(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定すると共に、前記測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定し、前記第1の藻場候補領域と前記第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域と推定することを特徴とする藻場分布測定方法。
前記測定水深zの変化に基づき海藻による影響量zaを求めると共に、前記測定対象水域内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と前記海藻による影響量zaとの相関関係を求めて前記藻場域の繁茂量を推定することを特徴とする請求項1記載の藻場分布測定方法。
測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定する第1の藻場候補領域決定手段と、前記測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定する第2の藻場候補領域決定手段と、前記第1の藻場候補領域と前記第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域とする藻場域推定手段を備えることを特徴とする藻場分布測定装置。
前記測定対象水域内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と前記測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて前記藻場域の繁茂量を推定する繁茂量推定手段を備えることを特徴とする請求項3記載の藻場分布測定装置。
少なくとも、測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定する手段と、前記測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定する手段と、前記第1の藻場候補領域と前記第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域とする手段としてコンピュータを機能させるための藻場分布測定用プログラム。
更に、前記測定対象水域内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と前記測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて前記藻場域の繁茂量を推定する手段としてコンピュータを機能させるための請求項5記載の藻場分布測定用プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の音波を使用した手法では、音波の吸収・散乱が藻場以外によっても生じることがあり、その場合には藻場との判別が困難で測定精度に劣る。また、後者の画像による手法では、人手による長時間の画像・映像観察が必要であり、測定に手間と時間がかかる。
【0006】
本発明は、簡便且つ精確に測定することができる藻場分布測定方法、藻場分布測定装置、藻場分布測定用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の藻場分布測定方法は、測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定すると共に、測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定し、第1の藻場候補領域と第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域と推定するものである。
【0008】
また、請求項2記載の藻場分布測定方法は、測定水深zの変化に基づき海藻による影響量zaを求めると共に、測定対象水域内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と海藻による影響量zaとの相関関係を求めて藻場域の繁茂量を推定するものである。
【0009】
また、請求項3記載の藻場分布測定装置は、測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定する第1の藻場候補領域決定手段と、測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定する第2の藻場候補領域決定手段と、第1の藻場候補領域と第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域とするものである。
