化亜鉛系薄膜の熱浸透率を向上することができた。これは、本願発明の大きな特徴の一つである。なお、本願の特許請求の範囲で規定する他の金属元素Mについては、特に実施例を示さないが、上記実施例と同様の効果を発揮することを確認した。
また、上記実施例1〜4は、代表的な成分組成の実験データに基づくものであるが、本願の特許請求の範囲に規定する成分組成の範囲であれば、実施例1〜4と同様の効果が得られることを、多数の実験で確認している。