【0010】
また、請求項4記載の藻場分布測定装置は、測定対象水域内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて藻場域の繁茂量を推定する繁茂量推定手段を備えるものである。
【0011】
また、請求項5記載の藻場分布測定用プログラムは、少なくとも、測定対象水域の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域を決定する手段と、測定対象水域について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域を決定する手段と、第1の藻場候補領域と第2の藻場候補領域とを対比して両者の一致した領域を藻場域とする手段としてコンピュータを機能させるものである。
【0012】
さらに、請求項6記載の藻場分布測定用プログラムは、更に、測定対象水域内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて藻場域の繁茂量を推定する手段としてコンピュータを機能させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、空撮カラー画像に基づいて決定された第1の藻場候補領域と音響水深探査に基づいて決定された第2の藻場候補領域との両者を合わせて藻場域を推定するので、空撮カラー画像による場合の測定誤差と音響水深探査による場合の測定誤差とを打ち消すことができて、測定精度を向上させることができる。また、水中で撮影した画像・映像を観察する場合のような手間と時間が不要であり、簡便に測定することができる。
【0014】
また、本発明は、藻場域の繁茂量を簡易且つ高精度に推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1〜
図3に、本発明の第1の実施形態を示す。藻場分布測定装置は、測定対象水域1の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域2を決定する第1の藻場候補領域決定手段3と、測定対象水域1について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域4を決定する第2の藻場候補領域決定手段5と、第1の藻場候補領域2と第2の藻場候補領域4とを対比して両者の一致した領域を藻場域6とする藻場域推定手段7を備えるものである。また、藻場分布測定装置は、本発明の藻場分布測定用プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、藻場分布測定用プログラム(以下、単に測定用プログラムという)をコンピュータ上で実行する場合を例に説明する。
【0018】
測定用プログラムを実行するための本実施形態の藻場分布測定装置の全体構成を
図3に示す。藻場分布測定装置は、制御部8、記憶部9、入力部10、表示部11、接続部12を備え、これらは相互にバス等の信号回路13により接続されている。
【0019】
制御部8は記憶部9に記憶されている測定用プログラムによって藻場分布測定装置全体の制御や藻場域6の推定等に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。記憶部9は少なくともデータやプログラム等を記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
【0020】
入力部10は少なくとも作業者の命令等を制御部8等に与えるためのものであり、例えばキーボード、マウスである。表示部11は制御部8の制御により表示・描画等を行うものであり、例えばディスプレイである。接続部12は外部機器類を接続するためのインターフェースであり、例えばUSBポート、カードスロットである。
【0021】
制御部8には、測定用プログラムを実行することにより、測定対象水域1の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域2を決定する手段としての第1の藻場候補領域決定部(第1の藻場候補領域決定手段)3、測定対象水域1について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域4を決定する手段としての第2の藻場候補領域決定部(第2の藻場候補領域決定手段)5、第1の藻場候補領域2と第2の藻場候補領域4とを対比して両者の一致した領域を藻場域6とする手段としての藻場域推定部7(藻場域推定手段7)が構成される。また、本実施形態では、空撮カラー画像と音響水深探査の測定データとの位置合わせを行う位置合わせ処理部14も構成される。
【0022】
本実施形態では、測定対象水域1の空撮カラー画像を撮影する撮影装置15として、任意の時間間隔で自動的に撮影可能な、あるいは地上の操作者が遠隔操作で撮影可能な、独立電源式のデジタルカメラを使用するが、これに限られない。また、空撮を行うための手段として、例えば、気球あるいはラジコン操作可能な飛行装置(ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター等)を使用する。撮影装置15を搭載した飛行装置を測定対象水域1の上空に飛ばし、撮影を行う。使用する空撮カラー画像は、測定対象水域1を複数枚に分割して撮影したものを1枚の画像に合成して使用しても良いし、測定対象水域1全体を1枚に撮影した画像を使用しても良い。
【0023】
空撮カラー画像には位置情報目印が写し込まれている。本実施形態では、測定対象水域1の複数箇所に浮かべたブイを位置情報目印としている。各ブイにはGPS装置等の位置測定装置が設置されており、係留位置の精確な測定が可能である。また、位置情報目印は4箇所以上設けることが好ましい。位置情報目印を4箇所以上設けることで、撮影した画像の傾き補正が容易になる。ただし、傾き補正が不要な場合等には2箇所又は3箇所でも良い。また、ブイ以外のものを位置情報目印として使用しても良い。
【0024】
空撮カラー画像は測定対象水域1を真上から撮影したものであることが好ましいが、測定対象水域1の水面に対して撮影装置15のレンズを平行にした状態での撮影を保証できないので、撮影後の画像に写し込まれた位置情報目印を利用して傾き補正が行われる。傾き補正は、例えば市販のソフトウエアを利用して行われる。傾き補正後の空撮カラー画像のデータは接続部12から藻場分布測定装置に供給され、記憶部9に記憶される。
【0025】
なお、ここでの空撮カラー画像には、衛生画像も含まれる。
【0026】
音響水深探査は、音響水深探査機器16と例えばGPS装置等の位置測定装置を搭載した測定船を測定対象水域1に航行させて行われる。音響水深探査機器16としては、例えば魚群探知機が使用可能であるが、これに限られない。測定船は有人のものでも良いし、無人で遠隔操作されるものでも良い。測定船を測定対象水域1に対して縦横に航行させながら測定し、測定対象水域1の測定水深zの2次元分布図を作成する。測定データ(2次元分布図)は接続部12から藻場分布測定装置に供給され、記憶部9に記憶される。
【0027】
次に、藻場分布測定方法について説明する。この藻場分布測定方法は、例えば
図2に示すように、測定対象水域1の空撮カラー画像中の画素のg成分強度の優位性に基づいて第1の藻場候補領域2を決定する(ステップS32)と共に、測定対象水域1について行った音響水深探査の測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域4を決定し(ステップS33)、第1の藻場候補領域2と第2の藻場候補領域4とを対比して両者の一致した領域を藻場域6と推定する(ステップS34)ものである。
【0028】
先ず最初に、空撮カラー画像と音響水深探査の測定データとの位置合わせを行う(ステップS31)。位置合わせは、位置合わせ処理部14が記憶部9に記憶されている空撮カラー画像データと音響水深探査の測定データを読み込んで実行する。
【0029】
位置合わせには、例えば空撮カラー画像中に写し込まれた位置情報目印を利用する。音響水深探査で作成した2次元分布図について、空撮カラー画像中の位置情報目印に対応する位置(座標x、y)を決定し、決定した位置の座標と空撮カラー画像中の位置情報目印の位置座標を合わせることで、空撮カラー画像と音響水深探査の2次元分布図とを位置合わせする。そして、音響水深探査で信号波の送受信を行った位置の座標(測定座標(x、y))における空撮カラー画像の画素のRGB信号(r、g、b)と音響水深探査の2次元分布図の測定水深zを求める。
【0030】
なお、ここでは説明の理解を容易にするために、音響水深探査では格子状に測定船を航行させており且つ一定間隔で信号波の送受信を行ったものとして、即ち測定座標(x、y)のx座標が1,2,3,…、y座標が1,2,3,…として説明する。測定座標(x、y)で示される位置の実際の間隔は、測定船の速度や測定波の送信間隔等にもよるが、例えば0.5m〜1.0m程度になる。
【0031】
次に、測定対象水域1の空撮カラー画像に基づいて第1の藻場候補領域2を決定する(ステップS32)。第1の藻場候補領域2の決定は第1の藻場候補領域決定部3が行う。空撮カラー画像では藻場は緑系の色で写るため、その領域の画素のRGB信号はg(緑)成分強度がb(青)成分強度やr(赤)成分強度よりも優位(大きく)になる。各測定座標(x、y)の画素についてRGB信号のg成分強度がb成分強度及びr成分強度よりも優位の測定座標(x、y)を候補座標とし、その集まりを第1の藻場候補領域2とする。これにより、空撮カラー画像中に緑系色で写されている領域を第1の藻場候補領域2として抽出することができる。
【0032】
本実施形態では、g成分強度が優位であるか否かの判断として、b成分強度との比較を行い、g成分強度>b成分強度の場合にg成分強度が優位であると判断する。即ち、gb=(g成分強度)÷(b成分強度)を計算し、gb>1.0の場合にg成分強度が優位であると判断する。ただし、gbの閾値は1.0に限られない。
【0033】
ただし、g成分強度の優位性の判断はこれに限られない。例えば、r成分強度との比較(g成分強度>r成分強度)や、b成分強度及びr成分強度との比較(g成分強度>b成分強度且つg成分強度>r成分強度)で判断しても良い。また、このとき、単純な大小関係(例えば、g成分強度>b成分強度、gb>1.0、等)で判断しても良いし、所定値以上の大小関係であるか否か(例えば、gr(=g成分強度÷r成分強度)が所定の閾値S1(例えば、3.65等)以上であるか否か等)で判断しても良いし、一定範囲内の大小関係であるか否か(例えば、bg(=b成分強度÷g成分強度)が所定の閾値S2〜閾値S3(例えば、S2=0.635、S3=0.665等)の範囲等)で判断しても良い。
【0034】
次に、音響水深探査による測定水深zの変化に基づいて第2の藻場候補領域4を決定する(ステップS33)。第2の藻場候補領域4の決定は第2の藻場候補領域決定部5が行う。藻場が無く海底が続く領域は殆ど傾斜が無く、測定水深zは大きく変化しない。一方、藻場では音響水深探査機器16からの信号波が海底に比べて大きく散乱・吸収されると共に海藻の高さのため水深が浅くなるので、藻場の測定水深zは海底の測定水深zと大きく異なる。そのため、測定水深zの変化に基づいて海底と藻場とを判別することができる。
【0035】
まず、x座標=1の測定座標(1,1),(1,2),(1,3),…について、測定水深zの数列を求める。いま、測定座標(1,1)の測定水深zをz11,測定座標(1,2)の測定水深zをz12,測定座標(1,3)の測定水深zをz13,…とすると、x座標=1の各測定座標の測定水深zの数列Z1は(z11,z12,z13,…)となる。
【0036】
そして、数列Z1について、n番目の測定水深[zn]と、(n−1)番目の測定水深[z(n−1)]とを比較し、[zn]−[z(n−1)]<A1となるn番目の測定水深[zn]を海底による反射信号の測定水深zsと判断する。ここで、A1は判別のための閾値であり、例えば0.1(m)であるが、これに限られない。海底が続く領域では水深が殆ど変化しないため、[zn]と[z(n−1)]とがほぼ同じ値の場合、即ち[zn]−[z(n−1)]<A1の場合には測定座標(1,n)は海底であり、その測定座標(1,n)の測定水深zは海底による反射信号の測定水深zsであると判断することができる。一方、上記以外の場合([zn]−[z(n−1)]≧A1)には、その測定座標(1,n)は藻場であると判断することができる。例えば、z13−z12<A1である場合には、測定座標(1,3)は海底であると判断する。
【0037】
このような判断をx座標=1の測定座標(1,1),(1,2),(1,3),…について行い、海底であると判断した測定座標(1,y)のy座標と測定水深zsとの相関関係式(例えばzs=ay+bであらわされる)を求める。この相関関係式を第1の相関関係式という。第1の相関関係式はx座標=1の測定座標(1,1),(1,2),(1,3),…を通る海底の水深zsを示しており、海底部分については海底の水深を示し、藻場については海藻が生えている海底の水深を示している。
【0038】
次に、x座標=1の測定座標(1,1),(1,2),(1,3),…の各々について、y座標を第1の相関関係式に代入し、当該測定座標における海底の水深zsを求める。そして、x座標=1の測定座標(1,1),(1,2),(1,3),…の各々について、求めた海底の水深zsと当該測定座標の測定水深z(見かけ上の水深)との差za(藻場の海底よりも藻の上端の方が高いので、za=z−zs)を求める。このzaは、藻場については、海藻に影響された測定水深zと海藻が生えている海底の水深zsとの差であり、海藻による影響量zaと呼ぶ。なお、海藻による影響量zaは、第1の相関関係式の誤差等により藻場ではない海底部分についても0以外の値になることもある。このように海底と判断された測定座標も含めてx座標=1の測定座標(1,1),(1,2),(1,3),…の各々について海藻による影響量zaが求められる。
【0039】
上記のx座標=1の測定座標について行った処理をx座標=2,3,…についても行い、全ての測定座標(x,y)について海藻による影響量zaを求める。そして、海藻による影響量za>A2となる測定座標(x,y)を候補座標とし、その集まりを第2の藻場候補領域4とする。ここで、A2は判別のための閾値であり、例えば0.1(m)であるが、これに限られない。海藻による影響を受けたzaであれば、その値はある程度の大きさになり、海藻による影響を受けていないzaのであれば、その値は小さい値(第1の相関関係式の誤差程度)になると考えられる。したがって、za>A2であれば海藻による影響を受けており、その測定座標(x,y)は藻場であると判断できる。
【0040】
次に、第1の藻場候補領域2と第2の藻場候補領域4とを対比して両者の一致した領域を藻場域6と推定する(ステップS34)。藻場域6の推定は、藻場域推定部7が行う。ステップS32ではgb>1.0の測定座標(x、y)を第1の藻場候補領域2としており、ステップS33ではza>A2の測定座標(x、y)を第2の藻場候補領域4としている。したがって、(gb>1.0)且つ(za>A2)となる測定座標(x、y)が両者の一致した座標であり、その集まり藻場域6とする。これにより、藻場域6の分布を求めることができる。求められた藻場域6の分布は記憶部9に記憶されると共に、表示部11に表示される。
【0041】
ステップS32の、例えばgb>1.0の判別式では、空撮カラー画像中に緑系色で写されている領域を判別することはできるが、藻場と同系色である対象、例えば藻場を構成するアマモと同じような葉緑体を有するアオサ等を区別することができない(第1の誤差)。一方、軟質海底、凸凹したゴロタ石、ごみ等は空撮カラー画像中には緑系色以外の色で写るので、これらを藻場と区別することができる。
【0042】
また、ステップS33で求めた海藻による影響量zaはその全てが海藻に起因しているとは限らず、海藻以外の測定波の散乱・吸収を引き起こすもの、例えば軟質海底、凸凹したゴロタ石、ごみ等によっての測定水深zが影響を受けて増減(第2の誤差)している可能性もある。したがって、ステップS33のza>A2の判別式では、第2の誤差を排除できない。一方、アオサ等の海底に根付いていない海藻については、測定水深zが藻場と明確に異なるので、音響水深探査では区別することができる。
【0043】
本発明では、ステップS32で求めた第1の藻場候補領域2と、ステップS33で求めた第2の藻場候補領域4との両者を合わせて藻場域6を推定するので、空撮カラー画像による場合の第1の誤差と音響水深探査による場合の第2の誤差とを打ち消すことができ、藻場域6を精確に測定することができる。
【0044】
また、水中で撮影した画像・映像を観察する場合のような手間と時間が不要であり、簡便に測定することができる。
【0045】
本発明は、特に気泡が無い海藻(例えば、アマモ、アラメ、カジメ、ワカメ、コンブ等)で構成された藻場等の測定に適しており、気泡を有する海藻(例えば、ホンダワラ類)で構成された藻場等の測定にはあまり適していない。即ち、気泡を有する海草は音響水深探査の信号波の反射が強すぎることから、音響水深探査による測定にあまり適していないが、気泡が無い海藻は音響水深探査の信号波を適度に散乱・吸収するので海底と区別し易く音響水深探査による測定に適しており、本発明の適用に特に適している。
【0046】
次に、
図4〜
図6を参照して本発明を適用した第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態の構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0047】
第1の実施形態では、単に藻場域6を求めるだけであったが、本実施形態では更に藻場域6の繁茂量を推定する。ここで、繁茂量としては、例えば単位面積当たりの平均本数n、海藻の平均高さh、海藻の単位面積当たりの総重量twであるが、これらには限られない。
【0048】
本実施形態の藻場分布測定装置は、更に、測定対象水域1内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて藻場域6の繁茂量を推定する繁茂量推定手段17を備えている。即ち、測定用プログラムをコンピュータ上で実行することで、制御部8に、測定対象水域1内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて藻場域6の繁茂量を推定する繁茂量推定部(繁茂量推定手段)17が構成される。
【0049】
本実施形態では、第2の藻場候補領域決定部5によって各測定座標(x、y)についての海藻による影響量zaが既に求められているので、これを利用する。
【0050】
サンプル繁茂量は、現場調査により予め求められており、記憶部9に予め記憶されている。現場調査は、例えば次のようにして行われるが、これに限られない。調査員が現場水域に潜り、藻場内の音響水深探査の測定座標(x、y)に対応する位置に広さが単位面積のサンプリング領域を設定し、サンプリング領域内の海藻の本数n、平均高さhを測定すると共に、サンプリング領域内の海藻の総重量twを測定する。総重量twの測定は、例えば重量測定用試料として所定本数の海藻を採取して重量を測定し、その重量をサンプリング領域内の本数の重量に換算して総重量twとする。例えば、アマモの藻場に50cm×50cm方形枠を設置し、枠内のアマモの本数n、高さを測定すると共に、高さの平均hを算出し、さらに重量測定用試料として例えば10本のアマモを採取して重量を測定し、この重量を枠内の本数nの重量に換算して総重量twを求める。
【0051】
そして、このようなサンプリング調査を複数のサンプリング領域で行い、各サンプリング領域毎に海藻の本数n、海藻の平均高さh、海藻の総重量twを算出する。これらのサンプル繁茂量は対応する測定座標(x、y)と関連付けて記憶部9に予め記憶されている。
【0052】
次に、藻場分布測定方法について説明する。本実施形態では、ステップS34で藻場域6が求められた後、測定対象水域1内の複数地点で測定されたサンプル繁茂量と測定水深zの変化に基づいて求められた海藻による影響量zaとの相関関係を求めて藻場域6の繁茂量を推定する(ステップS35)。この藻場域6の繁茂量の推定は繁茂量推定部17が記憶部9からサンプル繁茂量及び海藻による影響量zaを読み込んで実行する。
【0053】
海藻による影響量zaは、海藻による信号波の散乱・吸収によって生じた値であり、海藻の繁茂が多いほど大きくなる。この海藻による影響量zaと実際の海藻の繁茂量との相関関係式を求める。繁茂量のサンプル調査は複数箇所で行われているので、海藻による影響量zaとサンプル繁茂量との相関関係式を求めることができる。即ち、相関関係式を求めることができる数の測定座標(x、y)についてサンプリング調査が行われる。本実施形態では繁茂量として、海藻の本数n、海藻の平均高さh、海藻の総重量twの3項目が設定されているので、各項目毎に相関関係式が求められる。相関関係式は、例えばn=c・za+d(海藻の本数nについての相関関係式、以下、第2の相関関係式という)、h=e・za+f(海藻の平均高さhについての相関関係式、以下、第3の相関関係式という)、tw=g・za+i(海藻の総重量twについての相関関係式、以下、第4の相関関係式という)であらわされる。
【0054】
そして、これらの第2〜第4の相関関係式にそれぞれ影響量zaを代入することで、当該影響量zaの測定座標(x、y)における繁茂量がそれぞれ求められる。そして、藻場域6内の各測定座標(x、y)について繁茂量がそれぞれ求められる。これにより、繁茂量の分布を求めることができる。求められた繁茂量は記憶部9に記憶されると共に、表示部11に表示される。
【0055】
なお、上述の説明では、繁茂量として、海藻の本数n、海藻の平均高さh、海藻の総重量twの全てを求めていたが、必ずしも全てを求める必要はなく、いずれか1つ又は2つを求めるようにしても良い。
【0056】
また、第2〜第4の相関関係式のうち、相関関係Rが低いものについての繁茂量を不採用にしても良い。相関関係Rが低いものを不採用とすることで、測定の信頼性をより高めることができる。例えば、相関関係Rが閾値0.9よりも大きいものを採用する。ただし、採用の閾値としては0.9に限られず、要求される信頼性の程度等に応じて適宜決定される。
【0057】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0058】
例えば、上述の説明では、空撮カラー画像の解像度が高く又は撮影高度が低く、音響水深探査で信号波の送受信を行った位置(測定ポイント)毎に別の画素が対応しているので、音響水深探査の各測定ポイントの座標を測定座標(x、y)として処理を行っているが、空撮カラー画像の解像度が低く又は撮影高度が高く、同一の画素に複数の測定ポイントが重なっている場合等には、測定ポイントを間引きして処理を行うようにしても良い。